説明

メッシュ生地およびメッシュ衣服

【課題】通気性および遮光性を兼ね備えたメッシュ生地を提供する。
【解決手段】編織物によりグランド部分2を構成し、グランド部分2で囲まれたメッシュホール部分3を形成する。メッシュホール部分3には、複数本の横断糸4を任意の方向に配置して、遮光性を高めるとともに、通気度が100cc/平方センチメートル/sec以上、紫外線遮蔽率が80%以上、引裂強力が7N×7N以上、破裂強力が3coKPA以上のメッシュ生地とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ生地およびメッシュ衣服に関し、特に、通気性および遮光性に優れたメッシュ生地およびこのメッシュ生地を用いたメッシュ衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外で活動する人にとって、「暑い」という感覚は、直射日光などによる外気温度の上昇による要因のほか、活動などにより体温が上昇することにより人体から発生した熱気を帯びた湿気が衣服内で滞留し、人体の皮膚が持つラジエータ機能を損なうことにより生じる。そこで、このような直射日光の影響を抑制しうるように、遮光性を持たせるとともに、外から新たな空気を継続的に流入させて熱湿気を外に発散させ得るように、通気性を持たせた生地の衣服であれば暑さ対策に有効である。
【0003】
従来、運動着や作業服に用いられる、冷却感に優れる生地として、メッシュホール部分と編織物からなるグランド部分からなる生地が開示されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−138310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような、メッシュホール部分を備えた生地を使用した衣服は、通気性は比較的良好であるが、メッシュホール部分から直射日光を通しやすく、遮光性に難点がある。このような傾向は、メッシュホール部分の占める面積を大きくするほど著しく、生地に通気性と遮光性の両方の機能を備えることは困難であった。そのため、このようなメッシュ生地を用いた衣服を屋外で着用した場合、直射日光が人体に当たり、冷却感が損なわれるばかりでなく、外部からメッシュ衣服の内部が透けて見えるという問題も生じるため、メッシュ衣服を屋外で着用することは困難であった。
【0006】
さらにまた、メッシュ生地を使用したメッシュ衣服を作業服とする場合、高い強度が要求されるが、メッシュホールが大きいメッシュ生地では、強度が小さく、作業服には適さないという問題もがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、通気性および遮光性を兼ね備え、かつ、強度の大きいメッシュ生地およびメッシュ衣服を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載のメッシュ生地は、編織物により構成されたグランド部分と、該グランド部分で囲まれたメッシュホール部分と、該メッシュホール部分に配置された複数本の横断糸とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載のメッシュ生地は、前記横断糸は、異なる方向に配置してこれらを交差させて格子状とするものである。
【0010】
請求項3記載のメッシュ生地は、前記グランド部分がフロント糸、バック糸および第2のミドル糸により構成され、前記横断糸がミドル糸で構成された4層構造とするものである。
【0011】
請求項4記載のメッシュ生地は、通気度が100cc/平方センチメートル/sec以上、紫外線遮蔽率が80%以上としたものである。
【0012】
請求項5記載のメッシュ生地は、引裂強力が7N×7N以上、破裂強力が3coKPA以上としたものである。
【0013】
本発明のメッシュ衣服は、請求項1ないし5記載のメッシュ生地により構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のメッシュ生地によれば、メッシュホール部分に、グランド部分から出た複数本の横断糸を配置した構成としたので、メッシュホール部分による通気性の確保とともに、横断糸により遮光性を持たせることができ、通気性および遮光性に優れたメッシュ生地が得られる。さらにまた、横断糸により生地全体が補強され、しわや引っ張り力に対して強度の大きいメッシュ生地が得られる。
【0015】
また、本発明のメッシュ衣服によれば、横断糸による遮光効果により、直射日光による体温上昇が抑制されるとともに、体温により発生した熱気を帯びた湿気はメッシュホール部分から発散し、衣服内で滞留することが避けられるため、遮光効果と通気効果があいまって冷却効果に優れるとともに、横断糸により補強され、強度が大きいため、屋外での作業服に最適のメッシュ衣服が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のメッシュ生地の一実施形態を示す表面の拡大図である。
【図2】本発明のメッシュ生地の他の実施形態を示す表面の拡大図である。
【図3】本発明のメッシュ生地を製造する上でのワープニット設計表である。
【図4】本発明のメッシュ生地の編組織図である。
【図5】本発明のメッシュ生地の編成図である。
【図6】本発明のメッシュ生地を使用した製品について通気度を試験した結果を示す図表である。
【図7】本発明のメッシュ生地と従来のメッシュ生地および一般的な夏服の紫外線遮蔽率および紫外線透過率を試験した結果を示す図表である。
【図8】本発明のメッシュ生地で作られたメッシュ衣服の一実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のメッシュ生地の表面の拡大図であって、メッシュ生地1は、丸編や経編などのニット又は織物で形成されたもので、このような編織物からなるグランド部分2と、メッシュホール部分3と、グランド部分2から出てメッシュホール部分3に配置された複数本の横断糸4とから構成されるものである。なお、図示の例では、横断糸4はメッシュホール部分3に横方向に配置された構成を示しているが、衣服として使用時には、横断糸4は縦方向あるいは斜め方向に向くこともあり、横断糸4の配置方向は不定であるため、いかなる配置方向であっても横断糸という用語に含むものとする。また、図2に示すように、方向の異なる2種の横断糸4、4´を交差させて格子状とすることも可能である。このように、メッシュホール部分3に、横断糸4を設けることにより、通気性を損うことなく、遮光性、透け防止に優れ、かつ横断糸4により補強されるため、強度の大きいメッシュ生地を構成することができる。
【0018】
グランド部分2を構成する糸の素材としては、合成繊維でも天然繊維でもよいが、メッシュホール部分を通過する気流のホース効果の点からは、グランド部分の主体は、毛羽のない合成繊維が好ましい。合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ポリイミド繊維などが例示され、これらの合成繊維を単独もしくは組み合わせて、編織物を製造する。より具体的には、グランド部分を構成する糸は、セミダルウーリー加工糸、およびカーボン糸が好適であり、横断糸としてはフルダル糸が好適に使用される。
【0019】
前述のように、屋外で活動する人にとって、「暑い」という感覚は、直射日光などによる外気温度の上昇と、体内の熱湿気が衣服内で滞留することにより生じるので、本発明のメッシュ生地を使用したメッシュ衣服では、直射日光を遮る遮光性と、熱湿気を逃し得る通気性を兼ね備えるように構成されている。
【0020】
通気性を持たせるために、本発明のメッシュ生地1には、気流の通り道となるメッシュホール部分3が設けられ、かつ、遮光性を持たせるとともに強度を高めるために、メッシュホール部分3に横断糸4を配置したものである。
【0021】
本発明のメッシュ生地1のグランド部分2の肌面側に凹凸を形成させることが好ましい。この肌面側に形成させた凹凸により、肌離れ性を高めることで、乱流の発生を促し、冷却感を持続させることができる(乱流効果)。すなわち、生地の肌面側に凹凸を形成させると、その肌離れ性により、生地が肌にくっつくことによる衣服内空間の破壊が防ぐことができる。また、肌面側にある凹凸が、衣服内に発生した気流を強く乱すため、静止空気層を動かし易くなる。これら生地の肌面側の凹凸は、織編組織により作ってもかまわないし、樹脂からなるドットプリントなどにより、形成させてもよい。
【0022】
本発明により得られた生地は、抗菌防臭加工や消臭加工、UVカット加工、帯電防止加工、保湿加工、涼感加工、芳香加工、防虫加工、難燃加工など、種々の機能加工と組み合わせてもよい。
【0023】
図3は、本発明のメッシュ生地を製造する上でのワープニット設計表の一例を示している。
図4は、同ワープニット設計表に基づくメッシュ生地の編組織であって、左から、フロント(F)、ミドル(M´)、ミドル第2(M)、バック(B)の各筬の編組織を示している。
【0024】
図5は、フロント(F)、バック(B)、ミドル(M´)およびミドル第2(M)の各筬の編組織例を示している。フロント(F)、ミドル第2(M)、バック(B)の各筬により、メッシュ生地のグランド部分2(メッシュホール部分3を囲む部分)を編成し、ミドル(M´)の筬によりメッシュホール部分3を横断する横断糸4(一部のみ図示している)を形成している。
【0025】
次に、代表的な実施例を示し、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
トリコット編機(136インチ、28ゲージ)を用い、下記の糸使い、条件でディンプルメッシュを編成、加工し、コース密度57コース/インチ、ウエール密度31ウエール/インチ、目付268g/mの8ディンプルメッシュ生地を得た。
【0027】
(1)糸使い、条件
F(フロント)オサ
・糸 :ポリエステル(84dtex、36フィラメント:セミダル)
・糸配置 :3イン 1アウト
・ランナー :145cm/480コース
・編組織 :3:4/3:2/3:4/3:2/1:0/1:2/1:0/1:2/
M´(ミドル)オサ
・糸 :B(84dtex、36フィラメント:フルダル)
・糸配置 :2アウト2イン
・ランナー :180cm/480コース
・編組織 :0:0/5:5/0:0/3:3/7:7/2:2/7:7/4:4/
M(ミドル第2)オサ
・糸 :ポリエステル丸断面カーボン糸(22dtex)
・糸配置 :1(2本)イン3アウト
・ランナー :63cm/480コース
・編組織 :4:4/2:2/4:4/2:2/0:0/2:2/0:0/2:2/
B(バック)オサ
・糸 :ポリエステル(84dtex)36フィラメント:セミダル
・糸配置 :1アウト3イン
・ランナー :135cm/480コース
・編組織 :1:0/1:2/1:0/1:2/3:4/3:2/3:4/3:2/
【0028】
(2)加工条件
得られた生機を連続精練機で精練し、通常の方法で、プレセットを実施した後、染色を行い染色後の生地に吸水加工処理を行い、170℃×45秒で仕上げセットを行った。
【0029】
図1は、実施例で得られた生地1の表面の拡大図であって、略菱形のメッシュホール部分3を囲むように生地のグランド部分2が経編組織により形成され、このメッシュホール部分3にミドルM´の筬によりつくられた横断糸4が設けられている。実施例で得られたメッシュ生地1は、10平方センチメートルの大きさの生地の中に1682個のメッシュホール部分3が存在している。
【0030】
図6は、上記実施例で作成された本発明のメッシュ生地を使用したシャツ・パンツについて、引裂強力、破裂強力および通気度を試験した結果を示す図である。同図で明らかなように、引裂強力は7N×7N、破裂強力は3coKPA、通気度は、223cc/平方センチメートル/secであった。すなわち、通気度は、目標とする100cc/平方センチメートル/secを上回るとともに、作業着として必要な引裂強力および破裂強力が得られた。
【0031】
上記実施例では、横断糸4は横向きであるが、前述のように縦向きでも斜め向きでも、あるいは格子状のいずれでもよい。
【0032】
図7は、本発明に係るメッシュ生地(本発明品)の紫外線遮蔽率および紫外線透過率を試験した結果を示している。なお、比較例1として横断糸を有しない従来の一般的なメッシュ素材、比較例2として平織夏物素材、比較例3としてピケ夏物素材についても同様の試験を行った結果も示している。同図で明らかなように、本発明品は、比較例2および3とほぼ同等の紫外線遮蔽率および紫外線透過率を有することが確かめられた。また、従来の一般的なメッシュ素材(比較例1)は、本発明品に比べて紫外線遮蔽率が小さく、紫外線透過率が大きいことが確かめられた。
【0033】
図8は、全体が本発明のメッシュ生地1で作られたメッシュ衣服の一例である作業服の一実施形態を示す正面図である。
【0034】
図示の作業服10は、前部左右には前身ごろ11、後部には背部12、上部に襟部13、両側には袖部14が形成され、前身ごろ11には、前ポケット15が形成されている。この作業服は、全体が図1に示すようなメッシュ生地1により形成されている。必要に応じて、脇下部分や袖口部分などの皺が生じやすい部分には補強布16をあてがうことも可能である。本発明のメッシュ生地1を使用した作業服10は、通気性および遮光性に優れるとともに、横断糸4により補強されため、強度が大きく、炎天下での労働に適した作業服が得られる。
【符号の説明】
【0035】
1 メッシュ生地
2 グランド部分
3 メッシュホール部分
4 横断糸
11 メッシュ衣服
F フロント筬
M´ ミドル筬
M ミドル第2筬
B バック筬


【特許請求の範囲】
【請求項1】
編織物により構成されたグランド部分と、
該グランド部分で囲まれたメッシュホール部分と、
該メッシュホール部分に配置された複数本の横断糸とを備えたことを特徴とするメッシュ生地。
【請求項2】
前記横断糸を交差させて格子状としたことを特徴とする請求項1記載のメッシュ生地。
【請求項3】
前記グランド部分がフロント糸、バック糸および第2のミドル糸により構成され、前記横断糸がミドル糸で構成された4層構造であることを特徴とする請求項1記載のメッシュ生地。
【請求項4】
通気度が100cc/平方センチメートル/sec以上、紫外線遮蔽率が80%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のメッシュ生地。
【請求項5】
引裂強力が7N×7N以上、破裂強力が3coKPA以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のメッシュ生地。
【請求項6】
請求項1ないし5記載のメッシュ生地により構成されたことを特徴とするメッシュ衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−26058(P2012−26058A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166933(P2010−166933)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(390006079)東洋物産株式会社 (5)
【出願人】(392015790)冨士経編株式会社 (1)
【Fターム(参考)】