説明

メタロセン化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを利用して製造されたオレフィン系重合体

本発明は、新規メタロセン化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを利用して製造されたオレフィン系重合体に関する。本発明に係るメタロセン化合物およびこれを含む触媒組成物は、オレフィン系重合体の製造時に使用することができ、共重合性が優れており、高分子量のオレフィン系重合体を製造することができる。特に、本発明に係るメタロセン化合物を用いれば、耐熱性の高いブロック共重合体を製造することができ、オレフィン系重合体の製造時、共単量体の含有量を増加させる場合にも、融点(Tm)が高いオレフィン系重合体を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規メタロセン化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを利用して製造されたオレフィン系重合体に関する。
【0002】
本出願は、2009年07月31日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2009−0070574号および2010年07月28日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2010−0072934号の出願日の利益を主張し、その内容すべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
ダウ(Dow)社が1990年代初期に[MeSi(Me)NtBu]TiCl(Constrained−Geometry Catalyst、以下「CGC」と略称する)を発表したが(米国特許登録第5,064,802号)、エチレンとアルファ−オレフィンの共重合反応において、前記CGCが既存まで知られたメタロセン触媒に比べて優れている側面は、次のように大きく2種類に要約することができる。(1)高い重合温度でも高い活性度を示しながら高分子量の重合体を生成し、(2)1−ヘキセンおよび1−オクテンのような立体的障害が大きいアルファ−オレフィンの共重合性も極めて優れるという点である。その他にも、重合反応時のCGCの多様な特性が次第に知らされながら、この誘導体を合成して重合触媒として使用しようとする努力が学界および産業界で活発に行われた。
【0004】
リガンドとしてシクロペンタジエニル基を1つまたは2つ有している4族遷移金属化合物をメチルアルミノキサンやボロン化合物に活性化させてオレフィン重合の触媒として利用することができる。このような触媒は、従来のチーグラ−ナッタ触媒が実現することができない独特な特性を示す。
【0005】
すなわち、このような触媒を利用して得られた重合体は、分子量分布が狭く、アルファオレフィンや環状オレフィンのような第2単量体に対する反応性がさらに良く、重合体の第2単量体分布も均一である。また、メタロセン触媒内のシクロペンタジエニルリガンドの置換体を変化させることによってアルファオレフィンを重合するとき、高分子の立体選択性を調節することができ、エチレンとは異なるオレフィンを共重合するとき、共重合程度、分子量、および第2単量体分布などを容易に調節することができる。
【0006】
一方、メタロセン触媒は、従来のチーグラ−ナッタ触媒に比べて値段が高いため、活性が良ければ経済的な価値がある。第2単量体に対する反応性が良ければ、少量の第2単量体の投入によっても、第2単量体が多く入った重合体が得られるという利点がある。
【0007】
多様な研究者が多様な触媒を研究した結果、一般的にブリッジされた触媒が第2単量体に対して反応性が良いということが判明した。今まで研究されたブリッジされた触媒は、ブリッジ形態に応じて大きく3種類に分類することができる。第1には、ハロゲン化アルキルのような親電子体とインデンやフルオレンなどとの反応によって2つのシクロペンタジエニルリガンドがアルキレンジブリッジに連結した触媒であり、第2には、−SiR−によって連結したシリコンブリッジされた触媒、および第3には、フルベンとインデンやフルオレンなどとの反応から得られたメチレンブリッジされた触媒である。
【0008】
しかし、このような試みのうちで実際に商業に適用されている触媒は少数であり、より向上した重合性能を示す触媒の製造が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許登録第5,064,802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、共重合成が優れており、高分子量のオレフィン系重合体を生成することができるメタロセン化合物、これを含む触媒組成物、およびこれを利用したオレフィン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物を提供する。
【化1】

【0012】
前記化学式(1)において、
R1〜R17は互いに同一であるか相違しており、それぞれ独立的に水素、ハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のアルキルアリール基、またはC〜C20のアリールアルキル基であり、
LはC〜C10の直鎖または分枝鎖アルキレン基であり、
Dは−O−、−S−、−N(R)−、または−Si(R)(R’)−であるが、ここで、RおよびR’は互いに同一であるか相違しており、それぞれ独立的に水素、ハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、またはC〜C20のアリール基であり、
Aは水素、ハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のアルキルアリール基、C〜C20のアリールアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、C〜C20のアルコキシアルキル基、C〜C20のヘテロシクロアルキル基、またはC〜C20のヘテロアリール基であり、
Mは4族遷移金属であり、
X1およびX2は互いに同一であるか相違しており、それぞれ独立的にハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のアリール基、ニトロ基、アミド基、C〜C20のアルキルシリル基、C〜C20のアルコキシ基、またはC〜C20のスルホネート基である。
【0013】
また、本発明は、前記メタロセン化合物を含む触媒組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記触媒組成物の存在下において、オレフィン系単量体を重合させる段階を含むオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るメタロセン化合物およびこれを含む触媒組成物は、オレフィン系重合体の製造時に使用することができ、共重合性が優れており、高分子量のオレフィン系重合体を製造することができる。特に、本発明に係るメタロセン化合物を用いれば、耐熱性に優れたブロック共重合体を製造することができ、オレフィン系重合体の製造時に共単量体の含有量を増加させる場合にも、融点(Tm)が高いオレフィン系重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造例1に係るメタロセン化合物の1H NMR結果を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係るエチレン/アルファオレフィン重合体のDSC結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明に係るメタロセン化合物は、前記化学式(1)で表示されることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るメタロセン化合物において、前記化学式(1)の置換基をより具体的に説明すれば、下記のとおりである。
【0020】
前記C〜C20のアルキル基としては、直鎖または分枝鎖のアルキル基を含み、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプタル基、オクチル基などが挙げられるが、これにのみ限定されることはない。
【0021】
前記C〜C20のアルケニル基としては、直鎖または分枝鎖のアルケニル基を含み、具体的に、アリル基、エテニル基、プロフェニル基、ブテニル基、ペンチニル基などが挙げられるが、これにのみ限定されることはない。
【0022】
前記C〜C20のアリール基としては、単環または縮合環のアリール基を含み、具体的に、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基などが挙げられるが、これにのみ限定されることはない。
【0023】
前記C〜C20のヘテロアリール基としては、単環または縮合環のヘテロアリール基を含み、カルバゾリル基、ピリジル基、キノリン基、イソキノリン基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾール基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジン基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などが挙げられるが、これにのみ限定されることはない。
【0024】
前記C〜C20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられるが、これにのみ限定されることはない。
前記4族遷移金属としては、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられるが、これにのみ限定されることはない。
【0025】
本発明に係るメタロセン化合物において、前記化学式(1)のR1〜R17は、それぞれ独立的に水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、またはフェニル基であることがより好ましいが、これにのみ限定されることはない。
【0026】
本発明に係るメタロセン化合物において、前記化学式(1)のLは、C〜Cの直鎖または分枝鎖アルキレン基であることがより好ましいが、これにのみ限定されることはない。また、前記アルキレン基は、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、またはC〜C20のアリール基に置換または非置換されてもよい。
【0027】
本発明に係るメタロセン化合物において、前記化学式(1)のAは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、またはテトラヒドフラニル基であることがより好ましいが、これにのみ限定されることはない。
【0028】
前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物の具体的な例としては、下記化学式(2)で表示される化合物が挙げられるが、これにのみ限定されることはない。
【化2】

【0029】
本発明に係るメタロセン化合物の製造方法は、後述する実施例に具体的に記載した。
【0030】
また、本発明は、前記メタロセン化合物を含む触媒組成物を提供する。
【0031】
本発明に係る触媒組成物は、前記メタロセン化合物の他に、下記化学式(3)、化学式(4)、または化学式(5)で表示される助触媒化合物のうちの1種以上を追加で含んでもよい。
−[Al(R18)−O]−・・・(3)
前記化学式(3)において、
R18は互いに同一であるか相違してもよく、それぞれ独立的にハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素、またはハロゲンに置換された炭素数1〜20の炭化水素であり、
nは2以上の整数であり、

D(R18)・・・(4)
前記化学式(4)において、
R18は前記化学式(3)で定義されたとおりであり、
Dはアルミニウムまたはボロンであり、

[L−H]+[ZAまたは[L][ZA・・・(5)
前記化学式(5)において、
Lは中性または陽イオン性ルイス酸であり、
Hは水素原子であり、
Zは13族元素であり、
Aは互いに同一であるか相違してもよく、それぞれ独立的に1以上の水素原子価ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素、アルコキシまたはフェノキシに置換または非置換された炭素数6〜20のアリール基、または炭素数1〜20のアルキル基である。
【0032】
前記化学式(3)で表示される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどがあるが、より好ましい化合物はメチルアルミノキサンである。
【0033】
前記化学式(4)で表示される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−s−ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどが含まれるが、より好ましい化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムのうちから選択する。
【0034】
前記化学式(5)で表示される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルムアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルムアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p−トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、
トリブチルムアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルムアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどがある。
【0035】
本発明に係る触媒組成物は、第1の方法として、1)前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物と前記化学式(3)または化学式(4)で表示される化合物を接触させて混合物を得る段階、および2)前記混合物に前記化学式(5)で表示される化合物を添加する段階を含む方法によって製造されてもよい。
【0036】
また、本発明に係る触媒組成物は、第2の方法として、前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物と前記化学式(3)で表示される化合物を接触させる方法によって製造されてもよい。
【0037】
前記触媒組成物の製造方法のうちの第1の方法の場合に、前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物/前記化学式(3)または化学式(4)で表示される化合物のモル比率は、1/5,000〜1/2が好ましく、より好ましくは1/1,000〜1/10であり、最も好ましくは1/500〜1/20である。前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物/前記化学式(3)または化学式(4)で表示される化合物のモル比率が1/2を超える場合には、アルキル化剤の量が極めて小さく、金属化合物のアルキル化が完全に進められないとう問題がある。また、モル比率が1/5,000未満である場合には、金属化合物のアルキル化は行われるが、残っている過量のアルキル化剤と前記化学式(5)の活性化剤間の副反応により、アルキル化された金属化合物の活性化が完全に行われないという問題がある。さらに、前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物/前記化学式(5)で表示される化合物のモル比率は、1/25〜1が好ましく、より好ましくは1/10〜1であり、最も好ましくは1/5〜1である。前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物/前記化学式(5)で表示される化合物のモル比率が1を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて金属化合物の活性化が完全に行われず、生成される触媒組成物の活性度が低下するという問題があり、モル比率が1/25未満である場合には、金属化合物の活性化は完全に行われるが、残っている過量の活性化剤によって触媒組成物の単価が経済的でなかったり、生成される高分子の純度が低下するという問題がある。
【0038】
前記触媒組成物の製造方法のうちの第2の方法の場合に、前記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物/化学式(3)で表示される化合物のモル比率は、1/10,000〜1/10が好ましく、より好ましくは1/5,000〜1/100であり、最も好ましくは1/3,000〜1/500である。前記モル比率が1/10を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて金属化合物の活性化が完全に行われず、生成される触媒組成物の活性度が低下するという問題があり、1/10,000未満である場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残っている過量の活性化剤によって触媒組成物の単価が経済的でなかったり、生成される高分子の純度が低下するという問題がある。
【0039】
前記触媒組成物の製造時の反応溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどのような炭化水素系溶媒、またはベンゼン、トルエンなどのような芳香族系溶媒が用いられてもよい。また、メタロセン化合物と助触媒化合物は、シリカやアルミナに擔持された形態で利用してもよい。
【0040】
また、本発明は、前記触媒組成物の存在下において、オレフィン系単量体を重合させる段階を含むオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【0041】
本発明に係るオレフィン系重合体の製造方法において、前記オレフィン系単量体の具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−アイトセンなどがあり、これらを2種以上混合して共重合してもよい。
【0042】
前記オレフィン系重合体は、エチレン/アルファオレフィン共重合体であることがより好ましいが、これにのみ限定されることはない。
【0043】
前記オレフィン系重合体がエチレン/アルファオレフィン共重合体である場合において、前記共単量体のアルファオレフィンの含有量は特に制限されることはなく、オレフィン系重合体の用途や目的などに応じて適切に選択してもよい。より具体的には、0超過99モル%以下であってもよい。
【0044】
前記エチレン/アルファオレフィン共重合体は、化学的または物理的特性が異なる2つ以上のセグメントまたはブロックを含む多重ブロック共重合体であってもよい。
【0045】
前記多重ブロック共重合体を製造するために、従来には互いに異なる2種の遷移金属触媒と鎖往復剤(chain shuttling agent)を利用する方法が知られている。しかし、これは多重ブロック共重合体の製造時に互いに異なる2種の遷移金属触媒と特定の化合物の鎖往復剤を利用しなければならないため工程が複雑であり、製造される多重ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が約2.0と極めて狭いため、加工性が低下するという問題点があった。
【0046】
しかし、本発明は、前記鎖往復剤を利用せず、単一メタロセン化合物を重合触媒として用いるため、ブロックオレフィン系重合体を簡単に製造できるという特徴がある。また、製造されるオレフィン系重合体は、広い分子量分布(Mw/Mn)を有することができるため、加工性が優れるという特徴がある。
【0047】
本発明は、上述した方法によって製造されたオレフィン系ブロック共重合体を提供する。また、本発明は、融点(Tm)が100℃以上であるオレフィン系ブロック共重合体、好ましくは、エチレン/アルファオレフィンブロック共重合体を提供する。
本発明において、前記オレフィン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、2以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましいが、これにのみ限定されることはない。
【0048】
本発明において、前記オレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜3,000,000であってもよく、5,000〜1,000,000であることがより好ましいが、これにのみ限定されることはない。
【0049】
前記オレフィン系重合体の密度は、0.85g/cm〜0.92g/cmであることが好ましく、0.85g/cm〜0.90g/cmであることがより好ましい。
【0050】
本発明に係るオレフィン系重合体は、DSCによる融点(Tm)測定時、重合体の密度に対比して高い単一または多重結晶性融点を有する。前記オレフィン系重合体の融点(Tm)は、重合体の密度に関係なく100℃以上であることが好ましく、105℃〜135℃であることがより好ましいが、これにのみ限定されることはない。
【0051】
一般的に、エチレン/アルファオレフィン共重合体の場合には、共重合体内の共単量体の含有量が高いほど、共重合体の密度が低くなり、融点が低くなる傾向を示すようになる。しかし、本発明に係るオレフィン系共重合体は、共単量体の含有量を高める場合にも、100℃以上の融点を示すことができるため、耐熱性だけではなく機械的強度も優れた特性を有するようになる。
【0052】
したがって、本発明に係るオレフィン系重合体は、耐熱性、機械的強度、加工性などが優れているため、オレフィン系重合体が使用される用途に応じて多様な適用が可能である。
【0053】
以下、本発明の理解を助けるために、好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより簡単に理解するために提供するものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されることはない。
【実施例】
【0054】
<製造例1>
1)リガンド化合物の製造
【化3】

THF溶媒下において、tert−Bu−O−(CHCl化合物とMg(0)の間の反応からグリニャール(Grignard)試薬のtert−Bu−O−(CHMgCl溶液1.0moleを得た。前記製造されたグリニャール化合物を−30℃の状態のMeSiCl化合物(176.1mL、1.5mol)とTHF(2.0mL)が入っているフラスコに加え、常温で8時間以上攪拌した後、ろ過した溶液を真空乾燥してtert−Bu−O−(CHSiMeClの化合物を得た(収率92%)。
【0055】
−20℃で反応器にフルオレン(3.33g、20mmol)とヘキサン(100mL)とMTBE(methyl tert−butyl ether、1.2mL、10mmol)を入れ、8mlのn−BuLi(2.5M in Hexane)をゆっくり加え、常温で6時間攪拌した。攪拌が終結した後、反応器温度を−30℃で冷却させ、−30℃でヘキサン(100ml)に溶けているtert−Bu−O−(CHSiMeCl(2.7g、10mmol)溶液に前記製造されたフルオレニルリチウム溶液を1時間に渡ってゆっくり加えた。常温で8時間以上攪拌した後、水を添加して抽出し、乾燥(evaporation)して(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を得た(5.3g、収率100%)。リガンドの構造は1H−NMRによって確認した。
【0056】
1H NMR(500MHz、CDCl):−0.35(MeSi、3H、s)、0.26(Si−CH、2H、m)、0.58(CH、2H、m)、0.95(CH、4H、m)、1.17(tert−BuO、9H、s)、1.29(CH、2H、m)、3.21(tert−BuO−CH、2H、t)、4.10(Flu−9H、2H、s)、7.25(Flu−H、4H、m)、7.35(Flu−H、4H、m)、7.40(Flu−H、4H、m)、7.85(Flu−H、4H、d)。
【0057】
2)メタロセン化合物の製造
【化4】

−20℃で(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310(3.18g、6mmol)/MTBE(20mL)溶液に4.8mlのn−BuLi(2.5M in Hexane)をゆっくり加えて常温に上げながら8時間以上を反応させた後、−20℃で前記製造されたジリチウム塩(dilithium salts)スラリ溶液をZrCl(THF)(2.26g、6mmol)/ヘキサン(20mL)のスラリ溶液にゆっくり加え、常温で8時間さらに反応させた。沈殿物をろ過して数回に渡ってヘキサンで洗い流し、赤色固体形態の(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl化合物を得た(4.3g、収率94.5%)。
【0058】
1H NMR(500MHz、C6D6):1.15(tert−BuO、9H、s)、1.26(MeSi、3H、s)、1.58(Si−CH2、2H、m)、1.66(CH2、4H、m)、1.91(CH2、4H、m)、3.32(tert−BuO−CH2、2H、t)、6.86(Flu−H、2H、t)、6.90(Flu−H、2H、t)、7.15(Flu−H、4H、m)、7.60(Flu−H、4H、dd)、7.64(Flu−H、2H、d)、7.77(Flu−H、2H、d)
【0059】
<製造例2>
1)リガンド化合物の製造
リガンド製造時にtert−Bu−O−(CHCl化合物を利用したことを除いては、前記製造例1と同じようにリガンド化合物を製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を前記製造例1と類似した収率で得た。リガンドの構造は1H−NMRによって確認した。
【0060】
1H NMR(500MHz、C6D6):−0.40(MeSi、3H、s)、0.30(CH、2H、m)、0.71(CH、2H、m)、1.05(tert−BuO、9H、s)、1.20(CH、2H、m)、2.94(tert−BuO−CH、2H、t)、4.10(Flu−9H、2H、s)、7.16(Flu−H、4H、m)、7.35(Flu−H、4H、m)、7.35(Flu−H、2H、d)、7.43(Flu−H、2H、d)、7.77(Flu−H、4H、d)。
【0061】
2)メタロセン化合物の製造
(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を利用したことを除いては、前記製造例1と同じように製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl2化合物を類似した収率で得た。
【化5】

【0062】
1H NMR(500MHz、C6D6):1.14(tert−BuO、9H、s)、1.26(MeSi、3H、s)、1.90(CH2、2H、m)、1.99(CH2、2H、m)、2.05(CH2、2H、m)、3.39(tert−BuO−CH2、2H、t)、6.84(Flu−H、2H、m)、6.90(Flu−H、2H、m)、7.15(Flu−H、4H、m)、7.60(Flu−H、6H、d)、7.80(Flu−H、2H、d)
【0063】
<製造例3>
1)リガンド化合物の製造
リガンド製造時にtert−Bu−O−(CHCl化合物を利用したことを除いては、前記製造例1と同じようにリガンド化合物を製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を前記製造例1と類似した収率で得た。リガンドの構造は1H−NMRによって確認した。
【0064】
1H NMR(500MHz、C6D6):−0.40(MeSi、3H、s)、0.29(CH、2H、m)、0.58(CH、2H、m)、0.83(CH、2H、m)、0.95(CH、2H、m)、1.05(CH、2H、m)、1.14(tert−BuO、9H、s)、1.30(CH、2H、m)、1.64(CH、2H、m)、3.27(tert−BuO−CH2、2H、t)、4.13(Flu−9H、2H、s)、7.17(Flu−H、4H、m)、7.26(Flu−H、4H、m)、7.37(Flu−H、2H、d)、7.43(Flu−H、2H、d)、7.78(Flu−H、4H、d)。
【0065】
2)メタロセン化合物の製造
(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C1310化合物を利用したことを除いては、前記製造例1と同じように製造し、(tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl化合物を類似した収率で得た。
【0066】
1H NMR(500MHz、C6D6):1.17(tert−BuO、9H、s)、1.29(MeSi、3H、s)、1.41(CH2、4H、m)、1.49(CH2、2H、m)、1.64(CH2、2H、m)、1.89(CH2、4H、m)、1.94(CH2、2H、m)、3.30(tert−BuO−CH2、2H、t)、6.81(Flu−H、2H、m)、6.90(Flu−H、2H、m)、7.14(Flu−H、4H、m)、7.60(Flu−H、4H、d)、7.65(Flu−H、2H、d)、7.78(Flu−H、2H、d)
【0067】
<実施例1>
500mlのガラス反応器にトルエン(toluene)235mlを投入し、1−ヘキセン(1−hexene)5mlを投入し、MAOの10wt%トルエン溶液10mlを投入した後、前記製造例1で製造した化合物((tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl2)の1mMトルエン溶液(5ml、5μmol)を投入した後、反応器に50psigのエチレンを投入して重合を開始した。0.5時間攪拌し、ventし、反応物をエタンオール/塩酸溶液に注いだ。攪拌し、フィルタし、エタンオールで洗浄した後、溶媒を増発させてオレフィン系重合体を得た。その結果を下記表1に示した。
【0068】
<実施例2>
反応器に1−ヘキセン(1−hexene)10mlを投入したことを除いては、前記実施例1と同じようにオレフィン系重合体を製造した。その結果を下記表1に示した。
【0069】
<実施例3>
反応器に1−ヘキセン(1−hexene)15mlを投入したことを除いては、前記実施例1と同じようにオレフィン系重合体を製造した。その結果を下記表1に示した。
【0070】
<実施例4、5、6>
反応器に1−オクテン(1−octene)をそれぞれ6.3ml、12.6ml、15.7mlを投入したことを除いては、前記実施例1と同じようにオレフィン系重合体を製造した。その結果を下記表1に示した。
【0071】
<実施例7>
メタロセン化合物として前記製造例2で製造した化合物((tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl)を投入したことを除いては、前記実施例1と同じようにオレフィン系重合体を製造した。その結果を下記表1に示した。
【0072】
<実施例8>
メタロセン化合物として前記製造例3で製造した化合物((tert−Bu−O−(CH)MeSi(9−C13ZrCl2)を投入したことを除いては、前記実施例1と同じようにオレフィン系重合体を製造した。その結果を下記表1に示した。
【0073】
<比較例1>
下記構造式で表示される既存のCGC触媒を利用したことを除いては、前記実施例1と同じようにオレフィン系重合体を製造した。その結果を下記表1に示した。
【化6】

【0074】
<比較例2、3>
下記構造式で表示される既存のメタロセン触媒を利用したことを除いては、それぞれ1−ヘキセン(1−hexene)5ml、10mlを投入し、前記実施例1と同じようにオレフィン系重合体を製造した。その結果を下記表1に示した。
【化7】

【0075】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表示されるメタロセン化合物。
【化1】

前記化学式(1)において、
R1〜R17は互いに同一であるか相違しており、それぞれ独立的に水素、ハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のアルキルアリール基、またはC〜C20のアリールアルキル基であり、
LはC〜C10の直鎖または分枝鎖アルキレン基であり、
Dは−O−、−S−、−N(R)−、または−Si(R)(R’)−であるが、ここで、RおよびR’は互いに同一であるか相違しており、それぞれ独立的に水素、ハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、またはC〜C20のアリール基であり、
Aは水素、ハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のアルキルアリール基、C〜C20のアリールアルキル基、C〜C20のアルコキシ基、C〜C20のアルコキシアルキル基、C〜C20のヘテロシクロアルキル基、またはC〜C20のヘテロアリール基であり、
Mは4族遷移金属であり、
X1およびX2は互いに同一であるか相違しており、それぞれ独立的にハロゲン、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のアリール基、ニトロ基、アミド基、C〜C20のアルキルシリル基、C〜C20のアルコキシ基、またはC〜C20のスルホネート基である。
【請求項2】
前記化学式(1)のR1〜R17はそれぞれ独立的に水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプタル基、オクチル基、またはフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載のメタロセン化合物。
【請求項3】
前記化学式(1)のLは、C〜Cの直鎖または分枝鎖アルキレン基であることを特徴とする、請求項1に記載のメタロセン化合物。
【請求項4】
前記化学式(1)のAは水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、またはテトラヒドロフラニル基であることを特徴とする、請求項1に記載のメタロセン化合物。
【請求項5】
前記化学式(1)は、下記化学式(2)で表示されることを特徴とする、請求項1に記載のメタロセン化合物。
【化2】

【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のメタロセン化合物を含む、触媒組成物。
【請求項7】
前記触媒組成物は、下記化学式(3)、化学式(4)、または化学式(5)で表示される助触媒化合物のうちの1種以上を追加で含むことを特徴とする、請求項6に記載の触媒組成物。
−[Al(R18)−O]−・・・(3)
前記化学式(3)において、
R18は互いに同一であるか相違してもよく、それぞれ独立的にハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素、またはハロゲンに置換された炭素数1〜20の炭化水素であり、
nは2以上の整数であり、

D(R18)・・・(4)
前記化学式(4)において、
R18は前記化学式(3)で定義されたとおりであり、
Dはアルミニウムまたはボロンであり、

[L−H][ZAまたは[L][ZA・・・(5)
前記化学式(5)において、
Lは中性または陽イオン性ルイス酸であり、
Hは水素原子であり、
Zは13族元素であり、
Aは互いに同一であるか相違してもよく、それぞれ独立的に1以上の水素原子価ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素、アルコキシまたはフェノキシに置換または非置換された炭素数6〜20のアリール基、または炭素数1〜20のアルキル基である。
【請求項8】
請求項6に記載の触媒組成物の存在下で製造された、オレフィン系重合体。
【請求項9】
前記オレフィン系重合体は、エチレン/アルファオレフィン重合体として密度が0.85g/cm〜0.92g/cmであり、100℃以上の融点を示す、請求項8に記載の重合体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500331(P2013−500331A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522765(P2012−522765)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004991
【国際公開番号】WO2011/014022
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】