説明

メチオニンの製造方法

【課題】シアン化水素を原料として使用することなく、メチオニンを製造できる新たな方法が求められていた。
【解決手段】4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールをアルコール存在下に酸化する工程A、工程Aで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルを加水分解する工程B、並びに、工程Bで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸を還元アミノ化する工程Cを含むことを特徴とするメチオニンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチオニンの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
メチオニンは必須アミノ酸であり、飼料添加剤としても用いられる重要な化合物である。
【0003】
メチオニンの製造方法として、例えば非特許文献1には、アクロレインにメタンチオールを付加させて得られる3−メチルチオプロピオンアルデヒドとシアン化水素とを反応させて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを得、これを炭酸アンモニウムと反応させて置換ヒダントインに導いた後、置換ヒダントインをアルカリで加水分解する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】工業有機化学、東京化学同人、273〜275頁(1978年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載される方法は、取り扱いに注意を要するシアン化水素を原料として使用するが、シアン化水素の取り扱いには充分な管理やそれに適合する設備が必要である。
【0006】
かかる状況下、シアン化水素を原料として使用することなく、メチオニンを製造できる新たな方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討し、本発明に至った。
【0008】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールをアルコール存在下に酸化する工程A、
工程Aで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルを加水分解する工程B、並びに、
工程Bで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸を還元アミノ化する工程C
を含むことを特徴とするメチオニンの製造方法。
〔2〕 工程Aが、カルベン触媒の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール、アルコール及び酸化剤を反応させることにより行われる前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 工程Aにおけるカルベン触媒が、式(2−1)

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基又は置換基を有していてもよい−CH=N−で表される基を形成している。Yは−S−で表される基又は−N(R)−で表される基を表す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。Xは陰イオンを表す。)
で示される化合物と塩基とを反応させて得られる化合物、式(2−2)

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。Rはアルキル基を表す。)
で示される化合物、式(2−2)で示される化合物を分解して得られる化合物、式(2−3)

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物、並びに、式(2−3)で示される化合物を分解して得られる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である前記〔2〕記載の製造方法。
〔4〕 工程Aにおける酸化剤が、酸素及び二酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種である前記〔2〕又は〔3〕記載の製造方法。
〔5〕 アルコールが、メタノール又はエタノールである前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔6〕 工程Cが、溶媒の存在下に行われる前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔7〕 工程Cにおける溶媒が、メタノール及び水からなる群より選ばれる少なくとも一種である前記〔6〕記載の製造方法。
〔8〕 工程Cが、遷移金属の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸、アンモニア及び還元剤を反応させることにより行われる前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載の製造方法。
〔9〕 工程Cにおける遷移金属が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、イリジウム、ニッケル、コバルト及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種である前記〔8〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シアン化水素を原料として使用することなく、メチオニンを製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のメチオニンの製造方法は、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールをアルコール存在下に酸化する工程A、工程Aで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルを加水分解する工程B、並びに、工程Bで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸を還元アミノ化する工程Cを含むことを特徴とする。工程A、工程B及び工程Cを行うことにより、シアン化水素を原料として使用することなく、メチオニンが製造される。
【0011】
まず、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールをアルコール存在下に酸化する工程Aについて説明する。工程Aを行うことにより、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルが得られる。
工程Aは、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールをアルコール存在下に酸化することにより行われ、好ましくは、カルベン触媒の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール、アルコール及び酸化剤を反応させることにより行われる。以下、工程Aにおける反応を、酸化反応と記すことがある。
【0012】
工程Aに用いられるカルベン触媒としては、好ましくは、式(2−1)で示される化合物(以下、「化合物(2−1)」と記すことがある)と塩基とを反応させて得られる化合物、式(2−2)で示される化合物(以下、「化合物(2−2)」と記すことがある)、式(2−2)で示される化合物を分解して得られる化合物、式(2−3)で示される化合物(以下、「化合物(2−3)」と記すことがある)、並びに、式(2−3)で示される化合物を分解して得られる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0013】
式(2−1)において、Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基及びRで表される置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びデシル基等の直鎖状又は分枝状のC〜C12アルキル基、並びに、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の環状のC〜C12アルキル基が挙げられる。
【0014】
及びRにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G3から選ばれる基が挙げられる。
【0015】
<群G3>
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
〜C10アルコキシ基、C〜C10アルキル基及びC〜C10アリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよいベンジルオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基、
カルボキシ基、
及び
フッ素原子。
【0016】
群G3において、C〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられ、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及びトリフルオロメトキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基、C〜C10アルキル基及びC〜C10アリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよいベンジルオキシ基としては例えば、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基及び3−フェノキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基としては例えば、3−フェノキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられる。
【0017】
群G3から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基及び2−カルボキシエチル基が挙げられる。
【0018】
式(2−1)において、Rで表される置換基を有していてもよいアリール基及びRで表される置換基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等のC〜C10アリール基が挙げられる。
かかるアリール基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G3から選ばれる基が挙げられる。
【0019】
群G3から選ばれる基を有するアリール基としては例えば、4−クロロフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられる。
【0020】
式(2−1)において、RとRとが一緒になって形成される、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基としては、例えばエチレン基、ビニレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロペン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、2−ブテン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、o−フェニレン基、1,2−ジフェニルエチレン基及び1,2−ジフェニルビニレン基が挙げられる。2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G3から選ばれる基が挙げられる。式(2−1)において、RとRとが一緒になって形成される−CH=N−で表される基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G3から選ばれる基を有していてもよいアルキル基及び上述した群G3から選ばれる基を有していてもよいアリール基が挙げられる。群G3から選ばれる基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びデシル基等の直鎖状又は分枝状のC〜C12アルキル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の環状のC〜C12アルキル基が挙げられる。群G3から選ばれる基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等のC〜C10アリール基が挙げられる。
【0021】
及びRは、好ましくは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。
【0022】
式(2−1)において、Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基及びRで表される置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、tert−ペンチル基及びデシル基等の直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基及びアダマンチル基等の環状のC〜C12アルキル基が挙げられる。
かかるアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G4から選ばれる基が挙げられる。
【0023】
<群G4>
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基、
及び
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基。
【0024】
群G4において、C〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられ、
フッ素原子を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基及びトリフルオロメトキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基及び4−メトキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C20アラルキルオキシ基としては例えば、3−フェノキシベンジルオキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アリールオキシ基としては例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アリールオキシ基を有するC〜C10アリールオキシ基としては例えば、3−フェノキシフェノキシ基が挙げられ、
〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンジルカルボニル基、4−メチルベンジルカルボニル基、4−メトキシベンジルカルボニル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられる。
【0025】
群G4から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基及びフェナシル基が挙げられる。
【0026】
式(2−1)において、Rで表される置換基を有していてもよいアリール基及びRで表される置換基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基等のC〜C20アリール基が挙げられる。
かかるアリール基が有していてもよい置換基としては例えば、下記群G5から選ばれる基が挙げられる。
【0027】
<群G5>
フッ素原子又はC〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アルコキシ基、
及び
ハロゲン原子。
【0028】
群G5において、フッ素原子又はC〜C10アルコキシ基を有していてもよいC〜C10アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基及びメトキシエトキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子及び塩素原子が挙げられる。
【0029】
群G5から選ばれる基を有するアリール基としては例えば、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基及び2,6−ジクロロフェニル基が挙げられる。
【0030】
式(2−1)において、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成していてもよい。2価の炭化水素基としては、例えばエチレン基、トリメチレン基及びテトラメチレン基等のポリメチレン基、ビニレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロペン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、2−ブテン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基並びにo−フェニレン基が挙げられる。2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G3から選ばれる基が挙げられる。
【0031】
式(2−1)において、Xで表される陰イオンとしては例えば、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;メタンスルホナート及びトリフルオロメタンスルホナート等のフッ素原子を有していてもよいアルカンスルホナートイオン;トリフルオロアセテート及びトリクロロアセテートイオン等のハロゲン原子を有していてもよいアセテートイオン;硝酸イオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロボレート及びテトラクロロボレート等のテトラハロボレートイオン;ヘキサフルオロホスファート等のヘキサハロホスファートイオン;ヘキサフルオロアンチモナート及びヘキサクロロアンチモナート等のヘキサハロアンチモナートイオン;ペンタフルオロスタンナート及びペンタクロロスタンナート等のペンタハロスタンナートイオン;並びにテトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等の置換基を有していてもよいテトラアリールボレートが挙げられる。
【0032】
化合物(2−1)は、好ましくは式(2−4)

(式中、R、Y及びXはそれぞれ上記と同義である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、RとRとが一緒になって、それらが結合する炭素原子と共に環を形成するか、或いは、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。

は、単結合又は二重結合を表す。)
で示される化合物(以下、「化合物(2−4)」と記すことがある)或いは
式(2−5)

(式中、R、Y及びXはそれぞれ上記と同義である。Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。)
で示される化合物(以下、「化合物(2−5)」と記すことがある)であり、より好ましくは化合物(2−4)である。
【0033】
以下、化合物(2−4)及び化合物(2−5)について説明する。
【0034】
式(2−4)及び式(2−5)において、Rは式(2−1)におけるRと同義であり、Yは式(2−1)におけるYと同義である。式(2−4)及び式(2−5)におけるYが−N(R)−で表される基である場合、Rは式(2−1)におけるRと同義である。式(2−4)及び式(2−5)において、Xは式(2−1)におけるXと同義である。
【0035】
式(2−4)において、Rは嵩高い基であることが好ましく、Yが−N(R)−で表される基である場合、R及びRのいずれかが嵩高い基であることが好ましく、R及びRのいずれもが嵩高い基であることがより好ましい。R及びRは同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0036】
及びRにおける嵩高い基としては例えば、tert−ブチル基及びtert−ペンチル基等のC〜C12第三級アルキル基;シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基及びアダマンチル基等のC〜C10シクロアルキル基;2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基及び2,6−ジイソプロピルフェニル基等の少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基(2,6−ジ置換フェニル基);並びに2−メチルナフチル基等の2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基が挙げられる。2,6−ジ置換フェニル基における置換基としては例えば、C〜C12アルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。
及びRにおける嵩高い基は、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基又は2,6−ジ置換フェニル基が好ましく、2,6−ジ置換フェニル基がより好ましく、2,6−ジブロモフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基がより一層好ましい。
【0037】
式(2−4)においてRで表される置換基を有していてもよいアルキル基並びに式(2−4)及び式(2−5)においてRで表される置換基を有していてもよいアルキル基における、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基が挙げられる。
かかるアルキル基が有していてもよい置換基としては、上述した群G3から選ばれる基が挙げられる。群G3から選ばれる基を有するアルキル基としては例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、4−メチルベンジル基、フェノキシメチル基、2−オキソプロピル基、2−オキソブチル基、フェナシル基及び2−カルボキシエチル基が挙げられる。
【0038】
式(2−4)においてRで表される置換基を有していてもよいアリール基並びに式(2−4)及び式(2−5)においてRで表される置換基を有していてもよいアリール基における、アリール基としては例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等のC〜C10アリール基が挙げられる。
かかるアリール基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G3から選ばれる基が挙げられる。
【0039】
群G3から選ばれる基を有するアリール基としては例えば、4−クロロフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられる。
【0040】
式(2−4)において、RとRとが一緒になって、それらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。かかる環としては例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環及びベンゼン環が挙げられる。
【0041】
式(2−4)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、R及びRは共に水素原子であることがより好ましい。
【0042】
式(2−4)及び式(2−5)において、Yが−N(R)−で表される基である場合、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成していてもよい。2価の炭化水素基としては、例えばエチレン基、トリメチレン基及びテトラメチレン基等のポリメチレン基、ビニレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロペン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、2−ブテン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基並びにo−フェニレン基が挙げられる。2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては例えば、上述した群G3から選ばれる基が挙げられる。
【0043】
式(2−4)において、Yが−N(R)−で表される基である場合、

は単結合であることが好ましく、Yが−S−で表される基である場合、

は二重結合であることが好ましい。
【0044】
化合物(2−4)としては、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合であり、R及びRが独立して、水素原子又は上述した群G3から選ばれる基を有していてもよい直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合であり、R及びRが水素原子である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−4)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合であり、R及びRが水素原子である化合物(2−4)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−4)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合である化合物(2−4)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−4)、
Yが−S−で表される基であり、Rが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合である化合物(2−4)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−4)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は二重結合である化合物(2−4)、
Yが−S−で表される基であり、Rが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合であり、R及びRが独立して、水素原子又は上述した群G3から選ばれる基を有していてもよい直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基である化合物(2−4)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、R及びRが独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメンチル基である化合物(2−4)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合であり、R及びRが独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメンチル基である化合物(2−4)が挙げられる。
【0045】
化合物(2−4)としては例えば、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリニウムクロライド、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリニウムクロライド、1,3−ジアダマンチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジアダマンチルイミダゾリニウムクロライド、1,3−ジフェニルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジフェニルイミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−ジブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,4,6−トリブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、4,5−ジクロロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、4,5−ジクロロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、4,5−ジフェニル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、4,5−ジフェニル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、4,5−ジフルオロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、4,5−ジフルオロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、4−メチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、4−メチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−ジクロル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、1,3−ビス[(2,6−ジクロル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1−tert−ブチル−3−フェニルイミダゾリウムクロライド、1−tert−ブチル−3−フェニルイミダゾリニウムクロライド、1−シクロヘキシル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、1−シクロヘキシル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1−フェニル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、1−フェニル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1−tert−ブチル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、1−tert−ブチル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、1−tert−ブチル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウムクロライド、1−tert−ブチル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリニウムクロライド、3−エチルベンゾチアゾリウムブロマイド、3−ブチルベンゾチアゾリウムクロライド、3−(2,6−ジイソプロピル)フェニル−4,5−ジメチルチアゾリウムクロライド、3−フェニル−4,5−ジメチルチアゾリウムクロライド、3−ベンジルチアゾリウムクロライド、3−ベンジル−4−メチルチアゾリウムクロライド、3−n−ブチル−4−メチルチアゾリウムクロライド、3−n−ヘキシル−4−メチルチアゾリウムクロライド、3−シクロヘキシル−4−メチルチアゾリウムクロライド、3−n−オクチルー4−メチルチアゾリウムクロライド及び3−(2,4、6−トリメチル)フェニル−4,5−ジメチルチアゾリウムクロライドを挙げることができる。
【0046】
化合物(2−5)としては、
Yが−N(R)−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基である化合物(2−5)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、C〜C10アルキル基又はC〜C10アリール基である化合物(2−5)
Yが−S−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基である化合物(2−5)、および、
Yが−S−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、C〜C10アルキル基又はC〜C10アリール基である化合物(2−5)が挙げられる。
【0047】
化合物(2−5)としては例えば、1,4−ジメチル−1H−1,2,4−トリアゾリ−4−ウムクロライド、1,3、4−トリフェニル−1H−1,2,4−トリアゾリ−4−ウムクロライド、3,5-ジフェニル-1,3,4−チアジアゾリウムクロライド、3-メチル-5-フェニル-1,3,4−チアジアゾリウムクロライド及び6,7−ジヒドロ−2−ペンタフルオロフェニル‐5H−ピロロ[2,1−c]−1,2,4−トリアゾリウムクロライドを挙げることができる。
【0048】
また、これら化合物(2−4)及び化合物(2−5)における「クロライド」が例えば「ヨーダイド」、「ブロマイド」、「メタンスルホナート」、「トリフルオロメタンスルホナート」、「ニトラート」、「ペルクロラート」、「テトラフルオロボレート」、「テトラクロロボレート」、「ヘキサフルオロホスファート」、「ヘキサフルオロアンチモナート」、「ヘキサクロロアンチモナート」、「ペンタフルオロスタンナート」、「ペンタクロロスタンナート」、「テトラフェニルボレート」、「テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」、「テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート」に置き換わった化合物(2−4)及び化合物(2−5)も挙げることができる。
【0049】
化合物(2−1)は、市販品であってもよいし、例えばJ.Organometallic.Chem.Soc.,606,49(2000)やJ.Org.Chem.Soc.,73,2784(2008)に記載の方法に準じて製造することもできる。
【0050】
工程Aにおいて化合物(2−1)と反応させる塩基は、有機塩基、アルカリ金属アルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩基であることが好ましい。
有機塩基としては例えば、トリエチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の第3級アミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]−5−デセン等の含窒素脂肪族環状化合物、ピリジン、イミダゾール等の含窒素芳香族化合物が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドのアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。また、アルコキシドとしては、例えば、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシド、sec−ブトキシド等が挙げられる。リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属アルコキシドであることが好ましい。
アルカリ金属アルコキシドは、高純度品であっても良いし、アルコール溶液であっても良い。この場合、アルコール溶液に含有されるアルコール溶媒は、工程Aに用いられるアルコールと同一であることが、高い純度で4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルを得る点で好ましい。
【0051】
工程Aにおいて化合物(2−1)と反応させる塩基の使用量は、化合物(2−1)1モルに対して、例えば0.1モル〜10モルの範囲であり、好ましくは0.5モル〜3モルの範囲である。
【0052】
以下、化合物(2−1)と塩基とを反応させてカルベン触媒を発生させる方法について記載する。
カルベン触媒の発生は、後述するとおり工程Aの酸化反応と同時に実施しても良いし、事前にカルベン触媒を発生させてから工程Aの酸化反応にカルベン触媒を加えても良い。
工程Aの酸化反応と同時に実施する場合は、溶媒は使用しても良いし、使用しなくても良い。事前にカルベン触媒を発生させる場合は、好ましくは、溶媒の存在下にカルベン触媒を発生させる。溶媒としては、発生するカルベン触媒と反応しないものが好ましく用いられ、例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は制限されず、例えば、化合物(2−1)1重量部に対して、100重量部以下とすることが実用的である。
【0053】
カルベン触媒の発生において、反応試剤の混合順序は制限されない。好ましい実施態様としては、化合物(2−1)と溶媒とを混合し、得られる混合物に塩基を添加する方法が挙げられる。
【0054】
カルベン触媒の発生は、減圧下、常圧下及び加圧下のいずれの条件下でも行われるが、好ましくは常圧下又は加圧下で行われる。
【0055】
カルベン触媒の発生における反応温度は、化合物(2−1)の種類、塩基の種類、使用量や、発生するカルベン触媒の種類等により異なるが、好ましくは−20℃〜100℃の範囲、より好ましくは0℃〜50℃の範囲である。反応温度が−20℃よりも低い場合は、カルベン触媒の発生速度が低くなる傾向にあり、反応温度が100℃よりも高い場合は、生成するカルベン触媒が分解する傾向にある。
【0056】
カルベン触媒の発生における反応の進行度合いは、例えば薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0057】
カルベン触媒の発生における反応終了後、カルベン触媒を含む反応液は、そのまま工程Aの酸化反応や、後述する化合物(2−2)や化合物(2−3)の製造に用いることが出来る。また、必要に応じて、用いた塩基との反応で生成する塩をろ過などで除いた後、得られる反応混合物を、例えば、必要に応じて濃縮処理に付した後、冷却処理等を行うことにより、カルベン触媒を取り出すこともできる。
【0058】
次に、化合物(2−2)及び化合物(2−3)について説明する。
化合物(2−2)は、化合物(2−1)と塩基とを反応させて得られる化合物を、ROHで示されるアルコールと反応させることにより得られる。化合物(2−3)は、化合物(2−1)と塩基とを反応させて得られる化合物を、二酸化炭素と反応させることにより得られる。即ち、式(2−2)、式(2−3)におけるR、R、R及びYはそれぞれ式(2−1)で定義したものと同義である。
【0059】
式(2−2)において、Rで表されるアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分枝状のC〜Cアルキル基が挙げられる。
式(2−2)で示される化合物は、好ましくは式(2−6)

(式中、R、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。

は単結合又は二重結合を表す。)
で示される化合物(以下、「化合物(2−6)」と記すことがある)或いは式(2−7)

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物(以下、「化合物(2−7)」と記すことがある)であり、より好ましくは化合物(2−6)である。
【0060】
式(2−3)で示される化合物は、好ましくは式(2−8)

(式中、R、R、R、Y及び

はそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物(以下、「化合物(2−8)」と記すことがある)或いは式(2−9)

(式中、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物(以下、「化合物(2−9)」と記すことがある)であり、より好ましくは化合物(2−8)である。
【0061】
以下、化合物(2−6)、化合物(2−7)、化合物(2−8)及び化合物(2−9)について説明する。
【0062】
式(2−6)、式(2−7)、式(2−8)及び式(2−9)において、Rは式(2−1)におけるRと同義であり、Yは式(2−1)におけるYと同義である。Yが−N(R)−で表される基である場合、Rは式(2−1)におけるRと同義である。
式(2−6)及び式(2−7)において、Rは式(2−2)におけるRと同義である。
【0063】
式(2−6)、式(2−7)、式(2−8)及び式(2−9)において、Yは−N(R)−で表される基であることが好ましい。
【0064】
式(2−6)、式(2−7)、式(2−8)及び式(2−9)において、R及びRの少なくともいずれかが嵩高い基であることが好ましく、R及びRのいずれもが嵩高い基であることがより好ましい。R及びRは同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
ここで、R及びRにおける嵩高い基としては例えば、
tert−ブチル基、tert−ペンチル基等のC〜C12第三級アルキル基、
シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基、アダマンチル基等のC〜C10シクロアルキル基、
2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基等の少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基(2,6−ジ置換フェニル基)、
及び
2−メチルナフチル基等の2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基
が挙げられる。2,6−ジ置換フェニル基における置換基としては例えば、C〜C12アルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。
嵩高い基は、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基又は2,6−ジ置換フェニル基が好ましく、2,6−ジ置換フェニル基がより好ましく、2,6−ジイソプロピルフェニル基がより一層好ましい。
【0065】
式(2−6)及び式(2−8)において、Rは式(2−4)におけるRと同義であり、式(2−6)、式(2−7)、式(2−8)及び式(2−9)において、Rは式(2−5)におけるRと同義である。
【0066】
式(2−6)及び式(2−8)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、R及びRは共に水素原子であることがより好ましい。
【0067】
式(2−6)及び式(2−8)において、

は単結合であることが好ましい。
【0068】
化合物(2−6)としては、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合であり、R及びRが独立して、水素原子又は上述した群G3から選ばれる基を有していてもよい直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合であり、R及びRが水素原子である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−6)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合であり、R及びRが水素原子である化合物(2−6)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−6)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合である化合物(2−6)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−6)、
Yが−S−で表される基であり、Rが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合である化合物(2−6)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−6)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は二重結合である化合物(2−6)、
Yが−S−で表される基であり、Rが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合であり、R及びRが独立して、水素原子又は上述した群G3から選ばれる基を有していてもよい直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基である化合物(2−6)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、R及びRが独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメンチル基である化合物(2−6)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合であり、R及びRが独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメンチル基である化合物(2−6)が挙げられる。
【0069】
化合物(2−6)としては例えば、2−メトキシ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリジン、2−n−プロポキシ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン、2−プロポキシ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ジフェニルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−プロポキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−プロポキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−ブトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−ブトキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−イソプロポキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−イソプロポキシ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジクロロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジフェニル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4,5−ジフルオロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−4−メチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジクロル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1−tert−ブチル−3−フェニルイミダゾリジン、2−メトキシ−1−シクロヘキシル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン、2−メトキシ−1−フェニル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン、2−エトキシ−1−tert−ブチル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン及び2−エトキシ−1−tert−ブチル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリジン等が挙げられる。
【0070】
化合物(2−7)としては、
Yが−N(R)−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基である化合物(2−7)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、C〜C10アルキル基又はC〜C10アリール基である化合物(2−7)
Yが−S−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基である化合物(2−7)、および、
Yが−S−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、C〜C10アルキル基又はC〜C10アリール基である化合物(2−7)が挙げられる。
【0071】
化合物(2−7)としては例えば、5−メトキシ−1,4−ジメチル−1,2,4(5H)−トリアゾリン、5−メトキシ−1,3,4−トリフェニル−1,2,4(5H)−トリアゾリンを挙げることができる。
【0072】
化合物(2−8)としては、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合であり、R及びRが独立して、水素原子又は上述した群G3から選ばれる基を有していてもよい直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は単結合であり、R及びRが水素原子である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−8)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合であり、R及びRが水素原子である化合物(2−8)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−8)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とに置換基を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合である化合物(2−8)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基である化合物(2−8)、
Yが−S−で表される基であり、Rが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合である化合物(2−8)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基である化合物(2−8)、
Yが−S−で表される基であり、Rが、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は二重結合である化合物(2−8)、
Yが−S−で表される基であり、Rが独立して、C〜C12第三級アルキル基、C〜C10シクロアルキル基、少なくとも2位と6位とにC〜C12アルキル基又はハロゲン原子を有するフェニル基または2位にC〜C10アルキル基を有するナフチル基であり、

は二重結合であり、R及びRが独立して、水素原子又は上述した群G3から選ばれる基を有していてもよい直鎖状、分枝状又は環状のC〜C10アルキル基である化合物(2−8)、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、R及びRが独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメンチル基である化合物(2−8)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、R及びRが独立して、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、

は単結合であり、R及びRが独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメンチル基である化合物(2−8)が挙げられる。
【0073】
化合物(2−8)としては例えば、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジアダマンチルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ジフェニルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジメチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジクロロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジフェニル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4,5−ジフルオロ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−4−メチル−1,3−ビス[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,6−ジクロル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−tert−ブチル−3−フェニルイミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−シクロヘキシル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−フェニル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−tert−ブチル−3−[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリウム及び2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1−tert−ブチル−3−[(2,4,6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム等を挙げることができる。
【0074】
化合物(2−9)としては、
Yが−N(R)−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基である化合物(2−9)、および、
Yが−N(R)−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、C〜C10アルキル基又はC〜C10アリール基である化合物(2−9)
Yが−S−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基である化合物(2−9)、および、
Yが−S−で表される基であり、Rは、直鎖状又は分岐状のC〜C12アルキル基又はC〜C20アリール基であり、Rは、C〜C10アルキル基又はC〜C10アリール基である化合物(2−9)が挙げられる。
【0075】
化合物(2−9)としては例えば、5−カルボキシ−1,3,4−トリフェニル−4H、1,2,4−トリアゾリウム等を挙げることができる。
【0076】
化合物(2−2)及び化合物(2−3)としては、市販品及び、例えば、J.Am.Chem.Soc.,第127巻,9079頁(2005年)に記載される方法に準じて製造されたものが挙げられる。
【0077】
以下、化合物(2−2)を分解してカルベン触媒を発生させる方法について記載する。
化合物(2−2)は、好ましくは、所定の温度に加熱することで、カルベン触媒とアルコールとに分解し、アルコールを除去することで、カルベン触媒を発生させることができる。
カルベン触媒の発生は、後述するとおり工程Aの酸化反応と同時に実施しても良いし、事前にカルベン触媒を発生させてから工程Aの酸化反応にカルベン触媒を加えても良い。
工程Aの酸化反応と同時に実施する場合は、溶媒は使用しても良いし、使用しなくても良い。事前にカルベン触媒を発生させる場合は、好ましくは、溶媒の存在下にカルベン触媒を発生させる。溶媒としては、発生するカルベン触媒と反応しないものが好ましく用いられ、例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は制限されず、例えば、化合物(2−2)1重量部に対して、100重量部以下とすることが実用的である。
【0078】
カルベン触媒の発生において、反応試剤の混合順序は制限されない。好ましい実施態様としては、化合物(2−2)と溶媒とを混合し、得られる混合物を所定の温度に加熱し、発生するアルコールを留去する方法が挙げられる。
【0079】
カルベン触媒の発生は、減圧下、常圧下及び加圧下のいずれの条件下でも行われるが、好ましくは常圧下又は減圧下で行われる。
【0080】
カルベン触媒の発生における反応温度は、化合物(2−2)の種類、発生するカルベン触媒の種類等により異なるが、好ましくは−20℃〜100℃の範囲、より好ましくは0℃〜50℃の範囲である。反応温度が−20℃よりも低い場合は、カルベン触媒の発生速度が低くなる傾向にあり、反応温度が100℃よりも高い場合は、生成するカルベン触媒が分解する傾向にある。
【0081】
カルベン触媒の発生における反応の進行度合いは、例えば薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0082】
カルベン触媒の発生における反応終了後、カルベン触媒を含む反応液は、そのまま工程Aの酸化反応に用いることが出来る。また、得られる反応混合物を、例えば、必要に応じて濃縮処理に付した後、冷却処理等を行うことにより、カルベン触媒を取り出すこともできる。
【0083】
以下、化合物(2−3)を分解してカルベン触媒を発生させる方法について記載する。
化合物(2−3)は、好ましくは、所定の温度に加熱することで、カルベン触媒と二酸化炭素とに分解し、二酸化炭素を除去することで、カルベン触媒を発生させることができる。
カルベン触媒の発生は、後述するとおり工程Aの酸化反応と同時に実施しても良いし、事前にカルベン触媒を発生させてから工程Aの酸化反応にカルベン触媒を加えても良い。
工程Aの酸化反応と同時に実施する場合は、溶媒は使用しても良いし、使用しなくても良い。事前にカルベン触媒を発生させる場合は、好ましくは、溶媒の存在下にカルベン触媒を発生させる。溶媒としては、発生するカルベン触媒と反応しないものが好ましく用いられ、例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は制限されず、例えば、化合物(2−3)1重量部に対して、100重量部以下とすることが実用的である。
【0084】
カルベン触媒の発生において、反応試剤の混合順序は制限されない。好ましい実施態様としては、化合物(2−3)と溶媒とを混合し、得られる混合物を所定の温度に加熱し、二酸化炭素を除去する方法が挙げられる。
【0085】
カルベン触媒の発生は、減圧下、常圧下及び加圧下のいずれの条件下でも行われるが、好ましくは常圧下又は減圧下で行われる。
【0086】
カルベン触媒の発生における反応温度は、化合物(2−3)の種類、発生するカルベン触媒の種類等により異なるが、好ましくは−20℃〜100℃の範囲、より好ましくは0℃〜50℃の範囲である。反応温度が−20℃よりも低い場合は、カルベン触媒の発生速度が低くなる傾向にあり、反応温度が100℃よりも高い場合は、生成するカルベン触媒が分解する傾向にある。
【0087】
カルベン触媒の発生における反応の進行度合いは、例えば薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0088】
カルベン触媒の発生における反応終了後、カルベン触媒を含む反応液は、そのまま工程Aの酸化反応に用いることが出来る。また、得られる反応混合物を、例えば、必要に応じて濃縮処理に付した後、冷却処理等を行うことにより、カルベン触媒を取り出すこともできる。
【0089】
工程Aは、好ましくは、上述の通り、カルベン触媒の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール、アルコール及び酸化剤を反応させることにより行われ、より好ましくは、式(2−1)で示される化合物と塩基とを反応させて得られる化合物、式(2−2)で示される化合物、式(2−2)で示される化合物を分解して得られる化合物、式(2−3)で示される化合物、並びに、式(2−3)で示される化合物を分解して得られる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール、アルコール及び酸化剤を反応させることにより行われ、より一層好ましくは、式(2−1)で示される化合物と塩基とを反応させて得られる化合物の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール、アルコール及び酸化剤を反応させることにより行われる。
【0090】
カルベン触媒の使用量は、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール1モルに対して、好ましくは0.001モル〜0.5モルであり、より好ましくは0.01モル〜0.3モルである。
【0091】
次いで、工程Aに用いられるアルコールについて説明する。
【0092】
工程Aにおいて、アルコールの種類は制限されず、アルコールとして炭素数1〜8の低級アルコールが好ましく用いられる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。より好ましくは、メタノールまたはエタノールである。
【0093】
工程Aで用いられるアルコールとしては、市販品及び任意の公知の方法に準じて製造したものが挙げられる。公知の方法としては、例えばアルカン又はアルキル置換ベンゼンを部分酸化する方法、2重結合に水を付加する方法、及び醗酵法で製造する方法が挙げられる。
【0094】
工程Aにおけるアルコールの使用量は、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、その上限は制限されないが、経済性の点で100モル以下が好ましい。
【0095】
工程Aで用いられる酸化剤としては、副反応を優先して進行させない酸化剤であれば、特に限定されず、例えば、酸素、二酸化炭素、二酸化マンガン、アゾベンゼン、キノン、ベンゾキノン、アントラキノンなどが挙げられる。酸化剤は、好ましくは、酸素及び二酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0096】
工程Aで酸化剤として用いられうる酸素は、酸素ガスであってもよいし、窒素等の不活性ガスにより希釈された酸素ガスであってもよいし、大気に含まれる酸素であってもよい。また、大気に含まれる酸素を窒素等の不活性ガスにより希釈したものであってもよい。酸素の使用量は、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール1モルに対して、好ましくは、1モル〜100モルの範囲である。
【0097】
工程Aで酸化剤として用いられうる二酸化炭素は、ガス状のものであってもよいし、固体状のもの(ドライアイス)であってもよいし、超臨界状態のものであってもよい。ガス状の二酸化炭素は、窒素等の不活性ガスで希釈されたものであってもよい。
二酸化炭素の使用量は、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、その上限は制限されないが、生産性の面から例えば100モル以下である。
【0098】
工程Aは、溶媒の存在下に行うこともできる。
溶媒としては、工程Aにおいて4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルの生成を阻害しないものであれば制限されず、例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は制限されず、例えば、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール1重量部に対して、100重量部以下とすることが実用的である。
【0099】
工程Aにおいて、反応試剤の混合順序は制限されない。好ましい実施態様としては、化合物(2−1)を用いる場合は、例えば、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールと、化合物(2−1)と、酸化剤と、アルコールと、必要に応じて溶媒とを混合し、得られる混合物に塩基を添加する方法が挙げられる。化合物(2−2)及び化合物(2−3)からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いる場合は、例えば、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールと、アルコールと、化合物(2−2)及び化合物(2−3)からなる群より選ばれる少なくとも一種と、必要に応じて溶媒とを混合し、得られる混合物に酸化剤を添加する方法が挙げられる。
【0100】
工程Aは、減圧下、常圧下及び加圧下のいずれの条件下でも行われるが、好ましくは常圧下又は加圧下で行われる。
【0101】
工程Aにおける反応温度は、カルベン触媒の種類、使用量等により異なり、また、化合物(2−1)を用いる場合は、さらに塩基の種類、使用量等により異なるが、好ましくは−20℃〜150℃の範囲、より好ましくは0℃〜100℃の範囲である。反応温度が−20℃よりも低い場合は、酸化の反応速度が低くなる傾向にあり、反応温度が150℃よりも高い場合は、反応の選択率が低下する傾向にある。
【0102】
工程Aにおける反応の進行度合いは、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0103】
工程Aにおける反応終了後、用いた酸化剤を脱ガスやろ過などで除いた後、得られる反応混合物を、例えば、必要に応じて濃縮処理に付した後、冷却処理等を行うことにより、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルを取り出すこともできる。
取り出した4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルは、蒸留、カラムクロマトグラフィー、結晶化などの精製手段により、精製することができる。
【0104】
次に、工程Aで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルを加水分解する工程Bについて説明する。工程Bを行うことにより、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸が得られる。4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸は、塩を形成していてもよい。かかる塩は、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸に含まれる−COOHで表される基から解離し得るHが、任意の陽イオンに置き換わってなる塩を意味する。陽イオンとしては、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンの4級アンモニウムイオン;およびアンモニウムイオンが挙げられる。
【0105】
工程Bにおける加水分解は、酸加水分解及びアルカリ加水分解のいずれであってもよい。酸加水分解を行う場合、酸として、例えば、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸、酸性陽イオン交換樹脂等を用いることができる。アルカリ加水分解を行う場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アンモニア等を用いることができる。
【0106】
工程Bにおける加水分解は、例えば、工程Aで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルと酸又はアルカリとを、水の存在下で混合することにより行うことができる。加水分解の反応温度は、例えば、20℃〜100℃の範囲、好ましくは、40℃〜80℃の範囲である。加水分解により生成するアルコールを、留去しながら
加水分解を行うこともできる。
加水分解反応終了後、得られる反応混合物は、そのまま工程Cの還元アミノ化反応に用いることもできるし、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸またはその塩を取り出した後、工程Cの還元アミノ化反応に用いることもできる。
加水分解反応終了後、得られる反応混合物を、必要に応じて温度調整した後、例えば、濾過、中和、抽出、水洗等の後処理、蒸留、結晶化及び固液分離等の単離処理に供することにより、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸またはその塩を取り出すことができる。単離された4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸またはその塩は、再結晶;抽出精製;蒸留;活性炭、シリカ、アルミナ等への吸着処理;シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法等の精製処理により、精製することができる。
【0107】
次に、工程Bで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸を還元アミノ化する工程Cについて説明する。工程Cを行うことにより、メチオニンが得られる。
工程Cは、工程Bで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸を還元アミノ化することにより行われ、水素化アルミニウムアルカリ金属塩や水素化ホウ素アルカリ金属塩等の還元剤を用いて行ってもよいし、金属触媒の存在下に、水素やギ酸等を還元剤として用いて行ってもよい。工程Cは、好ましくは、遷移金属の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸、アンモニア及び還元剤を反応させることにより行われる。
【0108】
工程Cにおいて用いられる遷移金属(以下、「遷移金属触媒」と記すことがある)は、好ましくは、貴金属、ニッケル、コバルト及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、また好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、イリジウム、ニッケル、コバルト及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
貴金属としては、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金及びイリジウムが挙げられ、貴金属は、担体に担持させたもの(以下、「担持触媒」と記すことがある)であることが好ましい。担体としては、例えば活性炭、アルミナ、シリカおよびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
ニッケルとしては、例えば、還元ニッケル(以下、「還元ニッケル触媒」と記すことがある)、スポンジニッケル(ラネー(登録商標)ニッケル)(以下、「スポンジニッケル触媒」と記すことがある)が挙げられ、コバルトとしては、例えば、還元コバルト(以下、「還元コバルト触媒」と記すことがある)、スポンジコバルト(ラネー(登録商標)コバルト)(以下、「スポンジコバルト触媒」と記すことがある)が挙げられ、銅としては、例えば、スポンジ銅((ラネー(登録商標)銅))(以下、「スポンジ銅触媒」と記すことがある)が挙げられる。なお、還元ニッケル触媒、還元コバルト触媒等の還元金属触媒は、金属酸化物又は金属水酸化物を還元することにより調製される触媒、或いは担体に担持された金属酸化物又は担体に担持された金属水酸化物を還元することにより調製される触媒である。また、スポンジニッケル触媒、スポンジコバルト触媒、スポンジ銅触媒等のスポンジ金属触媒は、ニッケルとアルミニウムとの合金、コバルトとアルミニウムとの合金、銅とアルミニウムとの合金に水酸化ナトリウム水溶液を作用させてアルミニウムを溶解して調製される触媒である。
【0109】
工程Cにおける遷移金属触媒は、好ましくは、スポンジ金属触媒又は貴金属であり、より好ましくは、スポンジニッケル触媒、スポンジコバルト触媒およびスポンジ銅触媒からなる群より選ばれる一種以上の触媒、或いは、担体に担持させた貴金属である。なかでも、遷移金属触媒は、活性炭に担持されたパラジウムまたは活性炭に担持されたロジウムであることが好ましい。
【0110】
遷移金属触媒は市販品でもよいし、任意の公知の方法により調製されたものでもよい。
遷移金属触媒の使用量は、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸1重量部に対して、遷移金属原子が好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは0.0001〜0.2重量部含まれる範囲の量であり、さらに好ましくは0.001〜0.1重量部含まれる範囲内の量である。
【0111】
工程Cにおいて用いられるアンモニアとしては、液体アンモニア、アンモニアガス及びアンモニア溶液のいずれの形態でも用いることができるが、好ましくはアンモニア溶液であり、より好ましくアンモニア水又はアンモニア−メタノール溶液が用いられる。アンモニア水を用いる場合、その濃度は10〜35重量%であることが好ましい。また、アンモニアは、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、またはギ酸、酢酸等のカルボン酸と塩を形成していてもよい。
アンモニアの使用量は、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸1モルに対して、1モル以上であることが好ましい。アンモニアの使用量の上限は限定されず、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸1モルに対して、例えば500モルである。
【0112】
工程Cにおいて用いられる還元剤としては、水素及びギ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。水素としては、市販の水素ガスを用いることもできるし、例えばギ酸またはその塩から、任意の公知の方法により発生させて用いることもできる。水素ガスを用いる場合、その分圧は、好ましくは10MPa以下であり、より好ましくは0.01〜5MPaの範囲内であり、さらに好ましくは0.02〜2MPaの範囲内であり、より一層好ましくは0.05〜0.8MPaの範囲内である。ギ酸としては、例えば、市販のものを用いることができる。
【0113】
工程Cにおける還元アミノ化(以下、「還元アミノ化反応」と記すことがある)は、好ましくは溶媒の存在下で行われる。かかる溶媒は、還元アミノ化反応に対して不活性なものであることが好ましく、例えば、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、イソヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、イソペプチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等のエステル溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリジノン等の非プロトン性極性溶媒;水;それらの混合物が挙げられる。なかでも、好ましくはアルコール溶媒または水であり、より好ましくはメタノールまたは水である。溶媒の使用量は、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸1gに対して、好ましくは1〜200mLの範囲内であり、より好ましくは10〜150mLの範囲内である。
【0114】
工程Cにおける反応試剤の混合順序は特に規定されず、例えば、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸とアンモニアと遷移金属触媒とを混合し、得られた混合物に水素を加える方法や、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸とギ酸アンモニウムとを混合し、必要に応じてギ酸を添加して任意のpHに調整した後、得られた混合物に遷移金属触媒を加える方法が挙げられる。
【0115】
工程Cにおける反応温度は、好ましくは0℃〜100℃の範囲、より好ましくは20℃〜90℃の範囲である。反応時間は、反応温度、反応試剤や溶媒の使用量、水素分圧等にもよるが、例えば1〜24時間の範囲内である。還元アミノ化反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認できる。
【0116】
還元アミノ化反応終了後、得られる反応混合物を、必要に応じて温度調整した後、例えば、濾過、中和、抽出、水洗等の後処理、蒸留、結晶化及び固液分離等の単離処理に供することにより、メチオニンを取り出すことができる。具体的には、例えば、得られる反応混合物を、室温付近等に温度調整した後又は温度調整することなく、ろ過することにより遷移金属触媒を除去した後、得られたろ過液を中和することによりメチオニンを析出させ、析出したメチオニンをろ過等により回収することができる。中和は、例えば、得られる反応混合物が塩基性を示す場合には、反応混合物と塩酸、炭酸等の酸とを混合することにより行われ、得られる反応混合物が酸性を示す場合には、反応混合物と、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基とを混合することにより行われる。ろ過により除去した遷移金属触媒やろ過等により回収したメチオニンは、上述の溶媒で洗浄することもできる。また、回収したメチオニンは、減圧乾燥等により乾燥することもできる。反応混合物にアンモニアが含まれる場合には、例えば、反応混合物中に窒素ガスを吹き込むことにより、アンモニアを反応混合物から取り除くことができる。
単離されたメチオニンは、再結晶;抽出精製;蒸留;活性炭、シリカ、アルミナ等への吸着処理;シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法等の精製処理により、精製することができる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0118】
カルベン触媒原料である1,3−ビス[(2,4,6−トリブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライドの製造例
(参考例1)
窒素置換した300mLフラスコに、2,4,6−トリブロモアニリン25g、クロロホルム200gおよびトリエチルアミン9.2gを仕込んだ。得られた混合物に、オキザリルクロライド11.5gを0℃で30分かけて滴下した。得られた混合物を、0℃で2時間攪拌した後、さらに室温で18時間攪拌した。得られた反応混合物に水を100g加えることにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物を水10g、ジエチルエーテル20gで洗浄し、さらに乾燥することにより、白色結晶20.4gを得た。得られた白色結晶は、ガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC−MS)より、N,N'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)エタンジアミドであることを確認した。収率:76%。
MS(m/z):713(M+)
【0119】
200mLステンレス製オートクレーブに、上記で得たN,N'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)エタンジアミド10.1gと、BH3・テトラヒドロフランの1M溶液85mLとを仕込んだ後、75℃で16時間加熱攪拌した。室温まで冷却したのち、反応液を、メタノール170gおよび35%塩酸8.5gの混合液中に少しずつ添加攪拌した。得られた反応液から軽沸物を留去し、残渣にさらにメタノール150gを加え、再度、軽沸物を留去することにより、白色結晶9.1gを得た。収率:89%
得られた結晶は、GC−MSより、N,N'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)-1,2-エタンジアミン塩酸塩であることを確認した。
MS(m/z):685(M+、フリーアミン)
【0120】
窒素置換した200mLフラスコに、上記で得たN,N'−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)-1,2-エタンジアミン塩酸塩9gと、オルトギ酸トリエチル100gとを仕込み、得られた混合物を1時間還流した後、室温まで冷却することにより、結晶を析出させた。次いで、析出した結晶をろ過操作により回収した後、得られた回収物をテトラヒドロフラン10gで洗浄、乾燥することにより、白色結晶3.1gを得た。得られた結晶は、1H−NMRより、1,3−ビス[(2,4,6−トリブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライドであることを確認した。収率:32%
H−NMR(δ/ppm、DMSO−d6、テトラメチルシラン基準):4.66(s, 4H),8.3(s,4H),9.70(s,1H)
【0121】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの製造例
<工程A−例1>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール100mg、3−(2,6−ジイソプロピル)フェニル−4,5−ジメチルチアゾリウムクロライド20mg、メタノール500mg及びテトラヒドロフラン3gを仕込み、得られた混合物に、窒素ガスを吹き込みながら、−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gと、ナトリウムメチラート6mgを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、4時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は50%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応の4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが10%残存していた。
【0122】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの製造例
<工程A−例2>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール100mg、3−(2,6−ジイソプロピル)フェニル−4,5−ジメチルチアゾリウムクロライド18mg、メタノール300mg及びテトラヒドロフラン3gを仕込み、得られた混合物に、窒素ガスを吹き込みながら、−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gと、28%ナトリウムメチラートのメタノール溶液10mgを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を、空気で1MPaに加圧した後、60℃にて、3時間攪拌して反応させた。
反応終了後、室温まで冷却後、放圧することで常圧に戻し、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は20%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応の4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが20%残存していた。
【0123】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの製造例
<工程A−例3>
<工程A−例2>において、3−(2,6−ジイソプロピル)フェニル−4,5−ジメチルチアゾリウムクロライド18mgの代わりに、1,3−ビス[(2,4,6−トリブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライド36mgを用いる以外は、<工程A−例2>と同様に実施した。4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は 57%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応の4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが6%残存していた。
【0124】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの製造例
<工程A−例4>
磁気回転子を付した100mLのシュレンク管に、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール100mg、1,3−ビス[(2,4,6−トリブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライド36mg、メタノール300mg及びテトラヒドロフラン3gを仕込み、得られた混合物に、28%ナトリウムメチラートのメタノール溶液10mg加えた後、空気雰囲気で、60℃にて、3時間攪拌して反応させた。
反応終了後、室温まで冷却後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は65%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応の4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが4%残存していた。
【0125】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの製造例
<工程A−例5>
磁気回転子を付した100mLのシュレンク管に、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール1g、1,3−ビス[(2,4,6−トリブロモ)フェニル]イミダゾリニウムクロライド300mg、メタノール3g及びテトラヒドロフラン10gを仕込み、得られた混合物に、28%ナトリウムメチラートのメタノール溶液70mg加えた後、空気雰囲気で、60℃にて、3時間攪拌して反応させた。
反応終了後、室温まで冷却後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は30%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応の4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが40%残存していた。
【0126】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの製造例
<工程A−例6>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下で4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール100mg、2−メトキシ−1,3−ビス[(2,6−ジイソプロピル)フェニル]イミダゾリジン20mg、メタノール500mg及びテトラヒドロフラン2gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、6時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は20%であった。反応終了後の反応混合物には、未反応の4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが30%残存していた。
【0127】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの製造例
<工程A−例7>
磁気回転子を付したステンレス製100mL耐圧反応管に、窒素雰囲気下で4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール100mg、2−カルボキシ−4,5−ジヒドロ−1,3−ビス[(2,4、6−トリメチル)フェニル]イミダゾリウム10mg、メタノール500mg及びテトラヒドロフラン3gを仕込み、得られた混合物を−70℃のドライアイスバスにて冷却した。冷却した混合物にドライアイス2gを加えた後、耐圧反応管を密栓した。得られた混合物を60℃にて、4時間攪拌して反応させた。
反応終了後、二酸化炭素及び副生した一酸化炭素を気体として反応混合物から除去した後、得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチルの収率を求めたところ、収率は10%であった。
【0128】
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸カリウムの製造例
<工程B−例1>
4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸メチル100mgに、10%水酸化カリウム水溶液5gを加え、70℃にて加熱攪拌しながら、発生するメタノールを留去することで、4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸カリウム水溶液が得られる。
【0129】
工程Cにおける分析法
以下の工程C−1〜工程C−12において、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)を用いて下記分析条件により反応混合物を分析し、下式に基づいて転化率及び選択率を算出した。また、工程C−12において、別途調製したメチオニンを内部標準物質として使用し、高速液体クロマトグラフィー内部標準法により、メチオニンの含量を決定した。
<分析条件>
LCカラム :Lichrosorb−RP−8
カラム温度 :40℃
移動相 :アセトニトリル/水=5/95
添加剤 1−ペンタンスルホン酸ナトリウム
添加剤濃度 2.5mmol/L
移動相のpH 3(40%リン酸を添加して調整)
流速 :1.5mL/分
検出波長 :210nm
測定時間 :60分
<転化率の算出>
転化率(%)=100(%)−(4−(メチルチオ)−2−オキソ−ブタン酸のピーク面積(%))
<選択率の算出>
選択率(%)=(メチオニンのピーク面積)/(全生成物のピーク面積)X100
【0130】
メチオニンの製造例
<工程C−例1>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム50mg、7mol/L アンモニア−メタノール溶液12.6mLおよび5重量%Pd/C(和光純薬工業株式会社製)32mgを入れ、得られた混合物を攪拌した。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は99%以上であり、メチオニンの選択率は90%であった。
【0131】
メチオニンの製造例
<工程C−例2>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム50mg、7mol/L アンモニア−メタノール溶液12.6mLおよび5重量%Pd/C(和光純薬工業株式会社製)32mgを入れ、得られた混合物を攪拌した。混合物を、水素雰囲気(常圧)下、50℃で6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は99%以上であり、メチオニンの選択率は83%であった。
【0132】
メチオニンの製造例
<工程C−例3>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム50mg、28重量%アンモニア水5.4gおよび5重量%Pd/C(和光純薬工業株式会社製)32mgを入れ、得られた混合物を攪拌した。オートクレーブに水素を圧入して1.0MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を1.0MPaとした後、50℃まで昇温し、50℃で6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は99%以上であり、メチオニンの選択率は34%であった。
【0133】
メチオニンの製造例
<工程C−例4>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸44mg、28重量%アンモニア水5.4gおよび5重量%Pd/C(和光純薬工業株式会社製)32mgを入れ、得られた混合物を攪拌した。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸の転化率は99%以上であり、メチオニンの選択率は70%であった。
【0134】
メチオニンの製造例
<工程C−例5>
10mLフラスコに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム50mg、ギ酸アンモニウム370mgおよび水5.0gを加え、得られた混合物にギ酸を添加することによりpH5.0に調整した。この混合物に5重量%Rh/C(和光純薬工業株式会社製)60.5mgを加えた後、80℃まで昇温し、同温度で15時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は84%であり、メチオニンの選択率は42%であった。
【0135】
メチオニンの製造例
<工程C−例6>
内容量50mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム51mgおよび28重量%アンモニア水5.4gを入れ、得られた混合物を攪拌後、この混合物にラネー(登録商標)ニッケル(デグサ社製)51mg(湿重量)を加えた。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は94%であり、メチオニンの選択率は10%であった。
【0136】
メチオニンの製造例
<工程C−例7>
内容量50mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム51mgおよび28重量%アンモニア水5.4gを入れ、得られた混合物を攪拌後、この混合物にラネー(登録商標)コバルト(アルドリッチ社製)51mg(湿重量)を加えた。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は96%であり、メチオニンの選択率は27%であった。
【0137】
メチオニンの製造例
<工程C−例8>
内容量50mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム51mgおよび28重量%アンモニア水5.4gを入れ、得られた混合物を攪拌後、この混合物にラネー(登録商標)銅(ストレムケミカル社製)51mg(湿重量)を加えた。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は93%であり、メチオニンの選択率は9.5%であった。
【0138】
メチオニンの製造例
<工程C−例9>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム50mgおよび7mol/L アンモニア−メタノール溶液12.6mLを入れ、得られた混合物を攪拌後、この混合物にラネー(登録商標)ニッケル(デグサ社製)51mg(湿重量)を加えた。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は95%であり、メチオニンの選択率は50%であった。
【0139】
メチオニンの製造例
<工程C−例10>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム50mgおよび7mol/L アンモニア−メタノール溶液12.6mLを入れ、得られた混合物を攪拌後、この混合物にラネー(登録商標)コバルト(アルドリッチ社製)51mg(湿重量)を加えた。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は91%であり、メチオニンの選択率は52%であった。
【0140】
メチオニンの製造例
<工程C−例11>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウム50mgおよび7mol/L アンモニア−メタノール溶液12.6mLを入れ、得られた混合物を攪拌後、この混合物にラネー(登録商標)銅(ストレムケミカル社製)51mg(湿重量)を加えた。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、50℃まで昇温し、6時間攪拌した。得られた反応混合物の一部を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸ナトリウムの転化率は82%であり、メチオニンの選択率は 13%であった。
【0141】
メチオニンの製造例
<工程C−例12>
内容量60mLのオートクレーブに、4−(メチルチオ)−2−オキソブタン酸カリウム水溶液(2.116g、含量14.5%)、28重量%アンモニア水1.58gおよび5重量%Pd/C(和光純薬工業株式会社製)95mgを入れ、得られた混合物を攪拌した。オートクレーブに水素を圧入して0.5MPaG(ゲージ圧)、即ち水素ガスの分圧を0.5MPaとした後、40℃まで昇温し、13時間攪拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、オートクレーブ内の圧力を開放して常圧とした後にろ過し、ろ過により除去された固形物を水で洗浄した。ろ過液および洗浄液を混合して得られた溶液7.921g中のメチオニン含量を高速液体クロマトグラフィー内部標準法により分析し、メチオニンの生成率を求めたところ、72.9%であった。
次いで、得られた前記溶液に炭酸ガス(COガス)を30分間吹き込むことで、固体を析出させた。析出させた固体をろ過することにより回収し、回収したろ物を水0.5gで洗浄し、減圧乾燥することでメチオニン0.121g(含量96%、収率68%)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、メチオニンの製造方法として産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナールをアルコール存在下に酸化する工程A、
工程Aで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸エステルを加水分解する工程B、並びに、
工程Bで得られる4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸を還元アミノ化する工程C
を含むことを特徴とするメチオニンの製造方法。
【請求項2】
工程Aが、カルベン触媒の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−1−ブタナール、アルコール及び酸化剤を反応させることにより行われる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程Aにおけるカルベン触媒が、式(2−1)


(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RとRとが一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基又は置換基を有していてもよい−CH=N−で表される基を形成している。Yは−S−で表される基又は−N(R)−で表される基を表す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表すか、或いは、RはRと一緒になって、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成する。Xは陰イオンを表す。)
で示される化合物と塩基とを反応させて得られる化合物、式(2−2)

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。Rはアルキル基を表す。)
で示される化合物、式(2−2)で示される化合物を分解して得られる化合物、式(2−3)

(式中、R、R、R及びYはそれぞれ上記と同義である。)
で示される化合物、並びに、式(2−3)で示される化合物を分解して得られる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
工程Aにおける酸化剤が、酸素及び二酸化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項2又は3記載の製造方法。
【請求項5】
アルコールが、メタノール又はエタノールである請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
工程Cが、溶媒の存在下に行われる請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
工程Cにおける溶媒が、メタノール及び水からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
工程Cが、遷移金属の存在下に、4−メチルチオ−2−オキソ−ブタン酸、アンモニア及び還元剤を反応させることにより行われる請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
工程Cにおける遷移金属が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、イリジウム、ニッケル、コバルト及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項8記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−75885(P2013−75885A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−192905(P2012−192905)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】