説明

メチレン架橋ポリフェニルポリアミンの製造方法

本発明に従ってアニリンとホルムアルデヒドからメチレン架橋ポリフェニルポリアミンを製造する方法は、a)アニリンとホルムアルデヒドとを縮合反応させて縮合物を得る工程、ここでアニリン対ホルムアルデヒドのモル比が2〜3.5の範囲で選定される;b)第1の触媒反応段階において、該縮合物を、クレー、ケイ酸塩、シリカ−アルミナ、及びイオン交換樹脂からなる群から選ばれる固体触媒上にて約30℃〜約100℃の範囲内の反応温度で反応させる工程、これによりアミノベンジルアミンを含む中間体混合物が得られる;及びc)後続の触媒反応段階において、該中間体混合物を、ゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料からなる群から選ばれる次の固体触媒の存在下にて、約70℃〜約250℃の範囲内の温度でメチレン架橋ポリフェニルポリアミンに転化させる工程、ここで該後続の触媒反応段階における反応温度が、該第1の触媒反応段階における反応温度より高く、これにより該メチレン架橋ポリフェニルポリアミンが得られる;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレン架橋ポリフェニルポリアミン〔例えば、特に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン及び/又は2,2’−ジアミノジフェニルメタンなどのジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー〕の製造方法に関する。本発明の製造方法は触媒反応に適用され、主な物質としてアニリンとホルムアルデヒドを使用する。
【背景技術】
【0002】
ジアミノジフェニルメタン(MDA)は、エポキシ樹脂の製造のほかに、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を製造するための中間体であり、MDIは、ウレタン/ウレアをベースとするポリマーを製造するための反応物である。ジアミノジフェニルメタン、より一般的にはメチレン架橋ポリフェニルポリアミンは、通常、アニリンあるいはアニリン誘導体から製造され、これらの化合物とホルムアルデヒドとを強酸(例えば塩酸、硫酸、又はリン酸)の存在下にて反応させる。この種の合成について記述している文献として、非特許文献1〜3がある。
【0003】
このようなプロセスに使用される強酸の欠点を抑制するため、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合生成物(アミナルとも呼ばれる)のメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの反応を触媒する幾つかの触媒が提案されている。珪藻土、クレー、又はゼオライトといった幾つかの触媒が提案されているが、米国特許第6,410,789号に記載のように、活性が不十分であるか、実使用時間が極めて短い。メチレン架橋ポリフェニルポリアミンを製造するための一段階反応における種々のゼオライトの使用が、米国特許第6,380,433号に開示されている。米国特許第4,039,580号では、アニリンとホルムアルデヒドの縮合で得られる脱水縮合物を、先ず第1の触媒反応によって反応させてアミノベンジルアミンにし、次いでこれをさらに反応させてメチレン架橋ポリフェニルポリアミンを得る、という二段階法が開示されている。両方の触媒反応に対する触媒は、珪藻土、クレー又はゼオライトである。
【0004】
さらに、アミナルからMDAへの転化時に副反応が起こり、いわゆるN−メチル化MDAが形成される。N−メチル基はイソシアネート基に変換できないため、ポリイソシアネートやジイソシアネートとイソシアネート反応性化合物とを反応させるときに、ポリウレタンやポリウレアの生成に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
メチレン架橋ポリフェニルポリアミンを得るのに適した幾つかの触媒の選択性、及びアミナルのN−メチル化MDAへの転化を触媒するトレンドについて、非特許文献4に説明されている。さらに、非特許文献5も、種々の適切な触媒に関する上記特徴を説明している。
【0006】
工業プロセスでの使用における触媒のさらなる要件は、実用寿命と耐用年数である。触媒は通常、時間とともに詰まったり不活性化したりする傾向がある。触媒を再生するには、触媒床を洗浄する必要がある。このような洗浄を行うには、プロセスを停止する必要があったり、少なくともプロセスフローから触媒床を取り出す必要がある。こうしたメンテナンスには、追加の作業とコストが必要となるだけでなく、触媒床の摩滅も引き起こすことがあるため、収率の低下を招くことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,410,789号
【特許文献2】米国特許第6,380,433号
【特許文献3】米国特許第4,039,580号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.57,888,1975
【非特許文献2】Chem.Tech.,November 1984,670
【非特許文献3】Kirk Othmer,Vol.II,第3版,338−348
【非特許文献4】Applied Catalysts A:general 307(2006) 128−136;C.Perego ea al.,“Amorphous aluminosilicate catalysts for hydroxylation of aniline and phenol”
【非特許文献5】Chemical Communications 2004,pp.2008−2010;A.Corma et al.,“Replacing HCl by solid acids in the industrial processes:synthesis of diamino diphenyl methane(DADPM) for producing polyurethanes”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、使用する触媒床により長い耐用年数と実用寿命をもたらす、メチレン架橋ポリフェニルポリアミン(特に、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー)の製造方法を提供することである。本発明の目的は、触媒床を洗浄するためのメンテナンス介入がより少なくて済む、メチレン架橋ポリフェニルポリアミン(特に、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー)の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による幾つかのプロセスは、製造されるメチレン架橋ポリフェニルポリアミン中にて30重量%〜85重量%の範囲のジアミン含量を得ることができる、という利点を有する。ジアミノジフェニルメタン(MDA)の好ましい場合では、4,4’−MDAの総量が、存在する全アミンの総重量を基準として75重量%を超えるのが好ましい。
【0011】
本発明による幾つかのプロセスは、縮合物を生成させるのに、ホルムアルデヒドの量と比べて比較的少量のアニリンを使用してプロセスを実施できる〔すなわち、アニリン対ホルムアルデヒドの低いモル比(以後モル比A/Fと呼ぶ)を使用して実施できる〕、という利点を有する。本発明による幾つかのプロセスは、プロセス全体にわたって、縮合物を生成させるのに適用される最初のA/Fを変えることを必ずしも必要としない、という利点を有する。本発明による幾つかのプロセスは、製造されるメチレン架橋ポリフェニルポリアミン中に生成するN−メチル基の総量を少なくすることができる、という利点を有する。
【0012】
これら利点の幾つか又は全ては、本発明のプロセスを使用することによって得ることができる。
本発明の第1の態様によれば、本発明に従ってアニリンとホルムアルデヒドからメチレン架橋ポリフェニルポリアミンを製造する方法は、a)アニリンとホルムアルデヒドとを縮合反応させて縮合物を得る工程;b)第1の触媒反応段階において、該縮合物を、クレー、ケイ酸塩、シリカ−アルミナ、及びイオン交換樹脂からなる群から選ばれる固体触媒上にて反応させる工程、これによりアミノベンジルアミンを含む中間体混合物が得られる;及びc)後続の触媒反応段階において、該中間体混合物を、ゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料からなる群から選ばれる次の固体触媒の存在下にてメチレン架橋ポリフェニルポリアミンに転化させる工程、これにより該メチレン架橋ポリフェニルポリアミンが得られる;を含む。
【0013】
「メチレン架橋ポリフェニルポリアミン」とは、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマーとを含む。本発明の製造方法は特に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び/又は2,2’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン異性体を得るのに適している。
【0014】
アニリンとホルムアルデヒドとの縮合反応及び縮合物(中性縮合物とも呼ばれ、しばしば「アミナル」と呼ばれる)の転化は、同じ1つの工程で行うことができるが、2つの別個の連続した工程であるのが好ましい。
【0015】
アニリンとホルムアルデヒドとの縮合反応は、アニリンとホルムアルデヒドを、触媒の存在下にて約30℃〜約100℃の範囲で反応させることによって行うのが好ましい。反応終了後、種々の方法(例えば、物理的分離や蒸留等)によって過剰の水を除去することができる。アニリン対ホルムアルデヒドのモル比(すなわちモル比A/F)は、2〜3.5の範囲で、好ましくは2.5〜3.5の範囲で〔例えば2.5〜3.2の範囲で(例えば2.5〜3の範囲で)〕選択される。
【0016】
一般に、使用するA/F比が小さくなるほど、形成される化学種の分子量が高くなる、ということが見出されている。アニリンの使用量を徐々に増大させていくにつれて、アミナルの収率が徐々に増大するが、より高分子量の化学種の量は減少する。ホルムアルデヒドは、市販されている形態のいずれでも使用することができる。従って、ホルマリン、パホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの安定化メタノール溶液、及びガス等のどれでも使用することができる。
【0017】
縮合物を中間体混合物に転化させるための条件は、約30℃〜約100℃の範囲内(さらに好ましくは約30℃〜約70℃の範囲内)の反応温度を含む。このプロセスに関しては、圧力はそれほど重要なことではない。しかしながら圧力は、液相反応状態をもたらすに足る圧力でなければならない。従って、0.1〜5Mpaの範囲の圧力を使用できるのが好ましい。
【0018】
本発明による、中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー)への転化は、中間体混合物を、1種以上の触媒上にて、約70℃〜約250℃の範囲内(さらに好ましくは約100℃〜約200℃の範囲内)の反応温度で反応させることによって行われる。この反応温度は、縮合物の転化に対して使用する温度より高い。このプロセスに関しては、圧力はそれほど重要なことではない。しかしながら圧力は、液相反応状態をもたらすに足る圧力でなければならない。従って0.1〜5Mpaの範囲の圧力を使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の幾つかの実施態様によれば、中間体混合物を得るための第1の触媒反応段階において使用する触媒は、層状ケイ酸塩材料とクレーからなる群から選択することができる。このような好ましい材料の例としては、カオリナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、セピオライト、及びアタパルジャイトなどがある。
【0020】
工程b)において言及されている触媒反応は、縮合物をアミノベンジルアミン〔例えば、2−アミノベンジルアニリンや4−アミノベンジルアニリン(それぞれ2−ABA及び4−ABAとしても知られている)〕に変える反応である。
【0021】
縮合物からアミノベンジルアミンを含む中間体混合物への転化は、中性縮合物からのアミナルの少なくとも90重量%がアミノベンジルアミンに転化されるように行うのが好ましい。中間体混合物の70重量%がアミノベンジルアミンであるのが好ましい。中間体混合物は、N−メチル化物質を多くとも0.5重量%含むのが好ましい。中間体混合物は、メチレン架橋ポリフェニルポリアミン(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び/又は2,2’−ジアミノジフェニルメタン)を多くとも20重量%含むのが好ましい。
【0022】
縮合物から中間体混合物への転化は、バッチ方式、半連続方式、又は連続方式で行うことができる。固定床反応器を使用できるのが好ましい。触媒粒子の形態は、好ましい反応器構造に応じて変えることができ、ミクロ回転楕円体粒子、顆粒、押出物、及びペレット等を含んでよい。反応はさらに、1種上の反応器タイプと1種以上の触媒タイプとを組み合わせて使用して行うこともできる。作製される触媒は、シリカ、シリカ−アルミナ、及びアルミナ等の結合剤を含んでよい。好ましい固定床反応器構造の場合、縮合物から中間体混合物への転化に対する重量空間速度(WHSV)は、1時間当たり0.1〜10の範囲であるのが好ましい。重量空間速度(WHSV)は、触媒の単位質量につき1時間当たりの質量流量である。
【0023】
第2の触媒反応段階において、中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの転化に使用する固体触媒は、ゼオライト、離層ゼオライト、又は秩序メソポーラス材料であるのが好ましい。本発明の幾つかの実施態様によれば、次の触媒は、ゼオライトβ、離層ゼオライトITQ2、離層ゼオライトITQ18、及び秩序メソポーラス材料MCM−41からなる群から選択することができる。
【0024】
中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー)への転化のために使用する触媒は、ゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料を含めた種々の不均一酸触媒の群からの触媒であるのが好ましい。本発明の範囲内で使用することができるゼオライトの例としては、モルデナイト、フォージャサイト、Yゼオライト、MCM22、ERB−1、及びゼオライトベータなどがある。使用できる離層ゼオライトの例としては、ITQ2、ITQ6、ITQ18、及びITQ20などがある。秩序メソポーラス材料の種類としては、MCM−41、MCM−48、SBA−15、及びMCM−56などがある。好ましい触媒は、ゼオライトベータ、離層ゼオライトであるITQ2とITQ18、及び秩序メソポーラス材料であるMCM−41である。
【0025】
中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー)への反応は、バッチ方式、半連続方式、又は連続方式で行うことができる。固定床反応器を使用できるのが好ましい。触媒粒子の形態は、好ましい反応器構造に応じて変えることができ、ミクロ回転楕円体粒子、顆粒、押出物、及びペレット等を含んでよい。反応はさらに、1種上の反応器タイプと1種以上の触媒タイプとを組み合わせて使用して行うこともできる。作製される触媒は、シリカ、シリカ−アルミナ、及びアルミナ等の結合剤を含んでよい。好ましい固定床反応器構造の場合、中間体構造物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの転化での固定床反応器に対する重量空間速度(WHSV)は、1時間当たり0.1〜10の範囲であるのが好ましい。重量空間速度(WHSV)は、触媒の単位質量につき1時間当たりの質量流量である。
【0026】
アミノベンジルアミンを含む中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの転化は、中間体混合物からのアミノベンジルアミンの少なくとも99重量%がメチレン架橋ポリフェニルポリアミンに転化されるように行うのが好ましい。ジアミノジフェニルメタン異性体(例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び/又は2,2’−ジアミノジフェニルメタン)を得ようとする場合、メチレン架橋ポリフェニルポリアミンの50〜80重量%が4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、又は2,2’−ジアミノジフェニルメタンであるのが好ましい。メチレン架橋ポリフェニルポリアミンの少なくとも60重量%が4,4’−ジアミノジフェニルメタンであるのがさらに好ましい。メチレン架橋ポリフェニルポリアミンは、N−メチル化合物を多くとも0.5重量%しか含まないのが好ましい。
【0027】
この後続する触媒反応により、これらのアミノベンジルアミンがメチレン架橋ポリフェニルポリアミン〔例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(4,4’−MDA又はp,p’−MDAとも呼ばれる)、2,4’−ジアミノジフェニルメタン(2,4’−MDA又はo,p’−MDAとも呼ばれる)、及び/又は2,2’−ジアミノジフェニルメタン(2,2’−MDA又はo,o’−MDAとも呼ばれる)〕に転化される。これらのメチレン架橋ポリフェニルポリアミン(例えばジアミノジフェニルメタン)をホスゲン化することによってジイソシアネートやポリイソシアネートを得ることができる。
【0028】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び/又は2,2’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン異性体の濃度は、当業界によく知られている、市販の標準的な分析装置と定められた手順を使用して測定することができる。
【0029】
プロセス時の副反応は、N−メチル基を含む化合物の形成である。特定の理論で拘束されるつもりはないが、特に、アミノベンジルアミンとアミナルが同じ反応において存在するときにN−メチル化合物が形成される(このとき反応は、固体触媒によって触媒される)、と考えられる。これらのN−メチル基は、ホスゲン化によってイソシアネート基に変換することができず、得られるジイソシアネート又はポリイソシアネート中にこうしたN−メチル基が存在すると、ジイソシアネート又はポリイソシアネートとポリウレタンをもたらすための反応性基との反応が妨げられる。
【0030】
従って本発明のプロセスは、縮合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの触媒反応による二段階転化を含む。理由は明らかではないが、アミノベンジルアミンを含む中間体混合物を得るべくクレー、ケイ酸塩、シリカ−アルミナ、及びイオン交換樹脂からなる群から選ばれる固体触媒を使用することと、その後に、メチレン架橋ポリフェニルポリアミンを得るべくゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料からなる群から選ばれる次の固体触媒を使用することとを組み合わせると、メチレン架橋ポリフェニルポリアミン中のN−メチル化合物の量が減少するとともに、次の触媒の耐用年数もしくは実用寿命を大幅に延ばすことができる、ということが見出された。メチレン架橋ポリフェニルポリアミン中のN−メチル化合物の量は、H−NMRを使用して測定することができる。
【0031】
N−メチル化合物は、0.1〜0.5重量%の範囲内に保持するのが好ましい。
本発明のプロセスに2つの別個の触媒反応段階を組み込むことの利点は、中間体混合物をメチレン架橋ポリフェニルポリアミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー)に転化させるのに使用する触媒の活性が、アニリンとホルムアルデヒドからメチレン架橋ポリフェニルポリアミン(例えば、ジアミノジフェニルメタン異性体とそれらの高級同族体もしくは高級ポリマー)への完全な転化を果たすのに同じ触媒を使用する場合と比較して大幅に増大する、ということである。活性が倍増していることがわかるであろう。さらに、この触媒の実用寿命も増大し、その結果、プロセスメンテナンスの不定期もしくは構造的な介入のためのプロセス休止時間がより短くなり、この触媒の使用がより経済的になる。
【0032】
本発明のメチレン架橋ポリフェニルポリアミンは、種々の目的に対して有用である。例えば、応するジイソシアネートやポリイソシアネートを製造するための原材料として使用することができる。本発明のメチレン架橋ポリフェニルポリアミンはさらに、ポリオールの製造に対して(本発明のジアミン生成物やポリアミン生成物と、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとの重合反応によって形成される)、あるいはエポキシ樹脂系において使用することができる。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に従ったジアミノジフェニルメタンを得るためのプロセスを行うのに適した反応器が提供される。
本発明のこの態様によれば、メチレン架橋ポリフェニルポリアミンを得るための反応器が提供される。該反応器は、a)アニリンとホルムアルデヒドとの縮合物を収容するように装備された第1の触媒反応システム、この第1の触媒反応システムは、クレー、ケイ酸塩、シリカ−アルミナ、及びイオン交換樹脂からなる群から選ばれる固体触媒を含んでいて、アミノベンジルアミンを含む中間体混合物をもたらすよう、該固体触媒上にて約30℃〜約100℃の範囲内の温度で該縮合物を反応させるように適合されている;及びb)前記第1の触媒反応システムの中間体混合物を収容するように装備された第2の触媒反応システム、この第2の触媒反応システムは、ゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料からなる群から選ばれる固体触媒を含んでいて、該固体触媒上にて約70℃〜約250℃の範囲内の温度で該中間体混合物を反応させるように適合されており、第2の触媒反応システム中の反応温度が第1の触媒反応システム中の反応温度より高く、これにより第2の触媒反応システムがメチレン架橋ポリフェニルポリアミンをもたらす;を含む。
【0034】
触媒反応システムのそれぞれは、1つ以上の反応器ユニットを含むシステムであってよく、それぞれの反応器ユニットは、触媒が充填された1つ以上の管を含み、管には、並列にて反応させようとする生成物が装入されている。管は、実質的に垂直に配向させることができ、また生成物流れは、下から上であっても、上から下であってもよい。
【0035】
触媒反応システムのそれぞれは、他の反応器ユニットに直列に連結された複数の反応器ユニットを含んでよい。第1の触媒反応システムにおいては、それぞれの反応器ユニットに、クレー、ケイ酸塩、シリカ−アルミナ、及びイオン交換樹脂からなる群から選ばれる固体触媒を組み込むことができる。該固体触媒は、これらの反応器ユニット間で変わってよい。これとは別に、あるいはこのほかに、各反応器ユニットは、異なる固体触媒の後続層を有する床を含んでよい。第2の触媒反応システムにおいては、各反応器ユニットに、ゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料からなる群から選ばれる固体触媒を組み込むことができる。該固体触媒は、これらの反応器ユニット間で変わってよい。例えば、第2の触媒反応システムは、中間に加熱器を介在させた2つの反応器からなることができ、ここで第1の反応器が固体触媒ITQ18の層を収容し、加熱器の後に続く第2の反応器が、固体触媒ITQ18の層を、次いで固体触媒ITQ2の層を収容する。
【0036】
各反応器ユニットは断熱反応器ユニットであってよい。後続する断熱反応器ユニット間にてプロセス液体を冷却することができる。これは特に、第1の触媒反応システムが2つ以上の連結された断熱反応器ユニットを含む場合の、第1の触媒反応システムに対するケースである。後続する断熱反応器ユニット間にてプロセス液体を加熱することができる。これは特に、第2の触媒反応システムが2つ以上の連結された断熱反応器ユニットを含む場合の、第2の触媒反応システムに対するケースである。
【0037】
本発明の反応器は、アニリンとホルムアルデヒドを縮合させるための縮合反応システムをさらに含んでよい。この縮合反応システムは、縮合物を第1の触媒反応システムへの流入物として供給するために、第1の触媒反応システムに連結されている。
【0038】
独立クレームと従属クレームが、本発明の特定の好ましい特徴を明記している。従属クレームからの特徴は、必要に応じて、独立クレームもしくは他の従属クレームの特徴と組み合わせることができる。
【0039】
本発明の上記ならびに他の特性、特徴、及び利点は、以下に記載の詳細な説明から明らかとなろう。この説明は単に例としてなされているものであって、これによって本発明が限定されることはない。
【0040】
本発明を、特定の実施態様に関して説明する。理解しておかねばならないことは、特許請求の範囲において使用されている「含む(comprising)」という用語は、そのあとに記載されている手段に限定されると解釈すべきではなく、他の成分や工程を除外しない、という点である。従って、言及されている特徴、工程、又は成分の存在を明記しているが、1つ以上の他の特徴、工程、成分、又はこれらの群の存在もしくは付加を排除してはいない、と解釈すべきである。従って、「手段AとBを含む装置」という表現は、成分AとBのみからなる装置に限定していない。該表現は、本発明に関して装置のただ一つの関連成分がAとBである、ということを意味している。
【0041】
本明細書全体において、「1つの実施態様」や「ある実施態様」という表現がなされている。このような表現は、当該実施態様に関して説明されているある特定の特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様中に含まれている、ということを表わしている。従って、本明細書全体を通じて種々の場所に出てくる「1つの実施態様では」や「ある実施態様では」というフレーズは、必ずしも全てが同じ実施態様に言及しているわけではない(全て同じ実施態様への言及もありうるが)。さらに、本明細書の開示内容から当業者には明らかであるが、特定の特徴や特性は、1つ以上の実施態様において任意の適切な仕方で組み合わせることができる。
【0042】
次の用語は、単に本発明を理解しやすくするために用いられている。特に明記しない限り、「重量%(%w)」や「成分の重量パーセント」という用語は、該成分が存在していて、構成している一部分である組成物の総重量に対する該成分の重量%を表わしている。
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明のプロセスを説明する。言うまでもないが、これらの実施例は単に例証のためのものであって、これらの実施態様によって本発明が限定されることはない。
【実施例】
【0044】
実施例1
a)中性縮合物の合成
4000mlのアニリンを5リットルのオイル加熱反応器に加えた。オイルの温度を60℃に上げつつ、連続的に撹拌しながら825mlの47%ホルマリン水溶液を20分で加えた。ホルマリンの添加時に温度は約70℃に上昇した。ホルマリンの添加が完了した後、混合物をさらに30分撹拌している間に、温度が約55℃に低下した。混合物を一晩静置して相分離させてから、有機(ボトム)層を採集し、50℃のオーブン中に保存した。
【0045】
b)第1の触媒反応段階における縮合物の中間体混合物への転化
電気的に加熱された炉中にて90℃の温度に保持された、80gのシリカ−アルミナタブレット(Si−1221T、エンゲルハルト社)を詰めた直径1インチのカラムに、中性縮合物を、0.7ml/分の流量にて96時間で供給した。このようにして得られた中間体混合物を採集し、必要になるまで50℃にて保存した。
【0046】
c)後続の触媒反応による、中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの(具体的にはジアミノジフェニルメタンへの)転化
42gのITQ18触媒(直径1.2mmの押出物)を詰めた温度125℃の直径1インチのカラムに中間体混合物を、0.7ml/分の流量にて48時間で供給した。ジアミノジフェニルメタンを含む反応生成物を、ガスクロマトグラフィー(GC)によって時々分析した。48時間にわたってGC分析により測定したジアミノジフェニルメタンの収率は、38重量%から31重量%に低下した。ジアミノジフェニルメタンの約82%が4,4’−ジアミノジフェニルメタンであった。
【0047】
実施例2
a)中性縮合物の合成
中性縮合物を実施例1と同じやり方で製造した。
【0048】
b)第1の触媒反応段階における縮合物の中間体混合物への転化
電気的に加熱された炉中にて70℃の温度に保持された、100gの酸活性化クレー(F25、エンゲルハルト社)を詰めた直径1インチのカラムに、中性縮合物を、1ml/分の流量にて60時間で供給した。中間体混合物を採集し、必要になるまで50℃にて保存した。
【0049】
c)後続の触媒反応による、中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの(具体的にはジアミノジフェニルメタンへの)転化
41gのITQ18触媒(直径1.2mmの押出物)を詰めた温度130℃の直径1インチのカラムに中間体混合物を、1ml/分の流量にて55時間で供給した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー(GC)によって時々分析した。48時間にわたってGC分析により測定したジアミノジフェニルメタンの収率は、38重量%から35重量%にわずかに低下した。ジアミノジフェニルメタンの約85%が4,4’−ジアミノジフェニルメタンであった。
【0050】
実施例3
a)中性縮合物の合成
中性縮合物を実施例1と同じやり方で製造した。
【0051】
b)第1の触媒反応段階における縮合物の中間体混合物への転化
電気的に加熱された炉中にて80℃の温度に保持された、52gの非晶質含水アルミノケイ酸塩材料〔T4649、ズードケミー社(Sud−Chemie)〕を詰めた直径1インチのカラムに、中性縮合物を、1ml/分の流量にて48時間で供給した。中間体混合物を採集し、必要になるまで50℃にて保存した。
【0052】
c)後続の触媒反応による、中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの(具体的にはジアミノジフェニルメタンへの)転化
42gのITQ18触媒(直径1.2mmの押出物)を詰めた温度125℃の直径1インチのカラムに中間体混合物を、1ml/分の流量にて48時間で供給した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー(GC)によって時々分析した。48時間にわたってGC分析により測定したジアミノジフェニルメタンの収率は、41重量%から40重量%にわずかに低下した。ジアミノジフェニルメタンの約80%が4,4’−ジアミノジフェニルメタンであった。
【0053】
実施例4
a)中性縮合物の合成
中性縮合物を実施例1と同じやり方で製造した。
【0054】
b)第1の触媒反応段階における縮合物の中間体混合物への転化
中性縮合物を実施例3と同じやり方で処理した。
c)後続の触媒反応による、中間体混合物からメチレン架橋ポリフェニルポリアミンへの(具体的にはジアミノジフェニルメタンへの)転化
50gのゼオライトベータ触媒(CP814、PQコーポレーション)を詰めた温度125℃の直径1インチのカラムに中間体混合物を、1ml/分の流量にて68時間で供給した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー(GC)によって時々分析した。67時間にわたってGC分析により測定したジアミノジフェニルメタンの収率は、45重量%から43重量%に低下した。ジアミノジフェニルメタンの約68%が4,4’−ジアミノジフェニルメタンであった。
【0055】
実施例5(比較例):1つの触媒反応段階を使用する、縮合物からジアミノジフェニルメタンへの転化
a)中性縮合物の合成
中性縮合物を実施例1と同じやり方で製造した。
【0056】
b)反応生成物を含むジアミノジフェニルメタンへの縮合物の転化
41gのITQ18触媒(直径1.2mmの押出物)を詰めた温度125℃の直径1インチのカラムに縮合物を、1ml/分の流量にて69時間で供給した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー(GC)によって時々分析した。69時間にわたってGC分析により測定したジアミノジフェニルメタンの収率は、37重量%から20重量%に大幅に低下した。ジアミノジフェニルメタンの約81%が4,4’−ジアミノジフェニルメタンであった。
【0057】
実施例6(比較例):1つの触媒反応段階を使用する、縮合物からジアミノジフェニルメタンへの転化
a)中性縮合物の合成
中性縮合物を実施例1と同じやり方で製造した。
【0058】
b)反応生成物を含むジアミノジフェニルメタンへの縮合物の転化
50gのゼオライトベータ触媒(CP814、PQコーポレーション)を詰めた温度125℃の直径1インチのカラムに縮合物を、1ml/分の流量にて68時間で供給した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー(GC)によって時間をおいて分析した。68時間にわたってGC分析により測定したジアミノジフェニルメタンの収率は、41重量%から11重量%に大幅に低下した。ジアミノジフェニルメタンの約70%が4,4’−ジアミノジフェニルメタンであった。
【0059】
本発明による実施態様を提供するために、好ましい実施態様及び/又は材料について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良や変更を行ってよいことは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニリンとホルムアルデヒドからメチレン架橋ポリフェニルポリアミンを製造する方法であって、
(a)アニリンとホルムアルデヒドとを縮合反応させて縮合物を得る工程であって、アニリンとホルムアルデヒドのモル比が2〜3.5の範囲で選定される工程;
(b)第1の触媒反応段階において、該縮合物を、クレー、ケイ酸塩、シリカ−アルミナ、及びイオン交換樹脂からなる群から選ばれる固体触媒上にて約30℃〜約100℃の範囲内の反応温度で反応させて、アミノベンジルアミンを含む中間体混合物を得る工程;
(c)後続の触媒反応段階において、該中間体混合物を、ゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料からなる群から選ばれる後続の固体触媒の存在下にて、約70℃〜約250℃の範囲内の温度でメチレン架橋ポリフェニルポリアミンに転化させる工程、を含み、後続の触媒反応段階における反応温度が、第1の触媒反応段階における反応温度より高い、上記方法。
【請求項2】
第1の触媒反応段階で用いる前記触媒が、層状ケイ酸塩材料とクレーからなる群から選ばれる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
後続の触媒が、ゼオライトベータ、離層ゼオライトITQ2、離層ゼオライトITQ18、及び秩序メソポーラス材料MCM−41からなる群から選ばれる、請求項1〜2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項4】
メチレン架橋ポリフェニルポリアミンを得るための反応器であって、
(a)アニリンとホルムアルデヒドとの縮合物を収容するよう備えられた第1の触媒反応システム、該第1の触媒反応システムは、クレー、ケイ酸塩、シリカ−アルミナ、及びイオン交換樹脂からなる群から選ばれる固体触媒を含んでなり、該固体触媒上にて約30℃〜約100℃の範囲内の反応温度で該縮合物を反応させてアミノベンジルアミンを含む中間体混合物が得られるように適合されている;
(b)該第1の触媒反応システムの中間体混合物を収容するように装備された第2の触媒反応システム、該第2の触媒反応システムは、ゼオライト、離層ゼオライト、及び秩序メソポーラス材料からなる群から選ばれる固体触媒を含んでなり、該固体触媒上にて約70℃〜約250℃の範囲内の温度で該中間体混合物を反応させるように適合されており、第2の触媒反応システムにおける反応温度が第1の触媒反応システムにおける反応温度より高く、第2の触媒反応システムによってメチレン架橋ポリフェニルポリアミンが得られる;
を備える上記装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のジアミノジフェニルメタンの製造方法を行うのに適した反応器。

【公表番号】特表2012−513374(P2012−513374A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541283(P2011−541283)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065863
【国際公開番号】WO2010/072504
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(500030150)ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】