説明

メチルメルカプタン消臭剤、口臭抑制剤、及び口腔用組成物

【課題】優れたメチルメルカプタン消臭活性及び嗜好性を有するメチルメルカプタン消臭剤、口臭抑制剤、及び口腔用組成物の提供。
【解決手段】本発明のメチルメルカプタン消臭剤(口臭抑制剤)は、セイタカミロバラン抽出物からなることを特徴とする。セイタカミロバラン抽出物がセイタカミロバランの果実皮の抽出物である態様、セイタカミロバラン抽出物が水抽出物である態様、などが好ましい。また、本発明の口腔用組成物は、メチルメルカプタン消臭剤を含有することを特徴とする。口腔用組成物中のセイタカミロバラン抽出物の固形物濃度が0.0025質量%以上である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性及び嗜好性の高い植物抽出物を用いたメチルメルカプタン消臭剤、口臭抑制剤、及び口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口臭は、その原因の約8割が口腔内にあり、該口腔内に生息する数百種類の細菌の一部が産生する不快な臭いである。代表的な口臭産生菌としては、フゾバクテリウムが挙げられる。前記フゾバクテリウムは、含硫アミノ酸L−メチオニンを代謝して、代表的な口臭成分であるメチルメルカプタンを発生する。
前記メチルメルカプタンは揮発性イオウ化合物(VSC)の1つであり、キャベツの腐敗様臭気を呈し、臭気閾値の低い悪臭物質の1つである。口臭に含まれるVSCには、口臭産生菌が含硫アミノ酸L−システインを代謝して発生する硫化水素などもある。
【0003】
不快な口臭を予防する方法として、従来より、(1)歯磨き剤、洗口剤、歯ブラシ、歯間清掃用具(デンタルフロス、歯間ブラシ)により口臭の原因となる口の中の汚れを除去する方法、(2)口臭の主な臭気成分であるメチルメルカプタン等の硫黄化合物に対する消臭効果が高い化学物質を使用する方法、(3)メントールなどの香料の付与された口中清涼剤などで口臭をマスキングする方法などが知られている。
上記(1)〜(3)などの方法は、何れも優れた口臭予防、除去手段であり数々の製品が上市されているが、何れの方法も利用できる場面が限定的であったり、強い刺激を伴なったり、その効果が恒常性に欠けるなどの課題がある。
また、植物抽出物を用いる方法も提案されており、消臭作用を有するもの(特許文献1及び2参照)、口臭原因菌の代謝阻害作用によってメチルメルカプタンを抑制する植物抽出物(特許文献3参照)などが挙げられる。
しかし、従来から口臭予防に用いられている植物抽出物の多くは味や香りが強烈であり、そのマスキングのために風味が制限されるといった嗜好性に関する問題があった。
一方、セイタカミロバランは、老化防止食品(特許文献4参照)、糖尿病予防・治療組成物(特許文献5参照)、抗ヘリコバクター・ピロリ用組成物(特許文献6参照)などへの用途が報告されている植物であるが、消臭能については知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−204278号公報
【特許文献2】特開昭60−77763号公報
【特許文献3】特開2003−26527号公報
【特許文献4】特開平3−58939号公報
【特許文献5】特開2005−325025号公報
【特許文献6】特開2003−342190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、優れたメチルメルカプタン消臭活性及び嗜好性を有するメチルメルカプタン消臭剤、口臭抑制剤、及び口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、セイタカミロバラン抽出物が、優れたメチルメルカプタン消臭活性を有し、しかも嗜好性の点でも良好であるという知見を得、消臭剤や口臭除去剤有効成分としての新たな用途を見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
本発明は、本発明者等の前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> セイタカミロバラン抽出物からなることを特徴とするメチルメルカプタン消臭剤である。
<2> セイタカミロバラン抽出物がセイタカミロバランの果実皮の抽出物である前記<1>に記載のメチルメルカプタン消臭剤である。
<3> セイタカミロバラン抽出物が水抽出物である前記<1>から<2>のいずれかに記載のメチルメルカプタン消臭剤である。
<4> セイタカミロバラン抽出物からなることを特徴とする口臭抑制剤である。
<5> セイタカミロバラン抽出物がセイタカミロバランの果実皮の抽出物である前記<4>に記載の口臭抑制剤である。
<6> セイタカミロバラン抽出物が水抽出物である前記<4>から<5>のいずれかに記載の口臭抑制剤である。
<7> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のメチルメルカプタン消臭剤を含有することを特徴とする口腔用組成物である。
<8> 口腔内用組成物中のセイタカミロバラン抽出物の固形物濃度が0.0025質量%以上である前記<7>に記載の口腔用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決でき、優れたメチルメルカプタン消臭活性及び嗜好性を有するメチルメルカプタン消臭剤、口臭抑制剤、及び口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(メチルメルカプタン消臭剤)
本発明のメチルメルカプタン消臭剤(口臭抑制剤)は、セイタカミロバラン抽出物である。
【0010】
−セイタカミロバラン抽出物−
前記セイタカミロバラン抽出物は、セイタカミロバランから得られる抽出物である。
前記セイタカミロバランは、熱帯地方の樹木の1種であり、学名は、シクンシ(Combretaceae)科terminalia属belericaである。
【0011】
本発明の消臭剤(口臭抑制剤)としては、前記セイタカミロバランの樹皮部、葉部、果実部、の抽出物が好適に使用される。中でも、果実、特に、果実の皮が好ましい。
【0012】
前記セイタカミロバランの抽出方法としては、水、エタノール、メタノール等の親水性溶媒やこれらの混合溶媒による抽出が好ましく、水抽出がより好ましい。また、得られた抽出物に対してさらに精製処理を施してもよい。
【0013】
メチルメルカプタン消臭剤としての前記セイタカミロバランの量は、メチルメルカプタン1μgに対して、0.15mg以上が好ましく、0.75mg以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、メチルメルカプタン1μgに対して750mg以下が好ましく、150mg以下がより好ましい。前記下限未満ではメチルメルカプタンの消臭効果が十分でない可能性があり、上限より多くしても、効果が飽和するためである。
【0014】
本発明のメチルメルカプタン消臭剤(口臭抑制剤)は、後述する口腔用組成物に配合し、口臭抑制効果に優れた口腔用組成物とすることができる。
【0015】
(口腔用組成物)
本発明の口腔用組成物は、前記セイタカミロバラン抽出物を少なくとも含有し、更に必要に応じて、口腔用組成物に配合可能な公知の成分、添加剤、などを含有する。
【0016】
前記口腔用組成物におけるセイタカミロバラン抽出物の含有量は、セイタカミロバラン抽出物の固形物濃度として、下限値0.001質量%以上が好ましく、0.0025質量%以上がより好ましく、0.0125質量%以上が特に好ましい。上限は、特に限定されないが、12.5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましい。セイタカミロバラン抽出物量が、前記下限の0.001質量%に満たないと、口臭抑制効果が十分得られないことがある。また、上限値12.5質量%を超えると、安定性などに不具合が生じることがある。
なお、前記セイタカミロバラン抽出物の固形物濃度は、抽出物(セイタカミロバラン抽出成分+溶媒)から溶媒を除いたセイタカミロバラン抽出成分の総量の値である。
【0017】
本発明の前記口腔用組成物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粒状剤等の固体、溶液、乳液、研濁液等の液体、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト等の半固体など、何れの形態でもよい。また使用形態としては、塗布剤、マッサージ剤、ブラッシング剤、貼付剤、スプレー剤などとすることができる。
前記口腔用組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤の他、洗口剤、マウスウォッシュ、歯肉マッサージクリーム、口腔用軟膏、うがい用錠剤、トローチ、キャンディ、チューインガムなど、の各種製剤に応用することができる。
【0018】
本発明の前記口腔用組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的及び剤型に応じて、常法を適宜選択することができる。
また、本発明の前記口腔用組成物は、目的及び組成物の剤型などに応じて、上記成分に加えて、更に任意成分を含有していてもよい。具体的には、例えば、前記口腔用組成物が歯磨剤の場合、界面活性剤、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、甘味剤、防腐剤、有機酸、有効成分、香料、着色剤などを、本発明の効果を害しない範囲で、通常量使用することができる。
【0019】
前記界面活性剤としては、通常口腔用組成物に配合されるものであれば、特に制限なく使用でき、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられるが、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を好適に配合できる。
アニオン界面活性剤としては、特に汎用性の点で、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩などが好適に用いられる。具体的には、ラウロイルサルコシンナトリウム、アルキル鎖の炭素鎖長として炭素数が10〜16のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどを使用できる。
ノニオン界面活性剤としては、特に汎用性の点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステルなどが好適に用いられる。具体的には、アルキル鎖の炭素数が14〜18、エチレンオキサイド平均付加モル数が15〜30のポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイド平均付加モル数が40〜100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキル鎖の炭素数が12〜14のアルキロールアミド、脂肪酸の炭素数が12〜18のソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸の炭素数が16〜18で、エチレンオキサイド平均付加モル数が10〜40のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を使用できる。
界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.05〜2質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましい。
【0020】
前記研磨剤としては、例えば、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂系研磨剤などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記研磨剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記口腔用組成物全体における、2質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。
【0021】
前記粘稠剤としては、例えば、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール200〜20,000、キシリトールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記粘稠剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記口腔用組成物全体における、5質量%〜50質量%が好ましく、20質量%〜45質量%がより好ましい。
【0022】
前記粘結剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、カーボポール、グアガム、モンモリロナイト、ゼラチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記粘結剤の含有量としては、特に制限はなく、剤型に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記口腔用組成物が練歯磨である場合、前記口腔用組成物全体における、0.1質量%〜5質量%が好ましく、液体歯磨、洗口剤等の液体剤型である場合には、0.01質量%〜5質量%が好ましい。
【0023】
前記甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、パラチノース、還元パラチノース(パラチニット)、ラフィノース、メリビオース、ソーマチン、アスパルテーム、アセスルファムK、シクラメートナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスベリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、トレハロース、パラチノース、パラチニット、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、L−アスパルチルーL−フェニルアラニンメチルエステル、スクラロース、グリチルリチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記甘味剤の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を害しない範囲で適宜選択することができる。
【0024】
前記防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記防腐剤の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を害しない範囲で適宜選択することができる。
【0025】
前記有機酸としては、通常、口腔用組成物に使用することができる種々の有機酸が挙げられ、例えば、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、乳酸、酒石酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、グリコール酸又はこれらの塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機酸の中でも、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸又はこれらの塩が好ましい。
【0026】
前記有効成分としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、アズレンスルホン酸ナトリウム、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、塩化ナトリウム、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、β−グリチルレチン酸、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸クロルヘキシジン、トリクロサン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、塩酸ピリドキシン、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ゼオライト、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化リゾチーム、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヒノキチオール、トラネキサム酸、デキストラナーゼ、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、プロテアーゼなどが挙げられる。
前記薬用成分の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を害しない範囲で適宜選択することができ、通常、0.001質量%〜5質量%である。
【0027】
前記香料としては、例えば、天然香料、単品香料、調合香料など、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を、1種単独あるいは2種以上を併用することができる。
前記香料の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を害しない範囲で適宜選択することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例において、「%」は、いずれも「質量%」である。
【0029】
(試験1:消臭力試験)
セイタカミロバラン果実皮水抽出物((固形物濃度:100%)サビンサジャパン製)を、農芸化学会誌58(6)585−589,1984に記載されている方法を一部変更して、下記のように消臭力試験を実施した。
【0030】
前記セイタカミロバラン果実皮水抽出物は、サビンサジャパン製の「Terminalia Belerica Extract」であり、Terminalia Belericaの果皮を、抽出(抽出溶媒として水を使用)し、抽出物は使用した果実1/5〜1/6に相当する。フォーリンデニス法によるポリフェノール含量が40.01質量%(規格値が35.0%以上)のものを使用した。
【0031】
<消臭力試験方法>
(実施例1〜6)
生理食塩水2.2mLが入った内容量23mLの試験管に、反応の最終液量3mL中のセイタカミロバラン果実皮水抽出物のサンプルの終濃度(反応液1mL当りのセイタカミロバラン果実皮水抽出物の固形物濃度)が表中に記載した濃度となるように、10倍濃度サンプル(コントロールの場合は水)を0.3mL添加して予め37℃の水浴中にて保温した。
例えば、実施例1の場合、生理食塩水2.2mLが入った内容量23mLの試験管に、セイタカミロバラン果実皮水抽出物の終濃度が1mg/mLとなるように、セイタカミロバラン果実皮水抽出物の固形物濃度10mg/mLの溶液0.3mLを添加したものを予め37℃に保温した。
これに1μg/mLメチルメルカプタン溶液0.5mLを加え、シリコン栓を付し、攪拌後37℃の水浴中に保温した。6分後、ガスタイトシリンジで空気を5mL注入し、攪拌して気相を均質にした後、同シリンジでヘッドスペースガス5mLを抜き取り、ガスクロマトグラフィーにてメチルメルカプタン(以下MeSH)を測定した。同一被検液で2回繰り返し、その平均から消臭率を下記のように計算した。得られた結果を表1に示す。
消臭率=(C−S)/C×100(%)
C:コントロールのMeSH量
S:被検液添加時のMeSH量
【0032】
(比較例1)
実施例1において、セイタカミロバラン果実皮水抽出物を用いる代わりに、マロニエ(Horse chestnut)抽出物(サビンサジャパン製)を用いた。
【0033】
前記マロニエ抽出物は、サビンサジャパン製のVenocinTM 90%(Horse chestnut Extract)であり、Aesculus hippocastanumの種子部の抽出物である。HPLC分析によるエスシン含量が90.17質量%(規格値90.0%以上)のものを使用した。
【0034】
(比較例2)
実施例1において、セイタカミロバラン果実皮水抽出物を用いる代わりに、ガルシニア(Garcinia Cambogia)抽出物(INDFRAG製)を用いた。
【0035】
前記ガルシニアカンボジア抽出物は、INDFRAG社製のGarcinia cambogiaの果皮の純水による浸出エキスを用いて製造したものであり、HPLC分析によるヒドロキシクエン酸含量が62.57質量%(規格値50%以上)のものを使用した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、比較例1のマロニエ抽出物、及び、比較例2のガルシニア抽出物には、メチルメルカプタン消臭活性が認められなかった。一方、実施例1〜6のセイタカミロバラン抽出物には、高いメチルメルカプタン消臭活性が認められた。
【0038】
次に、従来より、メチルメルカプタンに対する消臭活性もしくは発生抑制が示されている植物抽出物を用いて、その嗜好性(苦味、香りの強さ)を評価した。
【0039】
(植物抽出物嗜好性評価)
山椒抽出物(固形物濃度として1%溶液)、ローズマリー抽出物(固形物濃度として1%溶液)、茶抽出物(固形物濃度として1%溶液)の調製を行った。
前記山椒抽出物として、エタノール抽出エキス(日本タブレット製、抽出物の固形物濃度50%)を使用した。
前記ローズマリー抽出物として、水溶性ローズマリー抽出物(豊玉香料製、抽出物の固形物濃度10%)を使用した。
前記茶抽出物として、テアビゴTM(DSMニュートリション製、抽出物の固形物濃度100%、そのうちのエピガロカテキンガレート含量90%のものを使用した。
【0040】
<評価方法>
各植物抽出物(固形物濃度として1%水溶液)の嗜好性を確認した。なお、評価は3名のパネラーで行い、各サンプル3mLを口に含み、10秒後に吐き出して嗜好性(苦味、香りの強さ)を判定した。なお、1つのサンプルを評価した後には、口腔内のサンプル残留感がなくなるまで水による洗口を行い、さらに30分以上の間隔をおいて次のサンプルの評価を行った。
3名のうち2名以上の一致をもって結果とした。
<判定基準>
○:苦味及び香りが気にならない
△:苦味及び/又は香りがやや強い
×:苦味及び/又は香りが強い
植物抽出物嗜好性評価結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

表2より、これまでにメルカプタン消臭抑制能もしくは発生抑制能が見出されている植物抽出物(山椒抽出物、ローズマリー抽出物、茶抽出物)は味や香りが強く、製品の香味が制限されてしまうため、嗜好性に劣ることが分かった。一方、セイタカミロバラン抽出物は、味及び香りとも弱いため自由な香味設計が期待でき、良好な嗜好性を呈した。
【0042】
以下、本発明のメチルメルカプタン消臭剤(セイタカミロバラン抽出物(固形物濃度100%、そのうちのポリフェノール含量40%)のもの)を配合した口腔用組成物の実施例を示す。
(実施例7)
口腔用組成物として、下記組成の練歯磨を調製した。
沈降性シリカ(研磨剤) 25.0%
グリセリン(粘稠剤) 25.0%
ソルビット(粘稠剤) 15.0%
キシリトール(粘稠剤、甘味剤) 10.0%
ラウロイルデカグリセリンエステル 1.0%
ミリスチン酸ジエタノールアミド 2.0%
香料 1.0%
サッカリンナトリウム(甘味剤) 0.2%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 0.1%
精製水 残部
計 100.0%
【0043】
(実施例8)
口腔用組成物として、下記組成の液状歯磨を調製した。
水酸化アルミニウム(研磨剤) 25.0%
グリセリン(粘稠剤) 40.0%
ソルビット(粘稠剤) 15.0%
カルボキシメチルセルロース(重合度=500)(粘結剤) 0.2%
プロピレングリコール(粘稠剤) 2.0%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5%
モノラウリン酸デカグリセリル 1.0%
香料 1.0%
サッカリンナトリウム(甘味剤) 0.1%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 0.0025%
納豆菌ガム 0.1%
精製水 残部
計 100.0%
【0044】
(実施例9)
口腔用組成物として、下記組成の口腔用軟膏を調製した。
流動パラフィン 15.0%
セタノール 10.0%
グリセリン 20.0%
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 5.0%
香料 0.5%
サッカリンナトリウム 0.1%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 0.03%
精製水 残部
計 100.0%
【0045】
(実施例10)
口腔用組成物として、下記組成の洗口液を調製した。
エタノール 20.0%
香料 1.0%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO=60) 0.3%
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.1%
サッカリンナトリウム 0.05%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 0.3%
イソプロピルメチルフェノール 0.05%
精製水 残部
計 100.0%
【0046】
(実施例11)
口腔用組成物として、下記組成のうがい用錠剤を調製した。
炭酸水素ナトリウム 54.0%
クエン酸 17.0%
無水硫酸ナトリウム 12.8%
第2リン酸ナトリウム 10.0%
ポリエチレングリコール 3.0%
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.1%
香料 2.0%
オレイン酸 0.1%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 1.0%
計 100.0%
【0047】
(実施例12)
口腔用組成物として、下記組成のトローチを調製した。
キシリトール 87.0%
アラビアゴム 5.0%
タルク 2.0%
ステアリン酸マグネシウム 1.0%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 5.0%
計 100.0%
【0048】
(実施例13)
口腔用組成物として、下記組成のキャンディを調製した。
砂糖 50.0%
水飴 33.0%
有機酸 2.0%
香料 0.2%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 2.5%
精製水 残部
計 100.0%
【0049】
(実施例14)
口腔用組成物として、下記組成のチューインガムを調製した。
砂糖 41.0%
ガムベース 20.0%
グルコース 10.0%
水飴 16.0%
香料 0.5%
セイタカミロバラン果実皮水抽出物(固形物濃度100%) 12.5%
計 100.0%
【0050】
実施例7〜14の口腔用組成物は、いずれも口臭抑制効果に優れており、刺激がなく嗜好性も良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のメチルメルカプタン消臭剤(口臭抑制剤)は、本発明の口腔用組成物の成分として好適に使用可能である。
本発明の口腔用組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤の他、洗口剤、マウスウォッシュなどに好適に使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイタカミロバラン抽出物からなることを特徴とするメチルメルカプタン消臭剤。
【請求項2】
セイタカミロバラン抽出物からなることを特徴とする口臭抑制剤。
【請求項3】
請求項1に記載のメチルメルカプタン消臭剤を含有することを特徴とする口腔用組成物。

【公開番号】特開2010−280591(P2010−280591A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133864(P2009−133864)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】