説明

メッキ装置

【課題】表面に導電性を有する基材粒子に均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供する。
【解決手段】メッキユニット1を備え、メッキユニットは基材粒子が接触しつつ周回可能な底面1pを有する基底部1yと、基底部の底面に相対するように開口が設けられた筒状の周壁面1qを有する本体部1xとの直接的または間接的な結合により形成されるとともに、当該結合により底面と周壁面とで構成され、基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室1mを有し、メッキ室の底面の上方に開口する供給口を有しメッキ室の周壁面に沿い旋回するように供給口からメッキ液を供給する供給管1eと、メッキ室に開口する排出口を有する排出管1cと、メッキ室の底面に配置された基材粒子に接触する陰極と、メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、陰極および陽極に接続された電源とを有するメッキ装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に導電性を有する基材粒子にメッキを施す技術の一例として、Cuを主体としたコアボールの表面に半田をメッキして半田被覆Cuコアボール(以下Cuコアボールと略して記載する。)を形成する技術がある。なお、従来技術の問題点を明らかにするために、Cuコアボールを例としてメッキ技術を説明するが、本発明はCuコアボールに限定されない。
【0003】
近年の多ピッチ化・狭ピッチ化による高密度実装の進むBGA(Ball Grid Allay)やCSP(Chip Scale Package)などの半導体パッケージでは、入出力端子用バンプとして小径のCuコアボールが適用されている。Cuコアボールは、そのコアボールがリフロー時に溶融しないため、半導体素子と基板との間に一定の距離を維持でき、半導体素子の起動・停止により生じる熱サイクル負荷等に対する接続信頼性を確保することができる。
【0004】
Cuコアボール製造技術として、メッキ液が流通可能な多数の開口を有するバレル内にコアボールを収納し、バレルをメッキ浴に配置し自転させることで半田を被覆するバレル電気メッキ法が周知である。しかしながら、特に直径が100μm以下の小径のCuコアボールを製造する場合には、バレルの自転にともなうコアボールの転動によるコアボールの攪拌が不十分となる。その結果、コアボール同士がメッキ層を介して連結し凝集したり、メッキ層の表面が粗面化したり、メッキ層の厚みが部分的に不均一となり、歩留まりが低下するという問題が生じていた。
【0005】
このバレル式電気メッキ法の問題を解消する技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1には、充分かつ均一なメッキ層を短時間で得るため、「上端が開放した下開き椀形の樹脂ドームの外周部下面と、樹脂底板の外周部上面の間に被めっき物が回転中に押付けられるコンタクトリングと、処理液が流通飛散するポーラスリングを一体に結合してセルを形成し、上記セルを相対回転不能に支持しコンタクトリングと通電する導電ロータリープレートの中央部下面に垂直な導電駆動シャフトの上端を固定し、上記シャフトにコンタクトブラシを押圧してマイナス極に接続し、上記ドーム内に陽極バスケットを配置し、セルを覆うカバーを設けた」、小物の回転メッキ装置が記載されている。そして、かかる構成の回転メッキ装置によれば、セル内に収納された被メッキ物は、セルの回転により生ずる遠心力の作用によりコンタクトリングに強制的に押し付けられ、セルの回転と、停止又は減速を繰り返すことにより均一に混合され、被メッキ物の表面におけるメッキ液の更新も活発となり、均一な厚みのメッキ層を形成することができると記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の回転メッキ装置は工業生産上効率の面での問題があった。すなわち、この回転メッキ装置は、被メッキ物を攪拌してその表面にメッキ液を充分に流通させるために、セルの回転、停止又は減速を繰り返す必要がある。そして、被メッキ物への実際のメッキ処理は、セルが回転し遠心力でコンタクトリングに被メッキ物が接触している間にのみ行われ、停止又は減速している間は行われないため、メッキ処理時間に比して全体の製造時間が長くなる。さらに、メッキ処理中にはボールの攪拌力が作用しないため、特に半導体パッケージに使用される直径が100μm以下の小径のCuコアボールの場合には、セル内におけるコアボールの凝集が顕著となり、メッキ処理されたCuコアボールの表面の平滑性も劣化する。この凝集を解くためにセルの回転、停止又は減速を頻繁に繰り返す方法もあるがメッキ効率が更に低下するという問題が招来する。
【0007】
また、バレル式電気メッキ法の問題を解消する技術の他の例が特許文献2に記載されている。特許文献2には、特に曲がり易い性質を持ったワークのメッキ時の変形等を防止することを目的とし、「上面開口としたメッキ槽と、そのメッキ槽の上面開口を閉塞する着脱蓋とを有し、前記メッキ槽の底面に陰極を備え、着脱蓋の裏面に陽極を備えるとともに、前記メッキ槽の底面沿いの周壁に、その周壁の内面方向に向けたメッキ液の噴射ノズルを備えていることを特徴とする」、メッキ装置が記載されている。そして特許文献2には、かかる構成を採用することにより、メッキ槽内に投入されたワークは噴射ノズルから噴射されるメッキ液とともにメッキ槽内を回り、その回転を伴いながらメッキ処理が施されるため、曲がりや変形を与える程の衝突等がなくなり、すべてのワークが原形を保持したままメッキ加工処理を終了できる、と記載されている。
【0008】
しかしながら、かかる特許文献2のメッキ装置は均一な厚みのメッキ層を基材粒子に形成するという点では不十分である。すなわち、特許文献2のメッキ装置で基材粒子をメッキした場合、メッキ槽内を旋回するメッキ液で基材粒子は攪拌されながら旋回運動するが、粒子は液流に乗って移動するため、底面に配置された電極と粒子とが接触する確率が小さく、その確率も粒子毎に不均一となる。その結果、個々の基材粒子ごとにメッキ層の厚みが異なってしまうという問題が生じる可能性がある。
【0009】
さらに、下記特許文献3には、粒径が0.1μm〜10μmの範囲の金属、無機物質などの微粉末の表面に金属を電気めっき法で均一にかつ高収率で被覆する装置として、「めっき液を収容する軸を縦方向にした筒状の容器と、この容器の底部に電導表面を横にして配した陰極板と、該めっき液の液面近く配した陽極と、該陰極板と陽極との間に所定の電位を付与する電源装置と、該陰極板と陽極との間の液中に吸込用開口を持つ吸込管と、該陰極板と陽極との間の液中に吐出用開口を持つ吐出管と、該吸込管から吐出管に通ずる流体の循環経路と、この循環経路に介装された流体循環用ポンプとからなり、該吐出管の吐出用開口を陰極板の電導表面の方向に向けて下向きに設置すると共に前記の吸込管の吸込用開口を陽極下端よりもさらに下方に設置し、被めっき品である粒径が0.1μmから10.0μmの範囲の導電性微粉末をめっき液と共に前記の循環経路を循環させつつ該陰極板に連続的に衝突させるようにした微粉末の電気めっき装置」が開示されている。そして、かかるめっき装置によれば、電気めっき液中に微粉末が所定の懸濁濃度をもって懸濁し且つ所定の方向と速度をもった微粉末懸濁液をめっき液中に強制的に形成させ、微粉末懸濁流を陽極には実質的に接触させないで陰極板にだけ所定の速度成分をもって循環衝突させるので、微粉末の一粒づつの表面に均一かつ高収率で電気めっきすることが可能となると記載されている。
【0010】
しかしながら、かかる特許文献3のめっき装置によっても、微粉末は微粉末懸濁流に乗って流動するのみであるため陰極板と接触する確率が微粉末間で不均一であり、特許文献2のメッキ装置と同様な理由から、均一な厚みのメッキ層を個々の基材粒子に形成するという点では不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−239799号公報
【特許文献2】実開平7−6267号公報
【特許文献3】特開平1−272792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされた発明であり、表面に導電性を有する基材粒子に均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供することを第1の目的としている。加えて、本発明は、当該基材粒子に2層以上のメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明に係わるメッキ装置は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、メッキユニットを備えている。このメッキユニットは、基材粒子が接触しつつ周回可能な底面を有する基底部と、その基底部の底面に相対するように開口が設けられた筒状の周壁面を有する本体部との直接的または間接的な結合により形成されるとともに、当該結合により基底部の底面と本体部の周壁面とで構成されたメッキ室を有し、そのメッキ室には基材粒子を含む粒子群とメッキ液とが収納される。さらに、メッキ装置は、メッキ室の底面の上方に開口する供給口を有し当該メッキ室の周壁面に沿い旋回するように供給口からメッキ液を供給する供給管と、メッキ室に開口する排出口を有する排出管と、メッキ室の底面に配置された基材粒子に接触する陰極と、メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、陰極および陽極に接続された電源とを有する。
【0014】
かかるメッキ装置は、次のような作用を奏する。すなわち、メッキ装置の本体部と基底部との結合により形成されたメッキユニットの有するメッキ室に供給口から供給されたメッキ液は、メッキ室を構成している周壁面に沿い旋回しつつその底面側に向い流下する。そして、メッキ室がメッキ液で満たされると、メッキ室に開口する排出口を通じメッキ液排出管から排出され、メッキ液供給管から新たなメッキ液を供給することによりメッキ室は常に新鮮なメッキ液で満たされる。
【0015】
メッキ室の底面に達した旋回流動するメッキ液は、メッキ室に収納された粒子群をメッキ室の底面に接触させつつ旋回運動させる。その底面において陰極に接触した基材粒子は、メッキ液に浸漬する位置に配置された陽極との間でメッキ処理され、メッキ層が基材粒子の表面に形成される。ここで、旋回流動するメッキ液により粒子群は分散することなく互いに混合・攪拌されながら底面および底面近傍の周壁面に接触して転動しつつ底面上を旋回運動する。よって、基材粒子の凝集が抑止されるとともに基材粒子の表面の各部位がメッキ液に触れる機会が均等となり、その結果均一な厚みのメッキ層が形成される。
【0016】
さらに、メッキ液の旋回流により基材粒子をメッキ室の底面および底面近傍の周壁面に接触させつつ転動させるため、基材粒子は他の基材粒子と接触する確率が高まり、よって陰極と接触した基材粒子と高頻度で電気的に接続され、連続メッキに近い処理を行うことが可能となり、基材粒子に効率的にメッキ層を形成することができ、さらに基材粒子同士の接触により形成されたメッキ層が平滑化され、表面が極めて平滑でかつ均一な厚みのメッキ層を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記説明のとおり、本発明に係るメッキ装置によれば、従来技術の問題を解決し、表面に導電性を有する基材粒子に均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供するという本発明の目的を達成することができる。なお、上記メッキ装置の好ましい態様及びその効果は以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる第1態様のメッキ装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1のメッキ装置の平面図である。
【図3】図1のメッキ装置の各ユニットの詳細な構成を示す正面断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図3の平面断面図である。
【図6】図1のメッキ装置の全体の動作を説明する図である。
【図7】図1のメッキ装置の好ましい態様のメッキ装置の部分拡大正断面図である。
【図8】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の部分拡大正断面図およびその平面図である。
【図9】図8のメッキ装置の動作を説明する図である。
【図10】図8のメッキ装置の変形例である。
【図11】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の部分拡大正面図およびその平面図である。
【図12】図11のメッキ装置の動作を説明する図である。
【図13】第2実施態様および第3態様のメッキ装置の構成を示す正面図である。
【図14】第4実施態様のメッキ装置の構成を示す正断面図およびその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るメッキ装置をその第1〜第4実施態様に基づき図面を参照しつつ説明する。なお、下記第1態様のメッキ装置では、基材粒子であるCuを主体とした球形のコアボールの表面に第1層としてニッケルメッキ層、当該ニッケルメッキ層の表面に第2層として半田メッキ層と2層のメッキ層を形成するメッキ装置を例として説明するが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材粒子に1層のメッキ層を形成する場合、金、銅、クロムその他の金属組成の組合せからなる2層のメッキ層を形成する場合、あるいは無電解メッキでニッケル等の導電性を有する金属層を表面に形成した樹脂又はセラミックス粒子その他表面に導電性を有する基材粒子の表面に金属被覆層を電気メッキ法で形成する場合に適用することができる。また、コアボールのように球状の基材粒子のみならず、例えば長軸と短軸を有する針状の基材粒子や形状的特徴のない不定形の基材粒子にも適用することができる。さらに、下記で説明するメッキ装置の各構成要素は、本発明の目的に反しない限り、単独に又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0020】
[第1実施態様]
本発明に係わる第1態様のメッキ装置10の全体構成について、その正面図である図1、図1のメッキ装置を上方から見た平面図である図2(a)、図1のA矢視である図2(b)を参照しつつ説明する。メッキ装置10は、ベースプレート10tの四隅に立設された支柱10sの上部に固定された矩形状の固定部材10bに配置された本体部1x〜4xと、回転テーブル10eに配置された基底部1y〜4yとの結合によりなるメッキユニット1および3並びに洗浄ユニット2および4(以下、メッキユニットおよび洗浄ユニットを総称してユニットと言う場合がある。)と、基底部1y〜4yが配置された回転テーブル10eを軸心Lの周りに回転させるとともに昇降させて本体部1x〜1yに対し基底部1y〜4yを位置決めし、両者を結合せしめる移動手段10kを有している。以下、ユニット1〜4、移動手段10kの順にその構造を詳細に説明する。
【0021】
[メッキユニット、洗浄ユニット]
ユニット1〜4の正断面図である図3に示すように、メッキユニット1・3はメッキ処理を行うため電極以外の要素は基本的にメッキ液に対し耐食性を有する非導電性の絶縁物である樹脂等で構成され、洗浄ユニット2・4は電極が不要で、さらにその要素を構成する材料についてはメッキ液への耐性に関する以外は特段の制限がない点で両者は相違するが、第1態様のメッキ装置10のユニット1〜4は基本的に同一の構造を有している。すなわち、本体部1x〜4xと基底部1y〜4yとの結合によりなるユニット1〜4は、上記結合により底面1p〜4pと周壁面1q〜4qとで形成され、コアボールを含むボール群とメッキ液または洗浄液とを収納可能な同一構造のメッキ室1m・3mおよび洗浄室2m・4mを有している。以下、Niメッキ処理を行うメッキユニット1を例としてユニット1〜4の構造を説明するが、洗浄ユニット2および4においては「メッキ」を「洗浄」と読み替えればよい(例えばメッキ液は洗浄液と、メッキ室は洗浄室と読み替える。)。また、ユニット1〜4が含む構成要素をユニット毎に区別するため、各ユニットに属する構成要素の符号には、例えばメッキユニット1のメッキ液の供給管は符号1e、メッキユニット3の供給管は符号3eのように、当該ユニットの符号を最初に付している。
【0022】
メッキユニット1の正面図を図3(a)に、同図の密閉蓋1Lを取り外した状態の平面図を図5に示す。なお、図4(a)は、図3(a)の基底部1yの周辺部分の拡大図であるが、本体部1xと基底部1yが別離した状態を示している。図3(a)に示すように、本体部1xと基底部1yとが結合されてなるメッキユニット1は、周壁面1qと底面1pとを有するメッキ室1mと、メッキ液をメッキ室1mに供給する供給管1e及び排出する排出管1cを介してメッキ室1mに接続されたメッキ液(処理液)循環手段1bと、陽極1oおよび陰極1nと、それらに接続された直流電源回路1hとを備えている。以下、メッキユニット1の各構成要素について詳細に説明する。
【0023】
(基底部)
基底部1yにおいて、符号1pは、コアボール91が周回可能な円形状の底面である。符号1tは、底面1pの外周縁に沿い上方に伸び、上方に円形状の開口1uを有する円筒状の周壁面である。かかる周壁面1tを備えることにより、メッキ処理後のコアボール91の保持が容易となる。符合10hは、半径方向において周壁面1tの上端から外側に伸びる平坦な円環状の結合面であり、基底部1yが本体部1xと結合する際に本体部1xの結合面1rと密着する。符号10uは、メッキ液Lの漏出を防止するため結合面10hに形成された円環状の装着溝に装着されたOリングである。
【0024】
ここで、コアボールの表面に第1層としてニッケルメッキ層、第2層として半田メッキ層を形成する第1態様のメッキ装置10は、メッキユニット1がコアボールの表面にニッケルメッキ層を形成し(Niメッキ工程)、洗浄ユニット2がニッケルメッキ層が形成されたコアボールを洗浄し(第1の洗浄工程)、メッキユニット3がニッケルメッキ層の表面に半田メッキ層を形成し(半田メッキ工程)、洗浄ユニット4が半田メッキ層が形成されたコアボールを洗浄する(第2の洗浄工程)よう構成されている。そのため、各ユニット1〜4は、図1に示すように正面視においてはそれぞれの軸心Mはメッキ装置10の軸心Lと平行で、図2に示すように平面視においては軸芯Lを中心とし同一平面上に90°の等角度ピッチでそれらの軸心Mが位置するとともに左回りにメッキユニット1−洗浄ユニット2−メッキユニット3−洗浄ユニット4の順序となるよう配置されている。そして、基底部1y〜4yは、底面1pが上方に向き水平な姿勢となるよう、上記ユニット1〜4の配置に対応し円板状の回転テーブル10eに一体的に組み込まれている。
【0025】
なお、基底部1yの周壁面1tは、好ましい要素として第1態様のメッキ装置10に組み込まれたものであり、必ずしも必要ではない。すなわち、底面1pにおいてコアボール91を保持することが可能であれば、図4(b)に示す基底部13yのように周壁面を設けず、底面1pを結合面10hと同一の高さまたは結合面10hよりも上方に設けてもよい。また、対象となる基材粒子の特性またはメッキ条件等に応じ底面1pを硬質のセラミックスや軟質の樹脂で構成しても構わない。
【0026】
(本体部)
図3(a)の本体部1xにおいて、符号1kは、本体部1xが基底部1yと結合した状態において基底部1yの底面1pに向かい縮径した円錐台形状となる周壁面1qを有する筒部であり、符号1Lは、上部開口を閉塞するように筒部1kの上面に密着された密閉蓋である。筒部1kの周壁面1qは、基底部1yの底面1pに相対するとともに基底部1yの開口1uと同径の円形状の開口1sを有している。さらに、筒部1kは、その周壁面1qの下端から径方向において外側に伸びる平坦な円環状の結合面1rを有している。互いに軸芯を合わせて結合面1rと10hが密接して本体部1xと基底部1yとが結合することにより両者の周壁面1qと1tとが連結することにより、周壁面1q・1tと底面1pとでメッキ室1mが形成される。そして、この密閉されたメッキ室1mには多数のコアボール91を含むボール群(粒子群)9と所定量のメッキ液Lが収納される。各本体部1x〜4xは、図3に示すように、周壁面1q〜4qの開口1s〜4sが下方に向き水平な姿勢となるよう、上記ユニット1〜4の配置に対応して形成された固定部材10bの孔部10wに挿入され、固定部材10bに固定されている。
【0027】
(メッキ液供給管・メッキ液排出管)
図3(a)に示すように、供給管1eは、本体部1xと基底部1yとの結合により形成されたメッキ室1mの周壁面1qの接線方向にその軸心が沿い、メッキ室1mの上部に供給口1fが開口するように筒部1kにその一端が水平に接続され、排出管1cは、密閉蓋1Lの中央部においてメッキ室1mの軸芯と同軸に排出口1dがメッキ室1mに開口するように密閉蓋1Lにその一端が接続され、それぞれの他端はメッキ液循環手段1bに接続されている。メッキ液循環手段1bは、図示しないメッキ液貯蔵タンク、メッキ液循環用ポンプ、メッキ液浄化用フィルタ及び流量制御弁等で構成されており、メッキ液循環手段1bから送り出されたメッキ液Lは、供給管1eを流通して供給口1fからメッキ室1mに供給され、図3(a)において破線aで示すようにメッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回流下する。また、メッキ液循環手段1bのメッキ液循環用ポンプや流量制御弁を調整してメッキ室1mに供給されるメッキ液Lの流速や流量を経時的に変化させることができる。なお、メッキ液循環手段1bは、供給管1eを通じメッキ液Lを供給するだけではなく、排出管1cを通じメッキ室1mからメッキ液Lを吸引可能なよう構成してもよい。以上の構成によりメッキ液Lは、図3(a)に示すように、下方に傾斜した周壁面1qに沿い旋回流動しつつ螺旋状に流下し、メッキ室1mの底面1pに達し、その後図において破線bで示すように上昇流となり排出口1dを通じて排出管1cから排出されメッキ液循環手段1bに戻る。
【0028】
(陰極)
符号1nは、基底部1yの上部に配置された円環状の陰極であり、陰極1nの上面がメッキ室1mの底面1pとなるよう構成されている。直流電源回路1hの負極に接続された陰極1nは、例えばステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等で形成されている。ボール群9は、メッキ室1mを旋回流動するメッキ液Lにより、図において符号Cで示すように外周端から半径方向に所定の範囲の中で底面1pと接触しつつ旋回運動し、これによりコアボール91は底面1pの上を攪拌されながら転動する。
【0029】
(陽極)
図3(a)において符号1oは、メッキ室1mの上部に陰極1nと相対して配置された錫を含む陽極である。陽極1oは、メッキ室1mを満たすメッキ液Lに浸漬する位置に位置するよう、ステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等の支持部材1rを介して密閉蓋1Lに固定され、直流電源回路1hの正極に接続されている。
【0030】
(下部排出管)
図3(a)において符号1vは、メッキ室1mの底面1pの近傍に排出口が開口する下部排出管である。図3(a)に示す好ましい態様の下部排出管1vは、開閉バルブを介してメッキ室1mの底面1pにおいてボール群9の周回経路の中央にその排出口が開口するよう底面1pを貫通して配置されている。この下部排出管1vは、メッキ室1mからメッキ液Lを排出するために設けられており、メッキ液Lの排出とともに底面1pに配置されたボール群9が流出しないよう下部排出管1vの端は底面1pから突出し、その排出口は、底面1pに配置されたボール群9よりも高い位置に設けられている。この下部排出管1vは、メッキ処理後、メッキ室1mに残留したメッキ液Lを排出するものであり、例えば別途設けたメッキ液吸引手段をメッキ室1mに挿入しメッキ液Lを排出する場合には必ずしも必要ではない。また、周壁面1pに開口するように排出管を設けてもよい。
【0031】
[移動手段]
図1に示す移動手段10kにおいて、符号10Lは、基底部1y〜4yが配置された回転テーブル10eの中央に接合された回転軸であり、支持フレーム10oに設けられた軸受部10mで回転自在に支持されている。符号10nは、図示しない制御手段により回転角度および回転速度が制御されつつ回転するインデックス用のパルスモータである。支持フレーム10oに配置されたパルスモータ10nは、回転継手を介して回転軸10Lに接続され、図2(b)に示すように軸芯Lを中心として回転テーブル10eを矢印b方向に回転させるとともに平面視において所定の回転角度で回転テーブル10eを保持する。第1態様のメッキ装置10では、この回転テーブル10eの角度割出をより正確に行うため、図1に示すように、回転テーブル10eの上面には位置決めピン10jが立設され、当該位置決めピン10jが嵌合する4個の位置決め孔10cが90°の等角度ピッチで固定部材10bの下面に形成されている(図2(a)参照)。
【0032】
図1に示す移動手段10kにおいて、符号10qは、四隅の支柱10sの側面に固定子であるレールが、支持フレーム10oの側面に可動子が配置された直動案内部材としてのリニアガイドであり、符号10rは支持フレーム10oの下面にロッドが固定された昇降手段としての空気圧等で駆動されるシリンダである。この直動案内部材10qおよび昇降手段10rは必ずしもメッキ装置10に組み込む必要はないが、本体部1x〜4xに基底部1y〜4yが結合しまたは別離するときに密着している両者の結合面1rおよび10h(図3(a)参照)が損傷し、または磨耗することを防止する点では有効である。
【0033】
上記移動手段10kによれば、各ユニット1〜4の本体部1x〜4xに対し、基底部1y〜4yは次のようにして相対的に移動されて位置決めされる。すなわち、図1のように結合した状態から基底部1y〜4yを本体部1x〜4xから別離させる際には、シリンダ10rを下降せしめて回転テーブル10eを降下させ、図4(a)に示すように本体部1x〜4xの結合面1r〜4rから基底部1y〜4yの結合面10hを距離gだけ離間させる。この際、図1に示すシリンダ10rは、位置決めピン10jが位置決め孔10cから抜け出る位置まで下降している。次いで、パルスモータ10nを所定量だけ回転せしめ、図2(b)に示すように、軸心Lを中心として回転テーブル10eを矢印bの方向に90°回転させ、次いでシリンダ10rを上昇せしめ、位置決めピン10jおよび位置決め孔10cにより回転テーブル10eの角度位置を正確に定めつつ結合面1r〜4rと10hを密着させて本体部1x〜4xに基底部1y〜4yを結合させる。
【0034】
ここで、理解のため便宜的に基底部1y〜4yを実線で本体部1x〜4xを二点鎖線で表した図6に示すように、この90°ピッチの回転テーブル10eの回転位置決めにより、初期位置において本体部1xと結合してメッキユニット1を構成していた基底部1y(図6(a))は、本体部2x(同図(b))、本体部3x(同図(c))、本体部4x(同図(d))の順序で本体部1x〜4xと結合して順次ユニット1〜4を構成する。そして基底部1yは、図3(a)に示すように、その底面1pでコアボール91を保持するように構成されているので、メッキユニット1によるニッケルメッキ処理、洗浄ユニット2による第1の洗浄処理、メッキユニット3による半田メッキ処理、洗浄ユニット4による第2の洗浄処理をこの順序で連続的に実施することが可能となる。また、図6に示すように他の基底部2y〜4yも基底部1yと同様に動作するので、回転テーブル10eの回転位置決めの毎にメッキユニット1のメッキ室にコアボールを投入すれば、上記一連の処理が絶え間なく連続して継続されるため、非常に効率的にコアボールのメッキ処理を実施できる。
【0035】
図1〜6を参照して上記構成のメッキ装置10の動作を説明する。まず、準備工程である。準備工程では、図1および図2(b)に示すように、回転テーブル10eは回転方向において初期位置に位置決めされ、シリンダ10rで上昇されており、図6(a)に示すように、本体部1x−基底部1y、本体部2x−基底部2y、本体部3x−基底部3y、本体部4x−基底部4yの各結合によりユニット1〜4が構成されている。この状態において、図3(a)に示すメッキユニット1の密閉蓋1Lを開け、そのメッキ室1mの底面1p(陰極1nの上面)に所定数のコアボール91を載置する。このメッキ室1mに投入するコアボール91としては、酸洗処理を施してその表面を清浄化したものを使用することが望ましく、清浄化ユニットをメッキユニット1の前段に設けてコアボール91の清浄化処理を行うことができる。また、ボール群9を構成する粒子はコアボール91に限定されず、例えばボール群9の攪拌を促進するための攪拌促進体として、例えば半田や鋼を主体とした導電性ダミーボール、樹脂やセラミックス等を主体とした非導電性ダミーボールを適量加えてもよい。
【0036】
各ユニット1〜4のメッキ液循環手段1b・3bおよび洗浄液循環手段2b・4bの処理液貯蔵タンクにメッキ液または洗浄液を格納する。メッキユニット1において使用するニッケル(Ni)メッキ液としては、硫酸Niと塩化Niを主成分とした50℃程度のWATT浴を使用でき、洗浄ユニット2・4において使用する洗浄液としては純水を使用することができる。また、メッキユニット3において使用する半田(Sn)メッキ液としては、例えばSn−Ag−Cu系の液組成を有する大和化成製の商品名「DAIN TINSIL SBB 2」やローム&ハース製の商品名「SOLDERON BP SAC5000」等に添加剤を添加して、例えばホウフッ化浴など周知のメッキ浴に適宜調整して使用することができる。
【0037】
次いで、Niメッキ工程である。図3(a)に示すように、メッキユニット1の密閉蓋1Lを閉じてメッキ室1mを密閉空間にした後、メッキ装置10を作動させる。メッキ装置10は、メッキ液循環手段1bを作動させてメッキ液供給管1eを通じてメッキ室1mへ所定の流量でNiメッキ液Lを供給する。メッキ室1mがNiメッキ液Lで満たされると、Niメッキ液Lは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾きに沿い底面1pに向い螺旋状に流下する旋回流aとなる。なお、Niメッキ液Lの供給の初期段階ではNiメッキ液Lの流れが不安定であるため、不安定なNiメッキ液Lの流れに乗りメッキ室1mの外にコアボール91が流出する場合がある。このコアボール91の流出を防止するためには、準備工程においてメッキ室1mに予めNiメッキ液Lを満たしておき、その後メッキ室1mにNiメッキ液Lを供給するようにすれば好ましい。また、Niメッキ液Lの供給の初期段階ではNiメッキ液Lの流量を小さくしておき、徐々に所定の流量に増加するようにすれば好ましい。
【0038】
下方に向い縮径する円錐台形状をなすメッキ室1mの周壁面1qに沿いメッキ室1mを旋回流下するNiメッキ液Lは底面1pに近づくに従い旋回速度が増加し、底面1pに達する。底面1pに達したNiメッキ液Lの旋回流aは、底面1pに接触しているボール群9を当該底面1pに押し付けつつ攪拌しながら旋回運動させる。ここで、ボール群9に含まれるコアボール91は、底面1p、すなわち直流電源回路1hの負極に接続された陰極1nの上面に接触しているので、陽極1oとの間でNiメッキ処理され、コアボール91の表面にはNiメッキ層が形成される。そして、メッキ室1mの底面1pに達したNiメッキ液Lは、底面1pの中央部で上昇流bとなりメッキ液排出口1dを通じてメッキ液排出管1cから排出されメッキ液循環手段1bに戻るため、常に新鮮なNiメッキ液Lがメッキ室1mに供給され、メッキ室1mの中のNiメッキ液Lの状態を常に一定とすることができ、その結果コアボール91の表面に均一な厚みのNiメッキ層が形成される。
【0039】
メッキ室1mの底面1pに接触しつつ旋回運動するコアボール91は底面1pの上を転動し、コアボール91同士が擦り合うように衝突するので、コアボール91同士が付着しがたくコアボール91の凝集が防止され、かつ転動によりコアボール91の表面が底面1pに触れる機会が均等になるので、均一な厚みのNiメッキ層が形成される。また、コアボール91を充分に転動させ、コアボール91同士が擦り合うように衝突させることにより、コアボール91の表面の一部に形成されたNiメッキ層を、転動する他のコアボール91で擦り合わせて押し広げるというNiメッキ層の表面の平滑化効果が生じて表面の一部に選択的にNiメッキ層が形成されることを防止し、表面が極めて平滑でNiメッキ層の内部にボイドの少ない均一な厚みのNiメッキ層を形成することができる。この作用は、後述する半田メッキ工程においても同様に作用し、その結果、均一な厚みのNiメッキ層および半田メッキ層を有し極めて真球度の高く、さらに表面が非常に平滑なCuコアボールが形成される。このようなCuコアボールは、フリップチップ用の接続部材として使用される場合に特に好適である。
【0040】
上記の状態で所定時間、コアボール91をNiメッキ処理し、概ね1〜5μmの厚みのNiメッキ層を有するコアボールが形成される。なお、メッキ液循環手段1bのメッキ液循環用ポンプや流量調整弁を適宜調整し、Niメッキ処理中に供給されるNiメッキ液Lの流量や流速を経時的に変化させたり、容器を介して加振手段でボール群9に振動を付与すれば、コアボール91aの凝集防止の観点から有利である。
【0041】
Niメッキ処理が完了した後、メッキ装置10は、下部排出管1vに接続された開閉バルブを開け、メッキ室1mに残留するメッキ液Lを排出する。メッキ室1mからNiメッキ液が排出された後、Niメッキ層が形成されたコアボール91はごく少量のNiメッキ液とともに底面1pの上に載置された状態で基底部1yに保持されている。
【0042】
次いで、第1の洗浄工程である。メッキ装置10は、図1に示すシリンダ10rにより回転テーブル10eを降下させ、次いで図2(b)に示すようにパルスモータ10nにより矢印b方向に回転テーブル10eを90°回転位置決めし、その後シリンダ10rにより回転テーブル10eを上昇させる。すると、図6(b)に示すように、本体部1x−基底部4y、本体部2x−基底部1y、本体部3x−基底部2y、本体部4x−基底部3yが結合した状態となっており、Niメッキ処理が施されたコアボール91を保持している基底部1yは本体部2xと結合して、図3(b)に示す洗浄ユニット2を構成している。この洗浄ユニット2において、上記メッキユニット1におけるNiメッキ工程と同様に、洗浄液Lの旋回流を利用してNiメッキ処理がされたコアボール91が洗浄処理される。すなわち、洗浄液循環手段2bを作動させて洗浄液供給管2eを通じて洗浄室2mへ所定の流量で洗浄液Lを供給すると、洗浄液Lは洗浄室2mの周壁面2qに沿い旋回するとともに周壁面2qの傾きに沿い底面2pに向い螺旋状に流下する旋回流aとなる。底面2pに達した洗浄液Lの旋回流aは、底面2pに接触しているボール群9を当該底面2pに押し付けつつ攪拌させながら旋回運動させ、Niメッキ層が形成されたコアボール91を洗浄する。
【0043】
なお、コアボール91の洗浄処理については上記に限定されることなく、例えばメッキ室2mに収納した洗浄液Lに超音波振動を付与するよう洗浄ユニット2を構成して超音波振動を利用してコアボール91を洗浄処理したり、洗浄室2mに洗浄液Lを供給することで生じる遊動流を利用しコアボール91を洗浄処理してもよく、さらにはこれらを組み合わせて洗浄処理してもよい(洗浄ユニット4について同じ)。
【0044】
ここで、上記のように基底部1yが本体部2xと結合して洗浄ユニット2が形成されたとき、本体部1xには基底部4yが結合してメッキユニット1が形成されている(図6(b)参照)。この本体部1xと基底部4yとの結合によりなるメッキユニット1のメッキ室1mに新たなコアボール91を投入することにより、上記Niメッキ工程と同様にしてそのコアボール91にはNiメッキ層が形成される。以下、図6に示すように、本体部1xと基底部4yとの結合によりなるメッキユニット1に新たに投入されたコアボールを「第2次のコアボール91b」と記載し、本体部1xと基底部4yとの結合によりなるメッキユニット1に先に投入されたコアボール91を第1次のコアボール91aと記載する場合がある。
【0045】
次いで、半田メッキ工程である。メッキ装置10は、上記と同様に、回転テーブル10eをさらに90°回転位置決めし、本体部1x〜4xと基底部1y〜4yとを結合させる。すると、図6(c)に示すように、本体部1x−基底部3y、本体部2x−基底部4y、本体部3x−基底部1y、本体部4x−基底部2yが結合した状態となっており、第1の洗浄処理が施された第1次のコアボール91aを保持している基底部1yは本体部3xと結合して、図3(a)に示すメッキユニット3を構成している。そして、上記Niメッキ工程と同様に、コアボール91aに形成されたNiメッキ層の表面に半田メッキ液Lの旋回流を利用して半田メッキ層が形成される。この際、図6(c)に示すように、Niメッキ処理が完了した第2次のコアボール91bを保持している基底部4yは本体部2xと結合して洗浄ユニット2を構成しており、このコアボール91bは第1の洗浄処理が施される。さらに、本体部1xには基底部3yが結合してメッキユニット1が構成されており、このメッキユニット1のメッキ室に、第3次の新たなコアボール91cを投入しNiメッキ工程を施すことにより、第3次のコアボール91cにはNiメッキ層が形成される。
【0046】
次いで、第2の洗浄処理である。回転テーブル10eをさらに90°回転位置決めし、本体部1x〜4xと基底部1y〜4yとを結合させる。すると、図6(d)に示すように、本体部1x−基底部2y、本体部2x−基底部3y、本体部3x−基底部4y、本体部4x−基底部1yが結合した状態となっており、半田メッキ処理が施されたコアボール91aを保持している基底部1yは本体部4xと結合して、図3(b)に示す洗浄ユニット4を構成している。そして、上記洗浄ユニット2における第1の洗浄工程と同様に、洗浄液Lの旋回流を利用して半田メッキ処理がされたコアボール91を洗浄処理する。洗浄処理が完了した後、メッキ装置10は、洗浄液Lを下部排出管4vから排出し、回転テーブル10eを降下せしめる。その後、基底部1yの底面1pに保持されているのNiメッキ層および半田メッキ層が形成されたコアボール91a、すなわち製品であるCuコアボールを回収する。なお、上記第2次のコアボール91b、第3次のコアボール91c、そして本体部1xと基底部2yとの結合によりなるメッキユニット1に投入された第4次の新たなコアボール91d(図6(d)参照)についても、第1次のコアボール91aと同様にNiメッキ工程〜第2の洗浄工程を経てCuコアボールが形成される。
【0047】
なお、上記態様のメッキ装置10では、移動手段10kで基底部1y〜4yを昇降・回転させて本体部1x〜4xに対し位置決めすることにより両者を結合させてユニット1〜4を構成しているが、本体部1x〜4xを昇降・回転させて基底部1y〜4yに対し位置決めするように構成してもよい。また、複数の本体部1x〜4xを直列的に配置するとともに、この本体部1x〜4xに対し一の基底部1yを結合させてユニット1〜4を順次形成し、Niめっき処理工程から第2の洗浄工程に至る一連の工程を実施するように構成してもよい。
【0048】
上記第1態様のメッキ装置10の好ましい態様について図7を参照して説明する。なお、図7において、上記メッキ装置10と同一の構成要素については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0049】
図7に示すメッキ装置15は、密閉蓋1Lの中央部を貫通しメッキ室1mの中に突き出た状態となるようメッキ液排出管5cが配置され、メッキ液排出口5dを軸芯方向においてメッキ室1mの中間部、具体的にはメッキ液排出口5dをメッキ液供給口1fよりも下方に位置させ、更にメッキ液排出管5cを矢印dで示すように軸心方向に沿い移動できるようにしたメッキユニット5を有している。図7に示すように、メッキ液排出管5cの外周面に陽極5oを配置する場合には、メッキ液排出管5cの外周面から突出しないように配置することが望ましい。なお、この構造は、メッキユニットのみならず洗浄ユニットにおいても採用することができる。
【0050】
かかるメッキユニット5を有するメッキ装置15によれば、メッキ液排出口5dはメッキ室1mの底面1pに近接しているので、メッキ液Lの上昇流bは底面1pの近くで排出され、上昇流bが旋回流aに与える影響が抑制され、底面1pにおけるコアボール91の旋回運動を安定させることが可能となる。更に、メッキ液Lの供給の初期段階においてメッキ室1mの旋回流aが安定するまではメッキ液排出管5cの密閉蓋1Lからの突出長さを短くしておき、旋回流が安定した後にメッキ液排出管5cを下方に移動させて密閉蓋1Lからの突出長さを長くし所定位置に位置決めすることで、メッキ室1mへメッキ液Lを導入するメッキ処理前の段階からメッキ処理が完了するまで、メッキ室1mの外へのコアボール91の流出を防止できる。なお、後述するメッキユニット6のようにメッキ室へコアボールを供給する構成を備えたメッキユニットの場合には、メッキ液排出管5cは上下方向に移動せず、図示のごとく底面1pの上方近傍にメッキ液排出口5dが配置されるよう密閉蓋1Lに固定されていてもよい。
【0051】
第1態様のメッキ装置10の別の好ましい態様について図8を参照して説明する。図8に示すメッキ装置16は基本的にメッキ装置10と同様であるが、一連の工程において最初の工程であるNiメッキ工程を行うメッキユニット1に替えて組み込まれるメッキユニット6を有し、当該メッキユニット6はメッキ室1mにボール群を供給する供給手段6qを有する点でメッキ装置10と相違している。なお、図8において、上記ユニット1〜5と同一の構成要素については同一符号を付し、詳細な説明を省略する(以下図10および図11を参照して説明するユニットについて同様である。)。
【0052】
本体部6xと基底部1yとが結合してなるメッキユニット6の正面断面図を図8(a)に、同図の本体部6xから密閉蓋1Lを取り外した状態である平面図を同図(b)に示す。メッキユニット6の供給手段6qは、メッキ室1mに供給すべき多数のコアボール92を収納する収納部6rと、各々の一端が収納部6rに接続され他端がメッキ室1mに接続されたメッキ液流入管6uおよびボール供給管6vとを有している。なお、図8(a)においてB−B線より上は、同図(b)に示すメッキユニット6の中心線Eより上側を見たC矢視図、B−B線より下は中心線Eより下側を見たD矢視図である。
【0053】
収納部6rは、多数のコアボール92を収納可能な容器6sと、容器6sの上部開口を閉塞する蓋6tとで構成されており、蓋6tを開閉することによりコアボール92を容器6sに供給する。その収納部6rの側壁には、メッキ液流入管6uの一端がバルブ6wを介して接続されており、さらにメッキ液流入管6uの他端はその開口(メッキ液流入口)6yがメッキ室1mに開口するよう接続されている。ここで、メッキ液流入管6uは、その軸心が、メッキ液供給管1eとほぼ同一線上、すなわち筒部1kの上部であってメッキ室1mの周壁面1qの接線方向に沿い、そのメッキ液流入口6yが旋回するメッキ液の流れaを迎え入れるように配置されている。これにより、図8(b)に示す平面視においてメッキ室1mの中心線Fを介しメッキ液流入口6yとメッキ液供給口1fとは相対する状態となるので、図示破線aで示すようにメッキ液供給口1fから周壁面1qに沿い旋回するように供給されたメッキ液は、メッキ液流入口6yを通じメッキ液流入管6uに流入する。
【0054】
収納部6rの底部には、ボール供給管6vの一端が接続されており、ボール供給管6vの他端はその開口(ボール供給口)6zがメッキ室1mの底部に開口するよう筒部1kに接続されている。ここで、ボール供給管6vは、図8(b)に示すように、平面視においてメッキユニット6の中心線Eを介しメッキ液流入管6uと反対の位置に、その軸心がメッキ室1mの接線方向に沿い、そのボール供給口6zが旋回するメッキ液の流れaに沿うように配置されている。これにより、メッキ液供給口1fから供給され周壁面1qに沿い流下し底面1pの上を旋回流動するメッキ液の流れaに円滑に乗るようにコアボール92を供給することができる。なお、図において符号6xは、供給すべきコアボール92を収納部6rの中に保持するためのピンチバルブである。この仕切り弁6xは、コアボール92を自動的にメッキ室1mへ供給するために設けられた好適な構成であり、手動でコアボールを供給する場合には必ずしも必要ではない。
【0055】
上記供給手段6q有するメッキユニット6の動作について図9を参照しつつ説明する。図9(a)に示す収納部6rの蓋6tを開けて所定数のコアボール92を容器6sに供給し、その後蓋6tを閉じる。この時、バルブ6wおよび仕切り弁6xは閉じられた状態である。
【0056】
次いで、メッキ液循環装置を作動させてメッキ液供給口1fからNiメッキ液Lを供給する。一定時間経過してメッキ室1mがNiメッキ液Lで満たされると、図9(a)に示すように、Niメッキ液Lは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾斜に沿い底面1pに向い螺旋状に流下する安定した旋回流aとなる。
【0057】
Niメッキ液Lを供給し一定時間経過しメッキ室1mにおけるNiメッキ液Lの流動状態が安定した後、メッキ装置は、バルブ6wを開き、図9(b)において矢印eで示すように旋回流動するNiメッキ液Lの一部をメッキ液流入管6uから収納部6rにメッキ液流入口6yを通じて流入させるとともに、仕切り弁6xを開く。すると、収納部6rに収納されたコアボール92は、流入したNiメッキ液Lにより収納部6rから押出され、Niメッキ液Lとともにボール供給管6vの管路の中を流れ、矢印fで示すようにボール供給口6zから排出されメッキ室1mへ供給される。メッキ装置は、全てのコアボール92がメッキ室1mへ供給された後、バルブ11wおよび仕切り弁11xを閉じる。ここで、ボール供給管6vは上記のとおり配置されているので、ボール供給口6zから供給されたコアボール92はNiメッキ液Lの旋回流aに乗り、その後メッキ室1mの底面1pの上を円滑に旋回運動し、メッキ処理されることとなる。このように、Niメッキ液Lをメッキ室1mに供給してから一定時間経過し、メッキ室におけるNiメッキ液の旋回流動が安定化した後にコアボール92をメッキ室1mへ自動的に供給するので生産効率が高まり、さらにメッキ室1mからコアボール91が流出することが少なく、高い歩留まりでコアボール91にNiメッキすることが可能となる。
【0058】
なお、手動でコアボール92を供給する場合には、ボール供給管6vの経路の中に仕切り弁6xを設けず、Niメッキ液Lの流動状態が安定化した後、バルブ6wを開き、メッキ液流入管6u、収納部6rおよびボール供給管6vの経路でNiメッキ液Lを流通させた後に、収納部6rに所定数のコアボール92を供給するようにすればよい。
【0059】
図10に示すメッキ装置17は、供給手段を有するメッキ装置の他の例であり、メッキ液供給管1eの経路上に供給手段7qが設けられたメッキユニット7を有している。すなわち、供給手段7qのメッキ液流入管6uの一端はメッキ液供給管1eの上流側に接続され、ボール供給管6vの一端はメッキ液供給管1eの下流側に接続されており、それらの他端はバルブ6wおよび仕切り弁6xを介して収納部6rに接続される構成となっている。かかる供給手段7qによれば、メッキ室1mにおけるNiメッキ液Lの流動状態が安定した後にバルブ6wおよび仕切り弁6xを開くと、メッキ液供給管1eを流れるNiメッキ液Lの一部が、矢印jで示すようにメッキ液流入管6uを通じて収納部6rに流入する。すると、収納部6rに収納されているコアボール92は、流入したNiメッキ液Lにより押し出され、矢印kで示すようにボール供給管6vを通じてメッキ液供給管1eに流入し、Niメッキ液Lとともにメッキ液供給口1fからメッキ室1mに供給されることとなる。なお、供給手段7qにおいてNiメッキ液を円滑に流通させるためには、メッキ液流入管6uが接続されるメッキ液供給管1eの上流側の内径を太くし、ボール供給管6vが接続される下流側の内径を上流側より細くすることが望ましい。さらに、供給手段7qの中に滞留することなくコアボール92をメッキ液供給管1eへ流入させるためには、収納部6rの底面とメッキ液流入管6uおよびボール供給管6vとの底面との間には段差がないようにしておくことが好ましい。
【0060】
第1態様のメッキ装置10のさらに別の好ましい態様について図11を参照して説明する。図11に示すメッキ装置18は基本的にメッキ装置10と同様であるが、一連の工程において最後の工程である第2の洗浄工程を行う洗浄ユニット4に替えて組み込まれる洗浄ユニット8を有し、当該洗浄ユニット8は洗浄室4mからボール群を回収する回収手段8aを有する点でメッキ装置10と相違している。
【0061】
本体部4xと基底部8yとが結合してなる洗浄ユニット8の正面断面図を図11(a)に、同図の本体部4xから密閉蓋4Lを取り外した状態の平面図を同図(b)に示す。洗浄ユニット8において符号8nは、基底部8yの下部に形成された円筒孔部8Lに摺動可能に嵌め合いされた開閉部材であり、円板形状をなすその外周面には洗浄液の漏出を防止するため不図示のOリングが設けられている。そして、円筒孔部8Lには、第2の洗浄工程により洗浄処理が完了したボール群を回収するボール回収管8bの一端の開口(ボール回収口)8cが開口しており、ボール回収管8bの他端は回収容器8eに接続されている。なお、メッキユニットに回収手段を設ける場合には、開閉部材8nをステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等で形成し、陰極と兼用させてもよい。
【0062】
ここで、開閉部材8nは、エアシリンダー等の昇降部8dにより符号hで示す上下方向に円筒孔部8Lの中を昇降し、上昇端の位置において洗浄室4mの周壁面4qの下端縁にその上面8p(洗浄室4mの底面ともなる。)が接するとともに、その外周面でボール回収口8cを閉じ、下方端の位置においてボール回収口8cを開くように構成されている。なお、本態様の回収手段8aでは、開閉部材8nをバルブの弁のごとく用い、開閉部材8nを昇降させることによりボール回収口8cを開閉させているが、第1態様の洗浄ユニット4のように洗浄室4mの底面を固定し、バルブを介して洗浄室にボール回収管を接続するとともにボール回収口が洗浄室に直接開口するよう回収手段を構成し、バルブの開閉によりコアボールを回収するようにしてもよい。この場合には、洗浄室の底面を旋回するコアボールの運動を妨げないよう、ボール回収口は、当該底面より上方に配置することが好ましい。
【0063】
上記回収手段8aを有するメッキユニット8の動作について図12を参照しつつ説明する。図12(a)に示すように、洗浄ユニット8において、ボール群9は洗浄液Lの旋回流aにより洗浄室4mの底面4pの上を旋回運動し、洗浄処理される(第2の洗浄工程)。このとき、開閉部材8nは昇降部8dにより上方端に配置されている。洗浄処理が完了すると、メッキ装置18は、図12(b)に示すように、昇降部8dにより開閉部材8nを下降端まで降下させボール回収口8cを開く。すると、洗浄処理されたボール群9はボール回収口8cを通じて矢印iで示すようにボール回収管8bに流れ込み、その後回収容器8eに回収される。なお、洗浄液排出管5cにバルブを設けておき、開閉部材8nの下降とともに当該バルブを絞るようにすれば、洗浄液Lの多くはボール回収管8bを通じて排出されるので、より円滑にボール群9を回収することができる。
【0064】
[第2実施態様]
本発明に係わるメッキ装置の第2態様について図13(a)を参照し説明する。第2態様のメッキ装置19は基本的に上記第1態様のメッキ装置10と同様に本体部1x〜4xと基底部1y〜4yとの結合により構成されるユニット1〜4を有しているが、矩形板状の一枚の本体部材90bを有し、その本体部材90bのユニット1〜4が配置されるべき位置に貫通孔が加工されて周壁面1q〜4qが形成され、密閉蓋1L〜4L、排出管1c〜4cおよび供給管1e〜4eが組み込まれてなる本体部1x〜4xを有している点で異なっている。このメッキ装置19の動作はメッキ装置10の動作と同様であるので説明を省略する。
【0065】
[第3実施態様]
本発明に係わるメッキ装置の第3態様について図13(b)を参照し説明する。第3態様のメッキ装置11は、上記と同様な構成の本体部3xおよび4xと、図示矢印jで示すように図示しない移動手段により水平移動して本体部3xおよび4xと結合する一の基底部1yを有し、本体部3xと基底部1yとの結合によりコアボールに半田メッキ処理を行うメッキユニット3が、本体部4xと基底部1yとの結合により洗浄処理を行う洗浄ユニット4が形成されるよう構成されている。かかるメッキ装置11によれば、メッキユニット3において上記と同様の半田メッキ工程が実施され、半田メッキ工程後に洗浄ユニット4において洗浄工程が実施され、表面が極めて平滑で均一な厚みの半田メッキ層を有するCuコアボールを形成することができる。
【0066】
[第4実施態様]
以下第4態様のメッキ装置について図14を参照し説明する。なお、図14(a)は、第4態様のメッキ装置のメッキユニット12の概略構成を示す正面断面図、同図(b)は同図(a)のD矢視図である。
【0067】
上記第1〜第3態様のメッキ装置では、コアボールが接触しつつ周回可能なメッキ室の底面として円形状の底面と底面に向い縮径するように底面の周縁に立設した略円錐台形状の周壁面とを備えたメッキ室、断面円形状のメッキ室の接線方向に沿いメッキ液供給口が開口するよう軸心が水平に配置されたメッキ液供給管、メッキ室の軸心に沿い配置されたメッキ液排出管の各構成要素を有するメッキ装置について説明したが、本発明はこれら望ましい態様に限定されることなく、第4態様のメッキ装置でも実現することが可能である。
【0068】
第4態様のメッキユニット12は、第1態様のメッキ装置10のメッキユニット1に替えてメッキ装置に組み込まれるものであり、図14(b)に示すように、コアボール91が周回可能な底面として略楕円形状の底面12pを有し、底面12pの周縁に立設する周壁面12qは縦方向において同一断面、すなわち直管状となるようメッキ室12mは形成されている。さらに、メッキ室12mにNiメッキ液Lを供給するメッキ液供給管12eは、周壁面12qに沿い旋回流下するNiメッキ液Lの流れを生じさせるため、その軸心を下方に向けた状態でメッキ室12mに接続されている。なお、周壁面12qに対する取付角度を自在に設定可能な継手などを介しメッキ液供給管12eを接続するよう構成すれば、メッキ処理すべきコアボールの大きさや数量などに応じNiメッキ液Lが旋回流下する角度を適宜設定できるので好ましい。また、メッキ室12mからNiメッキ液Lを排出するメッキ液排出管1cは、メッキ液Lの上昇流bを円滑にメッキ室12mから排出するためには第1態様のメッキユニット1と同様に密閉蓋1Lの中央部に設けられていることが好ましいが、メッキ液排出管の配置はこれに限定されることなく、図示破線で示すメッキ液排出管12cのように密閉蓋1Lの外周よりに設けメッキ室12mからオーバーフローするNiメッキ液Lを排出させてもよい。
【0069】
上記メッキユニット12の動作を説明する。メッキ室12mの底面12pにボール群9を載置し、その後密閉蓋1Lを閉じてメッキ室12mを密閉空間にする。メッキ装置は、メッキ液供給管12eを通じてメッキ室12mへNiメッキ液Lを供給する。メッキ室12mがNiメッキ液Lで満たされると、上記のように配置されたメッキ液供給管12eから供給されるNiメッキ液Lは、メッキ室12mの周壁面12qに沿い螺旋状に旋回流下する旋回流aとなる。旋回流下しつつ底面12pに達したNiメッキ液Lは、底面12pに接触しているボール群9を当該底面12pに押し付けつつ旋回運動させ、コアボール91の表面にメッキ層を形成させる。上記第1態様のメッキ装置10と同様に、メッキ室12mの底面12pに接触しつつ旋回運動するコアボール91は底面12pの上を転動するので、コアボール91同士が付着しがたく凝集が防止され、かつ転動によりコアボール91の表面が底面12pに触れる機会が均等になるので、均一な厚みのNiメッキ層が形成される。メッキ室12mに供給されたNiメッキ液Lは、メッキ液排出管1cから排出されるので、常に新鮮なNiメッキ液Lがメッキ室12mに供給され、もって均一な厚みのNiメッキ層が形成される。
【0070】
以上本発明について、その好ましい態様である第1〜第4態様に基づいて説明したが、本発明に係わる表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置は、基材粒子が接触しつつ周回可能な底面を有する基底部と、基底部の底面に相対するように開口が設けられた筒状の周壁面を有する本体部との直接的または間接的な結合により形成されるとともに、当該結合により基底部の底面と本体部の周壁面とで構成されたメッキ室を有するメッキユニットと、メッキ室の底面の上方に開口する供給口を有しメッキ室の周壁面に沿い旋回するように供給口からメッキ液を供給する供給管と、メッキ室に開口する排出口を有する排出管と、メッキ室の底面に配置された基材粒子に接触する陰極と、メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを備えていれば足りる。そして、かかる構成により、表面に導電性を有する基材粒子に均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供するという本発明の第1目的を達成することができ、さらに第1〜第4態様のメッキ装置のように構成することにより、第1目的に加えて、基材粒子に2層以上のメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供するという第2目的を達成することができる。
【0071】
また、既に述べたが、第1〜第4態様のメッキ装置に組み込む洗浄ユニットは必ずしもメッキユニットと同一の構造とする必要はなく、超音波洗浄や揺動洗浄など周知の洗浄機構を有する洗浄ユニットを組み込むことができる。さらに、本発明に係わるメッキ装置は、上記説明したメッキユニットや洗浄ユニットに限らず、基材粒子自身や所定の処理が施されてなる基材粒子に対し、酸洗処理を施す酸洗ユニット・乾燥する乾燥ユニット・その表面に所定の物質を塗布する塗布ユニット・その表面の平滑性や球状度を高める平滑化ユニット又は球形化ユニット・その表面の硬度を高める表面改質ユニットその他各種の処理ユニットを有していてもよい。それらの処理ユニットは、上記メッキユニットや洗浄ユニットと同一または類似した構成を備え、気体、液体その他流体を旋回させてなる旋回流を利用して基材粒子を処理するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1(3、5、6、7、12):メッキユニット
2(4、8):洗浄ユニット
10(11、15、16、17、18、19):メッキ装置
1x(2x〜4x、5x、6x、12x):本体部
1y(2y〜4y、8y、12y、13y):基底部
1m(3m、12m):メッキ室
2m(4m):洗浄室
1b(2b〜4b):メッキ液循環手段
1c(2c〜4c):メッキ液排出管
1e(2e〜4e):メッキ液供給管
1h(3h):直流電源回路
1q(2q〜4q、12q):周壁面
1p(2p〜4p、12p):底面
10b:固定部材
10e:回転テーブル
10k:移動手段
91:コアボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、メッキユニットを備え、
前記メッキユニットは、
前記基材粒子が接触しつつ周回可能な底面を有する基底部と、前記基底部の底面に相対するように開口が設けられた筒状の周壁面を有する本体部との直接的または間接的な結合により形成されるとともに、当該結合により前記底面と前記周壁面とで構成され、前記基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室を有し、
さらに、前記メッキ室の底面の上方に開口する供給口を有し前記メッキ室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口からメッキ液を供給する供給管と、前記メッキ室に開口する排出口を有する排出管と、前記メッキ室の底面に配置された前記基材粒子に接触する陰極と、前記メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを有する、メッキ装置。
【請求項2】
前記底面は円形状であるとともに前記周壁面は前記メッキ室の底面に向い縮径した円錐形状をなし、前記排出管は前記周壁面の軸芯と同軸に配置されている請求項1に記載のメッキ装置。
【請求項3】
前記基底部はその底面に立設した筒状の周壁面を備え、前記本体部と前記基底部が直接的または間接的に結合することにより両者の周壁面が連結し前記メッキ室が構成される請求項1または2のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項4】
前記底面の近傍に排出口が開口する下部排出管を有する請求項1乃至3のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項5】
前記下部排出管は前記底面において前記基材粒子の周回経路の中央にその排出口が開口するよう前記底面を貫通して配置されている請求項4に記載のメッキ装置。
【請求項6】
複数のメッキユニットを備える請求項1乃至5のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項7】
前記基材粒子を洗浄する洗浄ユニットを備える請求項1乃至6に記載のメッキ装置。
【請求項8】
前記洗浄ユニットは前記メッキユニットと略同一構造である請求項7に記載のメッキ装置。
【請求項9】
前記本体部に対し前記基底部を相対移動させる移動手段を有する請求項1乃至8のいずれかに記載のメッキ装置
【請求項10】
前記メッキユニットまたは洗浄ユニットは水平面内において一の軸芯を中心として等角度で円状に配置されており、前記軸心の回りに前記本体部または基底部を回転位置決めする移動手段を有する請求項1乃至9のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項11】
前記処理室に前記粒子群を供給する供給手段を含む請求項1乃至10のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項12】
前記処理室から前記粒子群を回収する回収手段を含む請求項1乃至11のいずれかに記載のメッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−236473(P2011−236473A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109330(P2010−109330)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)