説明

メチルメタクリレートポリマーとスチレンアクリロニトリルポリマーのブレンドを含む多層光学フィルム層

少なくとも1層の第1の複屈折光学層、633nmで0.04未満の複屈折率を有する少なくとも1層の(例えば、等方性)第2の光学層、及び任意に少なくとも1層のスキン層を含む光学積層体を含む多層光学フィルムが本明細書において開示される。第2の層、スキン層、又はこれらの組み合わせは少なくとも1つのメチルメタクリレートポリマー、及び少なくとも1つのスチレン−アクリロニトリルポリマーのびブレンドを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多層ポリマー光学フィルムは、ミラー及び偏光子を含む様々な目的のために広く使用されている。多層光学フィルムは、第2の等方性ポリマー材料層と交互の第1の複屈折ポリマー材料層などの、多数の交互層によって調製され得る。あるいは、第1の、および第2のポリマー材料は共に配向されていてもよく、ただし第1の層と第2の層との間に屈折率不整合の十分な差が存在する。
【0002】
例えば、米国特許第5,612,820号に記載されるように、整合し得る非常に多様な異なる屈折率を提供するか、又は最適な偏光効果を提供するためにコポリマー、及びブレンドが使用され得る。加えて、共押出、及び配向の間に交互の層の加工性を向上させるために、コポリマー、及びポリマーの混和性ブレンドの使用が使用され得る。更に、コポリマー、及び混和性ブレンドの使用は、応力光学係数、及びガラス転移温度の調節を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
少なくとも1層の第1の複屈折光学層、633nmで0.04未満の複屈折率を有する少なくとも1層の(例えば、等方性)第2の光学層、及び任意に少なくとも1層のスキン層を含む、光学積層体を含む多層光学フィルムが本明細書において開示される。第2の層、スキン層、又はこれらの組み合わせは少なくとも1つのメチルメタクリレートポリマー、及び少なくとも1つのスチレン−アクリロニトリルポリマーを含む。
【0004】
一実施形態では、ブレンドの成分が、多層フィルムが5%以下のヘーズを有するように選択される。
【0005】
別の実施形態では、ブレンドのスチレン−アクリロニトリルポリマーが10重量%超、28重量%未満のアクリロニトリル濃度を含む。
【0006】
更に別の実施形態では、多層フィルムは、約0.5重量%〜12.5重量%の範囲のアクリロニトリルの濃度を有する。
【0007】
これらの各実施形態では、ブレンドは典型的には少なくとも10重量%のスチレン−アクリロニトリルポリマー、及び少なくとも10重量%のメチルメタクリレートポリマーを含む。第2の層が少なくとも1つのメチルメタクリレートポリマーと少なくとも1つのスチレンアクリロニトリルポリマーのブレンドを含む実施形態では、ブレンドの平均屈折率は好ましくは1.50〜1.55の範囲である。いくつかの実施形態では、多層光学フィルムはミラーフィルム、又は偏光フィルムである。偏光フィルムは10%〜90%の範囲の、p−偏光に関する平均透過率を呈し得る。いくつかの実施形態では、第1の複屈折層は好ましくは、ポリアルキレンナフタレート、ポリアルキレンテレフタレート、及びこれらのブレンドを含む。他の実施形態では、第1の複屈折層はシンジオタクチックポリスチレンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】多層光学フィルムの一実施形態の断面図。
【図2】17重量%のアクリロニトリルを有する、メチルメタクリレートポリマーとスチレンアクリロニトリルポリマーのブレンドから作製されるフィルムの屈折率。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、メチルメタクリレートポリマー(PMMA)とスチレンアクリロニトリル(SAN)ポリマーの、あるブレンドを含む等方性層を含む多層光学フィルムと関連する。
【0010】
多層フィルムは、2つ以上の層を有するフィルムを含む。例えば、多層光学フィルムは、高効率ミラー及び/又は偏光子として有用である。多層光学フィルムを本開示と併せて使用した場合、入射光線の比較的低い吸収及び光軸外での通常光線の高反射率を示す。
【0011】
本出願において使用するとき、
「屈折率」とは、特に指示がない限り、材料の平面内における、633nmの光を法線入射させた場合の材料の屈折率を意味する。
【0012】
「複屈折」とは、直交するx、y、及びz方向における屈折率のすべてが同じではないことを意味する。本明細書で記載されるポリマー層においては、前記の軸は、x及びy軸が、前記層平面内にあり、z軸が、前記層平面に対して直角であり、かつ、通常層の厚み又は高さに相当するように選択される。1つの面内方向での屈折率が、別の面内方向での屈折率より大きい場合、x軸は、一般に、最大屈折率を持つ面内方向となるように選択され、これが場合により、光学フィルムが配向する(例えば、延伸する)方向の1つに対応する。特に指定されない限り、複屈折値は633nm、及び法線入射に関して報告される。
【0013】
「高屈折率」及び「低屈折率」は、相対的な語句であり、2つの層を、関心のある少なくとも1つの方向で比較した場合、より大きな面内屈折率を有する層が高屈折率層であり、より小さな面内屈折率を有する層が低屈折率層である。
【0014】
「ポリマー」とは、特に指定されない限り、ポリマー及びコポリマー(即ち、2種類又はそれ以上のモノマー又はコモノマーから形成されたポリマーであり、例えば、ターポリマーを包含する)を意味し、同様に例えば、共押出又は反応(例えば、エステル交換を包含する)による混和性ブレンドに形成可能なコポリマー又はポリマーを意味する。特に指定されない限り、ブロック、ランダム、グラフト、及び交互ポリマーが包含される。
【0015】
図1は、例えば、光学偏光子、又はミラーとして使用され得る多層ポリマーフィルム10を図示する。フィルム10は、1層以上の第1の光学層12、1層以上の第2の光学層14、及び任意に1層以上(例えば、非光学)の層、例えばスキン層18を含む。図1は、少なくとも2つの材料の、交互層12、14を有する多層積層体を含む。一実施形態では、層12及び14の材料は、ポリマーである。一般的に、米国特許第6,827,886号(名称「多層光学フィルムの作製方法」)は、多層フィルム10の作製に適合可能な方法について記載する。加えて、フィルム10及び層12,14は、平面を有するように図示されてはいるが、フィルム10又は層12,14又は追加の層の少なくとも1つの表面が構造化されてよい。
【0016】
高屈折率層12の面内屈折率n1は、低屈折率層14の面内屈折率n2より高い。層12、14間の各境界での屈折率差によって、光線の一部が反射される。多層フィルム10の透過特性及び反射特性は、層12,14間の屈折率差によって生じる光のコヒーレント干渉及び層12,14の層厚に基づいている。実効屈折率(又は法線入射の場合の面内屈折率)が層12、14間で異なる場合、隣接層12、14間の界面は、反射面を形成する。界面の反射能は、層12、14の実効屈折率間の差の2乗(例えば、(n1〜n2))に依存する。層12、14間の屈折率差を増大させることによって、改善された屈折力(より高い反射率)、より薄いフィルム(より薄い又はより少ない層)、及びより広い帯域幅性能を達成することができた。したがって、多層フィルム10は、例えば、反射偏光子又はミラーとして有用となり得る。代表的実施形態における屈折率差は、少なくとも約0.05、好ましくは約0.10超、より好ましくは約0.20超、更により好ましくは約0.30超である。
【0017】
一実施形態では、層12,14の材料は本来的に異なった屈折率を有する。別の実施形態では、層12,14の材料の少なくとも1つが、応力誘発性複屈折の性質を有し、前記材料の屈折率(n)が、延伸加工の影響を受けるようにする。多層フィルム10を1軸方向乃至2軸方向の範囲に亘って延伸することによって、異なった配向をした面−偏光入射光に対して様々な反射率を持つフィルムを作製することができる。
【0018】
代表的実施形態では、多層フィルム10は、数十、数百又は数千の層を包含し、各層は多数の異なった材料のいずれかから作製することができる。特定積層体のための材料選択を決定する特性は、多層フィルム10の望ましい光学性能による。多層フィルム10は、前記積層体内の層が多くなればなる程、多くの材料を含有することができる。しかし、図示を容易にするために、光学薄膜積層体の代表的実施形態は、わずか2〜3種類の異なった材料を示す。
【0019】
一実施形態では、多層フィルム10内の層の数は、フィルム厚、柔軟性及び経済性の理由により、最小数の層を使用して所望の光学特性を達成するように選択する。偏光子及びミラーなどの反射性フィルムの場合、層の数は、より好ましくは約2,000未満、より好ましくは約1,000未満、更により好ましくは約500未満である。
【0020】
いくつかの実施形態では、多層ポリマーフィルムは更に、任意の追加的な非光学、又は光学層を含む。追加層は、積層体内に配置されるポリマー層であり得る。このような追加層は光学層12、14を損傷から保護し、共押出加工を補助し、及び/又は後処理機械特性を向上させる場合がある。スキン層18は多くの場合、光学層12、14よりも厚い。追加スキン層18の厚さは個別の光学層12、14の厚さの、通常少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、及びより好ましくは少なくとも10倍である。スキン層18の厚さは、特定の厚さを有する多層ポリマーフィルム10を作製するために変化してもよい。典型的に、1層以上のスキン層18は、光学層12、14によって透過、偏光又は反射される光の少なくとも一部も、スキン層を通って伝わるように定置される(すなわち、スキン層は、光学層12、14を通って伝わる又はこれらによって反射される光の経路内に定置される)。
【0021】
多層フィルム10の一実施形態は、低屈折率/高屈折率フィルム層の複数ペアからなり、ここでは、各低屈折率/高屈折率層のペアが、反射するように設計された帯域の中心波長の1/2の光学的な結合厚さを有する。このようなフィルムの積層体は、一般に4分の1波長積層と呼ばれる。可視波長及び近赤外波長に対応する多層光学フィルムの場合、4分の1波長積層の設計は、約0.5マイクロメートル以下の平均厚さを有する多層積層体内の各層12、14を生じる。その他の代表的実施形態では、例えば、広帯域反射光学フィルムが所望される場合、異なる低屈折率/高屈折率層のペアは、異なる光学的な結合厚さを有してよい。
【0022】
反射性フィルム(例えば、ミラー又は偏光子)が所望されるような用途においては、各偏光及び入射平面についての所望の平均光透過率は、一般に、反射性フィルムの使用目的による。多層ミラーフィルムを作製するための1つの方法は、多層積層体を2軸延伸することである。高効率反射性フィルムには、法線入射での可視スペクトル(約380nm〜750nm)にまたがる各延伸方向に沿った平均透過率は、望ましくは約10%未満(約90%超の反射率)、好ましくは約5%未満(約95%超の反射率)、より好ましくは約2%未満(約98%超の反射率)、更により好ましくは約1%未満(約99%超の反射率)である。法線方向から約60度での可視スペクトルに亘る平均透過率は、望ましくは約20%未満(約80%超の反射率)、好ましくは約10%未満(約90%超の反射率)、より好ましくは約5%未満(約95%超の反射率)、更により好ましくは約2%未満(約98%超の反射率)、更により好ましくは約1%未満(約99%超の反射率)である。ミラーフィルムのいくつかの例が更に、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)に記載される。
【0023】
更に、非対称反射性フィルム(不均衡2軸延伸から生じたフィルムなど)が、特定の応用には望ましい場合がある。その場合、例えば、可視スペクトル(約380nm〜750nm)の帯域幅に亘って、又は可視スペクトル及び近赤外(例えば、約380nm〜850nm)に亘って、1つの延伸方向に沿った平均透過率は、望ましくは、例えば、約80%未満であってよく、一方で、その他の延伸方向に沿った平均透過率は、望ましくは、例えば、約10%未満であってよい。
【0024】
一実施形態では、非対称な反射性フィルムは、第1の平面内で偏光された可視光線に関して少なくとも90%の平均軸上反射率を、第1の平面と垂直な第2の平面内で偏光された可視光線に関して少なくとも25%、かつ90%未満の平均軸上反射率を呈し得る(2008年5月19日に出願されたPCT国際出願/米国特許第2008/064133号を参照)。
【0025】
多層光学フィルムは、反射偏光子としても機能するように設計することができる。多層反射偏光子を作製するための1つの方法は、多層積層体を1軸延伸することである。得られた反射偏光子は、光に対する高い反射率を有し、広範囲の入射角度に対して、第1の面内軸線(通常は、延伸方向)と平行する偏光面を持ち、同時に、光に対する低い反射率及び高い透過率を有し、広範囲の入射角度に対して、前記第1の面内軸線と直交する第2の面内軸線(通常は、非延伸方向)と平行する偏光面を持つ。各フィルムの3つの屈折率(nx、ny及びnz)を調節することによって、所望の偏光子挙動を得ることができる。例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)を参照。
【0026】
高屈折率層12は、633nmにおける0.05以上の延伸の後に、面内複屈折率(nx−nyの絶対値)を有する複屈折ポリマー材料から調製される。好ましくは、面内複屈折率は約0.10、0.15、0.20以上である。延伸方向と平行な平面で偏光される633nm光の反射率は、約1.62〜約1.87にまで増加し得る。可視スペクトルの範囲において、複屈折のコポリエステル材料は、典型的な高配向延伸(例えば、100〜150℃の温度、5〜150%/秒の開始歪み速度において、その元の寸法の5倍以上に延伸される材料)において、400〜700nmの波長範囲で0.20〜0.40の複屈折率を呈する。
【0027】
例えば、ミラーフィルムとして使用されるものなど、他の種類の多層光学フィルムでは、面外複屈折特性が重要である。面外複屈折率は、面内(MD、及びTD)屈折率の平均と、フィルムに垂直な方向(TM)の屈折率との間の差に関係する。面外複屈折率は、以下のように表現され得る。
【0028】
【数1】

【0029】
式中、nがMDのRlであり、nがTDのRlであり、nがTMのRlである。
【0030】
複屈折ポリマー材料は、少なくとも0.10の平均面外複屈折率を呈し得る。いくつかの実施形態では、平均面外複屈折率は、少なくとも0.16、0.17、若しくは0.18、又は少なくとも0.20である。
【0031】
第2の光学層14は、延伸されたときでも、比較的等方性の屈折率を維持する。第2の光学層は、633nmにおいて、約0.04未満、及びより好ましくは約0.02未満の複屈折率を有する。
【0032】
第2の等方性光学層、及び/又はスキン層はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、及びスチレンアクリロニトリル(SAN)ポリマーのあるブレンドを含む。
【0033】
メチルメタクリレートポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)ホモポリマー、又はメチルメタクリレートとコモノマーのコポリマーであり得る。コモノマーは、典型的にはエチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリル酸、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、又はこれらの混合物である。メチルメタクリレートポリマーは、典型的には、少なくとも約90重量%のメチルメタクリレートを含む。このようなメチルメタクリレートポリマーは、典型的には少なくとも100℃のガラス転移温度を有する。
【0034】
PMMAポリマーは、フリーラジカル重合によって作製され、一般的には50〜70%のシンジオタクチック、およそ20〜40%(例えば、およそ30%)のアタクチック、及び10%未満のアイソタクチックダイアドから作製される。商業的等級は、良好な機械的特性、優れた引掻抵抗、及び非常に良好な耐候性を有する。加えて、PMMAは、可視波長範囲にわたって92%の透過性を有し、光学的に透明である。更に、PMMAは、260nm未満の非常に低い吸光度を呈し、非常に低い固有の複屈折率(<0.006)を呈する。低い吸光度、低い固有の複屈折率、良好な寸法的安定性、及び良好な耐候性はPMMAを、光学フィルム用途のための他の低屈折率熱可塑性ポリマーと区別する。
【0035】
市販のメチルメタクリレートホモポリマー、及びコポリマーの例としては、Arkema社から、商標名「Plexiglas(登録商標)V044」、「Plexiglas(登録商標)V920」、「Plexiglas(登録商標)CP82」、及び「Plexiglas(登録商標)HT121」として、Mitsuibishi Rayon America社から商標名ShinkoLite−Pとして、Plaskolite−Continental Acylicsから商標名「Optix(登録商標)」として、Evonik Degussa Corporationから商標名「Acrylite(登録商標)H15」、及び「Acrylite(登録商標)HW55」として、LG Chem社から商標名「LG PMMA EF940」として入手可能のものが挙げられる。
【0036】
スチレンアクリロニトリル(SAN)ポリマーは、スチレン系モノマーとエチレン性不飽和ニトリルモノマーのコポリマーである。好適なスチレン系モノマーとしては、例えば、αアルキルモノビニリデン単環芳香族化合物、例えば、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−メチルジアルキルスチレンなど、環置換のアルキルスチレン、例えば、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。スチレン系モノマーが、アルキル置換基を含む実施形態では、アルキル置換基は一般的に1〜4個の炭素原子を含む。好適なエチレン性としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
90/10〜60/40の比率のスチレン、及びアクリロニトリルは、フリーラジカル開始剤を使用して、エマルション、バルク、又は溶液状態で共重合され得る。コポリマーは、堅牢、かつ透明である。スチレン部分は、透明度、硬度、及び加工性を提供し、一方でアクリロニトリル部分は化学、及び熱耐性を提供する。優れた光学特性、熱耐性、高い引張、及び曲げ強度、良好な熱性能、製造の容易性、及び低コストの、この固有の組み合わせは、スチレンアクリロニトリルコポリマーを様々な用途において理想的なものにする。加えて、スチレン、及びアクリロニトリルの屈折率はそれぞれ、およそ1.589〜1.512であり、これはひいては、コポリマーの組成により、これらのコポリマーの実効屈折率1.56〜1.58を生じる。多層光学フィルムでは、多層光学フィルムの光学特性が高屈折率樹脂で共に調節され得るように、単一の樹脂で、例えば、1.495〜1.558の、広範囲の屈折率を達成できることが有益である。
【0038】
しかしながら、多層光学フィルムでの使用に好適であるために十分に低いヘーズを有する等方性光学層を提供するために、10重量%超、かつ28重量%未満のアクリロニトリル濃度を有するSANポリマーのみがPMMAと十分な混和性を有することが見出された。
【0039】
いくつかの実施形態では、SANポリマーのアクリロニトリルの濃度は少なくとも11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、又は15重量%である。更に、SANポリマーのアクリロニトリルの濃度は、24重量%、25重量%、又は26重量%以下であり得る。
【0040】
市販のスチレンアクリロニトリルコポリマーの例としては、Lanxess Corporationから、商標名「Lustran Sparkle」として(17重量%アクリロニトリル「AN」)、Dow Chemicalsから商標名「Tyril 990」として(20重量% AN)、Samsungから商標名「Starex HF5661HC」として(23.8重量% AN)、及びBASFから商標名「Luran(登録商標)358N」として得られるものが挙げられる。
【0041】
SANポリマーが直前に記載した通りのアクリルニトリルの濃度を有する場合、SANポリマーは、複屈折層に対して等方性層の屈折率を調節、又は「微調整」するために、任意の濃度のPMMAと組み合わせることができる。等方性層は、典型的には少なくとも5重量%〜10重量%(及びいくつかの実施形態では少なくとも15、20、又は25重量%)のSANポリマーを含む。図2は、SAN、及びPMMAのブレンドの様々な実施形態の屈折率を例示する。
【0042】
等方性層中のPMMAに対するSANの濃度、及びSANポリマー中のアクリロニトリルの濃度によって、光学積層体(すなわち、第1の複屈折光学層と第2の等方性層の組み合わせ)内のアクリロニトリルの濃度は、以下の表に記載されるように変化し得る。
【0043】
【表1】

【0044】
したがって、等方性層が約20重量%〜80重量%のSANを含む場合、光学積層体は一般的に約1〜約13重量%のアクリロニトリルを含む。好ましい実施形態では、SANの濃度は典型的には約60重量%以下であり、したがって、光学積層体中のアクリロニトリルの濃度は一般的に10重量%未満である。
【0045】
本明細書で記載されるPMMA、及びSANのブレンドから調製される(すなわち、5〜6ミルのモノリシック)フィルムのヘーズは、以下の実施例に記載される試験方法に従って測定される際に、10%未満、好ましくは5%未満、及びより好ましくは2、又は1%未満のヘーズを呈する。
【0046】
高屈折率層12のためのいくつかの例示材料は、結晶性、半結晶性、非晶質又は液晶材料であり、重合体を包含する。結晶性は、配向フィルムの複屈折を維持するのに役立つ場合があるが、配向非晶質ポリマーフィルムは、フィルムのガラス転移温度が例えばその最大使用温度より十分に高い場合であっても、複屈折のままである。高屈折率層12のための好適な材料の特定の例としては、ポリアルキレンナフタレート(例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PPN(ポリプロピレンナフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、及びPCN(ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンナフタレート)、PHN(ポリヘキサメチレンナフタレート))、及びこれらの異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、及び2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、及びPCT(ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサンメチレンテレフタレート))、ポリイミド(例えば、ポリアクリル酸イミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)(ポリ−α−メチルスチレン、又はポリジクロロスチレン、及びポリスルホンから調製されるものを含む)が挙げられる。
【0047】
コポリマー類、例えば、PEN、PBN、PPN、PCN、PHN、PET、PBT、PPT、PCT、PHTのコポリマー(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、及び/又は2,3−ナフタレンジカルボン酸又はこれらのエステルと(a)テレフタル酸、若しくはそのエステル;(b)イソフタル酸、若しくはそのエステル;(c)フタル酸、若しくはそのエステル;(d)アルカングリコール;(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタンジオール);(f)アルカンジカルボン酸;並びに/又は(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー)、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー(例えば、テレフタル酸、若しくはそのエステルと(a)ナフタレンジカルボン酸、又はそのエステル;(b)イソフタル酸、若しくはそのエステル;(c)フタル酸、若しくはそのエステル;(d)アルカングリコール;(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタンジオール);(f)アルカンジカルボン酸;並びに/又は(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー)、並びにスチレンコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー)などのコポリマー、4,4’−重安息香酸及びエチレングリコールも適している。
【0048】
加えて、複屈折層は上記のポリマー、又はコポリマーの2つ以上のブレンドを含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、複屈折層は好ましくは、ポリアルキレンナフタレート、ポリアルキレンテレフタレート、及びこれらのブレンドを含む。別の好ましい複屈折層はシンジオタクチックポリスチレンである。
【0050】
透過状態(又は偏光、すなわち、比較的多くの光を透過させる面内方向)の多層フィルムの透過率は、異なる延伸特性、及び異なるPMMA/SANブレンド組成物を使用して制御され得る。以下の表は代表的な光学フィルムを示しており、これは延伸特性、及びSAN/PMMA組成物を制御することによって、透過状態透過率を約10%から73%へと連続的に変えられることを例示する。PMMA/SANブレンドがより高い濃度のSANを含む場合により高い透過率が得られる。
【0051】
【表2】

【0052】
第1の、及び第2の光学層、加えて任意の共押出可能な追加(例えば、スキン)層のポリマー材料の固有粘度はポリマーの分子量(分岐モノマー不在下で)に関連する。典型的に、ポリエステルは約0.4dL/g超の固有粘度を有する。好ましくは、固有粘度は約0.4〜0.9dL/gである。本開示の目的のための固有粘度は特に指定されない限り、30℃の60/40重量%フェノール/o−ジクロロベンゼン溶媒で測定される。
【0053】
更に、第1の、及び第2の光学層、加えて共押出可能な追加層が、同様のレオロジー特性(例えば、溶融粘度)を有するように選択される。典型的には、第2の光学層、及び共押出可能な層は、第1の光学層のガラス転移温度より高く、約40℃以下であるガラス転移温度、Tgを有する。好ましくは、第2の光学層のガラス転移温度、及び任意の追加層は第1の光学層のガラス転移温度より低い。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるように、第2の等方性層のみがPMMA、及びSANのブレンドを含む。他の実施形態では、スキン層のみがPMMA、及びSANのこのようなブレンドを含む。更に他の実施形態では、第2の等方性層、及びスキン層が、PMMA、及びSANの低ヘーズのブレンドから形成される。
【0055】
図1を再び参照すると、多層フィルムは図1に例示される積層体16の少なくとも一方の表面を覆うスキン層として積層されるか、又は形成される1層以上のスキン層18を任意に含む。同じ、又は異なる材料の層がまた、積層体内に分布し得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、追加層18は典型的には、少なくとも関心の波長領域にわたり、多層ポリマーフィルム10の多層複屈折光学特性の決定に有意に影響しない。追加層18は典型的には複屈折、又は延伸可能ではない。このような追加層は光学層を損傷から保護し、共押出加工を補助し、並びに/又は後処理機械特性を向上するか、及び/若しくは積層体により高い機械的強度を提供し得る。
【0057】
あるいは、多層フィルムの外観、及び/又は性能は、追加層、例えば、主表面上のスキン層、若しくはスキン層と隣接するアンダースキン層をフィルム層の積層体内に含めることによって変化し得る。
【0058】
典型的には、追加層18がスキン層として使用される場合、少なくともいくらかの表面反射が存在する。多層ポリマーフィルム10が偏光子である場合、追加層は好ましくは比較的低い反射率を有する。これは、表面反射の程度を低減する。多層ポリマーフィルム10がミラーである場合、追加層18は好ましくは光の反射を増加させるために高い反射率を有する。
【0059】
追加層18が積層体16内に見出されるとき、典型的には、追加層18と隣接する光学層12、14と組み合わせた追加層18によって、少なくともいくらかの光の偏光、又は反射が存在する。しかしながら、典型的には、追加層18は、積層体16内の追加層18によって反射される光が関心の領域外の波長(例えば、可視光偏光子、又はミラーにおける赤外領域)を有するような厚さを有する。
【0060】
追加層は、coPENなどのポリエステルから調製され得る。追加的な層はまた、第2の低反射率層としての使用のために前述されたポリマー材料のいずれかから調製され得る。
【0061】
スキン層、及び内部層は、フィルム形成時(共押出により、又は個々のコーティング若しくは押出し工程のいずれかで)に一体化されてよく、又は、それらは後で、例えばスキン層を既に形成したフィルムにコーティング又は積層することによって完成したフィルムへ適用してもよい。追加層の厚さは典型的には、多層フィルムの総厚の約2%〜約50%の範囲である。
【0062】
追加層、又はコーティングの例は、米国特許第6,368,699号、及び同第6,459,514号(双方とも表題「Multilayer Polymer Film with Additional Coatings or Layers,」)、並びに米国特許第6,783,349号(Neavinら、表題「Apparatus for Making Multilayer Optical Films」)に記載される。
【0063】
追加の層12,24の組成物は、例えば、加工中又は加工後において、層の一体性を保護するため、多層フィルム10へ機械的性質又は物理的性質を加えるため、又は多層フィルム10へ光学的機能を加えるため選択されてよい。機能性構成成分、例えば、帯電防止剤類、紫外線吸収剤類(UVA)、ヒンダードアミン光安定剤類(HALS)、染料類、染色剤類、顔料類、酸化防止剤類、スリップ剤類、低接着性材料類、導電性材料類、耐摩耗性材料類、光学素子類、形状安定剤類、接着剤類、粘着付与剤類、難燃剤類、燐光材料類、蛍光材料類、ナノ粒子類、落書き防止剤類、結露防止剤類、耐荷重剤類、シリケート樹脂類、光拡散材料類、光吸収材料類及び蛍光増白剤類が、これらの層内に包含されてもよく、それらが、得られた生成物の所望の光学的性質又はその他の性質を実質的に妨害しないことが好ましい。いくつかの代表的実施形態では、1種類以上の追加の層は、ディフューザ、例えば、粗い、光沢が無い又は構造化された表面、数珠状ディフューザ又は有機粒子及び/若しくは無機粒子を包含するディフューザ、又はこれらのうちの任意の数の組み合わせであってもよく、あるいはそれらを包含してもよい。
【0064】
一実施例では、スキン層は、押出後加工に役立てるために使用され、例えば、フィルムが熱ローラー又はテンタークリップに粘着するのを防ぐのに役立つ。別の実施形態では、スキン層は多層フィルムに望ましいバリア特性を付与するために追加される。例えば、バリアフィルム又はコーティング材は、スキン層として又はスキン層の構成成分として追加してもよく、これにより多層フィルムの透過性を、液体例えば水若しくは有機溶媒、又は気体例えば酸素若しくは二酸化炭素へと変更する。
【0065】
生じる多層フィルムの摩耗耐性を付与、又は改善するためにスキン層が追加されてもよい。例えば、ポリマーマトリックス内に埋め込まれた、シリカなどの無機粒子を含むスキン層が使用されてもよい。別の実施形態では、スキン層は米国特許第5,677,050号に記載されるような、摩耗耐性を含み得る。また、生じる多層フィルムに耐破壊性及び/又は引裂き抵抗を付与、又は改善するためにスキン層が追加されてもよい。耐破壊性又は耐引裂性スキン層を製造工程中に適用するか、その後に、多層フィルム10上にコーティングするか又は積層してよい。製造工程中に、同時押出プロセスなどによって、これらの層を多層フィルム10へ接着することで、多層フィルム10が、製造工程中に保護されるという利点を提供する。
【0066】
一実施例では、追加層は1つ以上のスペクトル選択領域で吸光する染料又は色素を含む。スペクトルの代表的選択領域としては、紫外線及び赤外と同様に可視スペクトルの一部又は全部を挙げることができる。可視スペクトルの全てが吸収される場合、当該層は不透明に見える。層の材料は、多層フィルムにより透過又は反射された光の見かけの色を変えるために選択され得る。特に、フィルムがいくつかの光周波数を透過させ、一方で他を反射する場合に、当該フィルムの性質を補うためにそれらを使用することもできる。別の実施形態では、紫外線吸収材料をスキンカバー層内で使用することは特に望ましい。というのも、それが紫外線にさらされた場合にしばしば不安定となる内層を保護するために使用してもよいからである。一実施形態では、蛍光材料が追加の層に組み込まれる。蛍光材料は、紫外線スペクトル領域で電磁エネルギーを吸収し、可視スペクトル領域で再放射する。
【0067】
感圧接着剤を含む接着剤類は、スキン層として多層積層体へ適用され得る、別の望ましい種類の材料を形成する。一般に、感圧接着剤は、多層フィルムが後でガラス又は金属基材などの別の材料へ積層されることが意図されている場合に、適用される。
【0068】
スキン層内に組み込まれてよい別の材料は、スリップ剤である。スリップ剤は、製造工程中に多層フィルムをより扱い易くする。通常、スリップ剤は、フィルムに照射される光の一部を透過することを目的としているフィルムというよりむしろ、ミラーフィルムとともに使用される。前記スリップ剤を包含する側面は、前記スリップ剤が、反射と関係したヘーズを増大させるのを防止するために、通常、支持基材へ積層されることを目的としている側面である。
【0069】
スキン層から生じる多くの利益はまた、類似の内部層からも生じ得る。したがって、スキン層に関する前述の説明はまた、内部層に適用可能である。
【0070】
その他の追加の層は、ホログラフィー像、ホログラフィーディフューザ、又はその他の拡散層を含有する層を包含する。上述においては、多層フィルム積層体に適用して、その性質を変更することができる様々な層の例を記載した。一般的に、任意の追加の層を追加してもよく、通常、層12,14のそれとは異なった機械的、化学的、又は光学特性を提供してよい。
【0071】
代表的な実施形態では、追加層は、例えば、米国特許第6,096,375号(Ouderkirkら、表題「Optical Polarizer」)に記載される吸収層、又はダイクロイック偏光子層であってよい。いくつかのこのような構成においては、ダイクロイック偏光子の透過軸は、反射偏光子の透過軸と位置を合わせる。
【0072】
多層ポリマーフィルムの形成のための加工条件、及び考慮の記載は、米国特許出願第09/006,288号、表題「Process for Making Multilayer Optical Film.」に見出される。
【0073】
フィルムは一般に、個々のポリマーを共押出して、多層フィルムを形成し次に、選択した温度で延伸することによってフィルムを配向させ、所望により、続いて選択した温度で熱固定することにより作製される。あるいは、押出し及び配向工程は、同時に実施してよい。偏光子の場合、フィルムは実質的に一方向に延伸されるが(1軸配向)、ミラーフィルムの場合には、フィルムは実質的に2方向に延伸され(2軸配向)、それは、同時に又は連続的に実施してよい。
【0074】
異なる加工実施形態では、多層フィルムは延伸方向と交差する方向での寸法的緩和をさせてもよく、結果として、延伸交差方向での自然減をもたらし(延伸比の平方根に相当する)、多層フィルムを制約して、延伸交差寸法のいずれかの有意な変化を制限してよく、あるいは多層フィルムの延伸交差寸法を動的に延伸させてもよい。例えば、多層フィルムは、長さ方向配向機を使用して機械方向に延伸させても、あるいは幅出し機を使用して幅方向に延伸させてもよい。
【0075】
所望の屈折率相互関係及び物理的寸法を有する多層フィルムを作製するために、延伸工程前の温度、延伸温度、延伸速度、延伸比、ヒートセット温度、ヒートセット時間、ヒートセット緩和、及び延伸交差緩和が選択される。これらの変数は、相互依存性であり、したがって、例えば、比較的低い延伸温度と組み合わされる場合、比較的低い延伸速度が使用可能である。一般的に、延伸方向での約1:2〜約1:10(より好ましくは、約1:3〜約1:7)の範囲の延伸比及び延伸方向に直交する方向での約1:0.2〜約1:10(より好ましくは、約1:0.5〜約1:7)の範囲の延伸比が、代表的実施形態において選択される。
【0076】
好適な多層フィルムはまた、例えば、スピンコーティング(例えば、複屈折ポリイミドに関してBoeseら.,J.Polym.Sci.:Part B,30:1321(1992)に記載される)、及び真空蒸着(例えば、結晶性有機化合物に関してZangら,Appl.Letters,59:823(1991)に記載される)などの技術を使用して調製されてよく、後者の技術は結晶性有機化合物と無機材料との一定の混合物にとって特に有用である。
【0077】
試験方法
屈折率(RI)の測定
種々の試料の屈折率を、Metricon Prism coupler(Metricon Corporation,Pennington,N.J.)を用いて、MD、TD、及びTM方向において測定した。MD及びTDは面内方向であり、TMはフィルム表面に対して垂直である。MD、TD、及びTMの屈折率はそれぞれ、n、n、及びnとして標識される。報告される屈折率は、n、n、及びnの平均である。
【0078】
ヘーズ
ヘーズは、BYK Haze−Gard Plusを使用して、ASTM D1003−00にしたがって測定された。フィルムは平滑な表面を有したため、記録されるヘーズ値はバルクヘーズを示す。
【0079】
実施例で使用されるポリマー
1.Arkema,Philadelphia,PAから、商標名「Plexiglas VO44」で得られるポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)。
【0080】
2.Monomer−Polymer Companyから得られるスチレンアクリロニトリルコポリマー(10% AN)。
【0081】
3.Lanxell Corporation,Pittsburgh,PAから商標名「Lustran Sparkle」として市販されているスチレンアクリロニトリルコポリマー(17% AN)。
【0082】
4.Dow Chemicalsから商標名「Tyril 990」として市販されているスチレンアクリロニトリルコポリマー(20% AN)。
【0083】
5.Samsung,Koreaから、商標名「HF5661HC」として入手可能なスチレンアクリロニトリルコポリマー(23.8% AN)。
【0084】
6.Samsung,Koreaから、商標名「HF5670HC」として市販されているスチレンアクリロニトリルコポリマー(28.1% AN)。
【0085】
7.Dow Chemicalsから商標名「Styron 486」として市販されているポリスチレンホモポリマー。
【0086】
90モル%の二塩基酸部分がナフタレンジカルボン酸から生じ、10モル%の二塩基酸部分がテレフタル酸、又はそのエステルから生じ、ジオール部分がエチレングリコールから生じる複屈折コポリエステルポリマー(「90/10 coPEN」)が、2008年5月2日に出願された米国特許第12/114109号に記載されるように調製された。
【0087】
等方性coPEN 1は、重合反応において、55モル%の二塩基酸部分が、ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル類を使用することによってが生じ、45モル%の二塩基酸部分がテレフタル酸又はそのエステル類を使用することによって生じ、ジオール部分が1,6−ヘキサンジオールを含むジオールの混合物を使用することによって生じるコポリエステルである。等方性coPEN 1は、以下のように作製される。バッチ反応器に88.5kgのジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレート、57.5kgのジメチルテレフタレート、81kgのエチレングリコール、4.7kgの1,6−ヘキサンジオール、239gのトリメチロールプロパン、22gの亜鉛(II)アセテート、15gのコバルト(II)アセテート、及び51gのアンチモン(III)アセテートを充填した。20psigの圧力下でこの混合物を254℃まで加熱し、エステル化反応副生成物であるメタノールを除去した。39.6kgのメタノールを除去後、反応器に37gのトリエチルホスホノアセテートを充填し、次いで290℃で加熱しながら、圧力を徐々に1トル(131N/m2)まで減少させた。60/40質量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン内で23℃で測定した場合に、固有粘度が0.56dl/gのポリマーが生成されるまで、縮合反応副生成物であるエチレングリコールを継続的に除去した。この方法によって生成されたコポリエステルポリマーは、温度ランプ速度20℃/分で示差走査熱量測定したところ、94℃のガラス転移温度(Tg)を有した。
【実施例】
【0088】
実施例1〜6、及び比較例1〜3:
単層フィルムが、15.2cm(6インチ)の単層ダイを有する二軸スクリュー押出機により、異なるレベルのアクリロニトリルを含むPMMA、及びSANのブレンドから作製された。押出機の温度プロファイルは、単層ダイにおいて、216℃〜260℃(420°F〜500°F)、及び260℃(500°F)であった。生じるフィルムの光学特性が測定され、表1に報告された。
【0089】
【表3】

【0090】
表1に図示されるように、10重量%〜28.1重量%のアクリロニトリルを有するSANから作製されるブレンドは高いヘーズ、及び低い透過率を有し、10重量%超、28重量%未満のアクリロニトリルを含むブレンドは低いヘーズ、及び高い透過率を呈する。
【0091】
実施例7:
単層フィルムが、15.2cm(6インチ)単層ダイを有する二軸スクリュー押出機により、PMMAとLustran Sparkle(17重量% AN)のPMMAのブレンドから作製された。押出機の温度プロファイルは、単層ダイにおいて、216℃〜260℃(420°F〜500°F)、及び260℃(500°F)であった。生じるフィルムの平均屈折率が測定され、図2にプロットされた。
【0092】
結果はPMMAの屈折率が、望ましい量のSANを追加することによってより高くなるように調節され得ることを示す。
【0093】
実施例8:多層フィルムが90/10 coPEN、及び75重量%のPMMAと25重量%のLustran Sparkleとのブレンドから作製された。生じる61層フィルムが測定され、ヘーズがおよそ4.04%、透過率がおよそ83.4%であった。多層フィルムが手で注意深く剥離され、次に測定されてPMMA−SANブレンド層の633nmにおける屈折率は1.51であった。
【0094】
実施例9:多層フィルムが90/10 coPEN、及び75重量%PMMAと25重量%のLustran Sparkleのブレンドから作製された。生じる61層フィルムが測定され、ヘーズがおよそ2.64%、透過率がおよそ84.7%であった。多層フィルムが手で注意深く剥離され、次に測定されてPMMA−SANブレンド層の633nmにおける屈折率は1.53であった。
【0095】
比較例4:単層フィルムが50重量%PMMA、及び50重量%Styron 486から、15.2cm(6インチ)単層ダイを有する二軸スクリュー押出機によって作製された。押出機の温度プロファイルは、単層ダイにおいて、216℃〜260℃(420°F〜500°F)、及び(500°F)であった。生じる6ミルフィルムが測定され、ヘーズがおよそ100%、透過率がおよそ20%であった。高いヘーズの結果はまた、溶融加工によりStyron 486がPMMAと混和性を有さないことを示している。
【0096】
実施例10:275層を含む共押出フィルムが、共押出加工によって連続的なフラットフィルム作製ラインで作製された。90/10 coPENが1つの押出機によって45.4kg/hr(100ポンド/時)の速度で供給され、87.5:12.5の割合のPMMAとTyril 990のブレンドが混合されて、別の二軸スクリュー押出機により、36.3kg/hr(80ポンド/時間)で供給された。第3の押出機によって56.7kg/hr(125ポンド/時)の速度で供給される等方性coPEN 1のスキン層が存在する。275層キャストフィルムを生成するために、フィードブロック方法が使用された。フィルムは続いて約138℃(280°F)まで予加熱され、5.6の延伸比率まで横方向に延伸され、次に182〜204℃(360〜400°F)の熱固定オーブンでその最大幅の約3%弛緩され、1.5であり、生じた最終延伸フィルムは延伸方向と平行な400nm〜800nmのp−偏光で34%の平均透過率を有し延伸方向から90°(すなわち、垂直)の400nm〜800nmで0%の透過率を有した。
【0097】
実施例11:275層を含む共押出フィルムが、共押出加工によって連続的なフラットフィルム作製ラインで作製された。90/10 coPENが1つの押出機によって45.4kg/hr(100ポンド/時)の速度で供給され、52.5:47.5の割合のPMMAとTyril 990のブレンドが混合されて、別の二軸スクリュー押出機により、36.3kg/hr(80ポンド/時)で供給された。第3の押出機によって56.7kg/hr(125ポンド/時)の速度で供給される等方性coPEN 1のスキン層が存在する。275層キャストフィルムを生成するために、フィードブロック方法が使用された。フィルムは続いて約138℃(280°F)まで予加熱され、約5.6の延伸比率まで横方向に延伸され、次に182〜204℃(360〜400°F)の熱固定オーブンでその最大幅の約3%弛緩された。52.5:47.5の割合のPMMAとTyril990のブレンド屈折率は約1.52であり、生じた最終延伸フィルムは延伸方向と平行な400nm〜800nmのp−偏光で45%の平均透過率を有し延伸方向から90°(すなわち、垂直)の400nm〜800nmで0%の透過率を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の第1の複屈折光学層と、
633nmで0.04未満の複屈折を有する少なくとも1層の第2の層と、
任意により少なくとも1層のスキン層と、を含む光学積層体を含む、多層光学フィルムであって、
前記第2の層、スキン層、又はこれらの組み合わせが、少なくとも1つのメチルメタクリレートポリマーと、少なくとも1つのスチレンアクリロニトリルポリマーとのブレンドを含み、前記多層フィルムが5%以下のヘーズを有する、多層光学フィルム。
【請求項2】
前記スチレンアクリロニトリルポリマーが、10重量%超、かつ28重量%未満の濃度のアクリロニトリルを有する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項3】
前記多層フィルムが約1重量%〜約14重量%のアクリロニトリルを含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項4】
前記ブレンドが少なくとも10重量%のスチレンアクリロニトリルポリマーを含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項5】
前記第2の層、スキン層、又はこれらの組み合わせが、少なくとも10重量%のメチルメタクリレートポリマーを含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項6】
前記第2の層が、少なくとも1つのメチルメタクリレートポリマーと少なくとも1つのスチレン−アクリロニトリルポリマーとのブレンドを含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項7】
前記ブレンドが、1.50〜1.55の範囲の平均屈折率を有する、請求項6に記載の多層光学フィルム。
【請求項8】
前記光学積層体が前記第2の層と交互の、少なくとも10層の前記第1の複屈折層を含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項9】
前記多層光学フィルムがミラーフィルムである、請求項8に記載の多層光学フィルム。
【請求項10】
前記多層光学フィルムが偏光フィルムである、請求項8に記載の多層光学フィルム。
【請求項11】
前記偏光フィルムが、透過状態の光に関して10%〜80%の範囲の平均透過率を呈する、請求項10に記載の多層光学フィルム。
【請求項12】
前記フィルムが非対称な反射性フィルムである、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、第1の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも90%の平均軸上反射率と、前記第1の平面と垂直な第2の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも25%かつ90%未満の平均軸上反射率とを呈する、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項14】
前記複屈折層が、ポリアルキレンナフタレート、ポリアルキレンテレフタレート、及びこれらのブレンドを含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項15】
前記複屈折層がシンジオタクチックポリスチレンを含む、請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項16】
少なくとも1層の第1の複屈折光学層と
633nmで0.04未満の複屈折率を有する少なくとも1層の第2の光学層と、
任意により少なくとも1層のスキン層と、を含む光学積層体を含む、多層光学フィルムであって、
前記第2の層、前記スキン層、又はこれらの組み合わせが、少なくとも1つのメチルメタクリレートポリマーと少なくとも1つのスチレンアクリロニトリルポリマーとのブレンドを含み、前記スチレン−アクリロニトリルポリマーが10重量%超、かつ28重量%未満の濃度のアクリロニトリルを有する、多層光学フィルム。
【請求項17】
少なくとも1層の第1の複屈折光学層と
633nmで0.04未満の複屈折率を有する少なくとも1層の第2の光学層と、
任意により少なくとも1層のスキン層と、を含む光学積層体を含む、多層光学フィルムであって、
前記第2の層、前記スキン層、又はこれらの組み合わせが、少なくとも1つのメチルメタクリレートポリマーと、少なくとも1つのスチレン−アクリロニトリルポリマーとのブレンドを含み、前記光学積層体が約0.5重量%〜約12.5重量%のアクリロニトリルを含む、多層光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−528450(P2011−528450A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518782(P2011−518782)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/049344
【国際公開番号】WO2010/008933
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】