メッキ装置
【課題】本発明は、表面に導電性を有する基材粒子に均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明に係わるメッキ装置は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、前記基材粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室を有するメッキ槽と、前記メッキ室の底面より上方に開口する供給口を有し前記メッキ室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口からメッキ液を供給するメッキ液供給管と、前記メッキ室に開口する排出口を有するメッキ液排出管と、前記メッキ室の底面に配置された前記基材粒子に接触する陰極と、前記メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを有するメッキ装置である。
【解決手段】本発明に係わるメッキ装置は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、前記基材粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室を有するメッキ槽と、前記メッキ室の底面より上方に開口する供給口を有し前記メッキ室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口からメッキ液を供給するメッキ液供給管と、前記メッキ室に開口する排出口を有するメッキ液排出管と、前記メッキ室の底面に配置された前記基材粒子に接触する陰極と、前記メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを有するメッキ装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に導電性を有する基材粒子にメッキを施す技術の一例として、Cuを主体としたコアボールの表面に半田をメッキして半田被覆Cuコアボール(以下Cuコアボールと略して記載する。)を形成する技術がある。なお、従来技術の問題点を明らかにするために、Cuコアボールを例としてメッキ技術を説明するが、本発明はCuコアボールに限定されない。
【0003】
近年の多ピッチ化・狭ピッチ化による高密度実装の進むBGA(Ball Grid Allay)やCSP(Chip Scale Package)などの半導体パッケージでは、入出力端子用バンプとして小径のCuコアボールが適用されている。Cuコアボールは、そのコアボールがリフロー時に溶融しないため、半導体素子と基板との間に一定の距離を維持でき、半導体素子の起動・停止により生じる熱サイクル負荷等に対する接続信頼性を確保することができる。
【0004】
Cuコアボール製造技術として、メッキ液が流通可能な多数の開口を有するバレル内にコアボールを収納し、バレルをメッキ浴に配置し自転させることで半田を被覆するバレル電気メッキ法が周知である。しかしながら、特に直径が100μm以下の小径のCuコアボールを製造する場合には、バレルの自転にともなうコアボールの転動によるコアボールの攪拌が不十分となる。その結果、コアボール同士がメッキ層を介して連結し凝集したり、メッキ層の表面が粗面化したり、メッキ層の厚みが部分的に不均一となり、歩留まりが低下するという問題が生じていた。
【0005】
このバレル式電気メッキ法の問題を解消する技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1には、充分かつ均一なメッキ層を短時間で得るため、「上端が開放した下開き椀形の樹脂ドームの外周部下面と、樹脂底板の外周部上面の間に被めっき物が回転中に押付けられるコンタクトリングと、処理液が流通飛散するポーラスリングを一体に結合してセルを形成し、上記セルを相対回転不能に支持しコンタクトリングと通電する導電ロータリープレートの中央部下面に垂直な導電駆動シャフトの上端を固定し、上記シャフトにコンタクトブラシを押圧してマイナス極に接続し、上記ドーム内に陽極バスケットを配置し、セルを覆うカバーを設けた」、小物の回転メッキ装置が記載されている。そして、かかる構成の回転メッキ装置によれば、セル内に収納された被メッキ物は、セルの回転により生ずる遠心力の作用によりコンタクトリングに強制的に押し付けられ、セルの回転と、停止又は減速を繰り返すことにより均一に混合され、被メッキ物の表面におけるメッキ液の更新も活発となり、均一な厚みのメッキ層を形成することができると記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の回転メッキ装置は工業生産上効率の面での問題があった。すなわち、この回転メッキ装置は、被メッキ物を攪拌してその表面にメッキ液を充分に流通させるために、セルの回転、停止又は減速を繰り返す必要がある。そして、被メッキ物への実際のメッキ処理は、セルが回転し遠心力でコンタクトリングに被メッキ物が接触している間にのみ行われ、停止又は減速している間は行われないため、メッキ処理時間に比して全体の製造時間が長くなる。さらに、メッキ処理中にはボールの攪拌力が作用しないため、特に半導体パッケージに使用される直径が100μm以下の小径のCuコアボールの場合には、セル内におけるコアボールの凝集が顕著となり、メッキ処理されたCuコアボールの表面の平滑性も劣化する。この凝集を解くためにセルの回転、停止又は減速を頻繁に繰り返す方法もあるがメッキ効率が更に低下するという問題が招来する。
【0007】
また、バレル式電気メッキ法の問題を解消する技術の他の例が特許文献2に記載されている。特許文献2には、特に曲がり易い性質を持ったワークのメッキ時の変形等を防止することを目的とし、「上面開口としたメッキ槽と、そのメッキ槽の上面開口を閉塞する着脱蓋とを有し、前記メッキ槽の底面に陰極を備え、着脱蓋の裏面に陽極を備えるとともに、前記メッキ槽の底面沿いの周壁に、その周壁の内面方向に向けたメッキ液の噴射ノズルを備えていることを特徴とする」、メッキ装置が記載されている。そして特許文献2には、かかる構成を採用することにより、メッキ槽内に投入されたワークは噴射ノズルから噴射されるメッキ液とともにメッキ槽内を回り、その回転を伴いながらメッキ処理が施されるため、曲がりや変形を与える程の衝突等がなくなり、すべてのワークが原形を保持したままメッキ加工処理を終了できる、と記載されている。
【0008】
しかしながら、かかる特許文献2のメッキ装置は均一な厚みのメッキ層を基材粒子に形成するという点では不十分である。すなわち、特許文献2のメッキ装置で基材粒子をメッキした場合、メッキ槽内を旋回するメッキ液で基材粒子は攪拌されながら旋回運動するが、粒子は液流に乗って移動するため、底面に配置された電極と粒子とが接触する確率が小さく、その確率も粒子毎に不均一となる。その結果、個々の基材粒子ごとにメッキ層の厚みが異なってしまうという問題が生じる可能性がある。
【0009】
さらに、下記特許文献3には、粒径が0.1μm〜10μmの範囲の金属、無機物質などの微粉末の表面に金属を電気めっき法で均一にかつ高収率で被覆する装置として、「めっき液を収容する軸を縦方向にした筒状の容器と、この容器の底部に電導表面を横にして配した陰極板と、該めっき液の液面近く配した陽極と、該陰極板と陽極との間に所定の電位を付与する電源装置と、該陰極板と陽極との間の液中に吸込用開口を持つ吸込管と、該陰極板と陽極との間の液中に吐出用開口を持つ吐出管と、該吸込管から吐出管に通ずる流体の循環経路と、この循環経路に介装された流体循環用ポンプとからなり、該吐出管の吐出用開口を陰極板の電導表面の方向に向けて下向きに設置すると共に前記の吸込管の吸込用開口を陽極下端よりもさらに下方に設置し、被めっき品である粒径が0.1μmから10.0μmの範囲の導電性微粉末をめっき液と共に前記の循環経路を循環させつつ該陰極板に連続的に衝突させるようにした微粉末の電気めっき装置」が開示されている。そして、かかるめっき装置によれば、電気めっき液中に微粉末が所定の懸濁濃度をもって懸濁し且つ所定の方向と速度をもった微粉末懸濁液をめっき液中に強制的に形成させ、微粉末懸濁流を陽極には実質的に接触させないで陰極板にだけ所定の速度成分をもって循環衝突させるので、微粉末の一粒づつの表面に均一かつ高収率で電気めっきすることが可能となると記載されている。
【0010】
しかしながら、かかる特許文献3のめっき装置によっても、微粉末は微粉末懸濁流に乗って流動するのみであるため陰極板と接触する確率が微粉末間で不均一であり、特許文献2のメッキ装置と同様な理由から、均一な厚みのメッキ層を個々の基材粒子に形成するという点では不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−239799号公報
【特許文献2】実開平7−6267号公報
【特許文献3】特開平1−272792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされた発明であり、表面に導電性を有する基材粒子に均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明に係わるメッキ装置は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、前記基材粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室を有するメッキ槽と、前記メッキ室の底面より上方に開口する供給口を有し前記メッキ室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口からメッキ液を供給するメッキ液供給管と、前記メッキ室に開口する排出口を有するメッキ液排出管と、前記メッキ室の底面に配置された前記基材粒子に接触する陰極と、前記メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを有するメッキ装置である。
【0014】
かかるメッキ装置は、次のような作用を奏する。すなわち、メッキ液供給管の供給口から供給されたメッキ液は、メッキ室の周壁面に沿い旋回しつつその底面側に向い流下する。そして、メッキ室がメッキ液で満たされると、メッキ室に開口する排出口を通じメッキ液排出管から排出され、メッキ液供給管から新たなメッキ液を供給することによりメッキ室は常に新鮮なメッキ液で満たされる。
【0015】
メッキ室の底面に達した旋回流動するメッキ液は、メッキ室に収納された粒子群をメッキ室の底面に接触させつつ旋回運動させる。その底面において陰極に接触した基材粒子は、メッキ液に浸漬する位置に配置された陽極との間でメッキ処理され、メッキ層が基材粒子の表面に形成される。ここで、旋回流動するメッキ液により粒子群は分散することなく互いに混合されながら底面に接触して転動しつつ底面上を旋回運動する。よって、基材粒子の凝集が抑止されるとともに基材粒子の表面の各部位がメッキ液に触れる機会が均等となり、その結果均一な厚みのメッキ層が形成される。なお、一旦旋回運動を始めた粒子は浮遊することなく、底面に間欠的な接触を繰り返しながら旋回運動を継続する。
【0016】
さらに、メッキ液の旋回流により基材粒子をメッキ室の底面に接触させつつ転動させるため、基材粒子は他の基材粒子と接触する確率が高まり、よって陰極と接触した基材粒子と高頻度で電気的に接続され、連続メッキに近い処理を行うことが可能となり、基材粒子に効率的にメッキ層を形成することができ、さらに基材粒子同士の接触により形成されたメッキ層が平滑化され、表面が極めて平滑でかつ均一な厚みのメッキ層を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記説明のとおり、本発明に係るメッキ装置によれば、従来技術の問題を解決し、表面に導電性を有する基材粒子に表面が滑らかで均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供するという本発明の目的を達成することができる。なお、上記メッキ装置の好ましい態様及びその効果は以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる第1実施態様のメッキ装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のメッキ装置およびその好ましい態様のメッキ装置の平面図である。
【図3】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の部分拡大図である。
【図4】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の部分拡大図である。
【図5】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の正面図である。
【図6】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の拡大正面図である。
【図7】本発明に係わる第2実施態様のメッキ装置の斜視図である。
【図8】第2実施態様のメッキ装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図9】本発明に係わる第3実施態様のメッキ装置の斜視図である。
【図10】本発明に係わる第4実施態様のメッキ装置の斜視図である。
【図11】図10のメッキ装置の動作を説明する図である。
【図12】第4実施態様のメッキ装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図13】本発明に係わる第5実施態様のメッキ装置の概略構成を示す図である。
【図14】コアボールのメッキ中の挙動を説明する図である。
【図15】図1のメッキ装置の実施例を説明する図である。
【図16】図1のメッキ装置の実施例を説明する別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るメッキ装置をその第1〜第5実施態様に基づき図面を参照しつつ説明する。下記の実施態様では、基材粒子であるCuを主体とした球形のコアボールの表面にSnを主体としたメッキ層を被覆するメッキ装置を例として説明するが、本発明はこれに限定されることなく例えば無電解メッキでニッケル等の導電性を有する金属層を表面に形成した樹脂又はセラミックス粒子その他表面に導電性を有する基材粒子の表面に金属被覆層を電気メッキ法で形成する場合に適用することができる。また、コアボールのように球状の基材粒子のみならず、例えば長軸と短軸を有する針状の基材粒子や形状的特徴のない不定形の基材粒子にも適用することができる。さらに、下記で説明するメッキ装置の各構成要素は、単独に又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0020】
[第1実施態様]
第1態様のメッキ装置の概略構成を示す正面図である図1及び図1の密閉蓋1Lを取り外した状態の平面図である図2(a)に示すように、メッキ装置1は、本体部1a、メッキ液供給管1e及びメッキ液排出管1cを介して本体部1aに接続されたメッキ液循環手段1b、直流電源回路1hを基本的な構成として備え、さらに望ましい構成としてコアボール供給手段1g、加振手段1iおよび磁力発生手段1sを備えている。
【0021】
本体部1aにおいて、符号1jは、円形状の底面1pとその底面1pに向かい縮径した円錐台形状の周壁面1qを有するメッキ室1mが形成されたメッキ槽である。メッキ液に対し耐食性を有する非導電性の絶縁物である樹脂等で構成されたメッキ槽1jは、上部が開口した碗型の容器1kと、上部開口を閉塞するように容器1kの上面に密着された密閉蓋1Lとを有している。この容器1kと密閉蓋1Lとで形成される空間がメッキ室1mを構成し、多数のコアボール91を含むボール群(粒子群)9と所定量のメッキ液Lがメッキ室1mに収納される。
【0022】
メッキ液供給管1eは、メッキ室1mの周壁面1qの接線方向にその軸心が沿い、メッキ室1mの上部にメッキ液供給口1fが開口するようにメッキ槽1jにその一端が水平に接続され、メッキ液排出管1cは、密閉蓋1Lの中央部においてメッキ室1mの軸芯と同軸にメッキ液排出口1dがメッキ室1mに開口するようにメッキ槽1jにその一端が接続され、それぞれの他端はメッキ液循環手段1bに接続されている。メッキ液循環手段1bは、図示しないメッキ液貯蔵タンク、メッキ液循環用ポンプ、メッキ液浄化用フィルタ及び流量制御弁等で構成されており、メッキ液循環手段1bから送り出されたメッキ液Lは、メッキ液供給管1eを流通してメッキ液供給口1fからメッキ室1mに供給され、図1、2(a)において破線aで示すようにメッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回流下する。また、メッキ液循環手段1bのメッキ液循環用ポンプや流量制御弁を調整してメッキ室1mに供給されるメッキ液Lの流速や流量を経時的に変化させることができる。なお、メッキ液循環手段1bは、メッキ液供給管1eを通じメッキ液Lを供給するだけではなく、メッキ液排出管1cを通じメッキ室1mからメッキ液Lを吸引可能なよう構成してもよい。さらに、上記メッキ液供給管1eを複数本設けてもよい。この場合、メッキ室1mの周壁面1qの同一円周上に例えば一定の角度ピッチで複数のメッキ液供給口1fが開口するようメッキ液供給管を配置してもよいし、図4(c)に示すメッキ装置22のように、旋回流下するメッキ液Lの螺旋状の流れaに沿い複数のメッキ液供給口22fが開口するようメッキ液供給管22eを配置してもよい。以上の構成によりメッキ液Lは、図1に示すように、下方に傾斜した周壁面1qに沿い旋回流動しつつ螺旋状に流下し、メッキ室1mの底面1pに達し、その後図において破線bで示すように上昇流となりメッキ液排出口1dを通じてメッキ液排出管1cから排出されメッキ液循環手段1bに戻る。
【0023】
なお、コアボール91は、密閉蓋1Lを開閉しメッキ室1mに都度供給してもよいが、図1に示すようにメッキ液供給管1eで構成される供給系の中に所定数のコアボール91を切り出す供給手段1gを設け、メッキ液供給管1eの管路を通じコアボール91をメッキ液Lとともにメッキ室1mに供給してもよい。この供給手段1gの具体的な構成は、第4態様のメッキ装置において詳細に説明する。
【0024】
符号1nは、容器1kの底部に配置された円板状の陰極であり、陰極1nの上面がメッキ室1mの底面1pとなるよう構成されている。直流電源回路1hの負極に接続された陰極1nは、例えばステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等で形成されている。ボール群9は、メッキ室1mを旋回流動するメッキ液Lにより、図において符号Cで示すように外周端から半径方向に所定の範囲の中で底面1pと接触しつつ旋回運動し、これによりコアボール91は底面1pの上を攪拌されながら転動する。
【0025】
ここで、図3(a)に示すようにメッキ室1mの底面3pの一部に露出するように陰極3nを配置しても、同図(b)に示すように底面3pに配置されたコアボール91に接するように陰極3mを配置してもよい。しかしながら、このように多数のコアボール91ののうちのごく一部にのみ接するよう陰極3n、3mを配した場合には、陰極3n、3mに接しないコアボール91は陰極3n、3mに接するコアボール91を介して通電されるため、コアボール91同士の接触抵抗により陰極3nから離れた位置にあるコアボール91の電位が低下して当該コアボール91における電流密度が低くなり、メッキ効率が低下する可能性がある。したがって、平面視で見たとき、陰極はボール群9と十分な接触面積を有することが好ましく、本実施態様のように円板形状に形成しておくことが望ましい。この場合には、容器1kそのものを陰極材料で形成し、容器1kの側面に耐食性及び絶縁性のある樹脂被覆を施し、容器1kの底面が陰極1nとして作用するように構成してもよい。
【0026】
一方で、図1および図2(a)に示すように、メッキ室1mの底面1pの全てを陰極1nで構成した場合には、メッキ層の形成速度が低下するおそれがある。すなわち、ボール群9は、旋回流動するメッキ液Lで底面1p(陰極1nの上面)の外周縁部の所定の領域Cを旋回運動するため、ボール群9の存在しない陰極1nの上面の中央部にもメッキが無駄に析出してしまうからである。したがって、図2(b)およびその中心線に沿う断面図である図2(c)において符号2nで示すように、陰極は、ボール群9が旋回運動する領域に対応し底面2pの外周縁に円環状に設けておき、底面2pの中央部2zは電気的絶縁材で構成しておくことが好ましい。なお、図2(b)(c)の場合には、中央部2zは容器1kと一体に構成されているが、例えば中央部2zを絶縁性セラミックスなどで別体に形成し、容器1kに組み込むようにしてもよい。
【0027】
さらに、図2(c)に示すように、陰極2nは、その表面が底面2pと同一平面を形成するように露出する第1の陰極2yのみならず、その表面が周壁面1qと同一の内周面を形成するように露出する第2の陰極2xを容器1kの基端部に備えていてもよい。この陰極2xと2yは、図示するように、横断面がくの字状となるよう各々の一端において結合させた陰極2nとして容器1kに組み込むことができる。かかる第2の陰極2xを設けることによりボール群9が接触することが可能な陰極2nの面積を増加させることができ、高いメッキ効率を維持したまま均一なメッキ層をコアボール91に形成することが可能となる。なお、陰極2nの表面におけるメッキの析出を防止しメッキ効率を高めるためには、図2(c)に示すように、陰極2nは、ボール群9が旋回流動する範囲Cの中に含まれることが望ましい。また、図2(b)で示す陰極2nは円周方向において連続的な円環形状に形成してあるが、一部に不連続部分があっても実質的に円環状に形成されていればよい。
【0028】
さらに、コアボール91の転動を助長することによりコアボール91同士の表面に形成されたメッキ層の外周面を摺り合わせ、当該外表面の平滑性を向上するため、メッキ室1mの底面1p(すなわち陰極1nの上面)を一定の粗面としておけばよい。一方で、メッキ室1mの底面1pと摩擦することにより生じるコアボール91の表面またはメッキ層の表面の損傷を防止する観点からは、当該底面1pは平滑な面としておいてもよい。また、図3(c)に示すように、メッキ室1mの底面1pの上におけるコアボール91の旋回運動を安定化させるためには、メッキ液Lの旋回方向に沿い形成されコアボール91を案内する円環状の案内溝4yが底面1pに形成されていることが望ましい。
【0029】
図1において符号1oは、メッキ室1mの上部に陰極1nと相対して配置された錫を含む陽極である。陽極1oは、メッキ室1mを満たすメッキ液Lに浸漬する位置に位置するよう、ステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等の支持部材1rを介して密閉蓋1Lに固定され、直流電源回路1hの正極に接続されている。
【0030】
ここで、陽極の好ましい態様について以下説明する。多数のコアボール91をメッキする場合には、全てのコアボール91の表面積の和は非常に大きなものとなる。この多数のコアボール91と陽極との間に一定の電流を流し、所定の電流密度(電流値をコアボール91の表面積の和で除した値である)を確保することにより、コアボール91に均一かつ効率的にメッキ層を形成するためには、陽極1oの下面と陰極1nの上面とが相対するよう配置し、陰極1nの上を旋回運動するボール群9の範囲Cを包含するよう円環形状に陽極1oを形成することが好ましい。さらに、本体部1aの上部右側部分の正断面視である図4(a)に示すように、陰極と相対する陽極14oの底面に凹凸を設けることにより、コアボール91の表面積に応じた面積を陽極14oに形成することができる。また、陽極の表面積をより増加させたい場合には、図4(b)のように陽極部15oを構成してもよい。この陽極部15oは、直流電源回路の正極に接続された多数の導電性粒子15yにより構成された陽極と、支持部材を介し密閉蓋1Lに固定され多数の導電性粒子15yを収納する略円環形状の導電性粒子収納容器15xを有している。好ましくは樹脂等の非導電性材料で構成されたメッシュ状をなす導電性粒子収納容器15xは、導電性粒子15yは通さずメッキ液は流通可能な開口を多数有し、図示しない陰極に底面が相対し、供給されるメッキ液の流れを阻害しないようメッキ液供給口1fよりも上方に配置されている。なお、導電性粒子収納容器15xは、ステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等の導電性材料で構成してもよい。導電性粒子収納容器15xに収納する導電性粒子15yはコアボールにメッキすべき材料により適宜選択されるが、例えばコアボールに錫をメッキする場合には、錫からなる粒子が選択される。この態様の陽極部15oによれば、多数の導電性粒子15yにより陽極を構成するので上記平板状の陽極の場合に比べコンパクトながら大きな表面積を有する陽極を形成することができ、さらに、導電性粒子15yの個々の大きさや収納する個数を調整することにより陽極の表面積を自在に調整することができる。
【0031】
図1において符号1iは、容器1kの底面側に配置された加振手段である。本発明に係わるメッキ装置の好ましい態様として組み込まれた加振手段1iは具体的には所定の周波数で容器1kに振動を付与する振動手段であり、この振動によりコアボール91同士の付着や底面1pとコアボール91の付着を予防するとともに付着したコアボール91を分離し、コアボール91の凝集を防止する。
【0032】
符号1sは、メッキ槽1jの下方に配置された磁力発生手段である。磁力発生手段1sは、コアボール91が磁性を有する場合またはコアボール91に被覆されるメッキ層が例えばNiやFeなど磁性を有する場合に有効な構成要素であり、コアボール91またはメッキ層が形成されたコアボール91を磁力で下方に引き寄せ、メッキ室1mの底面1p(陰極1nの上面)に接触させつつ旋回運動させるように構成されている。なお、磁力発生手段1sは、メッキ槽1jの下方外周に設けてもよい。さらに、旋回領域Cの中にボール群9を留めコアボール91が分散することを防止するためには、磁力発生手段1sは、当該旋回範囲Cに対応する大きさの略円環形状の永久磁石などで構成することが好ましい。
【0033】
上記メッキ装置1の動作を説明する。まず、準備工程である。準備工程では、密閉蓋1Lを開けて所定数のコアボール91をメッキ室1mの底面1p(陰極1nの上面)に載置し、メッキ液Lをメッキ液循環手段1bのメッキ液貯蔵タンクに格納する。なお、コアボール91としては、酸洗処理し表面を清浄化したものを使用し、更に必要に応じ表面に下地層としてニッケルメッキ層を形成したものを使用してもよい。また、半田メッキするためのメッキ液は、例えばSn−Ag−Cu系の液組成を有する大和化成製の商品名「DAIN TINSIL SBB 2」やローム&ハース製の商品名「SOLDERON BP SAC5000」等に添加剤を添加して、例えばホウフッ化浴など周知のメッキ浴に適宜調整して使用することができる。ボール群9を構成する粒子はコアボール91に限定されず、例えばボール群9の攪拌を促進するための攪拌促進体として、例えば半田や鋼を主体とした導電性ダミーボール、樹脂やセラミックス等を主体とした非導電性ダミーボールを適量加えてもよい。
【0034】
密閉蓋1Lを閉じてメッキ室1mを密閉空間にした後、メッキ装置1を作動させる。メッキ装置1は、メッキ液循環手段1bを作動させてメッキ液供給管1eを通じてメッキ室1mへ所定の流量でメッキ液Lを供給する。メッキ室1mがメッキ液Lで満たされると、メッキ液Lは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾きに沿い底面1pに向い螺旋状に流下する旋回流aとなる。なお、メッキ液Lの供給の初期段階ではメッキ液Lの流れが不安定であるため、不安定なメッキ液Lの流れに乗りメッキ室1mの外にコアボール91が流出する場合がある。このコアボール91の流出を防止するためには、準備工程においてメッキ室1mに予めメッキ液Lを満たしておき、その後メッキ室1mにメッキ液Lを供給するようにすれば好ましい。また、メッキ液Lの供給の初期段階ではメッキ液Lの流量を小さくしておき、徐々に所定の流量に増加するようにすれば好ましい。
【0035】
下方に向い縮径する円錐台形状をなすメッキ室1mの周壁面1qに沿いメッキ室1mを旋回流下するメッキ液Lは底面1pに近づくに従い旋回速度が増加し、底面1pに達する。底面1pに達したメッキ液Lの旋回流aは、底面1pに接触しているボール群9を当該底面1pに押し付けつつ旋回運動させる。ここで、ボール群9に含まれるコアボール91は、底面1p、すなわち直流電源回路1hの負極に接続された陰極1nの上面に接触しているので、陽極1oとの間でメッキ処理され、その表面にはメッキ層が形成される。そして、メッキ室1mの底面1pに達したメッキ液Lは、底面1pの中央部で上昇流bとなりメッキ液排出口1dを通じてメッキ液排出管1cから排出されメッキ液循環手段1bに戻るため、常に新鮮なメッキ液Lがメッキ室1mに供給され、メッキ室1mの中のメッキ液Lの状態を常に一定とすることができ、その結果コアボール91の表面に均一な厚みのメッキ層が形成される。なお、メッキ室1mがメッキ液Lで満たされた後に、メッキ液排出管1cを通じてメッキ液Lを吸引するようにすれば、メッキ液Lの旋回流がより整流化され、コアボール91の旋回運動が安定するので望ましい。
【0036】
メッキ室1mの底面1pに接触しつつ旋回運動するコアボール91は底面1pの上を転動し、コアボール91同士が擦り合うように衝突するので、コアボール91同士が付着しがたくコアボール91の凝集が防止され、かつ転動によりコアボール91の表面が底面1pに触れる機会が均等になるので、均一な厚みのメッキ層が形成される。ここで、メッキ処理の過程において、メッキ層は、直接的又は他のコアボール91を介して間接的に陰極1nへ触れる毎に序々にコアボール91の表面に形成されていくと推定される。そのため、メッキ処理の初期段階では表面の一部にのみメッキ層が形成されている状態となっている。コアボール91の転動が充分ではない場合には、図14(a)に示すように、突起したメッキ層mがコアボール91に被覆された金平糖状のCuコアボールが形成される場合があった。このメッキ層の突起した部分は、初期にコアボール91の表面の一部に形成されたメッキ層を起点として選択的にメッキ層が形成された結果であると想定される。しかしながら、コアボール91を充分に転動させ、コアボール91同士が擦り合うように衝突させることにより、図14(b)に示すように、コアボール91aの表面の一部に形成されたメッキ層m1を、転動する他のコアボール91bで擦り合わせて押し広げるというメッキ層の表面の平滑化効果が生じて表面の一部に選択的にメッキ層が形成されることを防止し、表面が極めて平滑でメッキ層の内部にボイドの少ない均一な厚みのメッキ層を形成することができる。このようなメッキ層を有し極めて真球度の高いCuコアボールは、フリップチップ用の接続部材として使用される場合に特に好適である。
【0037】
なお、図1に示すコアボール供給手段1gを用いてコアボール91をメッキ室1mに供給した場合には、コアボール91は旋回流動するメッキ液Lにより旋回運動し、遠心力で周壁面1qに押し付けられつつ下降し、メッキ室1mの底面1pへ下降し、そこで安定した旋回運動を継続する。
【0038】
上記の状態で所定時間、コアボール91をメッキ処理し、所定厚みの半田メッキ層を有するCuコアボールが形成される。メッキ液循環手段1bのメッキ液循環用ポンプや流量調整弁を適宜調整し、メッキ処理中に供給されるメッキ液Lの流量や流速を経時的に変化させたり、容器1kを介して加振手段1iでボール群91に振動を付与すれば、コアボール91の凝集防止の観点から有利である。
【0039】
上記メッキ装置1の更に好ましい態様のメッキ装置について図5及び6を参照して説明する。なお、図5及び6において、上記メッキ装置1と同一の構成要素については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0040】
図5に示すメッキ装置5は、密閉蓋1Lの中央部を貫通しメッキ室1mの中に突き出た状態となるようメッキ液排出管5cを配置し、メッキ液排出口5dを軸芯方向においてメッキ室1mの中間部、具体的にはメッキ液排出口5dをメッキ液供給口1fよりも下方に位置させ、更にメッキ液排出管5cを矢印dで示すように軸心方向に沿い移動できるようにした態様である。図5に示すように、メッキ液排出管5cの外周面に陽極5oを配置する場合には、メッキ液排出管5cの外周面から突出しないように配置することが望ましい。かかるメッキ装置5によれば、メッキ液排出口5dはメッキ室1mの底面1pに近接しているので、メッキ液Lの上昇流bは底面1pの近くで排出され、上昇流bが旋回流aに与える影響が抑制され、底面1pにおけるコアボール91の旋回運動を安定させることが可能となる。更に、メッキ液Lの供給の初期段階においてメッキ室1mの旋回流aが安定するまではメッキ液排出管5cの密閉蓋1Lからの突出長さを短くしておき、旋回流が安定した後にメッキ液排出管5cを下方に移動させて密閉蓋1Lからの突出長さを長くし所定位置に位置決めすることで、メッキ室1mへメッキ液Lを導入するメッキ処理前の段階からメッキ処理が完了するまで、メッキ室1mの外へのコアボール91の流出を防止できる。なお、後述する第2〜第4態様のメッキ装置のように、メッキ室を旋回流動するメッキ液を整流化する構成やメッキ室へコアボールを供給する構成を備えたメッキ装置の場合には、メッキ液排出管5cは上下方向に移動せず、図示のごとく底面1pの上方近傍にメッキ液排出口5dが配置されるよう密閉蓋1Lに固定されていてもよい。
【0041】
図6(a)に示すメッキ装置は、半径方向において中心部が周縁部に対し高くなるよう円錐形状に底面6p(陰極6nの上面)をメッキ室1mに形成した態様である。かかる態様のメッキ装置によれば、ボール群9は、底面6pの高さの低い周縁部で安定して旋回運動することとなり、底面6pにおけるボールの濃度を向上させることができる。なお、同図(b)に示すように、半径方向において中央部が周縁部に対し高くなるよう円柱状の突起7yを有する底面7p(陰極7nの上面)をメッキ室1mに形成しても同様な作用効果を奏することができるが、この場合にはメッキ液Lの流動を阻害しなよう突起7yの上部周縁にテーパ面を形成しておくことが望ましい。
【0042】
[第2実施態様]
以下第2態様のメッキ装置について図7および8に基づき説明する。なお、図7および8において、上記第1態様のメッキ装置1およびその好ましい態様のメッキ装置5等と同一の構成要素については同一符号を付しており、詳細な説明を省略する(以下第3〜第5態様のメッキ装置について同じ。)
【0043】
図7(a)に示すように、第2態様のメッキ装置8は、第1態様と同様に形成されたメッキ室1mの中に案内手段8vを有する点で第1態様のメッキ装置1と相違している。図7(a)の案内手段8vは、メッキ液供給口1fを通じ供給されたメッキ液Lをメッキ室1mの底面1pに向い案内するように構成されている。すなわち、案内手段8vは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ底面1pに向い流下するメッキ液Lの流線aに沿った方向に伸びる螺旋が形成された非導電性材料からなる案内板8wである。上部8xがメッキ液供給口1fの下方に、下部8yがメッキ室1mの底面1pと所定の間隙を介し配置された案内板8wは、密閉蓋1Lを縦方向に貫通するメッキ液排出管5cを中央に取り巻きつつその外周面が周壁面1qに密接している。なお、メッキ液Lを円滑にメッキ室1mから排出するためには、案内手段8xの下端は、メッキ液排出口より上方にあることが好ましい。
【0044】
かかる案内板8wによれば、メッキ液供給口1fから供給されたメッキ液Lは、案内板8w、メッキ液排出管5cの外周面およびメッキ室1mの周壁面1qにより区画された螺旋状の流通通路8zの中を破線aで示すように上方から下方に向けて流動し、メッキ室1mの底面1pに案内される。ここで、案内板8wは、メッキ液供給口1fから供給され旋回流下するメッキ液Lの流線aに沿って螺旋が形成されており、かつ、流通通路8zは一本の通路となるよう形成されているので、メッキ液供給口1fから供給されるメッキ液Lや流動するメッキ液Lの相互の干渉により旋回流下するメッキ液Lに乱流を生じせしめることなく、整流化されたメッキ液Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図において符号b2で示すように、メッキ液排出管5cから排出されるため上昇流としてメッキ液排出口に向うメッキ液Lの流れbの一部がメッキ液排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内板8wの下部8yで遮られるので、旋回流下するメッキ液Lの流れaを乱すことがない。その結果、底面1pにおけるボール群の旋回運動が安定し、均一なメッキ層を有するCuコアボールを形成することが可能となる。
【0045】
なお、メッキ装置8の変形例である図7(b)に示すメッキ装置16のように、メッキ液Lが周壁面1qを旋回する態様により、案内板16wは、メッキ液排出管5cの外周面との間に一定の間隙16zが形成されるよう構成し、メッキ室1mに配置してもよい。
【0046】
図8に示すメッキ装置10は第2態様のメッキ装置の他の例であり、案内手段10vとして案内体10wを有している。底面10zを有する略円錐台形状の非導電性材料からなる案内体10wは、底面1pに向い縮径した略円錐形状のメッキ室1mの周壁面1qに倣う外周面10xを有している。上部が密閉蓋1Lに接合された案内体10wは、密閉蓋1Lに固定され縦方向に伸びるメッキ液排出管5cを中央部に有し、当該メッキ液排出管5cを外周面10xが包囲している。そして、案内体10wは、水平方向においては、その外周面10xが一定寸法gの間隙10yを介しメッキ室1mの周壁面1qと対向するようメッキ室1mの中に配置されている。また、縦方向においては、ボール群9がメッキ室1mの底面1pの上で旋回運動可能な領域を設けるため、案内体10wの底面10zがメッキ室1mの底面1pに対し所定の間隙を有するように配置されている。なお、本態様のメッキ装置10では、錫を主体として構成された陽極10oは、案内体10wの底面10zに設けられている。
【0047】
上記案内手段としての案内体10wをメッキ室1mの中央部に配置することにより、上記案内板8wと同様な作用を奏することができる。すなわち、メッキ液供給口1fから供給されたメッキ液Lは、案内体10wの外周面10xとメッキ室1mの周壁面1qとで形成された間隙10yを破線aで示すように上方から下方に向けて旋回流下し、メッキ室1mの底面1pに案内される。旋回流下するメッキ液Lは、案内体10wの外周面10xとメッキ室1mの周壁面1qとで囲まれた比較的狭い間隙10yの中を流動するので、メッキ液供給口1fから供給されるメッキ液Lや流動するメッキ液Lの相互の干渉により旋回流下するメッキ液Lに乱流を生じせしめることなく、整流化されたメッキ液Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図示b2として示すようにメッキ液排出管5cから排出されるため上昇流としてメッキ液排出口5dに向うメッキ液Lの流れbの一部がメッキ液排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内体10wの底面10zで遮られるので、旋回流下するメッキ液Lの流れaを乱すことがない。その結果、底面1pにおけるボール群の旋回運動が安定し、均一なメッキ層を有するCuコアボールを形成することが可能となる。なお、上記案内体10wと周壁面1qとの間隙10yに上記案内板8wを組み込んでもよい。
【0048】
また、図4(b)を参照して説明した陽極部を上記案内体を有するメッキ装置に組み込むことができる。すなわち、図8(b)のメッキ装置21に示すように、メッシュ状の非導電性材料で構成された案内体21wは、陽極部の導電性粒子収納容器を兼ねており、その内部に陽極を構成する多数の導電性粒子21oを収納し、導電性粒子21oは通さずメッキ液がわずかに流通可能な微小な開口を多数有している。なお、案内体21wに設ける開口は、導電性粒子21oの大きさ未満であり極めて小さくメッキ液が貫流する際の抵抗が大きいので、メッキ液の上昇流が流速を保ったまま案内体21wを通過し、メッキ液の旋回流を乱すことはない。
【0049】
[第3実施態様]
以下第3態様のメッキ装置及びその変形例について図9に基づき説明する。第3態様のメッキ装置は、第1態様と同様に形成されたメッキ室1mの中に整流手段を有する点で第1態様のメッキ装置1と相違している。以下、整流手段の各種態様について説明する。
【0050】
図9(a)の整流手段17vは、メッキ液供給口1fから供給され、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ流下するメッキ液Lの流れを一定の方向に整えて整流する非導電性材料からなる板状部材17wである。メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回流下するメッキ液Lの流線に沿った方向に伸びる螺旋が形成された板状部材17wは、その上部17xがメッキ液供給口1fの下方に、下部17yがメッキ室1mの底面1pと所定の間隙を介し、外周面が周壁面1qに密接するように配置されている。かかる板状部材17wによれば、メッキ室1mの周壁面1pに沿い旋回するようにメッキ液供給口1fから供給されたメッキ液Lは、その旋回流下する流れが板状部材17wにより整流されつつ安定して維持され底面1pに至り、メッキ室1mの底面1pに接触しているボール群を当該底面1pに押し付けつつ旋回運動させる。
【0051】
なお、上記整流手段17vの変形例である図9(b)に示すように、間隙部18tを介しつつ複数のフィン状の板状部材18q、18r、18sを上記板状部材17wと同様にメッキ液Lの旋回流の流線沿い螺旋状に一列に配置して整流手段18vを構成してもよい。また、図9(c)に示すように、メッキ液Lの旋回流の流線に沿い螺旋状に一列に複数の板状部材19q〜19rを配置するとともに、板状部材19q〜19rの下方に、板状部材19q〜19r同士の間隙部19uを埋めるように板状部材19s〜19tを千鳥状に一列に配置することで2列の板状部材を有する整流手段19vを構成してもよい。
【0052】
[第4実施態様]
以下第4態様のメッキ装置及びその変形例について図10〜12に基づき説明する。第4態様のメッキ装置は、メッキ室にボール群を供給する供給手段と、そのボール群を回収する回収手段を有する点で第1態様のメッキ装置と相違している。以下供給手段および回収手段を中心に第4態様のメッキ装置を説明する。なお、供給手段と回収手段は各々単独にメッキ装置に組み込んでもよい。
【0053】
まず、供給手段について説明する。図10(a)に正面断面図、同図の容器1kから密閉蓋1Lを取り外した状態である平面図である同図(b)に示すように、本態様の供給手段11qは、メッキ室1mに供給すべき多数のコアボール92を収納する収納部11rと、各々の一端が収納部11rに接続され他端がメッキ槽1jに接続されたメッキ液流入管11uおよびボール供給管11vとを有している。なお、図10(a)においてA−A線より上は、図10(b)に示すメッキ槽1jの中心線Eより上側を見たB矢視図、A−A線より下は中心線Eより下側を見たC矢視図である。
【0054】
収納部11rは、多数のコアボール92を収納可能な容器11sと、容器11sの上部開口を閉塞する蓋11tとで構成されており、蓋11tを開閉することによりコアボール92を容器11sに供給する。その収納部11rの側壁には、メッキ液流入管11uの一端がバルブ11wを介して接続されており、さらにメッキ液流入管11uの他端はその開口(メッキ液流入口)11yがメッキ室1mに開口するようメッキ槽1jに接続されている。ここで、メッキ液流入管11uは、その軸心が、メッキ液供給管1eとほぼ同一線上、すなわちメッキ槽1jの上部であってメッキ室1mの周壁面1qの接線方向に沿い、そのメッキ液流入口11yが旋回するメッキ液の流れaを迎え入れるように配置されている。これにより、平面視においてメッキ室1mの中心線Fを介しメッキ液流入口11yとメッキ液供給口1fとは相対する状態となるので、図示破線aで示すようにメッキ液供給口1fから周壁面1qに沿い旋回するように供給されたメッキ液は、メッキ液流入口11yを通じメッキ液流入管11uに流入する。
【0055】
収納部11rの底部には、ボール供給管11vの一端が接続されており、ボール供給管11vの他端はその開口(ボール供給口)11zがメッキ室1mの底部に開口するようメッキ槽1jに接続されている。ここで、ボール供給管11vは、図10(b)に示すように、平面視においてメッキ室1mの中心線Eを介しメッキ液流入管11uと反対の位置に、その軸心がメッキ室1mの接線方向に沿い、そのボール供給口11zが旋回するメッキ液の流れaに沿うように配置されている。これにより、メッキ液供給口1fから供給され周壁面1qに沿い流下し底面1pの上を旋回流動するメッキ液の流れaに円滑に乗るようにコアボール92を供給することができる。なお、図において符号11xは、供給すべきコアボール92を収納部11rの中に保持するための仕切り弁である。この仕切り弁11xは、コアボール92を自動的にメッキ室1mへ供給するために設けられた好適な構成であり、手動でコアボールを供給する場合には必ずしも必要ではない。
【0056】
次に、メッキ処理後のコアボール91を含むボール群9の回収手段11aについて説明する。本態様の陰極11nは、回収手段11aの構成要素の一部をなしており、容器1kの下部に形成された円筒状部11Lの内面に摺動可能に嵌め合いされ、円板状をなすその外周面にはメッキ液の漏出を防止するため不図示のOリングが設けられている。そして、円筒状部11Lの内面には、メッキ層が形成されたコアボールを含むボール群を回収するボール回収管11bの一端の開口(ボール回収口)11cが開口しており、ボール回収管11bの他端は回収容器11eに接続されている。なお、図10(b)に示すように、ボール回収管11bは、平面視においてメッキ室1mの中心線Fを介し上記ボール供給管11vと反対の位置に、その軸心がメッキ室1mの接線方向に沿い、そのボール回収口11cが旋回するメッキ液の流れaを迎え入れるように配置されている。
【0057】
ここで、陰極11nは、エアシリンダー等の上下駆動部11dにより符号hで示す上下方向に円筒状部11Lの中を移動し、上昇端の位置においてメッキ室1mの周壁面1qの下端縁にその上面11p(メッキ室1mの底面ともなる。)が接するとともに、その外周面でボール回収口11cを閉じ、下方端の位置においてボール回収口11cを開くように構成されている。なお、本態様のメッキ装置11では、陰極11nをバルブの弁のごとく用い、陰極11nを上下移動させることによりボール回収口11cを開閉させているが、第1態様のメッキ装置1のようにメッキ室の底部に陰極を固定し、バルブを介してメッキ槽にボール回収管を接続するとともにボール回収口がメッキ室に直接開口するよう回収手段を構成し、バルブの開閉によりコアボールを回収するようにしてもよい。この場合には、メッキ室の底面を旋回するコアボールの運動を妨げないよう、ボール回収口は、メッキ室の底面より上方に配置することが好ましい。
【0058】
上記供給手段11qおよび回収手段11aを含むメッキ装置11の動作について図11を参照しつつ説明する。図11(a)に示す収納部11rの蓋11tを開けて所定数のコアボール92を容器11sに供給し、その後蓋11tを閉じる。この時、バルブ11wおよび仕切り弁11xは閉じられた状態である。また、上下駆動部11dにより上昇された陰極11nは上昇端の位置にあり、ボール回収口11cは閉じられた状態となっている。
【0059】
次いで、メッキ装置11を作動させてメッキ液供給口1fからメッキ液Lを供給する。一定時間経過してメッキ室1mがメッキ液Lで満たされると、図11(a)に示すように、メッキ液Lは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾斜に沿い底面11pに向い螺旋状に流下する安定した旋回流aとなる。
【0060】
メッキ液Lを供給し一定時間経過しメッキ室1mにおけるメッキ液Lの流動状態が安定した後、メッキ装置11は、バルブ11wを開き、図11(b)において矢印eのように旋回流動するメッキ液Lの一部をメッキ液流入管11uから収納部11rにメッキ液流入口11yを通じて流入させるとともに、仕切り弁11xを開く。すると、収納部11rに収納されたコアボール92は、流入したメッキ液Lにより収納部11rから押出され、メッキ液Lとともにボール供給管11vの管路の中を流れ、矢印fのようにボール供給口11zから排出されメッキ室1mへ供給される。メッキ装置11は、全てのコアボール92がメッキ室1mへ供給された後、バルブ11wおよび仕切り弁11xを閉じる。ここで、ボール供給管11vは上記のとおり配置されているので、ボール供給口11zから供給されたコアボール92はメッキ液Lの旋回流aに乗り、その後メッキ室1mの底面11pの上を円滑に旋回運動し、メッキ処理されることとなる。このように、メッキ液Lをメッキ室1mに供給してから一定時間経過し、メッキ室におけるメッキ液の旋回流動が安定化した後にコアボール92をメッキ室1mへ供給するので、メッキ室1mからコアボール91が流出することが少なく、高い歩留まりでコアボール91にメッキすることが可能となる。
【0061】
なお、手動でコアボール92を供給する場合には、ボール供給管11vの経路の中に仕切り弁11xを設けず、メッキ液Lの流動状態が安定化した後、バルブ11wを開き、メッキ液流入管11u、収納部11rおよびボール供給管11vの経路でメッキ液Lを流通させた後に、収納部11rに所定数のコアボール92を供給するようにすればよい。
【0062】
次いで、図11(c)に示すように、メッキ装置11が、上下駆動部11dにより陰極11nを下降端まで下降させボール回収口11cを開くと、メッキ層が形成されたコアボール91を含むボール群9はボール回収口11cを通じて矢印iで示すようにボール回収管11bに流れ込み、その後回収容器11eに回収される。なお、メッキ液排出管5cにバルブを設けておき、陰極11nの下降とともに当該バルブを絞るようにすれば、メッキ液Lの多くの部分はボール回収管11bを通じて排出されるので、より円滑にボール群9を回収することができる。
【0063】
図12に示すメッキ装置12は、第4態様のメッキ装置の他の例であり、メッキ液供給管1eの経路上に設けられた供給手段12qを有している。すなわち、供給手段12qのメッキ液流入管11uの一端はメッキ液供給管1eの上流側に接続され、ボール供給管11vの一端はメッキ液供給管1eの下流側に接続されており、それらの他端はバルブ11wおよび仕切り弁11xを介して収納部11rに接続される構成となっている。かかる供給手段12qによれば、メッキ室1mにおけるメッキ液Lの流動状態が安定した後にバルブ11wおよび仕切り弁11xを開くと、メッキ液供給管1eを流れるメッキ液Lの一部が、メッキ液流入管11uを通じて収納部11rに流入する。すると、収納部11rに収納されているコアボール92は、流入したメッキ液Lにより押し出され、ボール供給管11vを通じてメッキ液供給管1eに流入し、メッキ液Lとともにメッキ液供給口1fからメッキ室1mに供給されることとなる。なお、供給手段12qにおいてメッキ液を円滑に流通させるためには、メッキ液流入管11uが接続されるメッキ液供給管1eの上流側の内径を太くし、ボール供給管11vが接続される下流側の内径を上流側より細くすることが望ましい。さらに、供給手段12qの中に滞留することなくコアボール92をメッキ液供給管1eへ流入させるためには、収納部11rの底面とメッキ液流入管11uおよびボール供給管11vとの底面との間には段差がないようにしておくことが好ましい。
【0064】
[第5実施態様]
以下第5態様のメッキ装置について図13を参照し説明する。なお、図13(a)は、第5態様の一例であるメッキ装置の概略構成を示す正面断面図、同図(b)は同図(a)のD矢視図、図13(c)は、第5態様のメッキ装置の他の例の概略構成を示す正面断面図、同図(d)は同図(c)のE矢視図である。
【0065】
上記第1〜第4態様のメッキ装置では、コアボールが接触しつつ周回可能なメッキ室の底面として円形状の底面と底面に向い縮径するように底面の周縁に立設した略円錐台形状の周壁面とを備えたメッキ室、断面円形状のメッキ室の接線方向に沿いメッキ液供給口が開口するよう軸心が水平に配置されたメッキ液供給管、メッキ室の軸心に沿い配置されたメッキ液排出管の各構成要素を有するメッキ装置について説明したが、本発明はこれら望ましい態様に限定されることなく、第5態様のメッキ装置でも実現することが可能である。
【0066】
第5態様の一例であるメッキ装置13は、図13(b)に示すように、コアボール91が周回可能な底面として略楕円形状の底面13pを有し、底面13pの周縁に立設する周壁面13qは縦方向において同一断面、すなわち直管状となるようメッキ室13mは形成されている。さらに、メッキ室13mにメッキ液Lを供給するメッキ液供給管13eは、周壁面13qに沿い旋回流下するメッキ液Lの流れを生じさせるため、その軸心を下方に向けた状態でメッキ槽1jに接続されている。なお、周壁面13qに対する取付角度を自在に設定可能な継手などを介しメッキ液供給管13eをメッキ槽1jに接続するよう構成すれば、メッキ処理すべきコアボールの大きさや数量などに応じメッキ液Lが旋回流下する角度を適宜設定できるので好ましい。また、メッキ室13mからメッキ液Lを排出するメッキ液排出管1cは、メッキ液Lの上昇流bを円滑にメッキ室13mから排出するためには第1態様のメッキ装置1と同様に密閉蓋1Lの中央部に設けられていることが好ましいが、メッキ液排出管の配置はこれに限定されることなく、図示破線で示すメッキ液排出管13cのように密閉蓋1Lの外周よりに設けメッキ室13mからオーバーフローするメッキ液Lを排出させてもよい。
【0067】
上記メッキ装置13の動作を説明する。メッキ室13mの底面13pにボール群9を載置し、その後密閉蓋1Lを閉じてメッキ室13mを密閉空間にし、メッキ装置13を作動させる。メッキ装置13は、メッキ液供給管13eを通じてメッキ室13mへメッキ液Lを供給する。メッキ室13mがメッキ液Lで満たされると、上記のように配置されたメッキ液供給管13eから供給されるメッキ液Lは、メッキ室13mの周壁面13qに沿い螺旋状に旋回流下する旋回流aとなる。旋回流下しつつ底面13pに達したメッキ液Lは、底面13pに接触しているボール群9を当該底面13pに押し付けつつ旋回運動させ、コアボール91の表面にメッキ層を形成させる。上記第1態様のメッキ装置1と同様に、メッキ室13mの底面13pに接触しつつ旋回運動するコアボール91は底面13pの上を転動するので、コアボール91同士が付着しがたく凝集が防止され、かつ転動によりコアボール91の表面が底面13pに触れる機会が均等になるので、均一な厚みのメッキ層が形成される。メッキ室13mに供給されたメッキ液Lは、メッキ液排出管1cから排出されるので、常に新鮮なメッキ液Lがメッキ室13mに供給され、もって均一な厚みのメッキ層が形成される。
【0068】
図13(c)(d)に示す第5態様の他の例であるメッキ装置20は、コアボール91が周回可能な底面として円環状の底面20pと、底面20pの外周縁に沿い立設した外周壁面20qと、内周縁に沿い立設した内周壁面20xとを有するメッキ室20mを有し、メッキ室20mの断面は縦方向において同一となるようメッキ室20mは形成されている。かかるメッキ装置20においても基本的に上記メッキ装置13と同様な動作でコアボール91にはメッキ層が形成されるが、底面20pを構成する陰極20n自体が円環状に形成されているので、図2(b)(c)を参照して説明した陰極構造と同様にメッキ効率を向上できるという作用効果を奏することができる。
【0069】
[実施例]
第1態様のメッキ装置1に、直径50μmのコアボールを50万個投入し、厚み20μmを目標値として、上記説明した方法により所定の条件でメッキ処理し、Sn−Ag−Cu系のメッキ層を形成したCuコアボールを得た。50万個のコアボールおよびCuコアボールの中から600個の標本を抽出し、測定した直径および真円度の分布を図15に示す。また、第1態様のメッキ装置1でメッキした場合のCuコアボールおよび先行技術文献1のメッキ装置でメッキした場合のCuコアボールの外観写真および断面写真を図16に示す。
【0070】
図15に示すように、コアボールの直径の平均値50.4μmに対しCuコアボールの直径の平均値はほぼ90μmで、目標値である20μmの厚みのメッキ層が形成された。また、Cuコアボールの真円度は0.9965で、基材粒子であるコアボールの真円度0.9960を上回る高い真円度を有するCuコアボールが形成された。加えて、Cuコアボールの直径および真円度の標準偏差は各々1.776、0.0018で、コアボールの2.108、0.0075よりも低く、直径および真円度のバラツキの少ないCuコアボールを得ることができた。
【0071】
図16(a)(b)に示すように、第1態様のメッキ装置1でメッキ層が形成されたCuコアボールは、非常に表面が滑らかで平滑化され、かつコアボールの表面にメッキ層が均一に形成され、さらにメッキ層の内部にボイドが生じていない。一方で、同図(c)(d)に示すように、先行技術文献1のメッキ装置でメッキ層が形成されたCuコアボールは、ボイドの原因となる凹凸がメッキ層の表面に発生し、その凹凸のために真円度が低くかつ直径および真円度のバラツキも大きいということが確認された。
【符号の説明】
【0072】
1(5、8、10、11、12、13、16、17,18,19、20、21、22):メッキ装置
1a(5a):本体部
1j:メッキ槽
1m(13m、20m):メッキ室
1n(2n、3n、3m、6n、7n、11n、13n、20n):陰極
1o(5o、10o、14o、15o):陽極
1b:メッキ液循環手段
1c(5c、13c):メッキ液排出管
1e(13e、22e):メッキ液供給管
1g(11q、12q):供給手段
1h:直流電源回路
1i:加振手段
1s:磁気発生手段
8v(10v、16v):案内手段
8w(16w):案内板
10w:案内体
11a:回収手段
17v(18v、19v):整流手段
17w(18w、19w):板状部材
91:コアボール
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に導電性を有する基材粒子にメッキを施す技術の一例として、Cuを主体としたコアボールの表面に半田をメッキして半田被覆Cuコアボール(以下Cuコアボールと略して記載する。)を形成する技術がある。なお、従来技術の問題点を明らかにするために、Cuコアボールを例としてメッキ技術を説明するが、本発明はCuコアボールに限定されない。
【0003】
近年の多ピッチ化・狭ピッチ化による高密度実装の進むBGA(Ball Grid Allay)やCSP(Chip Scale Package)などの半導体パッケージでは、入出力端子用バンプとして小径のCuコアボールが適用されている。Cuコアボールは、そのコアボールがリフロー時に溶融しないため、半導体素子と基板との間に一定の距離を維持でき、半導体素子の起動・停止により生じる熱サイクル負荷等に対する接続信頼性を確保することができる。
【0004】
Cuコアボール製造技術として、メッキ液が流通可能な多数の開口を有するバレル内にコアボールを収納し、バレルをメッキ浴に配置し自転させることで半田を被覆するバレル電気メッキ法が周知である。しかしながら、特に直径が100μm以下の小径のCuコアボールを製造する場合には、バレルの自転にともなうコアボールの転動によるコアボールの攪拌が不十分となる。その結果、コアボール同士がメッキ層を介して連結し凝集したり、メッキ層の表面が粗面化したり、メッキ層の厚みが部分的に不均一となり、歩留まりが低下するという問題が生じていた。
【0005】
このバレル式電気メッキ法の問題を解消する技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1には、充分かつ均一なメッキ層を短時間で得るため、「上端が開放した下開き椀形の樹脂ドームの外周部下面と、樹脂底板の外周部上面の間に被めっき物が回転中に押付けられるコンタクトリングと、処理液が流通飛散するポーラスリングを一体に結合してセルを形成し、上記セルを相対回転不能に支持しコンタクトリングと通電する導電ロータリープレートの中央部下面に垂直な導電駆動シャフトの上端を固定し、上記シャフトにコンタクトブラシを押圧してマイナス極に接続し、上記ドーム内に陽極バスケットを配置し、セルを覆うカバーを設けた」、小物の回転メッキ装置が記載されている。そして、かかる構成の回転メッキ装置によれば、セル内に収納された被メッキ物は、セルの回転により生ずる遠心力の作用によりコンタクトリングに強制的に押し付けられ、セルの回転と、停止又は減速を繰り返すことにより均一に混合され、被メッキ物の表面におけるメッキ液の更新も活発となり、均一な厚みのメッキ層を形成することができると記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の回転メッキ装置は工業生産上効率の面での問題があった。すなわち、この回転メッキ装置は、被メッキ物を攪拌してその表面にメッキ液を充分に流通させるために、セルの回転、停止又は減速を繰り返す必要がある。そして、被メッキ物への実際のメッキ処理は、セルが回転し遠心力でコンタクトリングに被メッキ物が接触している間にのみ行われ、停止又は減速している間は行われないため、メッキ処理時間に比して全体の製造時間が長くなる。さらに、メッキ処理中にはボールの攪拌力が作用しないため、特に半導体パッケージに使用される直径が100μm以下の小径のCuコアボールの場合には、セル内におけるコアボールの凝集が顕著となり、メッキ処理されたCuコアボールの表面の平滑性も劣化する。この凝集を解くためにセルの回転、停止又は減速を頻繁に繰り返す方法もあるがメッキ効率が更に低下するという問題が招来する。
【0007】
また、バレル式電気メッキ法の問題を解消する技術の他の例が特許文献2に記載されている。特許文献2には、特に曲がり易い性質を持ったワークのメッキ時の変形等を防止することを目的とし、「上面開口としたメッキ槽と、そのメッキ槽の上面開口を閉塞する着脱蓋とを有し、前記メッキ槽の底面に陰極を備え、着脱蓋の裏面に陽極を備えるとともに、前記メッキ槽の底面沿いの周壁に、その周壁の内面方向に向けたメッキ液の噴射ノズルを備えていることを特徴とする」、メッキ装置が記載されている。そして特許文献2には、かかる構成を採用することにより、メッキ槽内に投入されたワークは噴射ノズルから噴射されるメッキ液とともにメッキ槽内を回り、その回転を伴いながらメッキ処理が施されるため、曲がりや変形を与える程の衝突等がなくなり、すべてのワークが原形を保持したままメッキ加工処理を終了できる、と記載されている。
【0008】
しかしながら、かかる特許文献2のメッキ装置は均一な厚みのメッキ層を基材粒子に形成するという点では不十分である。すなわち、特許文献2のメッキ装置で基材粒子をメッキした場合、メッキ槽内を旋回するメッキ液で基材粒子は攪拌されながら旋回運動するが、粒子は液流に乗って移動するため、底面に配置された電極と粒子とが接触する確率が小さく、その確率も粒子毎に不均一となる。その結果、個々の基材粒子ごとにメッキ層の厚みが異なってしまうという問題が生じる可能性がある。
【0009】
さらに、下記特許文献3には、粒径が0.1μm〜10μmの範囲の金属、無機物質などの微粉末の表面に金属を電気めっき法で均一にかつ高収率で被覆する装置として、「めっき液を収容する軸を縦方向にした筒状の容器と、この容器の底部に電導表面を横にして配した陰極板と、該めっき液の液面近く配した陽極と、該陰極板と陽極との間に所定の電位を付与する電源装置と、該陰極板と陽極との間の液中に吸込用開口を持つ吸込管と、該陰極板と陽極との間の液中に吐出用開口を持つ吐出管と、該吸込管から吐出管に通ずる流体の循環経路と、この循環経路に介装された流体循環用ポンプとからなり、該吐出管の吐出用開口を陰極板の電導表面の方向に向けて下向きに設置すると共に前記の吸込管の吸込用開口を陽極下端よりもさらに下方に設置し、被めっき品である粒径が0.1μmから10.0μmの範囲の導電性微粉末をめっき液と共に前記の循環経路を循環させつつ該陰極板に連続的に衝突させるようにした微粉末の電気めっき装置」が開示されている。そして、かかるめっき装置によれば、電気めっき液中に微粉末が所定の懸濁濃度をもって懸濁し且つ所定の方向と速度をもった微粉末懸濁液をめっき液中に強制的に形成させ、微粉末懸濁流を陽極には実質的に接触させないで陰極板にだけ所定の速度成分をもって循環衝突させるので、微粉末の一粒づつの表面に均一かつ高収率で電気めっきすることが可能となると記載されている。
【0010】
しかしながら、かかる特許文献3のめっき装置によっても、微粉末は微粉末懸濁流に乗って流動するのみであるため陰極板と接触する確率が微粉末間で不均一であり、特許文献2のメッキ装置と同様な理由から、均一な厚みのメッキ層を個々の基材粒子に形成するという点では不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−239799号公報
【特許文献2】実開平7−6267号公報
【特許文献3】特開平1−272792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされた発明であり、表面に導電性を有する基材粒子に均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明に係わるメッキ装置は、表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、前記基材粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室を有するメッキ槽と、前記メッキ室の底面より上方に開口する供給口を有し前記メッキ室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口からメッキ液を供給するメッキ液供給管と、前記メッキ室に開口する排出口を有するメッキ液排出管と、前記メッキ室の底面に配置された前記基材粒子に接触する陰極と、前記メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを有するメッキ装置である。
【0014】
かかるメッキ装置は、次のような作用を奏する。すなわち、メッキ液供給管の供給口から供給されたメッキ液は、メッキ室の周壁面に沿い旋回しつつその底面側に向い流下する。そして、メッキ室がメッキ液で満たされると、メッキ室に開口する排出口を通じメッキ液排出管から排出され、メッキ液供給管から新たなメッキ液を供給することによりメッキ室は常に新鮮なメッキ液で満たされる。
【0015】
メッキ室の底面に達した旋回流動するメッキ液は、メッキ室に収納された粒子群をメッキ室の底面に接触させつつ旋回運動させる。その底面において陰極に接触した基材粒子は、メッキ液に浸漬する位置に配置された陽極との間でメッキ処理され、メッキ層が基材粒子の表面に形成される。ここで、旋回流動するメッキ液により粒子群は分散することなく互いに混合されながら底面に接触して転動しつつ底面上を旋回運動する。よって、基材粒子の凝集が抑止されるとともに基材粒子の表面の各部位がメッキ液に触れる機会が均等となり、その結果均一な厚みのメッキ層が形成される。なお、一旦旋回運動を始めた粒子は浮遊することなく、底面に間欠的な接触を繰り返しながら旋回運動を継続する。
【0016】
さらに、メッキ液の旋回流により基材粒子をメッキ室の底面に接触させつつ転動させるため、基材粒子は他の基材粒子と接触する確率が高まり、よって陰極と接触した基材粒子と高頻度で電気的に接続され、連続メッキに近い処理を行うことが可能となり、基材粒子に効率的にメッキ層を形成することができ、さらに基材粒子同士の接触により形成されたメッキ層が平滑化され、表面が極めて平滑でかつ均一な厚みのメッキ層を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記説明のとおり、本発明に係るメッキ装置によれば、従来技術の問題を解決し、表面に導電性を有する基材粒子に表面が滑らかで均一な厚みのメッキ層を効率的に形成可能なメッキ装置を提供するという本発明の目的を達成することができる。なお、上記メッキ装置の好ましい態様及びその効果は以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる第1実施態様のメッキ装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のメッキ装置およびその好ましい態様のメッキ装置の平面図である。
【図3】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の部分拡大図である。
【図4】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の部分拡大図である。
【図5】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の正面図である。
【図6】図1のメッキ装置の別の好ましい態様のメッキ装置の拡大正面図である。
【図7】本発明に係わる第2実施態様のメッキ装置の斜視図である。
【図8】第2実施態様のメッキ装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図9】本発明に係わる第3実施態様のメッキ装置の斜視図である。
【図10】本発明に係わる第4実施態様のメッキ装置の斜視図である。
【図11】図10のメッキ装置の動作を説明する図である。
【図12】第4実施態様のメッキ装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図13】本発明に係わる第5実施態様のメッキ装置の概略構成を示す図である。
【図14】コアボールのメッキ中の挙動を説明する図である。
【図15】図1のメッキ装置の実施例を説明する図である。
【図16】図1のメッキ装置の実施例を説明する別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るメッキ装置をその第1〜第5実施態様に基づき図面を参照しつつ説明する。下記の実施態様では、基材粒子であるCuを主体とした球形のコアボールの表面にSnを主体としたメッキ層を被覆するメッキ装置を例として説明するが、本発明はこれに限定されることなく例えば無電解メッキでニッケル等の導電性を有する金属層を表面に形成した樹脂又はセラミックス粒子その他表面に導電性を有する基材粒子の表面に金属被覆層を電気メッキ法で形成する場合に適用することができる。また、コアボールのように球状の基材粒子のみならず、例えば長軸と短軸を有する針状の基材粒子や形状的特徴のない不定形の基材粒子にも適用することができる。さらに、下記で説明するメッキ装置の各構成要素は、単独に又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0020】
[第1実施態様]
第1態様のメッキ装置の概略構成を示す正面図である図1及び図1の密閉蓋1Lを取り外した状態の平面図である図2(a)に示すように、メッキ装置1は、本体部1a、メッキ液供給管1e及びメッキ液排出管1cを介して本体部1aに接続されたメッキ液循環手段1b、直流電源回路1hを基本的な構成として備え、さらに望ましい構成としてコアボール供給手段1g、加振手段1iおよび磁力発生手段1sを備えている。
【0021】
本体部1aにおいて、符号1jは、円形状の底面1pとその底面1pに向かい縮径した円錐台形状の周壁面1qを有するメッキ室1mが形成されたメッキ槽である。メッキ液に対し耐食性を有する非導電性の絶縁物である樹脂等で構成されたメッキ槽1jは、上部が開口した碗型の容器1kと、上部開口を閉塞するように容器1kの上面に密着された密閉蓋1Lとを有している。この容器1kと密閉蓋1Lとで形成される空間がメッキ室1mを構成し、多数のコアボール91を含むボール群(粒子群)9と所定量のメッキ液Lがメッキ室1mに収納される。
【0022】
メッキ液供給管1eは、メッキ室1mの周壁面1qの接線方向にその軸心が沿い、メッキ室1mの上部にメッキ液供給口1fが開口するようにメッキ槽1jにその一端が水平に接続され、メッキ液排出管1cは、密閉蓋1Lの中央部においてメッキ室1mの軸芯と同軸にメッキ液排出口1dがメッキ室1mに開口するようにメッキ槽1jにその一端が接続され、それぞれの他端はメッキ液循環手段1bに接続されている。メッキ液循環手段1bは、図示しないメッキ液貯蔵タンク、メッキ液循環用ポンプ、メッキ液浄化用フィルタ及び流量制御弁等で構成されており、メッキ液循環手段1bから送り出されたメッキ液Lは、メッキ液供給管1eを流通してメッキ液供給口1fからメッキ室1mに供給され、図1、2(a)において破線aで示すようにメッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回流下する。また、メッキ液循環手段1bのメッキ液循環用ポンプや流量制御弁を調整してメッキ室1mに供給されるメッキ液Lの流速や流量を経時的に変化させることができる。なお、メッキ液循環手段1bは、メッキ液供給管1eを通じメッキ液Lを供給するだけではなく、メッキ液排出管1cを通じメッキ室1mからメッキ液Lを吸引可能なよう構成してもよい。さらに、上記メッキ液供給管1eを複数本設けてもよい。この場合、メッキ室1mの周壁面1qの同一円周上に例えば一定の角度ピッチで複数のメッキ液供給口1fが開口するようメッキ液供給管を配置してもよいし、図4(c)に示すメッキ装置22のように、旋回流下するメッキ液Lの螺旋状の流れaに沿い複数のメッキ液供給口22fが開口するようメッキ液供給管22eを配置してもよい。以上の構成によりメッキ液Lは、図1に示すように、下方に傾斜した周壁面1qに沿い旋回流動しつつ螺旋状に流下し、メッキ室1mの底面1pに達し、その後図において破線bで示すように上昇流となりメッキ液排出口1dを通じてメッキ液排出管1cから排出されメッキ液循環手段1bに戻る。
【0023】
なお、コアボール91は、密閉蓋1Lを開閉しメッキ室1mに都度供給してもよいが、図1に示すようにメッキ液供給管1eで構成される供給系の中に所定数のコアボール91を切り出す供給手段1gを設け、メッキ液供給管1eの管路を通じコアボール91をメッキ液Lとともにメッキ室1mに供給してもよい。この供給手段1gの具体的な構成は、第4態様のメッキ装置において詳細に説明する。
【0024】
符号1nは、容器1kの底部に配置された円板状の陰極であり、陰極1nの上面がメッキ室1mの底面1pとなるよう構成されている。直流電源回路1hの負極に接続された陰極1nは、例えばステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等で形成されている。ボール群9は、メッキ室1mを旋回流動するメッキ液Lにより、図において符号Cで示すように外周端から半径方向に所定の範囲の中で底面1pと接触しつつ旋回運動し、これによりコアボール91は底面1pの上を攪拌されながら転動する。
【0025】
ここで、図3(a)に示すようにメッキ室1mの底面3pの一部に露出するように陰極3nを配置しても、同図(b)に示すように底面3pに配置されたコアボール91に接するように陰極3mを配置してもよい。しかしながら、このように多数のコアボール91ののうちのごく一部にのみ接するよう陰極3n、3mを配した場合には、陰極3n、3mに接しないコアボール91は陰極3n、3mに接するコアボール91を介して通電されるため、コアボール91同士の接触抵抗により陰極3nから離れた位置にあるコアボール91の電位が低下して当該コアボール91における電流密度が低くなり、メッキ効率が低下する可能性がある。したがって、平面視で見たとき、陰極はボール群9と十分な接触面積を有することが好ましく、本実施態様のように円板形状に形成しておくことが望ましい。この場合には、容器1kそのものを陰極材料で形成し、容器1kの側面に耐食性及び絶縁性のある樹脂被覆を施し、容器1kの底面が陰極1nとして作用するように構成してもよい。
【0026】
一方で、図1および図2(a)に示すように、メッキ室1mの底面1pの全てを陰極1nで構成した場合には、メッキ層の形成速度が低下するおそれがある。すなわち、ボール群9は、旋回流動するメッキ液Lで底面1p(陰極1nの上面)の外周縁部の所定の領域Cを旋回運動するため、ボール群9の存在しない陰極1nの上面の中央部にもメッキが無駄に析出してしまうからである。したがって、図2(b)およびその中心線に沿う断面図である図2(c)において符号2nで示すように、陰極は、ボール群9が旋回運動する領域に対応し底面2pの外周縁に円環状に設けておき、底面2pの中央部2zは電気的絶縁材で構成しておくことが好ましい。なお、図2(b)(c)の場合には、中央部2zは容器1kと一体に構成されているが、例えば中央部2zを絶縁性セラミックスなどで別体に形成し、容器1kに組み込むようにしてもよい。
【0027】
さらに、図2(c)に示すように、陰極2nは、その表面が底面2pと同一平面を形成するように露出する第1の陰極2yのみならず、その表面が周壁面1qと同一の内周面を形成するように露出する第2の陰極2xを容器1kの基端部に備えていてもよい。この陰極2xと2yは、図示するように、横断面がくの字状となるよう各々の一端において結合させた陰極2nとして容器1kに組み込むことができる。かかる第2の陰極2xを設けることによりボール群9が接触することが可能な陰極2nの面積を増加させることができ、高いメッキ効率を維持したまま均一なメッキ層をコアボール91に形成することが可能となる。なお、陰極2nの表面におけるメッキの析出を防止しメッキ効率を高めるためには、図2(c)に示すように、陰極2nは、ボール群9が旋回流動する範囲Cの中に含まれることが望ましい。また、図2(b)で示す陰極2nは円周方向において連続的な円環形状に形成してあるが、一部に不連続部分があっても実質的に円環状に形成されていればよい。
【0028】
さらに、コアボール91の転動を助長することによりコアボール91同士の表面に形成されたメッキ層の外周面を摺り合わせ、当該外表面の平滑性を向上するため、メッキ室1mの底面1p(すなわち陰極1nの上面)を一定の粗面としておけばよい。一方で、メッキ室1mの底面1pと摩擦することにより生じるコアボール91の表面またはメッキ層の表面の損傷を防止する観点からは、当該底面1pは平滑な面としておいてもよい。また、図3(c)に示すように、メッキ室1mの底面1pの上におけるコアボール91の旋回運動を安定化させるためには、メッキ液Lの旋回方向に沿い形成されコアボール91を案内する円環状の案内溝4yが底面1pに形成されていることが望ましい。
【0029】
図1において符号1oは、メッキ室1mの上部に陰極1nと相対して配置された錫を含む陽極である。陽極1oは、メッキ室1mを満たすメッキ液Lに浸漬する位置に位置するよう、ステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等の支持部材1rを介して密閉蓋1Lに固定され、直流電源回路1hの正極に接続されている。
【0030】
ここで、陽極の好ましい態様について以下説明する。多数のコアボール91をメッキする場合には、全てのコアボール91の表面積の和は非常に大きなものとなる。この多数のコアボール91と陽極との間に一定の電流を流し、所定の電流密度(電流値をコアボール91の表面積の和で除した値である)を確保することにより、コアボール91に均一かつ効率的にメッキ層を形成するためには、陽極1oの下面と陰極1nの上面とが相対するよう配置し、陰極1nの上を旋回運動するボール群9の範囲Cを包含するよう円環形状に陽極1oを形成することが好ましい。さらに、本体部1aの上部右側部分の正断面視である図4(a)に示すように、陰極と相対する陽極14oの底面に凹凸を設けることにより、コアボール91の表面積に応じた面積を陽極14oに形成することができる。また、陽極の表面積をより増加させたい場合には、図4(b)のように陽極部15oを構成してもよい。この陽極部15oは、直流電源回路の正極に接続された多数の導電性粒子15yにより構成された陽極と、支持部材を介し密閉蓋1Lに固定され多数の導電性粒子15yを収納する略円環形状の導電性粒子収納容器15xを有している。好ましくは樹脂等の非導電性材料で構成されたメッシュ状をなす導電性粒子収納容器15xは、導電性粒子15yは通さずメッキ液は流通可能な開口を多数有し、図示しない陰極に底面が相対し、供給されるメッキ液の流れを阻害しないようメッキ液供給口1fよりも上方に配置されている。なお、導電性粒子収納容器15xは、ステンレススチール、チタン、白金メッキされたチタン等の導電性材料で構成してもよい。導電性粒子収納容器15xに収納する導電性粒子15yはコアボールにメッキすべき材料により適宜選択されるが、例えばコアボールに錫をメッキする場合には、錫からなる粒子が選択される。この態様の陽極部15oによれば、多数の導電性粒子15yにより陽極を構成するので上記平板状の陽極の場合に比べコンパクトながら大きな表面積を有する陽極を形成することができ、さらに、導電性粒子15yの個々の大きさや収納する個数を調整することにより陽極の表面積を自在に調整することができる。
【0031】
図1において符号1iは、容器1kの底面側に配置された加振手段である。本発明に係わるメッキ装置の好ましい態様として組み込まれた加振手段1iは具体的には所定の周波数で容器1kに振動を付与する振動手段であり、この振動によりコアボール91同士の付着や底面1pとコアボール91の付着を予防するとともに付着したコアボール91を分離し、コアボール91の凝集を防止する。
【0032】
符号1sは、メッキ槽1jの下方に配置された磁力発生手段である。磁力発生手段1sは、コアボール91が磁性を有する場合またはコアボール91に被覆されるメッキ層が例えばNiやFeなど磁性を有する場合に有効な構成要素であり、コアボール91またはメッキ層が形成されたコアボール91を磁力で下方に引き寄せ、メッキ室1mの底面1p(陰極1nの上面)に接触させつつ旋回運動させるように構成されている。なお、磁力発生手段1sは、メッキ槽1jの下方外周に設けてもよい。さらに、旋回領域Cの中にボール群9を留めコアボール91が分散することを防止するためには、磁力発生手段1sは、当該旋回範囲Cに対応する大きさの略円環形状の永久磁石などで構成することが好ましい。
【0033】
上記メッキ装置1の動作を説明する。まず、準備工程である。準備工程では、密閉蓋1Lを開けて所定数のコアボール91をメッキ室1mの底面1p(陰極1nの上面)に載置し、メッキ液Lをメッキ液循環手段1bのメッキ液貯蔵タンクに格納する。なお、コアボール91としては、酸洗処理し表面を清浄化したものを使用し、更に必要に応じ表面に下地層としてニッケルメッキ層を形成したものを使用してもよい。また、半田メッキするためのメッキ液は、例えばSn−Ag−Cu系の液組成を有する大和化成製の商品名「DAIN TINSIL SBB 2」やローム&ハース製の商品名「SOLDERON BP SAC5000」等に添加剤を添加して、例えばホウフッ化浴など周知のメッキ浴に適宜調整して使用することができる。ボール群9を構成する粒子はコアボール91に限定されず、例えばボール群9の攪拌を促進するための攪拌促進体として、例えば半田や鋼を主体とした導電性ダミーボール、樹脂やセラミックス等を主体とした非導電性ダミーボールを適量加えてもよい。
【0034】
密閉蓋1Lを閉じてメッキ室1mを密閉空間にした後、メッキ装置1を作動させる。メッキ装置1は、メッキ液循環手段1bを作動させてメッキ液供給管1eを通じてメッキ室1mへ所定の流量でメッキ液Lを供給する。メッキ室1mがメッキ液Lで満たされると、メッキ液Lは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾きに沿い底面1pに向い螺旋状に流下する旋回流aとなる。なお、メッキ液Lの供給の初期段階ではメッキ液Lの流れが不安定であるため、不安定なメッキ液Lの流れに乗りメッキ室1mの外にコアボール91が流出する場合がある。このコアボール91の流出を防止するためには、準備工程においてメッキ室1mに予めメッキ液Lを満たしておき、その後メッキ室1mにメッキ液Lを供給するようにすれば好ましい。また、メッキ液Lの供給の初期段階ではメッキ液Lの流量を小さくしておき、徐々に所定の流量に増加するようにすれば好ましい。
【0035】
下方に向い縮径する円錐台形状をなすメッキ室1mの周壁面1qに沿いメッキ室1mを旋回流下するメッキ液Lは底面1pに近づくに従い旋回速度が増加し、底面1pに達する。底面1pに達したメッキ液Lの旋回流aは、底面1pに接触しているボール群9を当該底面1pに押し付けつつ旋回運動させる。ここで、ボール群9に含まれるコアボール91は、底面1p、すなわち直流電源回路1hの負極に接続された陰極1nの上面に接触しているので、陽極1oとの間でメッキ処理され、その表面にはメッキ層が形成される。そして、メッキ室1mの底面1pに達したメッキ液Lは、底面1pの中央部で上昇流bとなりメッキ液排出口1dを通じてメッキ液排出管1cから排出されメッキ液循環手段1bに戻るため、常に新鮮なメッキ液Lがメッキ室1mに供給され、メッキ室1mの中のメッキ液Lの状態を常に一定とすることができ、その結果コアボール91の表面に均一な厚みのメッキ層が形成される。なお、メッキ室1mがメッキ液Lで満たされた後に、メッキ液排出管1cを通じてメッキ液Lを吸引するようにすれば、メッキ液Lの旋回流がより整流化され、コアボール91の旋回運動が安定するので望ましい。
【0036】
メッキ室1mの底面1pに接触しつつ旋回運動するコアボール91は底面1pの上を転動し、コアボール91同士が擦り合うように衝突するので、コアボール91同士が付着しがたくコアボール91の凝集が防止され、かつ転動によりコアボール91の表面が底面1pに触れる機会が均等になるので、均一な厚みのメッキ層が形成される。ここで、メッキ処理の過程において、メッキ層は、直接的又は他のコアボール91を介して間接的に陰極1nへ触れる毎に序々にコアボール91の表面に形成されていくと推定される。そのため、メッキ処理の初期段階では表面の一部にのみメッキ層が形成されている状態となっている。コアボール91の転動が充分ではない場合には、図14(a)に示すように、突起したメッキ層mがコアボール91に被覆された金平糖状のCuコアボールが形成される場合があった。このメッキ層の突起した部分は、初期にコアボール91の表面の一部に形成されたメッキ層を起点として選択的にメッキ層が形成された結果であると想定される。しかしながら、コアボール91を充分に転動させ、コアボール91同士が擦り合うように衝突させることにより、図14(b)に示すように、コアボール91aの表面の一部に形成されたメッキ層m1を、転動する他のコアボール91bで擦り合わせて押し広げるというメッキ層の表面の平滑化効果が生じて表面の一部に選択的にメッキ層が形成されることを防止し、表面が極めて平滑でメッキ層の内部にボイドの少ない均一な厚みのメッキ層を形成することができる。このようなメッキ層を有し極めて真球度の高いCuコアボールは、フリップチップ用の接続部材として使用される場合に特に好適である。
【0037】
なお、図1に示すコアボール供給手段1gを用いてコアボール91をメッキ室1mに供給した場合には、コアボール91は旋回流動するメッキ液Lにより旋回運動し、遠心力で周壁面1qに押し付けられつつ下降し、メッキ室1mの底面1pへ下降し、そこで安定した旋回運動を継続する。
【0038】
上記の状態で所定時間、コアボール91をメッキ処理し、所定厚みの半田メッキ層を有するCuコアボールが形成される。メッキ液循環手段1bのメッキ液循環用ポンプや流量調整弁を適宜調整し、メッキ処理中に供給されるメッキ液Lの流量や流速を経時的に変化させたり、容器1kを介して加振手段1iでボール群91に振動を付与すれば、コアボール91の凝集防止の観点から有利である。
【0039】
上記メッキ装置1の更に好ましい態様のメッキ装置について図5及び6を参照して説明する。なお、図5及び6において、上記メッキ装置1と同一の構成要素については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0040】
図5に示すメッキ装置5は、密閉蓋1Lの中央部を貫通しメッキ室1mの中に突き出た状態となるようメッキ液排出管5cを配置し、メッキ液排出口5dを軸芯方向においてメッキ室1mの中間部、具体的にはメッキ液排出口5dをメッキ液供給口1fよりも下方に位置させ、更にメッキ液排出管5cを矢印dで示すように軸心方向に沿い移動できるようにした態様である。図5に示すように、メッキ液排出管5cの外周面に陽極5oを配置する場合には、メッキ液排出管5cの外周面から突出しないように配置することが望ましい。かかるメッキ装置5によれば、メッキ液排出口5dはメッキ室1mの底面1pに近接しているので、メッキ液Lの上昇流bは底面1pの近くで排出され、上昇流bが旋回流aに与える影響が抑制され、底面1pにおけるコアボール91の旋回運動を安定させることが可能となる。更に、メッキ液Lの供給の初期段階においてメッキ室1mの旋回流aが安定するまではメッキ液排出管5cの密閉蓋1Lからの突出長さを短くしておき、旋回流が安定した後にメッキ液排出管5cを下方に移動させて密閉蓋1Lからの突出長さを長くし所定位置に位置決めすることで、メッキ室1mへメッキ液Lを導入するメッキ処理前の段階からメッキ処理が完了するまで、メッキ室1mの外へのコアボール91の流出を防止できる。なお、後述する第2〜第4態様のメッキ装置のように、メッキ室を旋回流動するメッキ液を整流化する構成やメッキ室へコアボールを供給する構成を備えたメッキ装置の場合には、メッキ液排出管5cは上下方向に移動せず、図示のごとく底面1pの上方近傍にメッキ液排出口5dが配置されるよう密閉蓋1Lに固定されていてもよい。
【0041】
図6(a)に示すメッキ装置は、半径方向において中心部が周縁部に対し高くなるよう円錐形状に底面6p(陰極6nの上面)をメッキ室1mに形成した態様である。かかる態様のメッキ装置によれば、ボール群9は、底面6pの高さの低い周縁部で安定して旋回運動することとなり、底面6pにおけるボールの濃度を向上させることができる。なお、同図(b)に示すように、半径方向において中央部が周縁部に対し高くなるよう円柱状の突起7yを有する底面7p(陰極7nの上面)をメッキ室1mに形成しても同様な作用効果を奏することができるが、この場合にはメッキ液Lの流動を阻害しなよう突起7yの上部周縁にテーパ面を形成しておくことが望ましい。
【0042】
[第2実施態様]
以下第2態様のメッキ装置について図7および8に基づき説明する。なお、図7および8において、上記第1態様のメッキ装置1およびその好ましい態様のメッキ装置5等と同一の構成要素については同一符号を付しており、詳細な説明を省略する(以下第3〜第5態様のメッキ装置について同じ。)
【0043】
図7(a)に示すように、第2態様のメッキ装置8は、第1態様と同様に形成されたメッキ室1mの中に案内手段8vを有する点で第1態様のメッキ装置1と相違している。図7(a)の案内手段8vは、メッキ液供給口1fを通じ供給されたメッキ液Lをメッキ室1mの底面1pに向い案内するように構成されている。すなわち、案内手段8vは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ底面1pに向い流下するメッキ液Lの流線aに沿った方向に伸びる螺旋が形成された非導電性材料からなる案内板8wである。上部8xがメッキ液供給口1fの下方に、下部8yがメッキ室1mの底面1pと所定の間隙を介し配置された案内板8wは、密閉蓋1Lを縦方向に貫通するメッキ液排出管5cを中央に取り巻きつつその外周面が周壁面1qに密接している。なお、メッキ液Lを円滑にメッキ室1mから排出するためには、案内手段8xの下端は、メッキ液排出口より上方にあることが好ましい。
【0044】
かかる案内板8wによれば、メッキ液供給口1fから供給されたメッキ液Lは、案内板8w、メッキ液排出管5cの外周面およびメッキ室1mの周壁面1qにより区画された螺旋状の流通通路8zの中を破線aで示すように上方から下方に向けて流動し、メッキ室1mの底面1pに案内される。ここで、案内板8wは、メッキ液供給口1fから供給され旋回流下するメッキ液Lの流線aに沿って螺旋が形成されており、かつ、流通通路8zは一本の通路となるよう形成されているので、メッキ液供給口1fから供給されるメッキ液Lや流動するメッキ液Lの相互の干渉により旋回流下するメッキ液Lに乱流を生じせしめることなく、整流化されたメッキ液Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図において符号b2で示すように、メッキ液排出管5cから排出されるため上昇流としてメッキ液排出口に向うメッキ液Lの流れbの一部がメッキ液排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内板8wの下部8yで遮られるので、旋回流下するメッキ液Lの流れaを乱すことがない。その結果、底面1pにおけるボール群の旋回運動が安定し、均一なメッキ層を有するCuコアボールを形成することが可能となる。
【0045】
なお、メッキ装置8の変形例である図7(b)に示すメッキ装置16のように、メッキ液Lが周壁面1qを旋回する態様により、案内板16wは、メッキ液排出管5cの外周面との間に一定の間隙16zが形成されるよう構成し、メッキ室1mに配置してもよい。
【0046】
図8に示すメッキ装置10は第2態様のメッキ装置の他の例であり、案内手段10vとして案内体10wを有している。底面10zを有する略円錐台形状の非導電性材料からなる案内体10wは、底面1pに向い縮径した略円錐形状のメッキ室1mの周壁面1qに倣う外周面10xを有している。上部が密閉蓋1Lに接合された案内体10wは、密閉蓋1Lに固定され縦方向に伸びるメッキ液排出管5cを中央部に有し、当該メッキ液排出管5cを外周面10xが包囲している。そして、案内体10wは、水平方向においては、その外周面10xが一定寸法gの間隙10yを介しメッキ室1mの周壁面1qと対向するようメッキ室1mの中に配置されている。また、縦方向においては、ボール群9がメッキ室1mの底面1pの上で旋回運動可能な領域を設けるため、案内体10wの底面10zがメッキ室1mの底面1pに対し所定の間隙を有するように配置されている。なお、本態様のメッキ装置10では、錫を主体として構成された陽極10oは、案内体10wの底面10zに設けられている。
【0047】
上記案内手段としての案内体10wをメッキ室1mの中央部に配置することにより、上記案内板8wと同様な作用を奏することができる。すなわち、メッキ液供給口1fから供給されたメッキ液Lは、案内体10wの外周面10xとメッキ室1mの周壁面1qとで形成された間隙10yを破線aで示すように上方から下方に向けて旋回流下し、メッキ室1mの底面1pに案内される。旋回流下するメッキ液Lは、案内体10wの外周面10xとメッキ室1mの周壁面1qとで囲まれた比較的狭い間隙10yの中を流動するので、メッキ液供給口1fから供給されるメッキ液Lや流動するメッキ液Lの相互の干渉により旋回流下するメッキ液Lに乱流を生じせしめることなく、整流化されたメッキ液Lが底面1pに到達することとなる。さらに、図示b2として示すようにメッキ液排出管5cから排出されるため上昇流としてメッキ液排出口5dに向うメッキ液Lの流れbの一部がメッキ液排出管5cの外に存在する場合でも、その流れは案内体10wの底面10zで遮られるので、旋回流下するメッキ液Lの流れaを乱すことがない。その結果、底面1pにおけるボール群の旋回運動が安定し、均一なメッキ層を有するCuコアボールを形成することが可能となる。なお、上記案内体10wと周壁面1qとの間隙10yに上記案内板8wを組み込んでもよい。
【0048】
また、図4(b)を参照して説明した陽極部を上記案内体を有するメッキ装置に組み込むことができる。すなわち、図8(b)のメッキ装置21に示すように、メッシュ状の非導電性材料で構成された案内体21wは、陽極部の導電性粒子収納容器を兼ねており、その内部に陽極を構成する多数の導電性粒子21oを収納し、導電性粒子21oは通さずメッキ液がわずかに流通可能な微小な開口を多数有している。なお、案内体21wに設ける開口は、導電性粒子21oの大きさ未満であり極めて小さくメッキ液が貫流する際の抵抗が大きいので、メッキ液の上昇流が流速を保ったまま案内体21wを通過し、メッキ液の旋回流を乱すことはない。
【0049】
[第3実施態様]
以下第3態様のメッキ装置及びその変形例について図9に基づき説明する。第3態様のメッキ装置は、第1態様と同様に形成されたメッキ室1mの中に整流手段を有する点で第1態様のメッキ装置1と相違している。以下、整流手段の各種態様について説明する。
【0050】
図9(a)の整流手段17vは、メッキ液供給口1fから供給され、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回しつつ流下するメッキ液Lの流れを一定の方向に整えて整流する非導電性材料からなる板状部材17wである。メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回流下するメッキ液Lの流線に沿った方向に伸びる螺旋が形成された板状部材17wは、その上部17xがメッキ液供給口1fの下方に、下部17yがメッキ室1mの底面1pと所定の間隙を介し、外周面が周壁面1qに密接するように配置されている。かかる板状部材17wによれば、メッキ室1mの周壁面1pに沿い旋回するようにメッキ液供給口1fから供給されたメッキ液Lは、その旋回流下する流れが板状部材17wにより整流されつつ安定して維持され底面1pに至り、メッキ室1mの底面1pに接触しているボール群を当該底面1pに押し付けつつ旋回運動させる。
【0051】
なお、上記整流手段17vの変形例である図9(b)に示すように、間隙部18tを介しつつ複数のフィン状の板状部材18q、18r、18sを上記板状部材17wと同様にメッキ液Lの旋回流の流線沿い螺旋状に一列に配置して整流手段18vを構成してもよい。また、図9(c)に示すように、メッキ液Lの旋回流の流線に沿い螺旋状に一列に複数の板状部材19q〜19rを配置するとともに、板状部材19q〜19rの下方に、板状部材19q〜19r同士の間隙部19uを埋めるように板状部材19s〜19tを千鳥状に一列に配置することで2列の板状部材を有する整流手段19vを構成してもよい。
【0052】
[第4実施態様]
以下第4態様のメッキ装置及びその変形例について図10〜12に基づき説明する。第4態様のメッキ装置は、メッキ室にボール群を供給する供給手段と、そのボール群を回収する回収手段を有する点で第1態様のメッキ装置と相違している。以下供給手段および回収手段を中心に第4態様のメッキ装置を説明する。なお、供給手段と回収手段は各々単独にメッキ装置に組み込んでもよい。
【0053】
まず、供給手段について説明する。図10(a)に正面断面図、同図の容器1kから密閉蓋1Lを取り外した状態である平面図である同図(b)に示すように、本態様の供給手段11qは、メッキ室1mに供給すべき多数のコアボール92を収納する収納部11rと、各々の一端が収納部11rに接続され他端がメッキ槽1jに接続されたメッキ液流入管11uおよびボール供給管11vとを有している。なお、図10(a)においてA−A線より上は、図10(b)に示すメッキ槽1jの中心線Eより上側を見たB矢視図、A−A線より下は中心線Eより下側を見たC矢視図である。
【0054】
収納部11rは、多数のコアボール92を収納可能な容器11sと、容器11sの上部開口を閉塞する蓋11tとで構成されており、蓋11tを開閉することによりコアボール92を容器11sに供給する。その収納部11rの側壁には、メッキ液流入管11uの一端がバルブ11wを介して接続されており、さらにメッキ液流入管11uの他端はその開口(メッキ液流入口)11yがメッキ室1mに開口するようメッキ槽1jに接続されている。ここで、メッキ液流入管11uは、その軸心が、メッキ液供給管1eとほぼ同一線上、すなわちメッキ槽1jの上部であってメッキ室1mの周壁面1qの接線方向に沿い、そのメッキ液流入口11yが旋回するメッキ液の流れaを迎え入れるように配置されている。これにより、平面視においてメッキ室1mの中心線Fを介しメッキ液流入口11yとメッキ液供給口1fとは相対する状態となるので、図示破線aで示すようにメッキ液供給口1fから周壁面1qに沿い旋回するように供給されたメッキ液は、メッキ液流入口11yを通じメッキ液流入管11uに流入する。
【0055】
収納部11rの底部には、ボール供給管11vの一端が接続されており、ボール供給管11vの他端はその開口(ボール供給口)11zがメッキ室1mの底部に開口するようメッキ槽1jに接続されている。ここで、ボール供給管11vは、図10(b)に示すように、平面視においてメッキ室1mの中心線Eを介しメッキ液流入管11uと反対の位置に、その軸心がメッキ室1mの接線方向に沿い、そのボール供給口11zが旋回するメッキ液の流れaに沿うように配置されている。これにより、メッキ液供給口1fから供給され周壁面1qに沿い流下し底面1pの上を旋回流動するメッキ液の流れaに円滑に乗るようにコアボール92を供給することができる。なお、図において符号11xは、供給すべきコアボール92を収納部11rの中に保持するための仕切り弁である。この仕切り弁11xは、コアボール92を自動的にメッキ室1mへ供給するために設けられた好適な構成であり、手動でコアボールを供給する場合には必ずしも必要ではない。
【0056】
次に、メッキ処理後のコアボール91を含むボール群9の回収手段11aについて説明する。本態様の陰極11nは、回収手段11aの構成要素の一部をなしており、容器1kの下部に形成された円筒状部11Lの内面に摺動可能に嵌め合いされ、円板状をなすその外周面にはメッキ液の漏出を防止するため不図示のOリングが設けられている。そして、円筒状部11Lの内面には、メッキ層が形成されたコアボールを含むボール群を回収するボール回収管11bの一端の開口(ボール回収口)11cが開口しており、ボール回収管11bの他端は回収容器11eに接続されている。なお、図10(b)に示すように、ボール回収管11bは、平面視においてメッキ室1mの中心線Fを介し上記ボール供給管11vと反対の位置に、その軸心がメッキ室1mの接線方向に沿い、そのボール回収口11cが旋回するメッキ液の流れaを迎え入れるように配置されている。
【0057】
ここで、陰極11nは、エアシリンダー等の上下駆動部11dにより符号hで示す上下方向に円筒状部11Lの中を移動し、上昇端の位置においてメッキ室1mの周壁面1qの下端縁にその上面11p(メッキ室1mの底面ともなる。)が接するとともに、その外周面でボール回収口11cを閉じ、下方端の位置においてボール回収口11cを開くように構成されている。なお、本態様のメッキ装置11では、陰極11nをバルブの弁のごとく用い、陰極11nを上下移動させることによりボール回収口11cを開閉させているが、第1態様のメッキ装置1のようにメッキ室の底部に陰極を固定し、バルブを介してメッキ槽にボール回収管を接続するとともにボール回収口がメッキ室に直接開口するよう回収手段を構成し、バルブの開閉によりコアボールを回収するようにしてもよい。この場合には、メッキ室の底面を旋回するコアボールの運動を妨げないよう、ボール回収口は、メッキ室の底面より上方に配置することが好ましい。
【0058】
上記供給手段11qおよび回収手段11aを含むメッキ装置11の動作について図11を参照しつつ説明する。図11(a)に示す収納部11rの蓋11tを開けて所定数のコアボール92を容器11sに供給し、その後蓋11tを閉じる。この時、バルブ11wおよび仕切り弁11xは閉じられた状態である。また、上下駆動部11dにより上昇された陰極11nは上昇端の位置にあり、ボール回収口11cは閉じられた状態となっている。
【0059】
次いで、メッキ装置11を作動させてメッキ液供給口1fからメッキ液Lを供給する。一定時間経過してメッキ室1mがメッキ液Lで満たされると、図11(a)に示すように、メッキ液Lは、メッキ室1mの周壁面1qに沿い旋回するとともに周壁面1qの傾斜に沿い底面11pに向い螺旋状に流下する安定した旋回流aとなる。
【0060】
メッキ液Lを供給し一定時間経過しメッキ室1mにおけるメッキ液Lの流動状態が安定した後、メッキ装置11は、バルブ11wを開き、図11(b)において矢印eのように旋回流動するメッキ液Lの一部をメッキ液流入管11uから収納部11rにメッキ液流入口11yを通じて流入させるとともに、仕切り弁11xを開く。すると、収納部11rに収納されたコアボール92は、流入したメッキ液Lにより収納部11rから押出され、メッキ液Lとともにボール供給管11vの管路の中を流れ、矢印fのようにボール供給口11zから排出されメッキ室1mへ供給される。メッキ装置11は、全てのコアボール92がメッキ室1mへ供給された後、バルブ11wおよび仕切り弁11xを閉じる。ここで、ボール供給管11vは上記のとおり配置されているので、ボール供給口11zから供給されたコアボール92はメッキ液Lの旋回流aに乗り、その後メッキ室1mの底面11pの上を円滑に旋回運動し、メッキ処理されることとなる。このように、メッキ液Lをメッキ室1mに供給してから一定時間経過し、メッキ室におけるメッキ液の旋回流動が安定化した後にコアボール92をメッキ室1mへ供給するので、メッキ室1mからコアボール91が流出することが少なく、高い歩留まりでコアボール91にメッキすることが可能となる。
【0061】
なお、手動でコアボール92を供給する場合には、ボール供給管11vの経路の中に仕切り弁11xを設けず、メッキ液Lの流動状態が安定化した後、バルブ11wを開き、メッキ液流入管11u、収納部11rおよびボール供給管11vの経路でメッキ液Lを流通させた後に、収納部11rに所定数のコアボール92を供給するようにすればよい。
【0062】
次いで、図11(c)に示すように、メッキ装置11が、上下駆動部11dにより陰極11nを下降端まで下降させボール回収口11cを開くと、メッキ層が形成されたコアボール91を含むボール群9はボール回収口11cを通じて矢印iで示すようにボール回収管11bに流れ込み、その後回収容器11eに回収される。なお、メッキ液排出管5cにバルブを設けておき、陰極11nの下降とともに当該バルブを絞るようにすれば、メッキ液Lの多くの部分はボール回収管11bを通じて排出されるので、より円滑にボール群9を回収することができる。
【0063】
図12に示すメッキ装置12は、第4態様のメッキ装置の他の例であり、メッキ液供給管1eの経路上に設けられた供給手段12qを有している。すなわち、供給手段12qのメッキ液流入管11uの一端はメッキ液供給管1eの上流側に接続され、ボール供給管11vの一端はメッキ液供給管1eの下流側に接続されており、それらの他端はバルブ11wおよび仕切り弁11xを介して収納部11rに接続される構成となっている。かかる供給手段12qによれば、メッキ室1mにおけるメッキ液Lの流動状態が安定した後にバルブ11wおよび仕切り弁11xを開くと、メッキ液供給管1eを流れるメッキ液Lの一部が、メッキ液流入管11uを通じて収納部11rに流入する。すると、収納部11rに収納されているコアボール92は、流入したメッキ液Lにより押し出され、ボール供給管11vを通じてメッキ液供給管1eに流入し、メッキ液Lとともにメッキ液供給口1fからメッキ室1mに供給されることとなる。なお、供給手段12qにおいてメッキ液を円滑に流通させるためには、メッキ液流入管11uが接続されるメッキ液供給管1eの上流側の内径を太くし、ボール供給管11vが接続される下流側の内径を上流側より細くすることが望ましい。さらに、供給手段12qの中に滞留することなくコアボール92をメッキ液供給管1eへ流入させるためには、収納部11rの底面とメッキ液流入管11uおよびボール供給管11vとの底面との間には段差がないようにしておくことが好ましい。
【0064】
[第5実施態様]
以下第5態様のメッキ装置について図13を参照し説明する。なお、図13(a)は、第5態様の一例であるメッキ装置の概略構成を示す正面断面図、同図(b)は同図(a)のD矢視図、図13(c)は、第5態様のメッキ装置の他の例の概略構成を示す正面断面図、同図(d)は同図(c)のE矢視図である。
【0065】
上記第1〜第4態様のメッキ装置では、コアボールが接触しつつ周回可能なメッキ室の底面として円形状の底面と底面に向い縮径するように底面の周縁に立設した略円錐台形状の周壁面とを備えたメッキ室、断面円形状のメッキ室の接線方向に沿いメッキ液供給口が開口するよう軸心が水平に配置されたメッキ液供給管、メッキ室の軸心に沿い配置されたメッキ液排出管の各構成要素を有するメッキ装置について説明したが、本発明はこれら望ましい態様に限定されることなく、第5態様のメッキ装置でも実現することが可能である。
【0066】
第5態様の一例であるメッキ装置13は、図13(b)に示すように、コアボール91が周回可能な底面として略楕円形状の底面13pを有し、底面13pの周縁に立設する周壁面13qは縦方向において同一断面、すなわち直管状となるようメッキ室13mは形成されている。さらに、メッキ室13mにメッキ液Lを供給するメッキ液供給管13eは、周壁面13qに沿い旋回流下するメッキ液Lの流れを生じさせるため、その軸心を下方に向けた状態でメッキ槽1jに接続されている。なお、周壁面13qに対する取付角度を自在に設定可能な継手などを介しメッキ液供給管13eをメッキ槽1jに接続するよう構成すれば、メッキ処理すべきコアボールの大きさや数量などに応じメッキ液Lが旋回流下する角度を適宜設定できるので好ましい。また、メッキ室13mからメッキ液Lを排出するメッキ液排出管1cは、メッキ液Lの上昇流bを円滑にメッキ室13mから排出するためには第1態様のメッキ装置1と同様に密閉蓋1Lの中央部に設けられていることが好ましいが、メッキ液排出管の配置はこれに限定されることなく、図示破線で示すメッキ液排出管13cのように密閉蓋1Lの外周よりに設けメッキ室13mからオーバーフローするメッキ液Lを排出させてもよい。
【0067】
上記メッキ装置13の動作を説明する。メッキ室13mの底面13pにボール群9を載置し、その後密閉蓋1Lを閉じてメッキ室13mを密閉空間にし、メッキ装置13を作動させる。メッキ装置13は、メッキ液供給管13eを通じてメッキ室13mへメッキ液Lを供給する。メッキ室13mがメッキ液Lで満たされると、上記のように配置されたメッキ液供給管13eから供給されるメッキ液Lは、メッキ室13mの周壁面13qに沿い螺旋状に旋回流下する旋回流aとなる。旋回流下しつつ底面13pに達したメッキ液Lは、底面13pに接触しているボール群9を当該底面13pに押し付けつつ旋回運動させ、コアボール91の表面にメッキ層を形成させる。上記第1態様のメッキ装置1と同様に、メッキ室13mの底面13pに接触しつつ旋回運動するコアボール91は底面13pの上を転動するので、コアボール91同士が付着しがたく凝集が防止され、かつ転動によりコアボール91の表面が底面13pに触れる機会が均等になるので、均一な厚みのメッキ層が形成される。メッキ室13mに供給されたメッキ液Lは、メッキ液排出管1cから排出されるので、常に新鮮なメッキ液Lがメッキ室13mに供給され、もって均一な厚みのメッキ層が形成される。
【0068】
図13(c)(d)に示す第5態様の他の例であるメッキ装置20は、コアボール91が周回可能な底面として円環状の底面20pと、底面20pの外周縁に沿い立設した外周壁面20qと、内周縁に沿い立設した内周壁面20xとを有するメッキ室20mを有し、メッキ室20mの断面は縦方向において同一となるようメッキ室20mは形成されている。かかるメッキ装置20においても基本的に上記メッキ装置13と同様な動作でコアボール91にはメッキ層が形成されるが、底面20pを構成する陰極20n自体が円環状に形成されているので、図2(b)(c)を参照して説明した陰極構造と同様にメッキ効率を向上できるという作用効果を奏することができる。
【0069】
[実施例]
第1態様のメッキ装置1に、直径50μmのコアボールを50万個投入し、厚み20μmを目標値として、上記説明した方法により所定の条件でメッキ処理し、Sn−Ag−Cu系のメッキ層を形成したCuコアボールを得た。50万個のコアボールおよびCuコアボールの中から600個の標本を抽出し、測定した直径および真円度の分布を図15に示す。また、第1態様のメッキ装置1でメッキした場合のCuコアボールおよび先行技術文献1のメッキ装置でメッキした場合のCuコアボールの外観写真および断面写真を図16に示す。
【0070】
図15に示すように、コアボールの直径の平均値50.4μmに対しCuコアボールの直径の平均値はほぼ90μmで、目標値である20μmの厚みのメッキ層が形成された。また、Cuコアボールの真円度は0.9965で、基材粒子であるコアボールの真円度0.9960を上回る高い真円度を有するCuコアボールが形成された。加えて、Cuコアボールの直径および真円度の標準偏差は各々1.776、0.0018で、コアボールの2.108、0.0075よりも低く、直径および真円度のバラツキの少ないCuコアボールを得ることができた。
【0071】
図16(a)(b)に示すように、第1態様のメッキ装置1でメッキ層が形成されたCuコアボールは、非常に表面が滑らかで平滑化され、かつコアボールの表面にメッキ層が均一に形成され、さらにメッキ層の内部にボイドが生じていない。一方で、同図(c)(d)に示すように、先行技術文献1のメッキ装置でメッキ層が形成されたCuコアボールは、ボイドの原因となる凹凸がメッキ層の表面に発生し、その凹凸のために真円度が低くかつ直径および真円度のバラツキも大きいということが確認された。
【符号の説明】
【0072】
1(5、8、10、11、12、13、16、17,18,19、20、21、22):メッキ装置
1a(5a):本体部
1j:メッキ槽
1m(13m、20m):メッキ室
1n(2n、3n、3m、6n、7n、11n、13n、20n):陰極
1o(5o、10o、14o、15o):陽極
1b:メッキ液循環手段
1c(5c、13c):メッキ液排出管
1e(13e、22e):メッキ液供給管
1g(11q、12q):供給手段
1h:直流電源回路
1i:加振手段
1s:磁気発生手段
8v(10v、16v):案内手段
8w(16w):案内板
10w:案内体
11a:回収手段
17v(18v、19v):整流手段
17w(18w、19w):板状部材
91:コアボール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、前記基材粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室を有するメッキ槽と、前記メッキ室の底面より上方に開口する供給口を有し前記メッキ室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口からメッキ液を供給するメッキ液供給管と、前記メッキ室に開口する排出口を有するメッキ液排出管と、前記メッキ室の底面に配置された前記基材粒子に接触する陰極と、前記メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを有するメッキ装置。
【請求項2】
前記メッキ室の底面は円形状であるとともに前記メッキ室の周壁面は前記メッキ室の底面に向い縮径した円錐形状をなし、前記メッキ液排出管は前記メッキ室の軸芯と同軸に配置されている請求項1に記載のメッキ装置。
【請求項3】
前記排出口は前記供給口よりも下方に配置されている請求項2に記載のメッキ装置。
【請求項4】
前記メッキ液排出管は、前記メッキ室の軸芯方向に沿い移動可能に構成されている請求項2または3のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項5】
前記陰極は、前記メッキ室の底面の周縁部に略円環状に配置されている請求項2乃至4のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項6】
前記陰極は、前記メッキ室の周壁面の基端部に略円環状に配置されている請求項2乃至5に記載のメッキ装置。
【請求項7】
前記メッキ室の底面は、その半径方向において、その中心部が周縁部に対し高くなるように形成されている請求項2乃至6のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項8】
前記陽極は、前記電源に接続された多数の導電性粒子からなる請求項1乃至7のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項9】
前記メッキ液供給管の供給口から供給されたメッキ液を前記メッキ室の底面に向い案内する案内手段を前記メッキ室に有する請求項1乃至8のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項10】
前記案内手段は、螺旋状に設けられた案内板である請求項9に記載のメッキ装置。
【請求項11】
前記案内手段は、前記メッキ室の周壁面に倣い外周面が形成され、前記周壁面と前記外周面との間に所定の間隙を有する案内体である請求項9に記載のメッキ装置。
【請求項12】
前記メッキ液供給管の供給口から供給されたメッキ液を整流する整流手段を前記メッキ室に有する請求項1乃至11のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項13】
前記整流手段は、前記メッキ室の周壁面に設けられた板状部材である請求項12に記載のメッキ装置。
【請求項14】
前記メッキ液排出管の排出口からメッキ液を吸引可能に構成された請求項1乃至13のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項15】
前記メッキ液供給管から供給されるメッキ液の流速又は流量が経時的に変化するよう構成されている請求項1乃至14のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項16】
前記メッキ室の底面には、前記メッキ液供給管から供給されたメッキ液の旋回方向に沿い形成され前記粒子群を案内する案内溝が形成されている請求項1乃至15のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項17】
前記メッキ槽に接続された加振手段を有する請求項1乃至16のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項18】
前記メッキ室の下部または下方側部に配置された磁力発生手段を有し、軟磁性を有する前記基材粒子を前記磁力発生手段の磁力によりメッキ室の底面に引き付けるよう構成されている請求項1乃至17のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項19】
直接的に又は前記メッキ液供給管を介して間接的に前記メッキ室に接続され、前記メッキ室に前記粒子群を供給する供給手段を有する請求項1乃至18のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項20】
前記供給手段は、前記粒子群を収納する収納部と、一端が前記収納部に接続されるとともに前記メッキ室の周壁面であって前記底面側に他端が接続された基材粒子供給管と、一端が前記収納部に接続されるとともに前記メッキ室の周壁面であって前記基材粒子供給管の他端よりも上方に他端が接続されたメッキ液流入管を有する請求項19に記載のメッキ装置。
【請求項21】
前記メッキ室に収納された前記粒子群を回収する回収手段を有する請求項1乃至20のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項1】
表面に導電性を有する基材粒子のメッキ装置であって、前記基材粒子が接触しつつ周回可能な底面とその底面の周縁に沿い立設した周壁面とを備え前記基材粒子を含む粒子群とメッキ液とを収納可能なメッキ室を有するメッキ槽と、前記メッキ室の底面より上方に開口する供給口を有し前記メッキ室の周壁面に沿い旋回するように前記供給口からメッキ液を供給するメッキ液供給管と、前記メッキ室に開口する排出口を有するメッキ液排出管と、前記メッキ室の底面に配置された前記基材粒子に接触する陰極と、前記メッキ室に収納されたメッキ液に浸漬する位置に配置された陽極と、前記陰極および陽極に接続された電源とを有するメッキ装置。
【請求項2】
前記メッキ室の底面は円形状であるとともに前記メッキ室の周壁面は前記メッキ室の底面に向い縮径した円錐形状をなし、前記メッキ液排出管は前記メッキ室の軸芯と同軸に配置されている請求項1に記載のメッキ装置。
【請求項3】
前記排出口は前記供給口よりも下方に配置されている請求項2に記載のメッキ装置。
【請求項4】
前記メッキ液排出管は、前記メッキ室の軸芯方向に沿い移動可能に構成されている請求項2または3のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項5】
前記陰極は、前記メッキ室の底面の周縁部に略円環状に配置されている請求項2乃至4のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項6】
前記陰極は、前記メッキ室の周壁面の基端部に略円環状に配置されている請求項2乃至5に記載のメッキ装置。
【請求項7】
前記メッキ室の底面は、その半径方向において、その中心部が周縁部に対し高くなるように形成されている請求項2乃至6のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項8】
前記陽極は、前記電源に接続された多数の導電性粒子からなる請求項1乃至7のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項9】
前記メッキ液供給管の供給口から供給されたメッキ液を前記メッキ室の底面に向い案内する案内手段を前記メッキ室に有する請求項1乃至8のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項10】
前記案内手段は、螺旋状に設けられた案内板である請求項9に記載のメッキ装置。
【請求項11】
前記案内手段は、前記メッキ室の周壁面に倣い外周面が形成され、前記周壁面と前記外周面との間に所定の間隙を有する案内体である請求項9に記載のメッキ装置。
【請求項12】
前記メッキ液供給管の供給口から供給されたメッキ液を整流する整流手段を前記メッキ室に有する請求項1乃至11のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項13】
前記整流手段は、前記メッキ室の周壁面に設けられた板状部材である請求項12に記載のメッキ装置。
【請求項14】
前記メッキ液排出管の排出口からメッキ液を吸引可能に構成された請求項1乃至13のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項15】
前記メッキ液供給管から供給されるメッキ液の流速又は流量が経時的に変化するよう構成されている請求項1乃至14のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項16】
前記メッキ室の底面には、前記メッキ液供給管から供給されたメッキ液の旋回方向に沿い形成され前記粒子群を案内する案内溝が形成されている請求項1乃至15のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項17】
前記メッキ槽に接続された加振手段を有する請求項1乃至16のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項18】
前記メッキ室の下部または下方側部に配置された磁力発生手段を有し、軟磁性を有する前記基材粒子を前記磁力発生手段の磁力によりメッキ室の底面に引き付けるよう構成されている請求項1乃至17のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項19】
直接的に又は前記メッキ液供給管を介して間接的に前記メッキ室に接続され、前記メッキ室に前記粒子群を供給する供給手段を有する請求項1乃至18のいずれかに記載のメッキ装置。
【請求項20】
前記供給手段は、前記粒子群を収納する収納部と、一端が前記収納部に接続されるとともに前記メッキ室の周壁面であって前記底面側に他端が接続された基材粒子供給管と、一端が前記収納部に接続されるとともに前記メッキ室の周壁面であって前記基材粒子供給管の他端よりも上方に他端が接続されたメッキ液流入管を有する請求項19に記載のメッキ装置。
【請求項21】
前記メッキ室に収納された前記粒子群を回収する回収手段を有する請求項1乃至20のいずれかに記載のメッキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−74482(P2011−74482A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35526(P2010−35526)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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