説明

メッキ処理工程の水処理装置

【課題】除菌浄化したメッキ処理水により有機物を除去できるようにした水処理装置であり、メッキ工程中の処理槽の大型化を防ぎつつ既存の処理槽に接続して各処理槽のぬめりやカビを除去したりその付着を防止して水処理時の高い洗浄機能を維持できるメッキ処理工程の水処理装置を提供する。
【解決手段】オゾンを供給するオゾン供給部15、紫外線を照射する紫外線照射部16、光触媒33を作用させる光触媒作用部17の3つの機能を有機的に結合した除菌浄化ユニット3の流入流路60及び流出流路61をメッキ工程中の各種処理槽2に循環可能に接続し、除菌浄化ユニット3を介して除菌浄化したメッキ処理水5を循環させて被処理水62中の有機物63を除去するようにしたメッキ処理工程の水処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ処理工程の水処理装置に関し、さらに詳しくはメッキ処理工程で使用されるメッキ処理水を再利用可能に除菌浄化し、このメッキ処理水で有機物を除去するようにした水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の水処理装置として、例えば、特許文献1の処理装置が知られている。同文献1の処理装置は、光触媒カートリッジと紫外線ランプとを有し、これらの作用によりメッキ工程で使用される洗浄水の細菌を除去するようになっている。この場合、光触媒機能を有する光触媒カートリッジが設けられ、この光触媒カートリッジは、不織布に酸化チタンを含ませたものからなっている。
一方、特許文献2においては水中の有機物の分解装置が記載されている。この分解装置は、排水のpHを7〜10に調整する手段と、この排水に過酸化水素、オゾンを混合する手段により洗浄槽内の有機物を除去し、排水中に残存する過酸化水素やオゾンを分解除去処理した後の処理水を回収し、この処理水を洗浄水として再利用するようになっている。
これらの装置は、半導体や液晶の製造工程の一部を成すメッキ処理工程の水処理装置として、例えば、メッキ後の処理品を洗浄するための洗浄槽内に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−18352号公報
【特許文献2】特許第4465696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の処理装置のように、光触媒カートリッジと紫外線ランプとを設けた構成により除菌浄化し、メッキ工程で大量に使用される洗浄水中の有機物を分解しようとする場合には、この大量の有機物を確実に分解するために大量の光触媒カートリッジが必要になり、紫外線ランプの強度を十分に上げる必要もある。この処理装置をメッキ洗浄槽内に設けようとする場合、混入する有機物を確実に分解除去するために処理槽全体が大型化することになる。仮に処理槽の大きさが不十分である場合には有機物が残留することがあり、この有機物量がある一定の濃度になるとぬめりやカビとして処理槽内に付着するおそれがあり、この場合にはメッキ処理品の洗浄効果が低くなる。
【0005】
同文献2の有機物の分解装置では、過酸化水素とオゾンとによる促進酸化を利用しているが、有機物の分解除去を迅速におこなうためには処理槽に高濃度のオゾンと過酸化水素とを投入する必要があり、この処理槽に残留オゾン、過酸化水素を除去する機能を設けていることで全体が大型化する。この装置では所定のpHに調整するためにアルカリ系の薬品を投入しているが、この場合、アルカリ系薬品の投入装置が必要になることで装置が更に大型化することになる。処理水のpH調整する方法に制限はないことが記載されているが、アルカリ系薬品の投入以外によるpH調整方法は具体的に記載されていない。
【0006】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、除菌浄化したメッキ処理水により有機物を除去できるようにした水処理装置であり、メッキ工程中の処理槽の大型化を防ぎつつ既存の処理槽に接続して各処理槽のぬめりやカビを除去したりその付着を防止して水処理時の高い洗浄機能を維持できるメッキ処理工程の水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、オゾンを供給するオゾン供給部、紫外線を照射する紫外線照射部、光触媒を作用させる光触媒作用部の3つの機能を有機的に結合した除菌浄化ユニットの流入流路及び流出流路をメッキ工程中の各種処理槽に循環可能に接続し、除菌浄化ユニットを介して除菌浄化したメッキ処理水を循環させて被処理水中の有機物を除去するようにしたメッキ処理工程の水処理装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、オゾン供給部、紫外線照射部或は光触媒作用部の3つの機能をそれぞれ制御することにより、処理槽のpHを最適値に制御するpH調整機能部を設けたメッキ処理工程の水処理装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、光触媒作用部は、金属チタン基材の表面を酸化させて酸化チタンを生成することで剥離しない光触媒を利用したメッキ処理工程の水処理装置である。
【0010】
請求項4に係る発明は、除菌浄化ユニットをメッキ工程中の各種処理槽に循環可能に回路構成し、各種処理槽の処理程度に応じて適宜の処理槽を順繰りに処理できるように制御構成したメッキ処理工程の水処理装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、処理槽は、メッキ処理中の前処理と後処理の回収槽、洗浄槽などの各種の処理槽であるメッキ処理工程の水処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、除菌浄化ユニットで除菌浄化したメッキ処理水によって有機物を除去し、除菌浄化ユニットの流入流路及び流出流路をメッキ工程中の各種処理槽に循環可能に接続することで処理槽が大型化することなく、薬品を用いることなく既存の各処理槽の有機物によるぬめりやカビを除去したりその付着を防止して水処理時の高い洗浄機能を維持できる。このように除菌浄化ユニットの除菌浄化機能によりメッキ処理水を再利用でき、処理槽の清浄化状態を常時確保して水処理効果を高めることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、有機物の混入によりメッキ処理水が酸性又はアルカリ性に傾いた場合でも、pH調整機能部でpH制御することにより適正な状態までpHを移行させ、メッキ処理水が酸性やアルカリ性に極端に傾くことを防いで安定した水質に維持できる。
【0014】
請求項3に係る発明によると、メッキ処理水中においても高い光触媒作用を発揮でき、メッキ処理水を繰り返し除菌浄化して有機物を除去したときでも光触媒作用部の機能が低下することなく、光触媒作用部を交換することなく長期に渡って高い洗浄効果を発揮することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によると、メッキ工程中の各種処理槽に循環可能に回路構成して適宜の処理槽を順繰りに処理することで各処理槽を定期的に洗浄でき、1つの除菌浄化ユニットを用いてメッキ工程全体の大型化を防ぎながら各処理槽の汚れ具体に応じて有機物を除去し、ぬめりやカビを除去したりその付着を防止して精度の高いメッキ処理を実施して高品質のメッキ処理品を得ることが可能になる。
【0016】
請求項5に係る発明によると、メッキ処理中の前工程と後処理の何れの場合にも利用でき、回収槽や洗浄槽などの各種の処理槽に設けることができるため、既存のメッキ処理設備の大型化を防ぎつつ各処理工程に水処理を施して各種処理槽の有機物によるぬめりやカビを確実に除去したり付着を防止してメッキ処理設備全体の清浄化を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】メッキ処理工程の一部を示す模式図である。
【図2】本発明のメッキ処理工程の水処理装置の一実施形態を示す模式図である。
【図3】除菌浄化ユニットの一例を示す概略断面図である。
【図4】図3におけるオゾン供給ユニットの模式図である。
【図5】図3における紫外線・光触媒ユニットの模式図である。
【図6】本発明のメッキ処理工程の水処理装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図7】(a)は除菌浄化後の洗浄槽の状態を示す写真である。(b)は除菌浄化前の洗浄槽の状態を示す写真である。
【図8】(a)は除菌浄化後の循環用パイプの状態を示す写真である。(b)は除菌浄化前の循環用パイプの状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明におけるメッキ処理工程の水処理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1においてはメッキ処理工程の一部、図2においては本発明のメッキ処理工程の水処理装置の模式図、図3においては、除菌浄化ユニットの一例を示している。
【0019】
図1のメッキ処理工程に示すように、ワークにメッキ処理を施す場合、その設備の一部としてメッキ槽1、処理槽2が設けられる。メッキ槽(金メッキ槽)1は、図2のプリント基板等のワーク4にメッキを施す場合に用いられ、この金メッキ槽1でワーク4表面に金メッキ処理が施される。本実施形態では、メッキ処理として金メッキを施しているが、このメッキ処理は金メッキ以外であってもよい。
【0020】
処理槽2は、回収槽50と洗浄槽51とを有しており、回収槽50はメッキ後のワーク4により汲み出された図示しないメッキ液を回収するために設けられ、洗浄槽51はメッキ処理水5によりメッキ処理後のワーク4を洗浄するために設けられる。回収槽50は、第1回収槽50aとこの第1回収槽50aの2次側の第2回収槽50bとを有し、洗浄槽51は、第1洗浄槽51aとこの第1洗浄槽51aの2次側の第2洗浄槽51bとを有している。
【0021】
図示しないが、上記の工程以外のメッキ処理工程として、金メッキ槽1によるメッキ処理前にはワークの研磨、脱脂、酸浸漬、酸活性、水洗などの処理が必要に応じておこなわれ、一方、洗浄槽によるワーク洗浄後には酸活性、クロメート処理、水洗などの処理が必要に応じておこなわれ、その後、乾燥処理がおこなわれる。
【0022】
前記の処理槽2としては、メッキ処理中の前処理と後処理の回収槽、洗浄などの各種の処理槽とすることができ、何れの処理槽にも本発明の水処理装置を設けることが可能である。本実施形態においては、上記のようにメッキ槽1の後処理である処理槽2のうちの洗浄槽51の第1洗浄槽51aに水処理装置を設けている。
【0023】
図2に示すように、この第1洗浄槽51aに設けられるメッキ処理工程の水処理装置は、除菌浄化ユニット3、pH調整機能部55、pHセンサ56を有している。
図3、図4において、除菌浄化ユニット3は、オゾン供給部15と、紫外線照射部16と、光触媒作用部17とを有し、流入流路60及び流出流路61によりメッキ工程中の各種処理槽2に循環可能に接続される。水処理装置は、この除菌浄化ユニット3を介して除菌浄化したメッキ処理水5を図示しないポンプにより循環させて被処理水中62の有機物63を除去するようになっている。
【0024】
図3のオゾン供給部15は、メッキ処理水5にオゾンを供給し、紫外線照射部16はメッキ処理水5に紫外線を照射し、光触媒作用部17はメッキ処理水5に光触媒を作用させるようになっている。本実施形態においては、オゾン供給部15はオゾン供給ユニット18内、紫外線照射部16と光触媒作用部17とは紫外線・光触媒ユニット19内にそれぞれ設けられている。このように、オゾン供給ユニット18と紫外線・光触媒ユニット19とは別体に形成され、オゾン供給ユニット18の下流側に紫外線・光触媒ユニット19が接続されて除菌浄化ユニット3が構成されている。
【0025】
除菌浄化ユニット3は、オゾン供給ユニット18と紫外線・光触媒ユニット19とを個別に動作させることが可能であり、オゾン供給部15、又は、紫外線照射部16・光触媒作用部17を必要に応じて単独で動作させることができる。これにより、オゾンの供給、紫外線の照射、光触媒の作用をそれぞれ働かせてこれらの3つの機能を有機的に結合している。除菌浄化ユニット3をオゾン供給ユニット18と、紫外線・光触媒ユニット19とによる別体のユニット構造としているため、各ユニットの内部構造が簡略化している。
【0026】
図4において、オゾン供給部15(オゾン供給ユニット18)は、中央部に金属棒20を有し、この金属棒20の外周側に、約0.5mm程度の隙間21を介して略円筒状の誘電体22が配設されている。誘電体22は、例えば、ガラス、セラミック、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の材料からなり、この誘電体22の入口側、出口側には、それぞれ供給口23、吐出口24が形成されている。また、誘電体22の外周側には、この誘電体22と接地した状態で接地体25が設けられる。接地体25は、例えば、金属或は水等の液体であればよく、本例においては、円筒状の金属により形成されている。
【0027】
オゾン供給部15は、収納容器26に収納され、この収納容器26には、乾燥空気の入口である空気入口ポート27と、オゾンガスの出口であるガス出口ポート28と、高圧の液体の入口である液体入口ポート29と、高圧の液体の出口である液体出口ポート30とが形成されている。このうち、空気入口ポート27は供給口23と、ガス出口ポート28は吐出口24と連通し、空気入口ポート27は、オゾン供給部15の内部を介してガス出口ポート28と連通している。一方、液体入口ポート29と液体出口ポート30は、収納容器26とオゾン供給ユニット18との空間を介して連通している。
この構成により、オゾン供給ユニット18は、空気又は空気よりも酸素濃度の高い気体を原料としてオゾンを生成し、このオゾンを溶存酸素と共に液体に気泡状態で混合させるエジェクター41に接続されている。
【0028】
一方、図5に示すように、紫外線・光触媒ユニット19は、中央部に紫外線光源31を有し、この紫外線光源31の外周側に保護用の保護筒32が設けられている。紫外線光源31は、紫外線を照射可能に設けられ、後述する光触媒33から正孔および電子を効率良く生じさせるために、例えば、波長が410nm以下の紫外線を多く含む特性とすることがよい。紫外線光源31としては、例えば、紫外線ランプや低圧又は高圧水銀ランプを用いることが好ましい。更に、紫外線光源は、400nmの波長を有する蛍光ランプや、紫外光を照射するLEDを複数個並べたものであってもよい。ただし、促進酸化効果を効率良く発揮させるためには、254nmの波長を用いるのが最も良い。紫外線光源がLEDランプのときには、この光源本体の寿命を延ばすことと小型化が可能になり、更には、発熱量も抑えられて効率の良い浄化が可能になる。更に、図示しないが、紫外線光源の形状は、直線(ストレート)形、円筒(サークル)形、螺旋形、波形などであればよく、何れかの形状を選択することで光触媒33を効率的に機能させることが可能になる。
【0029】
紫外線光源31の外周の保護筒32は、例えば、石英ガラスやホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスなどから形成される。このうち、特に、ホウ珪酸ガラス、高珪酸ガラスは、比較的安価であり、材料をそのまま使用することができるが、紫外線透過率、耐熱性、強度等の点を考慮した場合、石英ガラスを材料とすることが最も好ましい。保護筒32の外周側には所定の内径を有する外筒34が設けられ、この外筒34と保護筒32との間にメッキ処理水5の流路35が形成されている。この流路35内に、光触媒作用部である光触媒33が配設されている。
【0030】
図5において、光触媒33は、金属チタン基材45の表面を酸化させて酸化チタン46を生成することで剥離しない光触媒を利用したものであり、例えば、図示しない網やチタン線、繊維状チタン材料の集合体、その他多孔性チタン材料等からなるチタン又はチタン合金などの材料の表面側に二酸化チタンを被覆することで形成される。金属チタン基材45を細状に形成した場合には反応面積が大きくなり、オゾンとの反応性が良くなる。金属チタン基材45はチタンやチタン合金以外の材料であってもよく例えば、ガラスやシリカゲル等を材料とし、この材料の表面に酸化チタン46を形成するようにしてもよい。しかし、耐久性を考えた場合、チタン基材に生成したものが良い。
【0031】
本例においては、紫外線・光触媒ユニット19の中央部に紫外線光源31を配置した構造としていることでユニット全体のコンパクト化を図ることができ、かつ、メッキ処理水5に効率的に紫外線を照射できる。図示しないが、紫外線・光触媒ユニットを保護筒の外側に紫外線光源、内側に光触媒をそれぞれ設けた構造としてもよい。この場合、メッキ処理水5は保護筒の内部を流れることになる。
【0032】
図3において、紫外線・光触媒ユニット19には、入口側接続口36、出口側接続口37が設けられ、この各接続口36、37に前述した流入流路60、流出流路61がそれぞれ接続される。更に、流入流路60には分岐流路38が設けられ、この分岐流路38は、2次側が液体入口ポート29に接続されている。分岐流路38の途中には加圧ポンプ39が設けられ、この加圧ポンプ39により分岐流路38からオゾン供給ユニット18に流入流路60を流れるメッキ処理水5の一部が供給される。
【0033】
また、流入流路60の分岐流路38よりも二次側には戻り流路40が設けられ、この戻り流路40により流入流路60と液体出口ポート30とが接続される。更に、戻り流路40の途中には前記エジェクター41が設けられ、このエジェクター41は、逆止弁42を介してガス供給路43によってガス出口ポート28と繋がっている。
【0034】
逆止弁42は、適宜の態様に設けられ、オゾン供給ユニット18から供給されるオゾンや溶存酸素の逆流を防ぐために設けられている。また、エジェクター41は、例えば、セラミックや金属を材料としてリング状に形成され、戻り流路40から流れる液体と、ガス供給路43から流れるオゾン(及び溶存酸素)とを混合させることにより微細気泡状の混合液(オゾン水)をつくるようになっている。このとき、逆止弁42を通過したオゾンと溶存酸素は、エジェクター41内部の図示しない溢路により流速が早められながら流入流路60に供給され、気泡状態で液体中に溶け込んだ状態になる。
【0035】
図2において、pH調整機能部55は除菌浄化ユニット3の内部に設けられ、更に、pH調整機能部55と処理槽2との間にpHセンサ56が設けられている。pH調整機能部55は、pHセンサ56により測定された処理槽2内のメッキ処理水5のpH値に基づいて、オゾン供給部15、紫外線照射部16、或は光触媒作用部17の3つの機能をそれぞれ制御することにより、処理槽2のpHを最適値に制御することが可能になっている。これにより、処理槽2内のpHをpHセンサ56で予め設定した設定値に近づけることも可能になっている。
【0036】
この場合、pH調整機能部55は、メッキ処理水5が酸性のときにアルカリ性に近づくまでオゾン供給部15を停止させ、かつ、紫外線照射部16と光触媒作用部17とを動作させるようになっており、一方、メッキ処理水5がアルカリ性のときに酸性に近づくまで紫外線照射部16と光触媒作用部17とを停止させ、かつ、オゾン供給部15を動作させるようになっている。
【0037】
更に、pH調整機能部55は、洗浄槽2内のメッキ処理水5が設定したpHに近づいたときに、オゾン供給部15と紫外線照射部16と光触媒作用部17とを併用する信号を発すことが可能であり、この信号によりオゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17の動作による促進酸化で除菌浄化をおこなうようになっている。この場合、オゾン供給部15の単独、或は、紫外線照射部16と光触媒作用部17とによる動作により除菌浄化効果を発揮することもでき、この場合でも常にメッキ処理水5の清浄化が図られる。
【0038】
また、図2に示すように、上述した水処理装置には、逆止バルブ70、補給流路71、エアセパレータ72、気液分離部73、ガス処理槽74、ドレン弁75が設けられている。
逆止バルブ70は、流入流路60の1次側に設けられ、この流入流路60から洗浄槽2へのメッキ処理水5の逆流を防いでいる。図示しないが、逆止バルブ70の1次側にフィルタを設け、このフィルタによりゴミなどの混入を防ぐようにしてもよい。補給流路71は、処理槽2に外部から洗浄水又は純水或は上水等5を補給するために設けられる。
【0039】
エアセパレータ72は、流出流路61の途中に設けられ、除菌浄化ユニット3により除菌浄化されたメッキ処理水5内に含まれる気泡を分離し、腐食の原因となる溶存酸素を除去可能になっている。気液分離部73は、エアセパレータ72の2次側に流出流路61と別に設けられた戻し流路76に配設され、気泡からオゾンガスを分離しこのオゾンガスをガス処理槽74に、オゾンガスを分離したメッキ処理水5を戻し流路76にそれぞれ流すようになっている。ガス処理槽74は、オゾンガスを無害な状態に処理し、ガス出口74aより外部に放出可能になっている。ドレン弁75は、除菌浄化ユニット3内に蓄積したメッキ処理水5を外部に排出するために用いられる。
【0040】
これらのエアセパレータ72、気液分離部73、ガス処理槽74により、除菌浄化ユニット3で除菌浄化したメッキ処理水5に含まれるオゾンガスを分離させて流出流路61より処理槽2に戻すと同時に、エアセパレータ72、気液分離部73により気泡から分離した一部のメッキ処理水5を戻し流路76より処理槽2に戻すことが可能になっている。
【0041】
流入流路60を介してメッキ処理水5が除菌浄化ユニット3内に流れると、このメッキ処理水5は、入口側接続口36から紫外線・光触媒ユニット19内に供給される。このとき、メッキ処理水5の一部は、図2において分岐流路38を介して液体入口ポート29よりオゾン供給ユニット18内に流入される。
【0042】
処理槽2内のメッキ処理水5はpHセンサ56でpHが測定され、このpHの値に基づいてオゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17の動作が制御される。その際、光触媒作用部17は、紫外線照射部16の紫外線光源31の点灯によりその機能を発揮し、紫外線光源31の消灯時には機能しないため、動作を制御する必要はない。
【0043】
オゾン供給ユニット18が動作すると、オゾン供給部15において図示しない高圧電源から電圧が印加されて金属棒20が高圧に帯電された状態で空気入口ポート27より空気、又は、空気よりも酸素濃度の高い気体が原料として供給されてこの気体が隙間21を流れる。このとき、金属棒20と誘電体22・接地体25とによって隙間21が放電空間となってこの隙間21内にオゾンが生成される。このオゾンは、吐出口24を介してガス出口ポート28から吐出され、エジェクター41の働きによって溶存酸素とともに戻り流路40から流入流路60を流れる液内中に混入される。
【0044】
この場合、鉄分やMnをメッキ処理水5中に補充するようにし、例えば、鉄分を含ませたメッキ処理水5にオゾン供給部15によりオゾンを投与した場合には、一般的なオゾン処理により鉄は、
2Fe2++O3+H2O→2Fe3++O2+2(OH)−
2Fe3++3H2O→Fe(OH)3↓+3H+
の2段階の変化を経る。この時に生じる水素イオンがメッキ処理水5のpHを下げて酸性にする要因となっている。ここで、Fe2+は第一鉄イオン、Fe3+は第二鉄イオンであり、↓は沈殿を表している。
【0045】
このときのオゾンによる殺菌効果は、通常CT値と呼ばれる値で表される。CT値とは、オゾン濃度とオゾンが液体に接触するときの接触時間の積であり、例えば、オゾン濃度が高い場合にはオゾンの接触時間が短くても殺菌が可能になっている。
また、pHとオゾン濃度には、明確な関係があり、pHが高くなればより多くのオゾンを投入しなければこのときのオゾン濃度を確保できなくなる。その際、pHが8を越えるとオゾン濃度の維持が困難になり、pHが9を越えるとオゾンの投入を増やしてもオゾン濃度が上昇しにくくなる。よって、中性域から酸性域では、殺菌力が高くpH8を越えると殺菌力が弱くなる。
【0046】
続いて、メッキ処理水5は、分岐流路38に流れない液体とともに紫外線・光触媒ユニット19内に流入する。このとき、紫外線・光触媒ユニット19が動作していると、このユニット内に流入したメッキ処理水5は、流路35内の紫外線光源31と光触媒33とを通過して、紫外線照射部16と光触媒作用部17とにより除菌浄化される。
【0047】
この場合、オゾンが溶け込んだメッキ処理水5に紫外線照射部16より紫外線を照射すると、・OH(ヒドロキシラジカル又はOHラジカル)といわれるラジカル(不対電子を持つ化学種で活性化が強い物質)が生成される。この・OHは、活性化が強いため、水中の炭酸イオンや、炭酸水素イオンと反応し、急速に過酸化水素水や水酸イオンや水になる。このとき発生する水酸イオンはアルカリ基であり、これにより促進酸化させると液体がアルカリ性に移行する。
更に、紫外線光源31からの紫外線が光触媒33に照射され、この光触媒33の表面でも・OHが生成される。これらの作用により、メッキ処理水5がアルカリ性に移行する。
【0048】
メッキ処理水5がオゾン供給ユニット18、紫外線・光触媒ユニット19を通過するときには、上述したように、pHセンサ56により測定したpHの値によって、各ユニット18、19にpHセンサ56から制御信号が送られてメッキ処理水5が設定したpHに近づけられる。
【0049】
このときの動作例を具体的に説明する。例えば、メッキ処理水5のpHが設定値よりも高くなった場合、このメッキ処理水5を酸性側に近づけるために紫外線光源31を消灯してオゾン供給部15のみを動作させて除菌浄化する。その際、メッキ処理水5のpHを6〜6.5の範囲内に調整する場合、pHが6.5を越えたときに紫外線光源31を消灯してオゾン供給部15を1日〜10日程度運転させるようにpHセンサ56を制御する。そして、この運転中にメッキ処理水5のpHが6を切ったときに紫外線光源31を点灯させて、オゾン供給部15と紫外線照射部16と光触媒作用部17とによる通常の運転を行うようにする。
そして、再度、メッキ処理水5のpHが6を切った場合には、オゾン供給部15を間欠的に動作させるか、或は動作を停止させて紫外線照射部16と光触媒作用部17とを1日〜10日程度動作させる。更に、この動作中にpHが6.5を越えたときには、オゾン供給部15を再度動作させて通常運転を行うようにすればよい。
【0050】
この場合、メッキ処理水5のpHが上昇したときには、紫外線光源31を消灯してオゾン供給部15のみを動作させて徐々にpHを酸性側に移行させるとよい。続いて、メッキ処理水5が酸性に傾こうとしたときには、紫外線光源31を点灯してpHをアルカリ性に傾けるようにするが、このときオゾン供給部15を停止して紫外線照射部16と光触媒作用部17とを動作させることにより速くアルカリ性に移行させることが可能となる。
【0051】
なお、前述した除菌浄化ユニット3は、あくまでも一例であって、その構造にこだわることはない。例えば、除菌浄化ユニット3は、オゾン供給ユニット18と紫外線・光触媒ユニット19とが分割して構成されているが、オゾン供給部と紫外線照射部と光触媒作用部とを有し、これらを個別に動作可能であれば、全体を一体化した除菌浄化ユニットを設けるようにしてもよい。
【0052】
図1において、金メッキ槽1により金メッキされたワーク4のメッキ液が第1回収槽50a、第2回収槽50bにより回収され、続いてワーク4は第1洗浄槽51a、第2洗浄槽51bにより洗浄される。これらの処理槽2にはワーク4に付着した有機物63を含むメッキ廃液が混入し、有機物63により汚れが生じる。このとき、第1回収槽50a、第2回収槽50b、第1洗浄槽51a、第2洗浄槽51bの順に混入する有機物63が減少するが、この有機物量がある一定の濃度になったときに各処理槽2内にカビやぬめりが付着し、特に、第2回収槽50bや第1洗浄槽51a、第2洗浄槽50bにおいてこの現象が顕著になる。ぬめりやカビがワーク4に付着するとこのワーク4が製品として不良になって歩留りが悪くなる。
【0053】
本発明のメッキ処理工程の水処理装置は、オゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17の3つの機能を有機的に結合した除菌浄化ユニット3を、流入流路60及び流出流路61により処理槽2に循環可能に接続しているので、この処理槽2が大型化することを防いで装置全体をコンパクトに設けることができる。除菌浄化ユニット3を介して除菌浄化したメッキ処理水5を循環させて被処理水62中の有機物63を除去しているので、薬品を用いることなくメッキ処理水5に含まれる有機物63を確実に除去して処理槽2へのぬめりやカビの付着を防止したり取り除いたりすることができる。
この場合の除菌浄化ユニット3の浄化能力としては、例えば、回収槽50、洗浄槽51のサイズが250〜500L程度の場合、オゾンの発生量を毎時500mgとし、電力8W程度の能力の紫外線ランプ(紫外線光源)であればよいため、小型で軽量、かつ経済性に優れた構成に設けることができる。
【0054】
ここで除菌浄化ユニット3により洗浄槽51を除菌浄化したときの写真を図7に示す。図7(a)は、除菌浄化後の洗浄槽51の状態を示しており、図7(b)は、除菌浄化前の洗浄槽51の状態を示している。
【0055】
図7(b)においては、洗浄槽51を清掃した後に交換用の純水(メッキ処理水)5を満たし、洗浄槽51によりメッキ後のワーク(基板)4を洗浄したときの4日目の状態を示している。この場合、写真に示すようにカビやぬめりの発生が確認された。
これに対して、本発明のメッキ処理工程の水処理装置を洗浄槽51に設けた場合には、この洗浄槽51の清掃及び純水の交換後に6日経過した場合でも、図7(a)に示すようにカビやぬめりの発生が確認されず、洗浄槽51の良好な環境を維持することができた。
このとき、メッキ処理水5中に含まれる一般細菌数も測定したが、水処理装置の作動前にはこの一般細菌数が94000個/mLであったのに対し、水処理装置を作動して一週間後には3個/mLであり、メッキ処理水5に悪影響を与える細菌数を激減できたことが確認された。
【0056】
また、図示しないが、銅メッキのメッキラインにおいて、ワークに銅メッキを施す前の前処理の洗浄ラインの洗浄槽に、本発明のメッキ処理工程の水処理装置を洗浄装置に設けた場合の循環用パイプへの有機物の付着状態を確認した。図8(a)は、除菌浄化後の循環用パイプの状態を示し、図8(b)は、除菌浄化前の循環用パイプの状態を示している。
【0057】
銅メッキの前処理ラインでは、洗浄槽の清掃後に純水を満たしてワークの洗浄を開始した場合、ほぼ2か月経過後には図8(b)に示すように洗浄槽の循環用パイプの内部に有機物が付着して、循環用パイプがほぼ詰まった状態になった。
この洗浄槽に本発明のメッキ処理工程の水処理装置を設けた場合、図8(a)に示すように循環用パイプ内部の付着物が除去された。このときの洗浄水中に含まれる一般細菌数を測定したところ、測定初日において一般細菌数が4個/mL、2日目以降では一般細菌数が0個/mLとなった。このように本発明の水処理装置を前処理ラインの洗浄槽に用いた場合には、付着物を除去しながら一般細菌数の発生を抑えることで循環用パイプ(配管)の洗浄作業を実施する必要が無くなり、延いては、メッキ処理時の歩留りを向上することもできる。
【0058】
図6においては、本発明のメッキ処理工程の水処理装置の他の実施形態を示している。なお、この実施形態において前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態においては、メッキ工程中の各種処理槽2の回収槽50である第1回収槽50a、第2回収槽50b、及び洗浄槽51である第1洗浄槽51a、第2洗浄槽51bに流入流路60及び流出流路61で除菌浄化ユニット3が接続され、それぞれの処理槽2と流入流路60及び流出流路61との間に自動バルブからなる切換バルブ80、81、82、83、84、85、86、87が設けられ、これらの切換バルブ80〜87の開閉の切換えにより除菌浄化ユニット3を各種処理槽2に循環可能に回路構成されている。例えば、切換バルブ80、81を開状態、残りの切換バルブ82〜87を閉状態にすることで、除菌浄化ユニット3により第1回収槽50aにメッキ処理水5を循環させて図2の被処理水62中の有機物63を除去することが可能になっている。
【0059】
更に、この除菌浄化ユニット3にはタイマー88が接続されており、水処理装置はタイマー88の時間の測定により、各種処理槽2の処理程度に応じて適宜の処理槽2を順繰りに処理できるように制御構成されている。この場合、各処理槽2のそれぞれに対して除菌浄化ユニット3を設ける必要がなく、1つの除菌浄化ユニット3を流入流路60及び流出流路61で接続することでメッキ処理水を除菌浄化して有機物を除去できる。このとき、所定時間毎にタイマー88を切換えることで全ての処理槽2の有機物量を効果的に減少させ、メッキ処理後のワークの不良率を減少させることも可能になる。また、有機物により最も汚れが酷くなる傾向にある第1回収槽50aの処理時間を長くすることで、この第1回収槽50aよりも下流側の処理槽2のぬめりやカビを発生し難くすることができ、メッキ処理水5の水量を少なくでき、歩留りを飛躍的に向上することもできる。
【0060】
この場合、一般的に処理槽2は有機物によりアルカリ性になることが多いが、仮に処理槽2が有機物により酸性になった場合でも、前述したように図3において除菌浄化ユニット3のオゾン供給部15を停止し、光触媒作用部17と紫外線照射部16とを動作させることでメッキ処理水5を理想的な中性からアルカリ性に移行させることが可能であり、その後、オゾン供給部15を動作させることで効果的な促進酸化による除菌浄化効果が得られる。このようにアルカリ性、酸性の何れの特性の有機物にも対応できる。通常時においては、オゾン供給部15、紫外線照射部16、光触媒作用部17による3つの機能を随時働かせることでpH変化の少ない運転も可能である。
【0061】
また、切換バルブ80〜87を手動で切換え可能に設けることもでき、この場合、例えば、目視により各処理槽2の汚れ具合を確認し、除菌浄化の特に必要な処理槽2を集中的に除菌浄化しながら各処理槽2を均等に除菌浄化することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 処理槽
3 除菌浄化ユニット
5 メッキ処理水
15 オゾン供給部
16 紫外線照射部
17 光触媒作用部
33 光触媒
45 金属チタン基材
46 酸化チタン
50 回収槽
50a 第1回収槽
50b 第2回収槽
51 洗浄槽
51a 第1洗浄槽
51b 第2洗浄槽
55 pH調整機能部
60 流入流路
61 流出流路
62 被処理水
63 有機物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンを供給するオゾン供給部、紫外線を照射する紫外線照射部、光触媒を作用させる光触媒作用部の3つの機能を有機的に結合した除菌浄化ユニットの流入流路及び流出流路をメッキ工程中の各種処理槽に循環可能に接続し、前記除菌浄化ユニットを介して除菌浄化したメッキ処理水を循環させて被処理水中の有機物を除去するようにしたことを特徴とするメッキ処理工程の水処理装置。
【請求項2】
前記オゾン供給部、紫外線照射部或は光触媒作用部の3つの機能をそれぞれ制御することにより、前記処理槽のpHを最適値に制御するpH調整機能部を設けた請求項1記載のメッキ処理工程の水処理装置。
【請求項3】
前記光触媒作用部は、金属チタン基材の表面を酸化させて酸化チタンを生成することで剥離しない光触媒を利用した請求項1又は2に記載のメッキ処理工程の水処理装置。
【請求項4】
前記除菌浄化ユニットを前記メッキ工程中の各種処理槽に循環可能に回路構成し、各種処理槽の処理程度に応じて適宜の処理槽を順繰りに処理できるように制御構成した請求項1乃至3の何れか1項に記載のメッキ処理工程の水処理装置。
【請求項5】
前記処理槽は、メッキ処理中の前処理と後処理の回収槽、洗浄槽などの各種の処理槽である請求項1乃至4の何れか1項に記載のメッキ処理工程の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−43135(P2013−43135A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183391(P2011−183391)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】