説明

メッキ装置

【課題】導電性を有する基材粒子表面に均一なメッキ層を形成するメッキ装置を提供するものであり、メッキ液の攪拌による基材粒子の飛散を防止してメッキ効率に優れたメッキ装置にする。
【解決手段】メッキ液Lと基材粒子20aを貯留可能なメッキ室11dを有するメッキ槽11aと、メッキ室11dにメッキ液Lが貯留された状態でメッキ液Lに浸漬される陽極13aおよび陰極13bと、陽極13aと陰極13bとの間に電位差を与える電源14と、陰極表面に沿ってメッキ液Lと基材粒子20aを流動させる流動発生手段12eと、極性の異なる磁極面15aを複数並べて向きが交互になる複数の磁界15bを形成する磁気回路15とを備え、流動する基材粒子20aが前記複数の磁界中を通過するように磁気回路が配置されたメッキ装置10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する基材粒子表面にメッキ層を形成するメッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を有する基材粒子表面にメッキ層を形成する技術として、Cuを主体としたコアボールの表面に半田メッキ層を形成して半田被覆Cuコアボール(以下Cuコアボールと称する)を製造する技術がある。本明細書では従来技術の問題点を明らかにするために、Cuコアボールを製造するメッキ装置を例に本発明のメッキ装置を説明するが、本発明は必ずしもCuコアボールを製造するメッキ装置に限定されるものではない。
【0003】
近年、高密度実装により多ピッチ化・狭ピッチ化の進むBGA(Ball Grid Allay)、CSP(Chip Scale Package)等の半導体パッケージには、入出力端子用のバンプとして小径のCuコアボールが適用されている。Cuコアボールは、リフローしてもコア部分が溶融せず、半導体素子と基板とを所定の距離を保ちつつ実装できるので、半導体素子の起動・停止で生じる熱サイクル負荷等に起因したエレクトロマイグレーションを抑制でき、断線防止に効果的である。
【0004】
Cuコアボールの製造技術には、メッキ液が流通可能な多数の開口を有するバレル内にコアボールを収納し、バレルをメッキ浴中で自転させ、Cuコアボール表面に半田を形成するバレル式電気メッキ法が知られている。しかしながら、直径100μm以下の小径Cuコアボールを製造するには、バレルの自転による転動だけではコアボールの攪拌が不十分であり、上記方法では、コアボールが凝集して連結したり、メッキ層表面が粗面化したり、メッキ層の厚みが部分的に不均一になる等の歩留まりの低下が問題になっていた。
【0005】
一方、Cuコアボールのような粉粒体表面にメッキ層を形成する他の例が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、粉粒体表面に均一なメッキ層を形成するために、「メッキ槽内底面に陰極を形成し、この内底面上に被メッキ物である粉粒体を堆積させると共に、この粉流体を攪拌下において実質的にメッキ槽内底面に堆積した状態を維持しつつ電気メッキする粉粒体への電気メッキ方法」が開示されており、第1図から第3図にメッキ装置の概念図が示されている。
【0006】
特許文献1の方法によれば、粉粒体はメッキ槽内底面に堆積された状態を維持しつつ、攪拌機により攪拌されながらメッキされるので、粉粒体表面には均一なメッキ層が形成される。また、攪拌により粉粒体が飛散すると粉粒体と陰極との間に電気導通が形成される機会が減少してメッキ効率の低下が懸念されるが、特許文献1の方法によれば、第2図に示されるような隔膜を配設することで粉粒体の飛散が防止できるとしている。かかる飛散防止効果により、粉粒体は陰極であるメッキ槽内底面に堆積された状態を維持でき、メッキ効率を落とすことなく粉粒体表面にメッキ層を形成することができる。
【0007】
コアボール表面に均一な厚みのメッキ層を形成するには、特許文献1の方法において攪拌を十分に行い、コアボールの飛散防止に隔膜を配設すれば良いと考えられる。しかしながら、特許文献1の方法を直径100μm以下の小径コアボールに適用する場合には目の細かい隔膜が必要であり、攪拌してもメッキ液の循環が悪くなるので、隔膜の上下でメッキ液の組成が不均一になる現象が懸念される。このような現象は、特に半田メッキのような多元系のメッキではメッキ層の組成ずれに繋がるので好ましくない。従って、小径の粉粒体のメッキでは、隔膜を用ずに飛散を防止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−41489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決する発明であり、導電性を有する基材粒子表面に均一なメッキ層を形成するメッキ装置を提供するものであり、メッキ液の攪拌による基材粒子の飛散を防止してメッキ効率に優れたメッキ装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のメッキ装置は、導電性を有する基材粒子の表面にメッキ層を形成するメッキ装置であって、メッキ液と基材粒子を貯留可能なメッキ室を有するメッキ槽と、メッキ室にメッキ液が貯留された状態でメッキ液に浸漬される陽極および陰極と、陽極と陰極との間に電位差を与える電源と、陰極表面に沿ってメッキ液と基材粒子を流動させる流動発生手段と、極性の異なる磁極面を複数並べて向きが交互になる複数の磁界を形成する磁気回路とを備え、流動する基材粒子が前記複数の磁界中を通過するように磁気回路が配置されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のメッキ装置は、略円形の陰極が周壁を備えたメッキ室の底面を構成するとともに、流動発生手段がメッキ液と基材粒子とを陰極上で旋回流動させることを可能にし、磁気回路の磁極面が陰極と対向して配される構成にしても良い。
【0012】
そして、本発明のメッキ装置が備える磁気回路は、複数の永久磁石を並べ配した構成にしても良いし、多極着磁した永久磁石を用いても良い。さらに、磁気回路の磁極面を基材粒子の流動方向に移動可能にする駆動機構を備えても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメッキ装置は、特許文献1のような隔膜を用いることなく、基材粒子の流動と磁界による電磁誘導作用により基材粒子の飛散を抑制するものであり、メッキ液の攪拌を阻害することなく、優れたメッキ効率で導電性を有する基材粒子の表面に厚みが均一なメッキ層を形成することができる。なお、上記メッキ装置の好ましい様態及びその効果については以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明により基材粒子の飛散が抑制される原理を説明する図である。
【図2】本発明の実施様態にかかる装置正面図である。
【図3】本発明の実施様態にかかる装置平面図である。
【図4】本発明の実施様態にかかる磁気回路を説明する図である。
【図5】本発明の他の実施様態の装置正面図である。
【図6】本発明の他の実施様態の装置正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(原理)
まず、図1を用いて、本発明のメッキ装置において流動する基材粒子の飛散が抑制される原理について説明する。
【0016】
本発明のメッキ装置は、メッキ液Lとともに陰極表面13cに沿って流動する基材粒子20aが陰極表面13cから浮き上がって飛散するのを抑制するために、極性の異なる磁極面15aが複数並べられた磁気回路15を備えている。極性の異なる磁極面15aが複数並べられることで、磁気回路15の下面である磁極面15a近傍には、陰極表面13cと平行で向きが180°交互になる複数の磁界15bが形成される。導電性を有する基材粒子20aが流動して陰極表面13cから磁極面15aに接近し、向きが180°交互になる複数の磁界15b中を通過すると、電磁誘導の作用により基材粒子20aには磁極面15aと反発する向き、すなわち、陰極表面13cに押し戻される向きの斥力が作用する。かかる斥力により、流動する基材粒子20aが陰極表面13cから浮き上がって飛散するのを抑制することが可能になる。
【0017】
流動速度が大きくなるほど基材粒子20aは陰極表面13cから浮き上がりやすくなるが、電磁誘導による基材粒子20aの押付け効果も流動速度が大きくなるほど大きくなるので、本発明のメッキ装置は、基材粒子20aを高速で流動・攪拌させる場合においても、陰極表面13cからの基材粒子20aの浮き上がりを抑制することができる。
【0018】
また、磁気回路15aが形成する磁界15bにより基材粒子20aの飛散は抑制されるが、メッキ液の流動・攪拌自体は磁界15bに影響を受けない。従って、特許文献1の隔壁を用いたメッキ装置のように、メッキ液の循環が阻害されないので、メッキ液が不均一になることはない。従って本発明のメッキ装置は、例えば半田メッキのような多元系のメッキに用いても、組成ずれの発生しにくいメッキ装置とすることができる。
【0019】
(装置概略)
次に、本発明のメッキ装置に関する実施態様を、図面を参照しながら説明する。下記の実施態様は、導電性を有する基材粒子としてCuを主体とする球状のコアボールの表面に、Snを主体とするメッキ層を形成するメッキ装置について説明したものであるが、本発明は必ずしもこの装置に限定されることはない。他の導電性層を有する基材粒子等の表面に電気メッキ法で金属被覆層を形成するのにも好適なメッキ装置である。また、コアボールのような球状の基材粒子だけでなく、例えば長軸と短軸を有する針状の基材粒子や、形状的特徴のない不定形の基材粒子の表面に電気メッキ法で金属被覆層を形成するのにも好適なメッキ装置でもある。
【0020】
メッキ装置の概略構成を、図2の装置正面図と、図3の密閉蓋を取り外した状態の平面図を用いて説明する。
【0021】
メッキ装置10は、本体部11、メッキ液Lに浸漬される陽極13a、陰極13b、陽極と陰極との間に電位差を与える電源14、メッキ液供給管12aとメッキ液排出管12cを介してメッキ槽に接続された流動発生手段12e、発生する磁界により流動する基材粒子の飛散を抑制する磁気回路15を基本的な構成としている。
【0022】
本体部11は、円形状の底面11eと、底面11eに向かって縮径する円錐形状の周壁11fとを有するメッキ室11dによりメッキ槽11aが構成され、メッキ槽11aはメッキ液Lに対して耐蝕性があるとともに非導電性の樹脂材料で形成されている。メッキ槽11aは、上下に開口した容器11bと、容器11bの上部開口部に密着して開口部を閉塞する密閉蓋11cと、下部開口部に密着して開口部を閉塞する陰極13bで構成されている。この容器11bと密閉蓋11c、陰極13bとにより形成される空間がメッキ室11dであり、多数のコアボール20bと所定量のメッキ液Lが貯留される。
【0023】
メッキ液供給管12aは、メッキ室11dの周壁11f上部にメッキ液Lの供給口12bを開口してその一端がメッキ槽11aに接続されている。また、メッキ液排出管12cは、軸芯がメッキ室11dと同軸になるように、密閉蓋の中央部を貫通してメッキ室11dの中に突き刺さるようにして配され、排出口12dがメッキ室11dの軸芯の中間位置で開口してメッキ槽11aに接続されている。そして、メッキ液供給管12aおよびメッキ液排出管12cのメッキ槽に接続されていない他端は流動発生手段12eに接続されている。
【0024】
流動発生手段12eは、図示しないメッキ液貯蔵タンク、メッキ液循環用ポンプ、メッキ液浄化用フィルタ及び流量制御弁等で構成されており、メッキ液供給管12aを通じメッキ室11dにメッキ液Lを供給するとともに、メッキ液排出管12cを通じメッキ室11dからメッキ液Lを吸引する構成になっている。
【0025】
本実施様態の流動発生手段12eから送り出されたメッキ液Lは、メッキ液供給管12aを流通して供給口12bからメッキ室11dに供給され、メッキ室11dの周壁11fに沿って旋回流動しながら螺旋状に流下してメッキ室11dの底面11eに達し、底面11eに沿って流動した後上昇流となり、排出口12dを通じてメッキ液排出管12cから排出されて流動発生手段12eに戻る。

【0026】
流動発生手段12eのメッキ液循環用ポンプや流量制御弁を調整すれば、メッキ室11dに供給されるメッキ液Lの流速や流量を経時的に変化させることが可能であり、旋回流動するコアボール20bの速度を調整することも可能である。
【0027】
本実施様態のメッキ装置10に用いた流動発生手段12eは、メッキ液Lおよびコアボール20bを流動させるとともに、メッキ液Lの循環ろ過機能も兼ね備えた手段であるが、本発明に用いることが可能な流動発生手段12eはこれに限定されるものではない。例えば、特許文献1のプロペラのように、メッキ液Lの攪拌機能のみを有しメッキ液Lの循環ろ過機能を有さない流動発生手段12eであっても良い。
【0028】
メッキ室11d中の大部分のコアボール20bは、メッキ液Lの流動とともに、通常底面11e、すなわち陰極表面13c近傍を旋回流動するが、コアボール20bの粒径分布が不均一であったり旋回流に乱れが生じたりすると、一部のコアボール20bは陰極表面13c近傍の旋回軌道を離脱して浮き上がろうとする。しかし、浮き上がったコアボール20bは、磁気回路15の下面である磁極面15aに接近し、磁気回路15により形成された複数の磁界15b中を通過すると、電磁誘導の作用により磁極面15aと反発する向き、すなわち、陰極表面13cに押し戻される向きの斥力を受け、再び陰極表面13c近傍の旋回軌道に戻されるようになる。以上作用により、流動するコアボール20bの一部が陰極表面13cから浮き上がって飛散するのを抑制することが可能になる。
【0029】
陽極13aは、錫を含む材料からなり、メッキ液排出管12aの外周面に配置されてメッキ室11dを満たすメッキ液Lに浸漬される。そして、電気的に電源14の正極に接続される。
【0030】
陰極13bは、ステンレス鋼、チタン、白金メッキされたチタン等の材料からなり、円板状にしてその表面13cはメッキ室11dの底面11eを構成してメッキ室11dを満たすメッキ液Lに浸漬される。そして、電気的に電源14の負極に接続される。
【0031】
本実施様態のメッキ装置10は、図4(a)に示されるようなリング状の永久磁石からなる磁気回路15を備える。なお、図でコアボール20b、磁極面15a近傍の磁力線15cを理解しやすいように、磁気回路15の手前部分の図示を省略している。磁気回路15は多極着磁された一体物の永久磁石であり、磁気回路15の下端面から出た磁力線が周壁11fを透過して陰極表面13c方向に向かうよう、磁極方向がメッキ室11dの軸芯方向に対して傾いた構造になっている。このような形状とすることにより、旋回流動による遠心力により底面11eを旋回流動するコアボール20bには、図4(b)の太矢印で示されるような、陰極表面13cに押さえつけられる向きの力が発生し、コアボール20bが陰極表面13cから浮き上がって飛散するのを抑制することができる。
【0032】
ここで、磁気回路15は必ずしも一体物の永久磁石である必要は無く、複数の永久磁石を磁極が交互になるように並べ配しても良いし、電磁石で構成しても良い。
【0033】
また、本実施様態のメッキ装置10における磁気回路15はメッキ槽に対して固定されたものであるが、メッキ室11dの軸方向に移動可能なものとしても良い。磁気回路15がメッキ室11dの軸方向に移動できれば、コアボール20bの量、飛散の程度に合わせて磁極面15aの高さ位置の最適化を図ることができる。
【0034】
(メッキ装置の動作)
上記メッキ装置の動作を説明する。まず、準備工程では、密閉蓋11cを開けて所定数のコアボール20bをメッキ室11dの底面11e(陰極表面13c)に載置し、メッキ液Lを流動発生手段12eのメッキ液貯蔵タンクに格納する。なお、コアボール20bには、酸洗処理をして表面を清浄化したものを用いるほうが良い。また、半田メッキ用のメッキ液Lは、例えば、Sn−Ag−Cu系の液組成を有する大和化成製の商品名「DAIN TINSIL SBB 2」や、ローム&ハース製の商品名「SOLDERON BP SAC5000」等に添加剤を添加して、例えばホウフッ化浴など周知のメッキ浴に適宜調整して用いることができる。メッキ室11に載置される粒子は全てコアボール20bでなくともよく、例えばコアボール20bの攪拌を促進するための攪拌促進体として、半田や鋼を主体として非磁性の導電性ダミーボール、樹脂やセラミックス等を主体とした非導電性ダミーボールを適量加えても良い。
【0035】
メッキ装置10は、密閉蓋11cを閉じてメッキ室11dを密閉空間にした後、まず、流動発生手段12eを作動させ、メッキ液供給管12aを通じてメッキ室11dへ所定の流量でメッキ液Lを供給する。メッキ室11dがメッキ液Lで満たされると、メッキ液Lはメッキ室11dの周壁11fに沿い旋回流動するとともに、周壁11fの傾斜に沿い底面11eに向い螺旋状に流下する旋回流となる。旋回流動しつつ底面11eに達したメッキ液は、底面11eに接触している複数のコアボール20bをメッキ室11dの底面11e(陰極表面13c)の上で旋回流動させる。ここで複数のコアボール20bのうちのいくつかは、底面11eすなわち電源の負極に電気的に接続された陰極表面13cに接触するので、陽極13aとの間にメッキ電流が流れて表面にメッキ層が形成される。また、コアボール20bはメッキ室11dの底面11eに接触しつつ旋回流動するのとともに底面11e上を転動するので、コアボール20b同士が付着しにくくコアボール20b同士の凝集が防止でき、かつ転動によりコアボール20bの表面が底面11eに触れる機会が均等になるので、コアボール20b表面に均一厚みのメッキ層を形成できる。なお、メッキ室11dがメッキ液Lで満たされた後に、メッキ液排出管12cを通じてメッキ液を吸引するようにすれば、メッキ液Lの旋回流がより整流化され、コアボール20bの旋回流動が安定化するので好ましい。
【0036】
本実施様態のメッキ装置10のようなメッキ液Lを旋回流動させてメッキを行なう装置では、メッキ液Lをより高速で旋回流動させたほうがコアボール20b同士の凝集(付着)が防止でき、コアボール20b表面に平滑なメッキ層が形成できるので好ましいと考えられる。しかしながら、メッキ液Lの流速が速くなると、突発的な旋回流の乱れの発生によりコアボール20bの挙動が不安定になり、通常はその一部が旋回流から離脱し周壁11fに沿って上昇・飛散しやすくなる。よって陰極表面13cとの接触機会が減少してしまい、メッキ効率が低下してしまう他に、メッキ液Lとともにメッキ液排出管12cから流出してしまう場合がある。しかしながら本実施様態のメッキ装置10では、磁気回路15が形成する磁界によりコアボール20bの飛散が抑制されるので、メッキ効率を低下させることなくコアボール20b表面に平滑なメッキ層を形成することができる。
【0037】
本発明に関するメッキ装置の他の実施様態について、図5と図6を参照しながら説明する。なお、これら実施様態における上記メッキ装置と同一の構成要素については説明を省略する。
【0038】
図5に示すメッキ装置10は、リング状の磁気回路15をメッキ室11dの軸芯と同じ回転軸で回転可能なホルダ16に固定したものである。モータ17aの回転駆動をプーリ17b、ベルト17cを介してホルダ16に伝達させることにより、磁気回路15を回転可能にしている。
【0039】
速度制御可能なモータをモータ17aに使用して磁気回路15の回転速度を調整すれば、コアボール20bの飛散抑制効果を調整することができる。たとえば、コアボール20bが飛散しやすい条件では、コアボール20bの旋回方向と逆向きに磁気回路15を回転させてやれば良い。旋回流動するコアボール20bと磁気回路15の磁極面15aとの相対速度が大きくなるほど、コアボール20bの飛散抑制効果が得られるようになる。
【0040】
図6に示すメッキ装置10は、磁気回路15をメッキ室11d内に設けたものである。本発明のメッキ装置10では、図6(a)のようにメッキ液排出管12cの排出口12d近傍に磁気回路15を設けることも可能であり、図6(b)のように、メッキ液排出管12cと陰極表面13cの間に磁気回路15を設けることも可能である。本実施様態は、コアボール20bと磁気回路15の磁極面13cを接近させることができ、コアボール20bの飛散抑制効果が高くなる。
【符号の説明】
【0041】
10 メッキ装置
11 本体部
11a メッキ槽
11b 容器
11c 密閉蓋
11d メッキ室
11e 底面
11f 周壁
12a メッキ液供給管
12b 供給口
12c メッキ液排出管
12d 排出口
12e 流動発生手段
13a 陽極
13b 陰極
13c 陰極表面
14 電源
15 磁気回路
15a 磁極面
15b 磁界
15c 磁力線
16 ホルダ
17a モータ
17b プーリ
17c ベルト
20a 基材粒子
20b コアボール
L メッキ液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する基材粒子の表面にメッキ層を形成するメッキ装置であって、
メッキ液と前記基材粒子を貯留可能なメッキ室を有するメッキ槽と、
前記メッキ室にメッキ液が貯留された状態でメッキ液に浸漬される陽極および陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に電位差を与える電源と、
前記陰極表面に沿って前記メッキ液と前記基材粒子を流動させる流動発生手段と、
極性の異なる磁極面を複数並べて向きが交互になる複数の磁界を形成する磁気回路とを備え、
流動する前記基材粒子が前記複数の磁界中を通過するように前記磁気回路が配置されていることを特徴とするメッキ装置。
【請求項2】
略円形の前記陰極が周壁を備えた前記メッキ室の底面を構成するとともに、
前記流動発生手段が前記メッキ液と前記基材粒子とを前記陰極上で旋回流動させることが可能であり、
前記磁気回路の磁極面が前記陰極と対向して配される
ことを特徴とする請求項1に記載のメッキ装置。
【請求項3】
前記磁気回路が複数の永久磁石を並べ配したものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメッキ装置。
【請求項4】
前記磁気回路が多極着磁した永久磁石であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメッキ装置。
【請求項5】
前記磁気回路の磁極面を前記基材粒子の流動方向に沿って移動可能な駆動機構を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のメッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25975(P2012−25975A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162725(P2010−162725)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】