説明

メチオニンγリアーゼ酵素を含む作製された酵素およびその薬理学的調製物

メチオニンγリアーゼ酵素活性を有する新規タンパク質の作製に関する方法および組成物を記載する。例えば、ある種の局面は、1個または複数個のアミノ酸置換を含み、かつメチオニン分解能を有する改変シスタチオニンγリアーゼ(CGL)を開示し得る。さらに、本発明のある種の局面は、開示のタンパク質または核酸を用いたメチオニン枯渇によって癌を処置するための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年2月4日出願の米国出願第61/301,368号に基づく優先権を主張し、その開示全体が、参照により放棄なしに完全に具体的に本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、National Institute of Healthにより授与されたNIH CA 139059の下で政府の支援を受けて作成された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1. 発明の分野
本発明は、概して、L-メチオニンを枯渇させる酵素によって癌を処置するための組成物および方法に関する。より具体的には、メチオニン分解活性を有し、かつヒトの治療に適した大きく増強された安定性を有する新規ヒトメチオニンγリアーゼ酵素の作製に関する。
【背景技術】
【0004】
2. 関連技術の説明
癌性組織においては、必須アミノ酸メチオニンの需要が例外的に高い。メチオニンの枯渇は、非癌性組織に悪影響を及ぼすことなく、多様な腫瘍型を死滅させるために有効であることが示されている。メチオニン枯渇は、アミノ酸を加水分解する酵素の作用を介して達成され得る。ヒトメチオニン枯渇酵素は存在しないが、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来の細菌酵素メチオニンγリアーゼは、診療所において治療的に有効であることが示され、臨床試験において評価されている。しかしながら、細菌タンパク質としてのメチオニンγリアーゼは、高度に免疫原性であって、有害反応および活性の低下をもたらす特異抗体の形成を誘発する。メチオニンγリアーゼは、また、インビトロおよびインビボでおよそ2時間という極めて短い半減期を有し、全身枯渇を達成するためには、極めて頻繁な、非現実的に高い用量の投与を必要とする。
【0005】
全身メチオニン枯渇は、多くの研究の焦点となっており、とりわけ、転移性乳癌、前立腺癌、神経芽腫、および膵癌などの癌を処置するための可能性を有する。この治療アプローチには大きな期待が寄せられているが、細菌由来のメチオニンγリアーゼは、化学療法剤としての魅力を大いに損なう、深刻な欠点を有している。
【0006】
したがって、L-メチオニン枯渇治療の治療的成功のため、これらの欠点を解決するための方法および組成物を開発することが未だに必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明のある種の局面は、癌治療に適切であり得、低い免疫原性および改良された血清安定性を有し得る、メチオニンγリアーゼ(MGL)活性を有するヒトポリペプチド配列を含む新規酵素を提供することにより、当技術分野における重大な欠陥を克服する。したがって、第一の態様において、改変ポリペプチド、具体的には、MGLに関連している霊長類酵素に由来する、メチオニン分解活性を有する新規酵素バリアントが、提供される。例えば、新規酵素バリアントは、SEQ ID NO:10〜17からなる群より選択されるアミノ酸配列を有し得る。特に、バリアントは、ヒトシスタチオニンγリアーゼ(CGL)などのヒト酵素に由来し得る。ある種の局面において、メチオニン分解能を有する改変ヒトシスタチオニンγリアーゼを含むポリペプチドが存在し得る。いくつかの態様において、ポリペプチドは、生理学的条件下でメチオニン分解能を有し得る。例えば、ポリペプチドは、少なくともまたは約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、104、105、106M-1s-1の、またはその中の任意の推論可能な範囲の、メチオニンに対する触媒効率(kcat/KM)を有し得る。さらなる局面において、ポリペプチドは、最大で100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001M-1s-1の、またはその中の任意の推論可能な範囲の、L-ホモシスチンに対する触媒活性kcat/KMを示し得る。
【0008】
前述の改変ポリペプチドは、非改変ポリペプチド(例えば、ネイティブポリペプチド)または本明細書に開示された任意のポリペプチド配列と比較して、ある程度の同一性%を有するものとして特徴付けられ得る。例えば、非改変ポリペプチドは、ネイティブ霊長類シスタチオナーゼ(即ち、シスタチオニンγリアーゼ)の少なくともまたは最大で約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400残基(またはその中の任意の推論可能な範囲)を含むことができる。改変ポリペプチドと非改変ポリペプチドとの間の、または任意の二つの比較配列の間の同一性%は、多くともまたは少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(またはその中の任意の推論可能な範囲)であり得る。前述の同一性%は、ポリペプチドの非改変領域と比較した、ポリペプチドの特定の改変された領域に関していてもよいことも企図される。例えば、ポリペプチドは、シスタチオナーゼの改変または変異型の基質認識部位のアミノ酸配列と、同種または異種に由来する非改変または変異型のシスタチオナーゼの基質認識部位のアミノ酸配列との同一性に基づいて特徴付けられ得る、シスタチオナーゼの改変または変異型の基質認識部位を含有していてもよい。非改変シスタチオナーゼに対する少なくとも90%の同一性を有するものとして例えば特徴付けられる改変または変異型のヒトポリペプチドは、その改変または変異型のヒトポリペプチドのアミノ酸の90%が、非改変ポリペプチドのアミノ酸と同一であることを意味する。
【0009】
そのような非改変ポリペプチドは、ネイティブシスタチオナーゼ、具体的には、ヒトアイソフォームまたはその他の霊長類アイソフォームであり得る。例えば、ネイティブヒトシスタチオナーゼは、SEQ ID NO:1の配列を有し得る。その他のネイティブ霊長類シスタチオナーゼの非限定的な例には、スマトラオランウータン(Pongo abelii)シスタチオナーゼ(Genbank ID:NP_001124635.1;SEQ ID NO:18)、カニクイザル(Macaca fascicularis)シスタチオナーゼ(Genbank ID:AAW71993.1;SEQ ID NO:19)、およびチンパンジー(Pan Troglodytes)シスタチオナーゼ(Genbank ID:XP_513486.2;SEQ ID NO:20)が含まれる。例示的なネイティブポリペプチドには、SEQ ID NO:1もしくは18〜20に対して、多くとももしくは少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%(もしくはその中の任意の推論可能な範囲)の同一性を有する配列、またはそれらの断片が含まれる。例えば、ネイティブポリペプチドは、SEQ ID NO:1または18〜20の配列の少なくともまたは最大で約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、415残基(またはその中の任意の推論可能な範囲)を含み得る。
【0010】
いくつかの態様において、ネイティブシスタチオニンγリアーゼを、化学的な修飾、置換、挿入、欠失、および/または短縮などの1個または複数個の他の改変により改変することができる。例えば、改変は、ネイティブ酵素の基質認識部位におけるものであり得る。特定の態様において、置換によりネイティブシスタチオニンを改変することができる。例えば、置換の数は、1個、2個、3個、4個、またはそれ以上であり得る。さらなる態様において、基質認識部位、または基質特異性に影響を与える可能性のある任意の位置において、ネイティブシスタチオニンγリアーゼを改変することができる。具体的には、改変可能なアミノ酸は、負の電荷を有する残基(例えば、Asp、Asn)または正の電荷を有する残基(例えば、Arg、Lys)のような、荷電残基である。例えば、改変ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のE59、E119、および/もしくはR339に相当するアミノ酸の位置、または霊長類シスタチオニンγリアーゼの59位、119位、および/もしくは339位のアミノ酸の位置に、少なくとも1個のアミノ酸置換を有し得る。例えば、霊長類は、ヒト、スマトラオランウータン、カニクイザル、チンパンジーであり得る。
【0011】
ある種の態様において、改変は、1個または複数個の荷電残基(ArgまたはR、LysまたはK、HisまたはHのような正の電荷を有する残基、ならびにAspまたはDおよびGluまたはEのような負の電荷を有する残基を含む)の、中性残基(例えば、Ala、Asn、Gln、Gly、Ile、Leu、またはVal)への置換であってもよい。例えば、59位、119位、および/または339位のアミノ酸における置換は、アスパラギン酸(N)、バリン(V)、またはロイシン(L)である。具体的な態様において、改変は、E59N、E59V、R119L、およびE339Vからなる群より選択される1個または複数個の置換である。さらなる態様において、置換はR119L置換およびE339V置換を含み得る。さらなる態様において、置換は、E59NまたはE59Vの付加的な置換を含み得る。
【0012】
いくつかの態様において、ネイティブシスタチオニンγリアーゼは、ヒトシスタチオニンγリアーゼであり得る。具体的な態様において、置換は、ヒトシスタチオニンγリアーゼのE59N、R119L、およびE339Vの組み合わせ(例えば、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド、その断片もしくはホモログ)、またはヒトシスタチオニンγリアーゼのE59V、R119L、およびE339Vの組み合わせ(例えば、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有する改変ポリペプチド、その断片もしくはホモログ)である。さらなる態様において、改変ポリペプチドは、スマトラオランウータン(Pongo abelii Pongo abelii)CGL-NLV変異体(SEQ ID NO:12)、スマトラオランウータンCGL-VLV変異体(SEQ ID NO:13);カニクイザルCGL-NLV変異体(SEQ ID NO:14)、カニクイザルCGL-VLV変異体(SEQ ID NO:15);チンパンジーCGL-NLV変異体(SEQ ID NO:16)、およびチンパンジーCGL-VLV変異体(SEQ ID NO:17)であり得る。
【0013】
いくつかの局面において、本発明は、異種アミノ酸配列に連結された改変シスタチオニンγリアーゼを含むポリペプチドも企図する。例えば、融合タンパク質として、改変シスタチオニンγリアーゼを異種アミノ酸配列と連結することができる。具体的な態様において、インビボ半減期を増加させるため、改変シスタチオニンγリアーゼをXTENポリペプチドと連結することができる。
【0014】
血清安定性を増加させるためには、改変シスタチオニンγリアーゼを、1個または複数個のポリエーテル分子と連結することができる。具体的な態様において、ポリエーテルはポリエチレングリコール(PEG)であり得る。リジンまたはシステインのような特定のアミノ酸残基を介して、改変ポリペプチドをPEGと連結することができる。治療的投与のためには、改変シスタチオニンγリアーゼを含むそのようなポリペプチドを、薬学的に許容される担体に分散させることができる。
【0015】
いくつかの局面において、そのような改変シスタチオニンγリアーゼをコードする核酸が企図される。いくつかの態様において、核酸は、細菌における発現のためにコドンが最適化されている。具体的な態様において、細菌は大腸菌(E.coli)である。他の局面において、本発明は、そのような核酸を含有している、発現ベクターのようなベクターをさらに企図する。具体的な態様において、改変シスタチオニンγリアーゼをコードする核酸は、異種プロモーターを含むがこれに限定されないプロモーターに、機能的に連結されている。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、そのようなベクターを含む宿主細胞をさらに企図する。宿主細胞は、大腸菌のような細菌であり得る。メチオニン分解活性を有する所望のCGL変異体を、ネイティブシスタチオニンγリアーゼからさらに識別するためには、ilvAおよびmetAの欠失を有する宿主細胞(例えば、大腸菌ilvA-metA-)を調製し、所望の変異体を同定するために使用することができる。
【0017】
さらなる態様において、L-メチオニン分解活性を有する霊長類シスタチオニンγリアーゼバリアントを同定する方法も提供することができ、該方法は、(a)ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼと比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を含む霊長類シスタチオニンγリアーゼバリアントの集団を、遺伝子ilvAおよびmetAの欠失を有する大腸菌株の細胞において発現させる工程;ならびに(b)L-メチオニン分解活性を有する霊長類シスタチオニンγリアーゼバリアントを同定する工程であって、同定されるバリアントを発現する細胞が、ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼを発現するがそれ以外は同一の条件にある細胞と比較して、L-メチオニンが補充された最少培地において、より高い増殖速度を有する、工程。
【0018】
いくつかの態様において、ベクターは、改変シスタチオニンγリアーゼの発現のために宿主細胞に導入される。タンパク質は任意の適切な様式で発現されてよい。一つの態様において、タンパク質は、タンパク質がグリコシル化されるような宿主細胞において発現される。別の態様において、タンパク質は、タンパク質がグリコシル化されないような宿主細胞において発現される。
【0019】
本発明のある種の局面は、本発明の改変シスタチオニンγリアーゼペプチド、核酸、または製剤の投与による処置の方法、特に、腫瘍細胞または癌を有する対象を処置する方法も企図する。対象は、マウスのような任意の動物であり得る。例えば、対象は、哺乳動物、具体的には、霊長類、より具体的には、ヒト患者であり得る。いくつかの態様において、方法は、癌を有する患者を選択する工程を含んでいてもよい。ある種の局面において、対象または患者は、メチオニン制限食で維持されていてもよいし、または普通食で維持されていてもよい。
【0020】
いくつかの態様において、癌はメチオニン枯渇に感受性の任意の癌である。一つの態様において、本発明は、そのようなポリペプチドを含む製剤を投与する工程を含む、腫瘍細胞または癌患者を処置する方法を企図する。いくつかの態様において、投与は、癌の細胞の少なくとも一部分が死滅するような条件の下でなされる。別の態様において、製剤は、生理学的条件においてメチオニン分解活性を有し、かつポリエチレングリコール鎖をさらに付着させた、そのような改変シスタチオニンγリアーゼを含む。いくつかの態様において、製剤は、上述のシスタチオニンγリアーゼバリアントのいずれかと、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的製剤である。そのような薬学的に許容される賦形剤は、当業者に周知である。上記シスタチオニンγリアーゼバリアントは、全て、ヒト治療のために有用なものとして企図され得る。
【0021】
さらなる態様において、メチオニン分解活性を有する非細菌(哺乳動物、例えば、霊長類またはマウス)改変シスタチオニンγリアーゼまたはそれをコードする核酸を含む製剤を投与する工程を含む、腫瘍細胞を処置する方法も提供され得る。
【0022】
腫瘍細胞はメチオニンについて栄養培地に依存するため、投与または処置は、細胞のための栄養源に向けられてもよく、必ずしも細胞自体に向けられなくてもよい。したがって、インビボ適用において、腫瘍細胞の処置は、腫瘍細胞の集団のための栄養培地と、作製されたメチオニナーゼとを接触させる工程を含む。この態様において、培地は、血液、リンパ液、脊髄液等の、メチオニン枯渇が望まれる体液であり得る。
【0023】
本発明のある種の局面によると、改変シスタチオニンγリアーゼを含有しているそのような製剤は、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、滑膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、外用、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、経口、外用、吸入、注入、連続注入、局部灌流により、カテーテルを介して、洗浄を介して、脂質組成物(例えば、リポソーム)で、または当業者に公知のその他の方法もしくはそれらの任意の組み合わせによって投与可能である。
【0024】
本発明の方法および/または組成物に関して記述された態様を、本明細書に記載された他の任意の方法または組成物に関して利用してもよい。したがって、ある方法または組成物に関する態様を、本発明の他の方法および組成物にも同様に適用することができる。
【0025】
本明細書において使用されるように、核酸に関する「コードする(encode)」または「コードする(encoding)」という用語は、本発明を当業者によって容易に理解可能にするために使用される;しかしながら、これらの用語は、それぞれ「含む(comprise)」または「含む(comprising)」と交換可能に使用される場合もある。
【0026】
本明細書において使用されるように、「一つの(a)」または「一つの(an)」は、一つまたは複数を意味することができる。特許請求の範囲において使用されるように、「含む」という単語と共に使用された時、「一つの(a)」または「一つの(an)」という単語は、一つまたは複数を意味することができる。
【0027】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみをさすと明示されない限り、または選択肢が相互に排他的であることが明示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみをさすおよび「および/または」をさすという定義を支持する。本明細書において使用されるように、「別の」とは、少なくとも第二またはそれ以上を意味し得る。
【0028】
本願の全体にわたって、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために利用される装置、方法についての固有の誤差の変動、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0029】
本発明のその他の目的、特色、および利点は、以下の詳細な説明より明白になるであろう。しかしながら、本発明の本旨および範囲に含まれる様々な変化および変更が、この詳細な説明から、当業者には明白になるため、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示すものであって、例示のためにのみ与えられていることが、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある種の局面をさらに証明するために含まれている。本発明は、本明細書に提示された具体的な態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの一つまたは複数を参照することにより、よりよく理解され得る。
【図1】CGLおよびMGLは、それぞれ、L-シスタチオニンまたはL-メチオニン(L-Met)から、アンモニア、α-ケトブチレート、およびシステインまたはメタンチオールへの、類似のPLP依存性分解を触媒する。
【図2】37℃でインキュベートされたプールされたヒト血清における経時的な活性(%)のプロット。2±0.1時間という見かけのT0.5を有するプチダ菌(p.putida)由来のMGL(白丸)、16±0.8時間という見かけのT0.5を有するヒトCGL(黒三角)、95±3時間という見かけのT0.5を有するバリアントhCGL-NLV(黒菱形)、および260±18時間という見かけのT0.5を有するバリアントhCGL-VLV(黒丸)。
【図3】およそ68℃という見かけのTM値を有するヒトCGL(黒三角)およびバリアントhCGL-NLV(黒菱形)、ならびにおよそ71℃という見かけのTMを有するバリアントhCGL-VLV(黒丸)。
【図4】PEG化は、hCGLバリアントの見かけの分子量を大幅に増加させる。MWラダー(レーン1)、精製hCGLバリアント(レーン2)、および様々な量のPEG NHS-エステルMW 5000(10、20、40、および80倍モル過剰、それぞれレーン3〜6)により修飾された精製hCGLバリアントのSDS-PAGE。
【図5】PEG化は、hCGLバリアントの見かけの分子量を大幅に増加させる。PEG化hCGLバリアントのおよそ1,340kDa(A)、非PEG化hCGLバリアントのおよそ220kDa(B)という見かけのMWを示すSEC(サイズ排除クロマトグラフィ)クロマトグラフィ。
【図6】神経芽腫細胞株Lan-1に対するL-Met枯渇酵素の効果。0.6μMという見かけのIC50を有する組換えpMGL(白丸)、および0.3μMという見かけのIC50を有する組換えhCGL-NLV(黒菱形)。
【図7】PEG-hCGL-NLVの薬力学的分析。血清試料中の酵素活性のt=0に対する相対的な割合(%)が、経時的にプロットされている(黒菱形)。見かけの活性T1/2は28±4時間であった。
【図8】Met(-)Hcyss(-)Chl(-)食を胸腺欠損マウスに与えた後、200U PEG-hCGL-NLVを投与した(N=5)。血清メチオニン濃度を平均値±SDとして表した。血中メチオニンレベルは、8時間目に、3.9±0.7μmol/Lという最低値にまで減少した。
【図9】様々な神経芽腫細胞株の増殖のインビトロ阻害についての、PEG化hCGL-NLVとpMGLとの比較。
【図10】LAN-1異種移植片を保持している胸腺欠損マウス。(白四角)普通食による対照(N=10);(黒丸)Met(-)Hcyss(-)Chl(-)マウス飼料(N=10);(白丸)Met(-)Hcyss(-)Chl(-)マウス飼料と組み合わせられた100U PEG-hCGL-NLV(N=10)(黒三角は処理日)。腫瘍増殖速度を、各群について、平均値±SEM(平均値の標準誤差)として表した。 Met(-)Hcyss(-)Chl(-)マウス飼料と組み合わせられたPEG-hCGL-NLVの処理を、他の二つの群と比較した時、p<0.01。
【図11】遺伝子ilvAおよびmetAの二重欠失を示す大腸菌のL-メチオニンおよびL-イソロイシンの合成経路の模式図。これは、大腸菌をL-Met要求性かつL-Ile要求性にする。大腸菌が、L-Metが補充された培地で培養され、活性メチオニンγリアーゼをコードする遺伝子を保持している場合には、得られたα-ケトブチレート産生がL-Ile要求性を補う。
【図12】0.5mM L-メチオニンが補充されたM9最少培地寒天に播種された、メチオニンγリアーゼの遺伝子をコードするプラスミド(左)またはシスタチオニンγリアーゼをコードする遺伝子(右)のいずれかを含有している大腸菌BL21(DE3)(ΔilvAΔmetA)。MGL活性のみがL-イソロイシン要求性をレスキューすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例示的な態様の説明
本開示は、ある種の態様によると、概して、メチオニン分解活性を有するよう作製された新規ヒト酵素を調製するための組成物および方法、ならびにその関連する治療的適用に関する。
【0032】
理論または機序によって拘束されることは望まないが、本開示は以下の研究に基づく。96穴プレートにおいて生成物α-ケトブチレートの形成をモニタリングすることにより、メチオニンγリアーゼを検出するためのハイスループットアッセイを、まず、開発し、メタンチオールの形成を追跡して、酵素動態を迅速に決定するための第二のアッセイも開発した。酵素によるα-ケトブチレートの形成、それによる、大腸菌ilvA変異細胞の増殖のレスキューに基づき、L-メチオニン分解活性についての遺伝学的選択を考案した。さらに、高いメチオニンγリアーゼ活性を有するシスタチオニンγリアーゼバリアントを単離するため、飽和変異誘発およびランダム変異誘発、それに続く、メチオニン分解についてのハイスループットスクリーニングを実施した。
【0033】
本明細書において使用されるように、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸を含む化合物をさし、交換可能に使用される。
【0034】
本明細書において使用されるように、「融合タンパク質」という用語は、非ネイティブの方式で機能的に連結されたタンパク質またはタンパク質断片を含有しているキメラタンパク質をさす。
【0035】
本明細書において使用されるように、「半減期」という用語は、インビトロまたはインビボで、例えば、哺乳動物への注射の後、そのポリペプチドの濃度が半分になるまでに必要とされる時間をさす。
【0036】
「機能的な組み合わせで」、「機能的な順序で」、および「機能的に連結された」という用語は、そのように記載された成分が、意図された様式で機能することができる関係にあるような連結、例えば、核酸分子が所定の遺伝子の転写および/もしくは所望のタンパク質分子の合成を指図することができるような様式での核酸配列の連結、または融合タンパク質が生成されるような様式でのアミノ酸配列の連結をさす。
【0037】
「リンカー」という用語は、リンカーのある部分が第一の分子に機能的に連結され、リンカーのもう一つの部分が第二の分子に機能的に連結される、2個の異なる分子を機能的に連結するための分子的なブリッジとして作用する化合物またはモエティをさすものとする。
【0038】
「PEG化」という用語は、生体適合度が高く、修飾が容易であるため、薬物担体として広く使用されているポリエチレングリコール(PEG)とのコンジュゲーションをさす。PEGは、化学的な方法を介して、PEG鎖の末端にあるヒドロキシ基を通して活性薬剤に結合(例えば、共有結合)され得る;しかしながら、PEG自体は、1分子当たり高々2個の活性薬剤に限定されている。異なるアプローチにおいて、PEGおよびアミノ酸のコポリマーが、PEGの生体適合性を保持しつつ、1分子当たりの付着点が多いという付加的な利点を有し(したがって、より大きい薬物負荷を提供し)、多様な適用に適合するよう合成的に設計可能な、新規のバイオマテリアルとして探究されている。
【0039】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたはその前駆物質の産生のために必要な制御配列およびコード配列を含むDNA配列をさす。ポリペプチドは、全長コード配列によってコードされていてもよいし、または所望の酵素活性が保持されるよう、コード配列の任意の一部分によってコードされていてもよい。
【0040】
「ネイティブ」という用語は、天然に存在する起源から単離された時の遺伝子、遺伝子産物の典型的な型、または遺伝子もしくは遺伝子産物の特徴をさす。ネイティブ型とは、天然集団において最も高頻度に観察され、したがって、正常型または野生型と任意で呼ばれるものである。対照的に、「改変(された)」、「バリアント」、または「変異型」という用語は、ネイティブの遺伝子または遺伝子産物と比較した時に、配列および機能的特性に改変(即ち、変更された特徴)が見られる遺伝子または遺伝子産物をさす。
【0041】
「ベクター」という用語は、核酸配列を、それが複製可能な細胞への導入のため、挿入することができる担体核酸分子をさすために使用される。核酸配列は、「外来性」であってもよく、即ち、ベクターが導入される細胞にとって異物であってもよいし、または細胞内の配列に相同であるが、通常はその配列が見出されない宿主細胞核酸内の位置にあってもよい。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者であれば、標準的な組み換え技術を通して、ベクターを構築することが十分に可能であろう(例えば、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、Maniatis et al., 1988およびAusubel et al.,1994を参照のこと)。
【0042】
「発現ベクター」という用語は、転写可能なRNAをコードする核酸を含む任意の型の遺伝子構築物をさす。いくつかの場合において、RNA分子は、次いで、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。その他の場合において、これらの配列は翻訳されず、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムを産生する。発現ベクターは、多様な「制御配列」を含有しているかもしれない。「制御配列」とは、特定の宿主細胞における、機能的に連結されたコード配列の転写のために必要であって、翻訳のためにも必要である可能性がある核酸配列をさす。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、下記の、その他の機能も果たす核酸配列を含有していてもよい。
【0043】
「治療的に有効な」という用語は、本明細書において使用されるように、処置される状態の少なくとも一つの症状が少なくとも改善されるような治療効果を達成するための、方法において利用される細胞および/もしくは(治療用ポリヌクレオチドおよび/もしくは治療用ポリペプチドのような)治療用組成物の量、ならびに/またはこれらの細胞と共に使用される過程または材料の分析をさす。
【0044】
「KM」という用語は、本明細書において使用されるように、酵素についてのミカエリスメンテン定数をさし、酵素によって触媒される反応において所定の酵素がその最高速度の半分を与える特異的基質の濃度として定義される。「kcat」という用語は、本明細書において使用されるように、酵素が最大効率で作用している際の、代謝回転数、または各酵素部位が単位時間当たりに生成物へと変換する基質分子の数をさす。「kcat/KM」という用語は、本明細書において使用されるように、酵素がどの程度効率的に基質を生成物に変換するかの尺度である特異性定数である。
【0045】
「シスタチオニンγリアーゼ」(CGLまたはシスタチオナーゼ)という用語は、シスタチオニンのシステインへの加水分解を触媒する酵素をさす。例えば、それには、霊長類型シスタチオニンγリアーゼ、または、具体的には、ヒト型シスタチオニンγリアーゼが含まれる。
【0046】
I. メチオニンγリアーゼおよびシスタチオニンγリアーゼ
リアーゼとは、新たな二重結合または新たな環構造がしばしば形成される、様々な化学結合の切断を触媒する酵素である。例えば、この反応を触媒した酵素は、リアーゼである:ATP→cAMP+PPi。リアーゼは、一方向の反応については一つの基質しか必要としないが、逆反応については二つの基質を必要とする点で、他の酵素と異なる。
【0047】
システイン、ホモシステイン、およびメチオニンの代謝には、多数のピリドキサール-5'-リン酸(PLP)依存性酵素が関与しており、これらの酵素は、Cys/Met代謝PLP依存性酵素と呼ばれる進化上の関連ファミリーを形成している。これらの酵素は、約400アミノ酸のタンパク質であり、PLP基が、ポリペプチドの中央の位置に位置するリジン残基に付着している。このファミリーのメンバーには、シスタチオニンγリアーゼ(CGL)、シスタチオニンγ合成酵素(CGS)、シスタチオニンβリアーゼ(CBL)、メチオニンγリアーゼ(MGL)、O-アセチルホモセリン(OAH)/O-アセチルセリン(OAS)スルフヒドリラーゼ(OSHS)が含まれる。それらの全てに共通であるのは、外部基質アルジミンをもたらすミカエリス複合体の形成である。反応のさらなる経過は、特定の酵素の基質特異性によって決定される。
【0048】
例えば、本発明者らは、基質特異性を変化させるため、ヒトシスタチオニンγリアーゼのようなPLP依存性リアーゼファミリーメンバーに、特異的な変異を導入した。このようにして、本発明者らは、基質としてのL-Metを分解する能力を新規に有するようになった新規バリアントを生成した。その他の態様において、新規メチオニン分解活性を生ずるための、その他のPLP依存性酵素の改変も、企図され得る。
【0049】
PLP依存性酵素として、メチオニンγリアーゼ(EC 4.4.1.11)は、化学反応

を触媒する酵素である。したがって、この酵素の二つの基質は、L-メチオニンおよびH2Oであって、三つの生成物はメタンチオール、NH3、および2-オキソブタノエートである。この酵素は、リアーゼのファミリー、具体的には、炭素-硫黄リアーゼのクラスに属している。この酵素クラスの系統名は、L-メチオニンメタンチオール-リアーゼ(脱アミノ2-オキソブタノエート形成)である。一般的に使用されているその他の名称には、L-メチオニナーゼ、メチオニンリアーゼ、メチオニナーゼ、メチオニンデチオメチラーゼ、L-メチオニンγリアーゼ、およびL-メチオニンメタンチオール-リアーゼ(脱アミノ)が含まれる。この酵素はセレノアミノ酸の代謝に参与する。それは、一つの補因子、ピリドキサール-5'-リン酸を利用する。
【0050】
メチオニナーゼは、通常、389〜441アミノ酸からなり、同種テトラマーを形成する。メチオニナーゼ酵素は、概して、分子量およそ45kDaの4個の同一サブユニットから構成されている(Sridhar et al.,2000;Nakamura et al.,1984)。酵素の構造は結晶化により解明された(Kudou et al.,2007)。四量体の各セグメントは、三つの領域から構成される:2個のヘリックスおよび3個のベータ鎖を含んでいる長いN末端ドメイン(残基1〜63)、8個のアルファヘリックスの間にはさまれている主として平行の7本鎖ベータシートから構成される大きいPLP結合ドメイン(残基64〜262)、ならびにC末端ドメイン(残基263〜398)。補因子PLPが触媒機能のために必要とされる。触媒作用にとって重要なアミノ酸は、構造に基づき同定されている。他のc-ファミリー酵素においても強く保存されている近隣サブユニットのTyr59およびArg61は、PLPのリン酸基と接触している。これらの残基は、活性部位内の主要なアンカーとして重要である。あるモノマーのLys240、Asp241、およびArg61と、隣接モノマーのTyr114およびCys116とが、酵素に特異性を付与する、メチオニナーゼ活性部位内の水素結合ネットワークを形成する。
【0051】
シスタチオニンγリアーゼ(CGLまたはシスタチオナーゼ)は、シスタチオニンをシステインおよびα-ケトブチレートへと分解する酵素である。ピリドキサールリン酸が、この酵素の補欠分子族である。哺乳動物は、メチオニナーゼ(MGL)を有しないが、細菌MGL酵素との配列、構造、および化学の相同性を有するシスタチオナーゼは有している。実施例において示されるように、L-メチオニン分解活性を有しないシスタチオナーゼを、このアミノ酸を高速で分解することができる酵素へと変換するため、タンパク質工学が使用された。
【0052】
II. メチオニナーゼの作製
ヒトはメチオニンγリアーゼ(MGLまたはメチオニナーゼ)を産生しないため、ヒトの治療のためには、生理学的条件下でメチオニンを分解する高い活性および特異性を有し、血清のような生理学的液体において高い安定性を有し、かつ、通常は免疫寛容を誘発するネイティブタンパク質であるために非免疫原性でもあるメチオニナーゼを作製する必要がある。
【0053】
pMGLを用いた動物研究において見られる望まれない免疫原性効果のため、ヒト酵素においてL-メチオニン分解活性を作り出すことが望ましい。ヒトタンパク質に対する免疫寛容のため、そのような酵素は、非免疫原性または最小限に免疫原性であり、したがって、耐容性がよい可能性が高い。
【0054】
作製されたメチオニナーゼとしてMGL活性を有する新規酵素のある種の局面は、これらの必要性を解決する。哺乳動物は、MGLを有しないが、細菌MGL酵素との配列、構造、および化学の相同性を有するシスタチオニンγリアーゼ(CGL)は有している。CGLは、哺乳動物のトランス硫化経路(Rao et al.,1990)における最後の段階を触媒する四量体である。CGLは、L-シスタチオニンからL-システイン、α-ケトブチレート、およびアンモニアへの変換を触媒する(図1)。ヒトCGL(hCGL)cDNAは、以前にクローニングされ発現されているが、収量は比較的低かった(およそ5mg/L培養物)(Lu et al.,1992;Steegborn et al.,1999)。
【0055】
例えば、シスタチオニンγリアーゼはネイティブ型ではメチオニナーゼ活性を示さないが、高い効率でメチオニンを加水分解するよう変異誘発を介して改変された霊長類(特に、ヒト)シスタチオニンγリアーゼ(CGLまたはシスタチオナーゼ)に関する方法および組成物が、提供される。
【0056】
いくつかの態様は、改変タンパク質および改変ポリペプチドに関する。具体的な態様は、非改変バージョンに匹敵する少なくとも一つの機能的活性を示す、好ましくは、メチオニナーゼ酵素活性を示す、改変タンパク質または改変ポリペプチドに関する。さらなる局面において、タンパク質またはポリペプチドは、血清安定性を増加させるためにさらに改変されてもよい。したがって、本願が「改変タンパク質」または「改変ポリペプチド」の機能または活性に言及する時、これには、例えば、メチオニナーゼ酵素活性のような、非改変のタンパク質またはポリペプチドと比べて付加的な利点を保有するタンパク質またはポリペプチドが含まれることを、当業者は理解するであろう。ある種の態様において、非改変のタンパク質またはポリペプチドは、ネイティブシスタチオニンγリアーゼ、具体的には、ヒトシスタチオニンγリアーゼである。具体的には、「改変タンパク質」に関する態様が「改変ポリペプチド」に関して実施されてもよく、逆も同様であることが企図される。
【0057】
活性の決定は、当業者に周知のアッセイ、特に、タンパク質の活性に関するアッセイを使用して達成され得、比較目的のため、例えば、改変または非改変のタンパク質またはポリペプチドのいずれかのネイティブバージョンおよび/または組換えバージョンの使用を含んでいてもよい。例えば、メチオニナーゼ活性は、α-ケトブチレート、メタンチオール、および/またはアンモニアのようなメチオニンの変換に起因する基質の生成を検出するための任意のアッセイによって決定可能である。
【0058】
ある種の態様において、メチオニン分解活性の増加に基づき、改変シスタチオニンγリアーゼのような改変ポリペプチドを同定することができる。例えば、非改変ポリペプチドの基質認識部位を同定することができる。この同定は、構造分析に基づいていてもよいしまたは相同性分析に基づいていてもよい。そのような基質認識部位の改変を含む変異体の集団を生成することができる。さらなる態様において、増加したメチオニン分解活性を有する変異体を、変異体集団から選択することができる。所望の変異体の選択には、メチオニン分解からの副産物または生成物の検出のような方法が含まれ得る。
【0059】
具体的な態様において、L-イソロイシン要求性およびL-メチオニン要求性が存在するような、遺伝子ilvAおよびmetAの染色体欠失を含む作製された大腸菌株を使用する方法が提供され得る。メチオニン分解活性を有するメチオニンγリアーゼまたは作製されたシスタチオニンγリアーゼ(ネイティブシスタチオニンγリアーゼではない)をコードするプラスミドの存在下で、L-メチオニンが補充された培地が提供された時、それは、α-ケトブチレートの生成を通してL-イソロイシン要求性のレスキューを可能にすることができる。本法は、やはりα-ケトブチレートを生成することができる他の経路からの効果を最小化することにより、メチオニン分解活性を有する変異体の同定を容易にすることができる。
【0060】
改変タンパク質は、アミノ酸の欠失および/または置換を保有していてよく;したがって、欠失を有するタンパク質、置換を有するタンパク質、ならびに欠失および置換を有するタンパク質は、改変タンパク質である。いくつかの態様において、これらの改変タンパク質は、例えば、融合タンパク質またはリンカーを有するタンパク質の場合のように、挿入または付加されたアミノ酸をさらに含んでいてもよい。「改変欠失タンパク質」は、ネイティブタンパク質の1個または複数個の残基を欠くが、ネイティブタンパク質の特異性および/または活性を保有することができる。「改変欠失タンパク質」は、低下した免疫原性または抗原性も有することができる。改変欠失タンパク質の例は、少なくとも一つの抗原性領域、即ち、改変タンパク質を投与し得る生物の型のような特定の生物において抗原性であると決定されたタンパク質の領域から、アミノ酸残基が欠失しているものである。
【0061】
置換バリアントまたは交換バリアントは、典型的には、タンパク質内の1個または複数個の部位において、あるアミノ酸の別のアミノ酸への交換を含有しており、ポリペプチドの一つまたは複数の特性、具体的には、エフェクター機能および/または生物学的利用能をモジュレートするために設計され得る。置換は、保存的、即ち、あるアミノ酸が、類似の形および電荷のものに交換されるものであってもよいし、または保存的でなくてもよい。保存的置換は、当技術分野において周知であり、例えば、以下の変化を含む:アラニンからセリンへ;アルギニンからリジンへ;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへ;アスパルテートからグルタメートへ;システインからセリンへ;グルタミンからアスパラギンへ;グルタメートからアスパルテートへ;グリシンからプロリンへ;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへ;イソロイシンからロイシンまたはバリンへ;ロイシンからバリンまたはイソロイシンへ;リジンからアルギニンへ;メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへ;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン、またはメチオニンへ;セリンからトレオニンへ;トレオニンからセリンへ;トリプトファンからチロシンへ;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへ;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへ。
【0062】
欠失または置換に加えて、改変タンパク質は、典型的には、ポリペプチドへの少なくとも1個の残基の付加を含む、残基の挿入を保有していてもよい。これには、ターゲティングペプチドもしくはターゲティングポリペプチド、または単一残基のみの挿入が含まれ得る。融合タンパク質と呼ばれる末端付加は、以下に記述される。
【0063】
「生物学的に機能性の等価物」という用語は、当技術分野においてよく理解されており、さらに本明細書において詳細に定義される。したがって、対照ポリペプチドのアミノ酸と同一であるかまたは機能的に等価であるアミノ酸の約70%〜約80%、または約81%〜約90%、またはさらには約91%〜約99%を有する配列が、タンパク質の生物学的活性が維持される限り、含まれる。改変タンパク質は、ある種の局面において、そのネイティブカウンターパートと生物学的に機能的に等価であり得る。
【0064】
アミノ酸および核酸の配列が、付加的なN末端アミノ酸もしくはC末端アミノ酸または5'配列もしくは3'配列のような付加的な残基を含んでいても、配列が、タンパク質発現が関係する場合の生物学的タンパク質活性の維持を含む、上に示された基準を満たす限り、本明細書に開示された配列のうちの一つに示されたものと本質的に同様であり得ることも理解されるであろう。末端配列の付加は、例えば、コード領域の5'部分もしくは3'部分のいずれかに隣接する様々な非コード配列を含んでいてもよく、または遺伝子内に存在することが公知である、様々な内部配列、即ち、イントロンを含んでいてもよい核酸配列に、特に当てはまる。
【0065】
III. 治療のための酵素的L-メチオニン枯渇
ある種の局面において、L-メチオニンを枯渇させる新規酵素により、肝細胞癌、黒色腫、および腎細胞癌のような、メチオニン枯渇に感受性の癌を含む疾患を処置するため、ポリペプチドを使用することができる。本発明は、具体的には、メチオニン分解活性を有する改変シスタチオニンγリアーゼを使用した処置法を開示する。下記のように、現在利用可能なメチオニンγリアーゼは、典型的には、細菌由来タンパク質であり、ヒトの治療において使用するためには、いくつかの問題が残っている。本発明のある種の態様は、治療効力の増加のため、メチオニンγリアーゼ活性を有する新規酵素を提供する。
【0066】
メチオニン(L-Met)枯渇は、可能性のある癌の処置として長い間研究されてきた。L-Metは必須アミノ酸であるが、多くの悪性のヒト細胞株および腫瘍が、比較的大きなメチオニン必要量を有することが示されている(Halpern et al.,1974;Kreis and Goodenow,1978;Breillout et al.,1990;Kreis et al.,1980;Kreis,1979)。メチオニン依存性の腫瘍細胞株は、ホモシステインをL-Metへと正常にリサイクルする酵素であるメチオニン合成酵素を全くまたは低レベルにしか示さない(Halpern et al.,1974;Ashe et al.,1974)。大部分の正常細胞は、ホモシステインおよびホモシスチンのような前駆物質で増殖することができるが、多くの悪性細胞は細胞外環境からL-Metを直接捕捉しなければならない。また、急速に増殖中の新生物は、増殖のために必要な必須ビルディングブロックの不足によって悪影響を受ける。メチオニンの枯渇は、タンパク質合成を減弱させるのみならず、遺伝子調節にとって特に重要であるS-アデノシルメチオニン(SAM)依存性メチル化経路も調節不全にするため、メチオニンは、特に重要である。
【0067】
正常細胞と癌細胞との間のメチオニン必要量の違いは、治療の機会を提供する。酵素的メチオニン枯渇は、多数の動物モデル研究においても、第I相臨床試験においても調査されている(Tan et al.,1997a;Tan et al.,1996a;Lishko et al.,1993;Tan et al.,1996b;Yoshioka et al.,1998;Yang et al.,2004a;Yang et al.,2004b;Tan et al.,1997b)。
【0068】
ヒトはメチオニン加水分解酵素を欠くため、様々な起源に由来する細菌L-メチオニンγリアーゼMGLが、癌治療のために評価されている。メチオニンγリアーゼは、メチオニンの、メタンチオール、α-ケトブチレート、およびアンモニアへの変換を触媒する。様々な起源に由来する細菌酵素が精製され、癌細胞株に対してメチオニン枯渇剤として試験された。プチダ菌(pMGL)起源が、その他の起源と比較して、触媒活性が高く、KMが低く、kcat値が比較的高いため、治療的適用のために選択された(Esaki and Soda,1987;Ito et al.,1976)。さらに、pMGLの遺伝子が大腸菌へとクローニングされ、タンパク質が高タンパク収量で発現された(Tan et al.,1997a;Hori et al.,1996)。
【0069】
動物モデルにおいてもヒトにおいても、インビボ研究が実施されている。Tanらは、ヌードマウスに異種移植されたヒト腫瘍を用いて研究を実施し、肺癌、結腸癌、腎臓癌、脳癌、前立腺癌、および黒色腫が、全て、pMGLに対して感受性であることを見出した(Tan et al.,1997a)。さらに、動物の体重減少の欠如により決定されたように、有効用量において、毒性は検出されなかった。これらの実験における半減期は、収集された血液試料から測定されたように、わずか2時間と決定された。さらに、MGL活性を維持するためには、PLPの注入が必要とされる。極めて短い半減期にも関わらず、Tanらは、生理食塩水対照と比較した腫瘍増殖の阻害を報告した。
【0070】
Yangらは、霊長類モデルにおいて、MGLの薬物動態学、メチオニン枯渇に関する薬力学、抗原性、および毒性を研究した(Yang et al.,2004b)。用量範囲探索研究が、静脈内投与された1000〜4000単位/kgで実施された。最高用量は、注射後30分以内に血漿メチオニンを検出不能レベル(0.5μM未満)にまで低下させることができ、メチオニンレベルは8時間、検出不能なままであった。薬物動態学的分析は、pMGLが2.5時間という半減期で排除されることを示した。2週間の8時間毎のその用量/日の投与は、血漿メチオニンの2μM未満への定常状態枯渇をもたらした。摂食量の減少およびわずかな体重減少から、軽度の毒性が観察された。残念ながら、28日目における再チャレンジは、1匹の動物においてアナフィラキシーショックおよび死亡をもたらし、そのことから、pMGLが高度に免疫原性であって、ヒトの治療にとって極めて不利であることが示された。その後のヒドロコルチゾンによる前処理はアナフィラキシー反応を防止したが、嘔吐が高頻度に観察された。付加的な再チャレンジは、66日目、86日目、および116日目に実施された。抗rMGL抗体が最初のチャレンジの後に検出され、処置の期間中、濃度が増加した。
【0071】
MGLの治療的実行に対するこれらの観察された障壁に応じて、Yangらは、酵素のPEG化、ならびに半減期および免疫原性に対するその効果を研究した。酵素がメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(MEGC-PEG-5000)と結合された。用量範囲探索研究が再び実施され、4,000単位/kg(90mg/kg)が血漿メチオニンを12時間<5μmol/Lに低下させるのに十分であった。薬物動態学的分析は、PEG化酵素の血清クリアランス半減期が非PEG化と比較して36倍改良されたことを示した。PEG化は、摂食量の減少および軽微な体重減少というわずかな毒性しか観察されなかったため、免疫原性も多少減弱させた。しかしながら、L-Metレベルは、非PEG化酵素の8時間に対して、12時間、検出レベル未満に維持されたに過ぎないため、活性半減期は改良されなかった。これらの結果は、抗新生物剤としてのL-Met枯渇酵素の能力については有望であるが、免疫原性および薬物動態の重大な欠点を課題として有する。
【0072】
本発明のある種の局面は、腫瘍のような疾患を処置するための、メチオニン分解活性を有する改変シスタチオニンγリアーゼを提供する。具体的には、改変ポリペプチドは、ヒトポリペプチド配列を有することができ、したがって、ヒト患者におけるアレルギー反応を防止し、反復投薬を可能にし、治療効力を増加させることができる。
【0073】
本発明の処置法が有用である腫瘍には、固形腫瘍または血液腫瘍に見出されるもののような任意の悪性細胞型が含まれる。例示的な固形腫瘍には、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、および乳房からなる群より選択される器官の腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。例示的な血液腫瘍には、骨髄の腫瘍、T細胞またはB細胞の悪性疾患、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫等が含まれる。
【0074】
シスタチオナーゼに由来する作製されたヒトメチオニナーゼは、癌を有する哺乳動物の腫瘍細胞、腫瘍組織、または循環系からメチオニンを枯渇させるため、または枯渇が望ましいと考えられる場所におけるメチオニンの枯渇のため、多様なモダリティにおいて抗腫瘍剤として本明細書において使用され得る。
【0075】
枯渇は、インビボで、哺乳動物の循環系において実施されてもよいし、組織培養物またはその他の生物学的培地におけるメチオニン枯渇が望まれる場合には、インビトロで実施されてもよいし、生物学的液体、細胞、または組織が体外で操作され、その後、患者哺乳動物の身体に戻されるエクスビボ手法において実施されてもよい。循環系、培養培地、生物学的液体、または細胞からのメチオニンの枯渇は、処置される材料に到達可能なメチオニンの量を低下させるために実施され、したがって、接触させられた材料における環境メチオニンを分解するため、メチオニン枯渇条件下で、メチオニンを枯渇させる量の作製されたヒトメチオニナーゼと、枯渇させるべき材料とを接触させることを含む。
【0076】
腫瘍細胞は、メチオニンについて栄養培地に依存するため、枯渇は細胞のための栄養源に向けられてもよく、必ずしも、細胞自体に向けられなくてもよい。したがって、インビボ適用において、腫瘍細胞の処置は、腫瘍細胞の集団のための栄養培地と、作製されたメチオニナーゼとを接触させることを含む。この態様において、培地は、血液、リンパ液、脊髄液等のメチオニン枯渇が望まれる体液であり得る。
【0077】
メチオニン枯渇の効率は、適用に依って広く変動することができ、典型的には、材料中に存在するメチオニンの量、枯渇の所望の速度、およびメチオニナーゼ曝露に対する材料の耐容性に依る。材料中のメチオニンレベル、したがって、材料からのメチオニン枯渇の速度は、当技術分野において周知の多様な化学的方法および生化学的方法によって容易にモニタリングされ得る。メチオニンを枯渇させる例示的な量は、さらに本明細書に記載され、処置される材料1ミリリットル(ml)当たり0.001〜100単位(U)の作製されたメチオニナーゼ、好ましくは、約0.01〜10U、より好ましくは、約0.1〜5Uの作製されたメチオニナーゼの範囲であり得る。
【0078】
メチオニン枯渇条件とは、メチオニナーゼ酵素の生物学的活性と適合性の緩衝条件および温度条件であり、酵素と適合性の中程度の温度、塩、およびpHの条件、例えば、生理学的条件を含む。例示的な条件には、約4〜40℃、約0.05〜0.2M NaClに等価なイオン強度、および約5〜9のpHが含まれ、生理学的条件が含まれる。
【0079】
具体的な態様において、本発明は、作製されたメチオニナーゼを抗腫瘍剤として使用する方法を企図し、したがって、腫瘍細胞増殖を阻害するのに十分な期間、治療的に有効な量の作製されたメチオニナーゼと、腫瘍細胞の集団とを接触させることを含む。
【0080】
一つの態様において、インビボの接触は、本発明の作製されたメチオニナーゼを含有している治療的に有効な量の生理学的に耐容される組成物を、静脈内注射または腹腔内注射により、患者へ投与し、それにより、患者に存在する腫瘍細胞のための循環血中メチオニン起源を枯渇させることにより達成される。作製されたメチオニナーゼの接触は、腫瘍細胞を含有している組織に、作製されたメチオニナーゼを投与することによっても達成され得る。
【0081】
作製されたメチオニナーゼの治療的に有効な量とは、所望の効果を達成するため、即ち、腫瘍組織または患者の循環系においてメチオニンを枯渇させ、それにより、腫瘍細胞の分裂を中止させるために計算された、予め決定された量である。したがって、本発明の作製されたメチオニナーゼの投与のための投薬量の範囲は、腫瘍細胞分裂および細胞周期進行の症状が低下する、所望の効果を生ずるために十分に大きなものである。投薬量は、過粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全等のような有害な副作用を引き起こすほどに大きくてはならない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、性別、および疾患の程度によって変動し、当業者によって決定され得る。合併症が起こった場合には、個々の医師が投薬量を調整することができる。
【0082】
例えば、作製されたメチオニナーゼの治療的に有効な量は、生理学的に耐容される組成物で投与された時に、1ml当たり約0.001〜約100単位(U)、好ましくは1ml当たり約0.1Uを超え、より好ましくは、1Uを超える、作製されたメチオニナーゼの血管内(血漿)濃度または局所濃度を達成するのに十分であるような量であり得る。典型的な投薬量は、体重に基づき投与され得、約5〜1000U/キログラム(kg)/日、好ましくは、5〜100U/kg/日、より好ましくは、約10〜50U/kg/日、より好ましくは、約20〜40U/kg/日の範囲内である。
【0083】
作製されたメチオニナーゼは、注射または時間をかけた徐々の注入によって非経口的に投与され得る。作製されたメチオニナーゼは、静脈内、腹腔内、経口、筋肉内、皮下、腔内、経皮、皮膚に投与されてもよいし、蠕動手段によって送達されてもよいし、または腫瘍細胞を含有している組織に直接注射されてもよいし、またはポテンシャルバイオセンサーもしくはメチオニンを含有していてもよいカテーテルに接続されたポンプによって投与されてもよい。
【0084】
作製されたメチオニナーゼを含有している治療用組成物は、例えば、単位用量の注射のように、従来法により静脈内投与される。治療用組成物に関して使用された時、「単位用量」という用語は、必要とされる希釈剤;即ち、担体または媒体と共に、所望の治療効果を生ずるよう計算された活性材料の予め決定された量を各々含有している、対象のための単一投薬量として適切な物理的に不連続の単位をさす。
【0085】
組成物は、投薬製剤と適合性の様式で、かつ治療的に有効な量で投与される。投与される量は、処置される対象、活性成分を利用する対象の身体の能力、および望まれる治療効果の程度に依る。投与される必要がある活性成分の正確な量は、実務者の判断に依り、各個体に特有である。しかしながら、全身適用に適した投薬量範囲は、本明細書に開示され、投与経路に依る。初回投与およびブースターショットに適したレジメンも企図され、典型的には、初回投与、それに続く、その後の注射またはその他の投与による1時間以上の間隔の反復投与である。例示的な複数回投与は本明細書に記載され、作製されたメチオニナーゼの継続的に高い血清中および組織中のレベル、反対に低い血清中および組織中のメチオニンレベルを維持するために特に好ましい。あるいは、インビボ治療のための指定された範囲内に血中濃度を維持するのに十分な連続的な静脈内注入が企図される。
【0086】
IV. コンジュゲート
本発明の組成物および方法は、異種ペプチドセグメントまたはポリエチレングリコールのようなポリマーとのコンジュゲートの形成のような、作製されたメチオニナーゼの改良のためのさらなる修飾を含む。さらなる局面において、酵素の水力学的半径を増加させ、したがって、血清持続性を増加させるため、作製されたメチオニナーゼをPEGに連結することができる。ある種の局面において、腫瘍細胞上の外部受容体または結合部位に特異的かつ安定的に結合する能力を有するリガンドのような任意のターゲティング剤に、開示されたポリペプチドをコンジュゲートさせることもできる(米国特許公開第2009/0304666号)。
【0087】
A. 融合タンパク質
本発明のある種の態様は、融合タンパク質に関する。これらの分子は、N末端またはC末端で異種ドメインに連結された改変シスタチオナーゼを有することができる。例えば、融合体は、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現を可能にするため、他の種に由来するリーダー配列を利用してもよい。別の有用な融合体は、6ヒスチジン残基または抗体エピトープのような免疫学的活性を有するドメインのようなタンパク質アフィニティタグの付加を含み、それらは、好ましくは、融合タンパク質の精製を容易にするため、切断可能である。非限定的なアフィニティタグには、ポリヒスチジン、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が含まれる。
【0088】
具体的な態様において、改変シスタチオニンγリアーゼを、XTENポリペプチド(Schellenberger et al,2009)のようなインビボ半減期を増加させるペプチドに連結することもできる。
【0089】
融合タンパク質を生成する方法は、当業者に周知である。例えば、完全融合タンパク質の新規合成によって、または異種ドメインをコードするDNA配列の付着、それに続く、完全融合タンパク質の発現によって、そのようなタンパク質を生成することができる。
【0090】
親タンパク質の機能的活性を回復する融合タンパク質の生成は、タンデムに接続されたポリペプチドの間に、スプライシングされるペプチドリンカーをコードする介在DNAセグメントを用いて、遺伝子を接続することにより、容易になるかもしれない。リンカーは、得られた融合タンパク質の適切な折り畳みを可能にするために十分な長さを有する。
【0091】
B. リンカー
ある種の態様において、作製されたメチオニナーゼを、二官能性架橋試薬を使用して化学的にコンジュゲートさせてもよいし、またはペプチドリンカーを用いてタンパク質レベルで融合させてもよい。
【0092】
二官能性架橋試薬は、アフィニティマトリックスの調製、多様な構造の修飾および安定化、リガンドおよび受容体結合部位の同定、ならびに構造研究を含む、多様な目的のために広範囲に使用されている。Gly-Serリンカーのような適切なペプチドリンカーも、作製されたメチオニナーゼを連結するために使用可能である。
【0093】
2個の同一の官能基を保持する同種二官能性試薬は、同一であってもよいし異なっていてもよい高分子または高分子のサブユニットの間の架橋、およびポリペプチドリガンドの特異的結合部位との連結を誘導するために高度に効率的であることが判明している。異種二官能性試薬は、2個の異なる官能基を含有している。2個の異なる官能基のディファレンシャルな反応性を活用することにより、架橋を選択的かつ順序的に制御することができる。二官能性架橋試薬は、官能基、例えば、アミノ、スルフヒドリル、グアニジノ、インドール、カルボキシルに特異的な基の特異性に従って分類可能である。これらのうち、遊離アミノ基に対する試薬は、市販されており、合成が容易であり、温和な反応条件で適用可能であるため、特に人気が高くなっている。
【0094】
異種二官能性架橋試薬の大部分が、一級アミン反応性基およびチオール反応性基を含有している。別の例において、異種二官能性架橋試薬および架橋試薬を使用する方法が記載されている(参照によりその全体が具体的に本明細書に組み入れられる米国特許第5,889,155号)。架橋試薬は、求電子性マレイミド残基を求核性ヒドラジド残基と化合させ、一例として、アルデヒドの遊離チオールとの結合を可能にする。架橋試薬は、様々な官能基を架橋するよう修飾可能である。
【0095】
さらに、例えば、抗体-抗原相互作用、アビジンビオチン結合、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ホスホエステル結合、ホスホラミド結合、無水物結合、ジスルフィド結合、イオン性相互作用、疎水性相互作用、二重特異性抗体、および抗体断片、またはそれらの組み合わせのような、当業者に公知のその他の連結/結合剤および/または機序を、作製されたヒトメチオニナーゼを化合させるために使用することもできる。
【0096】
合理的な血中安定性を有するクロスリンカーを利用することが好ましい。ターゲティング剤と治療/予防剤とをコンジュゲートするために成功裡に利用可能な多数の型のジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体障害のあるジスルフィド結合を含有しているリンカーは、より大きなインビボ安定性を与えることが判明する場合がある。したがって、これらのリンカーは連結剤の一つの群である。
【0097】
障害のあるクロスリンカーに加えて、障害のないリンカーも、本発明に従い利用可能である。保護されたジスルフィドを含有しないかまたは生成しないと考えられる、その他の有用なクロスリンカーには、SATA、SPDP、および2-イミノチオランが含まれる(Wawrzynczak & Thorpe,1987)。そのようなクロスリンカーの使用は、当技術分野においてよく理解されている。別の態様は、フレキシブルリンカーの使用を含む。
【0098】
化学的にコンジュゲートされた後は、一般に、コンジュゲートしなかった薬剤およびその他の夾雑物からコンジュゲートを分離するため、ペプチドを精製する。臨床的に有用であるよう十分な純度のコンジュゲートを提供するため、多数の精製技術が使用可能である。
【0099】
ゲルろ過、ゲル浸透、または高速液体クロマトグラフィのようなサイズ分離に基づく精製法が、一般に、非常に有用である。ブルーセファロース分離のようなその他のクロマトグラフィ技術も使用可能である。N-ラウロイルサルコシンナトリウム(SLS)のような弱い界面活性剤の使用のような、封入体から融合タンパク質を精製するための従来の方法も、有用であり得る。
【0100】
C. PEG化
本発明のある種の局面において、作製されたメチオニナーゼのPEG化に関する方法および組成物が開示される。例えば、作製されたメチオニナーゼを、本明細書に開示された方法に従ってPEG化することができる。
【0101】
PEG化とは、別の分子、通常、薬物または治療用タンパク質へと、ポリ(エチレングリコール)ポリマー鎖を共有結合的に付着させる過程である。PEG化は、PEGの反応性誘導体を標的高分子と共にインキュベートすることによりルーチンに達成される。薬物または治療用タンパク質へのPEGの共有結合性の付着は、宿主の免疫系から薬剤を「遮蔽」し(免疫原性および抗原性の低下)、薬剤の水力学的サイズ(溶液中のサイズ)を増加させ、それにより、腎クリアランスの低下によって循環時間を延長することができる。PEG化は、疎水性の薬物およびタンパク質に水溶性を与えることもできる。
【0102】
PEG化の第一段階は、PEGポリマーの一方または両方の末端における適切な官能化である。各末端において同一の反応性モエティにより活性化されたPEGは「同種二官能性」として公知であり、存在する官能基が異なる場合、PEG誘導体は「異種二官能性」または「異種官能性」と呼ばれる。PEGポリマーの化学的に活性のまたは活性化された誘導体は、所望の分子にPEGを付着させるための準備ができている。
【0103】
PEG誘導体に適した官能基の選択は、PEGに結合される分子の利用可能な反応性基の型に基づく。タンパク質の場合、典型的な反応性アミノ酸には、リジン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、チロシンが含まれる。N末端アミノ基およびC末端カルボン酸も使用可能である。
【0104】
第一世代PEG誘導体を形成するために使用される技術は、一般に、ヒドロキシル基と反応性の基、典型的には、無水物、酸塩化物、クロロギ酸、および炭酸と、PEGポリマーを反応させる。第二世代PEG化化学においては、アルデヒド、エステル、アミド等のような、より効率的な官能基が、コンジュゲーションのために利用可能である。
【0105】
PEG化の適用はますます進歩し、高度になっており、コンジュゲーションのための異種二官能性PEGの必要性が増加してきている。これらの異種二官能性PEGは、親水性で、フレキシブルで、生体適合性のスペーサーが必要とされる、2個のエンティティの連結において極めて有用である。異種二官能性PEGのための好ましい末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、およびNHSエステルである。
【0106】
最も一般的な修飾剤またはリンカーは、メトキシPEG(mPEG)分子に基づく。それらの活性は、アルコール末端へのタンパク質修飾基の付加に依る。いくつかの場合において、ポリエチレングリコール(PEGジオール)が、前駆分子として使用される。ジオールは、(PEGビス-ビニルスルホンの例において示されるように)ヘテロ二量体またはホモ二量体のPEGと連結された分子を作成するため、両端において後に修飾される。
【0107】
タンパク質は、一般に、プロトン化されていないチオール(システイン残基)またはアミノ基のような求核性部位においてPEG化される。システイニル特異的な修飾試薬の例には、PEGマレイミド、PEGヨード酢酸、PEGチオール、およびPEGビニルスルホンが含まれる。四つは全て温和な条件および中性〜弱アルカリ性のpHにおいて、強くシステイニル特異的であるが、各々、いくつかの短所を有する。マレイミドにより形成されるアミドは、アルカリ性条件下で多少不安定であり得、したがって、このリンカーによる製剤化オプションにはいくらかの限界があり得る。ヨードPEGにより形成されるアミド結合は、より安定しているが、遊離ヨウ素がいくつかの条件の下でチロシン残基を修飾することがある。PEGチオールは、タンパク質チオールとジスルフィド結合を形成するが、この結合もアルカリ性条件下で不安定であり得る。PEG-ビニルスルホン反応性は、マレイミドPEGおよびヨードPEGと比較して比較的遅い;しかしながら、形成されるチオエーテル結合は極めて安定している。そのより遅い反応速度は、PEG-ビニルスルホン反応の制御をより容易にすることもできる。
【0108】
ネイティブシステイニル残基における部位特異的PEG化はめったに実施されないが、それは、これらの残基が通常ジスルフィド結合の形態をとっており、生物学的活性のために必要とされるためである。他方、チオール特異的リンカーのためのシステイニルPEG化部位を組み入れるため、部位特異的変異誘発を使用することができる。システイン変異は、それがPEG化試薬にとって到達可能であって、かつPEG化の後にも生物学的活性を有し続けるよう設計されなければならない。
【0109】
アミン特異的な修飾剤には、PEG NHSエステル、PEGトレシレート、PEGアルデヒド、PEGイソチオシアネート、およびその他のいくつかが含まれる。全て、温和な条件の下で反応し、アミノ基に対して極めて特異的である。PEG NHSエステルは、おそらくより反応性が高い薬剤のうちの一つである;しかしながら、その高い反応性は、大規模ではPEG化反応の制御を困難にすることがある。PEGアルデヒドは、アミノ基とイミンを形成し、次いで、それがシアノ水素化ホウ素ナトリウムにより二級アミンに還元される。水素化ホウ素ナトリウムとは異なり、シアノ水素化ホウ素ナトリウムはジスルフィド結合を還元しない。しかしながら、この化学物質は高度に毒性であって、特に、それが揮発性になる、より低いpHにおいては、用心深く扱われなければならない。
【0110】
大部分のタンパク質に複数個のリジン残基が存在するため、部位特異的なPEG化は困難であり得る。幸い、これらの試薬は、プロトン化されていないアミノ基と反応するため、より低いpHにおいて反応を実施することにより、より低いpKのアミノ基にPEG化を方向付けることが可能である。一般に、αアミノ基のpKは、リジン残基のεアミノ基より1〜2pH単位低い。pH7以下で分子をPEG化することにより、N末端に対する高い選択性を達成できることが多い。しかしながら、これは、タンパク質のN末端部分が生物学的活性に必要とされない場合にのみ、実行可能である。それでも、PEG化による薬物動態学的利益は、インビトロ生理活性の有意な損失を上回ることが多く、PEG化化学に関わらず、はるかに大きなインビボ生理活性を有する生成物をもたらす。
【0111】
PEG化法を開発する時には、いくつかのパラメータを考慮するべきである。幸い、重要なパラメータは、通常、多くとも四つまたは五つである。PEG化条件の最適化のための「実験計画(design of experiments)」アプローチは極めて有用であり得る。チオール特異的なPEG化反応について、考慮するべきパラメータには、以下のものが含まれる:タンパク質濃度、PEGとタンパク質との比率(モル濃度基準)、温度、pH、反応時間、ならびにいくつかの場合、酸素の排除。(酸素は、PEG化生成物の収量を低下させる、タンパク質による分子間ジスルフィド形成に寄与することができる。)アミン特異的な修飾の場合にも、特に、N末端アミノ基を標的とする時、pHがさらに重要になることを除き、(酸素の排除を含む)同一の因子を考慮するべきである。
【0112】
アミン特異的な修飾についてもチオール特異的な修飾についても、反応条件が、タンパク質の安定性に影響を与える可能性がある。これは、温度、タンパク質濃度、およびpHを制限し得る。さらに、PEG化反応を開始する前には、PEGリンカーの反応性が既知でなければならない。例えば、PEG化剤が70%の活性しか有しない場合、使用されるPEGの量は、活性PEG分子のみがタンパク質-PEG反応化学量論において計数されることを確実にしなければならない。
【0113】
V. タンパク質およびペプチド
ある種の態様において、本発明は、作製されたメチオニナーゼのような、少なくとも一つのタンパク質またはペプチドを含む新規組成物に関する。これらのペプチドは、融合タンパク質に含まれていてもよいし、または前記のような薬剤にコンジュゲートされていてもよい。
【0114】
本明細書において使用されるように、タンパク質またはペプチドとは、一般に、遺伝子から翻訳された、約200アミノ酸より大きく全長配列までのタンパク質;約100アミノ酸より大きいポリペプチド;および/または約3〜約100アミノ酸のペプチドをさすが、これらに限定されない。便宜のため、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。
【0115】
本明細書において使用されるように、「アミノ酸残基」とは、当技術分野において公知の天然に存在するアミノ酸、アミノ酸誘導体、またはアミノ酸模倣体をさす。ある種の態様において、タンパク質またはペプチドの残基は、アミノ酸残基の配列を中断する非アミノ酸なしに連続している。他の態様において、配列は1個または複数個の非アミノ酸モエティを含んでいてもよい。具体的な態様において、タンパク質またはペプチドの残基の配列は、1個または複数個の非アミノ酸モエティによって中断されていてもよい。したがって、「タンパク質またはペプチド」という用語には、下記表1に示されるものを含むが、これらに限定されない、天然に存在するタンパク質に見出される20種の一般的なアミノ酸のうちの少なくとも1個、または少なくとも1個の修飾アミノ酸もしくは稀少アミノ酸を含むアミノ酸配列が包含される。
【0116】
タンパク質またはペプチドは、標準的な分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、天然起源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技術により作成され得る。様々な遺伝子に対応するヌクレオチド、ならびにタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピューター化されたデータベースにおいて見出され得る。一つのそのようなデータベースは、National Center for Biotechnology InformationのGenbankデータベースおよびGenPeptデータベース(ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.gov/で入手可能)である。既知の遺伝子のコード領域は、本明細書に開示された技術または当業者に公知の技術を使用して、増幅されかつ/または発現され得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの様々な市販の調製物が、当業者に公知である。
【0117】
VI. 核酸およびベクター
本発明のある種の局面において、作製されたメチオニナーゼまたは改変されたシスタチオナーゼを含有している融合タンパク質をコードする核酸配列が開示され得る。使用される発現系に依って、核酸配列は従来の方法に基づき選択され得る。例えば、作製されたメチオニナーゼは、ヒトシスタチオナーゼに由来し、発現に干渉する可能性のある、大腸菌においては稀にしか利用されない複数個のコドンを含有しており、したがって、それぞれの遺伝子またはそのバリアントを大腸菌発現のためにコドンの最適化を行うことができる。作製されたメチオニナーゼのような関心対象のタンパク質を発現させるためには、様々なベクターを使用することもできる。例示的なベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター、トランスポゾンまたはリポソームに基づくベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
VII. 宿主細胞
宿主細胞は、作製されたメチオニナーゼおよびそのコンジュゲートの発現および分泌を可能にするために形質転換可能な任意のものであり得る。宿主細胞は、細菌、哺乳動物細胞、酵母、または糸状菌であり得る。様々な細菌には、エスケリキア(Escherichia)およびバチルス(Bacillus)が含まれる。サッカロミセス(Saccharomyces)属、クルイベロミセス(Kiuyveromyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、またはピキア(Pichia)属に属する酵母は、適切な宿主細胞として有用である。以下の属を含む、糸状菌の様々な種が、発現宿主として使用可能である:アスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、ペニシリウム(Penicillium)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、アクリャ(Achlya)属、ポドスポラ(Podospora)属、エンドチア(Endothia)属、ムコール(Mucor)属、コクリオボルス(Cochliobolus)属、およびピリキュラリア(Pyricularia)属。
【0119】
使用可能な宿主生物の例には、細菌、例えば、大腸菌MC1061、枯草菌(Bacillus subtilis)BRB1の誘導体(Sibakov et al.,1984)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)SAI123(Lordanescu,1975)、またはストレプトコッカス・リビダンス(lividans)(Hopwood et al.,1985);酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(cerevisiae)AH 22(Mellor et al.,1983)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);糸状菌、例えば、アスペルギルス・ニデュランス(nidulans)、アスペルギルス・アワモリ(awamori)(Ward,1989)、トリコデルマ・リーゼイ(reesei)(Penttila et al.,1987;Harkki et al,1989)が含まれる。
【0120】
哺乳動物宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1;ATCC CCL61)、ラット下垂体細胞(GH1;ATCC CCL82)、HeLa S3細胞(ATCC CCL2.2)、ラット肝細胞癌細胞(H-4-II-E;ATCCCRL 1548)、SV40形質転換サル腎細胞(COS-1;ATCC CRL 1650)、およびマウス胚細胞(NIH-3T3;ATCC CRL 1658)が含まれる。以上は、当技術分野において公知の多くの可能な宿主生物を例示するものであって、限定的なものではない。原則として、原核生物であるか真核生物であるかに関わらず、分泌能を有する全ての宿主が使用可能である。
【0121】
作製されたメチオニナーゼおよび/またはその融合タンパク質を発現する哺乳動物宿主細胞は、親細胞株を培養するために典型的に利用される条件の下で培養される。一般に、細胞は、ウシ胎仔血清のような5〜10%血清が典型的には補充される、標準的なRPMI、MEM、IMEM、またはDMEMのような、生理学的な塩および栄養素を含有している標準的な培地において培養される。培養条件も標準的なものであり、例えば、タンパク質の所望のレベルが達成されるまで、静置培養または回転培養で、培養物が37℃でインキュベートされる。
【0122】
VIII. タンパク質精製
タンパク質精製技術は当業者に周知である。これらの技術には、あるレベルにおいて、ホモジナイゼーション、ならびに細胞、組織、または器官のポリペプチド画分および非ポリペプチド画分への粗分画が含まれる。関心対象のタンパク質またはポリペプチドは、特記しない限り、部分精製または完全精製(または均質になるまでの精製)を達成するため、クロマトグラフィおよび電気泳動の技術を使用してさらに精製されてもよい。純粋なペプチドの調製に特に適した分析法は、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル排除クロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィ、イムノアフィニティクロマトグラフィ、および等電点電気泳動である。特に効率的なペプチド精製法は、ファストパフォーマンスリキッドクロマトグラフィ(fast performance liquid chromatography/FPLC)またはさらには高速液体クロマトグラフィ(HPLC)である。
【0123】
精製されたタンパク質またはペプチドとは、タンパク質またはペプチドが、その天然に入手可能な状態に比べて任意の程度に精製されている、他の成分から単離可能な組成物をさすものとする。単離されたまたは精製されたタンパク質またはペプチドとは、したがって、それが天然に存在し得る環境を含まないタンパク質またはペプチドもさす。一般に、「精製された」とは、様々な他の成分を除去するための分画に供されており、その発現された生物学的活性を実質的に保持しているタンパク質またはペプチドの組成物をさす。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この表記は、タンパク質またはペプチドが、組成物の主成分を形成しており、例えば、組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を占めている組成物をさす。
【0124】
タンパク質精製において使用するのに適した様々な技術は当業者に周知である。これらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体等による沈降、または熱変性、それに続く:遠心分離;イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィ、およびアフィニティクロマトグラフィのようなクロマトグラフィ段階;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらおよびその他の技術の組み合わせが含まれる。当技術分野において一般に公知であるように、様々な精製工程を実施する順序を変更するか、またはある種の工程を省略しても、実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製に適した方法をもたらすことが可能であると考えられる。
【0125】
タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量化するための様々な方法は、本開示を考慮すれば当業者に公知である。これらには、例えば、活性画分の比活性の決定、またはSDS/PAGE分析による画分内のポリペプチドの量の査定が含まれる。画分の純度を査定するための好ましい方法は、画分の比活性を計算し、それを最初の抽出物の比活性と比較し、それにより、「精製倍数」により査定される純度を計算することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、当然、精製を追跡するために選ばれた具体的なアッセイ技術、および発現されたタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を示すか否かに依存する。
【0126】
タンパク質またはペプチドが必ず最も精製された状態で提供されなければならないという一般的な要件は存在しない。実際、実質的な精製度の低い生成物が、ある種の態様において利用可能性を有し得ることが企図される。部分精製は、より少ない精製工程を組み合わせて使用することにより、または同一の一般的な精製スキームの異なる型を利用することにより達成され得る。例えば、HPLC装置を利用して実施されたカチオン交換カラムクロマトグラフィは、一般に、低圧クロマトグラフィ系を利用した同一の技術より大きな精製「倍数」をもたらすことが認識される。より低い相対精製度を示す方法は、タンパク質生成物の完全回収において、または発現されたタンパク質の活性の維持において利点を有する可能性がある。
【0127】
ある種の態様において、タンパク質またはペプチドは、単離されたまたは精製された、例えば、作製されたメチオニナーゼ、作製されたメチオニナーゼを含有している融合タンパク質、またはPEG化後の作製されたメチオニナーゼであり得る。精製を容易にするため、例えば、Hisタグまたはアフィニティエピトープを、そのような作製されたメチオニナーゼに含めることができる。アフィニティクロマトグラフィは、単離される物質とそれが特異的に結合し得る分子との間の特異的な親和性に頼るクロマトグラフィ法である。これは受容体-リガンド型の相互作用である。カラム材料は、結合パートナーのうちの一方を、不溶性マトリックスに共有結合的に結合することにより、合成される。カラム材料は、次いで、溶液から物質を特異的に吸着することができる。結合が起こらないよう条件を変化させることにより(例えば、pH、イオン強度、温度等の変更)、溶出が起こる。マトリックスは、それ自体は分子を有意な程度に吸着せず、広範囲の化学的安定性、物理的安定性、および熱安定性を有する物質でなければならない。リガンドは、その結合特性に影響を与えないような方式で結合されなければならない。リガンドは、比較的緊密な結合も提供しなければならない。そして、試料またはリガンドを破壊することなく、物質を溶出させることが可能でなければならない。
【0128】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)は、溶液中の分子が、そのサイズ、またはより技術的な用語では水力学的体積に基づき分離されるクロマトグラフ法である。それは、タンパク質および産業的なポリマーのような大型分子または高分子複合体に一般的に適用されている。典型的には、カラム内で試料を輸送するために水性溶液が使用される時、その技術はゲル濾過クロマトグラフィとして公知であり、それに対して、有機溶媒が移動相として使用される時には、ゲル浸透クロマトグラフィという名称が使用される。
【0129】
SECの根本原理は、異なるサイズの粒子は異なる速度で固定相を通って溶出する(通過する)ということである。これは、サイズに基づく粒子の溶液の分離をもたらす。全ての粒子が同時にまたはほぼ同時に負荷されるのであれば、同サイズの粒子は一緒に溶出するはずである。各サイズ排除カラムは、分離可能な分子量の範囲を有する。排除限界とは、分子が大きすぎるため、固定相に捕捉され得ない、この範囲の上限の分子量を定義する。浸透限界とは、十分に小さなサイズの分子は固定相の孔に完全に浸透することができ、この分子量未満の分子は、小さすぎるため、全て単一のバンドとして溶出する、分離の範囲の下限の分子量を定義する。
【0130】
高速液体クロマトグラフィ(または高圧液体クロマトグラフィ、HPLC)は、化合物を分離し、同定し、定量化するため、生化学および分析化学において高頻度に使用されているカラムクロマトグラフィの型である。HPLCは、クロマトグラフィ用充填材料(固定相)を保持するカラム、カラムを通して移動相を移動させるポンプ、および分子の保持時間を示す検出器を利用する。保持時間は、固定相と分析される分子と使用される溶媒との間の相互作用に依って変動する。
【0131】
IX. 薬学的組成物
局所的に進行した癌または転移性の癌を有する癌患者において、腫瘍細胞増殖を阻害するため、最も好ましくは、癌細胞を死滅させるため、新規メチオニナーゼを全身投与または局所投与し得ることが企図される。それらは、静脈内、くも膜下腔内、および/または腹腔内に投与可能である。それらは、単独で投与されてもよいし、または抗増殖薬と組み合わせて投与されてもよい。一つの態様において、それらは、手術またはその他の手技の前に、患者における癌量を低下させるために投与される。あるいは、それらは、残存する癌(例えば、手術によって排除し得なかった癌)が生存しないことを確実にするため、手術の後に投与されてもよい。
【0132】
本発明は、治療用調製物の特定の性質によって限定されないものとする。例えば、そのような組成物は、生理学的に耐容される液体、ゲル、または固体の担体、希釈剤、および賦形剤と共に製剤として提供され得る。これらの治療用調製物は、家畜等における獣医学的使用のため、およびヒトにおける臨床的使用のため、その他の治療剤に類似した様式で、哺乳動物に投与され得る。一般に、治療効力のために必要とされる投薬量は、使用の型および投与のモードによっても、個々の対象の詳細な必要性によっても変動する。
【0133】
そのような組成物は、典型的には、注射可能なものとして、液状の溶液または懸濁物として調製される。適切な希釈剤および賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等、およびそれらの組み合わせである。さらに、所望により、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、安定剤、またはpH緩衝剤のような微量の補助物質を含有していてもよい。
【0134】
臨床適用が企図される場合、意図された適用にとって適切な形態で、タンパク質、抗体、および薬物を含む薬学的組成物を調製することが必要であり得る。一般に、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解したまたは分散した、有効量の一つまたは複数のシスタチオナーゼバリアントまたは付加的な薬剤を含むことができる。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、適宜、例えば、ヒトのような動物に投与された時に、有害反応、アレルギー反応、またはその他の不要な反応を生じない分子的エンティティおよび組成物をさす。本明細書に開示された方法により単離された少なくとも一つのシスタチオナーゼバリアント、または付加的な活性成分を含有している薬学的組成物の調製は、参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990により例示されるように、本開示を考慮すれば、当業者に公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のため、調製物は、FDA Office of Biological Standardsにより要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の基準を満たさなければならないことが理解されるであろう。
【0135】
本明細書において使用されるように、「薬学的に許容される担体」には、当業者に公知である、任意の全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、色素等の材料、およびそれらの組み合わせが含まれる(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990を参照のこと)。任意の従来の担体が、活性成分と非適合性でない限り、薬学的組成物において使用されることが企図される。
【0136】
本発明のある種の態様は、固体の形態で投与されるか、液体の形態で投与されるか、またはエアロゾルの形態で投与されるかに依って、そして注射のような投与経路のため無菌である必要があるか否かに依って、異なる型の担体を含むことができる。組成物は、静脈内、皮内、経皮、くも膜下腔内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、外用、筋肉内、皮下、粘膜、経口、外用、局所、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接浸す局在的な灌流により、カテーテルを介して、洗浄を介して、脂質組成物(例えば、リポソーム)で、または当業者に公知のその他の方法もしくはそれらの任意の組み合わせにより投与可能である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990を参照のこと)。
【0137】
改変ポリペプチドは、遊離の塩基、中性、または塩の形態で、組成物へと製剤化され得る。薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基により形成されたもの、または、例えば、塩化水素酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸のような有機酸により形成されたものが含まれる。遊離カルボキシル基により形成された塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化鉄のような無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインのような有機塩基に由来し得る。製剤化後、溶液は、投薬製剤と適合性の様式で、かつ治療的に有効であるような量で投与される。製剤は、多様な剤形で容易に投与可能であり、例えば、注射可能溶液、肺への送達のためのエアロゾルのように非経口投与用に製剤化されるか、または薬物放出カプセル等のように経腸投与用に製剤化される。
【0138】
さらに、本発明のある種の局面によると、投与に適した組成物は、不活性希釈剤を含むかまたは含まない薬学的に許容される担体で提供され得る。担体は、同化可能でなければならず、液体、半固体、即ち、ペースト、または固体の担体を含む。任意の従来の媒体、薬剤、希釈剤、または担体が、レシピエントにとって、または含有される組成物の治療的有効性にとって有害でない限り、方法の実施において使用するための投与可能な組成物において使用するために適切である。担体または希釈剤の例には、脂肪、油、水、生理食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、増量剤等、またはそれらの組み合わせが含まれる。組成物は、1種または複数種の成分の酸化を遅らせるための様々な抗酸化剤も含んでいてよい。さらに、微生物の作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、様々抗菌剤および抗真菌剤のような保存剤によりもたらされ得る。
【0139】
本発明のある種の局面によると、組成物は、任意の便利で実用的な様式で、即ち、溶解、懸濁、乳化、混和、封入、吸収等により、担体と組み合わせられる。そのような手法は当業者にとってルーチンである。
【0140】
本発明の具体的な態様において、組成物は、半固体または固体の担体と充分に組み合わせられるかまたは混合される。混合は、破砕のような任意の便利な様式で実施可能である。治療活性の損失、即ち、胃における変性から組成物を防御するため、混合過程で安定剤を添加してもよい。組成物中に使用するための安定剤の例には、緩衝剤、グリシンおよびリジンのようなアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、乳糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、マンニトールのような炭水化物等が含まれる。
【0141】
さらなる態様において、本発明は、シスタチオナーゼバリアント、一つまたは複数の脂質、および水性溶媒を含む薬学的脂質媒体組成物の使用に関し得る。本明細書において使用されるように、「脂質」という用語は、特徴的には、水に不溶性であって、かつ有機溶媒によって抽出可能である広範囲の物質を含んで定義される。この広い化合物クラスは、当業者に周知であり、「脂質」という用語は、本明細書において使用されるように、特定の構造に限定されない。例には、長鎖脂肪族炭化水素を含有している化合物およびそれらの誘導体が含まれる。脂質は、天然に存在するものであっても、または合成(即ち、人間により設計もしくは生成されたもの)であってもよい。しかしながら、脂質は、一般的に、生物学的物質である。生物学的脂質は、当技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質(lysolipid)、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド(sulphatide)、エーテル結合およびエステル結合により脂肪酸を含む脂質、ならびに重合可能脂質、ならびにそれらの組み合わせを含む。当然、当業者によって脂質として理解される、本明細書に具体的に記載されたもの以外の化合物も、組成物および方法に包含される。
【0142】
脂質媒体に組成物を分散させるために利用可能な技術の範囲は、当業者に周知であろう。例えば、作製されたメチオニナーゼまたはその融合タンパク質を、脂質を含有している溶液に分散させてもよいし、脂質により溶解させてもよいし、脂質により乳化してもよいし、脂質と混合してもよいし、脂質と組み合わせてもよいし、脂質に共有結合させてもよいし、脂質中に懸濁物として含有させてもよいし、ミセルもしくはリポソームにより含有させるかもしくは複合体化してもよいし、または当業者に公知の任意の手段によって、他の方式で脂質もしくは脂質構造と会合させてもよい。分散は、リポソームの形成をもたらす場合もあるしまたはもたらさない場合もある。
【0143】
動物患者に投与される組成物の実際の投薬量は、体重、状態の重度、処置される疾患の型、過去または同時の治療的介入、患者の特発性のような身体的および生理学的な因子、ならびに投与経路によって決定可能である。投薬量および投与経路に依って、好ましい投薬量および/または有効量の投与の回数は、対象の応答によって変動してよい。投与を担う実務者は、いかなる場合にも、組成物中の活性成分の濃度、および個々の対象にとって適切な用量を決定すると考えられる。
【0144】
ある種の態様において、薬学的組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の態様において、活性化合物は、単位の重量の約2%〜約75%、または、例えば、約25%〜約60%、およびその中の任意の推論可能な範囲を構成し得る。当然、治療的に有用な組成物の各々における活性化合物の量は、化合物の所定の単位用量において適切な投薬量が得られるような方式で調製され得る。溶解度、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、生成物の貯蔵寿命のような因子、およびその他の薬理学的考慮が、そのような薬学的製剤の調製の分野の当業者により企図されるであろう。したがって、多様な投薬量および処置レジメンが望ましい可能性がある。
【0145】
他の非限定的な例において、用量には、投与1回当たり、約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重〜約1000mg/kg/体重、またはそれ以上、およびその中の任意の推論可能な範囲も含まれ得る。本明細書にリストされた数から推論可能な範囲の非限定的な例において、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500mg/kg/体重等の範囲が、上記の数に基づき、投与可能である。
【0146】
X. キット
本発明のある種の局面は、治療用キットのようなキットを提供し得る。例えば、キットは、本明細書に記載される一つまたは複数の薬学的組成物を含むことができ、任意で、その使用のための説明を含むことができる。キットは、そのような組成物の投与を達成するための一つまたは複数の装置を含んでいてもよい。例えば、本発明のキットは、薬学的組成物、および組成物の癌性腫瘍への直接静脈注射を達成するためのカテーテルを含むことができる。他の態様において、本発明のキットは、任意で、医薬品として製剤化されていてもよいし、または送達装置により使用するため凍結乾燥されていてもよい、作製されたメチオニナーゼの予め充填されたアンプルを含むことができる。
【0147】
キットは、ラベル付き容器を含むことができる。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックのような多様な材料から形成されていてよい。容器は、上記のような治療的または非治療的な適用のために有効な抗体を含む組成物を保持することができる。容器上のラベルは、組成物が特定の治療または非治療的適用のために使用されることを示すことができ、上記のもののようなインビボまたはインビトロの使用のための指示も示すことができる。本発明のキットは、典型的には、上記の容器、ならびに緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、および使用のための説明を有するパッケージインサートを含む、商業上および使用者の見地から望ましい材料を含む、1個または複数個のその他の容器を含む。
【実施例】
【0148】
XI. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を証明するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましいモードを構成すると見なされ得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すれば、開示された具体的な態様に多くの変化を施しても、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似の結果を得ることが可能であることを認識するべきである。
【0149】
実施例1
ネイティブヒトシスタチオニンγリアーゼおよび改変ヒトシスタチオニンγリアーゼの遺伝子の合成および発現
シスタチオニンγリアーゼ(CGL)酵素およびメチオニンγリアーゼ(MGL)酵素の配列および構造アラインメントを指針として使用して、CGL、具体的には、ヒトCGL(hCGL)を、メチオニンを効率的に分解するための酵素に変換した。
【0150】
ヒトシスタチオナーゼ遺伝子は、大腸菌において稀にしか利用されず、発現に干渉する可能性がある複数個のコドンを含有している。したがって、大腸菌におけるタンパク質発現を最適化するため、DNA-Worksソフトウェア(Hoover et al.,2002)を使用して設計された、コドンが最適化されたオリゴヌクレオチドを使用して、hGCL遺伝子を合成した。NcoI 5'制限部位、インフレームN末端His6タグ、および3'EcoRI部位を、ORFに導入した。pET28aベクター(Novagen)へクローニングした後、0.5〜0.6のOD600に達するまで、250rpmで、振とうフラスコで、50μg/mlカナマイシンを含有しているテリフィックブロス(Terrific Broth)(TB)培地を使用して、37℃で、適切なシスタチオナーゼ発現ベクターを含有している大腸菌(BL21)形質転換体を増殖させる。この点で、培養を25℃のシェーカーに切り替え、0.5mM IPTGにより誘導し、さらに12時間、タンパク質を発現させる。次いで、細胞ペレットを遠心分離によって収集し、IMAC(Immobilized Metal.Affinity Chromatography)緩衝液に再懸濁させる(10mM NaPO4/10mMイミダゾール/300mM NaCl、pH8)。フレンチプレス(French pressure cell)による溶解の後、溶解物を、4℃で20分間、20,000×gで遠心分離し、得られた上清を、ニッケルIMACカラムに適用し、10〜20カラム体積のIMAC緩衝液により洗浄し、次いで、IMAC溶出緩衝液(50mM NaPO4/250mMイミダゾール/300mM NaCl、pH8)により溶出させた。次いで、酵素を含有している画分を、25℃で1時間、10mMピリドキサール-5'-リン酸(PLP)と共にインキュベートする。次いで、10,000 MWCO遠心濾過装置(Amicon)を使用して、タンパク質を、100mM PBS、10%グリセロール、pH7.3溶液へと、数回、緩衝液交換する。次いで、シスタチオナーゼ酵素の一定分量を、液体窒素で急速凍結させ、-80℃で保管する。SDS-PAGEおよびクーマシー染色により査定されるように、このようにして精製されたシスタチオナーゼは>95%均質である。6M塩酸グアニジウム、20mMリン酸緩衝液、pH6.5の最終緩衝液濃度において、計算された減衰係数ε280=29,870M-1cm-1に基づき、収量は、およそ400mg/L培養物と計算される(Gill and von Hippel,1989)。
【0151】
実施例2
メチオニンγリアーゼ活性についての96穴プレートスクリーニングおよびクローンの順位付け
MGLおよびCGLは、いずれも、それぞれの基質から2-ケトブタン酸を生成する。小さなライブラリーをスクリーニングし、最も大きなMETase(メチオニンγリアーゼ)活性を有するクローンを順位付けするため、α-ケト酸3-メチルベンゾチアゾリン-2-オンヒドラゾン(MBTH)の検出のための比色定量アッセイ(Takakura et al.,2004)を、96穴プレートフォーマットの規模に調整した。
【0152】
前段落に記載されたアッセイにおいて活性を示した変異型酵素をコードする単一コロニーを、75μL/ウェルのTB培地および50μg/mlカナマイシンを含有している96穴プレート内のマイクロウェルに選び出す。細胞を、0.8〜1のOD600に達するまで、プレートシェーカー上で37℃で増殖させる。25℃に冷却した後、50μg/mlカナマイシンおよび0.5mM IPTGを含有している75μL/ウェルの培地をさらに添加する。振とうしながら25℃で2時間、発現を実施し、続いて、100μL/ウェルの培養物を96穴アッセイプレートに移す。次いで、細胞をペレット化するため、アッセイプレートを遠心分離し、培地を除去し、50μL/ウェルのB-PERタンパク質抽出試薬(Pierce)の添加によって細胞を溶解する。遠心分離による浄化の後、溶解物を、10〜12時間、37℃で5mM L-Metと共にインキュベートする。次いで、反応物を、1M酢酸ナトリウムpH5中の0.03%MBTH溶液3部の添加により誘導体化する。プレートを40分間50℃に加熱し、冷却後、マイクロタイタープレートリーダーで320nmで読み取る。
【0153】
実施例3
メチオニンγリアーゼ活性についての遺伝学的選択
大腸菌において、α-ケトブチレートは、イソロイシン生合成経路の最初の酵素としての(ilvAによりコードされる)トレオニンデアミナーゼの作用により生成される。ほぼ40年前に、GrimmingerおよびFeldnerが、イソロイシン要求体であるトレオニンデアミナーゼ変異体を同定し(Grimminger and Feldner 1974)、より最近、イソロイシンが培地から省かれた時、正常な増殖能力の<5%しか有しないと報告されている一般的な発現株BLR(DE3)において、トレオニンデアミナーゼ点変異体が見出された(Goyer et al.,2007)。α-ケトブチレートを生成するメチオニナーゼの発現は、ilvA変異体の増殖をレスキューし、したがって、最少培地におけるコロニー形成を可能にすることが示された。しかしながら、BLR(DE3)のトレオニンデアミナーゼ遺伝子は、点変異体であり、特に、極めて大きなライブラリーでは、復帰という別の可能性を有する。トレオニンデアミナーゼは、イソロイシン生合成オペロンilvGMEDAにおける遠位の遺伝子であり、オペロンの一部として、または内部プロモーターから独立に発現される(Lopes and Lawther 1989)。
【0154】
他のIle遺伝子の発現に対する望まれない効果を回避するため、P1形質導入および他に記載されたようなFLPリコンビナーゼプラスミドpCP20の使用によるカナマイシン耐性マーカーのキュアリング(curing)を通して(Datsenko and Wanner 2000)、Yale E.coli Genetic Stock Center(New Haven,CT)から入手した大腸菌株JW3745-2(Δ(araD-araB)567,ΔlacZ4787(::rrnB-3),λ-,rph-1,ΔilvA723::kan,Δ(rhaD-rhaB)568,hsdR514)を使用して、大腸菌株BL21の1545bp ilvA遺伝子内の内部断片を欠失させた。L-シスタチオニンおよびL-ホモシステインが大腸菌メチオニン生合成経路における中間体であることも認められている(図11)。L-シスタチオニンおよびL-ホモシステインは、α-ケトブチレートの生成をもたらし、イソロイシン生合成経路の補完を可能にする、シスタチオニンγリアーゼの基質である。したがって、P1形質導入および他に記載されたようなFLPリコンビナーゼプラスミドpCP20の使用によるカナマイシン耐性マーカーのキュアリングを通して(Datsenko and Wanner 2000)、Yale E.coli Genetic Stock Center(New Haven,CT)から入手した大腸菌株JW3973-1(Δ(araD-araB)567,ΔlacZ4787(::rrnB-3),λ-,rph-1,Δ(rhaD-rhaB)568,ΔmetA780::kan,hsdR514)を使用して、(ホモセリン-O-スクシニルトランスフェラーゼをコードする)遺伝子metAをノックアウトした。大腸菌株BL21(DE3)(F- ompT gal dcm lon hsdSB(rB-mB-)λ(DE3[lacI lacUV5-T7遺伝子1 ind1 sam7 nin5])を、レシピエント株として使用し、L-イソロイシン要求性かつL-メチオニン要求性の大腸菌株BL21(DE3)(ΔilvA,ΔmetA)を得た。
【0155】
したがって、メチオニンγリアーゼ、作製されたシスタチオニンγリアーゼの遺伝子を含有しているプラスミドを保持している大腸菌BL21(DE3)(ΔilvA,ΔmetA)は、L-メチオニンが補充されたM9最少培地プレートにおいて増殖することができるが、野生型シスタチオニンγリアーゼおよび空のプラスミドのみを有する同一の株は、増殖することができない(図12)。したがって、メチオニンγリアーゼ活性を有する組み換え発現された作製されたシスタチオニンγリアーゼバリアントの極めて大きなライブラリーを、不活性クローンまたはシスタチオナーゼ活性を有するクローンのバックグラウンドに対して迅速に選択することができる。より大きなコロニーおよびより迅速に出現するものは、より高活性の酵素を示す。
【0156】
実施例4
hCGLの残基E59、R119、およびE339における変異誘発の効果
構造分析は、残基E59、R119、およびE339が、基質L-シスタチオニンについてのhCGLの認識に関与している可能性が高いことを示した。これらの部位におけるNNSコドン飽和ライブラリーは、以下の変異誘発プライマー

を用い、鋳型DNAとしてのhCGL遺伝子、ならびに特異的な末端プライマー

を用いて構築し、スクリーニングした。PCR産物をNcoIおよびEcoRIにより消化し、T4 DNAリガーゼによりpET28aベクターにライゲートした。得られたライゲーションを直接大腸菌(BL21)に形質転換し、実施例2に記載されたようなその後のスクリーニングのため、LB-カナマイシンプレート上に播種した。ライブラリーの理論上の多様性より2倍多くのコロニーをスクリーニングした。活性を示したクローンを単離し、変異を同定するため、hCGL遺伝子の配列を決定した。
【0157】
酵素バリアントを、SDS-PAGEにより査定されるように、均質性が95%を越えるまで精製した。PLPとのインキュベーションが、比活性を増強することが示されたが、それは、おそらく、発現のために使用された大腸菌細胞が、産生されたhCGL全てのための十分なPLPを生成しないためである。酵素は、一旦PLPを負荷されると、貯蔵中、補因子の損失なしに安定していた。
【0158】
実施例5
ヒトシスタチオニンγリアーゼバリアントの特徴付け
最も高い触媒活性を有するとしてスクリーニングから同定された2個のhCGLバリアントは、N末端His6タグ付加に加え、以下の変異を有することが見出された:E59NまたはV、R119L、およびE339V。これらのバリアントを、それぞれ、hCGL-NLV(SEQ ID NO:10)およびhCGL-VLV(SEQ ID NO:11)と呼んだ。これらのバリアントの両方を、実施例2に記載されたものに類似した1ml規模のMBTHアッセイを使用して、pH7.3および37℃で、100mM PBS緩衝液において、L-Metを分解する能力について動力学的に特徴付けた。容易な連続アッセイをもたらす、hCGLバリアントのL-Metに対する触媒作用からのメタンチオールの放出を検出するためのエルマン試薬(DTNB)。hCGL-NLVおよびhCGL-VLVの両方が、L-Metに対するおよそ1×104s-1M-1というkcat/KMを有していた。親酵素ネイティブhCGLは、これらのアッセイの検出限度内でL-Metを分解することができなかった。
【0159】
37℃で、10μMの最終濃度で、プールされたヒト血清において、酵素をインキュベートすることにより、メチオニナーゼの血清安定性を試験した。異なる時点で、一定分量を採取し、活性について試験した。データをプロットした後、プチダ菌からのMGLは、2±0.1時間という見かけのT0.5を有することが見出された。ヒトCGLは、16±0.8時間という見かけのT0.5を示した。驚くべきことに、hCGL-NLVおよびCGL-VLVは、劇的により安定しており、前者は95±3時間という見かけのT0.5を示し、hCGL-VLVは260±18時間という見かけのT0.5を有していた(図2)。
【0160】
メチオニナーゼ酵素の熱安定性も、円二色性分光法(CD)により評価した。ヒトCGLおよびバリアントhCGL-NLVは、およそ68℃という見かけのTM値を有し、hCGL-VLVはわずかに安定性が高く、およそ71℃という見かけのTMを有していた(図3)。hCGL、hCGL-NLV、およびhCGL-VLVの類似しているTM値は、延長された血清安定性が、PLP補因子がhCGL-NLVおよびhCGL-VLVの活性部位に優先的に保持されるためであることを示唆している。
【0161】
実施例6
神経芽腫に対するヒトメチオニンγリアーゼの細胞傷害性
神経芽腫細胞株Lan-1を用いて、hCGLおよびpMGLのインビトロ細胞傷害性を評価した。LAn-1細胞をおよそ7000細胞/ウェルで播種し、様々な濃度のpMGLまたはhCGL-NLVと共にインキュベートした。3〜5日の曝露の後、増殖をWST-8を使用して測定し、見かけのIC50値を計算するため、データをプロットした(Hu and Cheung 2009)。得られたデータ(図6)の分析は、pMGLにより処理された細胞についての0.34U/ml(およそ0.6μM)という見かけのIC50値、hCGL-NLVにより処理された細胞についての0.15U/ml(およそ0.3μM)という見かけのIC50値を与えた。
【0162】
実施例7
神経芽腫細胞株のパネルに対するPEG化ヒトメチオニンγリアーゼの細胞傷害性
NB細胞株(BE(1)N,BE(2)N,BE(2)S,BE(2)C,SK-N-LD,NMB-7,SH-EP-1,IMR32,CHP-212,SKN-MM,LAN-1,LAI-66N,LAI-55N,LAI-5S)のインビトロの増殖を、様々な濃度のPEG-hMGLまたはPEG-hCGL-NLVを含む96穴プレート(BD Biosciences,Bedford,MA)においてアッセイした。
【0163】
3000〜6000細胞/ウェルの密度で播種してから24時間後、PEG-hCGL-NLVおよびpMGLを添加した。3日間の培養の後、PEG-hMGLおよびpMGLを除去し、新鮮な培地を添加し、細胞をさらに36時間インキュベートした。WST8(Dojindo Molecular Technologies,MA)を、1:10の容量比で培養ウェルに添加した。4〜6時間の反応の後、光学密度(OD)を450nmで読み取った。細胞増殖を以下のように計算した:細胞増殖(%)=(実験ウェルのOD450−培地のみのウェルのOD450)/(対照ウェルのOD450−培地のみのウェルのOD450)×100%。IC50(最大半量阻害性薬物濃度)を、SigmaPlot 8.0(Systat Software,Inc.,San Jose,CA)を使用して計算した。PEG-hCGL-NLVは、試験された全ての細胞株に対して細胞傷害性を示し、IC50値は、0.174〜0.042Uの範囲のIC50値を有していたシュードモナスMGLに類似して、0.175〜0.039Uの範囲であった(図9)。
【0164】
実施例8
ヒトシスタチオニンγリアーゼバリアントの薬理学的調製物
一つの例外を除き、実施例1に記載されたようにして、hCGL-NLVを精製した:IMACカラムに結合させた後、0.1%トリトン114を含有しているIMAC緩衝液により充分に(90〜100カラム体積)、試料中のタンパク質を洗浄する。10〜20カラム体積のIMAC緩衝液、次いで、IMAC溶出緩衝液(50mM NaPO4/250mMイミダゾール/300mM NaCl、pH8)により溶出させた。トリトン114による洗浄は、内毒素(リポ多糖)夾雑を低下させるために利用された。精製されたタンパク質を、10,000 MWCO濾過装置(Amicon)を使用した、100mM NaPO4緩衝液(pH8.3)への緩衝液交換に供した。その後、PLPを10mMの濃度で添加し、タンパク質を25℃で1時間インキュベートした。次いで、メトキシPEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステル5000MW(JenKem Technology)を80:1モル比でhCGL-NLVに添加し、絶えず攪拌しながら25℃で1時間反応させた。得られた混合物を、100,000 MWCO濾過装置(Amicon)を使用して、充分に緩衝液交換し(10%グリセロールを含むPBS)、0.2ミクロン注射器フィルター(VWR)により滅菌した。全てのPEG化酵素を、Limulus Amebocyte Lysate(LAL)キット(Cape Cod Incorporated)を使用して、リポ多糖(LPS)含量について分析した。
【0165】
SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィによる分析(図4〜5)は、80倍モル過剰のPEG MW5000が、非PEG化四量体についてのおよそ220kDaから、PEG化hCGLバリアントについての推定1,340kDaへと、MGL活性を有するhCGLバリアントの水力学的半径を大幅に増加させることを示している。PEG化ヒトメチオニナーゼは、非PEG化酵素と比較して、ほぼ同一の動力学的活性およびインビトロ血清安定性を有することが見出された。
【0166】
実施例9
マウスにおけるPEG MW 5000 hCGL-NLVの薬力学的分析
マウス(balb/c)(n=5)において、50UのPEG-hCGL-NLVの尾静脈注射の後、PEG化hCGLバリアントのインビボ半減期を決定した。異なる時点で血液試料を採取し、hCGL-NLV活性を上記のようにして決定した。t=1時間において採取された血液における活性を、100%に設定した。データへの指数関数適合は、28±4時間というT1/2を明らかにした(図7)。これは、PEG-pMGLと比較して14倍の改良である。
【0167】
実施例10
マウス血漿におけるメチオニン枯渇
処理前にメチオニン(-)ホモシスチン(-)コリン(-)(Met(-)Hcyss(-)Chl(-))食を与えられたマウス(n=5)に、尾静脈注射により200UのPEG-hCGL-NLVを投与した。基本的には他に記載されたようにして(Sun,et al.2005)、HPLCにより、L-Metレベルについて血漿試料を分析した。血中メチオニンレベルは、処理前の124±37μMから、8時間目に、3.9±0.7μMという最低値にまで減少し、24時間以上、低いままであった(図8)。
【0168】
実施例11
LAN-1腫瘍異種移植片に対するPEG-hCGL-NLVの効果
PEG-hCGL-NLV投与についてのスケジュールは、体重減少を最小化し、かつPEG-hCGL-NLVの薬物動態を最大化するために考案された。(インビボの唯一の用量制限毒性は、メチオニン枯渇後の体重減少である。)LAN-1を異種移植された胸腺欠損マウスを、100単位のPEG-hCGL-NLVにより、4週間、週3回、静脈内処理した時、15〜20%の可逆的な体重減少が観察された。処理の最終(第4)週の3回目のPEG-hCGL-NLV注射の24時間後、血漿メチオニン濃度は、処理前の124±37μMとは対照的に、Met(-)Hcyss(-)Chl(-)食を与えられたPEG-hCGL-NLVにより処理されたマウスにおいては5.8±2.1μMであった(n=10)。Met(-)Hcyss(-)Chl(-)食を与えられたマウスは、10〜15%の可逆的な体重減少を有し、血漿メチオニン濃度はMet(-)Hcyss(-)Chl(-)食の間、13.2±4.5μMであった。100単位のPEG-hCGL-NLVによる処理をMet(-)Hcyss(-)Chl(-)食と組み合わせた時、未処理群またはMet(-)Hcyss(-)Chl(-)食のみを受容した群と比較して、LAN-1異種移植片に対する有意な抗腫瘍効果(p<0.01)が観察された(図10)。
【0169】
実施例12
霊長類メチオニンγリアーゼの作製
チンパンジー、スマトラオランウータン、およびカニクイザルのような霊長類種に由来するCGLの配列は、それぞれ、ヒトCGLとアミノ酸組成が約99%、96%、および95%同一である。メチオニンγリアーゼ活性を付与する変異を有する霊長類CGL酵素は、実施例4に記載されるような標準的な変異誘発技術を使用して構築される。得られた遺伝子をpET28aへクローニングする。次いで、L-メチオニナーゼ活性を有する非ヒト霊長類hGCLを、上記のようにして発現させ精製する。NまたはV59、L119、およびV339に相当するアミノ酸位置により作製された霊長類CGLは、少なくとも1×102s-1M-1のkcat/KM値でL-Metを分解する。
【0170】
MGL活性を有する作製された霊長類CGLのアミノ酸配列の例は、下記のように開示される:
スマトラオランウータンCGL-NLV(Genbank ID NP_001124635.1を有するネイティブ配列(即ち、SEQ ID NO:18)に対するV59N置換、R119L置換、およびE339V置換、ならびにN末端His6タグの付加を有するSEQ ID NO:12)、スマトラオランウータンCGL-VLV(Genbank ID NP_001124635.1を有するネイティブ配列に対するR119L置換およびE339V置換、ならびにN末端His6タグの付加を有するSEQ ID NO:13);
カニクイザルCGL-NLV(Genbank ID AAW71993.1を有するネイティブ配列(即ち、SEQ ID NO:19)に対するE59N置換、R119L置換、およびE339V置換、ならびにN末端His6タグの付加を有するSEQ ID NO:14)、カニクイザルCGL-VLV(Genbank ID AAW71993.1を有するネイティブ配列に対するE59V置換、R119L置換、およびE339V置換、ならびにN末端His6タグの付加を有するSEQ ID NO:15);
チンパンジーCGL-NLV(Genbank ID XP_513486.2を有するネイティブ配列(即ち、SEQ ID NO:20)に対するE59N置換、R119L置換、およびE339V置換、ならびにN末端His6タグの付加を有するSEQ ID NO:16)、ならびにチンパンジーCGL-VLV(Genbank ID XP_513486.2を有するネイティブ配列に対するE59V置換、R119L置換、およびE339V置換、ならびにN末端His6タグの付加を有するSEQ ID NO:17)。
【0171】
本明細書に開示され特許請求の範囲に記載された方法は、全て、本開示を考慮すれば、過度の実験なしに作成され実行され得る。本発明の組成物および方法を、好ましい態様に関して説明したが、本発明の概念、本旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法、方法の工程、または工程の順序を変動させ得ることは、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連しているある種の薬剤を、本明細書に記載された薬剤の代わりに用いても、同一または類似の結果が達成されることが、明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の代用物および変形物は、全て、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の本旨、範囲、および概念に含まれるものと見なされる。
【0172】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に示されたものを補充する例示的な手順またはその他の詳細を提供するという程度に、参照により具体的に本明細書に組み入れられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼと比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を含む霊長類シスタチオニンγリアーゼバリアントを含むポリペプチドであって、該シスタチオニンγリアーゼバリアントが、L-メチオニン分解について約10M-1s-1〜約1×106M-1s-1の触媒特異性定数(catalytic specificity constant)(kcat/KM)を有する、前記ポリペプチド。
【請求項2】
少なくとも1個のアミノ酸置換が、ネイティブシスタチオニンγリアーゼの基質認識部位の1個または複数個の荷電残基におけるものである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
少なくとも1個のアミノ酸置換が、ネイティブシスタチオニンγリアーゼの59位、119位、および/または339位のアミノ酸におけるものである、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項4】
少なくとも1個のアミノ酸置換が、SEQ ID NO:1の59位、119位、および/または339位のアミノ酸におけるものである、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
59位、119位、および/または339位のアミノ酸における置換が、アスパラギン酸(N)、バリン(V)、またはロイシン(L)である、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
59位、119位、および/または339位のアミノ酸における置換が、R119L置換およびE339V置換を含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
59位、119位、および/または339位のアミノ酸における置換が、E59VまたはE59Nの付加的な置換を含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
シスタチオニンγリアーゼバリアントが、L-メチオニン分解について少なくとも約104M-1s-1のkcat/KMを有する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項9】
シスタチオニンγリアーゼバリアントが、L-ホモシスチン分解について約50M-1s-1未満のkcat/KMを有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼが、SEQ ID NO:1の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼが、SEQ ID NO:1の配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項12】
ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼが、SEQ ID NO:18〜20のいずれかの配列を有する、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項13】
ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼが、ヒトシスタチオニンγリアーゼ(SEQ ID NO:1)である、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項14】
異種ペプチドセグメントをさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項15】
異種ペプチドセグメントがXTENペプチドである、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項16】
ポリエチレングリコール(PEG)と結合している、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項17】
1個または複数個のLys残基またはCys残基を介してPEGと結合している、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項19】
細菌における発現のためにコドンが最適化されている、請求項18記載の核酸。
【請求項20】
請求項19記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項21】
請求項19記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項22】
細菌である、請求項21記載の宿主細胞。
【請求項23】
遺伝子ilvAおよびmetAの欠失を有する大腸菌(E.coli)株である、請求項22記載の宿主細胞。
【請求項24】
薬学的に許容される担体中に請求項1記載のポリペプチドまたは請求項18記載の核酸を含む、薬学的製剤。
【請求項25】
対象における腫瘍細胞の処置のための、請求項1〜17のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項18または19のいずれか一項記載の核酸、請求項20記載の発現ベクター、請求項24記載の薬学的製剤を含む、組成物。
【請求項26】
対象がメチオニン制限食で維持される、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
対象が普通食で維持される、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
対象がヒト患者である、請求項25〜27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
腫瘍細胞が、乳癌、前立腺癌、神経芽腫、または膵癌の細胞である、請求項25〜28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
腫瘍細胞の栄養培地中にある、請求項25〜29のいずれか一項記載の組成物。
【請求項31】
栄養培地が、血液、リンパ液、または脊髄液である、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
以下の工程を含む、L-メチオニン分解活性を有する霊長類シスタチオニンγリアーゼバリアントを同定する方法:
(a)ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼと比較して少なくとも1個のアミノ酸置換を含む霊長類シスタチオニンγリアーゼバリアントの集団を、遺伝子ilvAおよびmetAの欠失を有する大腸菌株の細胞において発現させる工程;ならびに
(b)L-メチオニン分解活性を有する霊長類シスタチオニンγリアーゼバリアントを同定する工程であって、該同定されるバリアントを発現する細胞が、ネイティブ霊長類シスタチオニンγリアーゼを発現するがそれ以外は同一の条件にある細胞と比較して、L-メチオニンが補充された最少培地において、より高い増殖速度を有する、工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−518594(P2013−518594A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552084(P2012−552084)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2011/023606
【国際公開番号】WO2011/097381
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512271158)
【Fターム(参考)】