説明

メッキ樹脂品の製造方法及び導波管

【課題】
ブラスト処理が行えない領域にも高い密着性を持つメッキができるようにする。
【解決手段】
樹脂品の主材に対して選択的に溶解される可溶性材を、当該主材に添加する可溶性材添加手順(ステップS1)と、可溶性材が添加された主材を用いて成形する成型手順(ステップS2)と、樹脂品の表面に露出する可溶性材を溶解させる可溶性材溶解手順(ステップS3)と、可溶性材溶解手順により可溶性材が溶出して面粗化した樹脂品に金属メッキを行うメッキ手順(ステップS4)と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属メッキされたエポキシ系樹脂等のメッキ樹脂品の製造方法及び導波管に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の樹脂が用いられている。このとき、樹脂強度を高めるために、強化繊維を混ぜ込むことが行われる。また、樹脂に金属意匠を施すために、表面にメッキすることが行われる。これらの処理は、樹脂に新たな特性を付与するため、多くの用途に適用されている。
【0003】
プラスチックに金属的光沢を与える方法として、無電解メッキがある。このとき、メッキされた金属膜の密着性は、製品の品質を左右するため、高い密着性が要求される。
【0004】
そこで、例えばABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)においては、樹脂中に含まれるブタジエンを薬品で溶解させて、樹脂表面に微少な窪みを形成する(面粗化する)ことが行われる。面粗化されたプラスチック表面に金属メッキを行うと、金属が、表面の微少な窪みに入り込む。これにより、金属とプラスチックとの密着性が高くなる(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、エポキシ系樹脂では、ABS樹脂におけるブタジエンのように、主材料に影響を与えずにブタジエンのみを選択的に溶解できるような材料が用いられない。従って、薬液により主材料に影響を与えずに面粗化することが困難であった。そこで、エポキシ系樹脂の場合には、ブラスト処理を行うことにより面粗化を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−29276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばパイプの管内のように陰となる領域を持つ樹脂品では、管内の面に対してブラスト処理が行えないため、内面にメッキした金属膜の密着性を改善することができない問題がある。
【0008】
そこで、本発明の主目的は、ブラスト処理が行えない領域にも高い密着性を持つメッキができるようにしたメッキ樹脂品の製造方法及び導波管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるメッキ樹脂品の製造方法は、樹脂品の主材に対して選択的に溶解される可溶性材を、当該主材に添加する可溶性材添加手順と、可溶性材が添加された主材を用いて成形する成型手順と、樹脂品の表面に露出する可溶性材を溶解させる可溶性材溶解手順と、可溶性材溶解手順により可溶性材が溶出して面粗化した樹脂品に金属メッキを行うメッキ手順と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる導波管は、表面に金属メッキされた導波管であって、導波管の表面が、主材に添加された可溶性材を溶解させることにより面粗化され、その上に金属膜がメッキして形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
主材に対して選択的に溶解することができる可溶性材を添加し、成形後に可溶性材を溶解させてメッキを行うので、ブラスト処理が行えない領域にも高い密着性を持つメッキができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる導波管の斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる導波管の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態にかかる導波管の製造手順を示す図で、(a)は樹脂品の成形後の部分断面図、(b)は可溶性材を溶解させた際の部分断面図、(c)は、メッキ後の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態にかかるメッキ樹脂品の製造方法を用いてメッキされた導波管2の斜視図である。このような導波管(以下、被メッキ体と記載する)は、樹脂製品で、表面にクロミューム金属がメッキされている。但し、本実施形態におけるメッキ樹脂品の製造方法は、かかる導波管に適用されるばかりでなく、これまでブラスト処理を行うことで面粗化し、メッキを行っていた樹脂品に適用できる。このとき、例えばガラス繊維等により強度補強が行われた、繊維強化型プラスチックでも良い。
【0014】
導波管2は、エポキシ系樹脂を主材料に形成され、導波管2内には、長手方向に沿ってリブ4が立設されている。導波管2の内外面にはメッキにより金属膜が被着されている。
【0015】
このような導波管2の製造方法を図2に示すフローチャート及び図3に示す断面図を参照して説明する。なお、図3における断面図は、図1におけるA−A断面に相当する図である。
【0016】
ステップS1: 先ず、主材料10に可溶性材11を添加する。以下、可溶性材11を含む主材料10を添加材含有主材料10aと記載する。主材料10として、上述したエポキシ系樹脂が相当する。
また、可溶性材11としては、ブタジエンの粉末が例示できる。
【0017】
ステップS2: このブタジエンの粉末が添加された主材料10を用いて、導波管を成形する。導波管の形成方法として、型抜き等の方法が例示できる。以下、メッキ前の導波管を無メッキ導波管2aと記載する。図3(a)は、無メッキ導波管2aの部分断面図である。
【0018】
ステップS3: 次に、成形された無メッキ導波管2aを薬液に浸漬する。この薬液としては、主材料10に対して耐溶解性を持つが、可溶性材11に対しては溶解性を持つことが要求される。ここでは、エポキシ系樹脂に対して耐溶解性を持ち、ブタジエンに対しては溶解性を持つヘキサンやベンゼンを用いる。また、トルエン、キシレン、アセトン等の有機薬液も利用可能である。この薬液に無メッキ導波管2aを浸漬すると、無メッキ導波管2aの表面に露出している可溶性材11が溶解されて、図3(b)に示すように、マイクロボイド12が表面に形成される。即ち、無メッキ導波管2aの表面は、面粗化される。なお、表面に露出していない可溶性材11は、溶解されずに残ったままとなっている。
【0019】
通常、耐薬品性の高い主材料10に対して面荒れを起こすために、ブラスト処理が行われる。しかし、ブラスト処理は、導波管内や陰になる領域の表面に対して行うことができない。一方、本実施形態にかかる方法では、液体の薬液を用いるので、導波管内にも容易に侵入し、リブ4の表面も一様に荒らすことができる。
【0020】
ステップS4: 面荒れした無メッキ導波管2aに対して、クロムミューム等を無電解メッキする。このとき、導波管表面に密着した金属は、マイクロボイド12に入り込む。図3(c)は、クロミュームがメッキされた導波管2の部分断面図である。マイクロボイド12に入り込んだ金属は、主材料10にめり込んだスパイクとして機能するため、メッキされた金属は容易に剥離しなくなる。即ち、密着性の高いメッキが行えるようになる。
【0021】
なお、上記説明においては、可溶性材を主材料に添加した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、主材料のみからなる無メッキ導波管の表面に、可溶性材を含むプライマーを塗布し、薬液で、このプライマーに含まれる可溶性材を溶解させても良い。
【0022】
また、可溶性材に変えて、主材料に金属粉を混ぜることも可能である。無論、この場合、無電解メッキして被着された金属膜が金属粉と密着することが前提である。
【0023】
以上説明したように、可溶性材を主材料に添加して、樹脂品を成形等した後に、薬液により可溶性材を溶解させたので、導波管内等のブラスト処理が行えない領域に対しても密着性の高い均一なメッキが可能になる。
【0024】
また、本実施形態にかかるメッキ樹脂品の製造方法を導波管に適用することで、導波管の高性能化、軽量化、低熱膨張化が可能になる。
【符号の説明】
【0025】
2 導波管
2a 無メッキ導波管
4 リブ
10 主材料
10a 添加材含有主材料
11 可溶性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ樹脂品の製造方法であって、
前記樹脂品の主材に対して選択的に溶解される可溶性材を、当該主材に添加する可溶性材添加手順と、
前記可溶性材が添加された前記主材を用いて成形する成型手順と、
前記樹脂品の表面に露出する前記可溶性材を溶解させる可溶性材溶解手順と、
前記可溶性材溶解手順により前記可溶性材が溶出して面粗化した前記樹脂品に金属メッキを行うメッキ手順と、を含むことを特徴とするメッキ樹脂品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメッキ樹脂品の製造方法であって、
前記樹脂品はパイプ形状を持ち、該パイプの管内外の面に前記金属メッキすることを特徴とするメッキ樹脂品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメッキ樹脂品の製造方法であって、
前記主材の強度を補強するための強度補強材を混ぜる手順を含む、ことを特徴とするメッキ樹脂品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のメッキ樹脂品の製造方法であって、
前記主材はエポキシ系樹脂であり、前記可溶性材はブタジエンであることを特徴とするメッキ樹脂品の製造方法。
【請求項5】
表面に金属メッキされた導波管であって、
前記導波管の表面が、主材に添加された可溶性材を溶解させることにより面粗化され、その上に金属膜がメッキして形成されていることを特徴とする導波管。
【請求項6】
請求項5に記載の導波管であって、
前記導波管はパイプ形状を持ち、該パイプの管内外の面に前記金属メッキすることを特徴とするメッキ樹脂品の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の導波管であって、
前記主材の強度を補強するための強度補強材が含まれていることを特徴とする導波管。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の導波管であって、
前記主材はエポキシ系樹脂であり、前記可溶性材はブタジエンであることを特徴とする導波管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87397(P2012−87397A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237607(P2010−237607)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】