説明

メチル基転移酵素、そのDNA、及び特定部位にメチル基が導入されたポルフィリン型化合物の製造方法

【課題】バクテリオフェオホルビドdやその類縁化合物である特定のポルフィリン型化合物の20位の炭素原子に対して部位特異的にメチル基を導入する技術を提供すること。
【解決手段】緑色イオウ光合成細菌由来の特定のアミノ酸配列、又はその1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含んでなるメチル基転移酵素を利用して、特定のポルフィリン型化合物の20位の炭素原子に対して、部位特異的にメチル基を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心金属として2価の金属原子を有する特定ポルフィリン型化合物の20位の炭素原子をメチル化するメチル基転移酵素、及びそのDNAに関する。また、本発明は、該メチル基転移酵素を用いて、特定部位にメチル基が導入されたポルフィリン型化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑色イオウ細菌は、クロロゾームと呼ばれる特殊な膜外光捕集器官をもつ光合成細菌である。これらの細菌は、湖水などでは、他の種の光合成細菌よりも深く、太陽光がとどきにくい環境下で生息していることから、そのクロロゾームの持つ光エネルギー捕集能力は極めて高いことが知られている。クロロゾームの内部は、タンパク質の関与しないバクテリオクロロフィル(以下、「BChl」と表記する)色素の自己会合体からなり、試験管内でもこの色素の会合体を人工的に再構成させることが可能である。その会合体は外部エネルギーを必要としない自発的な集積体であることから、高効率太陽電池等の光デバイス・光センサーの開発において近年注目されいる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
BChlにおいて、様々な側鎖に存在しているメチル基は、BChlの吸収スペクトルに多大な影響を及ぼすことが分かっている。そのため、BChl等のポルフィリン型化合物を応用して光デバイス・光センサー等を開発していく上で、メチル基を部位特異的導入して、目的の構造のポルフィリン型化合物を合成する技術の確立が不可欠である。
【0004】
しかしながら、BChlは、複雑な構造のポルフィリン型化合物であり、これを有機合成により合成するには多くの問題点がある。特に、BChlのような複雑な構造のポルフィリン型化合物にメチル基を部位特異的に導入することは困難である。そのため、BChl等のポルフィリン型化合物を製造する上で、その骨格となる化合物に的確にメチル基を導入することは極めて重要な技術的課題となっている。
【0005】
ところで、一般式(3)で表されるバクテリオクロロフィルc(BChl c)(下記構造式参照;式中、R6は、エチル基、プロピル基、イソブチル基、又はネオペンチル基を示し、R7は、メチル基又はエチル基を示す。)は、緑色イオウ光合成細菌Chlorobium tepidumのクロロゾーム内に存在するBChlとして知られており、今後、光デバイス・光センサー等に応用が期待されている色素化合物である。このBChl cは、20位の炭素原子にメチル基を有しているバクテリオフェオホルビドc(以下、「BPheoide c」と表記する)のマグネシウム錯体を用いて、in vivoで合成されることが分かっている。そして、このBPheoide cのマグネシウム錯体は、バクテリオフェオホルビドd(以下、「BPheoide d」と表記する)のマグネシウム錯体の20位の炭素原子にメチル基を導入することにより合成されることが知られている(下記反応式参照)。
【0006】
【化1】

【式1】
【0007】

【0008】
しかしながら、有機化学合成により、BPheoide d類の20位の炭素原子に対して部位特異的にメチル基を導入することが困難であるため、in vitroでBChl cを製造することができていないのが現状である。このような従来技術を背景として、BPheoide dやその類縁のポルフィリン型化合物の20位の炭素原子に対して部位特異的にメチル基を導入して、BPheoide cやその類縁化合物を製造する技術の開発が望まれている。
【0009】
また、緑色イオウ光合成細菌中では、BChlやその前駆体であるBPheoide cやBPheoide dは、通常、中心金属としてマグネシウムを有しているが、in vitroではこれらの色素化合物から脱マグネシウム化し易いという欠点がある。そのため、実用性の観点から、マグネシウム以外の金属原子を中心金属として有する色素化合物が有用であると考えられているが、中心金属がマグネシウム以外のBPheoide dに対して部位特異的にメチル基を導入するには、どのような手段を採用すればよいかについては一切知られていない。
【非特許文献1】Y. Kureishi, H. Shiraishi & H. Tamiaki, "Self-Aggregates of Synthetic Zinc Chlorins as the Photosensitizer on Carbon Paste Electrodes for a Novel Solar Cell, " J. Electroanal. Chem., 496, 13-20(2001).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、BPheoide dやその類縁化合物である特定のポルフィリン型化合物の20位の炭素原子に対して部位特異的にメチル基を導入する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、緑色イオウ光合成細菌Chlorobium tepidumについて着目して、鋭意検討したところ、緑色イオウ光合成細菌Chlorobium tepidumから、BPheoide dやその類縁化合物である特定のポルフィリン型化合物の20位の炭素原子に対して部位特異的にメチル基を導入できるメチル基転移酵素を単離することに成功した。このメチル基転移酵素は、中心金属がマグネシウム以外のBPheoide d等のポルフィリン型化合物に対しても、20位の炭素原子に対して部位特異的にメチル基を導入できることを見出した。更に、当該メチル基転移酵素をコードするDNA配列を決定し、ベクターに組み込んで、該酵素を効率よく生産することに成功した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねて完成されたものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる発明を提供するものである。
項1. (A)配列番号1に示すアミノ酸配列、又は(B)配列番号1に示すアミノ酸配列の1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含んでなる、
一般式(1)で表される化合物の20位の炭素原子にメチル基を転移するメチル基転移酵素:
【0013】
【化2】

[式中、R1は、基−CH(OH)(CH2)n1H(n1は0〜18の整数を示す)、基−CH=CH(CH2)n2H(n2は0〜17の整数を示す)、基−(CH2)n3H(n3は2〜19の整数を示す)、又は基−CO(CH2)n4H(n4は0〜18の整数を示す)を示し、
2は、メチル基、ホルミル基、ヒドロキシメチル基、又はアセチルオキシメチル基を示し、
3は、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基、ホルミル基、アセチル基、ビニル基、スチリル基、又はフェネチル基を示し、
4は、メチル基又はエチル基を示し、
5は、水素原子、ブチル基、ファルネシル基、又は基−(CH2)n5H(n5は1〜18の整数を示す)を示し、
Mは、2価の金属原子を示す。]。
項2. 項1に記載のメチル基転移酵素をコードするDNA。
項3. 以下の(C)又は(D)のDNAである、項2記載のDNA。
(C)配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、
(D)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、一般式(1)で表される化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びMは、前記と同じ)の20位の炭素原子をメチル化するメチル基転移酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含むDNA。
【0014】
【化3】

項4. 項2又は3に記載のDNAを含有する組換えベクター。
項5. 項4に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
項6. メチル基供与体の存在下で、一般式(1)で表される化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びMは、前記と同じ)に、
【0015】
【化4】

請求項1に記載のメチル基転移酵素を作用させることを特徴とする、一般式(2)で表される化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びMは、前記と同じ)の製造方法。
【0016】
【化5】

項7. 式中、Mが亜鉛原子である、項6に記載の製造方法。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
メチル基転移酵素
本発明のメチル基転移酵素は、下記一般式(1)で表される化合物
【0018】
【化6】

の20位の炭素原子に対して、部位特異的にメチル基を導入する酵素である。つまり、本発明のメチル基転移酵素は、上記一般式(1)で表される化合物から、下記一般式(2)で表される化合物を生成する。
【0019】
【化7】

上記一般式(1)及び(2)中、R1〜R5及びMの用語の意義は次の通りである。
【0020】
1は、基−CH(OH)(CH2)n1H(n1は0〜18の整数、好ましくは1又は2、更に好ましくは1を示す)、基−CH=CH(CH2)n2H(n2は0〜17の整数、好ましくは0又は1、更に好ましくは0を示す)、基−(CH2)n3H(n3は2〜19の整数、好ましくは2又は3、更に好ましくは2を示す)、又は基−CO(CH2)n4H(n4は0〜18の整数、好ましくは0又は1、更に好ましくは1を示す)を示す。R1として、好ましくは、1−ヒドロキシエチル基又はビニル基であり、特に好ましくは1−ヒドロキシエチル基である。
【0021】
2は、R2は、メチル基、ホルミル基、ヒドロキシメチル基、又はアセチルオキシメチル基を示す。R2として、好ましくは、メチル基、又はホルミル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0022】
3は、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基、ホルミル基、アセチル基、ビニル基、スチリル基、又はフェネチル基を示す。R3として、好ましくは、エチル基、プロピル基、イソブチル基、又はネオペンチル基であり、特に好ましくはエチル基である。
【0023】
4は、メチル基又はエチル基を示す。R4として好ましくはメチル基である。
【0024】
5は、水素原子、ブチル基、ファルネシル基、又は基−(CH2)n5H(n5は1〜18の整数、好ましくは1又は2、更に好ましくは1を示す)を示す。R5として、好ましくは水素原子又はメチル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0025】
Mは、2価の金属原子を示す。2価の金属原子として、具体的には、マンガン原子、亜鉛原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、銀原子、カドミウム原子等が例示される。これらの中で、好ましくは亜鉛原子である。中心金属として亜鉛を有する一般式(1)又は(2)で表される化合物は、マグネシウム原子等の場合に比して中心金属が脱離し難いという利点があり、有用である。
【0026】
本発明のメチル基転移酵素の基質となる一般式(1)の化合物として、好ましくは、
1が1−ヒドロキシエチル基、R2がメチル基、R3がエチル基、R4がメチル基、R5が水素原子である化合物、即ち、中心金属として2価の金属原子を有するBPheoide d(以下、「M-BPheoide d」と表記する)が挙げられる。特に好適な一般式(1)の化合物は、中心金属として亜鉛を有するBPheoide d(以下、「Zn-BPheoide d」と表記する)である。
【0027】
なお、上記一般式(1)の化合物は公知化合物であり、有機合成により取得することができ、また緑色イオウ光合成細菌Chlorobium類から抽出することにより得るもできる。
【0028】
本発明のメチル基転移酵素は、一般式(1)の化合物にメチル基を導入するに際して、メチル基供与体を必要とする。当該メチル基供与体としては、一般式(1)の化合物に対してメチル基を供与可能であるものであれば特に制限されないが、通常、S−アデノシルメチオニン(以下、「SAM」と表記する)を使用することができる。
【0029】
本発明のメチル基転移酵素は、以下の(A)又は(B)のアミノ酸配列を含んでなる酵素である:
(A)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(B)配列番号1に示すアミノ酸配列の1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
【0030】
ここで、上記(B)のアミノ酸配列において、欠失、置換若しくは付加の範囲としては、アミノ酸の上記変更によって、本発明のメチル基転移酵素の酵素活性が喪失しない範囲であれば、特に制限されない。(B)のアミノ酸配列として、配列番号1に示すアミノ酸配列との相同性が80%以上であることが好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。なお、相同性はLipman-Pearson法(Science, 227, 1435(1985))により計算される。
【0031】
上記(B)のアミノ酸配列において、アミノ酸の置換の具体的態様として、タンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、可溶性、極性等の点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換されたものが例示される。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族側鎖を有するアミノ酸に;リジン、アルギニン、ヒスチジンは塩基性アミノ酸に;アスパラギン酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類され、同じ群に分類されたアミノ酸から選択して置換することができる。
【0032】
また、本発明のメチル基転移酵素は、上記(A)又は(B)のアミノ酸配列を含んでいる限り、その他のタンパク質やペプチドのアミノ酸配列を含んでいてもよい。例えば、本発明のメチル基転移酵素の検出や精製を容易にするために、または他機能を付加するために、上記(A)又は(B)に記載のアミノ酸配列のN末端側やC末端側に別種の蛋白質やペプチドが直接的に若しくはリンカーペプチド等を介して付加されている融合タンパク質であってもよい。本発明のメチル基転移酵素の末端に付加可能な蛋白質又はペプチドとしては、例えば、His-tag、FLAG-tag、プロテインA、GST(グルタチオン S−トランスフェラーゼ)等が挙げられる。
【0033】
本発明のメチル基転移酵素は、当該酵素を産生する微生物(Chlorobium tepidum)を培養し、その培養物から精製することにより得ることができる。また、簡便には、本発明のメチル基転移酵素は、該酵素をコードするDNAを単離し、これを適当な宿主で発現させることにより得ることができる。
【0034】
上記メチル基転移酵素をコードするDNA
上記メチル基転移酵素をコードしている遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により取得することができる。当該遺伝子の取得方法の具体例を以下に記載する。遺伝子源として、緑色イオウ光合成細菌Chlorobium tepidumを用いて、該細菌から通常の方法によってゲノムDNAを抽出する。得られたゲノムDNAを適当な制限酵素で切断し、同一の制限酵素又は共通の切断末端を与える制限酵素で切断したプラスミド又はファージにリガーゼ等を用いて連結することによりゲノムDNAライブラリーを作製する。次いで、例えば、上記メチル基転移酵素の部分アミノ酸配列に対応した合成DNAプローブを用いたハイブリダイゼーション法、上記メチル基転移酵素の活性を測定する方法、上記メチル基転移酵素に対する抗体を用いた免疫学的方法等によって、上記メチル基転移酵素をコードしている遺伝子を取得することができる。
【0035】
上記メチル基転移酵素をコードする遺伝子として、具体的には、以下の(C)又は(D)のDNAを例示できる:
(C)配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、及び
(D)配列番号2示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、上記メチル基転移酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含むDNA。
【0036】
本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常のハイブリダイゼーション溶液中であれば68℃で行う条件が挙げられる。また、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中であれば42℃で行う条件が挙げられる。詳しくは、Molecular Cloning: A Laboratory Manual第2版第2巻に記載のサザンハイブリダイゼーションに用いられる条件が挙げられる。
【0037】
なお、配列番号2に示す塩基配列は、配列番号1に示すアミノ酸配列に対応している。
【0038】
配列番号2に示す塩基配列を含むDNAは、前記する遺伝子源から得られたゲノムDNAのライブラリーから単離することもできるが、配列番号2に示す塩基配列を基にして化学合成によって取得することもできる。
【0039】
また、上記(D)の変異したメチル基転移酵素のDNAは、化学合成法、遺伝子工学的手法、突然変異誘発法等の公知の方法で作成することができる。遺伝子工学的手法としては、配列番号2に示す塩基配列に対して、エキソヌクレアーゼを用いたDNA欠失導入、リンカー導入、位置指定突然変異導入、変異プライマーを用いたPCR法による塩基配列の改変などの公知の方法を挙げることができる。
【0040】
組換えベクター
上記メチル基転移酵素をコードする遺伝子を適当なベクターに連結することによって、該遺伝子を含有する組換えベクターを得ることができる。ベクターとしては、形質転換する宿主においてメチル基転移酵素を発現させ得るものであれば、特に制限されない。例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス等のベクターを用いることができる。具体的には、pET-15b、pBR322、pUC19、pKK233-2、pET11a等の大腸菌ベクター;pUB110、pC194、pE194、pTHT15、pBD16等のバチルス属細菌ベクター;Yip5、Yrp17、Yep24等の酵母用ベクター;のpcDNA、pBAC等の動物細胞用ベクターを例示できる。
【0041】
上記組換えベクターには、形質転換された細胞の選択を可能とするために、マーカー遺伝子が含まれていることが望ましい。当該マーカー遺伝子としては、例えば、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子、又は薬剤に対する抵抗遺伝子等を挙げることができる。また、上記組換えベクターには、宿主で上記遺伝子の発現を可能にするためのプロモーターやその他の制御配列(例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)が含まれていることが好ましい。当該プロモーターとして、具体的にはSV40、CMV、ie1、T7、lac、trp、tac等のプロモーターを例示できる。
【0042】
形質転換体
上記組換えベクターを用いて、宿主を形質転換することによって、該組換えベクターを含む形質転換体を得ることができる。宿主としては、上記メチル基転移酵素を産生可能なものであれば、真核生物及び原核生物のいずれを用いることもできる。例えば、大腸菌等の細菌、酵母、糸状菌、動物細胞等を挙げることができる。形質転換は、宿主の種類に応じて、公知の方法に従って行うことができる。例えば、宿主として細菌を使用する場合であれば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いることができる。
【0043】
メチル基転移酵素の製造
上記形質転換体を培養し、培養物からメチル基転移酵素を採取することによって、上記メチル基転移酵素を取得することができる。上記形質転換体の培養は、宿主の種類に応じた通常の方法を採用すればよい。具体的には、炭素源、窒素源、その他微量栄養物を含む培地で培養を行う方法を挙げることができる。培養は、液体培養であっても、また固体培養であってもよい。培養物からメチル基転移酵素の採取は、例えば、硫安分画、各種のクロマトグラフィー等の工程に供して単離、精製することにより行うことができる。
【0044】
一般式(2)で表される化合物の製造
上記メチル基転移酵素を、メチル基供与体の存在下で、一般式(1)で表される化合物に作用させることにより、当該化合物の第20位の炭素原子にメチル基を導入でき、これによって一般式(2)で表される化合物を取得することができる。
【0045】
当該一般式(2)の化合物の製造において、使用されるメチル基供与体、一般式(1)の化合物については、前記メチル基転移酵素の項に記載する通りである。
【0046】
当該一般式(2)の化合物の製造において、上記メチル基転移酵素を作用させる際の条件は、該酵素が活性を発揮して、一般式(1)の化合物の第20位の炭素原子にメチル基を導入できる条件である限り、特に制限されるものではない。
【0047】
具体的には、メチル基転移酵素、一般式(1)の化合物、及びメチル基供与体を含有する反応溶液を調製し、該反応溶液を例えば20〜60℃、好ましくは30〜50℃、更に好ましくは37〜47℃程度に加温することによって、一般式(2)の化合物を製造する方法が例示される。
【0048】
当該反応液中のメチル基転移酵素と一般式(1)の化合物の割合(反応開始時)としては、反応時間や使用する酵素の活性等によって異なるが、一例として、1モルの一般式(1)の化合物に対して、メチル基転移酵素が0.001〜2モル、好ましくは0.1〜1.5モル、更に好ましくは0.2〜1モルとなる割合が挙げられる。
【0049】
また、当該反応液中の一般式(1)の化合物とメチル基供与体の割合(反応開始時)としては、例えば、1モルの一般式(1)の化合物に対して、メチル基供与体が0.5〜100モル、好ましくは1〜50モル、更に好ましくは10〜30モルとなる割合が挙げられる。
【0050】
反応開始時の反応液中の一般式(1)の化合物の濃度としては、例えば0.001〜20μM、好ましくは0.1〜10μM、更に好ましくは0.5〜5μMが挙げられる。
【0051】
また、当該一般式(2)の化合物の製造は、例えばpH6〜9、好ましくはpH6.5〜8.5、更に好ましくはpH7〜8の範囲内にあるpH条件下で行われる。
【0052】
当該一般式(2)の化合物の製造における酵素反応時間については、特に制限されず、使用するメチル基転移酵素の種類や量、温度、一般式(1)の化合物の種類や量等に応じて、一般式(2)の化合物が目的の量又は収率で得られるような時間を適宜設定すればよい。酵素反応時間の一例として、0.5〜6時間、好ましくは0.5〜4時間、更に好ましくは1〜3時間程度を挙げることができる。
【0053】
本発明の製造方法により得られる一般式(2)の化合物は、BChlを合成するため原料化合物や光デバイスや光センサーの材料として使用される。特に、Mが亜鉛原子である一般式(2)の化合物は、中心金属として他の金属原子を有するものに比して、中心金属が安定に保持される。そのため、Mが亜鉛原子である一般式(2)の化合物は、過酷な条件下での使用に耐え得るという利点があり、それ自体、光デバイスや光センサーとしての応用や、BChlを合成するための有機合成反応の原料化合物として好適である。
【0054】
前述するように、上記メチル基転移酵素は、一般式(1)の化合物の中でもM-BPheoide dに対して好適に作用して、中心金属として2価の金属を有するBPheoide c(以下、「M-Bpheoide c」と表記する)を生成するので、本発明の一般式(2)の化合物の製造方法は、好適には、M-BPheoide cの製造方法として実施される。
【発明の効果】
【0055】
本発明のメチル基転移酵素は、一般式(1)の化合物の20位の炭素原子に対して、部位特異的にメチル基を導入することができる。故に、本発明のメチル基転移酵素によれば、有機合成反応では困難であった一般式(1)の化合物への部位特異的なメチル基の導入が容易になり、所定の部位にメチル基が導入された一般式(2)の化合物が提供される。一般式(2)の化合物は、BChlの合成に有用な原料化合物や、光デバイスや光センサー等の構成材料として有用である。
【0056】
一般式(2)の化合物の中でも、Mが亜鉛原子のものは、中心金属(亜鉛)が脱離しにくく、特に有用性が高い化合物である。しかしながら、緑色イオウ光合成細菌には、中心金属としてMgを有する色素化合物が存在するが、亜鉛を中心金属とする色素化合物(ポルフィリン型化合物)については存在していないと考えられており、亜鉛を中心金属とするポルフィリン型化合物に対して如何にしてメチル基を導入すればよいかについては、従来全く知られていなかった。この点において、本発明は、初めて、Mが亜鉛原子である一般式(2)の化合物を製造できる手段を提供するものであり、有用性が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明について、実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1(メチル基転移酵素遺伝子のクローニング)
(i)Chlorobium tepidumの培養
・培地の調製
CH3COONH4 0.5 g、Solution1(1L中に、EDTA-2Na 1 g、MgSO4・7H2O 20 g、CaCl2・2H2O 5 g、NaCl 40 g、KH2PO4 50 g、及びNH4Cl 40 g含有)10 ml、Solution2 (1L中に、EDTA-2Na 5.2 g、CoCl2・6H2O 190 mg、MnCl2・4H2O 100 mg、FeCl2・4H2O 1.5 g、CuCl2・2H2O 17 mg、Na2MoO4・2H2O 188 mg、ZnCl2 70 mg、VOSO4・2H2O 30 mg、NiCl2・6H2O 25 mg、H3BO3 6 mg、Na2WO4・2H2O 2 mg、及びNaHSeO3(Na2SeO3) 2 mg含有)1 ml、Solution3 (1L中に、Vitamin B12 20 g含有)1 mlが入った溶液(1 L)をオートクレーブにて滅菌した。次いで、これに、1N NCl 5.4 ml及びC・S-solution (36ml中に、NaHCO3 2 g、Na2S2O3・5H2O 1 g、及びNa2S・9H2O 0.6 g含有)36mlを添加し、フィルター濾過滅菌を行って、培地を調製した。
・培養
上記で得られた培地を密閉試験管に入れ、Chlorobium tepidum 株WT2321を該培地の1/100〜1/10量植えついで密閉し、2〜6時間暗所に置いてから(室温)、40〜45℃にて光を照射しながら1〜2日培養を行った(嫌気、光合成培養)。
【0058】
(ii)染色体DNAの調製
培養終了後、培養液3 mlから15000 rpm、5分間(4℃)の遠心分離により菌体を集菌した。得られた菌体を60 mlの滅菌蒸留水に縣濁した。この縣濁液を液体窒素につけ、完全に凍らせた後の室温にて溶かした。この操作を再度繰り返した。次いで、この懸濁液に、15 mlのProteinase K溶液(1 mg/ml)と50 mlのTTNE buffer(40 mM Tris、1% Tween20、0.2% Nonidet P-40、0.2 mM EDTA: pH 10)を加え、混合した。この溶液を60℃で20分間インキュベーションした後、95℃で10分間インキュベーションした。その後、15000 rpm、5分間(4℃)の遠心分離により、上清を得た。この上清をフェノール/クロロフォルム(1/1, v/v)処理し、エタノール沈殿を行うことで、乾燥状態の染色体DNAを得た。
【0059】
(iii)メチル基転移酵素遺伝子の増幅
配列番号2の塩基配列(以下、「bchU」と表記する)を含むDNAをPCR法により増幅した。5'末端側に対応するプライマーとして、NdeIの認識サイトを有する5'-TCATATGATGAGCAACAATGACCTCCT-3'を、また3'末端側に対応するプライマーとして、BamHIの認識サイトを有する5'-AGGATCCTTACGGCTTCACAGCCTGAA-3'を用いて、PCR反応により配列番号2に示す塩基配列を含むDNAを増幅させた(PCR条件:94℃-2分を1サイクル。94℃-15秒、57℃-30秒、68℃-1分を30サイクル。68℃-5分、4℃-∞を1サイクル。TOYOBO、KOD-Plus-を使用。得られたPCR断片は平滑末端となる)。PCR反応により増幅されたbchUを含むDNAを含有する反応溶液に対して、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いてプライマーの除去及びバッファー置換を行った。
【0060】
(iv)メチル基転移酵素遺伝子を含有するベクター、及びそれを用いた形質転換体の構築
得られたDNA断片を制限酵素SmaI(BioLabs社製)で処理したpUC118ベクター(TAKARA社製)に挿入し、pUC-bchUを得た。得られたpUC-bchUはシークエンスを行い、PCRで増幅されたbchUにエラーがないことを確認した。pUC-bchUを制限酵素NdeI(BioLabs社製)とBamHI(BioLabs社製)で処理し、bchUを含む約1 kbpのDNA断片を得た。この断片をpET-15bベクター(Novagen社製)のNdeIとBamHIサイトに挿入し、pET-His6-bchUを得た。pET-His6-bchUを発現用宿主であるE. coli BL21(DE3)(Novagen社製)に導入し、形質転換体を得た。
【0061】
(v)メチル基転移酵素(以下、「BchU」と表記する)の発現及び精製
形質転換体のコロニーをLB broth(0.5% yeast extract、0.5% NaCl、1% Bacte tryptone)にアンピシリン(最終濃度で100 μg/ml)を加えた培地50 mlに植えつぎ、37℃で一晩培養した(12〜20時間)。次いで、更に、得られた培養液の全量を5 LのLB broth(アンピシリン100 μg/ml)に植えつぎ、ジャーファメンター(いわしやSanki社製)にて37℃、2時間培養した。2時間後、IPGTを最終濃度で1 mMとなるように加え、その後一晩(16〜20時間)37℃にて培養した。
【0062】
培養終了後、培養液5 Lから3000 rpm、30分間(4℃)の遠心分離により菌体を集菌した。得られた菌体のうち、約10 gを60 ml のbuffer A (50 mM Tris(hydroxymethyl)aminomethane (Tris)/HCl (pH 7.8), 300 mM NaCl, 20 mM Imidazole)に縣濁し、ソニケーションにて1時間、細胞破砕を行った(4〜12℃)。細胞破砕溶液から15000 rpm、30分間(4℃)の遠心分離により、可溶性タンパク質の画分を得た(上清画分)。可溶性画分に5 mlのNi-NTA agarose(QIAGEN社製)を加え、攪拌しながら4℃でインキュベーションすることでBchU(His-tagつき)をNi-NTAに吸着させた。この溶液を4000 rpm、20秒(4℃)の遠心分離を行うことでNi-NTA agaroseを回収した。回収したNi-NTA agaroseを40 mlのbuffer Aに縣濁し、4000 rpm、20秒(4℃)の遠心分離で再度回収することで洗浄を行った。この操作を5回繰り返した。同様に、30 mlのbuffer B (50 mM Tris/HCl (pH 7.8), 300 mM NaCl, 50 mM Imidazole)にて3回洗浄を行った。回収されたNi-NTA agaroseに30 mlのbuffer C (50 mM Tris/HCl (pH 7.8), 300 mM NaCl, 250 mM Imidazole)を加えて縣濁し、Ni-NTA agaroseとの結合からはずれたBchUを4000 rpm、20秒(4℃)の遠心分離にて回収した(上清画分)。この操作を3回行った。回収されたBchUを含む溶液は、限外ろ過によって5 mlまで濃縮を行い、ゲルろ過クロマトグラフィー(Amarsham Biotech社、AKTA explorer使用。カラム:同社、HiPrep 16/60 Sephacryl S-200 HR)によってさらに精製を行った(溶出にはbuffer D (50 mM Tris/HCl (pH 7.8), 150 mM NaCl)を用いた)。最終的に精製されたBchUについては、SDS-PAGE(12.5%アクリルアミドゲル)で約40 kDaのバンドが得られたことにより確認を行った(95%以上がこのバンドに由来した。多少のマイナーバンドも見られた)。
【0063】
斯くして得られた画分は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のN末端側にHis-tag(MGSSHHHHHHSSGLVPRGSM)(アミノ酸の一文字表記を示す)が付与されているメチル基転移酵素であった。
【0064】
実施例2 Zn-BPheoide cの製造
実施例1で得られたメチル基転移酵素を用いて、以下の方法に従ってZn-BPheoide cの製造を行った。
【0065】
5mlのTris buffer(50 mM Tris-HCl(pH 7.8)、150 mM NaCl)中で、Zn-BPheoide dが2μM、メチル基転移酵素が0.4μM、及びSAMが10μMとなるように、それぞれ添加し、40℃の温度条件下で暗所にて1時間反応を行った。また、コントロール実験として、S−アデノシルメチオニン(SAM)又はメチル基転移酵素を添加しなかったこと以外は、上記同様の条件で反応を行った。
【0066】
得られた結果を図1に示す。図1は、Zn-BPheoide dを用いて得られた反応生成物を、ジアゾメタン処理を行うことで、17位上のカルボン酸をメチルエステルに変えた(一般式(1)及び(2)上のR5をHからCH3にする)後の化合物のHPLC(逆相クロマトグラフィー;検出波長425 nm)のクロマトグラム(溶出パターン)である。この結果、SAMの存在下で、実施例1で得られたメチル基転移酵素をZn-BPheoide dに作用させることによって、Zn-BPheoide dの20位の炭素原子に対して部位特異的にメチル基を導入できること、即ち、Zn-BPheoide cを製造できることが確認された。
【0067】
実施例3 Zn-BPheoide c(R5=CH3)の製造
実施例1で得られたメチル基転移酵素を用いて、以下の方法に従って、Zn-BPheoide cの17位上のカルボン酸をメチルエステルにした化合物(これを「Zn-BPheoide c(R5=CH3)」と表記する)の製造を行った。
【0068】
5mlのTris buffer(50 mM Tris-HCl(pH 7.8)、150 mM NaCl)中で、Zn-BPheoide dの17位上のカルボン酸をメチルエステルにした化合物(以下、「Zn-BPheoide d(R5=CH3)」と表記する)が5μM、メチル基転移酵素が1μM、及びSAMが25μMとなるように、それぞれ添加し、実施例2と同様の条件で反応を行った。
【0069】
得られた結果を図2に示す。図2は、Zn-BPheoide d(R5=CH3)を用いて得られた反応生成物のHPLC(逆相クロマトグラフィー;検出波長425 nm)のクロマトグラムである。この結果、SAMの存在下で、実施例1で得られたメチル基転移酵素をZn-BPheoide d(R5=CH3)に作用させることで、Zn-BPheoide c(R5=CH3)を製造できることが確認された。
【0070】
実施例4 Zn-BPheoide c(R1=CH2OH/R5=CH3)の製造
実施例1で得られたメチル基転移酵素を用いて、以下の方法に従って、Zn-BPheoide c(R5=CH3)の3位上の1−ヒドロキシエチル基をヒドロキシメチル基にした化合物(これを「Zn-BPheoide c(R1=CH2OH/R5=CH3)」と表記する)の製造を行った。
【0071】
5mlのTris buffer(50 mM Tris-HCl(pH 7.8)、150 mM NaCl)中で、Zn-BPheoide d(R5=CH3)の3位上の1−ヒドロキシエチル基をヒドロキシメチル基にした化合物(以下、「Zn-BPheoide d(R1=CH2OH/R5=CH3)」と表記する)が5μM、メチル基転移酵素が1μM、及びSAMが25μMとなるように、それぞれ添加し、実施例2と同様の条件で反応を行った。この結果、SAMの存在下で、実施例1で得られたメチル基転移酵素をZn-BPheoide d(R1=CH2OH/R5=CH3)」に作用させることで、Zn-BPheoide c(R1=CH2OH/R5=CH3)」を製造できることが確認された。
【0072】
実施例5 Zn-BPheoide c(R1= CH=CH2/R5=CH3)の製造
実施例1で得られたメチル基転移酵素を用いて、以下の方法に従って、Zn-BPheoide c(R5=CH3)の3位上の1−ヒドロキシエチル基をビニル基にした化合物(これを「Zn-BPheoide c(R1= CH=CH2/R5=CH3)」と表記する)の製造を行った。
【0073】
5mlのTris buffer(50 mM Tris-HCl(pH 7.8)、150 mM NaCl)中で、Zn-BPheoide d(R5=CH3)の3位上の1−ヒドロキシエチル基をビニル基にした化合物(以下、「Zn-BPheoide d(R1= CH=CH2/R5=CH3)」と表記する)が5μM、メチル基転移酵素が1μM、及びSAMが25μMとなるように、それぞれ添加し、実施例2と同様の条件で反応を行った。この結果、SAMの存在下で、実施例1で得られたメチル基転移酵素をZn-BPheoide d(R1= CH=CH2/R5=CH3)」に作用させることによって、Zn-BPheoide c(R1= CH=CH2/R5=CH3)」を製造できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、実施例2において得られた反応生成物のHPLCのクロマトグラムである。ピーク1はZn-BPheoide dの31-R異性体、ピーク2はZn-BPheoide dの31-S異性体、ピーク3はZn-BPheoide cの31-R異性体及びピーク4はZn-BPheoide cの31-S異性体をそれぞれ示す。図1中、A〜Eは、それぞれ下記の対象物を測定したものである: A 未反応のZn-BPheoide dをメチルエステル化したもの B 別途合成したZn-BPheoide cをメチルエステル化したもの C 実施例1で得られたメチル基転移酵素、Zn-BPheoide d、及びSAMを反応させた反応生成物をメチルエステル化したもの D Zn-BPheoide d、及びSAMを反応させた反応生成物をメチルエステル化したもの E 実施例1で得られたメチル基転移酵素、及びZn-BPheoide dを反応させた反応生成物をメチルエステル化したもの
【図2】図2は、実施例3において得られた反応生成物のHPLCのクロマトグラムである。ピーク1はZn-BPheoide d(R5=CH3)の31-R異性体、ピーク2はZn-BPheoide d(R5=CH3)の31-S異性体、ピーク3はZn-BPheoide c(R5=CH3)の31-R異性体及びピーク4はZn-BPheoide c(R5=CH3)の31-S異性体をそれぞれ示す。図2中、A〜Cは、それぞれ下記の対象物を測定したものである: A 未反応のZn-BPheoide d(R5=CH3) B 別途合成したZn-BPheoide c(R5=CH3) C 実施例1で得られたメチル基転移酵素、BPheoide d(R5=CH3)、及びSAMを反応させたもの

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)配列番号1に示すアミノ酸配列、又は(B)配列番号1に示すアミノ酸配列の1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含んでなる、
一般式(1)で表される化合物の20位の炭素原子にメチル基を転移するメチル基転移酵素:
【化1】

[式中、R1は、基−CH(OH)(CH2)n1H(n1は0〜18の整数を示す)、基−CH=CH(CH2)n2H(n2は0〜17の整数を示す)、基−(CH2)n3H(n3は2〜19の整数を示す)、又は基−CO(CH2)n4H(n4は0〜18の整数を示す)を示し、
2は、メチル基、ホルミル基、ヒドロキシメチル基、又はアセチルオキシメチル基を示し、
3は、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基、ホルミル基、アセチル基、ビニル基、スチリル基、又はフェネチル基を示し、
4は、メチル基又はエチル基を示し、
5は、水素原子、ブチル基、ファルネシル基、又は基−(CH2)n5H(n5は1〜18の整数を示す)を示し、
Mは、2価の金属原子を示す。]。
【請求項2】
請求項1に記載のメチル基転移酵素をコードするDNA。
【請求項3】
以下の(C)又は(D)のDNAである、請求項2記載のDNA。
(C)配列番号2に示す塩基配列を含むDNA、
(D)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、一般式(1)で表される化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びMは、前記と同じ)の20位の炭素原子をメチル化するメチル基転移酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含むDNA。
【化2】

【請求項4】
請求項2又は3に記載のDNAを含有する組換えベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
【請求項6】
メチル基供与体の存在下で、一般式(1)で表される化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びMは、前記と同じ)に、
【化3】

請求項1に記載のメチル基転移酵素を作用させることを特徴とする、一般式(2)で表される化合物(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びMは、前記と同じ)の製造方法。
【化4】

【請求項7】
式中、Mが亜鉛原子である、請求項6に記載の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−55132(P2006−55132A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242888(P2004−242888)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】