説明

メタルマスク

【課題】箔物メタルマスクであっても硬さがあり伸びの発生が少なく、破損しにくく、しかも表面からカーボンナノチューブの先端が殆ど突出していない、カーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスクを得る。
【解決手段】カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜1aと、第1皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜1bと、第2皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜1cとからなる三層構造であり、第2皮膜に取り込まれたカーボンナノチューブの先端2は、薄いNiめっき皮膜が施されて第3皮膜の表面から僅かに突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属中にカーボンナノチューブもしくはその誘導体を常温で混入させることのできるめっき構造物およびその製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、カーボンナノチューブは、機械的特性に優れる物質であり、金属に分散させることにより、機械的強度を向上させることが知られている。また、カーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜を作製する場合、カーボンナノチューブがめっき浴中で凝集しやすい上に、導電性を有するカーボンナノチューブを均一に分散した緻密な金属複合めっきを形成することは難しいため、例えば回転攪拌又は超音波攪拌により、常に攪拌しながらめっき処理を行う必要がある。回転攪拌の場合は、ニッケルに覆われた多数の粒子の共析が確認でき、カーボンナノチューブが凝集したまま取り込まれるため、粒子サイズはめっき浴中のカーボンナノチューブ凝集体のサイズと相関があり、回転数を上げることで、共析する粒子が小さくなり、若干の表面粗さの改善は見られるが、表面粗さは約2μmRaである。一方、超音波攪拌を用いて形成しためっき皮膜は、大きな粒子の共析はほとんど見られず、表面粗さは0.28μmRaである。このことから、回転攪拌に比べ、超音波攪拌が表面粗さ改善に有効であり、めっき中のカーボンナノチューブの分散に効果的であると考えられる。また、めっき皮膜の硬さは、カーボンナノチューブを含まないニッケルめっき皮膜に比べて約2倍の約500HVの値となることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−9333号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】鈴木庸久、「カーボンナノチューブ複合めっき皮膜の応用事例の紹介」、社団法人表面技術協会めっき部会、平成22年10月26日、10月例会、p.3−4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された従来のめっき構造物は、カーボンナノチューブの先端がめっき皮膜表面から突出しているため、電解放出用エミッタとして好適に使用できるが、メタルマスク用めっき皮膜としては好適なものではなかった。また、上記非特許文献1によれば、カーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜を作製する場合、カーボンナノチューブを均一に分散させるために、例えば回転攪拌又は超音波攪拌により、常に攪拌しながらめっき処理を行う必要があり、特に、超音波攪拌を用いて形成しためっき皮膜は、大きな粒子の共析はほとんど見られず、表面粗さは0.28μmRaであること、めっき皮膜の硬さは、カーボンナノチューブを含まないニッケルめっき皮膜に比べて約2倍の約500HVの値となることが判っている。しかしながら、上記のようなカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜でメタルマスクを作製すると、カーボンナノチューブを含むめっき浴のみから作製しためっき皮膜では、非常に脆く、破損しやすいという問題が発生する。また、ニッケルで覆われた多数のカーボンナノチューブの先端がメタルマスクの表面から突出するため、メタルマスク用めっき皮膜としては好適なものではなかった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、膜厚が薄い箔物メタルマスクであっても硬さがあり伸びの発生が少なく、破損しにくく、しかも表面からカーボンナノチューブの先端が殆ど突出していない、カーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るメタルマスクにおいては、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜と、第1皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜と、第2皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜とからなる三層構造である。
【0008】
また、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜と、第1皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜と、第2皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜とからなる三層構造であり、第2皮膜に取り込まれたカーボンナノチューブの粒子は、分散されて間引きされ、粒子の先端は、薄いNiめっき皮膜が施されて第3皮膜の表面から僅かに突出しているものである。
【0009】
また、第1皮膜、第2皮膜、第3皮膜の膜厚比が、2:1:2である。
【0010】
また、第1皮膜、第2皮膜、第3皮膜の膜厚比が、1:1:1である。
【0011】
また、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜と、皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜とからなる二層構造である。
【0012】
また、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜と、皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜とからなる二層構造であり、皮膜に取り込まれたカーボンナノチューブの粒子は、分散されて間引きされ、粒子の先端は、薄いNiめっき皮膜が施されて支持体としての皮膜の表面から僅かに突出しているものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜単体が持っている脆さや破損しやすいという従来の問題点を両面に設けた支持体としての第1皮膜及び第3皮膜の存在によって改善することができる。また、Niに覆われたカーボンナノチューブの先端が、メタルマスク表面から突出する量を僅かにできるので、メタルマスク用めっき皮膜としても好適に使用できる。そして、マスク作製においては、寸法経時変化が抑えられるという大きな特性が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施例1におけるメタルマスクを示す断面図である。
【図2】この発明の実施例1におけるメタルマスクの一部を拡大して示す断面図である。
【図3】この発明の実施例1におけるメタルマスクの第1皮膜であるNiめっきを形成する第1工程を示す断面図である。
【図4】第1皮膜の上にメタルマスクの第2皮膜であるカーボンナノチューブを含むNiめっきを形成する第2工程を示す断面図である。
【図5】第2皮膜の上にメタルマスクの第3皮膜であるNiめっきを形成する第3工程を示す断面図である。
【図6】この発明の実施例2におけるメタルマスクの第1皮膜であるカーボンナノチューブを含むNiめっきを形成する第1工程を示す断面図である。
【図7】第1皮膜の上にメタルマスクの第2皮膜であるNiめっきを形成する第2工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例1.
図1はこの発明の実施例1におけるメタルマスクを示す断面図、図2はメタルマスクの一部を拡大して示す断面図、図3はメタルマスクの第1皮膜であるNiめっきを形成する第1工程を示す断面図、図4は第1皮膜の上にメタルマスクの第2皮膜であるカーボンナノチューブを含むNiめっきを形成する第2工程を示す断面図、図5は第2皮膜の上にメタルマスクの第3皮膜であるNiめっきを形成する第3工程を示す断面図である。
【0016】
図1及び図2において、1は膜厚が薄い箔物メタルマスク(膜厚約20〜30μm)であっても硬さがあり伸びの発生が少なく、破損しにくく、しかも表面からカーボンナノチューブの先端2が殆ど突出していない、カーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスクである。この発明によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスク1は、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜1aと、この第1皮膜1aの上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜1bと、この第2皮膜1bの上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜1cとからなる三層構造で構成されている。この第1皮膜1a、第2皮膜1b、第3皮膜1cの膜厚比は、約2:1:2としているが、約1:1:1であっても構わない。なお、図2において、2はNiに覆われたカーボンナノチューブの先端であり、メタルマスク表面からカーボンナノチューブの先端2が僅かに突出し、突出した先端には、薄いNiめっき皮膜が施されている状態を表わしている。
【0017】
この発明によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスクの製造工程を図3〜図5により説明する。先ず第1工程では、カーボンナノチューブを含まない支持体用のめっき浴組成として、Ni塩としてのNi:約1M、クエン酸Na:15g/L、その他添加剤等を加え、pH4.0、浴温50℃とする。そして、カーボンナノチューブを含まないめっき浴中に陽極としてNi電極、陰極にSUS材を浸漬させ、直流電源を外部から加え、SUS材からなる基板3の上にカーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜1aを作製する。次に第2工程では、カーボンナノチューブを含む引張り強度を持たせるためのめっき浴組成として、Ni塩としてのNi:約1M、ホウ酸:30g/Lを主として、その他添加剤等を加え、pH4.0、浴温50℃とする。そして、カーボンナノチューブを含むめっき浴中に陽極としてNi電極、陰極に上記第1工程で得られたSUS材からなる基板3を浸漬させ、直流電源を外部から加え、SUS材からなる基板3の第1皮膜1aの上にカーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜1bを作製する。この時、カーボンナノチューブを含むめっき浴を、回転攪拌装置又は超音波攪拌装置(いずれも図示せず)により、常に攪拌しながらめっき処理を行う。カーボンナノチューブはめっき浴中で凝集しやすい上に、導電性を有するカーボンナノチューブを均一に分散した緻密な金属複合めっきを形成することが難しいため、常に攪拌しながらめっき処理を行うことにより、カーボンナノチューブ粒子が分散されて間引きされる訳である。回転攪拌装置の場合は、ニッケルに覆われた多数の粒子の共析が確認でき、カーボンナノチューブが凝集したまま取り込まれるため、粒子サイズはめっき浴中のカーボンナノチューブ凝集体のサイズと相関があり、回転数を上げることで、共析する粒子が小さくなり、若干の表面粗さの改善が期待できる。また、超音波攪拌装置を用いて形成しためっき皮膜は、大きな粒子の共析はほとんど見られず、表面粗さも大きく改善される。このことから、回転攪拌装置に比べ、超音波攪拌装置が表面粗さ改善に有効であり、めっき中のカーボンナノチューブの分散に効果的である。次に第3工程では、カーボンナノチューブを含まない支持体用のめっき浴組成として、第1工程と同じくNi塩としてのNi:約1M、クエン酸Na:15g/L、その他添加剤等を加え、pH4.0、浴温50℃とする。そして、カーボンナノチューブを含まないめっき浴中に陽極としてNi電極、陰極に上記第2工程で得られたSUS材からなる基板3を浸漬させ、直流電源を外部から加え、SUS材からなる基板3のカーボンナノチューブを含む第2皮膜1bの上にカーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜1cを作製する。これにより、カーボンナノチューブ粒子の先端は、薄いNiめっき皮膜が施されて第3皮膜の表面から僅かに突出するものである。また、上記製造工程により得られた三層構造からなるこの発明によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスク1は、引張り試験の結果、皮膜最大応力は約1000MPa、ヤング率は約130000〜150000MPaであったが、マスク作製においては、寸法経時変化が抑えられるという大きな特性が得られた。
なお、上記製造工程では、メタルマスクのパターン開口の形成方法について説明を省略したが、製造工程の各皮膜作成工程に周知のパターン開口用のレジストを形成する工程を入れても良いし、最後にレーザー加工によりパターン開口を形成しても良い。
【0018】
比較例.
この発明の比較例として、カーボンナノチューブを含むめっき浴組成として、Ni塩としてのNi:約1M、ホウ酸:30g/Lを主として、その他添加剤等を加え、pH4.0、浴温50℃とし、カーボンナノチューブを含むめっき浴中に陽極としてNi電極、陰極にSUS材からなる基板を浸漬させ、直流電源を外部から加え、基板の上にカーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜の単体を作製した。このカーボンナノチューブを含むめっき浴のみから作製したメタルマスクは、非常に脆く、破損しやすいという問題が発生する。また、ニッケルで覆われた多数のカーボンナノチューブの先端がメタルマスクの表面から大きく突出するため、メタルマスク用めっき皮膜としては好適なものではないことが判った。
【0019】
この発明によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスク1は、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜1bの上下両面に、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜1a及び第3皮膜1cを形成しているので、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜単体が持っている脆さや破損しやすいという比較例の問題点を支持体としての第1皮膜1a及び第3皮膜1cの存在によって改善することができる。また、攪拌しながらめっき処理を行うことにより、カーボンナノチューブ粒子が分散されて間引きされ、分散されて間引きされたカーボンナノチューブの先端2が、薄いNiめっき皮膜が施されてメタルマスク表面から突出する量を僅かにできるので、メタルマスク用めっき皮膜としても好適に使用できる。そして、マスク作製においては、寸法経時変化が抑えられるという大きな特性が得られるという効果がある。
【0020】
実施例2.
図6はこの発明の実施例2におけるメタルマスクの第1皮膜であるカーボンナノチューブを含むNiめっきを形成する第1工程を示す断面図、図7は第1皮膜の上にメタルマスクの第2皮膜であるNiめっきを形成する第2工程を示す断面図である。
【0021】
上記実施例1によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスク1は、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜1aと、この第1皮膜1aの上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜1bと、この第2皮膜1bの上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜1cとからなる三層構造で構成しているが、この実施例2においては、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜1bと、この皮膜1bの上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜1cとからなる二層構造で構成したものである。なお、反対に、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜1cを先に形成し、この皮膜1cの上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜1bとからなる二層構造で構成しても良い。
【0022】
この実施例2によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスクの製造工程を図6〜図7により説明する。先ず第1工程では、カーボンナノチューブを含む引張り強度を持たせるためのめっき浴組成として、Ni塩としてのNi:約1M、ホウ酸:30g/Lを主として、その他添加剤等を加え、pH4.0、浴温50℃とする。そして、カーボンナノチューブを含むめっき浴中に陽極としてNi電極、陰極にSUS材からなる基板3を浸漬させ、直流電源を外部から加え、SUS材からなる基板3の上にカーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜1bを作製する。この時、カーボンナノチューブを含むめっき浴を、回転攪拌装置又は超音波攪拌装置(いずれも図示せず)により、常に攪拌しながらめっき処理を行う。カーボンナノチューブはめっき浴中で凝集しやすい上に、導電性を有するカーボンナノチューブを均一に分散した緻密な金属複合めっきを形成することが難しいため、常に攪拌しながらめっき処理を行うことにより、カーボンナノチューブ粒子が分散されて間引きされる訳である。回転攪拌装置の場合は、ニッケルに覆われた多数の粒子の共析が確認でき、カーボンナノチューブが凝集したまま取り込まれるため、粒子サイズはめっき浴中のカーボンナノチューブ凝集体のサイズと相関があり、回転数を上げることで、共析する粒子が小さくなり、若干の表面粗さの改善が期待できる。また、超音波攪拌装置を用いて形成しためっき皮膜は、大きな粒子の共析はほとんど見られず、表面粗さも大きく改善される。このことから、回転攪拌装置に比べ、超音波攪拌装置が表面粗さ改善に有効であり、めっき中のカーボンナノチューブの分散に効果的である。次に第2工程では、カーボンナノチューブを含まない支持体用のめっき浴組成として、Ni塩としてのNi:約1M、クエン酸Na:15g/L、その他添加剤等を加え、pH4.0、浴温50℃とする。そして、カーボンナノチューブを含まないめっき浴中に陽極としてNi電極、陰極に上記第1工程で得られたSUS材からなる基板3を浸漬させ、直流電源を外部から加え、SUS材からなる基板3のカーボンナノチューブを含む皮膜1bの上にカーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜1cを作製する。また、上記製造工程により得られた二層構造からなるこの発明によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスク1は、引張り試験の結果、皮膜最大応力は約1000MPa、ヤング率は約130000〜150000MPaであったが、マスク作製においては、寸法経時変化が抑えられるという大きな特性が得られた。
なお、上記製造工程では、メタルマスクのパターン開口の形成方法について説明を省略したが、製造工程の各皮膜作成工程に周知のパターン開口用のレジストを形成する工程を入れても良いし、最後にレーザー加工によりパターン開口を形成しても良い。
【0023】
この実施例2によるカーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスク1は、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜1bの片面(上面)に、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜1cを形成しているので、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜単体が持っている脆さや破損しやすいという比較例の問題点を支持体としての皮膜1cの存在によって改善することができる。また、攪拌しながらめっき処理を行うことにより、カーボンナノチューブ粒子が分散されて間引きされ、分散されて間引きされたカーボンナノチューブの先端2が、薄いNiめっき皮膜が施されてメタルマスク表面から突出する量を僅かにできるので、メタルマスク用めっき皮膜としても好適に使用できる。そして、マスク作製においては、寸法経時変化が抑えられるという大きな特性が得られるという効果がある。
【符号の説明】
【0024】
1 カーボンナノチューブを含む金属複合めっき皮膜からなるメタルマスク
1a カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる第1皮膜
1b カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる第2皮膜
1c カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる第3皮膜
2 カーボンナノチューブの先端
3 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜と、 前記第1皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜と、
前記第2皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜と、
からなる三層構造であることを特徴とするメタルマスク。
【請求項2】
カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第1皮膜と、 前記第1皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた第2皮膜と、
前記第2皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての第3皮膜とからなる三層構造であり、
前記第2皮膜に取り込まれたカーボンナノチューブの粒子は、分散されて間引きされ、粒子の先端は、薄いNiめっき皮膜が施されて前記第3皮膜の表面から僅かに突出していることを特徴とするメタルマスク。
【請求項3】
第1皮膜、第2皮膜、第3皮膜の膜厚比が、2:1:2であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のメタルマスク。
【請求項4】
第1皮膜、第2皮膜、第3皮膜の膜厚比が、1:1:1であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のメタルマスク。
【請求項5】
カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜と、
前記皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜と、
からなる二層構造であることを特徴とするメタルマスク。
【請求項6】
カーボンナノチューブを含むNiめっき皮膜からなる引張り強度を持たせた皮膜と、
前記皮膜の上に設けられ、カーボンナノチューブを含まないNiめっき皮膜からなる支持体としての皮膜とからなる二層構造であり、
前記皮膜に取り込まれたカーボンナノチューブの粒子は、分散されて間引きされ、粒子の先端は、薄いNiめっき皮膜が施されて前記支持体としての皮膜の表面から僅かに突出していることを特徴とするメタルマスク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−224933(P2012−224933A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95962(P2011−95962)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(300071823)株式会社ボンマーク (54)
【Fターム(参考)】