説明

メチロール基を介して架橋可能なシリコーンポリマー

本発明の対象は、少なくとも2のオルガノポリシロキサン単位(S)および少なくとも1の、一般式(1)L12N−M1 (1)[式中、M1は、基−HCR1−OHを表し、R1は、水素を表すか、または−CNもしくは−ハロゲンにより置換されていてもよいC1〜C10−炭化水素基を表し、かつL1およびL2は、有機N−C結合基を表し、その際、少なくともL1は、少なくとも1のオルガノポリシロキサン単位(S)を有し、その際、L1中で少なくとも1のオルガノポリシロキサン単位(S)は、Si−C結合を介して結合しており、その際、L2中で、N−C結合は、1の脂肪族飽和炭素原子を介して行われ、かつその際、オルガノポリシロキサン単位(S)の少なくとも50%は、置換されていない炭化水素基およびSi−O−Si結合のみを有する]のメチロール基を有する化合物(M)、その製造および使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2のオルガノポリシロキサン単位および少なくとも1のメチロール基を有する、後架橋可能な貯蔵安定性化合物、その製造および使用に関する。
【0002】
シリコーンもしくはシリコーン含有調製物および複合材料は公知であり、かつフィルム、コーティングおよび被覆の形で、種々の材料および繊維の変性および仕上げ処理のために大量に使用される。その特性スペクトルにおいて、シリコーンもしくはシリコーン含有調製物は、多くの観点で純粋に有機のフィルム、コーティングおよび被覆に勝っている。たとえばシリコーン製品の使用は、他の方法では得られないが通常は所望されている特性、たとえば処理した支持体の流動性、気体透過性、耐摩耗性、疎水性、平滑性、手触りおよび光沢の著しい改善につながる。
【0003】
全ての被覆、特にその化学において限定されるシリコーン被覆の大きな問題は、そのつど処理される支持体上でしばしば付着力が不足することである(いわゆる被覆の耐久性)。このことは、被覆が機械的に容易に除去されうる、たとえば摩擦または擦れによって、あるいは化学的な要求、たとえば種々の溶剤との接触および/または特定のpH環境への曝露(たとえば洗浄工程において現れるようなpH環境)により、再び支持体からはく離しうることにつながる。
【0004】
耐久性の不足の問題を解決するための1つの手がかりは、個々のシリコーンポリマー鎖が相互にならびに処理すべき支持体と架橋し、このようにして機械的および化学的抵抗性ひいては全系の耐久性が向上されることにある。相互の架橋ならびに支持体への結合はこの場合、非共役結合の相互作用によっても、共役結合によっても行うことができる。
【0005】
この場合、非共役結合の相互作用は、特に水素架橋結合によって構築されている。これらはたとえばウレタン基または尿素基の形で熱可塑性シリコーンエラストマーの群のうちで相互に高い架橋密度をもたらし、かつ同様に支持体の水素架橋を形成する基(たとえばセルロース表面の場合のヒドロキシ単位)との相互作用によって、一定の固定ももたらす。このような熱可塑性シリコーンエラストマーの製造および使用は、特に刊行物EP0606532A1およびEP0342826A2に詳細に記載されている。
【0006】
もう1つの非共役架橋メカニズムは、シリコーンポリマーのルイス塩基/ルイス酸の基と、支持体またはポリマーのルイス酸/ルイス塩基の基との酸塩基相互作用に基づいている。このための例は、アミノ官能性シリコーン油であり、これらは周知のとおり、特にテキスタイルの疎水性および柔軟な手触りに肯定的な影響を与え、かつそのルイス塩基性のアミノ基に基づいて、ルイス酸の繊維に「近づく(aufziehen)」特性を有している。このようなシリコーンアミン油ならびにその適用はたとえばEP1555011Aに記載されている。
【0007】
両方のメカニズムは、これらの生じた耐久性が一過性かつ不十分であり、かつ被覆が機械的にも化学的にも容易に再び除去されうるという点で共通している。
【0008】
著しく改善された耐久性は、ポリマーおよび支持体の固定またはポリマー同士の架橋が、共有結合の形成によって行われる場合に達成される。
【0009】
共役架橋はたとえば、シリコーンポリマーがすでに製造において、たとえば三官能性の成分を使用することによって架橋することによって行うことができる。しかしこうして得られたポリマーは、その加工特性(たとえば溶融粘度、成形性、適用助剤中での溶解性)において否定的な影響を受ける。支持体への固定もまた通常は不可能である。従って適用を行った後に続く、その後の固定/架橋は、常に有意義である。
【0010】
このような後からの固定/架橋はたとえばシリコーンポリマー中、アルコキシシリル基の存在下に行うことができ、シリコーンポリマーは、支持体の水酸基またはその他のシリコーンポリマーの水酸基による加水分解および縮合によって、より良好な耐久性をもたらされる。このようなアルコキシシリル基含有のシリコーンポリマーは、たとえばEP1544223A1に記載されている。しかし通常、支持体への結合の際に生じるSi−O−CまたはSi−O−E−結合(E=支持体の元素)は、加水分解不安定性であり、従って容易に再度開くことができるため、特に水性環境中での良好な耐久性は通常は得られない。これに対して、比較的安定したシロキサン結合であるSi−O−Siの形成は通常、再び支持体を相応するシランで予め処理することを必要とする。
【0011】
後から共有架橋をもたらすためのもう1つの可能性は、シリコーンポリマー中への(メタ)アクリレート基の導入である。これらの基については、UV光による照射によって架橋し、かつ硬化することが公知である。このような光硬化性のシリコーンポリマーは公知であり、かつたとえばUS5635544に記載されている。しかし(メタ)アクリレート基の反応は通常、個々のポリマー鎖相互の架橋をもたらすのみであり、支持体への固定をもたらさない。しかし、効果的な固定のために必要な、支持体の(メタ)アクリル官能化は、煩雑であり、かつ高価である。
【0012】
純粋に有機ポリマーの範囲ですでに知られているもう1つの架橋メカニズムは、いわゆるN−メチロール架橋に関する。その際、適切なモノマーとの共重合によって、N−メチロールアミド基を有するポリマーが生じる。これらのポリマーについては、水の不存在下に高めた温度で、または酸性触媒の存在下にすでに低い温度でアルコール性の基に共有結合することが公知である。同様に、これらは相互に反応し、こうしてポリマーの架橋をもたらす。その際、いずれの場合にも、エーテルの共有結合が生じ、該結合は周知のとおり、極めて強力であり、かつ極端な物理学的な、もしくは化学的な負荷下に再び中断されるのみである。この効果をたとえばEP0143175Aは利用しており、ここではラジカル乳化重合によりポリマー分散液が生じ、該分散液は上記のメチロールメカニズムにより後架橋されている。メチロールアミド基は、原則としてアミンとホルムアルデヒドとの反応によって製造することができるが、しかし通常、この反応は、高分子量の縮合生成物につながり、該生成物はイミン中間段階を経由して高分子量の架橋構造を生じる。これらのアミンとホルムアルデヒドとの反応はすでに記載されている:
US3461100は、アルデヒドと第一級ジアミンおよびモノアミンとからなる縮合生成物を記載している。生じる高分子量の縮合生成物は、保護被覆として議論されている。DE10047643A1は、アルデヒドとシリコーンアミンとからなる高分子量の縮合生成物を記載しているが、しかし該生成物はもっぱら高分子量で高度に架橋して存在している。
【0013】
両方の文献において生成物はすでに反応後に高分子量で存在している。従って生成物は、もはや、アミンへのホルムアルデヒド分子の1付加生成物であるような反応性の形で存在しておらず、従って支持体とのその後の反応のためにも、または相互の後架橋反応のためにも、もはや用いられることがない。
【0014】
本発明の対象は、少なくとも2のオルガノポリシロキサン単位(S)および少なくとも1の、一般式(1)
12N−M1 (1)
[式中、
M1は、基−HCR1−OHを表し、
1は、水素を表すか、または−CNもしくは−ハロゲンにより置換されていてもよいC1〜C10−炭化水素基を表し、かつ
1およびL2は、有機N−C結合基を表し、
その際、少なくともL1は、少なくとも1のオルガノポリシロキサン単位(S)を有し、
その際、L1中で少なくとも1のオルガノポリシロキサン単位(S)は、Si−C結合を介して結合しており、
その際、L2中で、N−C結合は、1の脂肪族飽和炭素原子を介して行われ、かつ
その際、オルガノポリシロキサン単位(S)の少なくとも50%は、置換されていない炭化水素基およびSi−O−Si結合のみを有する]のメチロール基を有する化合物(M)である。
【0015】
化合物(M)は、第二級アミノ基含有シリコーンと、アルデヒド反応試薬との反応により容易に製造可能である。化合物(M)は、純粋な形で、ならびに有機溶液または水性分散液の形で製造することができる。
【0016】
化合物(M)は、貯蔵安定性であり、かつ一般式(1)のメチロール基を介して後架橋可能であり、かつ多くの支持体上で優れた耐久性を有している。このために多くの支持体は、前処理を必要としない。
【0017】
Si−C結合を介してL1中で結合しているオルガノポリシロキサン単位(S)には、別のオルガノポリシロキサン単位(S)が、Si−O−Si結合を介して結合していてもよい。有利には少なくとも5、特に少なくとも10のオルガノポリシロキサン単位(S)が、Si−O−Si結合を介して結合している。
【0018】
有利にはR1は、水素を表すか、または置換されていないか、もしくは置換されたC1〜C3−炭化水素基、特に水素、メチルまたはエチルを表す。
【0019】
化合物(M)は、有利には一般式(2)
Q−(2a,2b)c−Q (2)
を有していてもよく、その際、単位2aおよび2bは、ランダムに、ブロック状に、交互に、またはこれらの混合物として配置されていてもよく、その際、単位2aおよび2bは、一般式(2a)および(2b)
【化1】

[式中、
lおよびcは、少なくとも1の整数を表し、
5は、M1または水素を表すが、ただし、少なくとも1の基R5は、水素ではなく、
Rは、水素を表すか、または一価の、−CN、−NCO、−NR22、−COOH、−COOR2、−PO(OR22、−ハロゲン、−アクリル、−エポキシ、−SH、−OHまたは−CONR22により置換されていてもよいC1〜C20−炭化水素基またはC1〜C20−炭化水素オキシ基を表し、該基において、そのつど1もしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−、−NR2−、−(CH2CH2O)n−または−(CH2CHCH3O)n−により置換されていてもよく、かつこれらにおいて、1もしくは複数の、相互に隣接していないメチン単位は、基−N=、−N=N−または−P=により置換されていてもよく、
2は、水素を表すか、または一価の、−CN、−NCOまたは−ハロゲンにより置換されていてもよいC1〜C10−炭化水素基を表し、
nは、1〜1000の整数を表し、
Xは、1〜60個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、該基において、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−または−S−により置換されていてもよく、
Aは、酸素原子、硫黄原子または−NR5−を表し、
Zは、酸素原子、硫黄原子または−NR5−を表し、
Yは、二価の、フッ素または塩素により置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、その際、N−C結合は、脂肪族飽和炭素原子を介して行われ、
Dは、フッ素、塩素、C1〜C6−アルキル−またはC1〜C6−アルキルエステルにより置換されていてもよい、1〜700個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、該基において、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−により置換されていてもよく、該基は同様に、中和されているか、または遊離のアミン基、カルボン酸基またはスルホン酸基を有していてもよく、かつ
Qは、反応性の、または非反応性の末端基を表し、該基は、ポリマーに共有結合している]に相応する。
【0020】
nは、有利には少なくとも3、特に少なくとも25および有利には最大で800、特に最大で400、とりわけ有利には最大で250の整数を表す。
【0021】
lは、有利には少なくとも2、特に少なくとも5および有利には最大で200、特に最大で100、とりわけ有利には最大で50の整数を表す。
【0022】
cは、有利には少なくとも2、特に少なくとも5および有利には最大で100、特に最大で50、とりわけ有利には最大で20の整数を表す。
【0023】
有利にはRは、1〜6個の炭素原子を有する、特に置換されていない一価の炭化水素基を表す。
【0024】
特に有利な基Rは、メチル、エチル、ビニルおよびフェニルである。
【0025】
有利にはR2は、水素を表すか、または1〜6個の炭素原子を有する、特に置換されていない一価の炭化水素基を表す。
【0026】
有利にはXは、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基を表す。有利にはアルキレン基Xは、中断されていないか、または1回中断されているのみである。
【0027】
有利には、NH基、酸素原子または硫黄原子を表す。
【0028】
有利にはZは、酸素原子、硫黄原子またはNH基を表す。
【0029】
有利にはYは、3〜13個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を表し、該基は有利には置換されていない。有利にはYは、アルアルキレン基、線状もしくは環式のアルキレン基を表す。
【0030】
有利にはDは、少なくとも2個の炭素原子および最大で12個の炭素原子を有するアルキレン基を表す。同様に有利にはDは、ポリオキシアルキレン基、特に少なくとも20個、特に少なくとも100個の炭素原子および最大で800個、特に最大で200個の炭素原子を有するポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基を表す。さらに少なくとも2個の炭素原子および最大で12個の炭素原子を有するアルキレン基が有利であり、これは中和された、または遊離のカルボン酸基、スルホン酸基またはアミノ基により置換されている。
【0031】
末端基Qとして、水素が有利である。
【0032】
化合物(M)は、有利には一般式(3)
【化2】

[式中、
1は、二価の、置換されていてもよい芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族基(CR42bを表し、該基において、そのつど1もしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−、−NR4−、−(CH2CH2O)d−または−(CH2CHCH3O)d−により置換されていてもよく、かつ該基において、1もしくは複数の、相互に隣接していないメチン単位は、基−N=、−N=N−または−P=により置換されていてもよく、
2は、二価の、置換されていてもよい脂肪族基(CR42bを表し、該基において、そのつど1もしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−、−NR4−、−(CH2CH2O)d−または−(CH2CHCH3O)d−により置換されていてもよく、
4は、R2の意味を有し、
bは、1〜50の整数であり、
dは、1〜50の整数であり、
3およびR6は、Rの意味を有し、
rは、0、1または2の値であり、
sは、少なくとも1の整数であり、
tは、0または整数であり、かつ
k+m+p+qは、少なくとも2の整数を表す]を有する。
【0033】
1〜C20−炭化水素基およびC1〜C20−炭化水素オキシ基R3およびR6は、脂肪族飽和または不飽和、芳香族、直鎖状もしくは分枝鎖状であってよい。R3およびR6は、有利には1〜12個の原子、特に1〜6個の原子を有しており、有利には炭素原子のみを有しているか、または1のアルコキシ酸素原子と、その他は炭素原子のみを有する。有利にはR3およびR6は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C6−アルキル基またはフェニル基である。特に有利には、基R3は、水素、メチル、エチル、フェニルおよびビニルである。有利にはR6およびR4は水素であり、かつR3はメチルである。
【0034】
bおよびdは、有利には最大で20、特に最大で6の整数である。
【0035】
sは、有利には少なくとも2、最大で50、特に最大で10の整数である。
【0036】
tは、有利には最大で50、特に最大で10の整数である。
【0037】
一般式(3)のポリシロキサンは、線状、環式、分枝鎖状もしくは架橋していてもよい。k、m、p、q、sおよびtの合計は、有利には少なくとも3、特に8および最大で20000、特に最大で1000の整数である。
【0038】
有利にはp/k+m+p+qは、少なくとも0.5、特に少なくとも0.9である。
【0039】
化合物(M)の製造は、少なくとも2のオルガノポリシロキサン単位(S)と、少なくとも1の一般式(1*)
12N−H (1*)
の第二級アミノ基とを有する化合物(M)の前駆化合物と、一般式(4)
1−COH (4)
[上記式中で、L1、L2およびR1は、前記のものを表し、かつその際、オルガノポリシロキサン単位(S)の少なくとも50%は、もっぱら置換されていない炭化水素基およびSi−O−Si結合を有する]のアルデヒド反応試薬との反応によって行う。
【0040】
一般式(2)のシリコーンポリマーの製造は、有利にはその実験式において一般式(2)に相応する前駆化合物から出発して行うが、ただしその際、全ての基R5は、水素を表す。式中で全ての基R5が水素を表す一般式(2)のシリコーンポリマーの前駆化合物の製造は従来技術であり、かつたとえば文献EP1489129A1に記載されている。
【0041】
同様に、一般式(3)のシリコーンポリマーの製造は、有利にはその実験式において一般式(3)に相応する、相応する前駆化合物から行うが、ただしその際、全ての基M1およびR5は、水素を表す。
【0042】
その実験式において一般式(3)に相応し、その際、全ての基M1およびR5が水素を表すこのようなアミノ官能性シリコーンは、当業者に公知であり、かつ多様な態様で純粋な物質としても、完成した水性組成物としても入手可能である。その製造、その調製およびその使用はたとえばWO2005010078に記載されている。
【0043】
化合物(M)は、その製造の際に、固体として、有機溶液として、または水性分散液として生じる。
【0044】
メチロール基M1を化合物(M)の前駆化合物へ導入するために、該化合物を1もしくは複数のアルデヒド試薬によって処理する。アルデヒド反応試薬には、ホルムアルデヒドのモノマー形、たとえばホルムアルデヒドガスならびにアルデヒドの水溶液または有機溶液、ホルムアルデヒドと同様に縮合された形で、たとえばトリオキサンまたはその他のホルムアルデヒド縮合体の形のものが挙げられる。
【0045】
アルデヒド反応試薬を用いた化合物(M)の製造は、分散液として、溶液として、または固体の物質として、連続的に、または不連続的に行うことができる。この場合、有利には反応条件下での成分の最適かつ均一な混合を行い、その際、反応成分同士の相の非相容性は、場合により相容化剤によって防止される。
【0046】
相容化剤として、アルコール、たとえばイソプロパノール、エーテル、たとえばテトラヒドロフランおよびジオキサン、炭化水素、たとえばトルエン、塩素化炭化水素、ケトン、たとえばアセトンおよびメチルエチルケトンおよびエステル、ならびにこれらの混合物が有利である。0.1MPaで120℃までの沸点もしくは沸点範囲を有する相容化剤が有利である。
【0047】
同様に反応は、化合物(M)の前駆化合物が、水性媒体中に十分に分散可能である場合には、しばしば水相中で実施することができる。極性および/または水と混和可能な有機溶剤と水とからなる混合物は、有利な溶剤系である。
【0048】
有利には化合物(M)の前駆化合物は、ホルムアルデヒドに対して不活性な適切な溶剤中で溶解し、かつホルムアルデヒド試薬を引き続き計量供給する。
【0049】
同様に有利であるのは、もっぱら水中での合成であり、この場合、供給されるホルムアルデヒド試薬は、水性であり、かつ酸、塩基および緩衝系によって6〜9のpH値に、特に7〜8のpH値に調整されている水中のシリコーン成分は、分散または乳化して存在している。
【0050】
とりわけ有利であるのは、水溶性の溶剤中での合成であるか、または水と水溶性の溶剤とからなる混合物であり、これは引き続き溶剤交換によって水と交換され、このことによって後架橋性の化合物(M)の水性シリコーン分散液が得られる。化合物(M)の後からの乳化は同様に可能である。
【0051】
化合物(M)は、純粋な形で、または調製物の成分として、被覆剤、結合剤およびコーティング剤として、多数の支持体、特に任意の種類の繊維、たとえばテキスタイル繊維、セルロース繊維、木綿繊維および紙繊維のために、同様にポリエステル繊維、ポリアミド繊維またはポリウレタン繊維を含むが、これらに限定されないプラスチック繊維のために適切である。化合物(M)は、メチロール官能基と化学的に反応することができる成形体および表面、たとえば木材の複合材料、ならびに紙で被覆された支持体および成形体の被覆のためにも適切である。
【0052】
化合物(M)による上記の支持体の処理によって、処理される支持体はその表面に典型的なシリコーン特性、たとえば疎水性、粘着防止効果または柔軟な手触りが付与される。
【0053】
前記の式の全ての前記の符号は、その意味をそれぞれ相互に無関係に有している。全ての式中で、ケイ素原子は四価である。
【0054】
その他の指示がない限り、全ての量およびパーセントの記載は、質量に対するものであり、全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、かつ全ての温度は20℃である。
【0055】
実施例
例1a:表面活性シロキサン−オルガノ−コポリマーの有機溶液の製造(本発明によらない)
滴下漏斗および環流冷却器を備えた2000mlのフラスコ中で、室温で、アセトン70ml中のジメチロールプロピオン酸20.1g(0.32モル)、トリエチルアミン15.2g(0.32モル)およびジブチルスズジラウレート3滴の溶液を、アセトン900ml中のイソホロンジイソシアネート44.4g(0.40モル)の溶液に滴加した。引き続き30分以内に、アセトン200ml中のα,ω−ビス−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン(モル質量3200g/モル、0.08モル)129gの溶液を添加し、かつ還流下に5時間煮沸した。得られた、固体含有率20質量%を有する有機溶液は、室温で実質的に無期限に保存可能である。
【0056】
例1b:表面活性シロキサン−オルガノ−コポリマーの水性分散液の製造(本発明によらない)
例1aにより得られたアセトン溶液を、強力な撹拌下(ウルトラ・ツラックス(登録商標))で水650ml中に分散させ、かつアセトンおよび若干の水を回転蒸発器により真空下で除去した。次いで、固体含有率25質量%を有する水中のポリジメチルシロキサン−ポリ尿素−ポリウレタン分散液が得られ、これは3ヶ月後にも安定していた。
【0057】
表面活性シロキサン−オルガノ−コポリマーを、以下の本発明による例では、略してTPSEと呼ぶ。
【0058】
例2a:メチロール基を有するTPSEの製造
例1aにより製造されたTPSEのアセトン溶液298gに、ホルムアルデヒド水溶液(36%)86gを、強力な撹拌下に室温で30分間にわたって添加する。添加の終了後、pH値は約8である。室温でさらに2時間攪拌する。次いで水400mLを添加し、かつアセトンならびに過剰のホルムアルデヒドを減圧下にほぼ除去する。最後に25%アンモニア溶液により、得られた分散液をpH=8に調整する。固体含有率約20%を有するメチロール含有TPSEの安定した水性分散液が生じる。
【0059】
例2b:メチロール基を有するTPSEの製造
例1bにより製造したTPSEの水性分散液100gに、ホルムアルデヒド水溶液(36%)30gを強力な撹拌下に室温で、30分間にわたって添加する。添加が終了した後に、pH値を約8に調整する。室温でさらに2時間攪拌し、かつ引き続き過剰のホルムアルデヒドを減圧下に除去する。固体含有率約27%を有するメチロール含有TPSEの安定した水性分散液が生じる。
【0060】
例3a:
WACKER Finish CT34E(Wacker Chemie AG(ドイツ国ミュンヘン在)のシリコーンアミン油のマイクロエマルション)5gを、イソプロパノール10g中に溶解し、かつ水20gを添加する。その後、該溶液に、ホルムアルデヒド水溶液(36%)1000μlを、強力な撹拌下に室温で添加する。添加終了後に、pH値は5となる。該溶液を、アンモニア溶液(25%)でpH=8に調整する。室温でさらに1時間攪拌し、かつ引き続き過剰のホルムアルデヒドをわずかな減圧下に除去する。
【0061】
例3b:
Wetsoft(登録商標)CTA(Wacker Chemie AG(ドイツ国ミュンヘン在)のシリコーンアミン油)5gを、イソプロパノール10g中に溶解し、かつ水20gを添加する。その後、該溶液に、ホルムアルデヒド水溶液(36%)1000μlを、強力な撹拌下に室温で添加する。添加終了後に、pH値は4となる。該溶液を、アンモニア溶液(25%)でpH=8に調整する。室温でさらに1時間攪拌し、かつ引き続き過剰のホルムアルデヒドをわずかな減圧下に除去する。
【0062】
例3c:
Jetsoft(登録商標)Konzentrat(Wacker Chemie AG(ドイツ国ミュンヘン在)のシリコーンアミン油)5gを、イソプロパノール10g中に溶解し、かつ水20gを添加する。その後、該溶液に、ホルムアルデヒド水溶液(36%)1000μlを、強力な撹拌下に室温で添加する。添加終了後に、pH値は5となる。該溶液を、アンモニア溶液(25%)でpH=8に調整する。室温でさらに1時間攪拌し、かつ引き続き過剰のホルムアルデヒドをわずかな減圧下に除去する。
【0063】
例3d:
WACKER Finish CT 45E(Wacker Chemie AG(ドイツ国ミュンヘン在)のシリコーンアミン油のマクロエマルション)5gを、イソプロパノール10g中に溶解し、かつ水20gを添加する。その後、該溶液に、ホルムアルデヒド水溶液(36%)1000μlを、強力な撹拌下に室温で添加する。添加終了後に、pH値は5となる。該溶液を、アンモニア溶液(25%)でpH=8に調整する。室温でさらに1時間攪拌し、かつ引き続き過剰のホルムアルデヒドをわずかな減圧下に除去する。
【0064】
例3e:
WACKER Finish CT 96E(Wacker Chemie AG(ドイツ国ミュンヘン在)のシリコーンアミン油のマイクロエマルション)5gを、イソプロパノール10g中に溶解し、かつ水20gを添加する。その後、該溶液に、ホルムアルデヒド水溶液(36%)1000μlを、強力な撹拌下に室温で添加する。添加終了後に、該溶液を、アンモニア溶液(25%)でpH=8に調整する。室温でさらに1時間攪拌し、かつ引き続き過剰のホルムアルデヒドをわずかな減圧下に除去する。
【0065】
例4:
木綿繊維からなる材料サンプルを、例1〜3からの生成物溶液により、ならびに相応する、メチロールを含有していない生成物により被覆した。乾燥および架橋のために、該材料サンプルを、130℃で15分間、またはパラトルエンスルホン酸の添加下に、60℃で1時間、乾燥室で貯蔵する。引き続き、材料サンプルをそれぞれ室温で12時間、水、エタノールおよびヘキサン中で貯蔵する。乾燥させた材料サンプルを用いて、被覆の耐久性を秤量によって試験する。
【0066】
柔軟な手触りの測定は、手で行う。
【0067】
【表1】

(V):比較例、耐久性:++:極めて良好、+:良好、−:不良、−−:極めて不良、柔軟な手触り:+:良好、−:不良。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2のオルガノポリシロキサン単位(S)および少なくとも1の、一般式(1)
12N−M1 (1)
[式中、
M1は、基−HCR1−OHを表し、
1は、水素を表すか、または−CNもしくは−ハロゲンにより置換されていてもよいC1〜C10−炭化水素基を表し、かつ
1およびL2は、有機N−C結合基を表し、
その際、少なくともL1は、少なくとも1のオルガノポリシロキサン単位(S)を有し、
その際、L1中で少なくとも1のオルガノポリシロキサン単位(S)は、Si−C結合を介して結合しており、
その際、L2中で、N−C結合は、1の脂肪族飽和炭素原子を介して行われ、かつ
その際、オルガノポリシロキサン単位(S)の少なくとも50%は、置換されていない炭化水素基およびSi−O−Si結合のみを有する]のメチロール基を有する化合物(M)。
【請求項2】
1が、水素を表すか、または置換されていない、もしくは置換されているC1〜C3−炭化水素基を表す、請求項1記載の化合物(M)。
【請求項3】
一般式(2)
Q−(2a,2b)c−Q (2)
[式中、単位2aおよび2bは、ランダムに、ブロック状に、交互に、またはこれらの混合物の形で配置されていてよく、その際、単位2aおよび2bは、一般式(2a)および(2b)
【化1】

に相応し、その際、
lおよびcは、少なくとも1の整数を表し、
5は、M1または水素を表すが、ただし、少なくとも1の基R5は、水素ではなく、
Rは、水素を表すか、または一価の、−CN、−NCO、−NR22、−COOH、−COOR2、−PO(OR22、−ハロゲン、−アクリル、−エポキシ、−SH、−OHまたは−CONR22により置換されていてもよいC1〜C20−炭化水素基またはC1〜C20−炭化水素オキシ基を表し、該基において、そのつど1もしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−、−NR2−、−(CH2CH2O)n−または−(CH2CHCH3O)n−により置換されていてもよく、かつこれらにおいて、1もしくは複数の、相互に隣接していないメチン単位は、基−N=、−N=N−または−P=により置換されていてもよく、
2は、水素を表すか、または一価の、−CN、−NCOまたは−ハロゲンにより置換されていてもよいC1〜C10−炭化水素基を表し、
nは、1〜1000の整数を表し、
Xは、1〜60個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、該基において、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−または−S−により置換されていてもよく、
Aは、酸素原子、硫黄原子または−NR5−を表し、
Zは、酸素原子、硫黄原子または−NR5−を表し、
Yは、二価の、フッ素または塩素により置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、その際、N−C結合は、脂肪族飽和炭素原子を介して行われ、
Dは、フッ素、塩素、C1〜C6−アルキル−またはC1〜C6−アルキルエステルにより置換されていてもよい、1〜700個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、該基において、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−により置換されていてもよく、該基は同様に、中和されているか、または遊離のアミン基、カルボン酸基またはスルホン酸基を有していてもよく、かつ
Qは、反応性の、または非反応性の末端基を表し、該基は、ポリマーに共有結合している]を有する、請求項1または2記載の化合物(M)。
【請求項4】
Rが、メチル、エチル、ビニルおよびフェニルから選択される、請求項3記載の化合物(M)。
【請求項5】
一般式(3)
【化2】

[式中、
1は、二価の、置換されていてもよい芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族基(CR42bを表し、該基において、そのつど1もしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−、−NR4−、−(CH2CH2O)d−または−(CH2CHCH3O)d−により置換されていてもよく、かつ該基において、1もしくは複数の、相互に隣接していないメチン単位は、基−N=、−N=N−または−P=により置換されていてもよく、
2は、二価の、置換されていてもよい脂肪族基(CR42bを表し、該基において、そのつど1もしくは複数の、相互に隣接していないメチレン単位は、基−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−、−NR4−、−(CH2CH2O)d−または−(CH2CHCH3O)d−により置換されていてもよく、
4は、請求項1に記載のR2の意味を有し、
bは、1〜50の整数であり、
dは、1〜50の整数であり、
3およびR6は、請求項1に記載のRの意味を有し、
rは、0、1または2の値であり、
sは、少なくとも1の整数であり、
tは、0または整数であり、かつ
k+m+p+qは、少なくとも2の整数を表す]を有する、請求項1または2記載の化合物(M)。
【請求項6】
基R3は、水素、メチル、エチル、フェニルおよびビニルを表す、請求項3記載の化合物(M)。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の化合物(M)の水性分散液。
【請求項8】
少なくとも2のオルガノポリシロキサン単位(S)および少なくとも1の、一般式(1*)
12N−H (1*)
の第二級アミノ基を有する化合物(M)の前駆化合物を、一般式(4)
1−COH (4)
[式中、L1、L2およびR1は、請求項1に記載の意味を有し、かつその際、オルガノポリシロキサン単位(S)の少なくとも50%は、置換されていない炭化水素基およびSi−O−Si結合のみを有する]のアルデヒド反応試薬と反応させることによる、化合物(M)の製造方法。
【請求項9】
水相中で実施される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
テキスタイル繊維および紙繊維を含む支持体のための被覆剤、結合剤およびコーティング剤としての請求項1から6までのいずれか1項記載の化合物(M)の使用。

【公表番号】特表2009−537645(P2009−537645A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510436(P2009−510436)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054636
【国際公開番号】WO2007/131985
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】