説明

メチオニナーゼ阻害剤及びそれを含有する口腔用組成物並びに飲食品

【課題】人体に影響がなく安心して使用できる安全性の高い天然植物抽出物を有効成分とするメチオニナーゼ阻害剤及びそれを含有する口腔用組成物並びに飲食品を提供する。
【解決手段】カメガシワ(Mallotus japonicus)、クワ(Morus alba)、アイスランドゴケ(Cetraria islandica)、グァバ(Psidium guajava)、ホアハウンド(Marrubium vulgare)、ガラナ(Paullinia cupana)、オオバコ(Plantago asiatica)、アルカネット(Anchusa officinalis)、アケビ(Akebia quinata)、クコ(Lycium chinense)、カゴソウ(Prunella vulgaris)、オレガノ(Origanum vulgare)、フェンネル(Foeniculum vulgare)、ハス(Nelumbo nucifera)、キンカン(Fortunella japonica)、緑茶(Camellia sinensis)及びシソ(Perilla frutescens)からなる群より選択される1種の植物抽出物を有効成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口臭の原因物質であるメチルメルカプタンの産生に関与するメチオニナーゼ阻害剤及びそれを含有する口腔用組成物並びに飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
口臭は、口腔より出される悪臭の総称である。口臭強度と相関性のある成分は硫化水素、メチルメルカプタン及びジメチルスルフィド等の揮発性硫黄化合物であり、中でもメチルメルカプタンは口臭と強い相関関係が認められる。これらは食物残渣、口腔内の剥離上皮細胞及び唾液タンパク質等を口腔内細菌が代謝、分解することにより発生する。メチルメルカプタンをはじめとする揮発性硫黄化合物は、口腔内での蛋白質合成の抑制、コラーゲン合成の抑制及び口腔内粘膜の透過性の亢進により人体に対して毒性が高いことが知られている。従ってメチルメルカプタンは単に口臭の原因物質であるだけではなく、体内環境、特に口腔疾患の悪化の一端を担っており、その低減化は重要な課題である。
【0003】
従来の口臭除去製品として歯磨き剤、洗口剤、マウススプレーに代表される口中清涼剤、ガム、キャンディ及びタブレット等の口中清涼菓子が提案されている。これらの製品の中には口臭除去の目的のために悪臭成分に対する直接的な消臭素材が配合されていることが多い。メチルメルカプタンに化学的に反応する消臭素材としては緑茶(例えば、特許文献1参照。)、延命草(例えば、特許文献2参照。)及びラズベリー(例えば、特許文献3参照。)等、多数報告されている。また、抗菌剤を配合している製品も数多く存在する。
【0004】
口臭の主原因であるメチルメルカプタンは、口腔内のタンパク質分解産物であるL−メチオニンを基質として、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)及びポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)等の口腔内細菌の菌体内酵素のメチオニナーゼ(L−メチオニンγリアーゼ)により産生される。近年、このメチオニナーゼを阻害することによる口臭予防の試みがなされている。メチオニナーゼを阻害することは、メチルメルカプタンの産生そのものを抑制することから非常に効果的である。また、メチオニナーゼは人体内には存在しないことからメチオニナーゼを阻害することは生体に影響を与えない。このことからメチルメルカプタン発生のカギとなる口腔内細菌由来のメチオニナーゼを阻害することにより、効果的かつ安全な口臭抑制が可能である。
【0005】
現在まで、メチオナーゼの阻害剤としてトマト抽出物、アセンヤク抽出物及びキラヤ樹皮抽出物等、天然物由来のものが報告されており(例えば、特許文献4参照。)、これらが口腔内細菌ポルフィロモナス・ジンジバリスのメチルメルカプタン産生を抑制することが明らかになっている。また、キク科のキク属、チョウセンアザミ属及びマンジュギク属植物(例えば、特許文献5参照。)及び植物精油成分(例えば、非特許文献1参照。)が口腔内細菌フゾバクテリウム・ヌクレイタムのメチルメルカプタン産生抑制効果を示すことが、特定の香料成分(例えば、特許文献6、7参照。)及びケト酸とその塩類(例えば、特許文献8参照。)が口腔内細菌のメチルメルカプタン産生を抑制することが報告されている。
【0006】
また、クワ葉を有効成分とする口腔用組成物及びグァバを含有する液体う蝕予防剤組成物の歯垢形成酵素であるグルコシルトランスフェラーゼに対する阻害効果(例えば、特許文献9、10参照。)や、グァバ葉抽出エキスを有効成分とする歯周病防止剤が開示されている(例えば、特許文献11参照。)が、メチオニナーゼ阻害効果は明らかにされてはいない。ホアハウンドについては硫酸還元菌の硫化水素産生を抑制することが明らかになっている(例えば、特許文献12参照。)が、メチオニナーゼの阻害効果は明らかになっていない。オオバコについてはプロテアーゼ阻害効果が明らかとなっている(例えば、特許文献13参照)が、メチオニナーゼ阻害効果については明らかになっていない。フェンネルについてはプロテアーゼ阻害剤としてポルフィロモナス・ジンジバリスの粗酵素の阻害効果が明示されている(例えば、特許文献13参照。)が、メチオニナーゼ阻害効果については触れられていない。
【0007】
さらに、シソについては口腔組成物として虫歯の原因菌であるミュータンス菌のグルコシルトランスフェラーゼ阻害効果が明示されている(例えば、特許文献14参照。)が、メチオニナーゼ阻害効果については触れられていない。緑茶についてはでポルフィロモナス・ジンジバリスのプロテアーゼ阻害効果は認められるが、メチオナーゼ阻害効果はないことが記載されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
【特許文献1】特公昭58−18098号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3233759号公報(請求項1)
【特許文献3】特公平5−36061号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2002―3353号公報(請求項1)
【特許文献5】特開2002―114660号公報(請求項1)
【特許文献6】特開2001―348308号公報(請求項1)
【特許文献7】特開2002―3369号公報(請求項1)
【特許文献8】特開平7−138139号公報(請求項1)
【特許文献9】特開2000−297022号公報(請求項2)
【特許文献10】特開2001―233751号公報(請求項1)
【特許文献11】特開2001―39884号公報(請求項1)
【特許文献12】特開2000―95628号公報(請求項1)
【特許文献13】特開平6−25000号公報(請求項1)
【特許文献14】特開平4−95020号公報(請求項1)
【非特許文献1】常田文彦,「臭気の研究」,2000年,第31巻,第2号,p.91−96
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、人体に影響がなく安心して使用できる安全性の高い天然植物抽出物を有効成分とする、細菌由来のメチオニナーゼを阻害することによりメチルメルカプタンの産生抑制作用を有する阻害剤及びそれを含有する口腔用組成物並びに飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、副作用がなく安全性が高く古来より利用されている生薬及びハーブ等の天然物抽出物に注目し、高いメチオニナーゼ活性を有する口臭原因菌の一つであるフゾバクテリウム・ヌクレイタムATCC25586由来の菌破砕液を用いてその阻害試験を実施した結果、アカメガシワ(Mallotus japonicus)、クワ(Morus alba)、アイスランドゴケ(Cetraria islandica)、グァバ(Psidium guajava)、ホアハウンド(Marrubium vulgare)、ガラナ(Paullinia cupana)、オオバコ(Plantago asiatica)、アルカネット(Anchusa officinalis)、アケビ(Akebia quinata)、クコ(Lycium chinense)、カゴソウ(Prunella vulgaris)、オレガノ(Origanum vulgare)、フェンネル(Foeniculum vulgare)、ハス(Nelumbo nucifera)、キンカン(Fortunella japonica)、緑茶(Camellia sinensis)及びシソ(Perilla frutescens)より得られる抽出物が、メチオニナーゼ阻害活性を有することを見出し、本発明品を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、上記植物から選択される1種の植物抽出物を有効成分とすることを特徴とするメチオニナーゼ阻害剤及びそれを含有することを特徴とする口腔用組成物並びに飲食品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメチオニナーゼ阻害剤は、メチルメルカプタンの産生を抑制する作用を有する。従って、これらを医薬品として、また飲食品に添加して経口的に摂取したり、口中清涼剤、歯磨き粉等の口腔用組成物として口腔内で使用することにより、口臭の減少及び口腔内環境の改善が可能である。
【0013】
また、本発明品で使用する植物は、いずれも食品素材、ハーブティ及び天然添加物として古くより用いられているものであり、その安全性については全く問題ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明品で使用する植物、カラホオ(Magnolia officinalis)、ホオノキ(Magnolia obovata)、アカメガシワ(Mallotus japonicus)、クワ(Morus alba)、アイスランドゴケ(Cetraria islandica)、グァバ(Psidium guajava)、ホアハウンド(Marrubium vulgare)、ガラナ(Paullinia cupana)、オオバコ(Plantago asiatica)、アルカネット(Anchusa officinalis)、アケビ(Akebia quinata)、クコ(Lycium chinense)、カゴソウ(Prunella vulgaris)、オレガノ(Origanum vulgare)、フェンネル(Foeniculum vulgare)、ハス(Nelumbo nucifera)、キンカン(Fortunella japonica)、緑茶(Camellia sinensis)及びシソ(Perilla frutescens)は、その全体、葉、果実、花、樹皮、根等の部位を使用することができるが、オレガノ、クワ、クコ、シソ及びハスについてはその葉を、アカメガシワについてはその樹皮を、アルカネットについてはその根及び根茎を、アケビ、ガラナ、キンカン及びフェンネルについてはその果肉、果実を、オオバコはその種子を、カゴソウ及びグァバは、好ましくはその花、カラホオ及びホオノキについてはその樹皮、果実を、アイスランドゴケ及びホアハウンドについてはその全草を、緑茶はその葉を使用することが望ましい。
【0015】
本発明における植物抽出物を得るには、従来公知の抽出方法によって作製することができ特に限定はしないが、一般的には最初に上記植物を適当な手段で粉砕する。次に、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール並びにn−ブタノール等の低級アルコール、エーテル、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン、グリセリン、プロピレングリコール等の有機溶剤の1種または2種以上の混合溶媒を加えて、従来行なわれている抽出方法によって抽出する。しかし、本発明品は、医薬品、口腔内組成物としてまた飲食物として用いるものであることを考慮すると、抽出溶媒としては安全性の面から水とエタノールとの組み合わせを用いるのが望ましい。抽出条件としては、高温、室温、低温のいずれかの温度で抽出することができるが、50〜80℃で1〜5時間程度が好ましい。
【0016】
このようにして得られた抽出物は、濾過し、減圧下において濃縮または凍結乾燥したものを使用することもできる。また、これらの抽出物を有機溶剤、カラムクロマトグラフィー等により分画精製したものも使用することも可能である。
【0017】
本発明のメチオニナーゼ阻害剤は、上記方法によって作製した植物抽出物の1種または2種以上を有効成分として使用することにより作製することができる。必要により適当な液体単体に溶解するか或いは分散させ、または適当な粉末単体と混合するか或いはこれに吸着させ、場合によっては、さらにこれに乳化剤、安定剤、分散剤等を添加して、錠剤、散剤、乳剤、水和剤等の製剤として使用してもよい。この場合の添加量としては、剤に対して乾燥抽出物を0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜25重量%の割合になるように添加するのが好適である。
【0018】
また本発明のメチオニナーゼ阻害剤は、香り、呈味性に優れ、安全性が高いことから、例えば、練り歯磨、含嗽剤、消臭スプレー等の口腔用組成物、チューインガム、キャンディ、錠菓、グミゼリー、チョコレート、ビスケット等の菓子、アイスクリーム、シャーベット、氷菓等の冷菓、飲料、スープ並びにジャム等の飲食品に配合し、日常的に利用することが可能である。
【0019】
添加量としては、飲食品または組成物に対して乾燥抽出物を約0.001重量%以上、好ましくは約0.01重量%以上添加する。さらに飲食品においては、特に嗜好性の面を考慮すると約0.001〜5重量%、好ましくは約0.01〜1重量%の割合になるように添加するのが好適である。
【0020】
本発明で使用する植物は、シソ、ガラナ、キンカンをはじめとして、いずれも生薬、食品素材、ハーブティ並びに天然添加物として古くより用いられているものであり、これらの抽出物並びにこれを配合した飲食品及び組成物の安全性については全く問題ない。
【0021】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明品を更に詳細に説明するが、それらによって本発明品の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0022】
オレガノ乾燥葉粉末10gに水100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を2.00g得た。
【0023】
同様にして、カラホオ樹皮、ホオノキ樹皮、アカメガシワ樹皮、クワ葉、アイスランドゴケ全草、グァバ葉、ホアハウンド地上部、ガラナ実、オオバコ種子、アルカネット根、アケビ実、クコ葉、カゴソウ花、フェンネル実、ハス葉、キンカン実、緑茶葉、シソ葉、カキ葉(対照)、ビワ葉(対照)及びスギナ地上部(対照)について、水を用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。抽出物の収率を表1に示した。
【実施例2】
【0024】
アルカネット乾燥根粉末10gに50%エタノール100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を0.59g得た。
【0025】
同様にして、カラホオ樹皮、ホオノキ樹皮、アカメガシワ樹皮、クワ葉、アイスランドゴケ全草、グァバ葉、ホアハウンド地上部、ガラナ実、オオバコ種子、アケビ実、クコ葉、カゴソウ花、オレガノ葉、フェンネル実、ハス葉、キンカン実、緑茶葉、シソ葉、カキ葉(対照)、ビワ葉(対照)及びスギナ地上部(対照)について、50%エタノールを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。抽出物の収率を表1に示した。
【実施例3】
【0026】
アイスランドゴケ粉末10gに70%エタノール100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を0.88g得た。
【0027】
同様にして、カラホオ樹皮、ホオノキ樹皮、アカメガシワ樹皮、グァバ葉及びホアハウンド地上部について、70%エタノールを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。抽出物の収率を表1に示した。
【実施例4】
【0028】
ホアハウンド地上部粉末10gに100%エタノール100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を0.60g得た。
【0029】
同様にして、カラホオ樹皮、ホオノキ樹皮、アカメガシワ樹皮、クワ葉、アイスランドゴケ全草、グァバ葉、ガラナ実、オオバコ種子、アルカネット根、アケビ実、クコ葉、カゴソウ花、オレガノ葉、フェンネル実、ハス葉、キンカン実、緑茶葉、シソ葉、カキ葉(対照)、ビワ葉(対照)及びスギナ地上部(対照)について100%エタノールを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。各抽出物の収率を表1に示した。
【実施例5】
【0030】
クワ葉粉末10gに100%酢酸エチル100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を4.09g得た。
【0031】
同様にして、カラホオ樹皮、ホオノキ樹皮、オオバコ種子、アルカネット根及びフェンネル実について100%酢酸エチルを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。各抽出物の収率を表1に示した。
【実施例6】
【0032】
ホオノキ樹皮粉末10gに100%アセトン100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を2.53g得た。
【0033】
同様にして、カラホオ樹皮、アイスランドゴケ全草及びオレガノ葉について100%アセトンを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。各抽出物の収率を表1に示した。
【実施例7】
【0034】
アイスランドゴケ粉末10gに100%n−ブタノール100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を0.77g得た。
【0035】
同様にして、オオバコ種子及びクコ葉について100%n−ブタノールを用いて抽出し、抽出液を濃縮または凍結乾燥することにより抽出物を調製した。各抽出物の収率を表1に示した。
【実施例8】
【0036】
ホアハウンド地上部粉末10gに100%メタノール100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を0.80g得た。抽出物の収率を表1に示した。
【実施例9】
【0037】
オオバコ種子粉末10gに100%エーテル100mlを加え、還流冷却器をつけて、1時間還流しながら抽出する。得られた抽出液を濾別し、溶媒を除去した後、凍結乾燥することにより抽出物を0.89g得た。抽出物の収率を表1に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【試験例】
【0040】
メチオニンはメチオニナーゼの反応によりメチルメルカプタン、アンモニア及び2−ケト酪酸が生成する。この反応生成物の中で比較的、安定な物質である2−ケト酪酸の生成量を酵素反応の指標とした。具体的な方法としては、嫌気条件で2日間培養したフゾバクテリウム・ヌクレイタムATCC25586を超音波処理により破壊することで得た酵素、メチオニン、ピリドキサールリン酸及び素材(終濃度:200μg/ml)を、リン酸緩衝液(50mM、pH7.6)中で混合した。37℃で1時間反応させた後、0.5mlの反応液を同量の過塩素酸水溶液(6%)と混合し、タンパク質を変性させた後、3000×g、10分間遠心して沈殿物を取り除き試料液とした。反応の副生成物である2−ケト酪酸を定量するために、試料液0.5mlに0.05%3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)溶液0.5mlと1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)1mlを混合し、50℃で30分間反応させた。反応後、反応液が室温にまで低下したことを確認し、吸光度(335nm)を測定した。
【0041】
ただし、評価素材の色が2−ケト酪酸の定量反応に多少の影響を与えることから、サンプルブランク(上記反応でメチオニンだけを除いた反応液)を差し引くことで吸光度の補正を行なった。
【0042】
2−ケト酪酸量は予め作成した検量線により求め、下記計算式により阻害率を算出した。
【0043】
阻害率(%)=((C−S)/C)×100
式中、Cはコントロールの2−ケト酪酸量、Sは試料添加時の2−ケト酪酸量である。
【0044】
メチオニナーゼに対する阻害効果の測定結果を表2に示した。口腔内細菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)由来メチオニナーゼ阻害効果が知られているカキ葉抽出物、ビワ葉抽出物及びスギナ地上部抽出物(特開2002−3353号公報)を対照として評価したところ、阻害率はカキ葉抽出物で40.4%、ビワ葉抽出物で14.8%、スギナ地上部抽出物で21.0%であった。本発明品であるカラホオ樹皮及び実、ホオノキ樹皮、アカメガシワ樹皮、クワ葉、アイスランドゴケ全草、グァバ葉、ホアハウンド地上部、ガラナ実、オオバコ種子、アルカネット根、アケビ実、クコ葉、カゴソウ花、オレガノ葉、フェンネル実、ハス葉、キンカン実、緑茶抽出物及びシソ葉の抽出物はいずれもメチオニナーゼに対して高い阻害活性を示した。特にオオバコ種子、ホアハウンド全草、カラホオ樹皮、ホオノキ樹皮及びクワ葉抽出物が90%を超える非常に強い活性を有することがわかった。
【0045】
以上の試験結果により、本発明品であるカラホオ、ホオノキ、アカメガシワ、クワ、アイスランドゴケ、グァバ、ホアハウンド、ガラナ、オオバコ、アルカネット、アケビ、クコ、カゴソウ、オレガノ、フェンネル、ハス、キンカン、緑茶及びシソより得られた抽出物は、メチオニナーゼ阻害活性を持つことが今回初めて明らかになった。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
実施例1、2、3、4、5、6、7、8及び9で示した方法により調製した本発明品を用いて、以下の処方により、練り歯磨、含嗽剤、消臭スプレー、口臭用スプレー、錠剤、粉末剤等の組成物、チューインガム、キャンディ、錠菓、グミゼリー、チョコレート、ビスケット等の菓子、アイスクリーム、シャーベット、氷菓等の冷菓、飲料、スープ及びジャム等の飲食品を製造した。
【実施例10】
【0049】
練り歯磨の処方
炭酸カルシウム 50.0重量%
グリセリン 20.0
カルボオキシメチルセルロース 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
香料 1.0
サッカリン 0.1
ホオノキ樹皮100%エタノール抽出物(実施例4) 1.0
クロルヘキシジン 0.01
水 残
100.0
【実施例11】
【0050】
含嗽剤の処方
エタノール 2.0 重量%
香料 1.0
サッカリン 0.05
塩酸クロルヘキシジン 0.01
緑茶葉50%エタノール抽出物(実施例2) 0.5
水 残
100.0
【実施例12】
【0051】
口臭用スプレーの処方
エタノール 10.0重量%
グリセリン 5.0
アカメガシワ樹皮50%エタノール抽出物(実施例2) 1.0
香料 0.05
着色料 0.001
水 残
100.0
【実施例13】
【0052】
トローチ剤の処方
ブドウ糖 72.3重量%
乳糖 19.0
アラビアゴム 6.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
カラホオ樹皮70%エタノール抽出物(実施例3) 1.0
100.0
【実施例14】
【0053】
チューインガムの処方
ガムベース 20.0重量%
砂糖 55.0
グルコース 15.0
水飴 9.0
香料 0.5
オオバコ種子100%酢酸エチル抽出物(実施例5) 0.5
100.0
【実施例15】
【0054】
キャンディの処方
砂糖 50.0重量%
水飴 34.0
香料 0.5
オレガノ葉100%アセトン抽出物(実施例6) 0.5
水 残
100.0
【実施例16】
【0055】
錠菓の処方
砂糖 76.4重量%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
香料 0.2
オオバコ種子100%エーテル抽出物(実施例9) 0.1
水 残
100.0
【実施例17】
【0056】
グミゼリーの処方
ゼラチン 60.0重量%
水飴 23.0
砂糖 8.5
植物油脂 4.5
マンニトール 2.95
レモン果汁 1.0
クコ葉100%n−ブタノール抽出物(実施例7) 0.05
100.0
【実施例18】
【0057】
チョコレートの処方
粉糖 41.8重量%
カカオビター 20.0
全脂粉乳 20.0
カカオバター 17.0
マンニトール 2.95
シソ葉水抽出物(実施例1) 1.0
香料 0.2
100.0
【実施例19】
【0058】
ビスケットの処方
薄力1級 25.59重量%
中力1級 22.22
精白糖 4.8
食塩 0.73
ブドウ糖 0.78
パームショートニング 11.78
炭酸水素ナトリウム 0.17
重亜硫酸ナトリウム 0.16
米粉 1.45
全脂粉乳 1.16
代用粉乳 0.29
ホアハウンド地上部100%メタノール抽出物(実施例8) 0.5
水 残
100.0
【実施例20】
【0059】
アイスクリームの処方
脱脂粉乳 50.0重量%
生クリーム 25.0
砂糖 10.0
卵黄 10.0
フェンネル実100%エタノール抽出物(実施例4) 1.0
香料 0.1
水 残
100.0
【実施例21】
【0060】
シャーベットの処方
オレンジ果汁 25.0重量%
砂糖 25.0
卵白 10.0
アルカネット根水抽出物(実施例1) 2.0
水 残
100.0
【実施例22】
【0061】
飲料の処方
オレンジ果汁 30.0重量%
異性化糖 15.24
クエン酸 0.1
ビタミンC 0.04
香料 0.1
グァバ葉70%エタノール抽出物(実施例3) 1.0
水 残
100.0
【実施例23】
【0062】
スープの処方
牛乳 60.00重量%
たまねぎ 20.00
にんじん 10.00
野菜ブイヨン 1.00
バター 0.10
コショウ 0.05
塩 0.05
オレガノ葉100%エタノール抽出物(実施例4) 1.0
水 残
100.0
【実施例24】
【0063】
ジャムの処方
果肉 4.0重量%
砂糖 65.0
清澄果汁 25.0
クエン酸 0.5
アケビ実100%エタノール抽出物(実施例4) 2.0
水 残
100.0
【実施例25】
【0064】
練り歯磨の処方
炭酸カルシウム 50.0重量%
グリセリン 20.0
カルボオキシメチルセルロース 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
香料 1.0
サッカリン 0.1
カラホオ樹皮100%エタノール抽出物(実施例4) 1.0
ホオノキ樹皮70%エタノール抽出物(実施例3) 1.0
クロルヘキシジン 0.01
水 残
100.0
【実施例26】
【0065】
口臭用スプレーの処方
エタノール 10.0重量%
グリセリン 5.0
クワ葉100%エタノール抽出物(実施例4) 1.0
アイスランドゴケ70%エタノール抽出物(実施例3) 1.0
香料 0.05
着色料 0.001
水 残
100.0
【実施例27】
【0066】
チューインガムの処方
ガムベース 20.0重量%
砂糖 55.0
グルコース 15.0
水飴 9.0
香料 0.5
ガラナ実100%エタノール抽出物(実施例4) 0.5
ハス葉100%エタノール抽出物(実施例4) 0.5
100.0
【実施例28】
【0067】
キャンディの処方
砂糖 50.0重量%
水飴 34.0
香料 0.5
クコ葉100%n−ブタノール抽出物(実施例7) 0.5
カゴソウ花100%エタノール抽出物(実施例4) 0.5
水 残
100.0
【実施例29】
【0068】
錠菓の処方
砂糖 76.4重量%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
香料 0.2
キンカン実100%エタノール抽出物(実施例4) 0.1
シソ葉100%エタノール抽出物(実施例4) 0.1
水 残
100.0
【実施例30】
【0069】
錠剤の処方
カラホオ樹皮50%エタノール抽出物(実施例2) 10.0重量%
ラクトース 70.0
結晶性セルロース 15.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
100.0
【0070】
前記成分を細かく粉砕混合した後、直打法(directtableting method)によって錠剤を製造した。各錠剤の総量は100mgであり、そのうちの有効成分は10mgである。
【実施例31】
【0071】
粉末剤の処方
アカメガシワ樹皮水抽出物(実施例1) 5.0重量%
トウモロコシ澱粉 55.0
カルボキシセルロース 40.0
100.0
【0072】
前記成分を細かく粉砕混合して粉末を製造した。硬質カプセルに粉末100mgを入れてカプセル剤を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメガシワ(Mallotus japonicus)、クワ(Morus alba)、アイスランドゴケ(Cetraria islandica)、グァバ(Psidium guajava)、ホアハウンド(Marrubium vulgare)、ガラナ(Paullinia cupana)、オオバコ(Plantago asiatica)、アルカネット(Anchusa officinalis)、アケビ(Akebia quinata)、クコ(Lycium chinense)、カゴソウ(Prunella vulgaris)、オレガノ(Origanum vulgare)、フェンネル(Foeniculum vulgare)、ハス(Nelumbo nucifera)、キンカン(Fortunella japonica)、緑茶(Camellia sinensis)及びシソ(Perilla frutescens)からなる群より選択される1種の植物抽出物を有効成分とすることを特徴とするメチオニナーゼ阻害剤。
【請求項2】
請求項1記載のメチオニナーゼ阻害剤を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項3】
請求項1記載のメチオニナーゼ阻害剤を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2008−308507(P2008−308507A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235788(P2008−235788)
【出願日】平成20年9月13日(2008.9.13)
【分割の表示】特願2003−406118(P2003−406118)の分割
【原出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(307013857)株式会社ロッテ (101)
【Fターム(参考)】