説明

メタル溶湯のサンプル分析方法及び装置

【課題】サンプル採取とサンプル分析との間の時間を短縮し、当該採取サンプルへの不純物混和を防止することである。
【解決手段】サンプルチャンバ3が浸漬ランスの浸漬端位置に配置される。サンプルチャンバ3は、その浸漬端位置に入口4を有する楕円形断面の平坦なサンプルチャンバであり、カートリッジ5内に固定される。サンプルチャンバ3は前記カートリッジ5を介して浸漬ランス2に移送され、その直ぐ後方に続く移送導管6を介して分光器7に移送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬ランスとして構成され且つサンプルチャンバを有するサンプラを用いて採取したメタル溶湯のサンプル分析法に関する。更には本発明は、浸漬ランスとして構成され且つサンプルチャンバを有するサンプラを用いるサンプル採取用装置にして本発明のサンプル分析法の実施に特に好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタル溶湯プロセス、特には鋳鉄またはスチール製造プロセスでは溶湯の定期的分析が必要となる。分析は、プロセスガイダンスを適時調節してプロセスを効率化し得るよう、可能な限り短時間で実施され得るべきである。
【0003】
既知のサンプル分析法は、例えばEP563447B1に記載される。この方法ではメタル溶湯中の窒素含有量が決定され得る。既知の類似装置及び方法はEP307430B1号に記載される。この装置ではメタル溶湯中の特に水素含有量が分析され得る。WO2005/059527A1号には、シングルユースタイプの分光器使用を伴う、メタル溶湯の分析方法及び装置が記載される。US4,342,633号において既知のシングルユースタイプの浸漬プローブは、メタル溶湯の温度及び酸素含有量を決定し得る。JP3071057Aにはスチール溶湯用のサンプリング装置が記載され、当該装置ではサンプルは浸漬ランスの補助の下に採取され、採取したサンプルはメタル溶湯からの浸漬ランス引き抜き中に密閉チャンバ内に持ち来される。DE3344944A1において、サンプルを採取して分析ラボに送り、そこで分析を実施することが既知である。更に、DE3200010A1には、冶金学的浸漬プローブの分光研究について記載があり、詳しくはサンプルは、その高温による酸化を防止するべく真空または不活性ガス雰囲気化に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP563447B1号明細書
【特許文献2】EP307430B1号明細書
【特許文献3】WO2005/059527A1号明細書
【特許文献4】US4,342,633号明細書
【特許文献5】JP3071057A号明細書
【特許文献6】DE3344944A1号明細書
【特許文献7】DE3200010A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、サンプル採取とサンプル分析との間の時間を短縮し、当該採取サンプルへの不純物混和を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は付随する請求項に記載する本願発明により本来達成される。各従属形式請求項に記載する特徴を有する有益な実施例が記載される。本発明によれば、メタル溶湯、特に鋳鉄またはスチール溶湯のサンプル分析方法が提供され、当該方法では、サンプルチャンバを有し且つ浸漬ランスとして構成したサンプラを用いてメタル溶湯からサンプルが採取され、前記採取サンプルが移送導管を通して分析装置領分に送られ、当該分析装置により分析される。詳しくは、分析装置は分光計であり得る。サンプルは浸漬ランスから移送導管(浸漬ランス直後の)内に直接移動され、次いで分析装置に送られ、かくして、第1には迅速な移送が保証され、第2にはサンプルへの外的影響の大半が排除される。移送導管は空気圧チューブラインとして構成され得る。好ましくはサンプルは幾つか(例えば2〜4)の中実部分に分割され得、サンプラ内で予め分割され得、分割されたサンプルの当該部分が分析装置領分に移送され得る。
【0007】
サンプルは、サンプルチャンバ全体から着脱自在のサンプルチャンバ部分にも連結され得、当該サンプルチャンバ部分と共に分析装置領分に移送され得る。サンプルをサンプルチャンバと共に移送導管を通して分析装置領分に移送し、当該領分にてサンプルチャンバの一部を除去し、かくして露呈されたサンプル表面領域を分析することも有益でもあり得る。詳しくは、移送導管を通しての移送中、真空または不活性ガスにサンプルを暴露させることが好適であり得る。サンプル採取に先立ち、真空または不活性ガスを少なくともサンプルチャンバ内に発生させておくことも有益であり得る。少なくともサンプルチャンバ内に真空または不活性ガスを発生させ且つサンプル温度が400℃またはそれ以下に冷却されるまで維持することも好適であり得る。サンプルは好ましくは圧縮ガスにより移送され得る。真空下(サンプルの吸引)による移送も可能である。圧縮ガスとしては、特には、不活性ガス(例えばアルゴン)を使用し得、サンプル温度が400℃またはそれ以下に冷却された場合は前記不活性ガスを随意的には圧縮空気で代替させ得る。
【0008】
本発明によれば、サンプルチャンバを有するサンプラを使用してメタル溶湯内でサンプル採取する装置であって、浸漬ランスとして構成され、前記サンプルチャンバがカートリッジ内に配置され、前記サンプラが、サンプルまたはサンプル収納用のサンプルチャンバを収納するカートリッジ用の移送導管の一端に連結され、該移送導管の他端が分析装置に連結される装置が提供される。カートリッジの外側輪郭は、浸漬ランス及びその直ぐ後方の移送導管の内側輪郭に適合すると共に、サンプルチャンバを移送させるようになっている。カートリッジは、サンプルチャンバの外側輪郭が浸漬ランス及び移送導管の内側輪郭に適合する場合は、例えばサンプルチャンバ内に一体化され得る。詳しくは、分析装置は分光器であり得る。サンプルチャンバまたはその一部がサンプラから着脱自在であり、且つ移送導管を通して移送自在であることが好都合である。移送導管が圧縮ガス接続部及び/または真空接続部を有することが更に好都合である。サンプルチャンバ及び/またはカートリッジが真空接続部または不活性ガス接続部を有することが更に好都合である。本発明によれば、サンプルを有害な環境負荷に露呈させることなく素早く採取し、分析装置に移送させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】サンプリング及び測定上の構成例の概略図である。
【図2】図1と類似するサンプリング及び測定上の構成例の概略図である。
【図3】サンプラ及びサンプル移送の例示図である。
【図4】他のサンプラの例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1にはスチール溶湯用の溶湯コンテナ1が示され、サンプラとして作用する浸漬ランス2が浸漬されている。サンプルチャンバ3が浸漬ランスの浸漬端位置に配置される。サンプルチャンバ3は、所謂ロリポップタイプのサンプルチャンバであって、その浸漬端位置に入口4を有する楕円形断面の平坦なサンプルチャンバである。サンプルチャンバ3はカートリッジ5内に固定される。サンプルチャンバ3は前記カートリッジ5を介して浸漬ランス2に移送され、その直ぐ後方に続く移送導管6を介して分光器7に移送される。図2には極めて類似する構成が例示され、分光器7がスパークスタンド8を有している。図示の構成ではサンプルチャンバ3は分光器7位置に到達すると開放する。不活性ガスが前記開放時にサンプルチャンバ3内に導入され、スチール溶湯内への浸漬前に蒸発する。
【0011】
不活性ガスがサンプルチャンバ3に、DE3200010A1に示される如き既知様式下に供給される。真空で代替させ得る不活性ガスにより、液状スチールサンプルまたは冷却スチールサンプルの高温下での酸化を防止する。
分光器7到達時のサンプル温度は400℃以下であり、従って、サンプル保護用の不活性ガスまたは真空はもはや不要である。サンプルチャンバ3は分光器7位置に達すると開放する。当該開放は、中でもサンプルの動的力性により生じ得るが、サンプルチャンバ3の2つのシェル半分体をバネまたはマニピュレータ、例えば、切削用ディスクにより機械的にも生じさせ得、または圧縮空気の作用によってさえ生じさせ得る。サンプルチャンバ3の2つのシェル半分体の一方を取り外すと、サンプルのある表面への分析用のアクセスが可能となる。サンプル採取及びサンプル移送が不活性ガス(例えばアルゴン)存在下に実施されるので酸化が防止され、かくして適宜方式による分析用サンプルの更なる酸化防止策が不要化され、分析に先立つサンプル分離はもはや不要となる。
【0012】
サンプルは、異なる移送路上を移送されるところの各中間ステージ無しで、分析装置に非常に素早く且つ直接給送される。移送導管6に浸漬ランス2及び分析装置を連結することにより、溶湯直近位置での複雑な分析装置の使用が不要化される。移送速度が非常に速く且つサンプリング直後に移送が開始されるため、実際の分析は2分未満で実施され得る。また、プロセス分析を改善させ得る自動サンプル識別が可能である。移動ラボあるいはそうでなければ固定ラボ、例えば中央ラボに設置し得る。当該ラボは製鋼プラントでは十分入手可能である。
【0013】
各図ではサンプルチャンバ3は、カートリッジ5に固定した平坦なサンプルチャンバとして示される。浸漬ランス2は円形の内側断面を有し、移送導管6の同様に円形及び等サイズの内側断面にシームレスに接続し、かくして前記同様に円形及び等サイズの内側断面を持つカートリッジ5を支障なく移送させ得る。平坦なサンプルチャンバに代えて円形断面(移送方向に直交する方向での)を有するサンプルチャンバも使用できる。その場合、カートリッジは、サンプルチャンバ3に直接一体化されるようサンプルチャンバ3の外側シェルに本来等しい構成を有する。
【0014】
サンプルチャンバ3は、例えば上述した分光器7を含む分析装置に圧縮空気により移送される。図3には当該移送状況がサンプルチャンバ3の2つの移動相により示される。図3には示さないが、浸漬ランス2はその端部位置で移送導管6にシームレスに移行される。浸漬ランス2の壁及び随意的には移送導管6の内部には圧縮ガスラインが配置され、当該圧縮ガスラインの支援下にガスが、カートリッジ5の浸漬端を分析装置方向に移送させるに十分な高圧で押送する。カートリッジ5の自由状態を維持する断面部は、ガス圧によりサンプルチャンバ3が移送され得るよう、例えば浸漬端から遠い側の端部位置で耐火材製ディスクにより好適に閉鎖され得る。図3では浸漬位置にあるサンプルチャンバ3はサンプルチャンバ3の入口開口4位置に保護キャップ10を配置した状態で示される。前記キャップはスチール溶湯に浸漬されると溶融または溶解し、かくしてスチール溶湯がサンプルチャンバ3内に流入し得る。
【0015】
図4には本発明の他の想定実施例が示される。図の下方部分には浸漬ランス2が示され、上方部分には分析装置に導入した移送導管6が示される。サンプルチャンバ3’は平坦なサンプルチャンバとして構成され、大型の延長部が浸漬方向と直交して伸延される。サンプルチャンバ3’の、浸漬端から遠い側に面する端部位置には、当該サンプルチャンバ3’の分光器7位置への到達後に除去される取り外し自在の蓋11が装着される。分光器7はスパークスタンドを含み、当該スパークスタンドの支援下に、前記蓋11を取り外した後の自由アクセス可能な表面位置でサンプルを分析し得る。分析装置はガス入口12を含む。不活性ガス、即ち浸漬ランス内の圧縮ガスをガス導管13の浸漬端位置に導入するガス導管13が設けられる。不活性ガスをサンプルチャンバ内に導入するガス供給ライン14も配置される。サンプルチャンバ自体はクオーツガラス製の入口パイプ15を通して充填される。
本装置の各パーツはサンプラで通常用いる材料から構成される。
【符号の説明】
【0016】
1 溶湯コンテナ
2 浸漬ランス
3 サンプルチャンバ
4 入口
5 カートリッジ
6 移送導管
7 分光器
10 保護キャップ
11 蓋
12 ガス入口
13 ガス導管
14 ガス供給ライン
15 入口パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタル溶湯のサンプル分析方法であって、
前記サンプルが、浸漬ランスとして構成されるサンプルチャンバを有するサンプラを使用してメタル溶湯から採取され、前記サンプルが前記サンプラから移送導管を通して分析装置領分に移送され、前記サンプルが前記分析装置領分内で前記分析装置により分析される方法。
【請求項2】
分析装置として分光器を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプルが前記サンプラ内で分割され、サンプルの前記分割された各部分が分析装置領分に移送される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
サンプルが、前記サンプルチャンバ全体から着脱自在のサンプルチャンバの一部に連結され、当該サンプルチャンバの一部により前記分析装置領分内に移送される請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
サンプルが、前記移送導管を通して前記サンプルチャンバと共に前記分析装置領分内に移送され、該分析装置領分内で前記サンプルチャンバの一部分が除去され、かくして露呈されたサンプル表面が分析される請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
移送導管を通してのサンプル移送中、サンプルに真空または不活性ガスが作用する請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
真空または不活性ガスが、サンプリングの十分以前に少なくともサンプルチャンバ内で発生される請求項1〜6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
真空または不活性ガスが少なくともサンプルチャンバ内で発生され且つ、サンプル温度が400℃未満または400℃に冷却されるまで維持される請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
サンプルが圧縮ガスにより移送される請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記不活性ガスが圧縮ガスとして使用され、該圧縮ガスが、サンプル温度が400℃未満または400℃に冷却された場合は随意的には圧縮空気により代替され得る請求項9に記載の方法。
【請求項11】
サンプルチャンバを有するサンプラを使用してメタル溶湯内でサンプルを採取する装置であって、浸漬ランスとして構成され、前記サンプルチャンバがカートリッジ内に配置され、前記サンプラが、サンプルまたはサンプル収納用のサンプルチャンバを収納するカートリッジ用の移送導管の一端に連結され、該移送導管の他端が分析装置に連結される装置。
【請求項12】
前記分析装置が分光器である請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記サンプルチャンバまたはその一部が前記サンプラから着脱自在であり且つ前記移送導管を通して移送自在である請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記移送導管が圧縮ガス接続部及び真空接続部を有する請求項11〜13の何れかに記載の装置。
【請求項15】
前記サンプルチャンバまたはカートリッジが真空接続部または不活性ガス接続部を有する請求項11〜14の何れかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−123002(P2012−123002A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267770(P2011−267770)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】