説明

メタン発酵処理方法及びメタン発酵処理装置

【課題】メタン発酵槽内に固定された微生物捕捉用担体が目詰まりすることなく、有機性廃棄物を長期にわたって安定してメタン発酵処理することが可能なメタン発酵処理方法及びメタン発酵処理装置を提供する。
【解決手段】メタン発酵槽1への有機性廃棄物の供給経路に、繊維状物をシート状に成形してなる異物捕捉用担体21を配置した夾雑物除去槽2が設けられているメタン発酵処理装置を用い、有機性廃棄物を異物捕捉用担体21に接触させた後、メタン発酵槽1に供給してメタン発酵処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にわたって、有機性廃棄物を安定してメタン発酵処理できるメタン発酵処理方法及びメタン発酵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵処理は、有機性廃棄物を嫌気性下でメタン菌により発酵処理することで、有機性廃棄物をメタンガスに転換するもので、有機性廃棄物をバイオガスと水とに分解して大幅に減量することができ、嫌気性のため曝気動力が不要であり、省エネルギーな処理法である。しかも、副産物として生成するメタンガスをエネルギーとして回収できるメリットがある。
【0003】
メタン発酵処理では、メタン発酵に関わる微生物の密度を上げることで、処理効率が向上する。このため、例えば、下記特許文献1に開示されているように、メタン発酵槽内に、繊維状物をシート状に成形してなる担体を固定配置し、該担体に微生物を付着保持させて発酵処理を行うことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−41929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、担体を固定配置したメタン発酵槽内に、有機性廃棄物を供給してメタン発酵処理を行うと、有機性廃棄物中の夾雑物が担体に付着して、担体が目詰まりすることがあった。特に髪の毛などの繊維状の夾雑物を多く含んでいる有機性廃棄物をメタン発酵処理する場合、繊維状の夾雑物が担体に絡みついて担体が目詰まりし易かった。担体が目詰まりすると、メタン発酵槽内における発酵液の流動が不均一となるので、メタン発酵を担う菌体との接触効率が悪化し、発酵効率が低下するなどの不具合が発生する問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、メタン発酵槽内に固定された微生物捕捉用担体が目詰まりすることなく、長期にわたって安定してメタン発酵処理することが可能なメタン発酵処理方法及びメタン発酵処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するにあたり、本発明のメタン発酵処理方法は、有機性廃棄物を、繊維状物をシート状に成形してなる微生物捕捉用担体が固定配置されたメタン発酵槽内に供給し、嫌気性微生物によりメタン発酵させるメタン発酵処理方法において、
前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、繊維状物をシート状に成形してなる異物捕捉用担体を配置して、前記有機性廃棄物を前記異物捕捉用担体に接触させた後、前記メタン発酵槽に供給することを特徴とする。
【0008】
本発明のメタン発酵処理方法によれば、有機性廃棄物を異物捕捉用担体に接触させた後、メタン発酵槽に供給することにより、有機性廃棄物中の夾雑物が異物捕捉用担体に捕捉される。これにより、夾雑物の少ない有機性廃棄物をメタン発酵槽に供給できる。その結果、メタン発酵槽内の微生物捕捉用担体が目詰まりし難く、長期にわたって安定してメタン発酵処理し続けることができる。
【0009】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記有機性廃棄物を、前記異物捕捉用担体のシート面に沿って流動させることにより、前記異物捕捉用担体に接触させることが好ましい。この態様によれば、有機性廃棄物の圧損を抑制しつつ、有機性廃棄物と異物捕捉用担体との接触効率を高めて、有機性廃棄物中の夾雑物を効率よく除去できる。
【0010】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記異物捕捉用担体として、少なくともその断面形状が、前記微生物捕捉用担体と同じ形状のものを用いることが好ましい。この態様によれば、少なくともその断面形状が、前記微生物捕捉用担体と同じ形状のものを用いることにより、微生物捕捉用担体に付着する可能性のある夾雑物を効率よく捕捉できるので、微生物捕捉用担体への夾雑物の付着を効果的に防止できる。
【0011】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記異物捕捉用担体として、全体として柱状をなし、軸方向に対して垂直な断面が、放射状に伸びる羽部を有する形状のものを用いることが好ましい。この態様によれば、異物捕捉用担体の表面積が大きいので、夾雑物を効率よく捕捉できる。
【0012】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記異物捕捉用担体として、ポリアミド繊維をシート状に成形したものを用いることが好ましい。ポリアミド繊維は、耐薬品性、耐アルカリ性に優れるので、異物捕捉用担体に付着した夾雑物を除去する際にアルカリ薬品などを使用しても、異物捕捉用担体が劣化しにくい。このため、異物捕捉用担体に付着した夾雑物をより速やかに除去することができ、また、異物捕捉用担体を繰り返し使用できる。
【0013】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記異物捕捉用担体の空隙率が99〜99.7%であることが好ましい。この態様によれば、異物捕捉用担体にて有機性廃棄物中の夾雑物を効率よく捕捉できる。
【0014】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、前記異物捕捉用担体を配置した流路を並列して設け、いずれかの流路の前記異物捕捉用担体が目詰まりしたときには、他方の流路を利用して有機性廃棄物を供給しつつ、前記目詰まりした異物捕捉用担体の交換または洗浄を行うことが好ましい。この態様によれば、一方の流路側の異物捕捉用担体が目詰まりした場合であっても、他方の流路を利用して有機性廃棄物中の夾雑物を除去しつつ、メタン発酵槽に夾雑物が除去された有機性廃棄物を供給できるので、運転を継続させて行うことができる。
【0015】
また、本発明のメタン発酵処理装置は、繊維状物をシート状に成形してなる微生物捕捉用担体が固定配置され、有機性廃棄物を槽内の嫌気性微生物によりメタン発酵させるメタン発酵槽を備えたメタン発酵処理装置において、
前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、繊維状物をシート状に成形してなる異物捕捉用担体を配置した夾雑物除去槽が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明のメタン発酵処理装置によれば、異物捕捉用担体により夾雑物が捕捉されて低減された有機性廃棄物をメタン発酵槽に供給できる。このため、メタン発酵槽内の微生物捕捉用担体が目詰まりし難く、長期にわたって安定してメタン発酵処理できる。
【0017】
本発明のメタン発酵処理装置の前記異物捕捉用担体は、前記夾雑物除去槽内において、そのシート面が、前記有機性廃棄物の流れ方向とほぼ平行になるように配置されていることが好ましい。この態様によれば、有機性廃棄物を、異物捕捉用担体のシート面に沿って流動させることができるので、有機性廃棄物の圧損を抑制しつつ、有機性廃棄物と異物捕捉用担体との接触効率を高めることが出来る。その結果、有機性廃棄物中の夾雑物を効率よく除去できる。
【0018】
本発明のメタン発酵処理装置の前記異物捕捉用担体は、少なくともその断面形状が、前記微生物捕捉用担体と同じ形状をなすことが好ましい。この態様によれば、少なくともその断面形状が、前記微生物捕捉用担体と同じ形状のものを用いることにより、微生物捕捉用担体に付着する可能性のある夾雑物をより効率よく捕捉できるので、微生物捕捉用担体への夾雑物の付着を効果的に防止できる。
【0019】
本発明のメタン発酵処理装置の前記異物捕捉用担体は、全体として柱状をなし、軸方向に対して垂直な断面が、放射状に伸びる羽部を有する形状をなすことが好ましい。この態様によれば、異物捕捉用担体の表面積が大きいので、夾雑物を効率よく捕捉できる。
【0020】
本発明のメタン発酵処理装置の前記異物捕捉用担体は、ポリアミド繊維をシート状に成形したものであることが好ましい。ポリアミド繊維は、耐薬品性、耐アルカリ性に優れるので、異物捕捉用担体に付着した夾雑物を除去する際にアルカリ薬品などを使用しても、異物捕捉用担体が劣化しにくい。このため、異物捕捉用担体に付着した夾雑物をアルカリ薬品などで溶解させて速やかに除去でき、また、異物捕捉用担体を繰り返し使用できる。
【0021】
本発明のメタン発酵処理装置は、前記異物捕捉用担体の空隙率が99〜99.7%であることが好ましい。この態様によれば、異物捕捉用担体にて有機性廃棄物中の夾雑物を効率よく捕捉できる。
【0022】
本発明のメタン発酵処理装置は、前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、前記夾雑物除去槽を設けた流路が並列して設けられ、いずれかの流路の前記夾雑物除去槽の異物捕捉用担体が目詰まりしたときには、他方の流路の前記夾雑物除去槽を通して有機性廃棄物を供給しつつ、前記目詰まりした異物捕捉用担体の交換または洗浄を行うことができるように構成されていることが好ましい。この態様によれば、一方の流路側の異物捕捉用担体が目詰まりした場合であっても、他方の流路を利用して有機性廃棄物中の夾雑物を除去しつつ、メタン発酵槽に夾雑物が除去された有機性廃棄物を供給できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、有機性廃棄物を異物捕捉用担体に接触させた後、メタン発酵槽に供給することにより、有機性廃棄物中の夾雑物が異物捕捉用担体に捕捉されて、夾雑物の少ない有機性廃棄物をメタン発酵槽に供給できる。このため、メタン発酵槽内の微生物捕捉用担体が目詰まりし難く、長期にわたって安定してメタン発酵処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のメタン発酵装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】同メタン発酵装置に用いるメタン発酵槽の概略構成図である。
【図3】微生物捕捉用担体の一実施形態である。
【図4】同メタン発酵装置に用いる夾雑物除去槽の概略構成図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図5】同メタン発酵装置に用いる夾雑物除去槽の他の概略構成図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図6】異物捕捉用担体の一実施形態である。
【図7】制御装置で行われる制御の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜7を参照して本発明のメタン発酵処理装置を説明する。
【0026】
図1に示すように、このメタン発酵処理装置は、メタン発酵槽1と、その前段に配置された、夾雑物除去槽2a,2bとで主に構成されている。
【0027】
すなわち、有機性廃棄物の供給源から伸びた配管L1は分岐して、第1開閉弁V1、第1夾雑物除去槽2a、第1流速計3、第2開閉弁V2が配置された配管L2と、第3開閉弁V3、第2夾雑物除去槽2b、第2流速計4、第4開閉弁V4が配置された配管L3とに連結している。また、配管L2、配管L3の先端は、メタン発酵槽1に接続する配管L4に連結している。
【0028】
メタン発酵槽1は、図2に示すように、筒状の槽のほぼ中央に、円筒形状のドラフトチューブ11が、その両端開口部が上下に向くように配置されている。このドラフトチューブ11の内側には、配管L4と、メタン発酵槽1の上部から伸び、バイオガス循環ポンプP3が介装されたバイオガス循環配管L5が配置されている。また、ドラフトチューブ11の外周には、繊維状物をシート状に成形した微生物捕捉用担体12が、その端部を支持体13a,13bで固定されて複数本配置されている。また、メタン発酵槽1の上部には、バイオガス取出し配管L6が接続している。また、メタン発酵槽1の上部には、オーバフローした発酵液を排出する発酵廃液引き抜き配管L7が接続している。
【0029】
微生物捕捉用担体12を構成する繊維材料として、特に限定はなく、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ビニロン繊維、塩化ビニリデン繊維、炭素繊維などが好ましく挙げられる。
【0030】
微生物捕捉用担体12の形状は、表面積を大きくできる形状であれば特に限定はない。例えば、図3に示すように、全体として柱状をなし、軸方向に対して垂直な断面が、放射状に伸びる羽部(この実施形態では10本)を有する形状をなすものが好ましく挙げられる。表面積を大きくすることにより、微生物の付着効率、有機性廃棄物との接触効率が向上するので、より効果的にメタン発酵処理し易くなる。
【0031】
微生物捕捉用担体12の空隙率は99〜99.7%が好ましく、99.3〜99.5%がより好ましい。気孔率が99%未満であると、微生物の付着効率が悪くなる傾向にあり、99.7%を超えると、強度的に劣り、破損し易くなる傾向がある。
【0032】
夾雑物除去槽2は、図4に示すように、筒状の槽内に、繊維状物をシート状に成形した異物捕捉用担体21が、その上下端部を支持体22a,22bで固定されて配置されている。この異物捕捉用担体21のシート面21aは、有機性廃棄物の流れ方向とほぼ平行になるように配置されている。また、夾雑物除去槽2の上部には、アルカリ薬品などの洗浄液が貯留された洗浄液タンクから伸びた洗浄液供給ポンプP1a(P1b)(図1参照)が介装された配管L8が接続している。また、夾雑物除去槽2の下部からは洗浄液排出ポンプP2a(P2b)(図1参照)が介装された配管L9が伸びて、廃液タンクなどに接続している。
【0033】
なお、この実施形態では、夾雑物除去槽2に異物捕捉用担体21が1本配置されているが、有機性廃棄物の流通を妨げない範囲で、複数本並列して配置してもよい。
【0034】
また、図5に示すように、異物捕捉用担体21を、連結部23を介し、直列して複数個(図中では4個)配置してもよい。この場合、それぞれの異物捕捉用担体21は、シート面21aの位相が所定角度ずつズレながら配置されていることが好ましい。直列に配置されたそれぞれの異物捕捉用担体21は、有機性廃棄物が夾雑物除去槽2を通過する際に、それぞれの端面にあたって、シート面21aに効果的に接触するので、より効率よく異物捕捉用担体21に夾雑物を捕捉させることができる。
【0035】
異物捕捉用担体21を構成する繊維材料として、特に限定はなく、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ビニロン繊維、塩化ビニリデン繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維などが挙げられる。なかでも、耐アルカリ性、耐薬品性に優れるという理由から、ポリアミド繊維が好ましく用いられる。
【0036】
異物捕捉用担体21の形状は、特に限定されないが、圧損を抑制しつつ、表面積を大きくできる形状が好ましい。例えば、図6に示すように、全体として柱状をなし、軸方向に対して垂直な断面が、放射状に伸びる羽部(この実施形態では10本)を有する形状をなすものが好ましく挙げられる。表面積を大きくすることにより、有機性廃棄物との接触効率が向上するので、より効果的に夾雑物を除去できる。
【0037】
本発明において、異物捕捉用担体21としては、少なくともその断面形状が、メタン発酵槽1内に配置されている微生物捕捉用担体12と同じ形状をなすものを用いることが好ましい。具体的には、微生物捕捉用担体12として、図3に示す形状をなすものを用いた場合、異物捕捉用担体21は、図6に示す形状をなすものを用いることが好ましい。異物捕捉用担体21として、少なくともその断面形状が、メタン発酵槽1内に配置されている微生物捕捉用担体12と同じ形状をなすものを用いることにより、有機性廃棄物に含まれる夾雑物であって、微生物捕捉用担体12に付着する可能性のある夾雑物を、異物捕捉用担体21に捕捉させ易くなるので、微生物捕捉用担体12の閉塞をより効果的に防止できる。
【0038】
異物捕捉用担体21の空隙率は99〜99.7%が好ましく、99.3〜99.5%がより好ましい。気孔率が99%未満であると、有機性廃棄物中の夾雑物の除去効率が損なわれることがあり、99.7%を超えると、強度的に劣り、破損し易くなる傾向がある。
【0039】
制御装置100は、開閉弁V1〜V4の開閉、洗浄液供給ポンプP1の作動、洗浄液排出ポンプP2の作動を、後述する図7に示すフローチャートに従って制御するようになっている。
【0040】
次に、このメタン発酵装置を用いた場合を例にして、本発明のメタン発酵処理方法について説明する。
【0041】
必要により前処理された有機性廃棄物が、配管L1から供給され、配管L2或いは配管L3を経由して、配管L4からメタン発酵槽1内に供給される。例えば、塵芥、生ごみ、家畜糞尿などのような有機性廃棄物の場合は、上水と混合し、粉砕・破砕などの前処理を行うことが好ましい。
【0042】
メタン発酵槽1では、槽内に供給された有機性廃棄物を、微生物捕捉用担体12に担持された嫌気性微生物によりメタン発酵する。そして、有機性廃棄物をメタン発酵した際に発生したバイオガスは、バイオガス取出し配管L6から槽外に取り出され、図示しないバイオガスホルダ等に貯留される。また、発生したバイオガスの一部は、連続的又は間欠的にバイオガス循環ポンプP3を作動して配管L5からドラフトチューブ11内に吹き込まれる。バイオガスがドラフトチューブ11内に吹き込まれると、ドラフトチューブ11内では、バイオガスが槽内の発酵液を押しのけて上方へと流れるとともに、発酵液が上向きに持上げられて、いわゆるリフトオフ上昇流が発生し、槽内で発酵液の循環が行われる。また、発酵液はバイオガスの吹き込みによりバブリングされる。なお、槽内の発酵液は、供給された有機性廃棄物と同量の発酵液が、発酵廃液引き抜き配管L7から引き抜かれ、槽内には常時一定量の発酵液が満ちている。
【0043】
ところで、メタン発酵の処理対象物である有機性廃棄物には、髪の毛などの繊維状の夾雑物が含まれていることがある。このような夾雑物が含まれている有機性廃棄物をメタン発酵処理し続けると、夾雑物が微生物捕捉用担体12に付着していき、最終的には、微生物捕捉用担体12が目詰まりして発酵液の流通が妨げられ、メタン発酵処理効率が低下する。
【0044】
本発明では、有機性廃棄物を異物捕捉用担体21に接触させた後、メタン発酵槽1に供給する。すなわち、制御装置100に起動信号が入力されると、図7に示すように、開閉弁V1〜V4に対し開弁信号をそれぞれ出力する(ステップS1)。これにより、有機性廃棄物は、第1夾雑物除去槽2aを通過する経路と、第2夾雑物除去槽2bを通過する経路の2系統から、それぞれメタン発酵槽1に供給される。この状態でメタン発酵処理を継続すると、有機性廃棄物中の夾雑物は、異物捕捉用担体21に捕捉されるので、メタン発酵槽1には、夾雑物の少ない有機性廃棄物が供給される。
【0045】
しかしながら、各夾雑物除去槽2内の異物捕捉用担体21には、夾雑物が徐々に付着していき、目詰まりが生じる。そこで、まず、第1流速計3の計測値が設定値未満であるかどうか判断する(ステップS2)。
【0046】
第1流速計3の計測値が設定値未満であった場合は、第1夾雑物除去槽2a内の異物捕捉用担体21は目詰まりが生じていると判断し、開閉弁V1,V2に対し閉弁信号を出力する(ステップS3)。これにより、有機性廃棄物は、第2夾雑物除去槽2bのみを通過してメタン発酵槽1に供給される。そして、洗浄液供給ポンプP1aに作動信号を出力して第1夾雑物除去槽2a内に洗浄液を供給する(ステップS4)。第1夾雑物除去槽2aに洗浄液を所定時間供給した後、洗浄液排出ポンプP2aを作動して(ステップS5)、第1夾雑物除去槽2a内に滞留している洗浄液を排出する。これにより、第1夾雑物除去槽2a内の異物捕捉用担体21に付着していた夾雑物が除去され、異物捕捉用担体21の目詰まりが解消される。この洗浄液は複数種類でも良く、例えば洗浄液に水及びアルカリ液を用いる場合は、洗浄液の供給・排出をそれぞれの洗浄液毎に繰り返す。そして、開閉弁V1,V2に対し開弁信号を出力し(ステップS6)、ステップS2に戻る。
【0047】
一方、第1流速計3の計測値が設定値以上の場合であれば、第1夾雑物除去槽2a内の異物捕捉用担体21は目詰まりが生じていないと判断し、第2流速計4の計測値が設定値未満であるかどうかの判断が行われる(ステップS7)。
【0048】
第2流速計4の計測値が設定値以上の場合であれば、第2夾雑物除去槽2b内の異物捕捉用担体21も目詰まりしていないと判断し、ステップS2に戻る。
【0049】
一方、第2流速計4の計測値が設定値未満の場合は、開閉弁V3,V4に対し閉弁信号を出力し(ステップS8)、有機性廃棄物を、第1夾雑物除去槽2aのみを通過させてメタン発酵槽1に供給させる。そして、洗浄液供給ポンプP1bに作動信号を出力して第2夾雑物除去槽2b内に洗浄液を供給し(ステップS9)、洗浄液を所定時間供給した後、洗浄液排出ポンプP2bを作動して(ステップS10)、第2夾雑物除去槽2b内に滞留している洗浄液を排出した後、開閉弁V3,V4に対し開弁信号を出力する(ステップS11)。そして、停止信号が入力されたか否かを判断し(ステップS12)、停止信号が入力されていなければ、ステップS2に戻る。このような制御を、運転停止信号が入力されるまで継続する。そして、ステップS12にて、停止信号が入力されたら、開閉弁V1〜V4を閉じ(ステップS13)、処理を終了する。
【0050】
このように、本発明によれば、有機性廃棄物を、第1夾雑物除去槽2a又は第2夾雑物除去槽2bに供給し、槽内に配置された異物捕捉用担体21に接触させた後、メタン発酵槽に供給することにより、有機性廃棄物中の夾雑物が異物捕捉用担体に捕捉されて、メタン発酵槽1には、夾雑物の極めて少ない有機性廃棄物を供給できる。その結果、メタン発酵槽内の微生物捕捉用担体13は目詰まりし難くなり、長期にわたって安定してメタン発酵処理し続けることができる。また、夾雑物除去槽を設けた流路を並列して設けることにより、異物捕捉用担体21が目詰まりしたら、一方の夾雑物除去槽を通して有機性廃棄物を供給しつつ、他方の夾雑物除去槽の目詰まりした異物捕捉用担体21の洗浄を行うことができるので、有機性廃棄物の供給を停止することなく、異物捕捉用担体21の洗浄を行うことができる。更には、目詰まりが生じた異物捕捉用担体21に対し、洗浄液を導入して夾雑物を除去して繰り返し使用するので経済的である。
【0051】
なお、この実施形態では、異物捕捉用担体21が目詰まりしたら、洗浄液を導入して洗浄するようにしたが、目詰まりが生じた異物捕捉用担体21を交換するようにしてもよい。また、開閉弁V1〜V4の開閉、洗浄液供給ポンプP1の作動、洗浄液排出ポンプP2の作動を、それぞれタイマーで管理して、定期的に異物捕捉用担体21の洗浄を行うように制御してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:メタン発酵槽
2、2’、2a、2b:夾雑物除去槽
3,4:流速計
11:ドラフトチューブ
12:微生物捕捉用担体
13a、13b:支持体
21:異物捕捉用担体
22a、22b:支持体
23:連結部
100:制御装置
L1〜L9:配管
P1a、P1b:洗浄液供給ポンプ
P2a、P2b:洗浄液排出ポンプ
P3:バイオガス循環ポンプ
V1〜V4:開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を、繊維状物をシート状に成形してなる微生物捕捉用担体が固定配置されたメタン発酵槽内に供給し、嫌気性微生物によりメタン発酵させるメタン発酵処理方法において、
前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、繊維状物をシート状に成形してなる異物捕捉用担体を配置して、前記有機性廃棄物を前記異物捕捉用担体に接触させた後、前記メタン発酵槽に供給することを特徴とするメタン発酵処理方法。
【請求項2】
前記有機性廃棄物を、前記異物捕捉用担体のシート面に沿って流動させることにより、前記異物捕捉用担体に接触させる、請求項1記載のメタン発酵処理方法。
【請求項3】
前記異物捕捉用担体として、少なくともその断面形状が、前記微生物捕捉用担体と同じ形状のものを用いる、請求項1又は2に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項4】
前記異物捕捉用担体として、全体として柱状をなし、軸方向に対して垂直な断面が、放射状に伸びる羽部を有する形状のものを用いる、請求項1〜3のいずれか1つに記載のメタン発酵処理方法。
【請求項5】
前記異物捕捉用担体として、ポリアミド繊維をシート状に成形したものを用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項6】
前記異物捕捉用担体の空隙率が99〜99.7%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項7】
前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、前記異物捕捉用担体を配置した流路を並列して設け、いずれかの流路の前記異物捕捉用担体が目詰まりしたときには、他方の流路を利用して有機性廃棄物を供給しつつ、前記目詰まりした異物捕捉用担体の交換又は洗浄を行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項8】
繊維状物をシート状に成形してなる微生物捕捉用担体が固定配置され、有機性廃棄物を槽内の嫌気性微生物によりメタン発酵させるメタン発酵槽を備えたメタン発酵処理装置において、
前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、繊維状物をシート状に成形してなる異物捕捉用担体を配置した夾雑物除去槽が設けられていることを特徴とするメタン発酵処理装置。
【請求項9】
前記異物捕捉用担体は、前記夾雑物除去槽内において、そのシート面が、前記有機性廃棄物の流れ方向とほぼ平行になるように配置されている請求項8記載のメタン発酵処理装置。
【請求項10】
前記異物捕捉用担体は、少なくともその断面形状が、前記微生物捕捉用担体と同じ形状をなす、請求項8又は9記載のメタン発酵処理装置。
【請求項11】
前記異物捕捉用担体は、全体として柱状をなし、軸方向に対して垂直な断面が、放射状に伸びる羽部を有する形状をなす、請求項8〜10のいずれか1つに記載のメタン発酵処理装置。
【請求項12】
前記異物捕捉用担体は、ポリアミド繊維をシート状に成形したものである、請求項8〜11のいずれか1項に記載のメタン発酵処理装置。
【請求項13】
前記異物捕捉用担体の空隙率が99〜99.7%である、請求項8〜12のいずれか1項に記載のメタン発酵処理装置。
【請求項14】
前記メタン発酵槽への前記有機性廃棄物の供給経路に、前記夾雑物除去槽を設けた流路が並列して設けられ、いずれかの流路の前記夾雑物除去槽の異物捕捉用担体が目詰まりしたときには、他方の流路の前記夾雑物除去槽を通して有機性廃棄物を供給しつつ、前記目詰まりした異物捕捉用担体の交換又は洗浄を行うことができるように構成されている、請求項8〜13のいずれか1項に記載のメタン発酵処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−227911(P2010−227911A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81432(P2009−81432)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】