説明

メッシュ作成装置、メッシュ作成方法、メッシュ作成プログラム

【課題】メッシュの作成において、不良メッシュの数を低減するメッシュ作成方法等を提供する。
【解決手段】メッシュ作成の対象領域に、所定寸法の第1メッシュを含む第1メッシュ領域を設定する第1メッシュ領域設定部と、前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点数と同数の節点候補を前記対象領域の外周上に所定の配置仕様で設定する外周設定部と、前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点と前記節点候補とを対応づけた線分を設定し、前記第1メッシュ領域の外周から前記対象領域の外周に至る部分に第2メッシュを設定する第2メッシュ領域設定部と、前記第1メッシュと前記第2メッシュとを含む前記メッシュ作成の対象領域中のメッシュ節点にラプラシアン法による節点位置調整処理を少なくとも1回適用する位置調整部とを備えるメッシュ作成装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ作成装置、メッシュ作成方法、メッシュ作成プログラムに関する。本装置、方法、プログラムは、例えば、有限要素法等の数値計算において汎用的に使用されうる。
【背景技術】
【0002】
有限要素法等の数値計算において、計算領域を複数のメッシュで分割することが行われている。数値計算の解の精度や所定の計算精度の解を算出するまでの計算時間は、メッシュの形状に依存することがある。メッシュは、複数の線分(辺)で囲まれる領域である。当該線分の端点は、ノードである。ノードは、計算領域の境界上にも存在する。ノードは、節点ともいう。計算領域は、メッシュによって、重なることなく埋め尽くされる。
【0003】
有限要素法等の数値計算において、計算領域のメッシュの形状は、計算精度に影響を及ぼす重要な要因である。例えば、1つのメッシュにおいて、辺の長さがの比が10以上であったり、内角が15度以下もしくは150度以上であったりするようなメッシュが使用されると、有限要素法等の数値計算の解の精度が低下することが知られている。1つのメッシュにおける一番長い辺と一番短い辺の長さの比が10以上あるメッシュ、または、1つのメッシュにおける内角が15度以下もしくは150度以上であるメッシュは、不良メッシュと呼ばれる。計算領域において、不良メッシュの数は、少ないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−182311号公報
【特許文献2】特開2000−132712号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】谷口 健男、「FEMのための要素自動分割−デローニー三角分割法の利用」、森北出版
【非特許文献2】Frank Bossen and Paul Heckbert "A Pliant Method for Anisotropic Mesh Generation," 5th International Meshing Roundtable, October, 1996.
【非特許文献3】HELENAコード T.A. Huysmans, J. P. Goedbloed, W. Kerner, Proc. CP90 Conf. on Comp. Phys. Proc., World Scientific Publ. Co. 1991, p.371
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動的にメッシュを生成する方法として、ドロネー三角分割法やバブルメッシュ法などが知られている。これらは、いずれもアルゴリズムの実装が困難なばかりか四角メッシュを生成することができない。仮に三角メッシュを偶数個生成した後に結合して四角メッシュを生成すると有限要素法の解の精度を悪化させるようなメッシュが生成されることがある。
【0007】
トーラスプラズマのポロイダル断面のように境界線が曲線であるような単凸領域(Ωとする)のメッシュを生成する場合によく行われる方法は、Ωと相似でかつΩよりも小さな領域(Ωi(i=1、2、...、N)とする)を同心上に多数配置し、中心から放射状にΩの境界線まで直線を引き、直線とΩ及びΩiとの交点をノードとするメッシュを生成する方法である。このとき、中心部のメッシュは三角メッシュとなり、中心部以外は四角メッシュとなる。この手法は簡便ではあるが、計算領域境界付近のメッシュは、メッシュ
の辺の長さの比が大きくなる。また、中心部の三角メッシュは、鋭角となり有限要素法の解の精度を悪化させる原因となる。即ち、この方法では、不良メッシュが多く作成される。
【0008】
本発明は、メッシュの作成において、不良メッシュの数を低減するメッシュ作成方法等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
【0010】
即ち、本発明の1つの態様は、
メッシュ作成の対象領域に、所定寸法の第1メッシュを含む第1メッシュ領域を設定する第1メッシュ領域設定部と、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点数と同数の節点候補を前記対象領域の外周上に所定の配置仕様で設定する外周設定部と、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点と前記節点候補とを対応づけた線分を設定し、前記第1メッシュ領域の外周から前記対象領域の外周に至る部分に第2メッシュを設定する第2メッシュ領域設定部と、
前記第1メッシュと前記第2メッシュとを含む前記メッシュ作成の対象領域中のメッシュ節点にラプラシアン法による節点位置調整処理を少なくとも1回適用する位置調整部とを、
備えるメッシュ作成装置である。
【0011】
開示の態様は、プログラムが情報処理装置によって実行されることによって実現されてもよい。即ち、開示の構成は、上記した態様における各手段が実行する処理を、情報処理装置に対して実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録した記録媒体として特定することができる。また、開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を情報処理装置が実行する方法をもって特定されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メッシュの作成において、不良メッシュの数を低減するメッシュ作成方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、メッシュ作成装置の例を示す図である。
【図2】図2は、情報処理装置の例を示す図である。
【図3】図3は、メッシュ作成装置によるメッシュ作成の動作フローの例を示す図である。
【図4】図4は、メッシュ作成の対象領域の例を示す図である。
【図5】図5は、対象領域に所定間隔の格子を重ねた例を示す図である。
【図6】図6は、第1メッシュ領域の例(1)を示す図である。
【図7】図7は、第1メッシュ領域の例(2)を示す図である。
【図8】図8は、格納部に格納される節点の名前及び当該節点の座標の例である。
【図9】図9は、格納部に格納される第1メッシュの名前と節点の名前の例である。
【図10】図10は、対象領域の外周に節点を配置する例(1)を示す図である。
【図11】図11は、対象領域の外周に節点を配置する例(2)を示す図である。
【図12】図12は、第1メッシュ領域の外周の節点と対象領域の外周の節点とが接続される例を示す図である。
【図13】図13は、節点と、節点に接続する節点との対応付けの例を示す図である。
【図14】図14は、本実施形態の変形例(1)を説明する図である。
【図15】図15は、本実施形態の変形例(2)を説明する図である。
【図16】図16は、従来の方法によるメッシュ生成と本実施形態のメッシュ生成による不良メッシュの数を示すグラフの例である。
【図17】図17は、本実施形態の具体例を示す図である。
【図18】図18は、トカマクプラズマの計算例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、開示の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。開示の構成の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0015】
〔実施形態〕
(機能概要)
本実施形態のメッシュ作成装置は、2次元の1つの所定領域において、所定領域内のノードと2つのノードを結ぶ線分とによるメッシュを作成する。所定領域内のノードには、所定領域の境界のノードが含まれる。本実施形態のメッシュ作成装置は、1又は隣接する複数の四角メッシュを含む第1メッシュ領域と、第1メッシュ領域の外周のノード及び所定領域の外周のノードとにより形成される複数の四角メッシュを含む第2メッシュ領域とを、作成する。さらに、本実施形態のメッシュ装置は、第1メッシュ領域におけるノードの位置を調整し、不良メッシュの少ない四角メッシュを所定領域内に生成する。
【0016】
ここでは、主として、2次元空間における領域を扱う。但し、領域は、2次元空間では、1又は複数の直線又は曲線を境界とする面の要素で定義され、3次元空間では、1又は複数の平面又は曲面を境界とする体積の要素で定義されうる。また、領域は、4次元以上の空間でも同様に定義されうる。本実施形態のメッシュ作成装置は、3次元空間等においても、2次元空間における場合と同様に適用されうる。
【0017】
(構成例)
図1は、メッシュ作成装置の例を示す図である。メッシュ作成装置100は、第1メッシュ領域設定部102、外周設定部104、第2メッシュ領域設定部106、位置調整部108、格納部110を含む。
【0018】
第1メッシュ領域設定部102は、メッシュ作成の対象領域(以下、対象領域ともいう)内に、第1メッシュ領域を作成する。第1メッシュ領域設定部102は、対象領域の情報を取得する。対象領域は、2次元空間の閉曲線として与えられる。対象領域(2次元空間の閉曲線)は、どのような形式で与えられてもよい。対象領域は、例えば、2座標の関係式として与えられてもよいし、点と点とを結ぶ線分の集合として与えられてもよい。対象領域の内部と対象領域の外部との境界を、対象領域の外周ともいう。2つの節点が四角メッシュの一辺の両端の点であるとき、これらの2つの節点は互いに接続されているという。
【0019】
第1メッシュ領域設定部102は、対象領域内に、1以上の所定寸法の第1メッシュを含む第1メッシュ領域を作成する。所定寸法の第1メッシュは、4つの節点を頂点とする四角形のメッシュ(四角メッシュ)である。所定寸法の第1メッシュの一例は、正方形である。所定寸法の第1メッシュは、正方形に限定されるものではない。第1メッシュ領域に含まれる第1メッシュは、少なくとも1つの他の第1メッシュと1辺を共有する。換言すると、第1メッシュ領域に含まれる第1メッシュは、少なくとも1つの他の第1メッシュと2つの節点を共有する。よって、第1メッシュ領域は、対象領域において、2以上に分離しない。また、各第1メッシュは、互いに重なることはない。また、第1メッシュ領
域設定部102は、利用者に対象領域の分割数(メッシュの数)や1メッシュ当たりの平均面積を指定されてもよい。四角メッシュは、例えば、4つの節点によって定義される。
【0020】
外周設定部104は、対象領域の外周に節点を設定する。外周設定部104は、第1メッシュ領域設定部102が作成した第1メッシュ領域の外周の節点を抽出する。外周設定部104は、抽出した第1メッシュ領域の外周の節点の数をカウントする。外周設定部104は、第1メッシュ領域の外周の節点の数と、同数の節点を、対象領域の外周上に設定する。対象領域の外周の節点は、第1メッシュ領域の外周の1つの節点と接続される。
【0021】
第2メッシュ領域設定部106は、対象領域の内側、かつ、第1メッシュ領域の外側に、複数の第2メッシュを含む第2メッシュ領域を設定する。第2メッシュは、外周設定部104が設定した対象領域の外周上の隣接する2つの節点と、第1メッシュ領域の外周上の隣接する2つの節点とを頂点とする四角形のメッシュ(四角メッシュ)である。第2メッシュは、2つの他の第2メッシュと異なる1辺を共有する。換言すると、第2メッシュは、2つの他の第2メッシュと異なる2つの節点を共有する。
【0022】
位置調整部108は、外周を除く対象領域内の節点の位置を調整する。位置調整部108は、例えば、ラプラシアン法により、外周を除く対象領域内の節点の位置を調整する。
【0023】
格納部110は、メッシュ作成装置100において使用されるデータを格納する。格納部110は、例えば、節点の名前と節点の座標とを対応づけて格納する。
【0024】
メッシュ作成装置100は、パーソナルコンピュータ(PC、Personal Computer)、
PDA(Personal Digital Assistant)のような汎用のコンピュータまたはワークステーション(WS、Work Station)、サーバマシンのような専用のコンピュータを使用して実現可能である。また、メッシュ作成装置100は、コンピュータを搭載した電子機器を使用して実現可能である。また、メッシュ作成装置100は、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション装置のような専用または汎用のコンピュータ、あるいは、コンピュータを搭載した電子機器を使用して実現可能である。
【0025】
図2は、情報処理装置の例を示す図である。コンピュータ、すなわち、情報処理装置は、プロセッサ、主記憶装置、及び、二次記憶装置や、通信インタフェース装置のような周辺装置とのインタフェース装置を含む。主記憶装置及び二次記憶装置は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0026】
コンピュータは、プロセッサが記録媒体に記憶されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて周辺機器が制御されることによって、所定の目的に合致した機能を実現することができる。
【0027】
プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Data Signal Processor)である。主記憶装置は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。
【0028】
二次記憶装置は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディス
クドライブ(HDD、Hard Disk Drive)である。また、二次記憶装置は、リムーバブル
メディア、即ち可搬記録媒体を含むことができる。リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、あるいは、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)のようなディスク記録媒体である。
【0029】
通信インタフェース(I/F)装置は、例えば、LAN(Local Area Network)インタ
フェースボードや、無線通信のための無線通信回路である。
【0030】
周辺装置は、上記の二次記憶装置や通信インタフェース装置の他、キーボードやポインティングデバイスのような入力装置や、ディスプレイ装置やプリンタのような出力装置を含む。また、入力装置は、カメラのような映像や画像の入力装置や、マイクロフォンのような音声の入力装置を含むことができる。また、出力装置は、スピーカのような音声の出力装置を含むことができる。
【0031】
メッシュ作成装置100を実現するコンピュータは、プロセッサが二次記憶装置に記憶されているプログラムを主記憶装置にロードして実行することによって、第1メッシュ領域設定部102、外周設定部104、第2メッシュ領域設定部106、位置調整部108としての機能を実現する。また、プログラムが実行される際に使用されるデータは、主記憶装置または二次記憶装置に格納されうる。プログラムが実行される際に使用されるデータは、通信インタフェースに接続されるネットワークを介して入力されても、ユーザ等によって入力装置等により入力されてもよい。
【0032】
格納部110は、例えば、主記憶装置、二次記憶装置によって実現される。
【0033】
一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0034】
プログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくても、並列的または個別に実行される処理を含む。
【0035】
(動作例)
図3は、メッシュ作成装置によるメッシュ作成の動作フローの例を示す図である。図3の動作フローは、例えば、メッシュ作成装置100の第1メッシュ領域設定部102が、メッシュ作成の対象領域を取得することにより開始される。
【0036】
図4は、メッシュ作成の対象領域の例を示す図である。第1メッシュ領域設定部102は、図4のようなメッシュ作成の対象領域を取得する。第1メッシュ領域設定部102は、格納部110からメッシュ作成の対象領域を取得してもよい。対象領域は、2次元空間の閉曲線として与えられる。対象領域は、どのような形式で与えられてもよい。対象領域は、例えば、2座標の関係式として与えられてもよい。2座標の関係式として、例えば、x2+y2=1があげられる。また、対象領域は、複数の点の座標と、これらを結ぶ線分の集合による閉曲線(多角形)として与えられてもよい。
【0037】
メッシュ作成装置100の第1メッシュ領域設定部102は、メッシュ作成の対象領域内に、第1メッシュ領域を作成する(S101)。第1メッシュ領域設定部102は、対象領域に所定間隔の格子を重ねる。
【0038】
図5は、対象領域に所定間隔の格子を重ねた例を示す図である。図5の例では、x軸に平行な所定間隔毎の直線と、y軸に平行な所定間隔毎の直線による直交格子であるが、格子の間隔が、x軸とy軸とで異なってもよい。また、平行な直線は、x軸またはy軸に平行でなくてもよい。さらに、図5の例では格子の最小単位は正方形であるが、平行四辺形になるようにしてもよい。
【0039】
また、格子の間隔は、所望するメッシュの数によって決められてもよい。例えば、対象領域の面積がSであり、所望するメッシュの数がNであるとき、格子の間隔は、(S/N
)の平方根とすることができる。さらに、格子の間隔は、所望する1メッシュの面積によって決められてもよい。例えば、所望する1メッシュの面積がTであるとき、格子の間隔は、Tの平方根とすることができる。
【0040】
第1メッシュ領域設定部102は、対象領域内に完全に含まれる格子の最小単位の四角形(正方形)をすべて抽出し、それぞれ、第1メッシュとする。第1メッシュの四角形(正方形)の頂点を、それぞれ、節点と呼ぶ。また、すべての第1メッシュの集合体を第1メッシュ領域と呼ぶ。
【0041】
図6は、第1メッシュ領域の例(1)を示す図である。図6の例は、対象領域内に完全に含まれる格子の最小単位の四角形(正方形)をすべて抽出し、それぞれ、第1メッシュとした例である。図6において、対象領域内の実線で囲まれた最小単位の正方形のそれぞれが第1メッシュである。また、すべての第1メッシュの集合体が、第1メッシュ領域である。
【0042】
また、第1メッシュ領域設定部102は、対象領域内に完全に含まれる格子の最小単位の四角形(正方形)の一部を抽出し、それぞれ、第1メッシュとしてもよい。このとき、すべての第1メッシュは、1群の塊となっていなければならない。即ち、複数の第1メッシュは、2つ以上に分離してはならない。
【0043】
図7は、第1メッシュ領域の例(2)を示す図である。図7の例は、対象領域内に完全に含まれる格子の最小単位の四角形(正方形)の一部を抽出し、それぞれ、第1メッシュとした例である。図7において、対象領域内の実線で囲まれた最小単位の正方形のそれぞれが第1メッシュである。また、すべての第1メッシュの集合体が、第1メッシュ領域である。第1メッシュ領域は、2以上に分離していない。
【0044】
第1メッシュ領域設定部102は、すべての第1メッシュ領域の節点と、当該節点の座標を抽出する。第1メッシュ領域設定部102は、抽出した節点に識別用の名前をつけ、節点の名前と当該節点の座標と対応づけて、格納部110に格納する。
【0045】
図8は、格納部に格納される節点の名前及び当該節点の座標の例である。図8の例では、格納部110には、節点の名前と節点の座標とが対応付けられて格納される。図8の例では、節点A1の座標は、(X1、Y1)である。
【0046】
また、第1メッシュ領域設定部102は、すべての第1メッシュに識別用の名前をつけ、第1メッシュの名前と当該第1メッシュを形成する節点の名前を対応付けて、格納部110に格納する。各第1メッシュにおける節点の名前は、例えば、当該第1メッシュにおいて時計回りになるような順番で、格納される。
【0047】
図9は、格納部に格納される第1メッシュの名前と節点の名前の例である。図9の例では、格納部110には、第1メッシュの名前と節点の名前とが対応付けられて格納される。図9の例では、第1メッシュM1は、節点A1、A9、A10、A11によって形成される。
【0048】
図3に戻って、メッシュ作成装置100の外周設定部104は、第1メッシュ領域の外周の節点を抽出する(S102)。第1メッシュ領域の外周は、第1メッシュ領域の内部と外部との境界である。即ち、第1メッシュ領域の内部と外部との境界線上にある節点が抽出される。さらに、外周設定部104は、抽出した第1メッシュ領域の外周の節点の数をカウントする。図6の例では、第1メッシュ領域の外周の節点の数は、20個である。図7の例では、第1メッシュ領域の外周の節点の数は、14個である。
【0049】
外周設定部104は、対象領域の外周に節点を配置する(S103)。外周設定部104は、ステップS102でカウントした数の節点を対象領域の外周に配置する。
【0050】
外周設定部104は、最初に、第1メッシュ領域の外周のある1つの節点から一番近い対象領域の外周上の点を、対象領域の外周の節点の1つとする。また、外周設定部104は、この接点から、対象領域の外周を、ステップS102でカウントした数で、等分割する。外周設定部104は、等分割した時の分割点を、対象領域の外周の節点とする。
【0051】
図10は、対象領域の外周に節点を配置する例(1)を示す図である。ここでは、図7の第1メッシュ領域を使用して説明する。図10の例では、第1メッシュ領域の外周の節点の数は、14個である。よって、外周設定部104は、14個の接点を対象領域の外周に配置する。先に説明したように、外周設定部104は、第1メッシュ領域の外周の節点αから一番近い対象領域の外周上の点βを、対象領域の外周の節点の1つ(節点β)とする。外周設定部104は、節点βを1つの分割点として、対象領域の外周を14個に等分割する。外周設定部104は、等分割した時の分割点を、それぞれ、対象領域の外周の節点とする。
【0052】
外周設定部104は、他の方法で、対象領域の外周の節点を配置してもよい。
【0053】
図11は、対象領域の外周に節点を配置する例(2)を示す図である。図11の例では、外周設定部104は、対象領域の重心から第1メッシュ領域の外周の各節点へ向かう半直線の延長線と対象領域の外周とが交差する点を、対象領域の外周の節点とする。
【0054】
また、外周設定部104は、対象領域の重心から360度をステップS102でカウントした数で割った角度毎に放射した直線と対象領域の外周とが交差する点を、対象領域の外周の節点としてもよい。
【0055】
外周設定部104は、対象領域の外周の節点に識別用の名前をつけ、節点の名前と当該節点の座標と対応づけて、格納部110に格納する。
【0056】
図3に戻って、第2メッシュ領域設定部106は、対象領域の内側、かつ、第1メッシュ領域の外側に、複数の第2メッシュを含む第2メッシュ領域を設定する(S104)。第2メッシュ領域設定部106は、すべての第1メッシュ領域の外周の節点について、1つずつ、外周設定部が配置した対象領域の外周の節点とを接続する。このとき、この2つの接点は一対一に対応する。例えば、第1メッシュ領域の外周の1つの節点が、対象領域の外周の2以上の節点と接続するようにしない。また、逆に、対象領域の外周の1つの節点が、第1メッシュ領域の外周の2以上の節点と接続するようにしない。また、第1メッシュ領域の外周の節点とこれと接続する対象領域の外周の節点との間の線分は、第1メッシュ領域と重ならない。さらに、第1メッシュ領域の外周の節点とこれと接続する対象領域の外周の節点との間の線分は、他の第1メッシュ領域の外周の節点とこれと接続する対象領域の外周の節点との間の線分と、交差しない。
【0057】
第2メッシュは、外周設定部104が設定した対象領域の外周上の隣接する2つの節点と、これらの節点と接続される第1メッシュ領域の外周上の隣接する2つの節点とを頂点とする四角形のメッシュである。
【0058】
また、第2メッシュ領域設定部106は、すべての第2メッシュに識別用の名前をつけ、第2メッシュの名前と当該第2メッシュを形成する節点の名前を対応付けて、格納部110に格納する。各第2メッシュにおける節点の名前は、例えば、当該第2メッシュにお
いて時計回りになるような順番で、格納される。
【0059】
図12は、第1メッシュ領域の外周の節点と対象領域の外周の節点とが接続される例を示す図である。図12において、節点p、q、r、sで囲まれる領域が第1メッシュ領域である。また、図12において、対象領域の外周と第1メッシュ領域の外周とで囲まれる領域が、第2メッシュ領域である。図12の例では、第2メッシュ領域には、14個のメッシュが存在する。図12において、第1メッシュ領域の外周の各節点と対象領域の外周の各節点とは、一対一に対応している。
【0060】
図3に戻って、メッシュ作成装置100の位置調整部108は、対象領域の外周を除く対象領域内の節点の位置を調整する(S105)。位置調整部108は、格納部110に格納される、第1メッシュと第1メッシュを形成する節点との対応付け、第2メッシュと第2メッシュを形成する節点との対応付けから、節点毎に、接続する節点を抽出する。位置調整部108は、節点毎に、接続する節点を対応づけて、格納部110に格納する。
【0061】
図13は、節点と、節点に接続する節点との対応付けの例を示す図である。図13の例では、節点A1は、節点A2、A3、A9、A11と接続されている。
【0062】
位置調整部108は、対象領域の外周の節点を除く対象領域内のすべての接点について、次のように節点位置調整処理を行う。
【0063】
節点A(x,y)が、節点A1(x1,y1)、...、節点An(xn,yn)と、接続している(四角メッシュの辺で繋がっている)とき、ラプラシアン法によるメッシュ格子点位置調整処理は次の式に基づいて行われる。各接点の座標は、格納部110に格納されている。
【0064】
【数1】

ここで、座標(xA,yA)は、ラプラシアン法による節点位置調整処理後の節点Aの座標である。位置調整後の節点の座標は、格納部110に格納される。
【0065】
位置調整部108は、例えば、すべての節点の座標が収束するまで、位置調整処理を行う。位置調整部108は、例えば、すべての節点について処理前の座標と処理後の座標との距離が所定値未満となるまで、ラプラシアン法による位置調整処理を繰り返す。このとき、位置調整部108は、すべての節点について処理前の座標と処理後の座標との距離が所定値未満となったことで、節点の座標が収束したと判断する。収束した節点の座標は、節点の名前と対応付けられて、格納部110に格納される。
【0066】
このようにして節点の位置が調整されることで、メッシュの位置や大きさが調整される。
【0067】
(変形例)
図14及び図15は、本実施形態の変形例を説明する図である。上記のステップS101において、第1メッシュ領域を作成する際、対象領域の形状によっては、図14のように、第1メッシュ領域が2以上に分離することがある。このような場合、第1メッシュ領
域設定部102は、格子を全体的に平行移動する、格子を全体的に回転することなどにより、第1メッシュ領域を1つの塊(集合体)にすることができる。また、第1メッシュ領域設定部102は、第1メッシュ領域の塊のうちの1つを第1メッシュ領域として採用して、処理をすすめることもできる。
【0068】
さらに、図15のように、第1メッシュ領域設定部102は、格子の間隔を小さくすることで、確実に、第1メッシュ領域を1つの塊にすることが可能である。
【0069】
(具体例1)
図16は、従来の方法によるメッシュ生成と本実施形態のメッシュ生成による不良メッシュの数を示すグラフの例である。図16のグラフの横軸は、全メッシュ数であり、縦軸は、不良メッシュ数である。図16の例において、従来のトーラスプラズマのポロダイル断面における一般的なメッシュ作成方法による不良メッシュの数と、本実施形態におけるメッシュ作成方法による不良メッシュの数を比較している。
【0070】
従来の方法では、全メッシュ数が増えるのに従って、不良メッシュの数も増える傾向にある。しかし、本実施形態の方法では、全メッシュ数が1000以下では、不良メッシュの数は、全メッシュ数が増えるのに従って不良メッシュの数は増えるが、全メッシュ数が1000を超えると、全メッシュ数が増えるのに従って不良メッシュの数が減少する。従って、本実施形態の方法は、全メッシュ数が増えれば増えるほど従来の方法に比べて有利な方法である。
【0071】
(具体例2)
図17は、本実施形態の具体例を示す図である。図17は、本実施形態の方法で、メッシュを作成した例である。
【0072】
図17(a)は、対象領域の例である。この対象領域は、核融合炉Dシェープの例である。図17(b)は、第1メッシュ領域の例である。対象領域の中央部分に、5×5の第1メッシュが配置されている。図17(c)は、第2メッシュ領域を設定した例である。第1メッシュ領域の外周の各節点から対象領域の各節点に接続されている。図17(d)は、位置調整部108による位置調整の例である。図17(d)の左の図から右の図に従って、位置調整部108による位置調整が繰り返される様子を示している。位置調整が繰り返されるのに従って、メッシュの大きさが均等に近づいていることが分かる。
【0073】
(具体例3)
図18は、トカマクプラズマの計算例を示す図である。図18の左図は、計算の対象である磁気面を有するトカマクプラズマである。図18の左図の線は等磁束線を表し、数値(単位:Wb)はその等磁束線の磁束を示しています。図18の左図の最も外側にある磁気面(0Wb)をメッシュ作成領域(対象領域)としている。
【0074】
図18の右図は、図18の左図の状態において、本実施形態のメッシュ作成方法でメッシュを作成した後に磁場計算をしたもの(ケース1、▲)、トーラスプラズマで一般的な方法でメッシュ生成した後に磁場計算をしたもの(ケース2、□)を示す。
【0075】
全メッシュ数はケース1で1140個、ケース2で1141個である。また、不良メッシュ数はケース1で5個、ケース2で10個である。図18の右図は、それぞれの計算法における計算誤差の、高さ位置0mでの横方向分布を示している。本実施形態の方法における誤差が、トーラスプラズマで一般的な方法における誤差よりも小さくなっていることがわかる。数値を挙げると、本実施形態の方法における誤差の平均は0.38%であるのに対し、トーラスプラズマで一般的な方法の誤差の平均は1.8%である。
【0076】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態のメッシュ作成装置100は、対象領域内に複数の四角メッシュを配置し、これらメッシュの外周の節点と対象領域の外周の節点とを接続して対象領域内全域に四角メッシュを作成する。さらに、メッシュ作成装置100は、作成した四角メッシュの節点をラプラシアン法などにより位置調整をすることにより、対象領域内にメッシュを作成する。
【0077】
本実施形態のメッシュ作成装置100によれば、従来の方法と比べて、対象領域に不良メッシュが少ないメッシュを作成することができる。本実施形態のメッシュ作成装置100によるメッシュを用いて数値計算をすると、従来の方法によって作成されたメッシュを用いる数値計算と比べて、誤差の少ない計算結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
ここで説明したメッシュ作成装置100は、例えば、トカマク制御装置において適用可能である。トカマク制御装置では、磁場計測装置やレーザー計測装置などプラズマに対し非接触状態で計測したデータを拘束条件としてプラズマ内部の磁場分布が計算される。その際に、トカマク制御装置は、プラズマ領域内に対して本発明のメッシュ生成法を用いてメッシュ生成を行い、有限要素法を用いて磁場を計算する。希望するプラズマの状態が計算結果と異なる場合は、コイル電流、電磁波加熱装置、中性粒子ビーム装置などを用いてプラズマ状態が制御される。
【0079】
また、ここで説明したメッシュ作成装置100は、所定の領域において、メッシュを作成して有限要素法などにより数値計算をする際に、利用できる。メッシュ作成装置100は、例えば、原子炉の熱流動解析、自動車の走行解析、航空機の飛行解析、DNA解析、気象解析、電磁場解析、空調解析等、分野を問わず汎用的に使用されうる。
【符号の説明】
【0080】
100 メッシュ作成装置
102 第1メッシュ領域設定部
104 外周設定部
106 第2メッシュ領域設定部
108 位置調整部
110 格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ作成の対象領域に、所定寸法の第1メッシュを含む第1メッシュ領域を設定する第1メッシュ領域設定部と、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点数と同数の節点候補を前記対象領域の外周上に所定の配置仕様で設定する外周設定部と、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点と前記節点候補とを対応づけた線分を設定し、前記第1メッシュ領域の外周から前記対象領域の外周に至る部分に第2メッシュを設定する第2メッシュ領域設定部と、
前記第1メッシュと前記第2メッシュとを含む前記メッシュ作成の対象領域中のメッシュ節点にラプラシアン法による節点位置調整処理を少なくとも1回適用する位置調整部とを、
備えるメッシュ作成装置。
【請求項2】
コンピュータが実行するメッシュ作成方法であって、
メッシュ作成の対象領域に、所定寸法の第1メッシュを含む第1メッシュ領域を設定するステップと、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点数と同数の節点候補を前記対象領域の外周上に所定の配置仕様で設定するステップと、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点と前記節点候補とを対応づけた線分を設定し、前記第1メッシュ領域の外周から前記対象領域の外周に至る部分に第2メッシュを設定するステップと、
前記第1メッシュと前記第2メッシュとを含む前記メッシュ作成の対象領域中のメッシュ節点にラプラシアン法による節点位置調整処理を少なくとも1回適用するステップとを、
実行するメッシュ作成方法。
【請求項3】
コンピュータに、
メッシュ作成の対象領域に、所定寸法の第1メッシュを含む第1メッシュ領域を設定するステップと、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点数と同数の節点候補を前記対象領域の外周上に所定の配置仕様で設定するステップと、
前記第1メッシュ領域の外周上のメッシュの節点と前記節点候補とを対応づけた線分を設定し、前記第1メッシュ領域の外周から前記対象領域の外周に至る部分に第2メッシュを設定するステップと、
前記第1メッシュと前記第2メッシュとを含む前記メッシュ作成の対象領域中のメッシュ節点にラプラシアン法による節点位置調整処理を少なくとも1回適用するステップとを、
実行させるためのメッシュ作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−88988(P2013−88988A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228359(P2011−228359)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】