説明

メッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物、転写フィルムおよびメッキ造形物の製造方法

【課題】メッキ造形物の製造に好適なポジ型感放射線性樹脂組成物に関する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)および/または(2)で表される構造単位(a)と、酸解離性官能基(b)とを含有する重合体、(B)感放射線性酸発生剤および(C)有機溶媒を含有し、かつ重合体(A)100重量部に対して、特定構造の感放射線性酸発生剤が1〜20重量部含有することを特徴とするメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ造形物の製造に好適なポジ型感放射線性樹脂組成物、該組成物を用いた転写フィルムおよびメッキ造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路素子の微細化に伴い、大規模集積回路(LSI)の高集積化および特定用途に適合させた集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)への移行が急激に進んでいる。そのため、LSIを電子機器に搭載するための多ピン薄膜実装が必要とされ、テープオートメーテッドボンディング(TAB)方式やフリップチップ方式によるベアチップ実装などが採用されてきている。このような多ピン薄膜実装法では、接続用端子として、バンプと呼ばれる高さ10μm以上の突起電極が基板上に高精度に配置されることが必要とされている。
【0003】
このようなバンプは、通常、以下のような手順で加工されている。まず、LSI素子が加工されたウェハー上に、導電層となるバリアメタルを積層した後、感放射線性樹脂組成物(いわゆるレジスト)を塗布して乾燥する。次いで、バンプを形成する部分が開口するように、マスクを介して放射線を照射(以下「露光」ともいう)した後、現像してパターンを形成する。このパターンを鋳型として、電解メッキにより金や銅などの電極材料を析出させる。次いで、樹脂部分を剥離した後、バリアメタルをエッチングにより除去してバンプを形成する。その後、ウェハーからチップが方形に切り出されて、TABなどのパッケージングやフリップチップなどの実装工程に移っていく。
【0004】
前述した一連のバンプ加工工程において、レジストに対して以下のような特性が要求されている。
(1)20μm以上の均一な厚みの塗膜が形成できること。
(2)バンプの狭ピッチ化に対応するために解像性が高いこと。
(3)鋳型となるパターンの側壁が垂直に近く、パターンがマスク寸法に忠実であること。
(4)プロセスマージンを広くするために、パターン寸法変化のPED(Post Exposure Delay)(露光後現像までの引き置き時間)依存性が小さいこと。
(5)メッキ液に対する良好な濡れ性を有していること。
(6)メッキ時にレジストがメッキ液中に溶出してメッキ液を劣化させないこと。
(7)メッキ時にメッキ液が基板とレジストとの界面にしみ出さないように、基板に対して高い密着性を有すること。
(8)メッキ後は、剥離液により容易に剥離されること。
【0005】
さらに、得られるメッキ析出物に対しては、以下のような特性が必要とされている。
(9)鋳型となるパターンの形状が忠実に転写されていること、およびマスク寸法に忠実であること。
【0006】
従来、バンプ加工用レジストとしては、ノボラック樹脂およびナフトキノンジアジド基含有化合物を主成分とするポジ型感放射線性樹脂組成物が用いられてきた(例えば特許文献1参照。)。しかし、上記組成物からなるレジストを現像しても、パターン形状が、基板面からレジスト表面に向かって先細りした、傾斜形状(順テーパー状)となり、垂直な側壁を有するパターンが得られないという問題があった。また、上記組成物からなるレジストの感度が低いため露光時間が長くなり、生産効率が低いという問題点があった。さらに解像度や、厚膜のメッキ析出物のマスク寸法に対する忠実性の点でも十分とはいえなかった。そこで近年、酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する重合体と感放射線性酸発生剤からなる化学増幅型レジストが用いられるようになった。しかし、露光により発生した酸が周囲の塩基成分による中和されパターンが解像しなくなるため、塩基成分や露光後の引き置き時間を厳密にコントロールする必要があり、取り扱いが非常に困難であった。つまり環境耐性のあるレジストが求められている。
特許文献2〜5記載の感放射線性酸発生剤はPED耐性に優れたものであるが、メッキ造形物製造用レジストのような厚膜のレジストパターンを必要とする場合、感度や解像度の点で不十分であった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−207067号公報
【特許文献2】特開2002−128758号公報
【特許文献3】特開2002−128755号公報
【特許文献4】特開2001−172251号公報
【特許文献5】特開2001−122850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、バンプあるいは配線などの厚膜のメッキ造形物を精度よく形成することができる製造方法、この製造方法に好適な感度、解像度、環境耐性などに優れるポジ型感放射線性樹脂組成物、および該組成物を用いた転写フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下のとおりである。
1.(A)下記一般式(1)および/または(2)で表される構造単位(a)と、酸解離性官能基(b)とを含有する重合体
(B)下記式(3)で示される感放射線性酸発生剤および
(C)有機溶媒
を含有し、かつ重合体(A)100重量部に対して、下記式(3)で表される感放射線性酸発生剤が1〜20重量部含有することを特徴とするメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)および(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、Rは−(CH−(jは0〜3の整数)であり、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜4の整数である。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(3)において、Rは、Rが複数ある場合には相互に独立に、一価の有機基であって、少なくともその一つは一価の芳香族基である。nは、1〜5である。)
2.前記 上記酸解離性官能基(b)が下記一般式(3)で表されることを特徴とする上記1に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。を特徴とする請求項1に記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【0014】
【化3】

【0015】
(式(4)において、Rは水素原子またはメチル基であり、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、または、これらの基において少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基である。R〜Rのいずれか2つがアルキル基もしくは置換アルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基もしくは置換脂環式炭化水素基を形成していてもよい。)
3.上記メッキ造形物がバンプであることを特徴とする上記1または2のいずれか一項に記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
4.支持フィルムと、該支持フィルム上に上記1〜3のいずれか一項に記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜とを有することを特徴とする転写フィルム。
5.前記樹脂膜の膜厚が20〜200μmであることを特徴とする上記4に記載の転写フィルム。
6.(1)バリアメタル層を有するウェハー上に、請求項1〜4のいずれかに記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて樹脂膜を形成する工程、
(2)上記樹脂膜を露光した後に現像してパターンを形成する工程、
(3)上記パターンを鋳型として、電解メッキにより電極材料を析出させる工程および
(4)残存する樹脂膜を剥離した後、バリアメタル層をエッチングにより除去する工程
を含むことを特徴とするメッキ造形物の製造方法。
7.上記工程(1)における樹脂膜が、請求項6または7に記載の転写フィルムの樹脂膜をウェハー上に転写することにより形成されることを特徴とする請求項9に記載のメッキ造形物の製造方法。

【発明の効果】
【0016】
本発明のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物は、感度、解像度、環境耐性に優れているため、バンプあるいは配線などの厚膜のメッキ造形物を精度よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体的に説明する。
<ポジ型感放射線性樹脂組成物>
本発明のポジ型感放射線性樹脂組成物は、(A)特定の構造単位(a)と、酸により解離して酸性となる酸解離性官能基(b)とを含有してなる重合体、(B)特定の感放射線性酸発生剤、および(C)有機溶媒を含有する組成物である。
[重合体(A)]
本発明に用いられる重合体(A)は、以下に記載する一般式(1)および/または(2)で表される構造単位(a)と酸解離性官能基(b)とを含有してなる重合体である。
【0018】
構造単位(a)
重合体(A)は、下記一般式(1)および/または(2)で表される構造単位を有する
ことを特徴とする。
【0019】
【化4】

【0020】
(式(1)および(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは−(CH−(jは0〜3の整数)であり、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜4の整数である。)
この、上記一般式(1)および/または(2)で表される構造単位が重合体(A)に含有されることにより、レジストの基板に対する密着性を高め、メッキ時にメッキ液が基板とレジストとの界面にしみ出すことを防ぐ効果がある。さらにこの構造単位中に含有される置換基の種類および数を調整することにより、フェノール性水酸基の酸性度を変えることができるので、本発明に係る組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が調整できる。
単量体(1’)および単量体(2’)
上記一般式(1)の構造は、例えば、下記一般式で表される単量体(1’)を用いて重合体Aを重合することにより得ることができる。また、上記一般式(2)の構造は、例えば、下記一般式で表される単量体(2’)を用いて重合体Aを重合することにより得ることができる。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Rは−(CH−で、nは0〜3の整数である。またRは炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜4の整数である。)
単量体(1’)としては、p−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、m−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、m−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、p−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、p−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、3,5−tertブチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、3,5−tertブチル−4−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、o−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、o−ヒドロキシベンジルメタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル化合物が挙げられる。
【0023】
単量体(2’)としては、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、o−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、m−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、3,5−tertブチル−4−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、o−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0024】
これらの単量体(1’)および(2’)の中では、p−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルメタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシベンジルメタクリレートが好ましい。
【0025】
単量体(1’)または(2’)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、単量体(1’)と単量体(2’)は組み合わせて用いてもよい。
酸解離性官能基(b)
重合体(A)に含まれる酸解離性官能基(b)は、酸により解離して酸性官能基を生成する限り特に限定されるものではない。この酸解離性官能基(b)としては、例えば、酸により解離してカルボキシル基を生成する官能基や、酸により解離してフェノール性水酸基を生成する官能基が挙げられる。
【0026】
これら酸解離性官能基(b)のうちでも、下記の一般式(3)で表されるものが好ましい。
【0027】
【化6】

【0028】
(式(4)において、Rは水素原子またはメチル基であり、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、または、これらの基において少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基である。R〜Rのいずれか2つがアルキル基もしくは置換アルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基もしくは置換脂環式炭化水素基を形成していてもよい。)
単量体(I)
このような酸解離性官能基(b)を有する重合体は、例えば、酸解離性官能基を有する単量体(I)を用いて重合することにより得ることができる。例えば、上記一般式(4)の構造は、下記一般式で表される単量体(4’)を用いて重合体Aを重合することにより得ることができる。
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、Rは水素原子またはメチル基である。R〜Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、またはこれら炭化水素基の少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基であり、R〜Rは互いに同一でも異なっていてもよい。また、R〜Rのいずれか2つがアルキル基もしくは置換アルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基もしくは置換脂環式炭化水素基を形成していてもよい。)
一般式(4’)において、R〜Rは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、またはこれら炭化水素基の少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基である。
【0031】
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。
【0032】
炭素数4〜20の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、 シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;
アダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、テトラシクロ[6.2.1.13,6 .02,7]ドデカン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどの有橋式炭化水素類に由来する基などが挙げられる。また、R〜Rのいずれか2つがアルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して炭素数4〜20の脂環式炭化水素基を形成していてもよいが、この形成される脂環式炭化水素基としては、上記脂環式炭化水素基と同様のものを挙げることができる。
芳香族基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。
【0033】
また、置換炭化水素基における、水素原子と置換可能な炭化水素基以外の極性基としては、例えば、クロロ基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基(即ち、=O基);ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシル基;
シアノ基;
シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等の炭素数2〜6のシアノアルキル基などが挙げられる。
【0034】
このような単量体(4’)としては、例えば、t−ブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−ブチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−フェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、2−t−ブトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、2−ベンジルオキシカルボニルエチル(メタ)アクリレート、2−メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−オキソブチル(メタ)アクリレート、2−ベンジルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
また、単量体(I)としては、酸により解離してフェノール性水酸基を生成する単量体を用いることもできる。
【0036】
例えば、p−1−メトキシエトキシスチレン、p−1−エトキシエトキシスチレンなどのアセタール基で保護されたヒドロキシスチレン類;t−ブトキシスチレン、t−ブトキシカルボニルオキシスチレンなどが挙げられる。
【0037】
重合体(A)の酸解離性官能基(b)は、酸により反応して酸性官能基を生成するとともに酸解離物質を生成する。例えば、単量体(I)として2−ベンジルプロピル(メタ)アクリレートを用い酸解離性官能基(b)を重合体Aに導入した場合は、生成する酸解離物質は2−ベンジルプロペンである。
【0038】
この酸解離物質の1気圧における沸点(以下、単に「沸点」という。)が室温以下の場合、メッキ造形物を製造する際のパターン形状に悪影響を与えるおそれがある。
【0039】
一般に、集積回路素子の回路を形成する場合のように、レジスト被膜の厚さが1〜50μm程度であるときには、沸点が20℃を下回るような酸解離物質であっても、PEBの過程でガス成分としてレジスト被膜中を透過してしまうので、酸解離物質はパターン形状に実際上影響を与えない。一方、バンプなどを製造する場合は、レジスト被膜の厚さを50μm以上にしなければならない場合がある。レジスト皮膜の厚さを50μm以上にしなければならない場合は、発生したガス成分がレジスト被膜内に滞留して大きな気泡を形成し、現像した際にパターン形状が著しく損なわれるおそれがある。このため、酸解離物質が低沸点、特に沸点が20℃未満の場合は、レジスト被膜の厚さが50μmを超える用途への使用は困難である。
【0040】
したがって、単量体(I)としては、重合体Aから生成する酸解離物質の沸点が20℃以上となるような単量体であることが好ましい。このような単量体としては、1,1−ジメチル−3−オキソブチル(メタ)アクリレート、2−ベンジルプロピル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、1,1−ジメチル−3−オキソブチル(メタ)アクリレートあるいは2−ベンジルプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。1,1−ジメチル−3−オキソブチル(メタ)アクリレートに由来する酸解離物質は4−メチル−4−ペンテン−2−オンで、その沸点は約130℃であり、また、2−ベンジルプロピル(メタ)アクリレートに由来する酸解離物質は2−ベンジルプロペンで、その沸点は約170℃だからである。
【0041】
上記単量体(I)は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
重合体(A)は、さらに、単量体(1’)、(2’)および(I)以外の共重合可能な単量体(以下、「単量体(II)」という。)を共重合させてもよい。
【0043】
単量体(II)としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族ビニル化合物;
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのヘテロ原子含有脂環式ビニル化合物;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;
1.3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;
アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル化合物;
アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0044】
これら単量体(II)のうち、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0045】
単量体(II)は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
酸解離性官能基(b)の含有率は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されるものではない。
【0047】
また、酸解離性官能基(b)が単量体(I)に由来する場合、重合体(A)に含まれる単量体(I)に由来する単位と、単量体(I)以外の単量体に由来する単位との比率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、単量体(I)に由来する単位と、単量体(1’)および(2’)に由来する単位および単量体(II)に由来する単位との重量比〔単量体(I)/{単量体(1’)+単量体(2’)+単量体(II)}〕は、通常5/95〜95/5、好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20の範囲である。
【0048】
単量体(I)に由来する単位が上記範囲未満である場合は、生成される酸性官能基の割合が低いため、得られる重合体のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターン形成が困難になることがある。
【0049】
重合体(A)は、例えば、単量体(1’)および/または(2’)と、単量体(I)と必要に応じて単量体(II)とを、直接共重合する方法によって製造することができる。
【0050】
重合はラジカル重合によって行うことができる。重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。また、重合方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などが挙げられるが、特に溶液重合法が好ましい。
【0051】
上記ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物や、ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t−ブチルペルオキシドなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0052】
また、上記溶液重合法に用いられる溶媒は、使用される単量体成分と反応せず、生成する重合体を溶解するものであれば特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0053】
これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0054】
なお、重合体(A)が溶液重合法により製造された場合、得られる重合体溶液をそのままポジ型感放射線性樹脂組成物の調製に供してもよく、あるいは重合体溶液から重合体(A)を分離してポジ型感放射線性樹脂組成物の調製に供してもよい。
【0055】
また、重合に際しては、必要に応じて、例えばメルカプタン化合物、ハロゲン炭化水素などの分子量調節剤を使用することができる。
【0056】
重合体(A)の分子量は、単量体組成、ラジカル重合開始剤、分子量調節剤、重合温度などの重合条件を適切に選択することにより調節することができる。重合体(A)の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)で、通常、5,000〜300,000、好ましくは7,000〜200,000である。
【0057】
この場合、重合体(A)のMwが上記範囲にあることにより、樹脂膜の強度およびメッキ耐性が十分であり、重合体の露光後のアルカリ溶解性が優れ、微細パターンの形成も容易である。
【0058】
本発明において、重合体(A)は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
[酸発生剤(B)]
本発明に用いられる感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤(B)」という。)は、露光により酸を発生する化合物である。この発生する酸の作用により、重合体(A)中に存在する酸解離性官能基が解離して、例えばカルボキシル基、フェノール性水酸基などの酸性官能基が生成する。その結果、ポジ型感放射線性樹脂組成物から形成された樹脂膜の露光部がアルカリ現像液に易溶性となり、ポジ型のパターンを形成することができる。
【0059】
酸発生剤(B)としては、下記式(3)で示される感放射線性酸発生剤を挙げることができる。本発明においては、下記式(3)で示される感放射線性酸発生剤を含有することにより環境耐性(PED耐性)に優れたポジ型感放射線性樹脂組成物となる。さらに、本発明においては、下記式(3)で示される感放射線性酸発生剤を含有することにより、メッキ造形物などの製造に用いられる感放射線性樹脂組成物として、厚膜での感度や解像度が優れたものとなる。
【0060】
【化8】

【0061】
(式(3)において、Rは、Rが複数ある場合には相互に独立に、一価の有機基であって、少なくともその一つは一価の芳香族基である。nは、1〜5である。)
酸発生剤(B)の使用量は、感放射線性樹脂組成物としての感度、解像性、パターン形状などを確保する観点から、重合体(A)100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部である。酸発生剤(B)の使用量が上記範囲にあることにより、感度、解像性、および放射線に対する透明性に優れたレジストが得られるとともに、優れた形状のパターンが得られる。
[有機溶媒(C)]
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物は、前述した重合体(A)、酸発生剤(B)、後述する他のアルカリ可溶性樹脂(D)、および必要に応じて配合される添加剤を均一に混合する目的で、有機溶媒(C)で希釈することができる。
【0062】
このような有機溶媒としては、例えば、重合体(A)を製造する溶液重合法について例示した溶媒が使用することができ、それ以外にもジメチルスルホキシド、アセトニルアセトン、イソホロン、炭酸プロピレンなどを使用できる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0063】
有機溶媒(C)の使用量は、ポジ型感放射線性樹脂組成物の塗布方法、メッキ造形物製造用組成物の用途などを考慮して調整することができる。組成物を均一に混合させることができれば、使用量は特に限定されないが、ポジ型感放射線性組成物の全重量100重量部に対して、有機溶媒(C)が20〜80重量部含まれていることが好ましく、30〜70重量部含まれることがより好ましい。有機溶媒(C)が上記範囲内にあることにより、組成物を塗布して形成する樹脂膜の厚みを均一にすることができ、また、所望の高バンプの形状も均一にすることができる。
[その他成分(D)]
他のアルカリ可溶性樹脂
また、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物には、場合により、重合体(A)以外のアルカリ可溶性樹脂(以下、「他のアルカリ可溶性樹脂」という。)を添加することができる。
【0064】
他のアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液と親和性を示す官能基、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基などの酸性官能基を1種以上有する、アルカリ現像液に可溶な樹脂である。
【0065】
このようなアルカリ可溶性樹脂を添加することにより、ポジ型感放射線性樹脂組成物から形成した樹脂膜のアルカリ現像液への溶解速度の制御がより容易となるので、現像性をさらに向上することができる。
【0066】
他のアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液に可溶である限り特に限定されない。この樹脂としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、p−ビニル安息香酸、p−カルボキシメチルスチレン、p−カルボキシメトキシスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸などの酸性官能基を有する少なくとも1種の単量体を重合して得られる付加重合系樹脂およびノボラック樹脂に代表される酸性官能基を有する重縮合系樹脂などが挙げられる。
【0067】
アルカリ可溶性の付加重合系樹脂は、前記酸性官能基を有する単量体の重合性不飽和結合が開裂した繰返し単位のみから構成されていてもよいが、生成した樹脂がアルカリ現像液に可溶である限りでは、1種以上の他の繰返し単位をさらに含有することもできる。
【0068】
前記他の繰返し単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、無水マレイン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミド、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルアニリン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0069】
アルカリ可溶性の付加重合系樹脂としては、樹脂膜としたときの放射線の透過性が高く、またドライエッチング耐性にも優れるという観点から、特に、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、p−イソプロペニルフェノールの共重合体が好ましい。
【0070】
アルカリ可溶性の付加重合系樹脂の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)で、通常、1,000〜200,000、好ましくは5,000〜50,000である。
【0071】
また、アルカリ可溶性の重縮合系樹脂は、酸性官能基を有する縮合系繰返し単位のみから構成されていてもよいが、生成した樹脂がアルカリ現像液に可溶である限りでは、他の縮合系繰返し単位をさらに含有することもできる。
【0072】
このような重縮合系樹脂は、例えば、1種以上のフェノール類と1種以上のアルデヒド類とを、場合により他の縮合系繰返し単位を形成しうる重縮合成分と共に、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、水媒質中または水と親水性溶媒との混合媒質中で(共)重縮合することによって製造することができる。
【0073】
上記フェノール類としては、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノールなどが挙げられる。また上記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどが挙げられる。
【0074】
アルカリ可溶性の重縮合系樹脂の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)で、通常、1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000である。
【0075】
これらの他のアルカリ可溶性樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。他のアルカリ可溶性樹脂の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、通常、200重量部以下である。
酸拡散制御剤
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物には、酸発生剤(B)から発生する酸の樹脂膜中における拡散を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制するために、酸拡散制御剤を配合することが好ましい。このような酸拡散制御剤を使用することにより、組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、露光からPEBまでの引き置き時間の変動によるパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れる。
【0076】
酸拡散制御剤としては、メッキ造形物の製造工程における露光や加熱により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。
【0077】
上記含窒素有機化合物としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、8−オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−S−トリアジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。これらの含窒素有機化合物のうち、特に2,4,6−トリ(2−ピリジル)−s−トリアジンが好ましい。
【0078】
上記酸拡散制御剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
酸拡散制御剤の使用量は、重合体(A)100重量部当り、通常、15重量部以下、好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。酸拡散制御剤の使用量が上記範囲内にあることにより、感度、現像性、パターン形状および寸法忠実度に優れたレジストが得られる。
界面活性剤
また、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物には、塗布性、現像性などを改良するために界面活性剤を添加することができる。
【0080】
上記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェノールエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートなどが挙げられる。
【0081】
これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、通常、2重量部以下である。
他の添加剤
さらに、本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物に配合可能な他の添加剤としては、紫外線吸収剤、増感剤、分散剤、可塑剤、保存安定性を高めるための熱重合禁止剤、酸化防止剤などが挙げられる。中でも紫外線吸収剤は、露光時の散乱光の未露光部への回り込みによる光反応を阻止する作用があるために有用である。このような紫外線吸収剤としては、露光に使用される紫外線の波長域で高い吸光係数を有する化合物が好ましい。また、有機顔料も同様の目的に使用することができる。
【0082】
本発明に係るポジ型感放射線性樹脂組成物は、PEB工程での耐熱性、樹脂膜の現像液に対する濡れ性、基板に対する密着性の点で優れている。特にPEB工程での高い熱耐性は、レジストの解像性に寄与するため非常に重要であり、集積回路素子のバンプまたは配線などのメッキ造形物の製造に好適に使用される。
<メッキ造形物>
本発明に係るメッキ造形物の製造方法は、
(1)バリアメタル層を有するウェハー上に、上記のポジ型感放射線性樹脂組成物からな
る樹脂膜を形成する工程、
(2)上記樹脂膜を露光した後に現像してパターンを形成する工程、
(3)上記パターンを鋳型として、電解メッキにより電極材料を析出させる工程および
(4)残存する樹脂膜を剥離した後、バリアメタルをエッチングにより除去する工程
を含むことを特徴とする。
【0083】
工程(1)で形成する樹脂膜は、本発明に係る樹脂組成物をウェハー上に塗布して乾燥することにより得ることができる。また、後述する本発明に係る転写フィルムを用いて、転写フィルムから樹脂膜をウェハー上に転写することにより得ることもできる。
【0084】
本発明に係る転写フィルムは、支持フィルム上に上記ポジ型感放射線性樹脂組成物からなる樹脂膜を有する。このような転写フィルムは、支持フィルム上に上記ポジ型感放射線性樹脂組成物を塗布して乾燥することにより作製することができる。上記の組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷、アプリケーター法などが挙げられる。また、支持フィルムの材料は、転写フィルムの作製および使用に耐えうる強度を有する限り、特に限定されるものではない。
【0085】
上記転写フィルムは、樹脂膜の厚みを20〜200μmとして用いることができる。
本発明に係る転写フィルムは、支持フィルムを剥離して、ポジ型感放射線性樹脂膜とすることができる。上記樹脂膜は、本発明に係る組成物と同様にメッキ造形物の製造に使用することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。以下において、部および%は、特記しない限り重量基準である。
[合成例1]重合体(A1)の合成
p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド10g、p−イソプロペニルフェノール20g、n−ブチルアクリレート30g、イソボロニルアクリレート10g、およびt−ブチルアクリレート30gを乳酸エチル150gと混合し、50℃で攪拌し均一溶液とした。この溶液を30分間窒素ガスによりバブリングした後、AIBN4gを添加し、窒素ガスによるバブリングを継続しつつ、反応温度を70℃に維持して7時間重合した。重合終了後、反応溶液を多量のヘキサンと混合し、生成した重合体を凝固させた。次いで、重合体をテトラヒドロフランに再溶解した後、再度ヘキサンにより凝固させる操作を数回繰り返して未反応モノマーを除去し、減圧下50℃で乾燥して白色の重合体A1を得た。
[合成例2〜10]重合体(A2)および(A3)並びに比較重合体(R1)の合成
下記表1の組成に従い、化合物の種類と量を変更した他は合成例1の重合体A1の合成と同様にして、重合体(A2)、重合体(A3)および比較重合体(R1を合成した。
【0087】
【表1】

【0088】
(a):p−イソプロペニルフェノール
(b):p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド
(c):イソボロニルアクリレート
(d):n−ブチルアクリレート
(e):t−ブチルアクリレート
(f):2−ベンジルプロピルアクリレート
[実施例1]
重合体(A1)100重量部、酸発生剤(B1)4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート 3重量部、および酸拡散抑制剤(D)20重量部を、有機溶媒(C)乳酸エチル150重量部、に溶解した後、孔径3μmのPTFE(R)製メンブレンフィルターでろ過してポジ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
[評価]
実施例1で得られたポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて以下の評価を行った。評価結果を表3に示す。
(1)金スパッタ基板の作製
直径4インチのシリコンウエハ基板上に、クロムを厚さが約500Åとなるようにスパッタリングしたのち、その上に金を厚さが1,000Åとなるようにスパッタリングして、導電層を形成した。以下、この伝導層を形成した基板を「金スパッタ基板」という。
(2)パターンの形成
金スパッタ基板にスピンコーターを用いて、各樹脂組成物を塗布したのち、ホートプレート上にて、120℃で5分間加熱して、厚さ25μmの樹脂膜を形成した。次いで、パターンマスクを介し、超高圧水銀灯(OSRAM社製HBO、出力1,000W)を用いて、300〜1500mJ/cm2の紫外光を照射した。露光量は、照度計((株)オー
ク製作所製UV−M10(照度計)にプローブUV−35(受光器)をつないだもの)により確認した。露光後、ホットプレート上にて、100℃で5分間PEBを行った。次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、室温で1分間浸漬して現像したのち、流水洗浄し、窒素ブローしてパターンを形成した。以下、このパターンを形成した基板を、「パターニング基板」という。
(3)メッキ造形物の形成
パターニング基板に対して、電解メッキの前処理として、酸素プラズマによるアッシング処理(出力100W、酸素流量100ミリリットル、処理時間1分)を行って、親水化処理を行った。次いで、この基板をシアン金メッキ液(日本エレクトロエンジニヤース(株)製、商品名テンペレックス401)1リットル中に浸漬し、メッキ浴温度42℃、電流密度0.6A/dm2に設定して、約60分間電解メッキを行い、厚さ15〜18μm
のバンプ用メッキ造形物を形成した。次いで、流水洗浄し、窒素ガスにてブローして乾燥したのち、室温にて、ジメチルスルホキシドとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶液(重量比=50:50)中に5分間浸漬して、樹脂膜部分を剥離し、さらに基板上のメッキ造形物を形成した領域以外の導電層をウエットエッチングにより除去することにより、メッキ造形物を有する基板を得た。以下、このメッキ造形物を有する基板を、「メッキ基板」という。
(3)感度
金スパッタ基板に、マスク設計寸法で40μmピッチのパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン)を形成したとき、抜きパターンの底部の寸法が30μmになる露光量を最適露光量とし、この最適露光量より評価した。
(4)解像度
マスク設計寸法で40μmピッチの2種のパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン、32μm幅抜きパターン/8μm幅残しパターン)を別々に形成した2枚のパターニング基板を、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察し、下記の基準で評価した。
○:32μm幅抜きパターン/8μm幅残しパターンが解像できる
△:30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターンは解像できるが、32μm幅抜きパターン/8μm幅残しパターンは解像できない。
×:40μmピッチのパターンが解像できない、または再現性よく解像できない。
(5)PED耐性
露光した基板を、室温23℃および湿度約45%に保持したクリーンルーム内に6時間放置して、現像した後、走査型電子顕微鏡で30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターンを観察し、放置していない基板でパターニングした形状と比較し下記の基準で評価した。
○:パターン寸法変化が±10%以内である。
△:パターン寸法変化が±10%以上±20%以内である。
×:パターン寸法変化が±20%以上である。
(6)メッキ形状(A)
マスク寸法で40μmピッチのパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン)を形成したパターニング基板を、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡にて観察し、下記の基準で評価した。
○:メッキの形状が、樹脂膜から形成されたパターン形状を忠実に転写しており、こぶ状の異常突出は認められない。
×:メッキの形状が、樹脂膜から形成されたパターン形状を忠実に転写せず、こぶ状の異常突出が認められる。
(7)メッキの形状(B)
マスク寸法で40μmピッチのパターン(30μm幅抜きパターン/10μm幅残しパターン)を形成したパターニング基板を、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡にて観察し、下記の基準で評価した。
○:メッキ底部の形状が、樹脂膜から形成されたパターン形状を忠実に転写しており、パターン底部にメッキが染み出した形跡が見られない。
×:メッキ底部の形状が、樹脂膜から形成されたパターン形状を忠実に転写せず、パターン底部にメッキが染み出した形跡が見られる。
[実施例2〜5、比較例1および2]
【0089】
表2に示す各成分を用いる以外は、実施例1と同様の手法にて各樹脂組成物を調整した。また、実施例1と同様に、金スパッタ基板を作成、パターンの形成、メッキ造形物の形成し、感度、解像度、PED耐性、メッキ形状(A)および(B)について評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
酸発生剤(B1):4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ(株)製、商品名「CPI−210S」)
酸発生剤(B2):4,7−ジ−n−ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート (旭電化(株)製、商品名「SP−172」)
有機溶剤(C):プロピレングリコールモノメチルエーテル
酸拡散抑制剤(D):2,4,6−トリ(2−ピリジル)−s−トリアジン
【0092】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)および/または(2)で表される構造単位(a)と、酸解離性官能基(b)とを含有する重合体
(B)下記式(3)で示される感放射線性酸発生剤および
(C)有機溶媒
を含有し、かつ重合体(A)100重量部に対して、下記式(3)で表される感放射線性酸発生剤が1〜20重量部含有することを特徴とするメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)および(2)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、Rは−(CH−(jは0〜3の整数)であり、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、mは1〜4の整数である。)
【化2】

(式(3)において、Rは、Rが複数ある場合には相互に独立に、一価の有機基であって、少なくともその一つは一価の芳香族基である。nは、1〜5である。)
【請求項2】
前記 上記酸解離性官能基(b)が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感放射線性樹脂組成物。を特徴とする請求項1に記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【化3】

(式(4)において、Rは水素原子またはメチル基であり、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、芳香族基、または、これらの基において少なくとも一つの水素原子を炭化水素基以外の極性基に置換した置換炭化水素基である。R〜Rのいずれか2つがアルキル基もしくは置換アルキル基である場合は、そのアルキル鎖が相互に結合して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基もしくは置換脂環式炭化水素基を形成していてもよい。)
【請求項3】
上記メッキ造形物がバンプであることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
支持フィルムと、該支持フィルム上に請求項1〜3のいずれか一項に記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜とを有することを特徴とする転写フィルム。
【請求項5】
前記樹脂膜の膜厚が20〜200μmであることを特徴とする請求項4に記載の転写フィルム。
【請求項6】
(1)バリアメタル層を有するウェハー上に、請求項1〜4のいずれかに記載のメッキ造形物製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物を用いて樹脂膜を形成する工程、
(2)上記樹脂膜を露光した後に現像してパターンを形成する工程、
(3)上記パターンを鋳型として、電解メッキにより電極材料を析出させる工程および
(4)残存する樹脂膜を剥離した後、バリアメタル層をエッチングにより除去する工程
を含むことを特徴とするメッキ造形物の製造方法。
【請求項7】
上記工程(1)における樹脂膜が、請求項6または7に記載の転写フィルムの樹脂膜をウェハー上に転写することにより形成されることを特徴とする請求項9に記載のメッキ造形物の製造方法。

【公開番号】特開2010−8972(P2010−8972A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171651(P2008−171651)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】