説明

メチレンジフェニルジイソシアネートの製造方法

【課題】MDI調製のための経費を増加することなく、収率、異性体比および同族体比並びにその制御を低下することなく、得られるMDIの品質に悪影響を及ぼすことなく、前駆体MDAの調製で得られる廃液およびこの廃液を介して総合的工程の外に排出される塩負荷量を有意に減らすかまたは完全に回避する、MDIの総合的製造方法を見出す。
【解決手段】A)塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させて、MDA混合物を生成し、塩酸をアルカリ金属水酸化物で中和し、B)MDA混合物とホスゲンとを反応させて、MDI混合物並びに塩化水素を生成する、ことを含むメチレンジフェニルジイソシアネートの製造方法であって、C)A)で中和された塩酸をアルカリ金属塩化物含有溶液として分離し、電気化学的酸化に供給して、塩素、アルカリ金属水酸化物および水素を生成し、D)C)で生成した塩素を使用して、B)で使用されるホスゲンを調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させて、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンの混合物を得、得られたジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンの混合物とホスゲンとを反応させて、ジフェニルメタン系ジイソシアネートおよびポリイソシアネートの混合物を得ることによる、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン化学にとって、芳香族ジイソシアネートは、重要かつ多用途の原料である。ポリウレタン化学では、トリレンジイソシアネート(TDI)およびMDIが最も重要な工業用イソシアネートである。
【0003】
一般用語「MDI」は、メチレン(ジフェニルジイソシアネート)およびポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、即ちジフェニルメタン系ポリイソシアネートに対する総称として、この技術分野で、および本発明の目的のため使用される。ジフェニルメタン系ポリイソシアネートは、特に、以下の式:
【化1】

[式中、xは2〜nであり、nは2以上の自然数である。]
で示される化合物および化合物混合物である。
【0004】
用語「メチレン(ジフェニルジイソシアネート)」は、異性体の2,2’−メチレン(ジフェニルジイソシアネート)(2,2’−MDI)、2,4’−メチレン(ジフェニルジイソシアネート)(2,4’−MDI)、および4,4’−メチレン(ジフェニルジイソシアネート)(4,4’−MDI)を包含する。これらの異性体をまとめて「単量体MDI」と称する。用語「ポリメチレン−ポリフェニレンポリイソシアネート」は、単量体MDIおよび単量体MDI高級同族体を含む「重合体MDI」(PMDI)を包含する。
【0005】
工業上適切な製造方法の全てにおいて、MDIは、対応するジフェニルメタン系ポリアミンのホスゲン化により得られる。MDIの合成は通常、二段階法で実施される。まず、アニリンとホルムアルデヒドとを縮合して、粗MDAとして知られる低重合体および異性体のメチレン(ジフェニルジアミン)およびポリメチレンポリアミンの混合物を得る。続く第二段階で、この粗MDAを、それ自体既知の方法によりホスゲンと反応させ、粗MDIとして知られる対応する低重合および異性体のメチレン(ジフェニルジイソシアネート)およびポリメチレン−ポリフェニレンポリイソシアネートの混合物を得る。このとき、異性体および低重合体の組成は変化しない。その後、二環化合物を、通常、更なる処理工程、例えば蒸留または結晶化により分離し、残留物として重合体MDI(PMDI)を残す。
【0006】
以下で略してMDAとも称するジフェニルメタン系ポリアミンの連続式、回分式または半連続式製造方法は、数々の特許および刊行物に記載されている(例えば、H.J. Twitchett, Chem. Soc. Rev. 3(2), 209(1974)、M.V. Moore: Kirk-Othmer Encycl. Chem. Technol., 第3版、ニューヨーク、2, 338-348(1978)参照)。MDAの調製は、通常、酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させることにより実施される。酸触媒として通常塩酸を使用し、従来技術に従って、酸触媒を、製造工程の最後かつ最終後処理工程(例えば蒸留による過剰アニリンの除去)の前に、塩基(典型的には水酸化ナトリウム溶液)の添加によって中和し、消費する。一般に中和剤の添加は、得られる中和混合物が、ジフェニルメタン系ポリアミンおよび過剰アニリンを含有する有機相と、残留有機成分と一緒に塩化ナトリウムを含有する水相とに分離できるように実施する。水相は一般に、有機成分の除去後、無機物含有廃液として処分される。
【0007】
概説した方法により調製される粗MDAの組成、および必然的にそれら粗MDAから調製される粗MDIの組成は、用いた反応条件によって広範に変化できることが知られている。この点において、反応成分であるアニリンとホルムアルデヒドとのモル比(以下、略してA/F比とも称する)および添加触媒量(通常プロトン化度(添加触媒と供給アニリンとのモル比)としても記載されている)が、特に重要である。
【0008】
高A/F比により、モノマー含有量が高い粗MDAを得ることが可能になり、高プロトン化度は、対応する4,4’−MDIの前駆体として特に工業的に重要である4,4’−MDAの生成を促進する。しかしながら、いずれの方法も、第一に大きな経済的損失を意味し、第二に予想される環境汚染をもたらす、大量の塩を生成する。
【0009】
MDAの調製で得られる廃液および廃液を介して廃棄される塩負荷を顕著に減らすかまたは完全に回避する製造方法を開発する試みは存在しない。
【0010】
DE 2 238 920 A1は、水および酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを縮合させることによる、ジフェニルメタン系ポリアミンの製造方法を開示している。同方法では、完全に反応させた含水縮合混合物を疎水性溶媒で抽出し、得られた溶媒相を後処理してポリアミンを得、水相を、アニリンおよびホルムアルデヒドの添加後、工程の最初に再循環させる。DE 2 238 920 A1の教示によれば、出発物質の反応により生成した縮合水および出発物質と一緒に系に入った過剰の水は、適当な時点で系から排出できる。出発物質と一緒に導入され、かつアニリンとホルムアルデヒドとの反応時に生成した水しか本質的に含有しない廃液が、同方法では得られる。水酸化ナトリウムは使用されていない。この方法の欠点は、抽出時に使用される付加的有機溶媒の使用および蒸留によるその除去が、装置およびエネルギーに関して大きな費用を要することである。また、同方法では、大量の水相を循環しなければならず、同様に蒸留により後処理しなければならない。
【0011】
後処理しなければならない水相の用いた均一触媒の同時再循環による削減は、DE 2 426 116 A1の主題である。DE 2 426 116 A1の教示によれば、多段階でアニリンとホルムアルデヒドとの反応を実施し、第一段階では、触媒の不存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させて初期縮合物(「アミナール」)を生成し、反応後に水の分離を完了し、次いで、反応条件下で不活性なままである極性有機溶媒の存在下、アニリンまたはそのホルムアルデヒドとの縮合生成物の酸塩の存在下で初期縮合物を反応させ、最後に、反応混合物からの使用した触媒を水で洗い、該触媒を初期縮合物の反応段階に再循環することが特に有利である。ここでの欠点もまた、付加的有機溶媒の使用、並びに結果的に必要とされる抽出および蒸留のための装置およびエネルギーに関する大きな費用である。
【0012】
初期縮合物の中間体生成は、初期縮合物をジフェニルメタン系ポリアミンに転化するためのクレー、ゼオライトまたは珪藻土に基づいた不均一酸触媒の使用と共に、DE 2 623 681 A1によっても開示されている。DE 2 623 681 A1の教示によれば、反応完了後に、触媒は、濾過または遠心分離によってポリアミン混合物から分離でき、初期縮合物の反応段階に再循環できる。しかしながら、転位反応のため、アミナールを面倒な予備乾燥に付さなければならない。また、同方法の更なる欠点は、反応生成物の触媒への蓄積であり、これは、一般に触媒の寿命を不十分なものにする。
【0013】
最終生成物中に相当残渣量の重合体MDA塩基または不完全転位中間生成物(「アミノベンジルアニリン」)を得ることなく、固体酸触媒を用い、同時に工業的方法に必要とされる十分長い触媒寿命を有する固体を用いた触媒作用の利点を利用して、アニリンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の、ポリマーが少ない二環MDAへの転化を実施することは、同様に、EP 1 257 522 B1の教示の主題である。しかしながら、EP 1 257 522 B1に開示されている方法の欠点は、同様に、初期縮合物に必要なコストのかかる乾燥、並びに使用する触媒への反応生成物の蓄積およびそれが招く寿命の短縮である。
【0014】
US 7,105,700 B2もまた、触媒として表面改質ゼオライトを用いた、アニリンと添加ホルムアルデヒドとの初期反応生成物であるアミナールの転位における不均一触媒の使用を開示している。しかしながら、US 7,105,700 B2の教示によれば、アミナールの面倒な予備乾燥は同様に必要であり、工業規模に必要な使用触媒の寿命は、反応完了後に蒸留によって除去されなければならない付加的溶媒の使用によって達成され、これらは同様に不利である。
【0015】
固体状酸触媒の同時回収を伴った均一触媒の利点は、WO 2005/007613 A1に開示されている。WO 2005/007613 A1は、アニリンとメチレン基供給剤との反応によるジフェニルメタン系ポリアミンの製造方法を開示している。同方法では、転化反応完了後、触媒として使用された酸を、例えばイオン交換体への吸着によって反応混合物から除去し、続いて吸着剤の再生により回収する。この方法の欠点は、使用する触媒の完全な吸着および脱着のための大きな費用である。従って、反応混合物からの触媒の完全除去を達成するため、WO 2005/007613 A1は、最後に残った微量の酸を除去するための、通例の塩基性中和剤による後の中和を開示している。この既知の方法もまた、工業技術的に高い費用を要する。
【0016】
要約すれば、廃液を伴って排出される塩負荷量を最小にする、従来技術から知られている製造方法では、MDA調製のための費用が増加すると言える。不均一触媒を用いた製造方法では、触媒の寿命および再生が一般に大問題となり、一方、均一触媒を用いた製造方法では、抽出方法が付加的な材料および装置の使用を必要とする。少量の均一触媒しか使用しない標準的な製造方法は、所望の幅の異性体組成を与えず、そのうえ、装置およびエネルギーに関する高い費用を要する後処理が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】DE 2 238 920 A1
【特許文献2】DE 2 426 116 A1
【特許文献3】DE 2 623 681 A1
【特許文献4】EP 1 257 522 B1
【特許文献5】US 7,105,700 B2
【特許文献6】WO 2005/007613 A1
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】H.J. Twitchett, Chem. Soc. Rev. 3(2), 209(1974)
【非特許文献2】M.V. Moore: Kirk-Othmer Encycl. Chem. Technol., 第3版、ニューヨーク、2, 338-348(1978)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、MDIの総合的製造方法であって、MDI調製のための経費を増加することなく、収率、異性体比および同族体比並びにその制御を低下することなく、得られるMDIの品質に悪影響を及ぼすことなく、前駆体MDAの調製で得られる廃液およびこの廃液を介して総合的工程の外に排出される塩負荷量を有意に減らすかまたは完全に回避する方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の態様は、
A)触媒としての塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させて、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミン(MDA)の混合物を生成し、続いて前記塩酸をアルカリ金属水酸化物で少なくとも部分的に中和し;
B)前記ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンの混合物とホスゲンとを反応させて、ジフェニルメタン系ジイソシアネートおよびポリイソシアネート(MDI)の混合物並びに塩化水素を生成する;
ことを含むメチレンジフェニルジイソシアネートの製造方法であって、
C)A)で中和された塩酸をアルカリ金属塩化物含有溶液として分離し、続いて、その少なくとも一部を直接電気化学的酸化に供給して、塩素、アルカリ金属水酸化物および任意に水素を生成し;
D)C)で生成した塩素の少なくとも一部を使用して、B)で使用されるホスゲンを調製する方法である。
【0021】
本発明の更に別の態様は、A)におけるアルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである前記方法である。
【0022】
本発明の更に別の態様は、
A1)出発物質と一緒に導入されたか、または触媒としての塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させてジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミン(MDA)の混合物を生成する間に生じた水を、場合により少なくとも部分的に反応混合物から除去し;
A2)A1)で生成した反応混合物の中和後、アルカリ金属塩化物を含んでなる水溶液、並びに前記したジアミンとポリアミンとの混合物を含んでなる有機相を得;
A3)A2)からの有機相を、水相から分離し、後処理して、前記ジアミンとポリアミンとの混合物を得;
A4)A3)の後に残留するアルカリ金属塩化物含有水溶液を、場合により少なくとも部分的に、A1)で除去された水および/または工程A3)での前記有機相の後処理により得た水相と混合し;精製し;少なくとも部分的に電気化学的酸化C)に供給する、前記方法である。
【0023】
本発明の更に別の態様は、C)で生成したアルカリ金属水酸化物の少なくとも一部を、前記塩酸の中和のためにA)に再循環させる、前記方法である。
【0024】
本発明の更に別の態様は、B)で生成した塩化水素の少なくとも一部を塩酸に転化し、その少なくとも一部をA)において前記触媒として使用する、前記方法である。
【0025】
本発明の更に別の態様は、A)で生成したアルカリ金属塩化物含有水溶液中のアルカリ金属塩化物の濃度が2〜24重量%である、前記方法である。
【0026】
本発明の更に別の態様は、A)で生成したアルカリ金属塩化物含有水溶液中のアルカリ金属塩化物の濃度が5〜15重量%である、前記方法である。
【0027】
本発明の更に別の態様は、前記アルカリ金属塩化物含有水溶液を、A4)での精製前に8未満のpHに調整する、前記方法である。
【0028】
本発明の更に別の態様は、前記アルカリ金属塩化物含有水溶液を、酸化C)の前に200ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは20ppm未満のTOC値に調整する、前記方法である。
【0029】
本発明の更に別の態様は、前記アルカリ金属塩化物含有水溶液を、電気化学的酸化に使用する前に、水の除去により、および/または固体状もしくは濃縮溶液としてのアルカリ金属塩化物の添加により、5重量%超、好ましくは10重量%超、特に好ましくは20重量%超のアルカリ金属塩化物含有量に調整する、前記方法である。
【0030】
本発明の更に別の態様は、A)におけるアニリン/ホルムアルデヒド反応を30%未満、好ましくは20%未満、特に好ましくは15%未満、極めて好ましくは10%未満のプロトン化度で実施する、前記方法である。
【0031】
本発明の更に別の態様は、C)における電気化学的酸化を、イオン交換膜を用いておよび/または陰極としてガス拡散電極を用いて、アルカリ金属塩化物電気分解として実施する、前記方法である。
【0032】
本発明の更に別の態様は、アルカリ金属塩化物電気分解を、イオン交換膜を用いて膜電解法により実施し、アルカリ金属塩化物含有溶液のアルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであり、イオン交換膜がナトリウム1molあたり水3mol超、好ましくはナトリウム1molあたり水4mol超、特に好ましくはナトリウム1molあたり水5mol超の水輸送能を有する、前記方法である。
【0033】
本発明の更に別の態様は、アルカリ金属塩化物電気分解に供給されるアルカリ金属塩化物溶液を、電気分解前に7未満のpH、好ましくは6未満のpHに調整する、前記方法である。
【0034】
本発明の更に別の態様は、電解槽を出るアルカリ金属塩化物含有溶液中のアルカリ金属塩化物の濃度が100〜280g/l、好ましくは110〜220g/lである、前記方法である。
【0035】
本発明の更に別の態様は、電気分解から得たアルカリ金属水酸化物溶液の濃度が13〜33重量%、好ましくは20〜30重量%である、前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の目的は、本発明の方法によって達成できる。本発明は、少なくとも以下の工程:
A)触媒としての塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させて、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミン(MDA)の混合物を得、続いて塩酸をアルカリ金属水酸化物(好ましくは水酸化ナトリウム)で少なくとも部分的に中和する工程;
B)工程A)で得たジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンの混合物とホスゲンとを反応させて、ジフェニルメタン系ジイソシアネートおよびポリイソシアネート(MDI)の混合物並びに塩化水素を得る工程;
を含むメチレンジフェニルジイソシアネートの製造方法であって、
C)工程A)で中和された塩酸を、アルカリ金属塩化物含有溶液として分離し、続いて、少なくとも部分的に電気化学的酸化に供給して、塩素、アルカリ金属水酸化物および任意に水素を生成し;
D)工程C)で生成した塩素の少なくとも一部を使用して、工程B)で使用されるホスゲンを調製することを特徴とする方法を提供する。
【0037】
本発明の目的のためのメチレンジフェニルジイソシアネートは、メチレン(ジフェニルジイソシアネート)およびポリメチレン−ポリフェニレンポリイソシアネート、即ちジフェニルメタン系ポリイソシアネートである。ジフェニルメタン系ポリイソシアネートは、特に、以下の式:
【化2】

[式中、xは2〜nであり、nは2以上の自然数である。]
で示される化合物および化合物混合物である。
【0038】
新規な方法は、好ましくは、少なくとも以下の工程:
A1)適切な場合は、出発物質と一緒に導入されたかまたは反応中に生じた水を反応混合物から少なくとも部分的に除去しながら、塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させて、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミン(「MDA」)を含有する反応混合物を得る工程;
A2)A1)で生成した反応混合物をアルカリ金属水酸化物水溶液で中和して、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンの混合物を含有する有機相、並びにアルカリ金属塩化物を含有する水溶液を得る工程;
A3)工程A2)で得た有機相を水相から分離し、有機相を後処理して、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミン(MDA)の混合物を分離する工程;
A4)工程A3)の後に残留し、適切な場合には、工程A1)の反応混合物から除去された水相および/または工程A3)での有機相の後処理により得た水相と少なくとも部分的に混合した、アルカリ金属塩化物含有溶液を精製する工程;
C)適切な場合には、濃縮および/または対応するアルカリ金属塩化物の添加による塩含有物の補充後に、工程A4)からのアルカリ金属塩化物含有溶液の少なくとも一部を電気化学的酸化に付して、塩素、アルカリ金属水酸化物および任意に水素を生成する工程;
D)塩素と一酸化炭素との反応によってホスゲンを調製する工程;
B)工程A3)で得たジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンの混合物と、工程D)で調製したホスゲンとを反応させて、ジフェニルメタン系ジイソシアネートおよびポリイソシアネートの混合物を得る工程;
を有し、工程C)で生成した塩素の少なくとも一部は、工程D)におけるホスゲンの調製に供給される。
【0039】
新規な方法の別の好ましい変法は、C)で生成したアルカリ金属水酸化物の少なくとも一部が、工程A)における中和に再循環されることを特徴とする。
【0040】
工程A4)におけるアルカリ金属塩化物含有溶液の精製は、特に好ましくは、溶液の水蒸気蒸留および続いての活性炭を用いた処理によって実施される。工程A4)における精製は、特に好ましくは、アルカリ金属塩化物含有溶液のpHを8以下に調整した後、水蒸気蒸留および続いての活性炭を用いた処理によって実施される。
【0041】
本発明の総合的MDI製造方法では、MDAの製造方法として知られ、アルカリ金属塩化物含有水溶液が得られる、気体または塩酸として塩化水素触媒を用いる方法の全てが、工程A)に使用できる。新規なMDI製造方法に唯一必須の特徴は、MDAの調製で得られるアルカリ金属塩化物含有溶液を、好ましくは後処理後、アルカリ金属塩化物電気分解に少なくとも部分的に供給し、適切な場合には、水の除去後または対応するアルカリ金属塩化物の適切な補充後、電気化学的に酸化して塩素を生成し、生成した塩素を、ポリアミンを対応するジフェニルメタン系ポリイソシアネートに転化するためのホスゲンの調製に少なくとも部分的に再循環させることである。
【0042】
本発明の方法の特に好ましい態様では、工程A)でのMDAの調製は、EP 1 813 598 A1に開示されている方法によって実施され、同特許を特に参照してここに組み込む。EP 1 813 598 A1は、以下の方法を開示している。
1)酸触媒の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させ、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンを含有する反応混合物を得、
2)ジアミンおよびポリアミンを含有する反応混合物を中和し、
3)中和されたジアミンおよびポリアミン含有反応混合物を、ジアミンおよびポリアミンを含有する有機相と水相とに分離し、
4)適切な場合には、有機相を水で洗い、
5)有機相から過剰のアニリンを蒸留により除去し、
6)工程1)〜5)で得た廃液および縮合物を部分的にまたは完全に混合し、工程3)および5)で得た少なくともプロセス水および縮合物を少なくとも部分的に混合して、水、ジアミンおよびポリアミン、アニリン並びに工程1)で使用した触媒の塩を含有する混合物を得、
7)工程6)で得た混合物を相分離して、ジアミンおよびポリアミンを含有するアニリンを得、
8)次に、相分離で得たジアミンおよびポリアミン含有アニリンを、工程1)での反応に少なくとも部分的に再循環させる。
【0043】
本発明の方法の特に好ましい形態では、水、並びに混合物の重量に基づいて各々の場合に、0.001〜5重量%のMDA、0.5〜60重量%のアニリンおよび1〜25重量%の工程1)で使用した酸触媒の塩を含有する混合物が、EP 1 813 598に従ったMDAの調製方法における工程6)で得られ、次いで、このようにして得たプロセス水は、抽出、好ましくは多段階抽出により、30〜120℃、好ましくは70〜110℃の温度で、アニリンとプロセス水との重量比0.05〜1:1、好ましくは0.1〜0.3:1でアニリンを用いて抽出され、塩酸の添加によって8以下のpHに調整され、最後に、蒸留によっておよび/または水蒸気蒸留によって、抽出されたプロセス水からアニリンが除去される。
【0044】
概説した本発明の方法の特に好ましい形態は、得られるアルカリ金属塩化物含有廃液流れが既に有機成分をほとんど含有しておらず、アルカリ金属塩化物電気分解にアルカリ金属塩化物含有廃液を使用するための後処理が、全くまたはほとんど必要でないという利点を有する。しかしながら、上記したように、アルカリ金属塩化物含有水溶液が得られるMDA製造方法の全てが、本発明のMDIの製造方法に適している。
【0045】
MDAを調製するために用いた方法にかかわらず、MDAの調製で得られた塩水溶液をアルカリ金属塩化物電気分解に使用する前に、まだ存在する有機不純物、特に、アニリン、MDAおよびその前駆体、ホルムアルデヒド、メタノール、微量のフェノールは除去すべきである。メタノールはホルムアルデヒド中の不純物として工程に入り得、フェノールはアニリン中の不純物として入り得る。精製は、例えば、抽出、水蒸気蒸留、オゾン分解および生じた二酸化炭素の除去、活性炭のような吸着剤への吸着、またはその他の方法、或いは複数の方法の組み合わせによって実施できる。
【0046】
新規な方法の変法では、アルカリ金属塩化物含有水溶液を、酸化工程C)の前に、200ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは20ppm未満のTOC値に調整することが好ましい。
【0047】
用いたMDA製造方法で得たアルカリ金属塩化物含有溶液の精製は、独立して、または例えば上記したように別の水流と合わせて実施できる。MDAの調製で得た水流を、好ましくは混合して一緒に精製する。工程A4)に従った精製前に、得られた溶液のpHを8以下の値に調整することが特に好ましい。
【0048】
好ましい方法では、pHを塩酸または塩化水素によって低下させる。より安価な硫酸の使用により、pHを低下、即ち、MDAの調製で中和に使用した水酸化ナトリウムを中和し、後の電気分解で陽極液周囲に集まる硫酸ナトリウムを生成することは基本的に考えられるが、本発明の方法においては好ましくない。これは、例えば、イオン交換膜は、製造業者からの情報によれば、特定の硫酸ナトリウム濃度までしか機能できないので、pH低下における反応生成物が所望の塩化ナトリウムである塩酸または塩化水素を用いる場合よりも大量の陽極液を排出しなければならないからである。
【0049】
本発明の更に好ましい態様では、工程A)から、特に工程A4)から得たアルカリ金属塩化物含有水溶液のアルカリ金属塩化物濃度は、2〜24重量%、好ましくは5〜15重量%である。特に、アルカリ金属塩化物含有水溶液は、電気化学的酸化に使用する前に、水の除去により、および/または固体状もしくは濃縮溶液としてのアルカリ金属塩化物の添加により、5重量%超、好ましくは10重量%超、特に好ましくは20重量%超のアルカリ金属塩化物含有量に調整される。
【0050】
以下、アルカリ金属塩化物電気分解法をより詳細に説明する。本発明の総合的MDI製造方法の先の工程における水酸化ナトリウムの使用または塩化ナトリウムの生成は、本発明の好ましい変法であるが、あらゆるアルカリ金属水酸化物を、本発明の総合的MDI製造方法におけるMDA調製の反応混合物の中和に基本的に使用できるので、塩化ナトリウムの電気分解についての下記説明は、一例とみなすべきである。
【0051】
膜電解法が、通常、塩化ナトリウム含有溶液の電気分解に使用される(Peter Schmittinger, CHLORINE, Wiley-VCH Verlag, 2000, 第77〜115頁参照)。陽極を有する陽極室および陰極を有する陰極室を含む、分離された電解セルを使用する。陽極室および陰極室は、イオン交換膜によって分離されている。
【0052】
塩化ナトリウムを含み、通常300g/l超の塩化ナトリウム濃度を有する溶液を、陽極室に導入する。塩化物イオンは陽極で酸化されて塩素になり、塩素は、欠乏塩化ナトリウム溶液(約200g/l)と一緒にセルから排出される。ナトリウムイオンは、電解の作用で、イオン交換膜を通って陰極室へ移動する。ナトリウムの各原子は、通常使用される膜を通して水を輸送する。
【0053】
「希」水酸化ナトリウム溶液を、通常、陰極室に供給する。陰極では、水が電気化学的に還元されて、水素および水酸化物イオンが生成する。この反応は、セルの陰極側で水を消費し、陰極室に残留する水酸化物イオンとイオン交換膜を介して陰極室に入ったナトリウムイオンとの結果として、「付加的」水酸化ナトリウムを生成する。別の方法では、陰極としてガス拡散電極を使用することもできる。この場合、酸素は電子によって水酸化物イオンに転化され、水素は陰極で生成されない。例えば、DE 10 2005 023615 A1に記載されているようなガス拡散電極を使用できる。ガス拡散電極の操作は、EP 1 033 419 A1、US 6,117,286 B2またはWO 2001/057290 A1に記載されているように実施できる。
【0054】
従って、工程C)での電気化学的酸化を、イオン交換膜を用いておよび/または陰極としてガス拡散電極を用いて、アルカリ金属塩化物電気分解として実施することを特徴とする方法が好ましい。
【0055】
市販の水酸化ナトリウムは、50重量%濃度の溶液として貯蔵および輸送されるので、通常、極めて高い水酸化ナトリウム濃度に達することが目標となっている。しかしながら、今のところ、市販の膜は、約35重量%より高い濃度を有する水酸化ナトリウム溶液に対する耐性を有さないので、水酸化ナトリウム溶液は、熱蒸発によって濃縮されなければならない。市販の膜を使用する場合、約30%の水酸化ナトリウム溶液の流入物濃度および4kA/mの電流密度で、セルからの流出物中の水酸化ナトリウム濃度を31〜32重量%に維持しながら、生成される「濃縮」水酸化ナトリウム溶液の副流を通常排出し、残りの流れを水で希釈して塩化ナトリウム電気分解の陰極側に再循環させる。
【0056】
概説した塩化ナトリウム電気分解では、水が塩化ナトリウム含有溶液を介して陽極液に導入されるが、水だけが膜を通って陰極液に排出される。膜を通って陰極液に輸送され得る量より多い水が塩化ナトリウム含有溶液を介して導入されるならば、酸素生成の二次反応が非常に低い塩化ナトリウム濃度で始まるので、陽極液は塩化ナトリウム欠乏となり、電気分解を連続的に操作できない。この二次反応を回避するため、セルから排出される陽極液が約200g/lの塩化ナトリウム濃度を有するように、通例の膜電解セルを用いた電気分解を操作する。このとき、排出される陽極液の濃度を、固体状塩化ナトリウムまたは高濃縮塩化ナトリウム溶液の添加によって約300g/lの目的濃度まで再び上昇させ、陽極室に再循環させる。望ましくない成分の蓄積を回避するため、欠乏陽極液流れの1〜5%の副流を排出することが有利であり得る。
【0057】
本発明の総合的MDI製造方法の好ましい態様では、塩化ナトリウム含有溶液の濃縮後に、塩化ナトリウムの電気分解において膜を通る水の輸送量を増すことによって、MDAの調製で得た塩化ナトリウム含有溶液を特に経済的に使用できる。これは、例えば、US 6,984,669 B2に記載されているような適当な膜を選択することによって達成され、ナトリウム1molあたり水3mol超、好ましくはナトリウム1molあたり水4mol超、特に好ましくはナトリウム1molあたり水5mol超の水輸送能を有する、イオン交換膜を使用する。
【0058】
従って、アルカリ金属塩化物の電気分解を、イオン交換膜を用いた膜電解法によって実施し、アルカリ金属塩化物含有溶液のアルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであり、イオン交換膜が、ナトリウム1molあたり水3mol超、好ましくはナトリウム1molあたり水4mol超、特に好ましくはナトリウム1molあたり水5mol超の水輸送能を有することを特徴とする方法の態様が好ましい。
【0059】
水の輸送量を増すことによって、第一に、アルカリ金属水酸化物濃度を維持するための本来なら通例の水の添加を省くことができ、第二に、使用される塩化ナトリウムの改善された転化が、同じ流出濃度で達成される。従って、例えば、24重量%の塩化ナトリウム含有溶液供給濃度および16.3重量%の流出濃度で、ナトリウム1molあたり水6.0molの水輸送能を有する膜を使用する場合、30.4重量%のアルカリ金属水酸化物濃度、および66%の単一パスにおける塩化ナトリウム循環比、再循環の場合はほぼ100%の循環比が達成される。これを達成するため、塩化ナトリウムが、水溶液および再循環させるためにセルからもたらされた欠乏塩化ナトリウム溶液中、24の濃度で存在すること、再利用する前に、固体状塩化ナトリウムによって24重量%の濃度に調整することが必要である。不純物の蓄積を回避するため、セルからもたらされた欠乏塩化ナトリウム溶液の約1%を工程から排出する。
【0060】
水輸送能に影響を与える更に可能な方法は、塩化ナトリウム濃度が低下するおよび/または水酸化ナトリウム濃度が低下するように、塩化ナトリウム溶液の電気分解の操作条件を変えることである。同様に、増加した水輸送が、低い塩水濃度および低い水酸化ナトリウム濃度で起こることも考えられる。より多量の水輸送を可能にするため、電気分解の電流密度を上げることもまた可能である。変更された水酸化ナトリウムおよび塩化ナトリウム溶液の濃度で、より多量の水輸送を実施することもできる。局所電流密度が有意に低下されるように、比較的大きい内部表面積を有する陽極を使用する場合、好ましくはより多量の水が輸送される。
【0061】
概説したナトリウム1molあたり水4mol超の水輸送能を有するイオン交換膜を用いた新規なMDI製造方法の好ましい形態では、膜面積に基づいた電流密度は、特に2〜6kA/mである。比較的大きい表面積を有する陽極を使用することが、特に好ましい。本発明の目的のための比較的大きい表面積を有する陽極とは、物理的表面積が、幾何学的表面積、即ち電極の外寸から算出される表面積より有意に大きい陽極である。比較的大きい表面積を有する陽極は、例えば、フォーム様またはフェルト様の構造を有する電極である。このように、非常に大きい電極表面積が陽極に提供され、局所電流密度が著しく低下される。陽極の表面積は、好ましくは、電極の物理的表面積に基づいた局所電流密度が3kA/m未満になるように選択される。表面積が大きく局所電流密度が低いほど、塩水の塩化ナトリウム濃度を低くでき、塩水の一回パスで陽極液として再循環できる、塩水からの塩化ナトリウムの割合を高くできる。
【0062】
工程C)でのアルカリ金属塩化物電気分解は、特に好ましくは、セルを出るアルカリ金属塩化物溶液のアルカリ金属塩化物濃度が塩化ナトリウム100〜280g/lであり、および/またはセルを出るアルカリ金属水酸化物溶液の濃度が13〜33重量%であるように操作されるべきである。比較的低い電圧でセルを操作できる濃度が、極めて好ましい。この目的のため、セルを出るアルカリ金属塩化物溶液の濃度は、好ましくは110〜220g/lの範囲のアルカリ金属塩化物とすべきであり、および/またはセルを出るアルカリ金属水酸化物溶液の濃度は、好ましくは20〜30重量%とすべきである。
【0063】
塩化ナトリウム電気分解を用いた新規な総合的MDI製造方法では、電気分解は、好ましくは70〜100℃、より好ましくは80〜95℃の温度で、特に1〜1.4barの絶対圧力、好ましくは1.1〜1.2barの絶対圧力で操作され、陽極室と陰極室との圧力比は、とりわけ、陰極室内の圧力が陽極室内の圧力より高くなるように選択される。特に好ましい態様では、陰極室と陽極室との圧力差は、20〜150mbar、特に好ましくは30〜100mbarである。
【0064】
比較的低いアルカリ金属塩化物濃度で、特殊な陽極被膜を使用することもできる。特に、陽極被覆剤は、元素の周期表の遷移族7および8の更なる貴金属成分と一緒に酸化ルテニウムを含有できる。例えば、陽極被覆剤はパラジウム化合物でドープされ得る。ダイヤモンドに基づく被膜も同様に使用できる。
【0065】
新規なMDI製造方法において、アルカリ金属塩化物電気分解を、MDAの調製で得たアルカリ金属塩化物含有溶液の後処理のためだけに使用するのならば、電気分解に使用する前に、アルカリ金属塩化物の添加によるかまたは水の除去によって、該溶液を、好ましくは10重量%超のアルカリ金属塩化物濃度まで濃厚化すべきである。水の除去の場合、MDAの調製で得た塩化ナトリウム含有溶液を、好ましくは膜分離法によって、例えば逆浸透法または膜蒸留法によって濃縮する(MELIN;RAUTENBACH, Membranverfahren;SPRINGER, BERLIN, 2003, 第495〜530頁参照)。電解セルおよび濃厚化法の本発明に従った操作の組み合わせによって、理論的には、100%の塩化ナトリウムを、MDAの調製からの塩化ナトリウム含有溶液から回収できる。
【0066】
アルカリ金属塩化物電気分解で生成した塩素を、既知の方法で後処理し(Ullmann's Enzyklopaodie der technischen Chemie, 第6版、第8巻、第254〜265頁)、次いで、本発明の総合的MDI製造方法のホスゲン合成に少なくとも部分的に供給する。
【0067】
新規な総合的MDI製造方法によって調製されたMDAのホスゲン化は、MDAの調製に使用され、アルカリ金属塩化物含有水溶液として回収された、HCl触媒の電気分解によって得られる塩素量より多い塩素を必要とする。例えば、A/F比3およびプロトン化度30%では、必要な塩素の約25%が、中和した触媒の再循環および電気化学的酸化から得られるが、同じA/F比およびプロトン化度20%では約17%しか得られない。従って、更なる塩素を、新規な方法におけるホスゲン合成のために供給しなければならない。
【0068】
付加的塩素の供給は、従来技術の既知の方法の全てによって、例えば、外部から入手した塩素の導入によって、或いはMDIの調製で得た塩化水素からDeacon法に従った直接酸化により塩素を調製することによって、若しくは塩化水素を塩酸に転化した後に、塩酸を隔膜法で電気分解するかまたはMDI調製とともに操作される陰極としてガス拡散電極を用いる電気分解を実施して塩素を調製することによって、行われる。適当な方法は、例えば、WO 2004/014845 A1("Integriertes Verfahren zur Herstellung von Isocyanaten und katalytische Oxidation von Chlorwasserstoff nach dem Deacon-Verfahren")、WO 2000/073538 A1およびWO 2002/018675 A2("Elektrochemische Oxidation einer waessrigen Loesung von Chlorwasserstoff unter Verwendung einer Gasdiffusionselektrode als Kathode")および特にEP 1 743 882 A1("Integriertes Verfahren zur Herstellung von Isocyanaten aus Phosgen und wenigstens einem Amin und elektrochemische Oxidation des dabei anfallenden Chlorwasserstoffs zu Chlor, wobei das Chlor zur Herstellung des Phosgens rueckgefuehrt wird")に記載されているが、他の電気化学的再循環法も適している。
【0069】
しかしながら、必要とされる付加的塩素は、適当にディメンションされたアルカリ金属塩化物電気分解によって供給することもできる。このとき、新規な総合的MDI製造方法におけるMDAの調製で触媒として必要とされない、MDI合成で生成した塩化水素は、EDC法のための出発物質として使用され得るか、または電気化学的再循環法により従来技術に従って塩素に転化され得るか、または水に吸収させて塩酸として別の使用に送ることができる。適当な電気化学的再循環法の概説は、Dennie Turin Mahによる論文"Chlorine Regeneration from Anhydrous Hydrogen Chloride"に記載されており、"12th International Forum Electrolysis in Chemical Chemistry - Clean and Efficient Processing Electrochemical Technology for Syntheses, Separation, Recycle and Environmental Improvement, October 11-15, 1998. Sheraton Sand Key, Clearwater Beach, FL"で発表されている。
【0070】
本発明の総合的MDI製造方法におけるMDA調製の工程A)で得られ、次いで、塩水溶液を調製するために抽出、水蒸気蒸留、および活性炭での処理によって有機不純物がほとんど除去される、アルカリ金属塩化物含有水溶液のほぼ全ての使用が可能となるように、必要とされる付加的塩素の供給は、好ましくは、ディメンションされたアルカリ金属塩化物電気分解で実施される。極めて好ましい態様では、塩化ナトリウム電気分解の陰極側で生成される水酸化ナトリウム溶液に必要な希釈水は、第一に、陰極側にナトリウムイオンと一緒に輸送された水によって、第二に、本発明の総合的MDI製造方法におけるMDA調製で得た廃液流れの水によって充足される。この完全な利用は、特に、新規な総合的MDI製造方法におけるMDAの調製で低いプロトン化度(<30%)で達成され、20%未満のプロトン化度が好ましく、15%未満が特に好ましく、10%未満が極めて好ましい。従って、従来技術と比較して膜を通って大量の水を輸送できる特定のイオン交換膜の使用、およびMDAの調製における本発明に従った低いプロトン化度の組み合わせは、新規な総合的MDI製造方法の特に好ましい形態をもたらす。この特に好ましい形態は、パージ量を無視するならば、MDA調製で使用された酸触媒の完全な再循環が達成され、MDA調製で塩化ナトリウム含有廃液として得られた廃液流れが全て、塩化ナトリウム電気分解で同時に使用され得、そこで水酸化ナトリウム調製における希釈水として全て利用され得ることを特徴とするので、新規な総合的MDI製造方法では、MDA調製で得られた廃液を、総合的MDI製造方法以外で処理するために排出しなくてよい。
【0071】
更に好ましい態様では、必要とされる付加的塩素は、アルカリ金属塩化物電気分解およびHCl電気分解で供給される。アルカリ金属塩化物電気分解のディメンショニングにより、本発明の総合的MDI製造方法におけるMDA調製の工程A)で得られ、次いで、塩水溶液を提供するために抽出、水蒸気蒸留および活性炭での処理によって有機不純物がほとんど除去される、アルカリ金属塩化物水溶液全ての使用が可能になり、付加的に必要とされる塩素は、隔膜法によるおよび/または陰極としてガス拡散電極を用いるHCl電気分解によって供給され、アルカリ金属塩化物電気分解およびHCl電気分解で生成された塩素は、本発明の総合的MDI製造方法におけるホスゲン調製に使用するため、共通後処理工程で後処理される。
【0072】
必要量で供給された塩素は、一酸化炭素と反応してホスゲンを生成する。この反応には、例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der industriellen Chemie, 第3版、第13巻、第494〜500頁に記載されているような、従来技術から既知の方法を使用できる。250℃〜最大600℃の温度、触媒としての活性炭上での一酸化炭素と塩素との反応が好ましく、工業規模では通例である。特に好ましくは、多管式反応器を使用する。強い発熱反応の反応熱は、様々な方法で、例えばWO 03/072237 A1に記載されているような液体状熱媒体を用いて、または例えばUS 4,764,308 Aに記載されているような水蒸気生成の反応熱の同時利用を伴った二次回路による気化冷却によって、除去できる。
【0073】
ホスゲンとジフェニルメタン系ポリアミンとの反応は、工業規模で実施され、多くの文献に記載されている(例えば、Kunststoffhandbuch, 第7巻(Polyurethane), 第3改訂版, Carl Hanser Verlag, Munich-Vienna, 第76頁以降(1993)参照)。本発明の総合的MDI製造方法には、従来技術から知られている液相ホスゲン化法の全てが適している。新規な方法の工程A)で調製されたジフェニルメタン系ポリアミンの反応は、好ましくは、WO 2004/056756 A1およびEP 1 873 142 A1に開示されている方法によって実施され、これら特許を特に参照してここに組み込む。工程A)で調製されたジフェニルメタン系ポリアミンの反応は、特に好ましくは、EP 1 873 142 A1に開示されている方法によって実施される。
【0074】
EP 1 873 142 A1に開示されている方法は、少なくとも三段階での、ジフェニルメタン系ポリアミンとホスゲンとの反応を含む。第一段階は動的ミキサーで実施され、第二段階は少なくとも1つの反応器で実施され、第三段階は少なくとも1つの分離装置で実施され、第二段階の圧力は、動的ミキサー内の圧力以上であり、少なくとも1つの分離装置内の圧力は、第二段階の反応器内の圧力より低い。
【0075】
EP 1 873 142 A1の教示によれば、開示されている方法の第一のホスゲン化段階で起こる反応は、本質的に、塩化カルバモイルおよびアミン塩酸塩を生成するための使用されるジフェニルメタン系ポリアミンの第一級アミン基の反応であり、第2段階での反応は、本質的に、第一段階で生成されたアミン塩酸塩の塩化カルバモイルへの転化であり、第3段階での反応は、本質的に、塩化カルバモイルのイソシアネート基および塩化水素への解離である。EP 1 873 142 A1に開示されている方法では、アミンとホスゲンとの反応は、過剰のホスゲンを用い、不活性溶媒、好ましくはトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはそれらの混合物の中で実施される。
【0076】
EP 1 873 142 A1の教示によれば、第一のホスゲン化段階は、動的ミキサーで、好ましくは、その機能が例えばEP 0 291 819 B1の第1欄/第44行〜第2欄/第49行に記載されており、その詳細な構造が第4欄/第34行〜第5欄/第46行に図1および2を参照して記載されているミキサー反応器で、特に好ましくは、その機能がEP 0 830 894 B1の段落0005〜0011/0012〜0014に記載されており、その詳細な構造が段落0016〜0022に図1〜4を参照して記載されているミキサー反応器で実施される。しかしながら、機械的可動部(例えば回転混合装置および特に多段渦巻ポンプ)によって激しい混合を確実にする動的ミキサーの全てが、第一のホスゲン化段階での使用に適している。
【0077】
新規な総合的MDI製造方法で用いる場合、第一のホスゲン化段階の動的ミキサー内の圧力は、好ましくは3〜70bar、特に好ましくは3〜35barである。第一段階の温度は、好ましくは80〜220℃、特に好ましくは90〜180℃であり、第一段階での反応は好ましくは断熱的に実施される。
【0078】
EP 1 873 142に開示されている方法と類似した方法では、新規な総合的MDI製造方法における第二のホスゲン化段階を、第一段階の動的ミキサーと水力学的に接続されている少なくとも1つの反応器、即ち化学反応を実施するのに適した滞留装置で実施する。第二のホスゲン化段階の圧力は、好ましくは3〜70bar、特に好ましくは3〜37barである。第二段階での温度は、好ましくは80〜220℃、特に好ましくは90〜180℃である。第二段階に可能な反応器の型は、管型反応器、撹拌槽または不撹拌滞留装置である。反応器は、反応器温度を調節するための熱交換器を含み得るポンプ輸送回路を備えていてもよい。管型反応器の使用が特に好ましい。
【0079】
EP 1 873 142 A1の教示によれば、EP 1 873 142 A1に開示されている方法の第三のホスゲン化段階で、カルバモイル基はイソシアネート基に転化し、反応混合物は気相と液相とに分離する。気相は本質的に塩化水素を含有し、圧力および温度に依存して、過剰に使用されたホスゲンの一部および溶媒蒸気を含有することもある。EP 1 873 142 A1に開示されている方法と類似した方法では、新規な総合的MDI製造方法における第三のホスゲン化段階は、好ましくは0.5〜20bar、特に好ましくは0.5〜16barの圧力で操作され、反応混合物は、第二のホスゲン化段階の反応器の下流で、バルブまたはこの目的に適した他のデバイスを用いて分離装置の圧力まで減圧され、第三のホスゲン化段階の温度は80〜220℃に設定される。
【0080】
新規な総合的MDI製造方法における第三のホスゲン化段階の分離装置に適した反応器は、分離ガス出口、撹拌槽、撹拌槽カスケード、多孔板カラム、または相分離のための他の装置を備えた熱交換器であり、DE 37 36 988 C1/第3欄、第2〜64行に記載されているような(反応)塔が特に好ましい。第三のホスゲン化段階での分離装置は、反応混合物からの過剰ホスゲンの除去のためにも利用され得る。第三段階の分離装置は同様に有利ではないが大きくてもよい。この場合、第三段階の分離装置は、2つ以上の同じまたは異なった装置、好ましくは、分離ガス出口および(反応)塔または1つ以上の(反応)塔および(反応)カラム(好ましくは直列に接続される)を有する熱交換器の組み合わせによっても実現され得る。
【0081】
次いで、ホスゲン化から放出された反応混合物を、なお存在するホスゲンを除去するためおよび溶媒を分離するための常套法により後処理する。更なる精製工程が続いてもよい。
【0082】
その後、ホスゲン、塩化水素および溶媒を、ホスゲン化で生じた蒸気および後の脱ホスゲン化で生じた蒸気から既知の方法で分離し、適切な場合は、工程の適切な位置に再循環させる。それらの蒸気を、好ましくは後処理前に混合し、その後に、好ましくはDE 102 60 084 A1に記載の方法を用いて、成分に分離する。同特許を特に参照して組み込む。
【0083】
上記のように、新規な総合的MDI製造方法で得られた塩化水素は、適切な場合は付加的に精製した後、Deacon法によるかまたは塩酸への転化後に塩酸を電気分解することによって、塩素に転化され得る。塩化水素は、EDC法で使用するか、または塩酸として別工程に送ることもできる。
【0084】
新規な総合的MDI製造方法の好ましい態様では、ホスゲン化で生じた塩化水素の副次的流れを、好ましくは25〜30重量%濃度の塩酸の形態で、総合的MDI製造方法におけるMDA調製時の触媒として使用し、残留塩化水素を更に精製して、上記したように、塩素調製のための電気化学的再循環法に送る。
【0085】
塩化水素の更なる精製は、好ましくは、WO 2003/089370 A1およびWO 2006/089877 A1に開示されている方法の1つによって実施される。両方の方法を直列に組み合わせて使用することが、特に好ましい。
【0086】
前章で例として記載した本発明の総合的MDI製造方法の段階の態様は、本発明の新規性が影響を受けることなく、当業者に基本的に知られている別の方法で個々に実施できる。
【0087】
上記した引用文献の全てを、有用な目的全てのために、それらの全内容を参照して組み込む。
【0088】
本発明を具体化する特定の構造を示し記載したが、本発明の基本的な概念の意図および範囲から外れることなく一部の様々な修正および再調整ができ、その修正および再調整が本明細書に示し記載した特定の形態に限定されないことは、当業者には明らかであろう。
【実施例1】
【0089】
以下の工程:
a)触媒としての30重量%濃度の塩酸の存在下、アニリンとホルムアルデヒドとをA/F比3で10%のプロトン化度で反応させる工程、
b)反応混合物を水酸化ナトリウムで中和する工程、
c)有機相を分離する工程、
d)有機相を温水で洗う工程、
e)有機相から過剰アニリンを蒸留によって除去し、縮合物を更なる後処理なしに収集廃液(工程a)〜d)からの全廃液)に供給する工程
を含むMDA調製方法の段階からの廃液および縮合物を比例して含有し、0.24重量%のMDA含有量、33.8重量%のアニリン含有量、および4.9重量%の塩化ナトリウム含有量を有する、混合物12.22t/hを、熱交換器によって80℃超の温度まで加熱し、分離段階(工程g))で後処理し、次いで、抽出溶媒としてMDA不含有アニリンを用いて向流で二段階抽出する。このとき、
・抽出段階に供給する前に、1.5t/hで供給されるMDA不含有アニリンを50℃超の温度まで加熱し、
・新しく使用するアニリン並びに抽出段階の第一段階および第二段階から排出されるアニリンを、廃液1mあたり0.1kWのエネルギー供給で、向流で運ばれた廃液または使用された混合物と強く混合し、次いで、80℃超の温度を維持しながら20分の平均滞留時間で、ミキサーの下流に位置する沈降タンクで再び分離させる。
【0090】
廃液の抽出後、廃液は、1ppm未満のMDAしか含有せず、同様にアミナールおよびアミノベンジルアミンも含有しない。廃液のアニリン含有量3.1重量%は、溶解平衡に対応する。
【0091】
更なる後処理のため、抽出された廃液を、30重量%濃度の塩酸によってpH7.2に調整し、次いで、蒸留によるアニリンの除去に送り、450mbarおよび80℃で残留アニリン並びに存在する低沸点物質を除去し、蒸留によるアニリンの除去で得られた縮合物を更なる低沸点物質除去に送り、MDA調製の工程b)に希釈水としておよび/またはMDA調製の工程d)に洗浄水として再循環させる。
【0092】
蒸留によるアニリンの除去から5.6t/hで放出され、12.2重量%の塩化ナトリウム含有量を有する廃液を、40℃まで熱交換器によって加熱し、活性炭調整層に流通させ、次いで、塩化ナトリウム電気分解の塩水調製に送る。塩水調製に送られる溶液は、19ppmのTOC値を有する。
【0093】
電気分解は各々2.71mの陽極面積を有する302個のセルで実施し、電流密度は4kA/mであり、電池電位は2.0Vであり、陰極側の出口温度は88℃であり、陽極側の出口温度は89℃である。電解セルはDenora(ドイツ国)製の標準的な陽極被覆を有しており、DuPont製タイプN2010の膜をイオン交換膜として使用し、200kg/hの溶液を、セルの陽極室を通してポンプ輸送により再循環させ、75kg/hの溶液を、各セルの陰極室を通してポンプ輸送により再循環させる。DE 10 2005 023615 A1に記載されているようなガス拡散電極を陰極として使用する。
【0094】
陽極室に供給される塩化ナトリウム溶液の濃度は、22重量%NaClである。15.1%濃度の溶液が陽極室から取り出される。この流れの0.406t/hを廃棄する。陽極室から取り出された塩化ナトリウム溶液は、塩化ナトリウム含有量12.2%を有するMDA廃液5.6t/h、固体塩化ナトリウム6.51t/h、および更なる水8.07t/hで補う。使用した膜を通って輸送された水は、ナトリウム1molあたり水5.3molである。
【0095】
陰極側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30重量%であり、陰極側から取り出される水酸化ナトリウム溶液の濃度は32.0重量%である。32.0重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液15.26t/hを、陰極側からの流出物流れから取り出し、その残りを1.43t/hの水で補い、電解セルの陰極側にフィードバックする。32重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液1.458t/hをMDA調製に再循環し、その残りの水酸化ナトリウム溶液は別の工程で利用できる。
【0096】
使用される膜の高い水輸送能の故に、生成した水酸化ナトリウム溶液を付加的に希釈する必要はほとんどない。希釈は膜を通って輸送された水によって主に達成され、11.65t/hの水が膜を通って陰極側に導入され、MDA廃液からの水全てが、電気分解で生じた水酸化ナトリウム溶液の希釈のために電気分解で利用される。
【0097】
4.32t/hの塩素と一酸化炭素とを、7mol%の一酸化炭素過剰で活性炭上で反応させてホスゲンを生成し、ホスゲンのモノクロロベンゼン中45重量%溶液に転換する。
【0098】
工程a)〜e)に従って調製され、80℃の温度を有し、モノクロロベンゼン中224g/molの平均モル質量を有するMDAの30重量%濃度溶液20t/hと、−5℃の温度を有するホスゲンのモノクロロベンゼン中45重量%濃度溶液26.7t/hとを混合し、52kWの電力供給をしながら、EP−A−0 830 894に記載されているようなミキサー反応器内で連続して反応させる。ミキサー反応器内の圧力は13.5barである。
【0099】
ミキサー反応器内での2.1秒間の平均滞留時間後、反応混合物を、ミキサー反応器のインペラーにより、14barで操作され、加熱ジャケットにより加熱できる続く管型反応器に運び、その中で120℃超で120秒の滞留時間で維持し、次いで、反応混合物を、多孔板によって室に分割され、相分離装置として1.7barの塔頂圧で操作される加熱可能な反応塔内で調整弁を介して減圧する。
【0100】
反応混合物を反応塔の塔底に供給すると、装置を通過するとき、区分加熱設備によって均一に加熱されるので、別々に放出される気相および液相は、115℃の温度で装置を出る。
【0101】
取り出された気相(18.65t/h)は、ホスゲン(5.64t/h、30.2重量%)、塩化水素(4.37t/h、21.6重量%)、モノクロロベンゼン(8.97t/h、48.10重量%)、および少量の各種低沸点物質(四塩化炭素、クロロホルム、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素)の混合物を含有し、既知の種類の塩化水素/ホスゲン分離に送られる。分離され精製された塩化水素0.426t/hを、水0.99t/hに溶解し、得られる30重量%濃度の塩酸の形態で触媒としてMDA調製に送る。
【0102】
塔からオーバーフローした液相(28.05t/h)は、MDI(7.55t/h、26.9重量%)、モノクロロベンゼン、ホスゲン、および少量の溶解塩化水素を含有する。従来技術の方法によって、液相から、塩化水素、ホスゲンおよびモノクロロベンゼンを除去し、液相を熱的に後処理する。このように調製されたジフェニルメタン系ジイソシアネートおよびポリイソシアネートの混合物は、以下の生成物特性によって特徴付けられる。
【0103】
・粘度/25℃:49mPa・s
・NCO含有量:31.7%
・色E4301):0.134
・色E5201):0.026
1) 得られたイソシアネート1.0gをクロロベンゼンに溶解し、50mlまでクロロベンゼンで希釈する。得られた溶液の吸光度を、Dr. Lange LICO 300 Photometerを用いて2つの波長430nmおよび520nmで測定した。
【実施例2】
【0104】
以下の工程:
f)触媒としての30重量%濃度の塩酸の存在下、アニリンとホルムアルデヒドとをA/F比2.1で15%のプロトン化度で反応させる工程、
g)反応混合物を水酸化ナトリウムで中和する工程、
h)有機相を分離する工程、
i)有機相を温水で洗う工程、
j)有機相から過剰アニリンを蒸留によって除去し、縮合物を更なる後処理なしに収集廃液(工程f)〜i)からの全廃液)に供給する工程
を含むMDA調製方法の段階からの廃液および縮合物を比例して含有し、0.14重量%のMDA含有量、16.2重量%のアニリン含有量、および6.5重量%の塩化ナトリウム含有量を有する、混合物8.3t/hを、熱交換器によって80℃超の温度まで加熱し、分離段階(工程h))で後処理し、次いで、抽出溶媒としてMDA不含有アニリンを用いて向流で二段階抽出する。このとき、
・抽出段階に供給する前に、1.0t/hで供給されるMDA不含有アニリンを75℃超の温度まで加熱し、
・新しく使用するアニリン並びに抽出段階の第一段階および第二段階から排出されるアニリンを、廃液1mあたり0.1kW超のエネルギー供給で、向流で運ばれた廃液または使用された混合物と強く混合し、次いで、80℃超の温度を維持しながら20分の平均滞留時間で、ミキサーの下流に位置する沈降タンクで再び分離させる。
【0105】
廃液の抽出後、廃液は、11.5ppm未満のMDAしか含有せず、同様にアミナールおよびアミノベンジルアミンもほとんど含有しない。廃液のアニリン含有量3.1重量%は、溶解平衡に対応する。
【0106】
更なる後処理のため、抽出された廃液を、30重量%濃度の塩酸によってpH7.2に調整し、次いで、蒸留によるアニリンの除去に送り、450mbarおよび80℃で残留アニリン並びに存在する低沸点物質を除去し、蒸留によるアニリンの除去で得られた縮合物を更なる低沸点物質除去に送り、MDA調製の工程g)に希釈水としておよび/またはMDA調製の工程i)に洗浄水として再循環させる。
【0107】
蒸留によるアニリンの除去から4.98t/hで放出され、12.56重量%の塩化ナトリウム含有量を有する廃液を、40℃まで熱交換器によって加熱し、活性炭調整層に流通させ、次いで、塩化ナトリウム電気分解の塩水調製に送る。塩水調製に送られる溶液は、24ppmのTOC値を有する。
【0108】
電気分解は各々2.71mの陽極面積を有する115個のセルで実施し、電池電位は2.0Vであり、陰極側の出口温度は88℃であり、陽極側の出口温度は89℃である。電解セルはDenora(ドイツ国)製の標準的な陽極被覆を有しており、DuPont製タイプN2010の膜をイオン交換膜として使用し、200kg/hの溶液を、セルの陽極室を通してポンプ輸送により再循環させ、75kg/hの溶液を、各セルの陰極室を通してポンプ輸送により再循環させる。DE 10 2005 023615 A1に記載されているようなガス拡散電極を陰極として使用する。
【0109】
陽極室に供給される塩化ナトリウム溶液の濃度は、22重量%NaClである。15.1%濃度の溶液が陽極室から取り出され、そのうちの0.155t/hをパージとして除去し、次いで、陽極室から取り出された塩化ナトリウム溶液は、塩化ナトリウム含有量12.56%を有するMDA廃液4.98t/h、固体塩化ナトリウム2.115t/h、および更なる水0.51t/hで補う。使用した膜を通って輸送された水は、ナトリウム1molあたり水5.2molである。
【0110】
陰極側に供給される水酸化ナトリウム溶液の濃度は30重量%であり、陰極側から取り出される水酸化ナトリウム溶液の濃度は32.0重量%である。32.0重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液5.775t/hを、陰極側からの流出物流れから取り出し、その残りを0.594t/hの水で補い、電解セルの陰極側にフィードバックする。使用される膜の高い水輸送能の故に、生成した水酸化ナトリウム溶液を付加的に希釈する必要はほとんどない。希釈は膜を通って輸送された水によって主に達成され、4.355t/hの水が膜を通って陰極側に導入され、MDA廃液からの水全てが、電気分解で生じた水酸化ナトリウム溶液の希釈のために電気分解で利用される。
【0111】
NaCl電気分解で生成した塩素1.649t/hを、従来技術に従った常套のHCl電気分解で生成した塩素1.963t/hと混合し、一緒に一酸化炭素と、7mol%の一酸化炭素過剰で活性炭上で反応させてホスゲンを生成し、ホスゲンのモノクロロベンゼン中45重量%溶液に転換する。
【0112】
工程f)〜j)に従って調製され、80℃の温度を有し、モノクロロベンゼン中232g/molの平均モル質量を有するMDAの30重量%濃度溶液16.67t/hと、−5℃の温度を有するホスゲンのモノクロロベンゼン中45重量%濃度溶液22.22t/hとを混合し、58kWの電力供給をしながら、EP−A−0 830 894に記載されているようなミキサー反応器内で連続して反応させる。ミキサー反応器内の圧力は13.8barである。
【0113】
ミキサー反応器内での2.5秒間の平均滞留時間後、反応混合物を、ミキサー反応器のインペラーにより、14.2barで操作され、加熱ジャケットにより加熱できる続く管型反応器に運び、その中で120℃超で120秒の滞留時間で維持し、次いで、反応混合物を、多孔板によって室に分割され、相分離装置として1.7barの塔頂圧で操作される加熱可能な反応塔内で調整弁を介して減圧する。
【0114】
反応混合物を反応塔の塔底に供給すると、装置を装置を通過するとき、区分加熱設備によって均一に供給されるので、別々に放出される気相および液相は、114℃の温度で装置を出る。
【0115】
取り出された気相(15.70t/h)は、ホスゲン(4.68t/h、29.82重量%)、塩化水素(3.60t/h、22.91重量%)、モノクロロベンゼン(7.42t/h、47.27重量%)、および少量の各種低沸点物質(四塩化炭素、クロロホルム、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素)の混合物を含有し、既知の種類の塩化水素/ホスゲン分離に送られる。分離され精製された塩化水素0.39t/hを、水0.91t/hに溶解し、得られる30重量%濃度の塩酸の形態で触媒としてMDA調製に送る。
【0116】
塔からオーバーフローした液相(23.19t/h)は、MDI(6.25t/h、26.95重量%)、モノクロロベンゼン、ホスゲン、および少量の溶解塩化水素を含有する。従来技術の方法によって、液相から、塩化水素、ホスゲンおよびモノクロロベンゼンを除去し、液相を熱的に後処理する。このように調製されたジフェニルメタン系ジイソシアネートおよびポリイソシアネートの混合物は、以下の生成物特性によって特徴付けられる。
【0117】
・粘度/25℃:132mPa・s
・NCO含有量:31.2%
・色E4301):0.182
・色E5201):0.035
1) 得られたイソシアネート1.0gをクロロベンゼンに溶解し、50mlまでクロロベンゼンで希釈する。得られた溶液の吸光度を、Dr. Lange LICO 300 Photometerを用いて2つの波長430nmおよび520nmで測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)触媒としての塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させて、ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミン(MDA)の混合物を生成し、続いて前記塩酸をアルカリ金属水酸化物で少なくとも部分的に中和し;
B)前記ジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミンの混合物とホスゲンとを反応させて、ジフェニルメタン系ジイソシアネートおよびポリイソシアネート(MDI)の混合物並びに塩化水素を生成する;
ことを含むメチレンジフェニルジイソシアネートの製造方法であって、
C)A)で中和された塩酸をアルカリ金属塩化物含有溶液として分離し、続いて、その少なくとも一部を電気化学的酸化に供給して、塩素、アルカリ金属水酸化物および任意に水素を生成し;
D)C)で生成した塩素の少なくとも一部を使用して、B)で使用されるホスゲンを調製する方法。
【請求項2】
A)におけるアルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
A1)出発物質と一緒に導入されたか、または触媒としての塩酸の存在下でアニリンとホルムアルデヒドとを反応させてジフェニルメタン系ジアミンおよびポリアミン(MDA)の混合物を生成する間に生じた水を、場合により少なくとも部分的に反応混合物から除去し;
A2)A1)で生成した反応混合物の中和後、アルカリ金属塩化物を含んでなる水溶液、並びに前記したジアミンとポリアミンとの混合物を含んでなる有機相を得;
A3)A2)からの有機相を、水相から分離し、後処理して、前記ジアミンとポリアミンとの混合物を得;
A4)A3)の後に残留するアルカリ金属塩化物含有水溶液を、場合により少なくとも部分的に、A1)で除去された水および/または工程A3)での前記有機相の後処理により得た水相と混合し;精製し;少なくとも部分的に電気化学的酸化C)に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
C)で生成したアルカリ金属水酸化物の少なくとも一部を、前記塩酸の中和のためにA)に再循環させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
B)で生成した塩化水素の少なくとも一部を塩酸に転化し、その少なくとも一部をA)において前記触媒として使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
A)で生成したアルカリ金属塩化物含有水溶液中のアルカリ金属塩化物の濃度が2〜24重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
A)で生成したアルカリ金属塩化物含有水溶液中のアルカリ金属塩化物の濃度が5〜15重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属塩化物含有水溶液を、A4)での精製前に8未満のpHに調整する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属塩化物含有水溶液を、酸化C)の前に200ppm未満のTOC値に調整する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属塩化物含有水溶液を、電気化学的酸化に使用する前に、水の除去により、および/または固体状もしくは濃縮溶液としてのアルカリ金属塩化物の添加により、5重量%超のアルカリ金属塩化物含有量に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
A)におけるアニリン/ホルムアルデヒド反応を30%未満のプロトン化度で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
C)における電気化学的酸化を、イオン交換膜を用いておよび/または陰極としてガス拡散電極を用いて、アルカリ金属塩化物電気分解として実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アルカリ金属塩化物電気分解を、イオン交換膜を用いて膜電解法により実施し、アルカリ金属塩化物含有溶液のアルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであり、イオン交換膜がナトリウム1molあたり水3mol超の水輸送能を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルカリ金属塩化物電気分解に供給されるアルカリ金属塩化物溶液を、電気分解前に7未満のpHに調整する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
電解槽を出るアルカリ金属塩化物含有溶液中のアルカリ金属塩化物の濃度が100〜280g/lである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
電気分解から得たアルカリ金属水酸化物溶液の濃度が13〜33重量%である、請求項12に記載の方法。

【公開番号】特開2009−209144(P2009−209144A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−47606(P2009−47606)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】