説明

メタンを有用な炭化水素に変化させる方法およびこの方法で用いるための組成物

メタンを有用な炭化水素に変化させる方法を提供する。この提供する方法では、少なくともアルミニウム化合物、例えばハロゲン化アルミニウムなどとアルミニウムアルキルもしくは水素化アルミニウムと2番目の成分、例えば遷移金属のハロゲン化物、遷移金属の水素化物またはゼロ価の金属などから生じさせた触媒組成物をメタンと水素を含有して成る流体と一緒にすることで重質炭化水素を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
メタンは天然ガスかつまたバイオガスの主成分である。天然ガスの世界準備高は絶えず向上している。しかしながら、天然ガスの世界準備高の有意な部分は遠く離れた場所に存在し、そのような場合ではガスパイプラインはしばしば経済的に妥当でない可能性がある。天然ガスはしばしば遠く離れた遠隔地で油と一緒に産出され、そのような場所ではガスの再注入は実行不能である。遠隔地で油と一緒に産出される天然ガスばかりでなく石油精製および石油化学工程で産出されるメタンの多くは燃やされている。メタンは温室ガスとして分類分けされることから、天然ガスおよびメタンを燃やすことは将来禁止または制限され得る可能性がある。このように、かなりの量の天然ガスおよびメタンが使用の目的で入手可能である。
【0002】
そのような天然ガスおよびメタン源を利用するための様々な技術が記述されてきている。例えば、天然ガスを輸送がガスよりも容易な液体に変化させる技術などを利用することができる。メタンを高級炭化水素および芳香族に変化させる様々な技術が記述されている。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ反応は数十年に渡って知られている。それは、蒸気を熱石炭の上に通すことで得た一酸化炭素と水素の混合物(合成ガス)から液状(または気体状)の炭化水素もしくはそれらの酸化誘導体を合成することを伴う。その合成は金属触媒、例えば鉄、コバルトまたはニッケルなどを用いて高温高圧下で実施される。そのフィッシャー・トロプシュ反応そしてその後の水性ガスシフト化学の全体的効率は約15%であると推定され、それは石炭原料を液化する手段を与えるものであるが、現在の理解および製造水準では、メタンが豊富に存在する原料を液体燃料に変化させるには充分ではない。
【0004】
一酸化炭素に水添を受けさせてメタノールを生じさせることは可能である。「気体を液体にする」記述の厳格な定義に基づくと、メタノールは、通常は気体で毒性のある原料を液化させることを目標とした願望を満たすと思われる。しかしながら、いろいろな観点で、そのように酸素を含有する分子は存在するC−O結合の生成によって化学エネルギーを有意なパーセントで既に放棄している。「メタンを液状の炭化水素にする」真の方法は、そのような損失を被らない最終生成物を与える方法であろう。
【0005】
メタンを利用する更に別の方策は、炭化水素分子にハロゲン化を受けさせてハロメタンを生じさせた後にその中間体をいろいろな材料を製造する時に反応させることを伴う。また、そのような手段の効率も全体としてのコストパフォーマンスも商業的に極めて容認されるものでない。そのようなハロゲン化方法もまたC−X結合形成中に貯蔵化学エネルギーの減少がもたらされると言った欠点を有するであろう。加うるに、そのようなハロゲン種はその製品を最終的に使用している間にその全体的経路から満足されるほど捕捉されなければならない(即ち、再利用するか或はある種の無害な安全な形態で捕捉する必要がある)。
【0006】
メタンを液体燃料に変化させることを可能にする「気体を液体にする」方法は概して石油化学産業にとって大きな課題であった。エチレン鎖成長用アルミニウム触媒に関するKarl ZieglerおよびGiulio Nattaの研究(結果として1963年にノーベル化学賞が授与された)、カルボカチオン技術に関するGeorge Olahの研究(その研究によってOlah氏に1994年のノーベル化学賞が授与された)およびイオン性液状媒体中の遷移金属触媒に関するPeter Wasserscheidの
研究が注目される。
【0007】
これまでに記述されかつ利用できる技術が存在するにも拘らず、メタンを有用な炭化水素に変化させるに適した商業的に実行可能な手段の必要性が存在する。
【0008】
本発明
本発明は、メタンをC以上の炭化水素に変化させるに有用な触媒組成物を提供することで上述した必要性を満たすものであり、この触媒組成物は、少なくとも(i)AlH[ここで、Alはアルミニウムであり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、各RはCからCアルキルでありかつ他のいずれかのRと同一もしくは異なってもよく、nおよびmは各々独立して0、1または2でありそしてpは1または2であり、全体で(n+m+p)=3の如くである]および(ii)M[ここで、Mは原子価がvの金属であり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、そしてqおよびrは各々0またはvを包含するvまでのいずれかの整数であり、全体で(q+r)=vの如くである]から生じさせた(またはそれらを一緒にすることで調製した)触媒組成物である。Mの原子価(即ちv)はゼロであってもよい。本発明は、少なくとも2種以上の前記AlH[ここで、AlHは各々他のいずれかのAlHと同一もしくは異なってもよい]および2種以上の前記M[ここで、Mは各々他のいずれかのMと同一もしくは異なってもよい]から生じさせた(またはそれらを一緒にすることで調製した)触媒組成物を包含する。加うるに、本発明は、少なくともAlH[ここで、nまたはmのいずれかがゼロである]およびM[ここで、Mは原子価がvの金属であり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、そしてqおよびrは各々0またはvを包含するvまでのいずれかの整数であり、全体で(q+r)=vの如くである]から生じさせた(またはそれらを一緒にすることで調製した)触媒組成物も包含する。本発明に従う触媒組成物は、また、メタンおよびCからCアルカンをC以上の炭化水素に変化させるにも有用である。
【0009】
本発明は、また、少なくとも(i)Hとメタンを含有して成る流体、(ii)AlH[ここで、Alはアルミニウムであり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、各RはCからCアルキルでありかつ他のいずれかのRと同一もしくは異なってもよく、nおよびmは各々独立して0、1または2でありそしてpは1または2であり、全体で(n+m+p)=3の如くである]および(iii)M[ここで、Mは原子価がvの金属であり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、そしてqおよびrは各々0またはvを包含するvまでのいずれかの整数であり、全体で(q+r)=vの如くである]を一緒にすることでC以上の炭化水素を生じさせることを含んで成る方法も提供する。本発明は、また、少なくとも(i)Hとメタンを含有して成る流体および(ii)2種以上の前記AlH[ここで、AlHは各々他のいずれかのAlHと同一もしくは異なってもよい]および/または2種以上の前記M[ここで、Mは各々他のいずれかのMと同一もしくは異なってもよい]または(ii)AlH[ここで、nまたはmのいずれかがゼロである]のいずれかを一緒にすることでC以上の炭化水素を生じさせることを含んで成る方法も提供する。
【0010】
AlH
適切な化合物AlHには、例えばアルミニウムメチルクロライド(AlMeCl)、アルミニウムメチルブロマイド(AlMeBr)、モノ−クロロアルミニウムメチルハイドライド(AlHMeCl)およびモノ−ブロモアルミニウムメチルハイ
ドライド(AlHMeBr)などが含まれる。他の適切な化合物AlHは、本発明の教示の利点を習得した当業者に良く知られるように、公知であるか或は知られるようになる可能性がある。
【0011】
遷移金属のハロゲン化物および関連化合物M
遷移金属、例えばチタンおよびバナジウムなどを含有する成分とハロゲン原子、例えば塩素、臭素、ヨウ素などを含有する成分を用いて、適切な遷移金属ハロゲン化物および関連化合物Mを生じさせることができる。例えば、臭化チタン(TiBr)が適切な遷移金属ハロゲン化物である。適切な遷移金属ハロゲン化物Mには、例えばTiX(「チタンのハロ形態」)[ここで、qはゼロであり、そして各Xはハロゲン原子(例えば塩素または臭素)でありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよい]などが含まれる。他の適切な遷移金属ハロゲン化物および関連化合物Mは、本発明の教示の利点を習得した当業者に良く知られるように、公知であるか或は知られるようになる可能性がある。
【0012】
遷移金属の水素化物および関連化合物M
遷移金属、例えばチタンおよびバナジウムなどを含有する成分と水素原子を含有する成分を用いて、適切な遷移金属水素化物および関連化合物Mを生じさせることができる。例えば、水素化チタン(TiH)が適切な遷移金属水素化物である。他の適切な遷移金属水素化物および関連化合物Mは、本発明の教示の利点を習得した当業者に良く知られるように、公知であるか或は知られるようになる可能性がある。
【0013】
ゼロ価金属
適切なゼロ価金属には、例えば最外(S以外)殻内に電子を少なくとも1個有するか或はdもしくはfレベル以上の電子を少なくとも1個有する金属のいずれも含まれる。適切なゼロ価金属にはTi、AlおよびZrが含まれる。適切な数多くのゼロ価金属は、本発明の教示の利点を習得した当業者に良く知られるように、公知であるか或は知られるようになる可能性がある。
【0014】
本発明では、金属ハロゲン化物成分を用いることでメタンの変換を本質的に液体の状態で穏やかな操作パラメーター(例えば約200℃の温度および約200気圧以下の圧力)で起こさせることができる。
【0015】
本発明は、メタンの重合を通常は要求される酸化種、例えば一酸化炭素などへの変換を実質的に行うことなく促進させることでメタンを有用な炭化水素に変化させる方法を提供する。本発明に従い、実質的に直接的な触媒作用方法によってメタンを有用な炭化水素に変化させる。
【0016】
メタンに変換を本発明に従う触媒組成物の存在下および/または本発明の方法に従って受けさせることによって、それが副生成物である炭素/コークス/炭に実質的に変化することのない効率良い様式で、メタンが他のメタン(または、この種が以前に反応することで生じた重質生成物)分子と一緒になって炭素−炭素結合を形成し得る反応性種を生じさせることができる。このような活性化は、また、メタンから一酸化炭素を生じさせる酸化(例えばフィッシャー・トロプシュおよび水性ガスシフト反応に見られる如き)を起こさせる必要はなくかつそれが実質的な度合で起こることのないような様式で起こる。本発明の技術の生成物は、高度にメチル化された高度に分枝している炭化水素、例えば高オクタンガソリン燃料原料で必要とされる如き生成物である。
【0017】
本発明を限定するものでないが、本発明に従う触媒組成物および/または本発明に従う方法を用いると下記の化合物がインシトゥで生じ得る:MH・2(AlX)、M
・2(AlHX)、M・2(AlX)およびM・2(AlX);およびまた下記:
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
[ここで、Mは本明細書で定義する如きMであり、そしてXは本明細書で定義する如きXまたはXのいずれかであり得る]。
【0021】
本発明を用いると、充分には利用されておらずかつ今までは修飾を受けさせるのが困難であった炭化水素原料であるメタンに変換を受けさせていろいろな高級炭化水素を生じさせることが可能になる。その生成物である炭化水素は液体燃料として使用可能である。本発明の方法を用いて生じさせる高級炭化水素(化学製品)の多くはガソリンの価値またはディーゼル液体燃料原料の価値を超える価値を有する可能性がある点で前記は制限するものでない。
【0022】
本技術を適用することが可能な製油所が本発明を利用してメタンを通常の原油原料の代わりに用いると実質的な利益になるであろう。加うるに、本技術を遠く離れた小さい独立した作業所(例えばパイプライン供給所から遠く離れた掘削および採油プラットフォームなどに見られる如き)に適用することができると利益が劇的に増加するであろう、と言うのは、そのように遠く離れた場所で生産された天然ガスは典型的に燃やされているからである。
【0023】
本発明の使用をまたいろいろな化学品製造工程における中間体としてか或は最終的化学製品自身として用いられる付加価値のより高い化学原料の生産に適用することも可能である。
【0024】
本発明の方法を用いることに関する別の利点は、炭化水素溜分への共生成物として元素状水素が生じる点にある。メタンに変化するメタノール1モル当たりに1モルのHが遊離してくる。その生じた水素を汚染のない価値の有る燃料として用いることができるであろう。加うるに、それを還元、水添などで水素源を必要とする化学品生産において多様な用途のいずれかで原料または反応体として用いることも可能である。水素はいろいろな産業的活動、例えば肥料の製造、石油の処理、メタノールの合成、金属の焼きなましおよび電子材料の製造などで用いられる。燃料電池技術が出現したことから近い将来には水素が家庭および自動車用途で用いられる度合が大きくなる可能性がある。
【0025】
本明細書のどこかまたは本請求項で反応体および成分を言及する場合、それを化学名または式または他の様式で言及するか否かに拘らずかつその言及が単数であるか或は複数であるかに拘らず、それらが別の物質(例えば別の成分、溶媒など)と接触する前にそれら
が存在するようにそれらを同定すると理解されるべきである。結果として生じる混合物または溶液中でどんな化学変化、変換および/または反応(もしあれば)が起ころうとも問題でない、と言うのは、そのような変化、変換および/または反応は特定の成分を特定の条件下で一緒にする結果として自然に起こる事であるからである。このように、所望の操作を実施する時または所望の組成物を生じさせる時に一緒にすべき材料であるとして成分を同定する。また、本請求項で物質、成分および/または材料を現在時制(「含んで成る」、「である」など)で言及することがあり得るかもしれないが、そのような言及は、本開示および本請求項に従ってそれを他の1種以上の物質、成分および/または材料と最初に接触させるか、ブレンドするか或は混合する直ぐ前の時間にそれが存在していたように当該物質、成分または材料を言及するものである。当業者に良く知られているように、本明細書で用いる如き用語“一緒になる”および“一緒にする”は、当該成分が互いに“一緒になる”か或は“一緒にする”成分を容器の中に入れることを意味する。
【0026】
本発明を1つ以上の好適な態様に関して記述してきたが、以下の請求項に示す本発明の範囲から逸脱しない限り他の修飾を成してもよいと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンをC5以上の炭化水素に変化させるに有用な触媒組成物であって、少なくとも(i)AlH[ここで、Alはアルミニウムであり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、各RはCからCアルキルでありかつ他のいずれかのRと同一もしくは異なってもよく、nおよびmは各々独立して0、1または2でありそしてpは1または2であり、全体で(n+m+p)=3の如くである]および(ii)M[ここで、Mは原子価がvの金属であり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、そしてqおよびrは各々0またはvを包含するvまでのいずれかの整数であり、全体で(q+r)=vの如くである]から生じさせた触媒組成物。
【請求項2】
前記AlHがアルミニウムメチルブロマイドを含んで成る請求項1記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記Mが臭化チタンを含んで成る請求項1記載の触媒組成物。
【請求項4】
からCアルカンをC5以上の炭化水素に変化させるに有用な触媒組成物であって、少なくともAlおよびM[ここで、Alはアルミニウムであり、Mは原子価がvの金属であり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、そしてqおよびrは各々0またはvを包含するvまでのいずれかの整数であり、全体で(q+r)=vの如くである]から生じさせた触媒組成物。
【請求項5】
少なくとも(i)Hとメタンを含有して成る流体、(ii)AlH[ここで、Alはアルミニウムであり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、各RはCからCアルキルでありかつ他のいずれかのRと同一もしくは異なってもよく、nおよびmは各々0、1または2でありそしてpは1または2であり、全体で(n+m+p)=3の如くである]および(iii)M[ここで、Mは原子価がvの金属であり、Hは水素であり、各Xはハロゲンでありかつ他のいずれかのXと同一もしくは異なってもよく、そしてqおよびrは各々0またはvを包含するvまでのいずれかの整数であり、全体で(q+r)=vの如くである]を一緒にすることでC以上の炭化水素を生じさせることを含んで成る方法。

【公表番号】特表2010−504203(P2010−504203A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529313(P2009−529313)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/078489
【国際公開番号】WO2008/036563
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】