説明

メダル貸出機

【課題】貸出処理を行うときには、第2価値媒体から第1価値媒体に対して有価価値を移すことにより、第2価値媒体をすぐに抜いても通信エラーが発生することを未然に防止し、操作性を良くする。
【解決手段】電子マネーカード20を差し込んで貸出操作が行われると、電子マネーカード20から所定の有価価値Pが引き落とされ、その有価価値Pに対応する度数Qが、透明カバー30により封入されている貸出カード21に記憶され、その後、貸出カード21から1度数づつの貸出処理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遊技機に隣接配置され、遊技者の所定の操作に基づき遊技媒体の貸出処理を行うメダル貸出機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遊技媒体貸出機には、例えば以下に示すものがある。
【0003】
(1)紙幣や硬貨の貨幣を受け入れる貨幣受入部があり、この貨幣受入部に紙幣や硬貨が投入されて遊技者により貸出操作が行われると、投入額に対応した度数により貸出処理が行われる。
【0004】
(2)パチンコホール内で購入・発行され有価価値の記録された既発行のプリペイドカード(磁気カード)を受け入れるカード受入部があり、このカード受入部にプリペイドカードが挿入されて遊技者により貸出操作が行われると、所定の度数に対応する価値がプリペイドカードから減額され、その度数による貸出処理が行われる。
【0005】
(3)上記(1)の貨幣受入部とカード受入部を備え、カード受入部では、カードの一部を貸出機本体の前面に露出させ、この部分をカバーで覆うことによってカードを外部に取り出せないようにしておく(封入式カード受入部)。貸出処理は、このカードの残高度数により行い、貨幣受入部に貨幣が投入されることに応じてその価値の分だけカード残高度数を増やす。なお、この装置では、カード受入部のカードは書き込みや読み出しを行うアクセス時に貸出機内部に移動し、それ以外のときには前方へ送り出されて、その一部が遊技機本体の前面に露出している。カードの一部が遊技機本体の前面に露出していることにより、外部からは、カードを使って遊技をしていることが容易に分かる。
【0006】
(4)上記(1)の貨幣受入部、(3)の封入式カードを用いる封入式カード受入部に加え、さらに発行済みのプリペイドカードや電子マネーカード等のカード受入部を備えている(特開2002−85798号公報)。この装置では、貨幣受入部に投入された貨幣によっても、カード受入部に挿入されたプリペイドカードや電子マネーカード等によっても、貸出処理を行うことが出来る。
【0007】
なお、遊技媒体貸出機では、通常は、その構成に係わらず、貸出処理を、遊技機に対して1度数づつの貸出処理を複数回(度数が5なら5回、10なら10回)に分けて行うようにしている。このため、全貸出処理を行うのに一定の時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−85798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の従来の遊技媒体貸出機では、次に述べるような不都合があった。
【0010】
(1)貨幣受入部だけを備える貸出機では、煩雑性を避けることが出来ず、また、釣り銭処理や、貨幣の鑑別処理等についても考慮することが必要となり、コストアップとなる。
【0011】
(2)プリペイドカードを受け入れるカード受入部だけを備える貸出機では、プリペイドカードの価値を使い尽くすと新たなプリペイドカードをホール内に設置されているカード販売機で購入することが必要になり、面倒であるとともに、遊技者がカード販売機に出向く期間は貸出機の稼働率低下に繋がる。また、使用済みプリペイドカードは廃棄となるため、資源の無駄遣いとなる。
【0012】
(3)貨幣受入部と封入式カード受入部を備える貸出機では、封入式カードを使用することにより、資源の無駄遣いはなくなるが、カードが封入されている結果、途中でそのカードを抜き取って他の遊技機で使用することが出来ない。このため、遊技者は貨幣受入部に対して少額の貨幣投入を繰り返すことになり、上記(1)と同様に遊技を行うときの煩雑性がある。
【0013】
(4)貨幣受入部、封入式カード受入部、プリペイドカードのカード受入部を備える特開2002−85798号公報に示される貸出機では、貨幣とプリペイドカードや電子マネー受入部との両方を使用することが出来るが、プリペイドカード受入部を使用するときは、貸出処理が行われている間、プリペイドカードを抜き取ることが出来ず、貸出処理中にプリペイドカードを抜き取ると通信エラーとなってしまう。特に、プリペイドカードを非接触通信機能を備える非接触価値媒体(非接触ICカード等)で構成しているときには、非接触価値媒体を所定の位置に翳したり置くだけで通信が行われるために、貸出処理中にその位置から遠ざけてしまうことが簡単に起きてしまう。
【0014】
さらに、上記(1)〜(4)のどの装置であっても、カードを磁気カードで構成すると、カード駆動機構を含む高コストの磁気カードリーダライタを設ける必要があり、全体が高価格となる問題があった。
【0015】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、貸出処理を行うときには、第2価値媒体から第1価値媒体に対して有価価値を移すことにより、貸出処理を行っている最中に第2価値媒体を遠ざけても、通信エラーが発生することを未然に防止することの出来るメダル貸出機を提供することを目的とする。
【0016】
また、この発明は、遊技媒体貸出機本体の低コスト化と操作性を良くすることの出来るメダル貸出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、上記課題を解決するために、スロットマシンに近接して配置され、有価価値を受け付け、その価値を用いてメダルの貸出処理を行うメダル貸出機において、
メダルの貸出処理を行うための有価価値を記憶する第1価値媒体との間で、貸出処理中に該第1価値媒体を外部に取り出すことが出来ないようにして通信を行う第1価値媒体通信部と、
有価価値を記憶し、または対応する口座があり非接触媒体で構成される第2価値媒体との間で非接触により通信を行う第2価値媒体通信部と、
前記第2価値媒体を近づけて翳すことで貸出操作があったもとのと判断するとともに、この場合に前記第2価値媒体通信部で前記第2価値媒体と非接触通信をして該第2価値媒体に所定の価値以上の有価価値が記憶されていることを判定したときに該第2価値媒体から一定の有価価値を引き落とし、その有価価値を前記第1価値媒体に記憶する有価価値形態にしてから該第1記憶媒体に記憶し、その後に前記貸出処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記貸出処理が終了するまでは、再度の第2価値媒体による貸出操作を受け付けないように制御することを特徴とする。
【0018】
この発明において、「第1価値媒体」とは、遊技媒体の貸出処理を行うための有価価値を記憶可能な媒体であり、磁気カード、有端子ICカード、非接触ICカード、フラッシュメモリカード、ICチップを埋め込んだコイン等の形状を持つ記憶媒体、あるいはこれらの記憶媒体に識別情報のみを記憶し、この識別情報に対応する有価価値情報を遊技媒体貸出機や管理装置に記憶しておくもののみならず、トークン(コイン状のもの)などの所定形状物であって、遊技媒体貸出機への投入によって有価価値を有するものと認識されるものを含む。
【0019】
「有価価値」とは、遊技媒体に変換可能なものや遊技媒体と等価な形態を意味し、金額価値、この金額価値に基づいて変換された度数、または、この金額価値に基づいて換算された遊技媒体の貸出可能数量を含む。「遊技媒体」とは、パチンコ玉やメダル、その他それに類似したものをいう。
【0020】
「第2価値媒体」とは、前記有価価値を記憶し、または対応する口座がある価値媒体であり、有価価値を直接または対応口座から引き落とすことが出来るものをいう。この第2価値媒体には、例えば、非接触プリペイドカード、非接触電子マネーカード、非接触会員カードの他、非接触デビットカード、非接触クレジットカード等、有価価値の引き落としを銀行口座で行う非接触ICカードや、これらの非接触通信機能と有価価値の引き落としを銀行口座で行う機能とを持たせた携帯電話やPDA等の携帯端末が使用可能であり、さらに、非接触通信機能を持っていて電子的決済により有価価値を引き落とすことの出来るどのようなものでも使用可能である。なお、第2価値媒体が非接触電子マネーカード等のときには、この媒体に記憶される有価価値は金額となる。また、第2価値媒体が非接触会員カードの場合は、この媒体に記憶される有価価値は度数データ、または遊技媒体数データ等が考えられる。
【0021】
この「第2価値媒体」を上記のように非接触媒体にすると、第2価値媒体通信部は媒体駆動機構(カード駆動機構等)を不要とするため、遊技媒体貸出機本体のコストを低くすることが出来る。また、非接触とすることで、接触不良等の物理的不安定さが解消され信頼性が高くなる。
【0022】
この発明に係るメダル貸出機は、スロットマシンの遊技機に適用することが可能であり、この遊技機に近接して配置される。
【0023】
貸出操作は、一般には貸出ボタンの操作で行われるが、第2価値媒体通信部に第2価値媒体を受け入れた、または近づけたことで貸出操作があったものとすることも出来る。この場合は、別途貸出操作を必要としない。
【0024】
この発明では、制御部によって、第2価値媒体通信部との間で通信を行う第2価値媒体から有価価値を引き落として、その有価価値を第1価値媒体に記憶する有価価値形態にしてから該第1記憶媒体に記憶し、貸出処理はその第1価値媒体により行うため、第2価値媒体を第2価値媒体通信部に接近させて貸出操作を行うと、直ちに第2価値媒体から有価価値が引き落とされ、その引き落とされた有価価値を第1価値媒体に記憶する有価価値形態にしてから(例えば、第2価値記憶媒体に記憶する有価価値形態が金額であって、第1価値媒体に記憶する有価価値形態が度数データの場合、引き落とされた金額が度数データに変換されて)第1価値媒体に送られて記憶される。その後、第1価値媒体から順次貸出処理が行われる。また、制御部は、貸出処理が終了するまでは、再度の第2価値媒体による貸出操作を受け付けないように制御する。
【0025】
このため、遊技者は、第2価値媒体を第2価値媒体通信部に接近させて(翳して)貸出操作をした直後に(または、第2価値媒体を第2価値媒体通信部に接近させた直後に)この第2価値媒体を遠ざけることが出来る。このとき、遠ざけることによる通信エラーは生じない。さらに、第2価値媒体を遠ざけた後に、再び接近させても貸出操作の受け付けが出来ないため、誤操作による不要な貸出が行われない。
【0026】
また、第2価値媒体を非接触通信媒体で構成し、第2価値媒体通信部を非接触通信機能を持つようにすることで、第2価値媒体へアクセスするための磁気カード駆動部のような移動機構が不必要となり、貸出機本体の構造の単純化、低コスト化、小型化を実現出来る。また、第1価値媒体は、貸出処理中において外部に取り出すことが出来ないようにして読み書きされるため、この部分においても通信エラーを起こすことがない。
【0027】
また、この発明は、貨幣受入部を設けて、投入された貨幣の金額に対応する有価価値を第1価値媒体に記憶することが可能である。
【0028】
また、この発明は、第2価値媒体を電子マネー媒体で構成することが可能である。電子マネー媒体で構成することにより、ユーザの操作性は格段に向上する。
【発明の効果】
【0029】
この発明では、貸出処理中に第2価値媒体(カード等)が抜かれて通信エラーを起こすということがなく、遊技者は、第2価値媒体を第2価値媒体通信部に近づけて貸出操作をした直後に(または、近づけるだけで引き落とされるときには第2価値媒体を第2価値媒体通信部に近づけた直後に)、この第2価値媒体を自由に遠ざけることが出来る。さらに、このとき、第2価値媒体を遠ざけた後に、再び接近させても貸出操作の受け付けが出来ない。このため、貸出処理が確実に行われ、また、非接触通信機能を持つ電子マネーカード、デビッドカード、クレジットカード等、盗難されやすいものを長時間外部に晒すことがなくなり、安全性が高まる。また、遊技者による操作性も改善される。誤操作による不要な貸出もない。また、第2価値媒体と第2価値媒体通信部とが非接触で通信出来る構成にすることで、第2価値媒体へアクセスするための磁気カード駆動部のような移動機構を必要としないため、構造の単純化、低コスト化、小型化を実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明が適用されるスロットシステムの構成図
【図2】メダル貸出機の外観斜視図
【図3】スロットシステムのブロック図
【図4】貸出処理の制御動作を示すフローチャート
【図5】貸出通信処理動作を示すフローチャート
【図6】貸出処理時のタイミングチャート
【図7】他のスロットシステム例の構成図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、この発明が適用されるスロットシステムの正面図である。
【0032】
スロットシステムは、スロットマシン1と、これに隣接して配置され電気的に接続されるメダル貸出機2とで構成される。メダル貸出機2では、有価価値を記憶したカードが使用されることにより貸出処理が行われる。
【0033】
このスロットシステムでは、メダル貸出機2においてカードから所定の度数を減算し、スロットマシン1において減算した度数に対応するメダル枚数を発行し、このメダル枚数から遊技に使用するメダル枚数分を消費して遊技を行う。また、メダル貸出機2において使用されるカードには、この発明の第2価値媒体に対応する電子マネーカードと、この発明の第1価値媒体に対応する貸出カードとがある。貸出のための有価価値は電子マネーカードから引き落とし(電子マネーの有価価値形態は金額である)、メダル貸出機2とスロットマシン1間での貸出処理時には貸出カード(貸出カードの有価価値形態は度数データである)から度数減算が行われる。
【0034】
電子マネーカードと貸出カードは、いずれも非接触通信機能を持つ非接触ICカードで構成されている。
【0035】
図1は、スロットシステムの正面図である。また、図2は、メダル貸出機2の外観斜視図である。
【0036】
スロットマシン1には、メダル貸出機2が隣接して配置され、これらは図示しないケーブルにより電気的に接続されている。スロットマシン1のほぼ中央部には、内部に設けられているリールの周面に印刷されている複数の絵柄(シンボル)を表示するシンボル表示窓3が配置されている。シンボル表示窓3では、各リールの回転状態と停止状態を見ることが出来る。各リールは、図外のステッピングモータに連結され、メダル投入口にメダルが投入されるか、クレジットメダル枚数から遊技用のメダル枚数が設定されて始動レバー6が操作されると、ゲームが開始して各リールが回転を始める。各リールが回転を始めた後、シンボル表示窓3の下方に配置されている停止スイッチ4を次々と操作すると、その操作に応じて各リールが停止する。すべてのリールが停止したときに入賞していると、同じシンボルが斜め方向や水平方向に一致する。この入賞時に、所定枚数のメダルが報償として払いだされる。
【0037】
始動レバー6の上方に設けられているBETボタン7は、遊技に使用するメダル枚数を設定するボタンである。
【0038】
スロットマシン1には、始動レバー6の左側に、貸出ボタン8と返却ボタン9とが配置されている。貸出ボタン8は、電子マネーカード20から所定の有価価値Pを引き落として、この有価価値Pを貸出カード21の有価価値形態に変換して、その貸出カード21に記憶するためのボタンである。具体的には、この貸出ボタン8が操作されたとき、有価価値Pに対応する所定の度数Q(PがQに変換される)が貸出カード21に記憶される。度数Qが貸出カード21に記憶された後、この貸出カード21から1度数づつ順次減算され、同時にスロットマシン1において、上記減算された度数に対応したメダル枚数づつの貸出が行われる。なお、上記のように、電子マネーカード20と貸出カード21は、非接触通信機能を備える非接触ICカードで構成されているため、メダル貸出機2には、これらのカードを移動させる移動機構はない。
【0039】
このスロットシステムでは、貸出ボタン8が操作されるときには、貸出カード21の記憶内容はゼロとなっていることとする。また、有価価値P、度数Q、1度数当たりのメダル枚数については、ここでは以下の通りとする。
【0040】
・有価価値P:1000円
・度数Q:10度数
・1度数当たりのメダル枚数:5枚
したがって、貸出ボタン8が操作されると、1000円に相当する10度数が貸出カード21に記憶され、その直後、10度数に対応するメダル枚数50枚の貸出処理が行われる。このため、貸出カード21は、貸出ボタン8が操作されるまでは、記憶している度数はゼロであり、貸出ボタン8が操作されて貸出処理が開始すると、最初は10度数を記憶し、貸出処理が進むにしたがってその値を少なくしていき、貸出処理が終わる段階で再びゼロとなる。
【0041】
別のスロットシステム例として、貸出ボタン8を第1の貸出ボタンと第2の貸出ボタンに分け、電子マネーカード20が挿入されて第1の貸出ボタンが操作されると電子マネーカード20から1000円に相当する10度数を貸出カード21に移してその記憶内容に加算し、第2の貸出ボタンが操作されるのを待って、貸出カード21からの貸出処理が開始されるようにしてもよい。このように構成すると、貸出カード21には、いつでも電子マネーカード20から10度数を加算することが出来、貸出カード21には自由に残高を残しておくことが出来る。
【0042】
返却ボタン9は、上記電子マネーカード20を遊技者に返却するためのボタンである。遊技者は、このボタンを押してから電子マネーカードを引き出すことが出来る。なお、この返却ボタン9は特に必要はなく、電子マネーカード20はいつでも自由に引き出せるようにしても良い。
【0043】
前記BETボタン7の左側に配置されているカード残高表示器10は、貸出カード21の残高度数を表示する。遊技開始時等に、電子マネーカード20が差し込まれて貸出ボタン8が操作されたとき、または、札投入口22に紙幣(この例では1000円)が投入されて貸出ボタン8が操作されたとき、貸出カード21に10度数が記憶されることになるから、その記憶度数(10度数)をカード残高度数として表示する。その10度数の表示が行われた後、貸出処理が進行し、1度数づつ減算表示されていって、最後はゼロとなって貸出処理が完了する。
【0044】
カード残高表示器10の左側に配置されている貸出可LED11は、貸出処理が可能であることを示す。このLED11が点灯している状態で紙幣又は電子マネーカード20によりメダル貸出を行うことが出来る。
【0045】
前記カード残高表示器10の右側には、クレジットメダル枚数表示器12が配置されている。この表示器12は、スロットマシン1にクレジット扱いとなっているメダル枚数、つまり貯留メダル枚数を表示する。したがって、1度の貸出操作で10度数に対応したメダル枚数50枚がそのときの表示枚数に加算される。
メダル貸出機2には、上方から下方に向けて、札投入口22、貸出カード読み書き部23、貸出機動作状態表示器24、電子マネーカード読み書き部25、電子マネー表示器26が配置されている。
【0046】
札投入口22は、紙幣(1000円紙幣)を受け入れて、その金額に対応する10度数を貸出カード21に記憶する。
【0047】
貸出カード読み書き部23は、貸出カード21の受け入れスロットを備えている。このスロットには、貸出カード21が予め挿入されていて、その一部がメダル貸出機2の前面に露出している。露出している貸出カードの一部は、メダル貸出機2に固定されている透明カバー30により覆われていて、外部から同カードを引き出すことが出来ないようになっている。透明カバー30はメダル貸出機2に固定されていて貸出カード21をどのような状況においても引き出すことが出来ないようにしているが、別の実施態様として、透明カバー30にマグネットを設けるとともに、メダル貸出機2にこのマグネットに対向した位置に電磁石を設け、貸出処理を行っている間だけ電磁石をオンしてマグネットをメダル貸出機2に引きつけて固定するようにしても良い。このような構成では、貸出処理を行っている間だけ透明カバー30を開閉不可とするように出来る。
【0048】
また、貸出カード読み書き部23は、非接触通信機能を持っていて、前記受け入れスロットに挿入された貸出カード21に非接触でアクセスして通信を行う。
【0049】
貸出機動作状態表示器24は、メダル貸出機2の動作状態を表示する。
【0050】
電子マネーカード読み書き部25は、電子マネーカード20の受入スロットと非接触通信機能とを備え、このスロットに電子マネーカード20が差し込まれると、非接触通信機能により電子マネーカード20との間で非接触通信を行う。
電子マネー表示器26は、電子マネーカード20が差し込まれて貸出ボタン8の操作があったときに、貸出をする10度数相当価値を減額した残高表示や、電子マネーカード20に10度数相当価値の電子マネー残高がないときにその旨を表示する。なお、電子マネー残高を表示することが適切でないときには、10度数相当価値を減額したときにその旨を表示するようにしても良い。
【0051】
図3は、スロットシステムの構成図である。
【0052】
スロットマシン1は、スロットマシン主制御部13にクレジットメダル枚数表示器12が接続され、メダル貸出機2は、メダル貸出機主制御部27に貸出カード読み書き部23と電子マネーカード読み書き部25が接続され、双方の制御部13、27は、スロットマシン1内のインターフェイス基板(I/F基板)14とメダル貸出機2内の中継器28とを介して接続されている。なお、図示するように、スロットマシン1に設けられているカード残高表示器10と貸出ボタン8は、中継部14を介してメダル貸出機2内の主制御部27により制御されるようになっている。
【0053】
スロットマシン1内のインターフェイス基板(I/F基板)14とメダル貸出機2内の中継器28間に流れる信号は以下の通りである。
【0054】
・PRDY・・・貸出可能信号。この信号はスロットマシン1の電源オンにより「L」(アクティブロー)となり、メダル貸出機2に送信される。
【0055】
・EXS・・・貸出了解信号。この信号は、下記BRQをメダル貸出機2から受けたときに「L」(アクティブロー)となり、メダル貸出機2に送信される。
【0056】
・BRDY・・・貸出状態信号。この信号は、貸出ボタン8が操作されたときに貸出中を示す「L」(アクティブロー)となり、貸出処理が完了したときに「H」に戻る。
【0057】
・BRQ・・・貸出要求信号。この信号は、貸出ボタン8が操作されたときにメダル貸出機2からスロットマシン1に対して出される。
【0058】
次に、このスロットシステムの動作について詳細に説明する。
【0059】
図4は、電子マネーカードを用いて貸出処理が行われるときの、メダル貸出機2の主制御部27の動作を示すフローチャートである。
【0060】
遊技者により、貸出ボタン8の操作があると(ステップST1)、電子マネーカード20の差し込みがあることの確認と(ステップST2)、PRDYを参照して貸出可能であることの確認をしてから(ステップST3)、電子マネーカード20の読取をする(ステップST4)。電子マネーカード20に10度数相当以上の価値(1000円以上)が記憶されていれば(ステップST5)、同電子マネーカード20から10度数相当価値(1000円)の減算を行い(ステップST6)、さらに、貸出カード21に対して10度数の加算処理を行う(ステップST7)。
【0061】
以上の処理を行った後、メダル貸出機2とスロットマシン1間の貸出通信処理を行う(ステップST8)。なお、ステップST5において、電子マネーカードに10度数相当価値(1000円)がないと判断されたときには、度数不足報知を電子マネー表示器26に行って終了する。
【0062】
上記の動作において、電子マネーカード20が電子マネーカード読み書き部25の受入スロットに差し込まれて貸出ボタン8が操作されると、10度数相当価値が同電子マネーカード20から直ちに減額され(ステップST6)、その対応度数が貸出カード21に記憶される。そして、その後に、メダル貸出機2の主制御部27とスロットマシン1の主制御部13との間で、1度数毎の貸出処理が行われていく。したがって、遊技者は、電子マネーカード20を差し込んで、貸出ボタン8を操作した後、直ちに返却ボタン9を操作して(返却ボタンがない実施例ではなにもせず)電子マネーカード20を引き抜くことが出来る。このとき実際のメダル貸出処理は、電子マネーカード20に対する減額処理を終えた後、貸出カード21の記憶度数に基づいて行われるため、電子マネーカード20を引き抜いても何等問題がなく、エラーは生じない。また、貸出カード21は、透明カバー26によって封入されているため、外部から取り出すことが出来ない。このため、貸出カード21の記憶度数を1度数づつ減算して貸出処理を行っている間においても通信エラーを起こすことがない。
【0063】
また、電子マネーカード20は非接触通信機能を持ち、同カードが受入スロットに差し込まれるだけで通信が可能となるため、磁気カードを使用するときに必要であったカード駆動機構が不要である。このため、低コストとなり、駆動部がない分信頼性が向上する。
【0064】
図5は、ステップST8の貸出通信処理の具体的な動作を示すフローチャートである。また、図6は、貸出通信処理時のタイミングチャートである。なお、図6において、TDSは、貸出ボタン8の操作可能信号で、操作可能のときに「H」(アクティブハイ)となる。また、TDLOは、貸出可LED11点灯信号で、点灯のときに「L」(アクティブロー)となる。
【0065】
電源がオンすると、初期処理等に必要な時間TSを経過した後、PRDYが「L」になる。同時に貸出ボタン8の操作も可能となり(TDS→「H」)、且つ、貸出可LED11が点灯する。このとき、貸出ボタン8が操作されると、度数カウント用のカウンタNを「0」にして(ステップST10)、BRDYを「L」にし(ステップST11)、且つ、貸出ボタンの受付を禁止して再度の貸出ボタンの操作を受け付けないようにする(TDS→「L」)。
【0066】
次に、一定の時間T0が経過してBRQを「L」にすることでメダル貸出機2からスロットマシン1に対して貸出要求を出す(ステップST12)。この後、内部タイマによる計時を開始し(ステップST13)、スロットマシン1からの応答を待つ(ステップST14、ステップST15)。時間T1が経過してスロットマシン1からEXSが「L」となる正常な応答(貸出了解)があることを判定すると(ステップST14)、タイマクリアし(ステップST16)、メダル貸出機2においてBRQを「H」に戻すとともに、貸出カード21から1度数の減算を行う(ステップST17)。上記EXSが「L」の応答があった時点で、スロットマシン1において1度数に相当するメダル枚数5枚の貸出が行われる。この貸出は、クレジットで行われるため、クレジットメダル枚数表示器12が+5カウントアップする。なお、ステップST15でタイマ計数値TがT>T1となってタイムオーバすると、エラーとなって(ステップST30)終了する。
【0067】
続いて、再び、タイマ計時を開始し(ステップST18)、タイマ計数値TがT3を計時するまでにEXSが「H」になるのを待つ(ステップST19)。タイマ計数値TがT3を計時するまでに、EXSが「H」になるとスロットマシン1では5枚のクレジットアップが完了している。EXSが「H」になるのを検出すると、タイマクリアし(ステップST20)、度数カウント用のカウンタNを一つ増やす。以上のステップST14〜ステップST20で1度数の減算と、5枚のメダル貸出(クレジットアップ)が完了する。以下、N=10になるまで、上記の動作を繰り返し、貸出カード21からの10度数の減算とメダル50枚のクレジットアップを終える。なお、ステップST23において、タイマ計数値TがT>T3となってタイムオーバすると、エラーとなる。
【0068】
貸出カード21からの10度数の減算を終えると、TEが経過するのを待って(ステップST24)、BRDYを「H」にセットして(ステップST25)貸出完了となる。
【0069】
以上の動作は、電子マネーカードを使用して貸出処理を行うときの動作であるが、紙幣を使用するときには、通常の処理と同様である。つまり、紙幣(1000円)が投入されると、貸出カード21に10度数が加算されて、ステップST8の貸出通信処理が行われる。
【0070】
図7は、他のスロットシステムを示す。
【0071】
構成において、図3と相違する点は、貸出カード読み書き部23に代えて、内部メモリからなる貸出メモリ29を設けた点である。この貸出メモリ29は、主制御部27内のメモリ内に割りつけることも可能である。また、このスロットシステムの外部に接続される任意の装置内のメモリで構成することも可能である。メダル貸出機2には、図2に示すような貸出カード読み書き部23、透明カバー30、貸出カード21がなくても良いが、透明カバー30と貸出カード21については設けておいても良い。透明カバー30と貸出カード21を設けておくことにより、外観上、貸出カードを使用して貸出処理をしているようにみせかけることが出来る。
【0072】
以上のスロットシステムでは、第2価値媒体として非接触ICカードで構成される電子マネーカード20を例示したが、この他、非接触プリペイドカード、非接触会員カードの他、非接触デビットカード、非接触クレジットカード等、有価価値の引き落としを銀行口座で行う非接触カードや、これらの非接触通信機能と有価価値の引き落としを銀行口座で行う機能とを持たせた携帯電話やPDA等の携帯端末が使用可能であり、さらに、非接触通信機能を持っていて電子的決済により有価価値を引き落とすことの出来るどのようなものでも使用可能である。
【0073】
また、電子マネーカード読み書き部25は、電子マネーカード20が差し込まれる構造にしているが、非接触通信が行われる構成では、同カード20が接近しただけで(翳しただけで)通信可能となるため、必ずしも差し込み部を設ける必要はない。また、電子マネーカード20の形状は、カード形状であるが、これに限らず、コイン形状等の任意の形状にすることも可能である。
【0074】
また、第1価値媒体として非接触ICカードで構成される貸出カード21や内部メモリ29を例示したが、これを非接触通信機能を持つ電子マネーカードで構成しても良く、その他、磁気カード、有端子ICカード、フラッシュメモリカード、ICチップを埋め込んだコイン等の形状を持つ記憶媒体、あるいはこれらの記憶媒体に識別情報のみを記憶し、この識別情報に対応する有価価値情報を遊技媒体貸出機や管理装置に記憶しておくもののみならず、トークン(コイン状のもの)などの所定形状物であって、遊技媒体貸出機への投入によって有価価値を有するものと認識されるもので構成しても良い。
【0075】
また、この発明は、パチンコ台と玉貸出機にも適用することが出来る。さらに、この発明は、第2価値媒体の有価価値を引き落としてから、貸出が完了するまでに一定の時間が必要な装置に対して広く適用することが出来るため、玉払出装置が設けられている玉貸出機(現金機)にも、この発明を適用することが出来る。
【0076】
以上のスロットシステムにおいて、本発明は、メダルの貸出処理を行うメダル貸出機に適用されるものであり、電子マネーカード20を電子マネーカード読み書き部25に近づけて翳すことで貸出操作があったものとしている。このため、貸出ボタン8が不要となる。そして、図4に示すように、この貸出機においても、ST2において一旦電子マネーの差し込みを受け付けてST3→ST4と進むと、ST8において貸出処理が終了するまでST2に戻ることはないから、同貸出処理が終了するまでの間、電子マネーの再度の受け付けが行われることはない。したがって、電子マネーを翳して受け付ける構成にした場合に、電子マネーを連続して翳す誤操作があっても、それによる不要な貸出処理は行われない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットマシンに近接して配置され、有価価値を受け付け、その価値を用いてメダルの貸出処理を行うメダル貸出機において、
メダルの貸出処理を行うための有価価値を記憶する第1価値媒体との間で、貸出処理中に該第1価値媒体を外部に取り出すことが出来ないようにして通信を行う第1価値媒体通信部と、
有価価値を記憶し、または対応する口座があり非接触媒体で構成される第2価値媒体との間で非接触により通信を行う第2価値媒体通信部と、
前記第2価値媒体を近づけて翳すことで貸出操作があったもとのと判断するとともに、この場合に前記第2価値媒体通信部で前記第2価値媒体と非接触通信をして該第2価値媒体に所定の価値以上の有価価値が記憶されていることを判定したときに該第2価値媒体から一定の有価価値を引き落とし、その有価価値を前記第1価値媒体に記憶する有価価値形態にしてから該第1記憶媒体に記憶し、その後に前記貸出処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記貸出処理が終了するまでは、再度の第2価値媒体による貸出操作を受け付けないように制御するメダル貸出機。
【請求項2】
貨幣を受け入れる貨幣受入部を備え、
前記制御部は、前記貨幣受入部で貨幣を受け入れたときにその金額に対応する有価価値を前記第1価値媒体に記憶することを特徴とする請求項1に記載のメダル貸出機。
【請求項3】
前記第2価値媒体は、非接触通信機能を有する携帯端末である請求項1又は2に記載のメダル貸出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137063(P2010−137063A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28515(P2010−28515)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【分割の表示】特願2009−91658(P2009−91658)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(501341646)クリエイションカード株式会社 (23)
【Fターム(参考)】