説明

メッキ処理を三系統に区分し、この区分された三系統で生成された二つの処理水、RО透過水又は処理純水の再利用を図る排水処理装置

【課題】 メッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置の考え方があった。この三系統により、処理水の処理が簡便であること、また、メッキ処理の品質に好ましい影響を与えること等が挙げられる。しかし、昨今問題となっている。亜鉛メッキの上に、六価クロムメートに代替して、三価クロムメートで被覆するメッキ処理工程において、処理水の再利用を、如何にするかに関しては、明確な方法がなかった。
【解決手段】 本発明は、アルカリ脱脂処理A、及び酸洗脱脂処理B、並びに電解脱脂処理Cの前処理工程(イ)と、亜鉛メッキ処理D、又は硝酸活性処理Eの中間処理工程(ロ)と、第一〜第三の三価クロメート処理F1〜F3の後処理工程(ハ)による、各メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であり、処理水の再利用と、上水の節約を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属メッキの主体をなす三価クロムメートを、最終仕上げ処理とするメッキ処理工程において、このメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置の考え方があった。その理由は、この三系統により、処理水の処理が簡便であること、また、メッキ処理の品質に好ましい影響を与えること(不純物の持込の減少化、及び/又は、不純物の処理水への混入防止が図れること)、等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、昨今問題となっている。所謂、亜鉛メッキの上に、六価クロムメートに代替して、三価クロムメートで被覆するメッキ処理工程において、処理水の再利用を、如何にするかに関しては、明確な方法がなかった。
【0004】
上に鑑み、本発明は、以下のことを意図して、メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置を提案する。[一] 表面処理工程より有害物質を含んだ排水(処理水)を、この表面処理工程にリターンし、安全、かつこの工程に適する処理水として利用すること(その他の前処理工程と、後処理工程も同じ)、又は、不純物(油、界面活性剤)の本槽への持込みをなくすこと、[二] また、亜鉛メッキ処理の中間処理工程と、三価クロメート処理の後処理工程において、有害金属の回収と、再利用を図ること、[三] さらに、亜鉛メッキ処理の中間処理工程において、界面活性剤、金属キレート剤の微量成分の堆積を回避すること、[四] 原則として、PH値の変動を回避し、油分遊離の回避と、品質の向上と、後処理の容易化、迅速化を図ること、等である。
【0005】
そこで、本発明が意図する前記[一]〜[四]に関する先行文献を、以下、説明する。
【0006】
文献(1)は、特開平11−310900号の「二次成形品の電気亜鉛メッキ(めっきをメッキに統一する)法」であって、明細書の[0058]の記載の如く、「カップ形状の二次加工品である鉄鋼部品に電気亜鉛メッキを行う際に、各工程において個別的に大気蒸発装置を用いて、この各工程の処理水のリサイクルを行うことで、処理系全体としてリサイクル・クローズド化を行ったことを特徴とし」、これによって、明細書の[0065]に記載の如く、「水補給量を、従来は、2000〜5000l/dayを、200〜500l/dayとほぼ1/10にまで低減し、かつ排水量を、略ゼロとするとともに、その補給水は、蒸発による損失を補給するが、極めて、微々であること、また、油の回収量が4〜5kg/day、また硫酸第1鉄・7水和物の回収量も1〜2kg/dayとなる特徴がある」。しかし、この発明では、各工程において個別的に大気蒸発装置を用いることが条件であることから、通常のメッキ処理には、採用できない構造である。一方、この発明では、「処理系全体としてリサイクル・クローズド化を行える特徴」を有するが、一定の条件下に於いての使用であり、利用範囲に限定があると考えられる。
【0007】
また、文献(2)は、特開2003−306799の「アルカリ性亜鉛系電気めっき方法」であって、明細書の[0010]の記載の如く、水洗水のアルカリを硫酸で、また、硫酸又は硫酸の酸性塩をアルカリで、それぞれ中和した後、水酸化鉄、水酸化亜鉛等の不純物を濾過し、この中和水を高濃度の硫酸アルカリ塩を含有したまま循環水洗水として再利用するか、又は循環水洗水中に含有される硫酸アルカリ塩及び不純物を定期的に分離除去し、その限度以上に増加するのを抑える。そして、この各水洗工程毎に中和処理し循環させる場合の循環水洗水のPH設定は、PH4〜6とし、また、酸洗後の循環水洗水では、PH9〜11が望ましく、さらに、電解洗浄後の循環水洗水では、PH8〜11以下が望ましい。尚、経済性と装置の簡略化等を意図し、前処理水洗水のうちの2工程又は3工程の水洗水を一緒にして中和し循環水洗水とするとともに、この循環水洗水のPH設定は、PH9〜10とする」。また、この発明の実施例において、[0018] の記載の如く、「実施例1では、本発明を上記の浴を使用して脱脂→水洗(2段)→酸洗→水洗(2段)→電解洗浄→水洗(2段)→めっきの処理方法で実施した。」と開示されている。この発明の特徴は、PH調整した循環水洗水を、水洗水として再利用することであり、排水の削減と、低コスト化を意図する。しかし、この発明では、各循環水洗水のPH調整を、それぞれ個別にする構造であり、手間及び/又は経験を要すること、構造が複雑となること、等の問題を抱えている。
【0008】
文献(3)は、特開平6−336700号の「貴金属シアン浴めっき廃水及び水洗水の処理方法」であって、明細書の[0010]の記載の如く、「電解処理後の処理水は、ポンプによりバッチタンクと電解処理槽間を循環させ、一定時間処理を行った後、イオン交換樹脂で脱塩し、再び水洗水として工程で再利用する。貴金属シアン浴メッキ廃水及び水洗水を処理し、貴金属の回収、シアン・有機物の分解を同時に行い、かつクローズドシステムにおいて処理水を水洗水として再利用する」。しかし、この発明では、バッチタンクと電解処理槽間の循環と、所定時間処理し、その後、イオン交換樹脂で脱塩する構造であり、手間及び/又は時間を要する等の問題を抱えており、また、貴金属シアン浴メッキ廃水という所定の廃水に採用できる構造であり、この限定された分野での発明と考えられる。
【0009】
【特許文献1】特開平11−310900号
【特許文献2】特開2003−306799
【特許文献3】特開平6−336700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の文献(1)〜(3)は、クローズドシステムにおいて、処理水を水洗水として再利用することを意図する。しかし、この文献(1)〜(3)では、限定条件と、不具合があり、本発明が意図する、前記[一]〜[四]を、十分に達成するには、改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置を提案する。そして、[一] 表面処理工程より有害物質を含んだ排水(処理水)を、この表面処理工程にリターンし、安全、かつこの工程に適する処理水として利用すること(その他の前処理工程と、後処理工程も同じ)、又は、不純物(油、界面活性剤)の本槽への持込みをなくすこと、[二] また、亜鉛メッキ処理の中間処理工程と、三価クロメート処理の後処理工程において、有害金属の回収と、再利用を図ること、[三] さらに、亜鉛メッキ処理の中間処理工程において、界面活性剤、金属キレート剤の微量成分の堆積を回避すること、[四] 原則として、PH値の変動を回避し、油分遊離の回避と、品質の向上と、後処理の容易化、迅速化を図ること、等を意図する。
【0012】
請求項1は、アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程と、亜鉛メッキ処理の中間処理工程と、三価クロメート処理の後処理工程による、各メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記前処理工程は、複数の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽、及びこの中和槽のPH値を自動制御するPID制御部と、この中和槽で自動制御されたPH値の処理水を、再利用のためにプールするリターン槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このリターン槽の処理水を、この前処理工程の複数の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
また、前記中間処理工程は、第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽、及びこの中和槽のPH値を自動制御するPID制御部と、この中和槽で自動制御されたPH値の処理水を、再利用のためにプールするリターン槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このリターン槽の処理水を、この中間処理工程の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
さらに、前記三価クロメート処理の後処理工程は、第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、濾過装置と、PH調整槽と、RО装置とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このRО装置のRО透過水を、この後処理工程の第一次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
そして、この三価クロメート処理の後処理工程は、第二次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、イオン交換装置とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このイオン交換装置の処理純水を、この後処理工程の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的を達成するに最適な、後処理工程のRО装置のRО濃縮水の処理構造を提案すること、等を意図する。
【0014】
請求項2は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記後処理工程のRО装置のRО濃縮水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、この中和槽の処理水を、放流する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的を達成するに最適な、中間処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水の処理構造を提案すること、等を意図する。
【0016】
請求項3は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記中間処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽、及び/又は、前記後処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽、並びにこの後処理工程のRО濃縮水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽に、上水を、ポンプ制御を介して、定量供給する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的を達成するに最適な、前処理工程に、付加した酸洗脱脂処理における排水の処理構造を提案すること、等を意図する。
【0018】
請求項4は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程に、酸洗脱脂処理を付加する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的を達成するに最適な、中間処理工程に、付加した硝酸活性処理における排水の処理構造を提案すること、等を意図する。
【0020】
請求項5は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記亜鉛メッキ処理の中間処理工程に、硝酸活性処理を付加する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的を達成するに最適な、中間処理工程の水洗槽と、前処理工程の第一次水洗槽とにプールされた排水を、一度の処理する構造を提案すること、等を意図する。
【0022】
請求項6は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記中間処理工程の硝酸活性処理の水洗槽にプールされた排水と、前記アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水とを、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽に導く構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明は、アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程と、亜鉛メッキ処理の中間処理工程と、三価クロメート処理の後処理工程による、各メッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前処理工程は、複数の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽、及び中和槽のPH値を自動制御するPID制御部と、中和槽で自動制御されたPH値の処理水を、再利用のためにプールするリターン槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、リターン槽の処理水を、前処理工程の複数の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
また、中間処理工程は、第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽、及び中和槽のPH値を自動制御するPID制御部と、中和槽で自動制御されたPH値の処理水を、再利用のためにプールするリターン槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、リターン槽の処理水を、中間処理工程の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
さらに、三価クロメート処理の後処理工程は、第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、濾過装置と、PH調整槽と、RО装置とをそれぞれ配管を介して連設し、また、RО装置のRО透過水を、後処理工程の第一次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
そして、三価クロメート処理の後処理工程は、第二次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、イオン交換装置とをそれぞれ配管を介して連設し、また、イオン交換装置の処理純水を、後処理工程の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
メッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0024】
従って、請求項1は、メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置を提案することで、次のような特徴がある。[一] 表面処理工程より有害物質を含んだ排水(処理水)を、この表面処理工程にリターンし、安全、かつこの工程に適する処理水として利用できること(その他の前処理工程と、後処理工程も同じ)、又は、不純物(油、界面活性剤)の本槽への持込みをなくし得ること、[二] また、亜鉛メッキ処理の中間処理工程と、三価クロメート処理の後処理工程において、有害金属の回収と、再利用が図れること、[三] さらに、亜鉛メッキ処理の中間処理工程において、界面活性剤、金属キレート剤の微量成分の堆積を回避できること、[四] 原則として、PH値の変動を回避し、油分遊離の回避と、品質の向上と、後処理の容易化、迅速化が図れること、等である。
【0025】
請求項2の発明は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
後処理工程のRО装置のRО濃縮水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、中和槽の処理水を、放流する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0026】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的を達成するに最適な、後処理工程のRО装置のRО濃縮水の処理構造を提案できること、等の特徴を有する。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
中間処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽、及び/又は、前記後処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽、並びに後処理工程のRО濃縮水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽に、上水を、ボンプ制御を介して、定量供給する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0028】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的を達成するに最適な、中間処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水の処理構造を提案できること、等の特徴を有する。
【0029】
請求項4の発明は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程に、酸洗脱脂処理を付加する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0030】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的を達成するに最適な、前処理工程に、付加した酸洗脱脂処理における排水の処理構造を提案できること、等の特徴を有する。
【0031】
請求項5の発明は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
亜鉛メッキ処理の中間処理工程に、硝酸活性処理を付加する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0032】
従って、請求項5は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的を達成するに最適な、中間処理工程に、付加した硝酸活性処理における排水の処理構造を提案できること、等の特徴を有する。
【0033】
請求項6は、請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
中間処理工程の硝酸活性処理の水洗槽にプールされた排水と、アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水とを、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽に導く構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置である。
【0034】
従って、請求項6は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的を達成するに最適な、中間処理工程の水洗槽と、前処理工程の第一次水洗槽とにプールされた排水を、一度の処理する構造を提案できること、等の特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1−1】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置の全体を半截した前半分の模式図
【図1−2】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置の全体を半截した後半分の模式図
【図2−1】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された前処理工程の処理水の再利用を図る排水処理装置を半截した前半分の模式図
【図2−2】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された前処理工程の処理水の再利用を図る排水処理装置を半截した後半分の模式図
【図3−1】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された中間処理工程の処理水の再利用を図る排水処理装置を半截した前半分の模式図
【図3−2】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された中間処理工程の処理水の再利用を図る排水処理装置を半截した後半分の模式図
【図4−1】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された後処理工程の処理水の再利用を図る排水処理装置を半截した前半分の模式図
【図4−2】本発明のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された後処理工程の処理水の再利用を図る排水処理装置を半截した後半分の模式図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、アルカリ脱脂処理A、及び酸洗脱脂処理B、並びに電解脱脂処理Cの前処理工程(イ)と、亜鉛メッキ処理D、又は硝酸活性処理Eの中間処理工程(ロ)と、第一〜第三の三価クロメート処理F1〜F3の後処理工程(ハ)による、各メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であり、以下、各工程の好ましい一例を説明する。
【0037】
この前処理工程(イ)は、アルカリ脱脂処理A(アルカリ脱脂処理槽)、及び酸洗脱脂処理B(酸洗脱脂処理槽)、並びに電解脱脂処理C(電解脱脂処理槽)において、それぞれ第一次水洗槽1、2、3を有しており、この第一次水洗槽1、2、3に処理水がプールされる。この第一次水洗槽1、2、3の処理水は、配管4、5、6を介して、纏めて、かつ一時的に貯留槽7にプールされる。この貯留槽7にプールされた処理水は、連結する配管ルート10を介して、順次、PH調整槽12と、凝集槽13と、沈澱装置15、及び濾過装置16と、中和槽17に送られるとともに、この各過程でPH調整と、清澄水の生成処理が行われる。尚、この中和槽17のPH値を自動制御するPID制御装置18を設けて、自動的に制御し、かつこの中和槽17において生成された、所定のPH値(PH8)となった処理水(清澄水)を、リターン槽19にプールして、再利用に役立てる。そして、このリターン槽19の清澄水を、この前処理工程(イ)のアルカリ脱脂処理A、及び酸洗脱脂処理B、並びに電解脱脂処理Cの第二次水洗槽100〜300にリターンする戻り配管20を有する。前記酸洗脱脂処理Bは、必要時に設けられるものであり、メッキ物の表面を活性化することで、次の処理でのメッキ処理の向上を図る。また、電解脱脂処理Cは、アルカリ脱脂処理Aでは剥離できなかった、メッキ物の表面金属を溶かし、かつ油を除去して、メッキ物の表面を活性化する。
【0038】
次に、中間処理工程(ロ)は、亜鉛メッキ処理D(亜鉛メッキ処理槽)から有価金属(亜鉛)を回収する回収槽21を経由して第一次水洗槽22にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽23と、PH調整槽24と、凝集槽26と、沈澱装置27、及び濾過装置28と、中和槽29に送られるとともに、この各過程でPH調整と、清澄水の生成処理が行われる。尚、この中和槽29のPH値を自動制御するPID制御装置30を設けて、自動的に制御し、かつこの中和槽29において生成された、所定のPH値(PH8)となった処理水(清澄水)を、リターン槽32にプールして、再利用に役立てる。そして、このリターン槽32の清澄水を、この中間処理工程(ロ)の第二次水洗槽2200にリターンする戻り配管33を有する。そして、この中間処理工程(ロ)に設けた硝酸活性処理Eには、第一次兼第二次用の水洗槽34に排水を、纏めて、かつ一時的にプールする。
【0039】
さらに、三価クロメート処理の後処理工程(ハ)は、第一の三価クロメート処理〜第三の三価クロメート処理F1〜F3のそれぞれの第一次水洗槽40000〜42000の処理水は、配管44〜46を介して、纏めて、かつ一時的に貯留槽47にプールされる。この貯留槽47にプールされた処理水は、連結する配管ルート48を介して、順次、濾過装置50と、PH調整槽51と、RО装置52に送られるとともに、この各過程でPH調整と、清澄水の生成処理が行われる。尚、このPH調整槽51のPH値を自動制御するPID制御装置51aを設けて、自動的に制御し、かつこのPH調整槽51と、RО装置52において生成された、所定のPH値のPO濾過水(清澄水)を、このRО装置52にプールして、戻り配管53を介して、第一次水洗槽40000〜42000に戻して、再利用に役立てる。
【0040】
そして、この三価クロメート処理の後処理工程(ハ)は、第二次水洗槽40001〜42001にプールされた排水を、配管60〜62を介して、纏めて、かつ一時的にプールする。このプールされた処理水は、連結する配管ルート63を介して、順次、貯留槽64と、イオン交換装置65に送られるとともに、このイオン交換装置65で、純粋水の生成処理が行われる。次の純水槽66にプールして、戻り配管67を介して、第二次水洗槽40001〜42001に戻して、再利用に役立てる。
【0041】
また、前記RO装置52の濃縮水は、配管70を介して、纏めて、かつ一時的に貯留槽71にプールされる。この貯留槽71にプールされた濃縮水は、連結する配管ルート72を介して、順次、PH調整槽73と、凝集槽74と、沈澱装置75、及び濾過装置76と、中和槽77に送られるとともに、この各過程でのPH調整を介して、放流水の基準をクリアーした放流対応の処理水(放流処理水)の生成処理が行われる。尚、この中和槽77のPH値を自動制御するPID制御装置77aを設けて、自動的に制御し、かつこの中和槽77において生成された、所定のPH値の放流処理水を、例えば、河川に放流する。
【0042】
そして、本発明では、上水80を、ポンプ(図示しない)を介して、最少の補給水量とする。例えば、硝酸活性処理Eの水洗槽34にして、三価クロメート処理の後処理工程(ハ)に対する金属処理の弊害解消と、また、RО濃縮水の貯留槽71にして、放流基準の達成に寄与する。そして、望ましくは、水洗槽34と、貯留槽71との補給水量を略同じとし、この各メッキ処理工程を三系統に区分された各処理水の効率的な処理と、この処理水とか、純水の再利用、及び/又は、上水80の節約を図ることを意図する。そして、必要により、上水80の補給を、三価クロメート処理の後処理工程(ハ)において、第一次水洗槽40000〜42000との中で、所定の槽に行って、金属処理の弊害解消と、また、この各メッキ処理工程を三系統に区分された各処理水の効率的な処理と、この処理水とか、純水の再利用、及び/又は、上水80の節約を図ることを意図する。
【符号の説明】
【0043】
A アルカリ脱脂処理
B 酸洗脱脂処理
C 電解脱脂処理
D 亜鉛メッキ処理
E 硝酸活性処理
F1 第一の三価クロメート処理
F2 第二の三価クロメート処理
F3 第三の三価クロメート処理
1 第一次水洗槽
100 第二次水洗槽
2 第一次水洗槽
200 第二次水洗槽
3 第一次水洗槽
300 第二次水洗槽
4〜6 配管
7 貯留槽
10 配管ルート
12 PH調整槽
13 凝集槽
15 沈澱装置
16 濾過装置
17 中和槽
18 PID制御装置
19 リターン槽
20 戻り配管
21 回収槽
22 第一次水洗槽
2200 第二次水洗槽
23 貯留槽
24 PH調整槽
26 凝集槽
27 沈澱装置
28 濾過装置
29 中和槽
30 PID制御装置
32 リターン槽
33 戻り配管
34 水洗槽
40000 第一次水洗槽
40001 第二次水洗槽
41000 第一次水洗槽
41001 第二次水洗槽
42000 第一次水洗槽
42001 第二次水洗槽
44〜46 配管
47 貯留槽
48 配管ルート
50 濾過装置
51 PH調整槽
51a PID制御装置
52 RО装置
53 戻り配管
60〜62 配管
63 配管ルート
64 貯留槽
65 イオン交換装置
66 純水槽
67 戻り配管
70 配管
71 貯留槽
72 配管ルート
73 PH調整槽
74 凝集槽
75 沈澱装置
76 濾過装置
77 中和槽
77a PID制御装置
80 上水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程と、亜鉛メッキ処理の中間処理工程と、三価クロメート処理の後処理工程による、各メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記前処理工程は、複数の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽、及びこの中和槽のPH値を自動制御するPID制御部と、この中和槽で自動制御されたPH値の処理水を、再利用のためにプールするリターン槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このリターン槽の処理水を、この前処理工程の複数の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
また、前記中間処理工程は、第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽、及びこの中和槽のPH値を自動制御するPID制御部と、この中和槽で自動制御されたPH値の処理水を、再利用のためにプールするリターン槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このリターン槽の処理水を、この中間処理工程の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
さらに、前記三価クロメート処理の後処理工程は、第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、濾過装置と、PH調整槽と、RО装置とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このRО装置のRО透過水を、この後処理工程の第一次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
そして、この三価クロメート処理の後処理工程は、第二次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、イオン交換装置とをそれぞれ配管を介して連設し、また、このイオン交換装置の処理純水を、この後処理工程の第二次水洗槽にリターンする戻り配管とで構成し、
メッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記後処理工程のRО装置のRО濃縮水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽と、PH調整槽と、凝集槽と、沈澱装置、及び濾過装置と、中和槽とをそれぞれ配管を介して連設し、また、この中和槽の処理水を、放流する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記中間処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽、及び/又は、前記後処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽、並びにこの後処理工程のRО濃縮水を、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽に、上水を、ポンプ制御を介して、定量供給する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程に、酸洗脱脂処理を付加する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記亜鉛メッキ処理の中間処理工程に、硝酸活性処理を付加する構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置であって、
前記中間処理工程の硝酸活性処理の水洗槽にプールされた排水と、前記アルカリ脱脂処理、及び電解脱脂処理の前処理工程の第一次水洗槽にプールされた排水とを、纏めて、かつ一時的にプールする貯留槽に導く構成としたメッキ処理工程を三系統に区分し、この区分された各処理水の再利用を図る排水処理装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公開番号】特開2011−106004(P2011−106004A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264087(P2009−264087)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【特許番号】特許第4679660号(P4679660)
【特許公報発行日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000132105)株式会社スイレイ (4)
【Fターム(参考)】