説明

メチルトリオキソレニウム(VII)(MTO)及び有機レニウム(VII)−酸化物の効率的な製造方法

本発明は、有機レニウム(VII)−酸化物の新規の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機レニウム(VII)−酸化物を製造するための新規方法に関する。
【0002】
有機レニウム(VII)−酸化物の親化合物としてのメチルトリオキソレニウム(VII)(略称:MTO)に関しては、1979年に初めてI. R. Beattie及びP. J. Jonesにより報告された(Inorg. Chem. 1979, 18, 2318.)。これは50%までの収率で、トリメチルジオキソレニウム(VI)(CHReO又はテトラメチルオキソレニウム(VII)(CHReOから生じ、その場合に出発化合物は、MTOへの変換を引き起こすために、数週間にわたり乾燥空気に暴露されなければならない。
【0003】
多い時間浪費、極めて入手し難い前駆物質及び不満足な生成物収率に基づいて、この製造方法は決して何らかの意味を有していなかった。その代わりに、3つの選択的な合成が一般に使われており、これらは多様なレニウム(VII)−前駆物質の有機化(Organylierungen)である。これらの方法はHerrmann他により開発された。
【0004】
(1)七酸化二レニウムRe27の直接アルキル化の方法の場合に(W.A.Herrmann他, Angew. Chem. 1988, 100, 420)、還元しない連鎖移動試薬、例えばテトラアルキルスズRSnを用いて円滑な反応において相応する有機レニウム(VII)−酸化物が得られる。この方法の最大の欠点は、使用されるレニウムの半分が高分子トリアルキルスタンニルペルレナートとして生じることにある。それゆえ、理論的に達成可能な最大収率は、レニウムを基準として50%に過ぎない。実際に達成された収率は、レニウムに対して約45%である。有毒なスズ試薬RSnの代わりに、式R2Znの相応する亜鉛試薬が使用される場合には、これらは確かにアルキル化を引き起こすが、しかしレニウムの望ましくない還元も引き起こす。
【0005】
(2)いわゆる"無水物経路"(W. A. Herrmann 他, Inorg. Chem. 1992, 31, 4431)の場合に、過レニウム酸及びカルボン酸の混合された無水物でのアルキル化が実施される。この場合に、七酸化二レニウムは、無水カルボン酸及びテトラアルキルスズ化合物と連続して反応される。ハロゲン化された無水カルボン酸(好ましくはトリフルオロ酢酸無水物)の使用の場合に収率は80〜90%であり、その場合に、形成されたMTOから生じた(トリアルキルスタンニル)−無水カルボン酸を分離するのは、多くの作業操作を必要とし、故に時間がかかる。詳述された反応は、わずかな反応性スズ化合物に制限されたままである。それゆえ、この反応はその合成の変動幅において限定されている。
【0006】
(3)1998年に特許権が与えられた方法(特許:Aventis米国特許6,180,807号、独国特許(DE)第19717178号明細書)によれば、無機又は有機金属の過レニウム酸塩は、シリル化試薬(好ましくはトリメチルシリルクロリドTMS−Cl)及び有機化試薬(たいていテトラアルキルスズRSn又はジアルキル亜鉛R)と反応されて、相応する有機レニウム(VII)−酸化物に変換される。入手し難い過レニウム酸カルシウムとテトラメチルスズの使用の場合に、MTO収率は80%である。
【0007】
3つ全ての方法の場合に、メチル化試薬としてスズ(IV)化合物(とりわけSn(CH、CHSn(n−C)が使用される場合にのみ、MTOが良好な収率で得られる。これは決定的な欠点である、それというのも、これらの極めて揮発性の化合物は、急性毒性であり、かつ発ガン性だからである。それゆえ、前記合成は有機レニウム(VII)−酸化物の精製と同じように、特別な作業費用及び装置費用並びに特殊な実験室用装置もしくはパイロット用装置を必要とする。極度の作業保護対策が講ぜられるべきである。別の欠点は、スズオルガニル(Zinnorganylen)の高い価格である。
【0008】
合成経路(1)及び(3)の場合に使用可能なジアルキル亜鉛−化合物は、確かにその毒性の観点であまり重大ではないが、しかし、より大量の生成物の製造を極めて困難にするという他の欠点を有する。例えば、アルキル亜鉛RZn − とりわけ(CHZn及び(CHCHZn − は自然発火性である。また、まれに見る良好な収率が達成され、そのうえ、反応はその都度、極めて低い温度(−78℃又はそれ未満)で実施されなければならない、それというのも、さもなければ、低い価数のレニウム化合物へのレニウム(VII)−前駆物質の還元が起こるからである。そのようなバッチの後処理は、手間がかかり、かつ時間がかかる。このことは、明らかに高められた製造費用、ひいてはより高いコストもまねく。
【0009】
故に、有機レニウム(VII)−酸化物が調製用に単純に、費用がかからずに、かつ有毒で高価なスズオルガニルの使用なしに良好な収率で得られることができる新規方法を提供するという課題が存在していた。特に、性能がよく、大きな生成物量へ適用可能で、卓越した触媒MTOのための合成方法が見出されなければならなかった。この目標設定は、この分野の既に文献から知られた何百もの業績に基づいて、事実上見込みがないように思われていた。MTO及びその誘導体は、約15年来、世界的規模で、集中的な研究分野である。
【0010】
それにもかかわらずかつ意外にも、目下、前記課題は、レニウム(VII)含有の前駆物質を、有機化する特性が、それぞれのレニウム前駆物質上の特定の置換基及び反応条件により適合されている官能化された有機化試薬と反応させることにより解決された。試薬の性質上の適合により、望ましくないその還元作用も、完全に抑制されることができるので、生成物の中に低い価数のレニウム化合物がもはや生じない。それゆえ、目的生成物の後処理も単純化される。メチル亜鉛カルボキシラート、−ハロゲン化物及び−アミド、しかしまた溶剤錯体Al(CH・(THF)[ここでTHF=テトラヒドロフラン及びn=1〜3]が殊にMTOの製造のための意外にも効率的な試薬であることが判明した。
【0011】
それゆえ、本発明の対象は、レニウム(VII)含有前駆物質と、質量に正確に(massgenau)官能化された有機化試薬とから、有機レニウム(VII)−酸化物を製造する方法である。
【0012】
官能化基の好ましい例は、ハロゲン、例えばF、Cl、Br又はI、プソイドハロゲン、例えばシアン化物及びロダン化物(SCN)、O−官能基、例えばアルキルオキシ、アリールオキシ、(アルキル−又は/及びアリール−)シロキシ、アシルオキシ、アルカンスルファニルオキシ又はアリールスルファニルオキシ又はN−官能基、例えばアミノ、アルキルアミノ又はアリールアミノ又は第1主族の金属、例えばLi、Na、K、Rb又はCs又は第2主族の金属のモノハロゲン化合物、例えばMgBr又はMgClである。
【0013】
好ましくは、官能化された有機化試薬として、レニウム(VII)含有の前駆物質に変換されうる少なくとも1つの有機基と、それとは異なり、ルイス塩基性の溶剤配位子(例えばTHF)であってもよい少なくとも1つの官能化基とを有する有機金属化合物が使用される。
【0014】
好ましい一実施態様において、本発明は、式(I)
Re (I)
[式中、a=1〜6の整数であり;
b=1〜4の整数であり;
c=1〜13の整数であり;
d=0〜6の整数であり;
L=ルイス塩基性の中性又はアニオン性の、場合により基Rと結合されていてもよい配位子であり;
かつa、b及びcの総和は、レニウムの七原子価に適合されているが、但し、cが4×b以下、好ましくは3×b以下であるように選ばれており、かつ
Rは、同じか又は異なり、かつ炭素原子1〜20個、好ましくは炭素原子1〜10個を有する脂肪族炭化水素基、炭素原子6〜20個、好ましくは炭素原子6〜10個を有する芳香族炭化水素基又は炭素原子7〜20個、好ましくは炭素原子7〜13個を有するアリールアルキル基を表し、ここで基Rは場合によりその都度独立して同じか又は異なり、モノ又はポリ置換されていてよく、かつ配位子と結合されていてよい]で示される化合物の製造方法に関する。
【0015】
基R上の置換基は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜10−アルコキシ、C6〜10−アリールオキシ、C1〜20−アシルオキシ、C1〜10−アルキルアミノ又は/及びC6〜10−アリールアミノから選択されており、その場合にアルキル置換基は付加的にハロゲン又は/及びC6〜10−アリールで置換されていてよく、かつアリール置換基は付加的にハロゲン又は/及びC1〜10−アルキルで置換されていてよい。Rの特に好ましい例は、メチル、メチル−[D]、エチル、プロピル、シクロプロピル、フェニル、メシチル、シクロペンタジエニル及びクロロメチルである。
【0016】
ルイス塩基性の中性配位子の好ましい例は、ピリジン、キヌクリジン、ピラゾール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びπ−芳香族化合物、例えばトルエンである。ルイス塩基性のアニオン性配位子の好ましい例は、ハロゲン化物及びプソイドハロゲン化物である。
【0017】
物質クラス(I)が本発明により製造される適したレニウム含有化合物は、ペルレニル官能基"O3Re"を有する全ての化合物、すなわち七価のレニウムの一般式(II)の化合物である:
X・L (II)
[式中、e=0〜4の整数であり;
L=ルイス塩基性の中性又はアニオン性の配位子であり;
X=形式的に単一又は多重の負電荷を有する任意の基である]。
【0018】
ルイス塩基性の中性配位子の好ましい例は、前記の通りである。
【0019】
化合物(II)は、好ましくは、過レニウム酸とアルコール又はシラノールとのエステル、有機酸、例えばカルボン酸との過レニウム酸の混合された無水物、過レニウム酸とアンモニア又はアミンとのアミド又は過レニウム酸のハロゲン化物である。
【0020】
負に帯電した基Xの好ましい例は、ハロゲン化物、例えばCl、カルボン酸塩、例えば酢酸塩又はトリフルオロ酢酸塩、又は過レニウム酸塩[ReO]である。特に好ましい例として、過レニウム酸及びカルボン酸の混合された無水物(例えばORe−OC(=O)CH又はORe−OC(=O)CF)又はO3Re−[OC(=O)C]又はクロロトリオキソレニウムを挙げることができる。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、必要とされるレニウム含有の式(II)の化合物はその場で(in situ)、他のレニウム含有化合物(例えば七酸化二レニウム又は過レニウム酸塩)から、活性化試薬(例えば酸無水物、又はハロゲントリアルキルシラン)を用いて製造される。活性化試薬の好ましい例は、無水カルボン酸、例えば無水酢酸、安息香酸無水物又はトリフルオロ酢酸無水物又はクロロトリアルキルシラン、例えばトリメチルクロロシランである。このようにして、レニウム含有基質の反応性は有機化試薬のそれぞれに適合される。
【0022】
官能化された有機化試薬として、好ましくは式(III)の化合物が使用される:
[RMX・S (III)
[式中、
f=1〜6の整数であり;
g=0又は1〜6の整数であり;
h=0又は1〜5の整数であり;
i=0又は−1〜−4の負の数(電荷)であり、その場合に負電荷は、任意のカチオン、例えばLi、Na、K、[N(CH、[P(Cにより相応する全電荷に補填されており;
M=Al、In、Ga、Cu、Zn、Sc、Y、La、ランタノイド(例えばCe)又は元素の周期表(PSE)の第4副族の元素であり;
X=ハロゲン−、シクロペンタジエニド−、プソイドハロゲン−、アルコキシ−、アリールオキシ−、シロキシ−、オキシド−、スルフィド−、アシルオキシ−、アルカンスルファニルオキシ−、アリールスルファニルオキシ−、アミノ−、アルキルアミノ−、アリールアミノ−置換基であり、その場合にXは同じか又は異なり;
S=配位した溶剤分子、例えばテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンあるいは有機アミンである。
そしてf及びgの総和は、金属Mの原子価に適合されるように選ばれており、
かつ式中、Rは、同じか又は異なり、かつ炭素原子1〜20個を有する脂肪族炭化水素基、原子6〜20個を有する芳香族炭化水素基又は原子7〜20個を有するアリールアルキル基であり、ここで基Rは、場合によりその都度互いに独立して選択され、かつ同じか又は異なり置換されていてよい]。
【0023】
官能化された有機化試薬は、オリゴマー又はポリマーであってもよく、それについてジメチル酸化アルミニウム[(CHAl−O−]及び[CHZn−O−]の典型的な例は、(x>2)である。典型的な官能化された金属アルキルは、例えば酸−塩基−錯体Al(CH・(THF)(式III;f=3、g=0、h=1〜3)である。
【0024】
好ましくは、Mは、Zn、Cu、Al、Ti又はランタノイド、例えばCeから選択されている。M=Znが特に好ましい。
【0025】
特に好ましくは、Xは、アシルオキシ基又はハロゲン基、例えばCl又はアセタートである。アルコラート及びアミドが同様に好ましい。基X上の置換基は、好ましくは、C〜C−アルキル基、例えばメチル又はエチル、及びC〜C10−アリール基から選択されており、その場合に前記アルキル基は、場合によりハロゲン、ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ又は/及びC〜C10アリールでモノ又はポリ置換されていてよく、かつ前記アリール基は、場合によりそしてまたハロゲン、ヒドロキシル又は/及びC〜C−アルキルで置換されていてよい。アシルオキシ基は、好ましくは、C〜C−アルキルカルボン酸又はC〜C10−アリールカルボン酸の残基であり、その場合にアルキル及びアリールは、前記のように、置換されていてよい。
【0026】
基Rは、好ましくは、化合物(I)に記載されたとおりの意味を有する。特に好ましくは、Rは、メチル、メチル−[D]、エチル、プロピル、シクロプロピル、フェニル、メシチル、シクロペンタジエニル及びクロロメチルから選択されている。
【0027】
置換基Xの変更できる構成により、アルキル化試薬の反応性及び溶解度は、極めて正確に、反応条件及びそれぞれのレニウム前駆物質に適合されることができる。合成結果にとってアルキル化試薬の正確な選択がどれほど決定的であるかは、例えば、Re27とZn(CHとの反応が、周知のように還元された生成物、例えば(CHReとなるのに対し、CH3Zn(OAc)又はCH3ZnClとの反応が、需要のあるCH3ReO3(MTO)が専ら生じることから明らかとなる。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、有機化試薬[RMX・S (III)は、その場で、適した前駆物質から製造される。例として、式RZnXの亜鉛化合物のインサイチュー合成(in-situ-Synthese)を挙げることができ、ここでR及びXは上記のとおり定義されている。これについての可能性は、所望の基Rに変換することができる有機化試薬での式ZnXの亜鉛塩の処理である。CH3ZnClの合成は、例えば、ZnCl2とメチル化試薬、例えばCH3Li、(CH)MgCl又はメチル基含有アルミニウム試薬、例えば特にトリメチルアルミニウム又は塩化ジメチルアルミニウムとの反応によって、実施されることができる。さらに、ジメチル亜鉛及びカルボン酸からのメチル亜鉛カルボキシラートのインサイチュー合成は、以下の反応式(a)に従い行われることができる:
Zn(CH+R′−COH→CHZn[O(O=)C−R′]+CH↑ (反応式a)
【0029】
選択的に、メチル亜鉛−化合物CH3ZnXは、以下の反応式a′に従い、ジメチル亜鉛と亜鉛塩ZnXとの反応によっても、行われることができる:
Zn(CH+ZnX → 2(CH)ZnX (反応式a′)
【0030】
反応性の適合に加えて溶解度の適合も可能であり、これは使用可能な溶剤の変動幅に決定的な影響を及ぼす。例えば、CH3Zn(アセタート)(R′=CH)はトルエン中にあまり溶けないのに対し、CH3Zn(ベンゾアート)(R′=C)は極めて良好に、この溶剤に溶ける。このことは、溶剤の節約が問題である場合には、工業的合成の際に重要でありうる。
【0031】
この製造方法は新規である。反応式(a)により表現された製造方法に比較して、この製造方法は、メタンとしてのメチル基の損失が回避されるという利点を有する。相応する水不含の亜鉛塩、例えば酢酸亜鉛(II)でのジメチル亜鉛の均化(Komproportionierung)は、同様にその場で、有機化試薬を単離せずに実施されることができる。
【0032】
物質クラス(I)の製造のための反応は、ワンポット反応において、有機溶剤、しかも配位する有機溶剤、例えばアセトニトリル、1,2−ジメチルオキシエタン、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテル、配位しない溶剤、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロベンゼン中で又は溶剤混合物中で行われる。好ましくは、製造は、供与体溶剤(例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル)中で行われる。反応温度は、使用される出発物質に応じて−115〜+110℃で変更され、室温(25℃)が好ましい。前記反応は、好ましくは、水の不在で実施される。
【0033】
MTOは、本発明による好ましい実施態様において無水酢酸中のRe27から、すなわちペルレニルアセタートから、及びCH3Zn(カルボキシラート) − とりわけCHZn(アセタート) − から、好ましくは室温で溶剤としてのアセトニトリル中で製造される。Re27は、メチル化の前に、その場で無水酢酸を用いてO3Re−OC(=O)CH3(ペルレニルアセタート)へ変換されることにより活性化される。
【0034】
本発明による合成法のさらなる利点は、これまで知られた合成法の場合の数時間と比較して、たいてい1時間未満の、極めて短い反応時間である。そのうえ、通例、保護ガス雰囲気及びその他の予防措置が放棄されることができ、そのために本発明による製造方法は、迅速かつコストを節約して実施可能である。
【0035】
生成物の有毒な汚染の回避は、本発明のさらなる特徴である:特に親物質MTOの、これまで知られた全ての製造方法は、スズ含有のアルキル化剤もしくはメチル化剤に依存しており(例えばSn(CH、CHSn(n−C)、これらは痕跡不純物として生成物中にも現れ、故に複雑化された生成物精製の際に既に特別な予防措置を必要にする。しかし、生成物及び有毒なスズ含有汚染物の、有機溶剤中の溶解度並びに揮発性は匹敵しうるので、これまで、不純物の完全な回避は方法論上の理由から総じて、かなりの時間消費及び作業費用を伴ってのみ可能であった。それゆえ、本発明による方法はこれに関しても原則的には技術水準よりも優れている。
【0036】
新規方法は、またより多量のMTOの合成及び後処理の際のその単純さによっても、技術水準よりもかなり優れている。例えば、適した溶剤中の成分、好ましくは例えばトルエン中のCH3Zn(OAc)と、例えばアセトニトリル中のO3Re(OAc)との反応は、定量的にかつ数キログラム(Multikilogramm)規模でも実施可能である。室温での溶液中の双方の成分の混合後に、短時間の後に不溶性の酢酸亜鉛が沈殿し、これはただろ別されなければならない。真空中での溶剤の除去後に、残留物として既に極めて純粋なMTOが残留し、これは必要に応じてわずかにのみ、例えばn−ヘキサンでの、冷洗浄によるか、昇華によるか、ソックスレー抽出(特に大きなバッチの場合)によるか又は再結晶によりさらに精製されることができる。それゆえ、精製法は、製造の特別な方法に適合されることもできる。
【0037】
他の一変法において、ペルレニル化合物(II)、例えばORe(OAc)は、錯体Al(CH・(THF)と低い温度でTHF、トルエン又は匹敵しうる溶剤中で反応されてCH3ReO3 (MTO)に変換されることができる(n=1〜3)。
【0038】
MTOの純度及び収率に、試薬、特に使用されるRe27の品質は影響を及ぼす。CH3Zn(OAc)又はCHZn(ベンゾアート)がメチル化試薬として使用される場合には、これは、好ましくは溶液でゆっくりとレニウム含有の成分に添加されるべきであり;さもないと収率減少の危険が存在する。
【0039】
オルガニル亜鉛カルボキシラートは、安価でかつそれどころか空気中で取り扱い可能で、ジオルガニル亜鉛化合物RZnとは異なり発火性ではない試薬である。
【0040】
工業的規模に応用可能なこの製造方法は、カルボキシラートとしてアセタート基が使用される場合に反応式(b)及び(c)に従っており、その場合に前記方法はカルボキシラートに普遍妥当である:
Re+[CHC(=O)]O→2 ORe−O−C(=O)CH (b)
2 ORe−O−C(=O)CH+2 CHZn[OC(=O)CH]→2 CHReO+2 Zn[OC(=O)CH (c)
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、有機レニウム−(VII)−酸化物の合成は、式(III)の有機化試薬の予めの単離なしでも実施されることができる。このためには、適した溶剤、例えばアセトニトリル中の七酸化二レニウムは、まず最初に反応式(b)に従い無水カルボン酸、例えば無水酢酸と反応されることができる。好ましくは、この工程におけるモル比は約1:1である。形成されたO3Re−カルボキシラート、例えばO3Re−OAcは、ついで引き続いて、その場で形成される式(III)の有機化する化合物が存在する溶液と組み合わされることができる。例えば、この第二の溶液中で有機化する化合物として、メチル亜鉛カルボキシラート、例えばCH3ZnOAcが存在していてよく、これはトリメチルアルミニウム約1/3molでの亜鉛(II)−カルボキシラート、例えば酢酸亜鉛(II)の処理により、その場で製造されることができる。この単純化された、新規の変法の場合に、費用のかかるジメチル亜鉛が回避され、このことは特別な利点である、それというのもこの化合物は高価だからである。これに反してトリメチルアルミニウムは、極めて原価の安いメチル化剤である。反応式(d)に従い製造されるメチル亜鉛カルボキシラート、例えばメチル亜鉛アセタートは、単純な方法で、バルクで単離されることができるが、しかしこれはどうしても必要であるというわけではない。
Zn[OC(=O)CH+1/3 Al(CH→CHZn[OC(=O)CH]+1/3 Al[OC(=O)CH]3 (d)
【0042】
本発明による方法により合成される有機レニウム(VII)−酸化物は、必要不可欠に後処理されなければならないのではなくて、むしろその場で、例えば溶液としてさらに変換されることができる。例えば、これは溶液で、無機の担持材料、例えばAl23、Al2/SiO、SiO又はNb5又はこれらの酸化物からなる混合物上に固定化されることができる。
【0043】
有機レニウム(VII)−酸化物は、好ましくは触媒として使用される。有機レニウム(VII)−酸化物の工業的適用のための好ましい分野には、MTO触媒されたオレフィン−エポキシ化及びMTO触媒された芳香族化合物酸化が属する(Arco Chemicals 米国特許第5,166,372号明細書; Hoechst AG 独国特許(DE)第3 902 357号明細書、欧州特許出願(EP)第90 101 439.9号)。MTOは、過酸化水素Hにより徐々に、モノ(ペルオキソ)レニウム錯体を経て、ビス(ペルオキソ)レニウム錯体へ変換される。後者は、オレフィンのエポキシ化のためのこれまで最も効率的な触媒である。
【0044】
好ましい別の使用分野は、芳香族化合物酸化(特許: Hoechst AG 独国特許出願(DE)第44 19 799.3号)、オレフィン−異性化及びオレフィンメタセシス(特許: BASF AG 独国特許(DE)第42 28 887号明細書; Hoechst AG 独国特許(DE)第39 40 196号、欧州特許(EP)第891 224 370号明細書)、カルボニル−オレフィン化(特許: Hoechst AG 独国特許(DE)第4 101 737号明細書)、Bayer-Villiger酸化、ディールス−アルダー反応並びに金属カルボニル、硫化物及び多くのその他の有機及び無機の基質の酸化の触媒反応である。概要は次のものに与えられている:C. C. Romao, F. E. Kuehn, W. A. Herrmann, Chem. Rev. 1997, 97, 3197-3246。
【0045】
さらにまた、有機レニウム(VII)−酸化物は、例えばCVD法(化学蒸着)による高純度の酸化レニウムの製造のためにも使用されることができる。
【0046】
さらに本発明は、次の例によってより詳細に説明されるはずである。
【0047】
実施例
原則的に、乾燥させた溶剤及び純粋な試薬を用いて操作されなければならない。試薬の取り扱いは技術水準に従う。Re27は、可能な限り、粉末形で使用されるべきである。酸無水物(例えば無水酢酸)は、酸不含で使用されなければならない。
【0048】
1.メチル亜鉛アセタートの製造
1a)酢酸及びジメチル亜鉛から:
無水n−ペンタン20mL中に、フレッシュに蒸留した酢酸20mmol(1.21g)を合成のために250mL丸底フラスコ中にアルゴン下に装入する。この混合物を、激しく撹拌しながら、−78℃に冷却する。撹拌しない場合には、これは、氷結する酢酸の塊状物形成の結果となる。これは回避することが重要である。前記の温度が達成されている際に、トルエン(20mmol)中のジメチル亜鉛の市販の2M溶液10mLを、シリンジを用いて添加する。この添加は、極めて迅速に行うことができる、それというのも前記の温度でまだ反応が起こらないからである。ついで、反応混合物の良好な均質性を保証するためにさらに20分間撹拌する。この期間の終了後に、ドライアイス浴を除去し、さらに激しく撹拌しながら温める。温度が−30℃〜−20℃の範囲を上回る場合には、激しいガス発生が始まる。これが収まった際に(たいてい遅くとも10分後に)、反応混合物を油ポンプ真空中で蒸発させる。生成物は純白の固体として、ほぼ定量の収率(2.74g、98%)で得られる。収率は典型的には95〜99%である。
【0049】
1b)トリメチルアルミニウム及び酢酸亜鉛(II)から:
粉末にした酢酸亜鉛(II)−二水和物を、まず最初に乾燥庫中で75℃で2.5時間脱水する。無水酢酸亜鉛(微粉末にした)1.11g(6.06mmol、1モル当量)を、乾燥させたシュレンク管中で不活性ガス雰囲気下に無水トルエン5mL中に懸濁させ、−10℃に冷却する。この懸濁液に、トルエン中のトリメチルアルミニウムの市販の2M溶液1mL(2mmol、0.33当量)を30minかけてゆっくりと添加する。反応混合物を、アセトン−ドライアイス−氷浴中で−5℃の温度で5時間撹拌する。その後、ろ別し、真空下に乾燥させる。無色粉末としてのメチル亜鉛アセタート0.57gが生成物として得られる。典型的な収率は65〜80%である。
【0050】
類似の方法において、1a)及び1b)に従い、アルキル亜鉛カルボキシラートがかなり一般的に得ることができる。
【0051】
1a)及び1b)のもとでのバッチは、収率減少なしに問題なく、50〜100倍又はそれ以上だけ拡大されることができる。その場合に、単に適した実験室用装置が使用されることができ、かつ反応時間、場合により溶剤も、適している方法で適合されることができる。
【0052】
2)〜9)メチルトリオキソレニウムの製造:
2)七酸化二レニウムRe27 1gを、アセトニトリル5mL中に懸濁させ、無水酢酸1当量と混合する。室温で30min撹拌し、生じた澄明な溶液をゆっくりとメチル亜鉛アセタート2当量と混合する。30min後に溶液を、沈殿した酢酸亜鉛からろ別し、乾燥状態まで濃縮する。−20℃の冷n−ペンタンでの洗浄及び乾燥により、分析純度のメチルトリオキソレニウムが収率85%で得られる。
【0053】
3)七酸化二レニウムRe27 100gを、アセトニトリル250mL中に懸濁させ、無水酢酸1当量と混合する。室温で1h撹拌し、生じた澄明な溶液を少しずつメチル亜鉛アセタート2当量と混合する。この添加は、固体として又はアセトニトリル又はトルエン中の懸濁液として行われることができる。30min後に溶液を、沈殿した酢酸亜鉛からろ別し、乾燥状態まで濃縮する。引き続き、−20℃の冷n−ヘキサンでの生成物の洗浄により、分析純度のメチルトリオキソレニウムが収率95%で得られる。
【0054】
4)七酸化二レニウムRe27 1gを、THF 10mL中に溶解させ、トリフルオロ酢酸無水物1当量と混合する。室温で15〜25min撹拌し、溶液を−78℃に冷却し、ついでTHF 10mL中のメチル亜鉛クロリド2当量の−78℃に冷却した溶液を添加する。(このメチル亜鉛クロリドは、THF中のZnCl2及びCH3MgClから、実験室において通常のように製造した。)−78℃でさらに15〜30min撹拌する。ついで、水1滴を添加し、室温に温める。そのあとで溶剤を真空中で除去し、残留物を、熱いn−ヘキサンでの数回の還流により抽出する。−78℃での合一されたヘキサンフラクションの冷却の際に、長い針状の分析純度のメチルトリオキソレニウムが収率76%で沈殿する。
【0055】
5)七酸化二レニウム1gを、THF 10mL中に溶解させ、トリメチルシリルクロリドTMS−Cl 2当量と混合する。室温で30min撹拌し、溶液を−78℃に冷却し、ついでTHF 10ml中のメチル亜鉛クロリド2当量の−78℃に冷却した溶液を添加する。さらに15min撹拌し、溶剤を真空中で除去する。引き続き昇華により、分析純度のメチルトリオキソレニウムが収率71%で得られる。
【0056】
6)過レニウム酸銀Ag[ReO]1gをTHF 10mL中に懸濁させ、トリメチルシリルクロリドTMS−Cl 2当量と混合する。−78℃に冷却し、ついでTHF 10mL中のメチル亜鉛クロリド2当量の−78℃に冷却された溶液を添加する。さらに15min撹拌し、溶剤を真空中で除去する。引き続き昇華により、分析純度のメチルトリオキソレニウムが収率52%で得られる。
【0057】
7)七酸化二レニウム1.73g(3.59mmol、1モル当量)を、グローブボックス中でシュレンク管中へ量り入れ、ついでアセトニトリル10mL中に懸濁させる。この懸濁液に、蒸留した酢酸不含の無水酢酸0.36g(3.59mmol、1モル当量)を添加し、その際に沈殿を完全に溶解させる。これにあてはまらなかった場合には、過剰量の無水酢酸を添加する。使用される無水酢酸は、使用前に無水酢酸ナトリウム上で煮沸されなければならず、かつ蒸留後にモレキュラーシーブ3Å上で貯蔵されなければならない;こうして、最少量でも収率を減らしうる遊離酢酸が含まれていないことが保証される。
【0058】
得られた澄明な溶液を、15min撹拌するが、しかしできるだけより長くはない、それというのも、ペルレニルカルボキシラートはさもないと分解しうるからである。ついで、トルエン10mL中のメチル亜鉛アセタート1.00g(7.17mmol、2当量)の溶液をゆっくりと滴加する。その際に変色は場合により(例えば使用されるRe27の純度に依存して)確認されうる。添加の終了後に、反応混合物を室温で1時間撹拌する。その後、溶剤を真空下に除去し、残留物を温n−ペンタン中に溶解させる。結晶化を−78℃で行う。この温度でメチルトリオキソレニウムのみが結晶化する(場合によりより少ない量で生じる、たいてい帯黄色又は帯赤色の副生物は結晶化しない)。白色のメチルトリオキソレニウム(VII) 1.50gが得られる(収率84%)。典型的な収率は80〜95%の範囲内である。
【0059】
8) 例7)のもとでの製造経路は、このために必要な装置が相応して適合されることができる場合に(ガラスフラスコ、撹拌装置、計量供給設備、溶剤等)、100倍又はそれ以上だけ拡大されることができる。より多量の生成物CH3ReO3の後処理は、選択的にソックスレー抽出により、例えばn−ペンタンを用いて、実施されることができる。収率は75〜95%の範囲内である。
【0060】
9) Re27 50.0g(103.22mol)をTHF 250ml中に装入し、合成のために酢酸不含の無水酢酸1当量と混合する。得られた反応混合物を、その後、室温で約10〜15min撹拌する。きれいな出発化合物の使用の際に、反応混合物は澄明かつ無色ないし帯黄色に着色している。Re27の汚染の場合により濃い色が生じ、過剰の無水酢酸の添加が必要でありうる。
【0061】
−78℃への冷却後に、ゆっくりと(最良には一滴ずつ)トルエンもしくはTHF中のトリメチルアルミニウムの1M溶液0.67当量を添加する。その後、ゆっくりと室温に加温し、室温でさらに約30min撹拌する。加温する際に、明らかな濃色化が生じうる。
【0062】
その後、沈殿した酢酸アルミニウムからろ別し、溶剤を慎重に除去し、残留物を冷n−ペンタンで何度も抽出する。分析純度のMTO(融点111〜113℃) 43.10g(172.93mol、85%)が得られる。収率(通常、理論の70〜95%)は、使用される出発化合物の純度にも依存している。
分析:CH3 Re O3
計算値:C 4.99 H 1.39 O 19.21 Re 74.76
実測値:C 5.00 H 1.40 O 19.16 Re 74.60
H−NMR:δ(CH)=2.61ppm(CDCl)、1.21ppm(C
13C−NMR:δ(C)=19.03ppm(CDCl
17O−NMR:δ(O)=829ppm(CDCl
【0063】
10)第1表に記載された例は、例1〜9に類似して実施する。
【0064】
【表1】

*) AN=アセトニトリル;THF=テトラヒドロフラン;Me=CH;Et=CPr=イソ−C
Ac=アセチル、Benz=ベンジル、TFA=トリフルオロアセチル、TMS=トリメチルシリル。
LM* LM=THF、トルエン又は類似の溶剤
[a] 単離された純収率。
[b] 1H−NMR分光法により決定される収率。
[c] 溶剤:AN中Re、トルエン又はTHF中MeZn(OAc)もしくはMeZn(OBenz)。
[d] MeZn(OBenz)の良好な溶解度のために、僅かな溶剤(トルエン)で間に合う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レニウム(VII)含有の前駆物質及び官能化された有機化試薬から有機レニウム(VII)−酸化物を製造する方法。
【請求項2】
有機レニウム(VII)−酸化物が、式RRe (I)の化合物であり、ここで、
a=1〜6の整数であり;
b=1〜4の整数であり;
c=1〜13の整数であり;
d=0又は1〜6の整数であり;
L=基Rと結合されていてよい、ルイス塩基性の中性又はアニオン性の配位子であり;
かつa、b及びcの総和は、これがレニウムの七原子価に適合されているが、但し、cは4×b以下であるように選ばれており、かつ
Rは同じか又は異なり、かつ炭素原子1〜20個を有する脂肪族炭化水素基、原子6〜20個を有する芳香族炭化水素基又は原子7〜20個を有するアリールアルキル基であり、ここで基Rは場合によりその都度互いに独立して選択されていてよく、かつ同じか又は異なり置換されていてよい、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
レニウム(VII)含有の前駆物質が、一般式OReX・L (II)の七価レニウムのペルレニル官能基"ORe"を有する化合物であり、ここで、
e=0又は1〜4の整数であり;
L=ルイス塩基性の中性又はアニオン性の配位子であり;
X=形式的に単一の負電荷を有する任意の基である、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
ペルレニル化合物(II)が、過レニウム酸のエステル、無水物、アミド又はハロゲン化物である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
化合物(II)を、Re27又は過レニウム酸塩及び活性化試薬からその場で(in situ)製造する、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
活性化試薬として酸無水物、好ましくは無水酢酸、又はハロゲントリアルキルシランを使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
官能化された有機化試薬として、レニウム(VII)含有の前駆物質に変換されうる少なくとも1つの有機基と、それとは異なる少なくとも1つの官能化基とを有する有機金属化合物を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
官能化された有機化試薬が、式(III)のモノマー化合物、オリゴマー化合物又はポリマー化合物である:
[RMX・S (III)
[式中、
f=1〜6の数であり;
g=0又は1〜6の数であり;
h=0又は1〜5の数であり;
i=0又は−1〜−4の負の数(電荷)であり、その場合に負電荷は任意のカチオンにより相応する全電荷に補填されており;
M=Al、In、Ga、Cu、Zn、Sc、Y、La、ランタノイド(例えばCe)又は元素の周期表(PSE)の第4副族の元素であり;
X=ハロゲン−、シクロペンタジエニド−、プソイドハロゲン−、アルコキシ−、アリールオキシ−、シロキシ−、酸化物−、硫化物−、アシルオキシ−、アルカンスルファニルオキシ−、アリールスルファニルオキシ−、アミノ−、アルキルアミノ−、アリールアミノ−置換基であり、その場合にXは存在していないか、同じか又は異なっており;
S=配位した溶剤分子、例えばテトラヒドロフラン又はトルエンであり、
かつf及びgの総和は、これが金属Mの原子価に適合されているように選ばれており、
かつ式中、Rは同じか又は異なり、かつ炭素原子1〜20個を有する脂肪族炭化水素基、原子6〜20個を有する芳香族炭化水素基又は原子7〜20個を有するアリールアルキル基を表し、ここで基Rは場合によりその都度互いに独立して選択されており、かつ同じか又は異なり置換されていてよい]、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
官能化された有機化試薬としてZn含有化合物を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
官能化された有機化試薬としてハロゲン−又はアシルオキシ−化合物を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
官能化された有機化試薬が化合物RZnXであり、ここでXはカルボキシラート又はハロゲン化物であり、かつRは前もって定義されているとおりである、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
有機化試薬が銅オルガニル[RCu]M′であり、ここでRは前もって定義されているとおりであり、かつM′は周期表の第1主族の一価のカチオンであるか、又は周期表の第2主族の二価のカチオンのモノハロゲン化合物である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
官能化された有機化試薬をその場で補助試薬から製造する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
有機化試薬を、補助試薬としてLiR、AlR、AlRHal又はRMgHalからその場で製造し、ここでRは、前もって定義されているとおりであり、かつHalは、ハロゲン化物を表す、請求項13記載の方法。
【請求項15】
官能化された有機化試薬がCH3ZnXであり、ここで、Xは前もって定義されているとおりである、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
CH3ZnXをその場で、アルミニウムのメチル基含有の補助試薬、特にAlMe又はAlMeClでの式ZnXの亜鉛塩の処理により製造する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
メチル亜鉛試薬が、ジメチル亜鉛及び酢酸から反応式(d)に従い得ることができるメチル亜鉛アセタートである:
Zn(CH+AcOH→CHZnOAc+CH(反応式d)
請求項15記載の方法。
【請求項18】
CH3ZnXを、相応する亜鉛塩ZnXでのジメチル亜鉛の均化(Komproportionierung)により製造する、請求項15記載の方法。
【請求項19】
メチル亜鉛試薬が、その場で(i)好ましくは約1:1のモル比のジメチル亜鉛及び無水酢酸亜鉛から、又は(ii)好ましくは約1:3のモル比のトリメチルアルミニウム及び無水酢酸亜鉛から形成されるメチル亜鉛アセタートである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
反応を、配位するか又は配位しない有機溶剤中で実施する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
アセトニトリル、トルエン又はテトラヒドロフランを溶剤として使用する、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
溶剤、好ましくはアセトニトリル中の七酸化二レニウムを、まず最初に無水酢酸で処理し、そのあとでメチル亜鉛アセタートと反応させる、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン又はアセトニトリル中の七酸化二レニウムを、まず最初にトリフルオロ酢酸無水物で処理し、そのあとでメチル亜鉛アセタートと反応させる、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
メチルトリオキソレニウムを、その場で過レニウム酸銀Ag[ReO]及びトリメチルシリルクロリドからか、又は七酸化二レニウム及びトリメチルシリルクロリドから調製するクロロトリオキソレニウムから製造する、請求項1から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
合成された有機レニウム(VII)−酸化物を、後処理するのではなくて、溶液としてその場でさらに反応させる、請求項1から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
次の工程:
(a)七酸化二レニウムの溶液を、無水の無水カルボン酸と、例えば無水酢酸と反応させる工程、及び
(b)工程(a)からの反応混合物を、トリメチルアルミニウムでの亜鉛(II)カルボキシラート、特に酢酸亜鉛(II)の処理により製造された溶液と反応させる工程
を含んでおり、その場合に亜鉛化合物対七酸化二レニウムのモル比が好ましくは2:1である、請求項1から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
合成された有機レニウム(VII)−酸化物を溶液で、無機の担持材料上に固定化する、請求項25又は26記載の方法。
【請求項28】
官能化された有機化試薬として、トリメチルアルミニウム、特に式Al(CH・S(S=溶剤モデル;h=1〜3)の溶剤錯体を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
式(I)の反応生成物を、再結晶、真空−昇華又はソックスレー−抽出により精製する、請求項1から28までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
請求項1から29までのいずれか1項に従って製造された有機レニウム(VII)−酸化物の触媒としての使用。
【請求項31】
CVD法(化学蒸着)による酸化レニウムを製造するための、請求項1から29までのいずれか1項に従って製造された有機レニウム(VII)−酸化物の使用。

【公表番号】特表2008−511571(P2008−511571A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528764(P2007−528764)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009336
【国際公開番号】WO2006/024493
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(507066172)カタ テック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Cata Tech GmbH
【住所又は居所原語表記】Sonnenstrasse 2, D−80331 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】