説明

メチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法

【課題】ベンゾトリアゾリルフェノール化合物からメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物を副反応生成物をなるべく生成させずに、マンニッヒ塩基を経由しないで製造することができる方法を提供する。
【解決手段】ベンゾトリアゾリルフェノール化合物を、有機溶媒中にて、有機酸及びルイス酸などの酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒド、トリオキサン及びジメトキシメタンなどのホルムアルデヒド誘導体と反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の一般式(I)で表されるメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物は、合成樹脂材料の紫外線吸収剤として利用されている。
【0003】
【化1】

【0004】
式(I)中、R1は、炭素原子数1〜12のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜18のアルキル基、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示す。
【0005】
上記式(I)で表されるメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物は、ベンゾトリアゾリルフェノールの単量体と比較して分子量が大きく、熱安定性が高いため、合成樹脂材料中での安定性が高いという利点がある。特に、R1がヒドロキシアルキル基である2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール]化合物は、合成樹脂材料を構成するモノマーと共重合させることによって合成樹脂材料中での安定性を向上させることができるため、R1がアルキル基である2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−アルキルフェノール]化合物と比較して有利であるとされている。
【0006】
メチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法としては、ベンゾトリアゾリルフェノール化合物とアミン類とホルムアルデヒド誘導体とを反応させてマンニッヒ塩基を得て、次いでそのマンニッヒ塩基とベンゾトリアゾリルフェノールもしくはマンニッヒ塩基同士を反応させる方法が知られている。
【0007】
特許文献1には、マンニッヒ塩基を用いて、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール]化合物を製造する方法が記載されている。
【0008】
特許文献2には、マンニッヒ塩基を用いて、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−アルキルフェノール]化合物を製造する方法が記載されている。
【0009】
マンニッヒ塩基を用いずに2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−アルキルフェノール]化合物を製造する方法として、特許文献3には、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−アルキルフェノール化合物とパラホルムアルデヒド又はトリオキサンとを濃硫酸中で反応させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−316060号公報
【特許文献2】特開昭61−115073号公報
【特許文献3】特開平5−213908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1、2に記載されているマンニッヒ塩基を用いるメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法は、マンニッヒ塩基の合成工程が必要となるため作業工程が煩雑となる。
一方、特許文献3に記載されている濃硫酸中でメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物を製造する方法は、硫酸の強い酸化力によって副反応生成物が生成し易いという問題がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、ベンゾトリアゾリルフェノール化合物からメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物を副反応生成物をなるべく生成させずに、また短い工程で製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ベンゾトリアゾリルフェノール化合物を、有機溶媒中にて、有機酸やルイス酸などの酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド誘導体と反応させることによって、マンニッヒ塩基を用いずに、反応副生物を殆ど生成させずにメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
従って、本発明は、下記一般式(I):
【化2】

(但し、式(I)中、R1は、炭素原子数1〜12のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数1〜18のアルキル基であり、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示す)で表されるメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法であって、下記一般式(II):
【0015】
【化3】

【0016】
(但し、式(II)中、R1及びR2は上記式(I)と同じである)で表されるベンゾトリアゾリルフェノール化合物を、有機溶媒中にて、有機酸及びルイス酸からなる群より選ばれる酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒド、トリオキサン及びジメトキシメタンからなる群より選ばれるホルムアルデヒド誘導体と反応させることを特徴とする方法にある。
【0017】
本発明のメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法の好ましい態様は、次の通りである。
(1)有機溶媒が炭化水素又はハロゲン化炭化水素である。
(2)酸触媒が、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸又はジクロロ酢酸からなる群より選ばれる有機酸、又は塩化鉄(III)、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、三塩化チタン、四塩化チタン、三塩化モリブテン、五塩化モリブテン、臭化亜鉛、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化ガリウム(II)、塩化スズ、臭化スズ、三フッ化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、塩化ビスマス、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチル亜鉛及び金属トリフラートからなる群より選ばれるルイス酸である。
【0018】
(3)式(I)のR1が、−(CH2a−OH(但し、aは1〜12の整数)で表されるヒドロキシアルキル基であって、
ベンゾトリアゾリルフェノール化合物が下記一般式(III):
【0019】
【化4】

【0020】
(但し、式(III)中、aは1〜12の整数を示す)で表される4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物と、下記一般式(IV):
【0021】
【化5】

【0022】
(但し、式(IV)中、X-はアニオンを示し、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示す)で表される2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩とを反応させることによって得たものである。
【0023】
(4)上記(3)の4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物が下記一般式(V):
【0024】
【化6】

【0025】
(但し、式(V)中、Y1及びY2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜7のアシル基を示し、aは1〜12の整数を示す)で表されるアニリン誘導体をジアゾ化させてジアゾ化合物を得て、該ジアゾ化合物を水と接触させて分解させる、又は該ジアゾ化合物を炭素原子数1〜7のカルボン酸もしくはその無水物と反応させて下記一般式(VI):
【0026】
【化7】

【0027】
(但し、式(VI)中、Zは、炭素原子数1〜7のアシル基を示し、Y2及びaは上記式(V)と同じである)で表されるカルボン酸フェニル化合物とした後、水もしくはメタノールと接触させて分解させることによって得られたものである。
【0028】
本発明はさらに、下記一般式(VII):
【0029】
【化8】

【0030】
(但し、式(VII)中、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、aは1〜12の整数を示す)で表される2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール]化合物の製造方法であって、下記一般式(V):
【0031】
【化9】

【0032】
(但し、式(V)中、Y1及びY2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜7のアシル基を示し、aは上記式(VII)と同じである)で表されるアニリン誘導体をジアゾ化させてジアゾ化合物を得て、該ジアゾ化合物を水と接触させて分解させる、又は該ジアゾ化合物を炭素原子数1〜7のカルボン酸もしくはその無水物と反応させて下記一般式(VI):
【0033】
【化10】

【0034】
(但し、式(VI)中、Zは、炭素原子数1〜7のアシル基を示し、Y2は上記式(V)と同じ、aは上記式(VII)と同じである)で表されるカルボン酸フェニル化合物とした後、水もしくはメタノールと接触させて分解させることによって、下記一般式(III):
【0035】
【化11】

【0036】
(但し、式(III)中、aは上記式(VII)と同じである)で表される4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物を得る工程;
該4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物と、下記一般式(IV):
【0037】
【化12】

【0038】
(但し、式(IV)中、X-はアニオンを示し、R2は上記式(VII)と同じである)で表される2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩とを反応させて、下記一般式(VIII):
【0039】
【化13】

【0040】
(但し、式(VIII)中、R2及びaは上記式(VII)と同じである)で表される2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物を得る工程;そして、
該2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物を、有機溶媒中にて、有機酸及びルイス酸からなる群より選ばれる酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒド、トリオキサン及びジメトキシメタンからなる群より選ばれるホルムアルデヒド誘導体と反応させる工程を含む方法にもある。
【発明の効果】
【0041】
本発明の方法を利用することによって、副反応生成物を殆ど生成させずにメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物を効率良く製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
前記一般式(I)〜(VIII)におけるR1、R2、a、X-、Y1、Y2及びZについて、次に説明する。
【0043】
1は、炭素原子数1〜12のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数1〜18のアルキル基である。
【0044】
上記ヒドロキシアルキル基は、1〜3個の水素原子が水酸基に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を意味する。ヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基、5,5,4−トリヒドロキシペンチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、1−ヒドロキシイソプロピル基、2−メチル−3−ヒドロキシプロピル基、7−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、10−ヒドロキシデシル基、11−ヒドロキシウンデシル基及び12−ヒドロキシドデシル基を挙げることができる。
【0045】
上記アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、tert−ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、tert−ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基及びオクタデシル基を挙げることができる。
【0046】
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基である。
【0047】
上記ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができる。
【0048】
上記アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基及びtert−ブチル基を挙げることができる。
【0049】
上記アリール基の例としては、フェニル環上に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子を有することのあるフェニル基及びナフチル基を挙げることができる。
【0050】
上記アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及びtert−ブトキシ基を挙げることができる。
【0051】
aは、1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4の整数である。
【0052】
-は、アニオンである。アニオンの例としては、塩素イオン、臭素イオン、硫酸水素イオン及び硝酸イオンを挙げることができる。
【0053】
1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜7のアシル基を示す。アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基及びベンゾイル基を挙げることができる。
【0054】
Zは、炭素原子数1〜7のアシル基を示す。アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基を挙げることができる。
【0055】
次に、本発明のメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法を説明する。
【0056】
本発明では、ベンゾトリアゾリルフェノール化合物を有機溶媒中にて、有機酸及びルイス酸からなる群より選ばれる酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒド、トリオキサン及びジメトキシメタンからなる群より選ばれるホルムアルデヒド誘導体と反応させて、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物を製造する。
【0057】
有機溶媒は、炭化水素又はハロゲン化炭化水素であることが好ましい。炭化水素の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びデカンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素を挙げることができる。ハロゲン化炭化水素の例としては、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン及び塩化エチリデンを挙げることができる。これらの溶媒は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。有機溶媒は少量の水を含んでいてもよい。有機溶媒の使用量は、ベンゾトリアゾリルフェノール化合物1gに対して好ましくは1〜100mLの範囲である。
【0058】
触媒として用いる有機酸は有機溶媒に可溶であることが好ましい。有機酸の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸及びジクロロ酢酸を挙げることができる。ルイス酸は有機溶媒に不溶であることが好ましい。ルイス酸の例としては、塩化鉄(III)、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、三塩化チタン、四塩化チタン、三塩化モリブテン、五塩化モリブテン、臭化亜鉛、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化ガリウム(II)、塩化スズ、臭化スズ、三フッ化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、塩化ビスマス、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチル亜鉛、及びスカンジウムトリフラートなどの金属トリフラートを挙げることができる。上記ルイス酸の中で好ましいのは、塩化鉄(III)、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化物、及び金属トリフラートである。有機溶媒が水を含む場合には、金属トリフラートを用いることが特に好ましい。これらの酸触媒は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。酸触媒の使用量は、ベンゾトリアゾリルフェノール化合物1モルに対して、好ましくは0.01〜10モルの範囲、より好ましくは0.05〜5モルの範囲である。
【0059】
ベンゾトリアゾリルフェノール化合物と反応させるホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体の使用量は、ベンゾトリアゾリルフェノール化合物1モルに対して好ましくは0.4〜5.0モルの範囲、より好ましくは0.5〜3.0モルの範囲となる量である。ホルムアルデヒドは水溶液として用いてもよい。
【0060】
反応は撹拌下で行うことが好ましい。反応温度は好ましくは30〜200℃の範囲、より好ましくは40〜150℃の範囲である。反応時間は好ましくは1〜50時間の範囲、より好ましくは10〜30時間の範囲である。
【0061】
上記の反応により生成するメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物は、ろ過、抽出、濃縮、蒸留などの通常の方法により反応液から回収することができる。回収したメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物は、洗浄や再結晶により精製することができる。
【0062】
本発明では、硫酸と比較して酸化力の弱い有機酸やルイス酸を酸触媒に使用するため、副反応生成物が生成しにくい。このため、反応液に残留している酸触媒、未反応のベンゾトリアゾリルフェノール化合物、ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド誘導体は比較的容易に回収することができ、再度メチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造に用いることが可能である。
【0063】
本発明で製造原料として用いるベンゾトリアゾリルフェノール化合物の合成方法には特に制限はないが、前記一般式(I)のR1が−(CH2a−OHで表されるヒドロキシアルキル基である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物[前記一般式(VIII)]の製造に用いる2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物[前記一般式(VIII)]は、下記の(1)、(2)の工程を含む方法により合成することが好ましい。
【0064】
(1)前記一般式(V)で表されるアニリン誘導体をジアゾ化させてジアゾ化合物を得て、該ジアゾ化合物を水と接触させて分解させる、又は該ジアゾ化合物を炭素原子数1〜7のカルボン酸もしくはその無水物と反応させて前記一般式(VI)で表されるカルボン酸フェニル化合物とした後、水もしくはメタノールと接触させて分解させることによって、前記一般式(III)で表される4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物を得る工程。
(2)上記(1)の工程で得られた4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物と、前記一般式(IV)で表される2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩とを反応させる工程。
【0065】
上記2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物の合成方法を、合成対象物が2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール化合物[一般式(VIII)のaが2]である場合を例にとり次に説明する。
【0066】
(1)の工程で用いるアニリン誘導体の例としては、下記式(a)〜(c)で表される化合物を挙げることができる。
【0067】
【化14】

【0068】
上記アニリン誘導体をジアゾ化させてジアゾ化合物を得る方法としては、アニリン誘導体を溶媒中にて亜硝酸塩と反応させる方法を用いることができる。溶媒は酸性水溶液及び炭素原子数1〜7のカルボン酸もしくはその無水物であることが好ましい。酸性水溶液の例としては硫酸水溶液及び塩酸水溶液を挙げることができる。カルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸及び安息香酸を挙げることができる。溶媒の使用量は、アニリン誘導体1gに対して好ましくは1〜100mLの範囲である。亜硝酸塩の例としては、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウムを挙げることができる。亜硝酸塩の使用量は、アニリン誘導体1モルに対して好ましくは1.0〜5.0モルの範囲、より好ましくは1.1〜3.0モルの範囲となる量である。ジアゾ化反応は、氷冷下、撹拌しながら行うことが好ましい。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間の範囲である。
【0069】
生成したジアゾ化合物を水と接触させて、分解させることによって4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールが生成する。ジアゾ化合物の分解反応は撹拌下に行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは50℃以上、溶媒の沸点以下である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間の範囲である。
【0070】
ジアゾ化反応時の溶媒に酸性水溶液を用いた場合には、ジアゾ化合物を生成させた後、加熱することによってジアゾ化合物を分解させることができる。この場合、加熱の前に酸性水溶液に尿素を加えて、酸性水溶液中に残存する亜硝酸イオンを尿素で分解させることが好ましい。
【0071】
また、生成したジアゾ化合物を炭素原子数1〜7のカルボン酸もしくはその無水物中で反応させてカルボン酸フェニル化合物とした後、水もしくはメタノールと接触させて分解させることによっても4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールが生成する。前記式(a)の4−アミノフェネチルアルコール及び前記式(b)のN−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]アセトアミドから得たジアゾ化合物を酢酸もしくは無水酢酸と反応させると、下記式(d)の酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルが生成する。また、前記式(c)のN−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミドから得たジアゾ化合物を酢酸もしくは無水酢酸と反応させると下記式(e)の酢酸4−(2−アセトキシエチル)フェニルが生成する。
【0072】
【化15】

【0073】
カルボン酸フェニル化合物の生成反応は撹拌下で行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは50℃以上、溶媒の沸点以下である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間の範囲である。
【0074】
カルボン酸フェニル化合物の分解反応は、アルカリ存在下で行うことが好ましい。アルカリ供給源の例としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び水酸化物を挙げることができる。カルボン酸フェニル化合物の分解反応は撹拌下で行うことが好ましい。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間の範囲である。
【0075】
ジアゾ化反応時の溶媒に炭素原子数1〜6のカルボン酸もしくはその無水物を用いた場合には、ジアゾ化合物を生成させた後、加熱することによってカルボン酸フェニル化合物を生成させることができる。
【0076】
上記の4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールの合成方法は、原料のアニリン誘導体、特に4−アミノフェネチルアルコールが工業的に入手が容易であり、また反応条件も比較的緩やかである。従って、上記の合成方法により、4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールを工業的に有利に合成することが可能となる。
【0077】
上記のようにして得られた4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールと、ニトロベンゼンジアゾニウム塩とを反応させて、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール化合物を得る方法としては、前記特許文献1(特開平9−316060号公報)に記載されている方法、すなわち4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールと2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩とをアルカリ存在下でカップリングさせてアゾ化合物を生成させ、次いで、生成したアゾ化合物をアルカリ存在下で還元する方法を用いることができる。
【実施例】
【0078】
[実施例1]2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]の製造
(1)4−ヒドキロキシフェネチルアルコールの合成
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、4−アミノフェネチルアルコール412mg(3.0ミリモル)を濃度1モル/Lの硫酸水溶液6mLに溶解させて調製した4−アミノフェネチルアルコール溶液を投入した。次いで、氷冷下、4−アミノフェネチルアルコール溶液を撹拌しながら、該溶液に亜硝酸ナトリウム252mg(3.6ミリモル)を水1mLに溶解して調製した亜硝酸ナトリウム水溶液を滴下し、さらに15分間撹拌して、4−アミノフェネチルアルコールをジアゾ化させてジアゾ化合物とした後、尿素72mg(1.2ミリモル)を水1mLに溶解させて調製した尿素水溶液を滴下し、5分間撹拌した。さらに撹拌を続けながら100℃の温度で1時間加熱して、ジアゾ化合物を水で分解反応させた。反応終了後、反応液を室温まで放冷し、反応液に酢酸エチルを加えて撹拌した後、静置し、有機層を分取した。有機層を濃縮し、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製した。精製後の濃縮物を1H−NMRで分析したところ、4−ヒドキロキシフェネチルアルコールが372mg生成したことが確認された(収率:90%)。
【0079】
得られた4−ヒドキロキシフェネチルアルコールの1H−NMR分析結果は、次の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ1.42(t,J=6.2Hz,1H)、2.80(t,J=6.6Hz,2H)、3.83(dt,J=6.2,6.5Hz,2H)、4.84(br,1H)、6.78(d,J=8.1Hz,2H)、7.10(d,J=8.1Hz,2H)
【0080】
(2)2−ニトロベンゼンジアゾニウムの塩酸塩水溶液の調製
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、2−ニトロアニリン304mg(2.2ミリモル)を濃塩酸0.84mLに溶解させて調製した2−ニトロアニリン溶液を投入し、70℃の温度に加熱して30分間撹拌した後、氷冷した。次いで、氷冷下、2−ニトロアニリン溶液を撹拌しながら、該溶液に亜硝酸ナトリウム152mg(2.2ミルモル)を水0.56mLに溶解して調製した亜硝酸ナトリウム水溶液を、1時間かけて滴下した後、さらに1時間撹拌を続けて2−ニトロベンゼンジアゾニウムの塩酸塩水溶液を調製した。
【0081】
(3)2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノールの合成
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、上記(1)で合成した4−ヒドキロキシフェネチルアルコール276mg(2.0ミリモル)と水酸化ナトリウム80mg(2.0ミリモル)と炭酸ナトリウム60mg(0.56ミリモル)とを水3.0mLに溶解させて調製した混合溶液を投入した。次いで、混合液の液温を約15℃に維持しながら、該混合液に上記(2)で調製した2−ニトロベンゼンジアゾニウムの塩酸塩水溶液を1時間かけて滴下した後、室温下で12時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応液中の固形物をろ過により回収し、減圧乾燥して4−(2−ヒドロキシエチル)−2−[(2H−ニトロフェニル)アゾ]フェノール545mg(収率:95%)を得た。
【0082】
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、得られた4−(2−ヒドロキシエチル)−2−[(2H−ニトロフェニル)アゾ]フェノールを投入し、2Nの水酸化ナトリウム水溶液3mLに溶解させた後、亜鉛粉末600mg(9.2ミルモル)を少しずつ加えた。次いで、70℃の温度で2時間撹拌した後、室温まで放冷し、亜鉛粉末をろ別した。母液は、濃塩酸を加えて酸性にした後、析出した固形物をろ別した。得られた固形物はトルエンで再結晶して、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール347mg(収率:68%)を得た。
【0083】
(4)2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]の合成
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、上記(3)で合成した2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール255mg(1.0ミリモル)、パラホルムアルデヒド15mg(0.5ミリモル)、塩化鉄(III)16mg(0.1ミリモル)、塩化メチレン2mLを投入し、撹拌しながら50℃の温度で24時間加熱して反応させた。反応終了後、反応液を室温まで放冷し、反応液中の白色固形物をろ過により回収し、固形物を飽和重曹水と酢酸エチルとで洗浄した。洗浄後の白色固形物を1H−NMRで分析したところ、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]が299mg生成したことが確認された(収率:57%)。
【0084】
得られた2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール]の1H−NMR分析結果は次の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ2.89(t,J=6.4Hz,4H)、3.86(dt,J=5.9,6.4Hz,4H)、4.29(s,2H)、7.36(s,2H)、7.49(dd,J=3.1,6.6Hz,4H)、7.94(dd,J=3.1,6.6Hz,4H)、8.19(d,J=2.19Hz,2H)、11.6(s,2H)
【0085】
[実施例2]2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]の製造
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール323mg(1.0ミリモル)、パラホルムアルデヒド15mg(0.5ミリモル)、塩化鉄(III)16mg(0.1ミリモル)、塩化メチレン2mLを投入し、撹拌しながら加熱して50℃の温度で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで放冷し、反応液に飽和重曹水と酢酸エチルとを加えて撹拌した後、静置し、有機層を分取した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮して白色の濃縮物を得た。得られた白色濃縮物を1H−NMRで分析したところ、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]が377mg生成したことが確認され(収率:57%)。
【0086】
得られた2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]の1H−NMR分析結果は、次の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ0.70(s,18H)、1.39(s,12H)、1.73(s,4H)、4.30(s,2H)、7.36(d,J=2.2Hz,2H)、7.47(dd,J=3.2,6.6Hz,4H)、7.93(dd,J=3.2,Hz,4H)
【0087】
[実施例3]2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]の製造
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール646mg(2.0ミリモル)、パラホルムアルデヒド30mg(1.0ミリモル)、ドデシルベンゼンスルホン酸326mg(1.0ミリモル)、トルエン2mLを投入し、撹拌しながら加熱して120℃の温度で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで放冷し、反応液に飽和重曹水と酢酸エチルとを加えて撹拌した後、静置し、有機層を分取した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮して白色の濃縮物を得た。得られた白色濃縮物を1H−NMRで分析したところ、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]が598mg生成したことが確認された(収率:57%)。
【0088】
[合成例1]
(1)酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルの合成
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、4−アミノフェネチルアルコール412mg(3.0ミリモル)を酢酸5mLに溶解させて調製した4−アミノフェネチルアルコール溶液を投入した。次いで、氷冷下、4−アミノフェネチルアルコール溶液を撹拌しながら、該溶液に亜硝酸ナトリウム420mg(6.0ミリモル)を少量ずつ加え、その後1時間撹拌して4−アミノフェネチルアルコールをジアゾ化させてジアゾ化合物とした。さらに撹拌を続けながら100℃の温度で1時間加熱してジアゾ化合物を反応させた。反応終了後、反応液を室温まで放冷した後、反応液を減圧下で濃縮した。得られた濃縮物を1H−NMRで分析したところ、酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルが生成したことが確認された。
【0089】
得られた酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルの1H−NMR分析結果は、次の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ2.29(s,3H)、2.84(t,J=6.5Hz,2H)、3.83(t,J=6.5Hz,2H)、7.02(d,J=8.43Hz,2H)、7.23(d,J=8.43Hz,2H)
【0090】
(2)4−ヒドキロキシフェネチルアルコールの合成
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、上記(1)で得られた酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルをメタノールに溶解させて調製した酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル溶液を投入した。次いで、室温下、酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル溶液に炭酸カリウム414mg(3.0ミリモル)を投入し、撹拌して酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルをメタノールで分解反応させた。反応終了後、反応液に酢酸エチルを加えて撹拌した後、静置し、有機層を分取した。有機層を乾燥、濃縮した後、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製した。精製後の濃縮物を1H−NMRで分析したところ、4−ヒドキロキシフェネチルアルコールが382mg生成したことが確認された(収率:92%)。
【0091】
[合成例2]
(1)N−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミドの合成
撹拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、4−アミノフェネチルアルコール2.74g(20.0ミリモル)と塩化メチレン10mLとを投入し、撹拌して4−アミノフェネチルアルコールを溶解させた後、ピリジン4.9mL(60ミリモル)を投入した。次いで、氷冷下、無水酢酸5.7mLをゆっくり滴下し、室温下で1時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応液に濃度5%の塩酸水溶液と酢酸エチルとを加えて撹拌した後、静置し、有機層を分取した。有機層を飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄した後、乾燥、濃縮した。得られた濃縮物を1H−NMRで分析したところ、N−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミドが4.41g生成したことが確認された(収率:99.7%)。
【0092】
得られたN−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミドの1H−NMR分析結果は、次の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ2.03(s,3H)、2.13(s,3H)、2.88(t,J=6.96Hz,2H)、4.24(t,J=6.96Hz,2H)、7.12(d,J=8.43Hz,2H)、7.45(d,J=8.43Hz,2H)、8.33(br,1H)
【0093】
(2)酢酸4−(2−アセトキシエチル)フェニルの合成
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、上記(1)で得られたN−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミド222mg(1.0ミリモル)と無水酢酸10mLと酢酸5mLとを投入し、撹拌してN−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミドを溶解させた。次いで、氷冷下、N−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミド溶液を撹拌しながら、該溶液に亜硝酸ナトリウム140mg(2.0ミリモル)を少しずつ加え、その後1時間撹拌してN−[4−(2−アセトキシエチル)フェニル]アセトアミドをジアゾ化させてジアゾ化合物とした。さらに撹拌を続けながら100℃の温度で1時間加熱してジアゾ化合物を反応させた。反応終了後、反応液を室温まで放冷し、反応液にメタノール5mLを加え、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物に飽和重曹水と酢酸エチルとを加えて撹拌した後、静置し、有機層を分取した。有機層を乾燥、濃縮し、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製した。精製後の濃縮物を1H−NMRで分析したところ、酢酸4−(2−アセトキシエチル)フェニルが175mg生成したことが確認された(収率:79%)。
【0094】
得られた酢酸4−(2−アセトキシエチル)フェニルの1H−NMR分析結果は、次の通りであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ2.04(s,3H)、2.29(s,3H)、2.93(t,J=7.0Hz,2H)、4.27(t,J=7.0Hz,2H)、7.02(d,J=8.43Hz,2H)、7.22(d,J=8.43Hz,2H)
【0095】
(3)4−ヒドキロキシフェネチルアルコールの合成
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、上記(2)で得られた酢酸4−(2−アセトキシエチル)フェニル667mg(3.0ミリモル)をメタノール5mLに溶解させて調製した溶液を投入した。次いで、室温下、酢酸4−(2−アセトキシエチル)フェニル溶液に炭酸カリウム828mg(6.0ミリモル)を投入し、撹拌して、酢酸4−(2−アセトキシエチル)フェニルをメタノールで分解反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製した。精製後の濃縮物を1N−NMRで分析したところ、4−ヒドキロキシフェネチルアルコールが382mg生成したことが確認された(収率:92%)。
【0096】
[合成例3]
(1)N−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]アセトアミドの合成
撹拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、撹拌装置及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、4−アミノフェネチルアルコール412mg(3.0ミリモル)と、無水酢酸10mLとを投入し、30分間撹拌して反応させた。反応終了後、反応液中の反応生成物を1N−NMRで分析したところ、反応生成物はN−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]アセトアミドであり、反応液はN−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]アセトアミド溶液であることが確認された。
【0097】
(2)酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルの合成
上記(1)で得られたN−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]アセトアミド溶液に酢酸5mLを加えた後、氷冷下、該溶液を撹拌しながら、該溶液に亜硝酸ナトリウム420mg(6.0ミリモル)を少量ずつ加えて、その後30分撹拌してN−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]アセトアミドをジアゾ化させてジアゾ化合物とした。その後、さらに撹拌を続けながら100℃の温度に加熱してジアゾ化合物を反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、反応液にメタノール5mLを加え、減圧下濃縮した。得られた濃縮液に飽和重曹水と酢酸エチルとを加えて撹拌した後、静置し、有機層を分取した。有機層を乾燥、濃縮し、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製した。精製した濃縮物を1N−NMRで分析したところ、酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルが421mg生成したことが確認された(収率:77%)。
【0098】
(3)4−ヒドキロキシフェネチルアルコールの合成
撹拌装置及び還流冷却器を備えた内容量50mLのガラス製反応器に、上記(2)で得られた酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル421mg(2.33ミリモル)をメタノール5mLに溶解させて調製した溶液を投入した。次いで、室温下、炭酸カリウム414mg(3.0ミリモル)を投入し、撹拌して、酢酸4−(2−ヒドロキシエチル)フェニルをメタノールで分解反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製した。精製後の濃縮物を1N−NMRで分析したところ、4−ヒドキロキシフェネチルアルコールが316mg生成したことが確認された(収率:98%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

(但し、式(I)中、R1は、炭素原子数1〜12のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数1〜18のアルキル基であり、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示す)で表されるメチレンビス(ベンゾトリアゾリルフェノール)化合物の製造方法であって、下記一般式(II):
【化2】

(但し、式(II)中、R1及びR2は上記式(I)と同じである)で表されるベンゾトリアゾリルフェノール化合物を、有機溶媒中にて、有機酸及びルイス酸からなる群より選ばれる酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒド、トリオキサン及びジメトキシメタンからなる群より選ばれるホルムアルデヒド誘導体と反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
有機溶媒が炭化水素又はハロゲン化炭化水素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸触媒が、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸又はジクロロ酢酸からなる群より選ばれる有機酸、又は塩化鉄(III)、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素、三塩化チタン、四塩化チタン、三塩化モリブテン、五塩化モリブテン、臭化亜鉛、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化ガリウム(II)、塩化スズ、臭化スズ、三フッ化アンチモン、五フッ化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、塩化ビスマス、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチル亜鉛及び金属トリフラートからなる群より選ばれるルイス酸である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)のR1が、−(CH2a−OH(但し、aは1〜12の整数)で表されるヒドロキシアルキル基であって、
ベンゾトリアゾリルフェノール化合物が下記一般式(III):
【化3】

(但し、式(III)中、aは1〜12の整数を示す)で表される4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物と、下記一般式(IV):
【化4】

(但し、式(IV)中、X-はアニオンを示し、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコシキ基を示す)で表される2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩とを反応させることによって得たものである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物が下記一般式(V):
【化5】

(但し、式(V)中、Y1及びY2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜7のアシル基を示し、aは1〜12の整数を示す)で表されるアニリン誘導体をジアゾ化させてジアゾ化合物を得て、該ジアゾ化合物を水と接触させて分解させる、又は該ジアゾ化合物を炭素原子数1〜7のカルボン酸もしくはその無水物と反応させて下記一般式(VI):
【化6】

(但し、式(VI)中、Zは炭素原子数1〜7のアシル基を示し、Y2及びaは上記式(V)と同じである)で表されるカルボン酸フェニル化合物とした後、水もしくはメタノールと接触させて分解させることによって得られたものである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
下記一般式(VII):
【化7】

(但し、式(VII)中、R2は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アリール基又は炭素原子数1〜4のアルコシキ基を示し、aは1〜12の整数を示す)で表される2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール]化合物の製造方法であって、下記一般式(V):
【化8】

(但し、式(V)中、Y1及びY2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜7のアシル基を示し、aは上記式(VII)と同じである)で表されるアニリン誘導体をジアゾ化させてジアゾ化合物を得て、該ジアゾ化合物を水と接触させて分解させる、又は該ジアゾ化合物を炭素原子数1〜7のカルボン酸もしくはその無水物と反応させて下記一般式(VI):
【化9】

(但し、式(VI)中、Zは炭素原子数1〜7のアシル基を示し、Y2は上記式(V)と同じ、aは上記式(VII)と同じである)で表されるカルボン酸フェニル化合物とした後、水もしくはメタノールと接触させて分解させることによって、下記一般式(III):
【化10】

(但し、式(III)中、aは上記式(VII)と同じである)で表される4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物を得る工程;
該4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物と、下記一般式(IV):
【化11】

(但し、式(IV)中、X-はアニオンを示し、R2は上記式(VII)と同じである)で表される2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩とを反応させて、下記一般式(VIII):
【化12】

(但し、式(VIII)中、R2及びaは上記式(VII)と同じである)で表される2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物を得る工程;そして、
該2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシアルキルフェノール化合物を、有機溶媒中にて、有機酸及びルイス酸からなる群より選ばれる酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒド、トリオキサン及びジメトキシメタンからなる群より選ばれるホルムアルデヒド誘導体と反応させる工程を含む方法。

【公開番号】特開2011−6370(P2011−6370A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153858(P2009−153858)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(509183844)東永産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】