説明

メタン発酵処理方法

【課題】メタン発酵槽内の発酵状態を常時最適な状態に制御、維持することができるメタン発酵処理方法を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物をメタン発酵槽内に投入し、嫌気性微生物によりメタン発酵させるメタン発酵処理方法において、前記メタン発酵槽内の発酵液の一部を取り出して、該発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成を測定し、該組成に基づいてメタン発酵処理条件を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物をメタン発酵によって処理するメタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵処理は、有機性廃棄物を微生物により、バイオガスと水などに分解する処理方法であって、有機性廃棄物を大幅に減量することができると共に、副産物として生成するメタンガスをエネルギーとして回収できるメリットがある。また、嫌気性のため曝気動力が不要であるため省エネルギーな処理法である。
【0003】
上記のメタン発酵においては、効率よく有機性廃棄物を分解してメタンガスを取り出す必要があるため、メタン発酵槽内の発酵状態を最適に制御することが重要である。そこで、従来より、メタン発酵槽内の発酵液のpH、有機酸濃度、バイオガス発生量などを監視項目として常時監視し、最適な発酵状態を維持できるように有機性廃棄物の供給量などを調整してメタン発酵処理を行っている
また、メタン発酵槽内の菌数に着目し、これによって直接、メタン発酵槽の発酵状態を監視して発酵条件を制御する方法も知られている。
【0004】
菌数の測定方法としては、微生物の蛍光像を利用した蛍光顕微鏡観察法、生細胞内にて活性を保つエステラーゼ活性を指標にしたCFDA全菌数測定方法(例えば、下記特許文献1)、古細菌であるメタン生成菌の自家蛍光を指標にしたF420蛍光測定法(例えば、下記特許文献2)などが知られている。
【特許文献1】特開2004−8078号公報
【特許文献2】特開平8−154662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メタン発酵槽内の菌数を測定することで、メタン発酵反応プロセスにおけるメタン生成段階と、メタン生成段階を含む全生成プロセスについて微生物群の概略を知ることができる。しかしながら、これまでの方法では、メタン発酵プロセスの各反応段階を担う微生物群の状態の詳細までは把握することはできず、メタン発酵の状態が不安定になった場合、その不安定要因がどのような微生物的な変化に由来するかを特定できなかった。
【0006】
一方、メタン発酵に関わる微生物群の状態を把握する方法として、廃水処理分野にて導入が検討されている分子生物学的な手法であるPCR法、FISH法、RFLP法などの微生物のDNA、RNAなどの核酸の配列情報を指標にした微生物群集構造の分析手法が知られているが、これらの分析方法は、非常に煩雑であることから、連続してモニタリングすることは困難であった。このため、リアルタイムでの制御には使用できなかった。更には、測定結果の定量性は、信頼性に欠けるものであった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、メタン発酵槽内の発酵状態を常時最適な状態に制御、維持することができるメタン発酵処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々の検討の結果、微生物中のイソプレノイドキノンの分子種組成は、微生物の分類群(属、種)に対応して異なっており、また、メタン発酵などの嫌気性処理の場合、活性汚泥法などの好気的処理と違い、安定運転している場合には優占的に存在するイソプレノイドキノンの分子種は特に存在せず、その分子種組成はほとんど変動しないことに着目し、発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成からメタン発酵槽内の微生物の質的・量的変化が推定できることを見出して、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明のメタン発酵処理方法は、有機性廃棄物をメタン発酵槽内に投入し、嫌気性微生物によりメタン発酵させるメタン発酵処理方法において、前記メタン発酵槽内の発酵液の一部を取り出して、該発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成を測定し、該組成に基づいてメタン発酵処理条件を決定することを特徴とする。
【0010】
本発明のメタン発酵処理方法によれば、イソプレノイドキノンをバイオマーカとして用い、イソプレノイドキノンの分子種組成に基づいてメタン発酵処理条件を決定するので、微生物群集構造の変化に対応した発酵条件を決定でき、メタン発酵状態を常時最適な状態に維持することができる。ここで、イソプレノイドキノンとは、微生物の電子伝達鎖に存在し、水素キャリアーとして機能する補酵素であって、ユビキノンとメナキノンに区分される。そして、その骨格型およびイソプレン側鎖の長さにより構造が異なり、ユビキノンUQ−n(Hx)、メナキノンMK−n(Hx)が存在する(n=イソプレン側鎖数、x=水素飽和度)。
【0011】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記発酵液の下式(1)で算出した非類似度が所定値を超えたら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整する、及び/又は、前記メタン発酵槽の発酵液のpHを調整することが好ましい。
非類似度=0.5×Σ|fki−fkj| ・・・(1)
(式中fkiは、発酵液iのイソプレノイドキノンの分子種kの存在比であり、fkiは、発酵液jのイソプレノイドキノンの分子種kの存在比である)
【0012】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記発酵液中のユビキノンUQ−9の存在比が所定値を下回ったら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整する、及び/又は、前記メタン発酵槽の発酵液のpHを調整することが好ましい。
【0013】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記発酵液中のメナキノンMK−7の存在比が所定値を超えたら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整する、及び/又は、前記メタン発酵槽の発酵液のpHを調整することが好ましい。
【0014】
本発明のメタン発酵処理方法は、前記発酵液中のメナキノン分子種の総量(MKtotal)とユビキノン分子種の総量(UQtotal)との比率((MKtotal)/(UQtotal))が所定値を下回ったら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整することが好ましい。
【0015】
メタン発酵状態に異常が生じると、特定のイソプレノイドキノンの分子種の存在割合が大きく変動するので、上記各態様のようにメタン発酵処理することで、常時最適な発酵状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成に基づいてメタン発酵処理条件を決定するので、微生物群集構造の変化に対応した最適な発酵条件を決定でき、メタン発酵状態を常時良好な状態に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について図面を用いて更に詳細に説明する。図1には、発酵液中のイソプレノイドキノンの分子種組成の測定方法の概略工程図が示されている。図2には、本発明のメタン発酵処理方法に用いることができるメタン発酵処理装置の概略構成図が示されている。
【0018】
まず、発酵液中のイソプレノイドキノンの分子種組成の測定方法について説明する。本発明において、発酵液中のイソプレノイドキノンの分子種組成は、メタン発酵槽内から取出した発酵液を前処理する前処理工程S1と、前処理工程S1後の発酵液から水溶性成分を除去する抽出工程S2と、抽出工程S2後の発酵液からメナキノンとユビキノンとに分画する粗分画工程S3と、分画したメナキノンとユビキノンを定量・定性する分析工程S4と、から構成されている。なお、粗分画工程S3は省略することもできる。
【0019】
以下、上記各工程について説明する。
【0020】
(前処理工程)
まず、測定試料となる発酵液をメタン発酵槽内から取出し、遠心分離を行って、上澄液を取り除く。そして、上澄液を取り除いた試料を冷凍し、完全に冷凍した後、真空凍結乾燥処理を行う。
【0021】
(抽出工程)
抽出工程S2では、前処理後の試料中に含まれる菌体からイソプレノイドキノンを抽出する。抽出方法としては、溶媒抽出法、超臨界流体を用いた抽出方法等が挙げられる。超臨界流体を用いた抽出方法は、比較的短時間でイソプレノイドキノンを抽出することができるので特に好ましい。超臨界流体としては、超臨界二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0022】
(粗分画工程)
粗分画工程S3では、抽出工程S2後の試料をユビキノンとメナキノンとに粗分画する。微生物中のイソプレノイドキノンは、ユビキノンとメナキノンに区分され、その骨格型およびイソプレン側鎖の長さにより構造が異なり、ユビキノンUQ−n(Hx)、メナキノンMK−n(Hx)と表される(n=イソプレン側鎖数、x=水素飽和度)。
ユビキノンとメナキノンとを粗分画する方法としては、例えば、固相抽出カートリッジに抽出工程後の試料通し、固相抽出カートリッジに通液する溶媒の濃度や種類を変えて、メナキノンとユビキノンとを粗分画する方法が一例として挙げられる。具体的な一例としては、抽出処理後の試料を固相抽出カートリッジ(商品名「Sep‐Pak Plus Silica」 Watesr社製)に通し、まず2%ジエチルエーテル・ヘキサン溶液に通すことでメナキノンを溶出分離させ、次に、10%ジエチレンエーテル・ヘキサン溶液を通して、ユビキノンを溶出させて、メナキノンとユビキノンとを粗画分する方法が挙げられる。
【0023】
(分析工程)
分析工程S4では、イソプレノイドキノンの分子種組成を定性・定量解析して分析する。定性・定量解析方法としては、例えば、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)などの液体クロマトグラフィーを用い、標準物質の保持時間とピーク面積を基準にしてイソプレノイドキノンの分子種組成を分析する方法が一例として挙げられる。なお、液体クロマトグラフィーとして、「ULPC」(商品名 Waters社製)を用いて分析を行う場合は、粗分画工程S3を省略することもできる。
【0024】
以上の方法により、発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成を測定することができる。イソプレノイドキノンの分子種組成の測定に要する時間は、およそ、15〜45分程度であり、また、特に複雑な操作は不要であるので、簡便で、短時間に測定を行なうことができる。
【0025】
次に、上記のイソプレノイドキノンの分子種組成の測定方法を用いた、本発明のメタン発酵処理方法について説明する。
【0026】
図2において、有機性廃棄物1は、粉砕機2で粗砕してペースト状にされ、スラリー調整槽3に投入される。スラリー調整槽3において、ペースト化された有機性廃棄物は、希釈水により適当な固形物濃度に調整されてスラリー化され、スラリー投入ポンプ4によりメタン発酵槽7に送られる。
【0027】
メタン発酵槽7では、槽内に供給された有機性廃棄物が攪拌器8で攪拌され、槽内に存在する嫌気性微生物によって分解され、発酵により生成したバイオガスは、ガス量計10を介してガスホルダー11に回収され、エネルギー源として利用される。そして、メタン発酵槽7内で発酵処理された有機性廃棄物の消化液は、廃液ポンプ9により、メタン発酵槽7の底部に設けられた消化液排出口から排出され、必要に応じて更に活性汚泥処理等の後処理が行なわれる。
【0028】
メタン発酵槽内7の発酵液のサンプルの採集は、メタン発酵槽7に設けられたサンプリング口12から定期的に採水してサンプリングする。そして、サンプリングした発酵液を上記方法によってイソプレノイドキノンの分子種組成を測定し、測定結果を制御装置15に入力する。
【0029】
ところで、メタン発酵などの嫌気性処理の場合、活性汚泥法などの好気的処理と違い、安定運転している場合には優占的に存在するイソプレノイドキノンの分子種は特に存在せず、その分子種組成はほとんど変動しない。しかしながら、発酵状態に異常が生じると、特定の分子種の存在割合が大きく変動する。
【0030】
本発明者らの研究によれば、発酵状態が悪化すると、ユビキノンUQ−9の存在比が増加する傾向にあった。また、メナキノン分子種の総量(MKtotal)とユビキノン分子種の総量(UQtotal)との比率(MKtotal)/(UQtotal)が減少する傾向にあった。
【0031】
したがって、ユビキノンUQ−9の存在比が増加する傾向にあったり、(MKtotal)/(UQtotal)の比率が減少する傾向にあったら、発酵状態は悪化の傾向にあると推測される。
【0032】
また、発酵状態に異常が生じると、特定のイソプレノイドキノンの分子種の存在割合が大きく変動するので、イソプレノイドキノンの分子種組成の変化を客観的に定量化することでも発酵状態を推測できる。イソプレノイドキノンの分子種組成変化の定量化を客観的に示す指標としては、下式(1)で算出した非類似度がある。非類似度が増加すると、それぞれのサンプリングした発酵液中の微生物群の間に生態的見地から有意な微生物群集構造の違いが起こり、発酵状態が悪化している推測される。
【0033】
非類似度=0.5×Σ|fki−fkj| ・・・(1)
(式中fkiは、発酵液iのイソプレノイドキノンの分子種kの存在比であり、fkiは、発酵液jのイソプレノイドキノンの分子種kの存在比である)
【0034】
また、メタン発酵が不安定になる場合、発酵液の水質に大きな変化が表れる。水質変化としては、特に有機酸濃度には注意する必要があり、酢酸濃度とプロピオン酸濃度の大きな増加は、メタン生成菌の生育に影響を及ぼし、バイオガスの発生量の低減をもたらす。有機酸濃度の変化は、その有機酸を生成する微生物の代謝経路の変化による結果であるため、この代謝経路の微生物の持つイソプレノイドキノンの分子種が変化する。
【0035】
本発明者らの研究によれば、有機酸の代謝に関与する微生物の増加に起因して、メナキノンMK−7が減少する傾向にあった。よって、メナキノンMK−7の存在比が減少していると、発酵状態が悪化しており、発酵液のpHが低下していると推測される。
【0036】
制御装置15では、入力された発酵液中のイソプレノイドキノンの分子種組成に応じて、メタン発酵槽7の発酵条件の調整を行なう。発酵条件の調整方法としては、例えば、スラリー投入ポンプ4を制御してメタン発酵槽7内への有機性廃棄物の投入量を調節する方法が好ましく行なわれる。また、別の発酵条件の調整方法としては、アルカリ添加によってメタン発酵槽7内のpH調整を行ない、アルカリ側に維持することも好ましい。メタン発酵槽7内は酸生成によって徐々にpHが低下していくので菌の活性が徐々に低下していくが、アルカリ側にpH調整することによってメタン発酵槽7内を活性菌の至適pHに維持できるので、活性菌数を維持することができる。なお、上記の発酵条件の調整方法は、単独で行なってもよく、また両者を組み合わせて行なってもよい。
【0037】
好ましい発酵条件の調整方法の例としては、以下の〈1〉〜〈4〉が挙げられる。これらはそれぞれ単独で行ってもよく、また、それぞれを組み合わせて行ってもよい。
【0038】
〈1〉発酵液のユビキノンUQ−9の存在割合が高くなり所定値を超えて優占種となった場合は、スラリー投入ポンプ4よりメタン発酵槽7への有機性廃棄物の投入量を下げる及び/又は、薬中ポンプ6を制御し、薬液槽5からの薬剤注入量の調整を行い発酵液のpHを調整して、ユビキノンUQ−9の存在割合を所定値以下にする。
【0039】
〈2〉メナキノン分子種の総量(MKtotal)とユビキノン分子種の総量(UQtotal)との比率((MKtotal)/(UQtotal))が所定値を下回った場合は、スラリー投入ポンプ4よりメタン発酵槽7への有機性廃棄物の投入量を下げ、(MKtotal)/(UQtotal)を所定値以上にする。
【0040】
〈3〉メナキノンMK−7の存在比率が所定値を下回っている場合は、スラリー投入ポンプ4よりメタン発酵槽7への有機性廃棄物の投入量を下げる及び/又は、薬中ポンプ6を制御し、薬液槽5からの薬剤注入量の調整を行い発酵液のpHを調整して、メナキノンMK−7の存在比率が所定値以上となるようにメタン発酵槽7の発酵液pHの調整を行う。
【0041】
〈4〉上式(1)にて算出した非類似度が所定の値を超える場合は、非類似度が所定値以下となるように、有機性廃棄物の投入量及び/又は薬剤の投入量を調整する。
【0042】
以上のメタン発酵処理方法によれば、発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成に応じて、メタン発酵処理条件を決定することで、メタン発酵槽を常時最適な状態に維持できる。これにより、処理効率が向上するとともに、効率よくバイオガスを得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0044】
図1に示すメタン発酵装置を用いてメタン発酵処理を行った。メタン発酵槽7として、容量2Lの発酵槽を使用した。槽内の発酵液の温度は55℃とした。有機性廃棄物としては、市販の牛乳を使用した。発酵負荷条件は、HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日で行った。また、メタン発酵槽内の発酵液を採取して、イソプレノイドキノンの分子種組成の分析を以下のようにして行った。
【0045】
〈イソプレノイドキノンの分子種組成の分析〉
採取した試料を、50ml遠沈管に入れ、遠心分離(8000rpm、10分、20℃)した。そして、上澄液を捨てて、上澄液以外の試料を−20℃で冷凍した。完全に冷凍した試料を真空凍結乾燥機(Asahi、FZ−4.5(77500)型)を用いて、24時間真空凍結乾燥処理(真空度133×10−3mBar、−40℃)した。
次に、真空凍結乾燥処理を行った試料を、超臨界抽出装置の抽出容器内に投入し、オーブンにセットした。そして、オーブンの温度を55℃に設定し、背圧レギュレータの圧力を250atmに設定し、二酸化炭素を2.7ml/min、メタノールを0.3ml/minに設定し抽出容器に流し始め、所定の圧力に達した時を抽出開始とし、15分間抽出を行って、試料中に含まれる菌体からイソプレノイドキノンを抽出した。
次に、抽出処理後の試料を固相抽出カートリッジ(商品名「Sep‐Pak Plus Silica」 Watesr社製)に通した。そして、まず2%ジエチルエーテル・ヘキサン溶液に通すことで、メナキノンを溶出分離した。次に、10%ジエチレンエーテル・ヘキサン溶液を通すことで、ユビキノンを溶出させた。そして、各溶出液をエバポレータで蒸発濃縮させた後、アセトンで洗浄回収した。こうしてメナキノンとユビキノンとを分離精製した。
そして、分離精製したユビキノン及びメナキノンを、HPLCを用い、標準物質の保持時間とピーク面積を基準にしてイソプレノイドキノンの分子種組成を分析した。
【0046】
(試験例1)
図3に、HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時の発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成を示し、図4に、その時のバイオガス発生量を示す。
図4に示すように、HRT2日の負荷条件のときにバイオガス発生量が急激に低下した。このときのイソプレノイドキノンの組成は、図3に示すように、ユビキノンUQ−9の存在割合が増加していた。そして、ユビキノンUQ−9の存在割合の増加を、メタン発酵の破綻の予兆としての運転指標として用い、ユビキノンUQ−9の存在割合が所定値を超えたら有機性廃棄物の供給量を減らす処理を行ったところ、メタン発酵が破綻することなく行えた。
【0047】
(試験例2)
図5に、HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時の発酵液のプロピオン酸濃度を示し、図6に、同メナキノンMK−7の存在比を示し、図7に、発酵液のプロピオン酸濃度とメナキノンMK−7の存在比との関係図を示す。
図7に示すように、発酵液のプロピオン酸濃度と、メナキノンMK−7の存在比は、強い相関性を有していた。そして、メナキノンMK−7の存在比が所定値を超えたら発酵液のpHを低下する処理を行ったところ、メタン発酵が破綻することなく行えた。
【0048】
(試験例3)
図8に、HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時のイソプレノイドキノンの分子種の非類似度を示す。
図8に示すように、HRT10日〜HRT3日では、非類似度は0.05〜0.2の範囲にあり、この時の発酵槽内の微生物群集構造には、有意な変化はなかった。この時のガス化率は70%以上であった。一方、HRT2日の条件で運転した時、非類似度は0.2以上となり、このときに発酵槽の微生物群集構造には有意な変化が起きていた。また、この時のガス化率は30%以下であった。そして、非類似度が0.2を超えたら、非類似度が0.2以下になるように、有機性廃棄物の供給量と、発酵液のpHとを調整したところ、発酵槽の微生物群集構造の変化を抑えることができ、メタン発酵が破綻することなく行えた。
【0049】
(試験例4)
図9に、HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時のメナキノン分子種の総量(MKtotal)とユビキノン分子種の総量(UQtotal)との比率((MKtotal)/(UQtotal))を示し、図10に、((MKtotal)/(UQtotal))とガス化率との関係図を示す。(MKtotal)/(UQtotal)が低下するにつれ、ガス化率の低下がみられ、特に(MKtotal)/(UQtotal)が0.4以下となった時、ガス化率が著しく低下した。そして、(MKtotal)/(UQtotal)が0.4を超えたら有機性廃棄物の投入量を減らす処理を行ったところ、ガス化率が正常状態に回復し、メタン発酵が破綻することなく行えた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】イソプレノイドキノンの分子種組成の測定方法の概略工程図である。
【図2】本発明のメタン発酵処理方法に用いることができるメタン発酵処理装置の概略構成図である。
【図3】HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時の発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成を示す図表である。
【図4】HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時のバイオガス発生量を示す図表である。
【図5】HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時の発酵液のプロピオン酸濃度を示す図表である。
【図6】HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時のメナキノンMK−7の存在比を示す図表である。
【図7】発酵液のプロピオン酸濃度とメナキノンMK−7の存在比との関係図を示す図表である。
【図8】HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時のキノン分子の非類似度を示す図表である。
【図9】HRT10日、8日、6日、4日、3日、2日の条件でメタン発酵処理した時の(MKtotal)/(UQtotal)を示す図表である。
【図10】(MKtotal)/(UQtotal)とガス化率との関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0051】
1:有機性廃棄物
2:粉砕機
3:スラリー調整槽
4:スラリー投入ポンプ
5:薬液槽
6:薬中ポンプ
7:メタン発酵槽
8:攪拌器
9:廃液ポンプ
10:ガス量計
11:ガスホルダー
12:サンプリング口
15:制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物をメタン発酵槽内に投入し、嫌気性微生物によりメタン発酵させるメタン発酵処理方法において、
前記メタン発酵槽内の発酵液の一部を取り出して、該発酵液のイソプレノイドキノンの分子種組成を測定し、該組成に基づいてメタン発酵処理条件を決定することを特徴とするメタン発酵処理方法。
【請求項2】
前記発酵液の下式(1)で算出した非類似度が所定値を超えたら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整する、及び/又は、前記メタン発酵槽の発酵液のpHを調整する、請求項1に記載のメタン発酵処理方法。
非類似度=0.5×Σ|fki−fkj| ・・・(1)
(式中fkiは、発酵液iのイソプレノイドキノンの分子種kの存在比であり、fkiは、発酵液jのイソプレノイドキノンの分子種kの存在比である)
【請求項3】
前記発酵液中のユビキノンUQ−9の存在比が所定値を下回ったら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整する、及び/又は、前記メタン発酵槽の発酵液のpHを調整する、請求項1又は2に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項4】
前記発酵液中のメナキノンMK−7の存在比が所定値を超えたら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整する、及び/又は、前記メタン発酵槽の発酵液のpHを調整する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項5】
前記発酵液中のメナキノン分子種の総量(MKtotal)とユビキノン分子種の総量(UQtotal)との比率((MKtotal)/(UQtotal))が所定値を下回ったら、前記メタン発酵槽への有機物負荷を調整する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−189904(P2009−189904A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30566(P2008−30566)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年8月13日 社団法人 化学工学会発行の「化学工学会 第39回秋季大会 研究発表講演要旨集(CD−ROM版)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】