説明

メッキ前処理方法

【課題】メッキムラを抑制することが可能なメッキ前処理方法を提供する。
【解決手段】メッキ前処理方法は、超臨界二酸化炭素に難溶で有機金属錯体30を溶解及び還元することができる油剤を繊維10上に塗布する第1工程と、第1工程において油剤が塗布された高強度繊維10に対して、有機金属錯体30が溶解した超臨界二酸化炭素を接触させる第2工程と、第2工程を経た有機金属錯体30を回収する第3工程と、第3工程後、超臨界二酸化炭素を接触させた高強度繊維10から油剤を除去する第4工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の高性能化及び環境問題の観点から柔軟で軽量な電装部材が求められている。これを実現するものの一つとして高分子繊維材料上へ金属メッキを施したものが考えられる。しかし、一般に高分子繊維上へ金属メッキする場合、メッキ密着性を高めるために酸やアルカリ等を用いた表面粗化が必須であり、同処理をする際に大量の廃液が出るという地球環境的な問題がある。また、パラ系アラミド繊維、PBO繊維、ポリアリレート繊維などの高強度繊維については表面粗化が難しく高密着にメッキすることが難しいという問題がある。
【0003】
これに対するものとして超臨界流体を用いたメッキ前処理法が提案されている。これは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を有効利用する技術で、高分子内部にメッキ用触媒を含浸することによりメッキ密着性を高めるものである(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−316832号公報
【特許文献2】特開2007−56387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1及び2に記載のメッキ前処理方法では、メッキ用触媒を含有する超臨界流体にプラスチックや繊維を直接接触させることにより、メッキ前処理を施す。しかし、この技術にあっては、長尺の繊維を一括で処理しようとすると流体と繊維の接触状態に偏りが生じてしまう。このため、触媒の吸着状態が均一とならず、メッキムラができてしまい易くなってしまう。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、メッキムラを抑制することが可能なメッキ前処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のメッキ前処理方法は、超臨界二酸化炭素に難溶で有機金属錯体を溶解及び還元することができる油剤を繊維上に塗布する第1工程と、第1工程において油剤が塗布された繊維に対して、有機金属錯体が溶解した超臨界二酸化炭素を接触させる第2工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のメッキ前処理方法によれば、超臨界二酸化炭素に難溶で有機金属錯体を溶解及び還元することができる油剤を繊維上に塗布し、油剤が塗布された繊維に対して、有機金属錯体が溶解した超臨界二酸化炭素を接触させる。ここで、本件発明者は、鋭意研究を重ねた結果、上記処理を行うと、メッキムラを抑制できることを見出した。従って、メッキムラを抑制することが可能なメッキ前処理方法を提供することができる。
【0009】
また、本発明のメッキ前処理方法は、第2工程を経た有機金属錯体を回収する第3工程と、第3工程後、繊維から油剤を除去する第4工程と、を有することが好ましい。
【0010】
このメッキ前処理方法によれば、超臨界二酸化炭素を接触させた繊維から、別工程にて油剤を除去することにより、有機金属錯体の状態を変化させることなく回収することができる。ここで、本件発明者らは上記処理方法を経た有機金属錯体を回収した場合、回収した有機金属錯体を使用して同一の処理を行ったところ、略同一の効果が得られることを見出した。従って、錯体の再利用について容易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のメッキ前処理方法によれば、メッキムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るメッキ前処理方法を経て得られるメッキ付き繊維を示す図である。
【図2】本実施形態に係るメッキ前処理方法を説明するための概略図である。
【図3】本発明の実施例を示す図表である。
【図4】比較例を示す図表である。
【図5】実施例2、実施例4、比較例1及び比較例2における油剤の塗布度合い及びPdの析出度合いを示すマッピング画像の図である。
【図6】実施例2における熱処理前後の油剤の塗布度合い及びPdの析出度合いを示すマッピング画像の図である。
【図7】本実施形態に係るメッキ前処理方法により使用される有機金属錯体及び回収された有機金属錯体の融点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るメッキ前処理方法を経て得られるメッキ付き繊維を示す図である。同図に示すようにメッキ付き繊維1は、高強度繊維10上に金属メッキ20を施したものである。
【0014】
ここで、高強度繊維10とは、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、及びPBO繊維などである。金属メッキ20は、例えば銅やスズが該当する。このような高強度繊維10と金属メッキ20とからなるメッキ付き繊維1は、金属メッキ20が導体部として機能するため、電線、特に微弱な信号を伝達する信号線として用いることができる。
【0015】
次に、本実施形態に係るメッキ前処理方法を説明する。図2は、本実施形態に係るメッキ前処理方法を説明するための概略図である。本実施形態に係るメッキ付き繊維1を得るにあたっては、まず高強度繊維10上に油剤を塗布する。ここで、塗布される油剤は、超臨界二酸化炭素に対して難溶で、有機金属錯体を溶解及び還元できるものである。具体的に塗布される油剤は、脂肪酸系の油剤、及びパラフィンオイルなどが該当する。
【0016】
その後、有機金属錯体30が投入されている筐体40内に上記油剤を塗布した繊維10を収納し、超臨界状態とした二酸化炭素を筐体40内に供給する。これにより、有機金属錯体30が超臨界二酸化炭素を介して油剤中に溶解後還元されることとなり、有機金属錯体30が分解して繊維上に金属が析出する。特に、超臨界二酸化炭素は、溶解性及び拡散性が高く、筐体40内に大量の高強度繊維10が収納されていたとしても油剤中へムラなく均一に錯体が溶解する。
【0017】
次いで、所定時間経過後、高強度繊維10を筐体40から取り出す。そして、油剤を除去する。この際、例えば200℃で約60分の熱処理を行う。これにより、油剤が除去され、繊維10上には金属が残ることとなる。
【0018】
その後、無電解銅メッキ処理を行い、高強度繊維10上に金属メッキ20を形成することとなる。
【0019】
なお、有機金属錯体30の還元は油剤が塗布された部位のみで起こるため、油剤中に溶解しなかった有機金属錯体30は超臨界二酸化炭素の減圧と共に再析出し、再利用可能となる。
【0020】
次に、実施例及び比較例を説明する。図3は本発明の実施例を示す図表であり、図4は比較例を示す図表である。なお、図3に示す実施例及び図4に示す比較例については、二酸化炭素の超臨界条件として、圧力10〜20MPaとし、温度を70〜150℃とし、時間を10〜120分とした。また、油剤除去の熱処理としては、温度150〜250℃とし、時間を10〜120分とした。さらに、めっき析出性において「○」とはムラがなく良好な結果が得られた場合を示し、「×」とはムラがあり良好でない結果が得られた場合を示している。
【0021】
まず、図3を参照して実施例1〜4について説明する。実施例1〜4においては高強度繊維10としてパラ系アラミド繊維(440dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(hfa)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0022】
また、実施例1において油剤は脂肪酸(椿油)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0023】
また、実施例2において油剤は脂肪酸(オレイン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0024】
同様に、実施例3において油剤は脂肪酸(ラウリン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0025】
さらに、実施例4において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.04wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0026】
次に、図4を参照して比較例1,2を説明する。比較例1,2においては高強度繊維10としてパラ系アラミド繊維(440dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(hfa)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0027】
また、比較例1において油剤は用いなかった。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがあり良好ではなかった。
【0028】
また、比較例2において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.01wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがあり良好ではなかった。
【0029】
以上より、脂肪酸系の油剤を用いると、Pdの析出性が良好であることがわかった。また、パラフィンオイル(硫黄分0.04%)を用いてもPdの析出性が良好であることがわかった。これは、脂肪酸のカルボキシル基やパラフィンオイルの硫黄分がPdの錯体の還元に寄与しているためといえる。
【0030】
再度、図3を参照する。実施例5〜8について説明する。実施例5〜8においては高強度繊維10としてパラ系アラミド繊維(440dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(acac)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0031】
また、実施例5において油剤は脂肪酸(椿油)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0032】
また、実施例6において油剤は脂肪酸(オレイン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0033】
同様に、実施例7において油剤は脂肪酸(ラウリン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0034】
さらに、実施例8において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.04wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0035】
次に、図4を参照して比較例3を説明する。比較例3においては高強度繊維10としてパラ系アラミド繊維(440dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(acac)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0036】
また、比較例3において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.01wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがあり良好ではなかった。
【0037】
以上より、有機金属錯体30がPd(hfa)であっても、Pd(acac)であっても、Pdの析出性が良好であることがわかった。すなわち、有機金属錯体30はPd系であると良好な結果が得られることがわかった。
【0038】
次に、図4を参照して比較例4,5を説明する。比較例4,5においては高強度繊維10としてパラ系アラミド繊維(440dtex、5000m巻き)を用いた。
【0039】
また、比較例4において有機金属錯体30はCu(hfa)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。さらに、油剤は脂肪酸(オレイン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Cuの析出性を確認した結果、結果はムラがあり良好ではなかった。
【0040】
同様に、比較例5において有機金属錯体30はCu(acac)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。さらに、油剤は脂肪酸(オレイン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Cuの析出性を確認した結果、結果はムラがあり良好ではなかった。
【0041】
以上より、有機金属錯体30がCu(hfa)であっても、Cu(acac)であっても、Pdの析出性が良好でないことがわかった。すなわち、有機金属錯体30自体についても還元性に影響を及ぼしており、銅系であると良好な結果が得られないことがわかった。
【0042】
次に、図3を参照して実施例9〜12について説明する。実施例9〜12においては高強度繊維10としてポリアリレート繊維(440dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(hfa)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0043】
また、実施例9において油剤は脂肪酸(椿油)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0044】
また、実施例10において油剤は脂肪酸(オレイン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0045】
同様に、実施例11において油剤は脂肪酸(ラウリン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0046】
さらに、実施例12において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.04wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0047】
次に、図4を参照して比較例6を説明する。比較例6においては高強度繊維10としてポリアリレート繊維(440dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(hfa)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0048】
また、比較例6において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.01wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがあり良好ではなかった。
【0049】
以上より、高強度繊維10がポリアリレート繊維であってもパラ系アラミド繊維と同様の結果が得られることがわかった。
【0050】
再度、図3を参照して実施例13〜16について説明する。実施例13〜16においては高強度繊維10としてPBO繊維(1670dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(hfa)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0051】
また、実施例13において油剤は脂肪酸(椿油)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0052】
また、実施例14において油剤は脂肪酸(オレイン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0053】
同様に、実施例15において油剤は脂肪酸(ラウリン酸)を用い、油剤中における脂肪酸の濃度を0.05〜100wt%とした。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0054】
さらに、実施例16において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.04wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがなく良好であった。
【0055】
次に、図4を参照して比較例7を説明する。比較例7においては高強度繊維10としてPBO繊維(1670dtex、5000m巻き)を用い、有機金属錯体30として、Pd(hfa)を高強度繊維10に対して0.05〜4wt%だけ用いた。
【0056】
また、比較例6において油剤はパラフィンオイル(硫黄分0.01wt%)を用いた。そして、Pdの析出性を確認した結果、結果はムラがあり良好ではなかった。
【0057】
以上より、高強度繊維10がPBO繊維であってもパラ系アラミド繊維と同様の結果が得られることがわかった。
【0058】
図5は、実施例2、実施例4、比較例1及び比較例2における油剤の塗布度合い及びPdの析出度合いを示すマッピング画像の図である。なお、図5では、高強度繊維10を超臨界二酸化炭素に接触させ筐体40から取り出しTOF−SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)による分析を行ったときのマッピング画像を示している。
【0059】
図5に示すように、実施例2において油剤は充分に塗布されており(油剤マッピング画像参照)、Pdのついても充分に析出しているといえる(Pdマッピング画像参照)。同様に、実施例4において油剤は充分に塗布されており(油剤マッピング画像参照)、Pdのついても実施例2ほど充分ではないが析出しているといえる(Pdマッピング画像参照)。
【0060】
これに対し、比較例1において油剤は塗布されておらず(油剤マッピング画像参照)、Pdのついても析出していないといえる(Pdマッピング画像参照)。また、比較例2において油剤は充分に塗布されているが(油剤マッピング画像参照)、Pdは析出しているとはいえない(Pdマッピング画像参照)。
【0061】
図6は、実施例2における熱処理前後の油剤の塗布度合い及びPdの析出度合いを示すマッピング画像の図である。図6に示すように、熱処理前の油剤の塗布度合い及びPdの析出度合いは、図5に示すものと同じである。熱処理後において油剤は揮発しており(油剤マッピング画像参照)、Pdが高強度繊維10の表面に残ったことが観察された(Pdマッピング画像参照)。特に、このような高強度繊維10に無電解銅メッキ処理を行ったところ、Pdの析出性が良好だったものは5000mの全長に亘ってムラのない金属メッキ20を実現することができた。
【0062】
図7は、本実施形態に係るメッキ前処理方法により使用される有機金属錯体30及び回収された有機金属錯体30の融点を示す図である。なお、図7ではDSC(Differential scanning calorimetry)により融点を測定している。
【0063】
図7に示すように、未処理品、すなわち使用前の有機金属錯体30は融点が99.42℃である。これに対して、回収品、すなわち使用後の有機金属錯体30は融点が99.27℃であることがわかった。このように、有機金属錯体30は初期と比較して状態(融点の変化)がほぼ変化しておらず、再利用可能であることがわかった。
【0064】
このようにして、本実施形態に係るメッキ前処理方法によれば、超臨界二酸化炭素に難溶で有機金属錯体30を溶解及び還元することができる油剤を繊維10上に塗布し、油剤が塗布された繊維10に対して、有機金属錯体30が溶解した超臨界二酸化炭素を接触させる。ここで、本件発明者は、鋭意研究を重ねた結果、上記処理を行うと、メッキムラを抑制できることを見出した。従って、メッキムラを抑制することが可能なメッキ前処理方法を提供することができる。
【0065】
また、超臨界二酸化炭素を接触させた繊維10から、別工程にて油剤を除去することにより、有機金属錯体30の状態を変化させることなく回収することができる。ここで、本件発明者らは上記処理方法を経た有機金属錯体30を回収した場合、回収した有機金属錯体を使用して同一の処理を行ったところ、略同一の効果が得られることを見出した。従って、錯体30の再利用について容易化を図ることができる。
【0066】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0067】
例えば、本実施形態に係るメッキ前処理方法は繊維として高強度繊維10を例示しているが、特に繊維はこれに限られるものではない。また、高強度繊維10としてアラミド繊維、ポリアリレート繊維、及びPBO繊維を示しているが、これに限らず、更なる技術開発によりこれらと同様の耐屈曲性や強度の繊維が開発された場合には、その繊維であっても適用可能である。
【0068】
また、有機金属錯体30や油剤についても、上記にて例示したものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0069】
1…メッキ付き繊維
10…高強度繊維
20…金属メッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界二酸化炭素に難溶で有機金属錯体を溶解及び還元することができる油剤を繊維上に塗布する第1工程と、
前記第1工程において前記油剤が塗布された繊維に対して、有機金属錯体が溶解した超臨界二酸化炭素を接触させる第2工程と、
を有することを特徴とするメッキ前処理方法。
【請求項2】
前記第2工程を経た有機金属錯体を回収する第3工程と、
前記第3工程後、繊維から油剤を除去する第4工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のメッキ前処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−144762(P2012−144762A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2736(P2011−2736)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】