説明

メチルピリジンの調製のための触媒

発明の主題はメチルピペリジンを脱水素してメチルピリジンにするための脱水素触媒である。また、発明の主題は、それによって得られる触媒の調製方法およびこの触媒を使用する方法である。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の主題はメチルピペリジンを脱水素してメチルピリジンにするための脱水素触媒である。また、発明の主題はこの触媒の調製方法およびこの触媒を使用する方法である。
【0002】
発明の背景
3−メチルピペリジンおよび3−メチルピリジン(3−ピコリン)は、B−複合体の必須ビタミン(ビタミンB3)であるニコチンアミドおよびニコチン酸の工業生産の中間体である。このプロセスでは、3−メチルピペリジンは脱水素触媒の存在下で3−メチルピリジンに変換される。3−メチルピリジンは酸化性アンモノリシスによって3−シアノピリジンに変換される。3−メチルピペリジンは2−メチル−1,5−ジアミノペンタンの環化によって得ることができる。
【0003】
触媒は、遷移状態に達するのに必要なエネルギーの量を下げることによって、所定の温度での化学反応の速度を高める働きをする。それらは反応物と同じ相(均一系触媒)または別の相(不均一系触媒)で存在しうる。
【0004】
また、メチルピリジンは有機溶媒として使用される。さらに、それらはその誘導体化生成物を製造するために有機合成において使用される。3−ピコリンは無色の可燃性液体であり、医薬、染料、ゴム薬品、樹脂および殺虫剤の製造でも使用される。
【0005】
EP 0 770 687 B1は、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンから出発するニコチン酸アミドの工業合成を開示している。この化合物は、アルミニウムおよび/またはケイ素の酸化物を含む触媒の存在下で、3−メチルピペリジンに変換される。続いて、3−メチルピペリジンは脱水素触媒上に通され3−ピコリンに変換される。3−ピコリンは別の触媒により3−シアノピリジンに変換される。最後に、ニコチン酸アミドが酵素的反応で得られる。
【0006】
当技術では、環式アルカンを脱水素してアリール化合物にするための種々の触媒が知られている。たとえば、US 4,401,819は、ピリジンおよび置換ピリジンのピペリジンおよび関連する化合物からの調製のための、シリカ、アルミナまたは炭素上に堆積させたパラジウムの使用を開示している。
【0007】
また、脱水素触媒による3−メチルピペリジンからの3−メチルピリジンの調製方法がCN 1903842 Aに開示されている。このプロセスでは、触媒は二酸化ケイ素担体上にコーティングされたパラジウムをベースにしている。
【0008】
また、3−メチルピペリジンを3−メチルピリジンに変換するための具体的な触媒がWO 94/22824に開示されている。この触媒はアルミニウムおよび/またはケイ素の酸化物を含む担体上にコーティングされた活性成分としてのパラジウムまたは白金から構成されている。具体的な実施形態では、この脱水素触媒はケイ素−アルミニウム酸化物にパラジウム−アンモニア錯体の溶液を含浸させることによって得られる。
【0009】
このように、メチルピリジンの有効な製造方法および容易に入手可能な有効な触媒が継続的に必要とされている。詳細には、メチルピペリジンのメチルピリジンへの高収率での変換を可能にする有効な触媒が必要とされている。さらに、望まれない副生物の量を低く保つ触媒およびプロセスが必要とされている。
【0010】
パラジウムベース触媒に関するもう1つの問題は、それらが酸素または他のプロセス薬品(触媒毒)によって容易に失活されうることである。それゆえに、このような触媒を工業的プロセスで使用する場合、それらの寿命は制限される。したがって、失活に対して安定でありかつ工業的プロセスにおいて長時間にわたって使用できる触媒が必要とされている。さらに、触媒を長期間にわたって使用できるように条件が調節されるメチルピリジンの製造方法が必要とされている。パラジウムは高価な貴金属であるため、触媒寿命の増加はこのプロセスのコストを下げるのに重要である。さらに、触媒が長期間にわたって反応性である場合、工業的連続生産プロセスの中断時間を短縮できる。それにより、コストを低く保つことができ、製品の均一性が保たれる。
【0011】
発明の開示
発明の主題は、メチルピペリジンのメチルピリジンへの脱水素のための触媒の製造方法であって、(a)から(d)の順序で、
(a)65〜100重量%の酸化ケイ素および0〜35重量%の酸化アルミニウムを含む担体を用意する工程と、
(b)この担体にパラジウムを含浸させる工程であって、この担体をパラジウム−アンモニア−錯体の水溶液に接触させて触媒を得る工程と、
(c)触媒を80℃未満の温度で乾燥させる工程と、
(d)触媒を200℃未満の温度でか焼する工程と
を含む方法である。
【0012】
発明の特定の実施形態では、工程(a)から(d)を1つの単独のリアクタで行う。
【0013】
発明の好ましい実施形態では、乾燥工程(c)を空気によっておよび/または20℃〜60℃、好ましくは25℃〜50℃もしくは30℃〜45℃の温度で行う。好ましい実施形態では、乾燥工程を40℃で行う。好ましくは、乾燥工程を空気の下で行う。乾燥工程は、実質的に全ての水が触媒から除去されたときに終了させる。発明のある実施形態では、乾燥工程を5時間〜7日間にわたって、好ましくは1〜5日間にわたって行う。
【0014】
発明の好ましい実施形態では、か焼工程(d)を空気の下でおよび/または80℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃、より好ましくは100℃〜160℃、さらにより好ましくは120〜140℃の温度で行う。好ましい実施形態では、か焼工程を130または140℃で行う。か焼工程は2〜72時間、より好ましくは6〜36時間の時間範囲にわたって行うことができる。好ましい実施形態では、か焼工程(d)を8時間にわたって140℃で行う。一般に、か焼工程の温度を比較的高く設定した場合、必要な処理時間は短くなり、その逆もまた同じである。
【0015】
乾燥工程(c)では、水を触媒から除去する。この工程では、結晶水ではなく、水溶液製造プロセスのおかげで触媒を単に濡らしている水が本質的に除去される。か焼工程(d)では、触媒の結晶構造が変更される。この工程では、結晶水が触媒から除去される場合がある。もちろん、残留する非結晶水もこの工程で除去される場合がある。驚くべきことに、乾燥工程(c)およびか焼工程(d)を上で概説した比較的低い温度で行った場合、非常に有効な触媒を得ることができることがわかった。触媒をより高温でか焼する場合、触媒の有効性は強く減少することがわかった。さらに、上で概説した低い温度での乾燥工程を含む場合、触媒の有効性は著しく上昇することがわかった。要するに、当技術では乾燥およびか焼は通常1つの工程に組み合わされていたか、またはか焼は著しく高い温度で適用されていたので、これらの発見は驚くべきものであった。たとえば、CN 1903842は、110℃〜120℃での乾燥と組み合わされた、650℃での触媒のか焼を開示している。
【0016】
発明の好ましい実施形態では、乾燥工程(d)のあと、触媒を工程(e)において水素で賦活する。発明の触媒の触媒活性は賦活によって著しく強められることがわかった。触媒を乾燥およびか焼の直後に賦活する必要はない。対照的に、か焼工程(d)のあとに得られる触媒は、か焼後には比較的安定であることがわかっており、保存するまたは移動させることができる。好ましくは、触媒を脱水素プロセスで使用する直前に触媒の賦活(e)を行う。好ましくは、触媒の賦活と使用との時間間隔は1時間よりも短い、好ましくは10または30分よりも短い。賦活後、触媒は不安定であることがわかった。好ましくは、賦活と使用との間で、それは水素流を連続的に受けるべきである。発明のある実施形態では、賦活(e)を、続いての脱水素反応が行われるところと同じリアクタで行う。
【0017】
賦活工程(e)は水素流の下で行う。発明のさらなる実施形態では、賦活工程(e)を水素および窒素の下で行う。たとえば、この混合物は20〜80%の水素および20〜80%の窒素、好ましくは50%の水素および50%の窒素を含みうる(体積/体積)。好ましい実施形態では、賦活工程を高められた温度で少なくとも部分的に行う。か焼工程後、触媒を好ましくは室温または40℃未満の温度まで冷却するまたは冷ますことが好ましい。水素による最初の賦活はこの温度で出発してもよい。たとえば、賦活温度は25℃〜450℃でありうる。好ましい実施形態では、温度を賦活プロセス中に、たとえば350℃までまたは300℃まで高める。温度を高めながら、上昇する温度に適合させた量の水素を添加してもよい。好ましい実施形態では、次の脱水素反応の反応温度に達するまで温度を高める。好ましい実施形態では、温度を250〜320℃まで、好ましくは約290℃まで高め、次の反応はこの温度で行う。
【0018】
賦活工程(e)は酸素を排除した中で行う。発明の好ましい実施形態では、賦活工程(e)を酸素の有効な減少下で行う。水素での処理中に酸素をリアクタから完全に排除した場合、触媒はより有効であることがわかった。好ましい実施形態では、脱酸素触媒を水素流および/または反応容器から酸素を有効に減少させるのに使用する。酸素の減少は、酸素および水素を水に変換する触媒によってかなり助けることができることがわかった。脱酸素触媒はパラジウムを含みうる。パラジウムは担体、たとえばアルミナ上にコーティングされる場合がある。特定の実施形態では、従来の排気ガス触媒コンバーターを使用する。好ましい脱酸素触媒は商標PuriStar R0-25 S6の下で BASF AGから市販されている。発明の好ましい実施形態では、脱酸素触媒を二重シェルタイプで用意する。
【0019】
工程(b)では、担体にパラジウム−アンモニア錯体の水溶液を含浸させる。好ましくは、この溶液は塩化パラジウムの溶液を調製し、アンモニアをこの溶液中に溶解させることによって得られる。好ましくは、担体の含浸を6時間〜72時間にわたって、好ましくは約24時間にわたって行う。含浸行程中、担体を好ましくは撹拌する。あるいは、担体を固定床として配置し、含浸溶液がそれを通って流れる。
【0020】
工程(a)で使用する担体は酸化ケイ素および任意に酸化アルミニウムを含む。特定の実施形態では、触媒は酸化ケイ素から構成される。好ましい実施形態では、触媒は実質的に65〜100重量%の酸化ケイ素と0〜35重量%の酸化アルミニウムとから構成される。触媒は5重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満の他の成分を、たとえば不純物を原因として含む場合がある。好ましくは、酸化ケイ素はSiO2であり、酸化アルミニウムはAl23である。たとえば、触媒はAl23とSiO2との混合酸化物を調製することによって得ることができる。好ましくは、触媒をゾル/ゲルプロセスで調製する。このような担体材料は当技術において知られておりかつ市販されている。酸化ケイ素および酸化アルミニウムをベースにした有用な担体はGrace Inc.からのGrace Davicat E501(登録商標)である。しかしながら、触媒は特別な結晶化構造、たとえばケイ酸アルミニウムまたはゼオライトを有することもできる。好ましくは、触媒の比表面積は少なくとも50m2/g、より好ましくは少なくとも100m2/gである。この比表面積は100〜700m2/gの範囲内にあってもよいし、または200〜500m2/gでもよいし、および好ましくは約300m2/gである。
【0021】
担体を粒質物の形態で用意する。粒質物の平均径は0.05〜10mm、好ましくは0.1〜5mmまたは0.5〜2mmでありうる。好ましい実施形態では、短鎖の担体が使用され、たとえばこのストランドは径が0.2〜3mm、または0.5〜1.5mmであり、長さが2〜10mm、好ましくは4〜8mmでありうる。パラジウム−アンモニア錯体での処理の前に、担体を脱水素してもよい。担体は本来ルイス酸である。それゆえに、発明の方法では、担体を好ましくは含浸行程(b)の前にアンモニアで中和する。無孔の担体を使用する場合、パラジウムは担体の表面に付着する。発明の好ましい実施形態では、触媒は0.5〜8重量%、好ましくは1〜6または2〜5重量%のパラジウムを含む。
【0022】
発明のもう1つの主題は、発明の方法によって得ることができる、メチルピペリジンのメチルピリジンへの変換のための脱水素触媒である。発明の触媒は固体触媒である。この触媒はケイ素/アルミニウムコアを含み、パラジウムを含む外層で被覆されている。
【0023】
また、発明の主題はメチルピペリジンからのメチルピリジンの製造方法であり、ここではメチルピペリジンが発明の脱水素触媒に接触する。
【0024】
メチルピリジンはピコリンとも呼ばれる。発明のメチルピリジンは2−、3−または4−メチルピリジンのいずれかでありうる。そのため、対応するメチルピペリジンは2−、3−または4−メチルピペリジンでありうる。発明の好ましい実施形態では、メチルピペリジンは3−メチルピペリジンである。この実施形態では、3−メチルピペリジンを脱水素して3−メチルピリジンを得る。
【0025】
発明の好ましい実施形態では、この反応を水素および/または窒素雰囲気下で行う。
【0026】
発明の好ましい実施形態では、この反応を気相において180℃〜400℃、より好ましくは200℃〜350℃または200℃〜300℃の温度で行う。これらの温度では、反応物および生成物は気体である。もちろん、触媒は固体状態のままである。メチルピペリジンが反応領域を通り抜け、ここでそれが触媒に接触することが好ましい。たとえば、触媒は入口および出口を有するコンテナ内にあり、メチルピペリジンが入口に供給され、生成物が出口を通って取り出される。好ましくは、コンテナは管、管巣、パイプまたは容器である。
【0027】
発明の好ましい実施形態では、触媒をアルミニウムと混合する。驚くべきことに、発明の触媒は反応性が高く、そのため、高い触媒効率を維持したままそれをアルミニウムで「希釈」できることがわかった。アルミニウムの添加は有利である。なぜなら、パラジウムベース触媒は高価であり、そのため、コストを大きく削減できるからである。たとえば、触媒は1〜90重量%、好ましくは10〜80重量%のアルミニウムと混ぜることができる。3分の2のアルミニウム粒質物を添加しても触媒は非常に活性なままであることがわかった。使用前にアルミニウムを脱脂する場合、活性をさらに高めることができることがわかった。メチルピペリジンからピコリンへの反応は吸熱性であり、これは熱エネルギーを反応領域に供給しなければならないことを意味する。アルミニウムはこの強い吸熱反応への熱伝達を助けるので、アルミニウムの添加は有利である。
【0028】
発明の好ましい実施形態では、メチルピペリジンを最初に第1の触媒/アルミニウム混合物に接触させ、次に第2の触媒/アルミニウム混合物に接触させる。ここで第1の混合物中の触媒/アルミニウムの比は第2の混合物中よりも低い。これは、最初に反応物はアルミニウム含有量が比較的高い反応領域に接触し、次に、生成物を少なくとも一部既に含んだ反応混合物がアルミニウム含有量が比較的低い反応領域に接触することを意味する。発明の方法において、メチルピペリジンがアルミニウム含有量が高い触媒混合物に最初に接触する場合が有利であることがわかった。それにより、アルミニウムの優れた伝熱特性が活用される。反応領域のより深くに現れるとき、反応物の量が減少しているので生産量は減少する。この段階では、比較的高いパラジウム含有量を有する触媒混合物を使用することが有利である。ある実施形態では、パラジウム/アルミニウムが増加する勾配を有する触媒が前記反応で使用されうる。もう1つの実施形態では、様々な比での触媒のアルミニウムとの混合物を含む2つ以上の反応領域を用いることができる。
【0029】
発明の好ましい実施形態では、脱水素反応の前に、メチルピペリジンを環化反応でメチル−1,5−ジアミノペンタンから製造する。この環化反応は第1のリアクタで行い、脱水素反応は第2のリアクタで行う。両方のリアクタは相互接続されており、両方の反応を連続プロセスで行う。このような実施形態では、メチル−1,5−ジアミノペンタンの3−メチルピリジンへの変換を1つの連続プロセスで行うことができる。このような連続プロセスは当技術において知られており、たとえばWO 94/22824およびEP 0 770 687 B1に開示されている。
【0030】
ある実施形態では、環化触媒を脱水素触媒の表面上に直接供給し、メチル−1,5−ジアミノペンタンを上方から供給する。しかしながら、両方の触媒を、接続されている別々のリアクタ内に供給することが好ましい。この配置では、温度および触媒を独立して制御できる。この実施形態では、追加の手段、たとえば凝縮器または蒸留器が、高沸点を有する有機物質を除去するために、2つのリアクタの間に設置されうる。そうしないと、この物質は脱水素触媒の活性および寿命に悪影響を与えかねない。
【0031】
環化反応で製造したメチルピペリジンはアンモニアとの混合物として得られる。環化反応では、1等量のメチルピペリジン毎に1等量のアンモニアが得られる。発明の好ましい実施形態では、アンモニアの事前分離なしに、この混合物を第2のリアクタに供給する。アンモニアの除去が必要なく、プロセスがかなり単純化されるので、これは有利である。
【0032】
脱水素反応のあと、生成物を単離させてもよい。あるいは、生成物を第3のリアクタに直接導入し、これに次の合成工程を施してもよい。残留する気体混合物は、任意にアンモニアを洗い流したあと、水素を含む。それを空気と混合して燃やしてもよいし、このようにして得られるエネルギーを前記方法に再び移してもよい。発明のある実施形態では、生成物と少なくとも他の高分子量成分と副生物との分離のあと、残留する気体混合物を第1のリアクタに再導入する。
【0033】
特定の実施形態では、前記反応を窒素、水素およびアンモニア雰囲気中で行う。低い不純物を除いて、空気または酸素を添加しないまたはこれらが存在しないことが好ましい。たとえば、気体雰囲気は50体積%を超えて、70体積%を超えてまたは90体積%を超えて水素を含む。上述の90体積%という高いレベルの水素は、アンモニアウォッシャーをこの方法で使用する場合に適用される。そうでない場合、約70体積%というより低いレベルの水素が好ましい。
【0034】
発明の触媒はメチルピペリジンのメチルピリジンへの変換において非常に有効であることがわかった。一方では、メチルピリジンの高い収率が得られる。好ましくは、メチルピリジンの収率は90、95または97%を超える。加えて、この触媒は非常に安定であることがわかった。この触媒は、285〜310℃の温度で使用した場合少なくとも300日使用できることがわかった。触媒の寿命はスループットに依存し、スループットが減少すれば増加しうる。より低いスループットでは、触媒は580日を超えて使用できる。普通、空気がこの方法に入らずかつ触媒毒が存在しなければ、この触媒は少なくとも1年間使用できる。この触媒の高い有効性は特定の乾燥、か焼および賦活の工程を有する発明の製造方法の結果として得られる。また、アンモニアが前記反応プロセスに大量に存在しているのであれば、この触媒は非常に有効である。高い活性のおかげで、この触媒をアルミニウムに混合することができ、これはコストを抑えかつ吸熱反応を助ける。
【0035】

1.脱水素触媒の製造
管状リアクタ(3mの長さ、25cmの径)に75kgの担体(シリカおよびアルミナの粒子、Grace Inc.からのDavicat E501(登録商標))を充填し、アンモニアガス(5kg)をこの固体触媒上に室温で通して、担体の酸性表面部分を中和し、それを約60℃まで温める。同時に、パラジウム溶液を、9.5kg PdCl2および14kgのアンモニアを1800lの水に溶解させることによって調製する。担体およびパラジウム溶液を室温まで冷却したのち、前記パラジウム溶液をキャリア上に16〜24時間にわたってポンプで送る。その後、残留溶液をリアクタから抜き取り、触媒を水で2回洗浄する。ほとんどの水が触媒から除去されるまで、触媒を40℃で空気で乾燥させる。乾燥後、触媒を約130℃の空気で約8時間にわたってか焼する。
【0036】
このようにして得られた触媒が、3−メチルピペリジンからの3−メチルピリジンの製造方法において、少なくとも300日間、285〜310℃の温度で使用できることがわかった。触媒の寿命はスループットに依存し、スループットが減少すれば増加しうる。低いスループットでは、この触媒は580日間を超えて使用できる。
【0037】
2.発明による触媒での3−ピコリン製造
300gの触媒を反応容器に充填した。触媒を、初期温度が50℃である(300℃まで高めた)50%の水素と50%の窒素との気体混合物(体積/体積)で賦活した。次に、温度が300℃であるメチルピペリジンと水素と窒素との気体混合物をこの触媒上に通した。0.9kg/時のメチルピペリジン、0.3kg/時の窒素および3g/時の水素の供給流で、以下の結果が得られた(表1):
【表1】

【0038】
わかるように、発明による触媒は、長期間にわたって一定のままである高い収率での3−ピコリンの製造を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルピペリジンのメチルピリジンへの脱水素のための触媒の製造方法であって、(a)から(d)の順序で、
(a)65〜100重量%の酸化ケイ素および0〜35重量%の酸化アルミニウムを含む担体を用意する工程と、
(b)前記担体にパラジウムを含浸させる工程であって、前記担体をパラジウム−アンモニア−錯体の水溶液に接触させて触媒を得る工程と、
(c)前記触媒を80℃未満の温度で空気を用いて乾燥させる工程と、
(d)前記触媒を200℃未満の温度でか焼する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(d)のあとに
(e)前記触媒を水素で賦活すること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥工程(c)を20℃〜60℃の温度で行う請求項1および2の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項4】
前記か焼工程(d)を空気を用いておよび/または80℃〜200℃の温度で行う請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記賦活工程(e)を酸素の有効な減少下で行う請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は0.5〜8重量%のパラジウムを含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって得ることができる、メチルピペリジンのメチルピリジンへの変換のための脱水素触媒。
【請求項8】
メチルピペリジンを請求項7に記載の脱水素触媒に接触させる、メチルピペリジンからのメチルピリジンの製造方法。
【請求項9】
メチルピペリジンは3−メチルピペリジンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
反応を水素および/または窒素雰囲気下で行う請求項8または9の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
反応を180℃〜400℃の温度で気相において行う請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記触媒をアルミニウムと混合する請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
メチルピリジンを最初に第1の触媒/アルミニウム混合物に接触させ、次に第2の触媒/アルミニウム混合物に接触させ、ここで前記第1の混合物中の触媒/アルミニウムの比は前記第2の混合物中よりも低い請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記脱水素反応の前に、メチルピペリジンを環化反応でメチル−1,5−ジアミノペンタンから製造し、前記環化反応を第1のリアクタで行い、前記脱水素反応を第2のリアクタで行い、両方のリアクタは相互接続されており、両方の反応を連続プロセスで行う請求項8〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記環化反応で製造したメチルピペリジンをアンモニアとの混合物として得て、この混合物をアンモニアの事前分離なしに前記第2のリアクタに供給する請求項8〜14のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−507246(P2013−507246A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533517(P2012−533517)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006203
【国際公開番号】WO2011/045014
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(391003864)ロンザ リミテッド (36)
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
【Fターム(参考)】