説明

メチルヒドラジド化合物を製造する方法

【課題】メチルヒドラジド化合物を製造する新規な方法を提供する。
【解決手段】式(3)


〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるメチルヒドラジド化合物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルヒドラジド化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下式(3)で示されるメチルヒドラジド化合物が、例えば、農薬の有効成分として有用であることが知られている。また、例えば、特許文献1には、下式(3)で示されるメチルヒドラジド化合物を合成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/090344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の方法では、下式(3)で示されるメチルヒドラジド化合物を製造する上で必ずしも満足できるものではない。
そこで、本発明の目的は、下式(3)で示されるメチルヒドラジド化合物を製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、下式(1)で示されるヒドラジド化合物と下式(2)で示されるメチル化剤とを反応させて下式(3)で示されるメチルヒドラジド化合物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のものである。
[1] 式(1)

〔式中、Rは1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、Rは1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、Rはハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のRは互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるヒドラジド化合物(以下、ヒドラジド化合物(1)と記す。)と、
式(2)

〔式中、Lは、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキルスルホニルオキシ基、1個以上のC1−C12アルキル基で置換していてもよいベンゼンスルホニルオキシ基、メトキシスルホニルオキシ基またはハロゲン原子を表す。〕
で示されるメチル化剤(以下、メチル化剤(2)と記す。)とを反応させることを特徴とする
式(3)

〔式中、R、R、Rおよびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるメチルヒドラジド化合物(以下、メチルヒドラジド化合物(3)と記す。)を製造する方法。
[2] アルコール系溶媒を使用する[1]記載のメチルヒドラジド化合物を製造する方法。
[3] 式(2)で示されるメチル化剤が、ヨウ化メチルである[1]または[2]記載のメチルヒドラジド化合物を製造する方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、メチルヒドラジド化合物(3)を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明について詳細に説明する。
で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基」としては、例えばメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が挙げられる。
で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
で示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基」としては、例えばメチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Lで示される「ハロゲン原子」としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Lで示される「1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキルスルホニルオキシ基」としては、例えばメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基が挙げられる。
Lで示される「1個以上のC1−C12アルキル基で置換していてもよいベンゼンスルホニルオキシ基」としては、例えばベンゼンスルホニルオキシ基、4−メチルベンゼンスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0008】
本発明のメチルヒドラジド化合物を製造する方法において、ヒドラジド化合物(1)と式(2)で示されるメチル化剤とからメチルヒドラジド化合物(3)を製造するには、通常、ヒドラジド化合物(1)とメチル化剤(2)を、塩基の存在下に溶媒中で反応させることにより、メチルヒドラジド化合物(3)を製造する。
【0009】
該反応に用いられるメチル化剤(2)の使用量は、ヒドラジド化合物(1)1モルに対して、通常1〜3モルである。
【0010】
該反応に用いられる塩基としては、例えば、ナトリウムメトキシド等の金属アルコキシド、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0011】
該反応に用いられる溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール系溶媒、水が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0012】
該反応はハロゲンイオン源存在下で行うこともできる。反応に用いられるハロゲンイオン源としては、例えば、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化アルカリ金属、ヨウ化テトラブチルアンモニウム等のハロゲン化四級アンモニウムが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0013】
かくして、メチルヒドラジド化合物(3)を製造することができる。更に、必要に応じて、分液抽出、濾別、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の手段により精製することも可能である。
【0014】
ヒドラジド化合物(1)は、国際公開第2010/090344号に記載の方法により製造し得る。
メチル化剤(2)の一部は市販されており、それ以外の化合物は、Lが1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキルスルホニルオキシ基、または、1個以上のC1−C12アルキル基で置換していてもよいベンゼンスルホニルオキシ基である場合は、例えば、第四版実験化学講座(丸善)24巻p.395に記載の方法により製造し得る。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0016】
実施例1
N’−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]フェニル}−N’−メチル−(4,4,4−トリフルオロブタノイル)ヒドラジドの製造

N’−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]フェニル}−(4,4,4−トリフルオロブタノイル)ヒドラジド(60mg)をエタノール(0.4ml)に溶解し、室温でナトリウムメトキシド(28%のメタノール溶液)(28mg)を加え、ついで、ヨウ化メチル(24mg)を加えた。室温で16時間放置後、水を加え、メチルtert−ブチルエーテルで抽出した。油層を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)に付し、N’−{2−クロロ−5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル]フェニル}−N’−メチル−(4,4,4−トリフルオロブタノイル)ヒドラジド(7mg、収率11%)を得た。
H−NMR (CDCl) δ: 2.23−3.0 (4H, m), 3.08 (1.2H, s), 3.30 (1.8H,s), 3.67 (1H, d), 4.07 (1H, d), 7.23−7.67 (6H, m).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

〔式中、R1は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキル基または1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルコキシ基を表し、R2は1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C6アルキル基またはハロゲン原子を表し、R3はハロゲン原子または水素原子を表し、mは0から5の整数のいずれかを表す(但し、mが2から5の整数である場合は、各々のR2は互いに異なっていてもよい。)。〕
で示されるヒドラジド化合物と、
式(2)

〔式中、Lは、1個以上のハロゲン原子を有していてもよいC1−C12アルキルスルホニルオキシ基、1個以上のC1−C12アルキル基で置換していてもよいベンゼンスルホニルオキシ基、メトキシスルホニルオキシ基またはハロゲン原子を表す。〕
で示されるメチル化剤とを反応させることを特徴とする
式(3)

〔式中、R1、R2、R3およびmは、前記と同じ意味を表す。〕
で示されるメチルヒドラジド化合物を製造する方法。
【請求項2】
アルコール系溶媒を使用する請求項1記載のメチルヒドラジド化合物を製造する方法。
【請求項3】
式(2)で示されるメチル化剤が、ヨウ化メチルである請求項1または2記載のメチルヒドラジド化合物を製造する方法。

【公開番号】特開2013−1681(P2013−1681A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134836(P2011−134836)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】