説明

メッセージカード付き物品及び落し物の回収方法

【課題】物品の持ち主が個人情報を不特定の他人に知られることなく、落し物を回収することが可能なメッセージカード付き物品及び落し物の回収方法を提案する。
【解決手段】メッセージカード12付き物品2であって、上記物品は、物品の持ち主を特定するための情報を書き込むための個人情報記入欄4を有し、上記メッセージカードは、表面にメッセージ印刷面をかつ裏面に接着面を有する、シールタイプのカード本体12aと、上記接着面を保護する剥離用シート12bとで構成され、このメッセージカードは、個人情報記入欄の全体を覆うことが可能な大きさを有し、上記メッセージ印刷面には、物品の持ち主に代わって落し物である物品を受領する仲介者の連絡先を表示する連絡先表示欄と、仲介者が拾得者に対して物品の届け出を呼びかけるメッセージ欄と、物品の持ち主の識別番号を表示する識別番号表示欄とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッセージカード付き物品及び落し物の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旅行カバンやリュックサックなどの携帯用物品に所有者表示用のタグ(いわゆる名札)を付けて当該物品が落し物となったときに当該物品の回収を容易にすることが行われている(特許文献1)。また手帳のような物品は、殆どの場合に住所氏名を記載する欄が設けられており(非特許文献1)、置き忘れたときでも拾得物として届けられることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−048194
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】平成23年8月11日検索「手帳の使い方について−手帳を紛失したときのために」 http://siegfried-info2.net/techo/cat0001/1000000018.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く物品の持ち主の氏名・住所を当該物品に表記する方法は、忘れ物を回収する上で便利であるが、その反面、個人情報を他人に知られてしまう不具合がある。特に手帳の場合には、本人のスケジュールや趣味などプライベートな情報が書き込まれることが多く、その手帳の持ち主が自分であると特定されるデメリットを考慮して、氏名・住所を書き込むことをためらうユーザーが少なくない。
【0006】
本発明の目的は、物品の持ち主が個人情報を不特定の他人に知られることなく、落し物を回収することが可能なメッセージカード付き物品及び落し物の回収方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、メッセージカード付き物品であって、
上記物品は、物品が落し物として拾われたときに拾得者が視認可能な個所に物品の持ち主を特定するための情報を書き込むための個人情報記入欄を有しており、
上記メッセージカードは、表面にメッセージ印刷面をかつ裏面に接着面を有する、シールタイプのカード本体と、上記接着面を保護する剥離用シートとで構成され、
このメッセージカードは、上記個人情報記入欄に隣接する箇所に配置され、かつ個人情報記入欄の全体を覆うことが可能な大きさを有しており、
上記メッセージ印刷面には、物品が落し物として拾われた場合に物品の持ち主に代わって当該物品を受領する任務を有する仲介者の連絡先を表示する連絡先表示欄と、その仲介者が拾得者に対して物品の届け出を呼びかけるメッセージ欄と、物品の持ち主の識別番号を表示する識別番号表示欄とが形成されていることを特徴とする。
【0008】
本手段では、図1に示すように持ち主の個人情報表示欄4に隣接する箇所に同欄を覆うことが可能な大きさのメッセージカード12付き物品2を提案する。もともとの持ち主の氏名などの個人情報表示欄をメッセージカードで覆うことが可能であることが回収率を高めるための有利な工夫となっている。上記の欄が空欄であると、連絡先不明と誤解される可能性があるからである。これについては後述する。
【0009】
第2の手段は、第1の手段を有し、
上記物品は手帳であり、
この手帳は、表裏2枚の表装リーフとこれら表装リーフの間に束ねられた複数のノート用紙とを有し、これらノート用紙で形成するページのうちの最終ページ、又はこの最終ページと向かい合う裏側の表装リーフの内面に、手帳の持ち主を特定するための情報を書き込むための上記個人情報記入欄が印刷してあり、
上記メッセージカードは、手帳から不意に脱落しない程度の拘束力で手帳に連係されている。
【0010】
本手段では、上記物品を手帳としている。手帳以外の印刷物、例えば書籍なども構造的に本手段を適用することが可能であるが、前述の通りプライベートな情報が書き込まれる手帳の方が本手段を必要とする要請が強いと思われる。
【0011】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段に記載のメッセージカード付き物品を用いた落し物回収方法であって、
物品の持ち主に代わって回収業務を行う業務を有する仲介者が物品の持ち主からの業務の依頼により少なくとも物品の持ち主のアドレスを含む個人情報を持ち主名簿に記録する第1の行程と、
上記仲介者が上記要請を行った物品の持ち主に対して持ち主の識別番号を設定する第2の行程と、
上記物品が落し物となり、拾得者から当該物品を拾った旨の連絡が仲介者に対してあったときに、仲介者が物品の持ち主に代わって当該物品を受領する第3の行程と、
上記仲介者が、物品の持ち主に対して、拾われた物品を届ける第4の行程と、
からなる。
【0012】
本手段では、メッセージカード付き物品のメッセージカードを介在して落し物を回収する方法を提案している(図4参照)。持ち主の氏名などを識別番号とともに名簿に利用するので仲介者にとっては顧客情報としての価値も存する。
【0013】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ記持ち主の識別番号は予めメッセージカードに記載されており、物品の持ち主の要請の際に、仲介者が当該物品の持ち主に対して物品に記載した識別番号を知らせるように促すことを特徴とする。
【0014】
本手段では、メッセージカードに持ち主の識別番号を予め記載しておく方法を提案する。その識別番号は例えば連続した番号でよいので、仲介者が識別番号を決定し、持ち主に通知する手間が省ける。
【発明の効果】
【0015】
第1の手段及び第3の手段に係る発明によれば、仲介者の連絡先を記載したメッセージカード12付き物品2を用いて、落し物を回収するから、物品の持ち主の個人情報を拾得者に知られることを回避できる。また第1の手段に係る方法によれば、持ち主の個人情報表示欄4に隣接する箇所に同欄を覆うことが可能なメッセージカードを設けているから、拾得者が空欄の個人情報表示欄4をみて連絡不可能と誤解することを防止できる。
第2の手段に係る発明によれば、メッセージカード12は、最終ページ10aに貼付するから、拾得者の目に止まり易い。
第4の手段に係る発明によれば、予め識別番号をメッセージカード12に印刷するから、識別番号の付与の業務が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のメッセージカード付き物品の第1実施形態の概念図である。
【図2】図1の物品のメッセージカードの平面図である。
【図3】図1の物品の実施例の遮視図である。
【図4】図1の物品を用いた落とし物回収方法の概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1から図3は、本発明の実施形態に係るメッセージカード付きの物品を示している。図1中、2が物品、12がメッセージカードである。当該物品は、本実施形態では手帳としているが、持ち主が携帯して利用し、落し物をする可能性のある物品に広く利用できる。
【0018】
上記物品2は、拾得者から見える適所に持ち主の氏名や住所を記載する個人情報記入欄4を有する。「拾得者から見える箇所」とは、手帳を開いて見える場所、鞄を開いて見える内部構造を含む。
【0019】
物品2である手帳は、従来公知のように表裏の表装リーフ6、8と、これら表装リーフの間に束ねられたノート用紙10とを有する。そして、図1に示すように、このノート用紙の表面で形成されるノート用ページのうちの最終ページ10aに上記個人情報記入欄4を設けるとよい。市販の手帳では、手帳の最後の方に個人情報記入欄が存在することが多いからである。上記最終ページ10aに替えて、裏側の表装リーフ8の内面8aに上記個人情報記入欄6を設けてもよい。
【0020】
メッセージカード12は、表面に印刷面14を、かつ裏面に接着面を有するカード本体12aと、その接着面を保護する剥離用シート12bとからなり(図3参照)、この剥離用シート12bを剥がしてカード本体12aを物品2に貼着するシール機能を有する。上記接着面はノート用紙10に対して剥離不能とすることができる。
【0021】
メッセージカードの印刷面14には、図2に示すように、物品の拾得者に対して連絡及び物品の返還を呼びかけるメッセージ欄14aと、落とし物回収サービスを業として行う者の連絡先を表示する連絡先表示欄14bと、物品の持ち主を表示する識別番号表示欄14cとを形成する。
【0022】
ここで、メッセージカード12付きの物品2とは、流通時に物品2から不意にメッセージカード12が脱落しないようにしたものをいう。例えば図3(A)に示すようにそのメッセージカード12を説明書(図示せず)などとともに収納袋16に収納して、この収納袋ごと物品2に貼り付けてもよく、また図3(B)のようにメッセージカード12を、破断線18を介して物品2である手帳に織り込んでも構わない。
【0023】
上記メッセージカード12の配置箇所は、上記個人情報記入欄4と隣接する箇所、或いは個人情報記入欄4と同じ見開きの範囲内になっていることが望ましい。またメッセージカード12の大きさは、上記個人情報記入欄4の全体を覆うことが可能な大きさとする。このメッセージカード12の使用説明書、または当該カードの設置箇所の近くには、メッセージカード12を個人情報記入欄4の上に重ねて貼るとよい旨を記載する。
【0024】
上記構成において、物品2の持ち主は、個人情報記入欄4に記載した情報を拾得者に見られても構わないときには、同欄に自身の氏名・住所を記載すればよい。またそうした情報を人に見られたくないときには、個人情報記入欄4の上にメッセージカード12を貼着し、このメッセージカードの所定の欄に後述の方法で得た識別番号を記載するとよい。この識別番号により物品2の持ち主が特定できるので、拾得物が返還される可能性が高まる。
【0025】
メッセージカード12は物品2のどこに貼着しても構わないように思われるが、多数のリーフやメモ用紙からなる手帳などでは、任意の場所にメッセージカード12を貼着しても拾得者がメッセージに気がつくとは限らない。殆どの市販の手帳では最後の方に個人情報記入欄4があるので、別の場所にメッセージカード12を貼っても、空白の個人情報記入欄を見た拾得者が連絡先不明と誤認する可能性が高く、そうなると拾得物の回収率が低下する。手帳以外の物品(リュックサックなど)でも、設計者は目につきやすい場所を選んで氏名などの個人情報表示欄を設定するので、別の場所にメッセージカード12を設けると同様の誤解を生ずる可能性がある。
【0026】
上記の事情を踏まえ、本発明では、本実施形態では、個人情報記入欄4に隣接する箇所にメッセージカード12を付設している。仮に個人情報記入欄4と無関係の場所(例えば前側の表装リーフ6の内面)にメッセージカード12を付設した構成とした場合には、利用者はその近くにメッセージカード12を貼着する可能性が高いからである。
【0027】
また手帳を使い始めた当初には、個人情報記入欄4を他人に個人情報を見られても構わないと考えていたが、使っているうちにいろんな情報を書き込むことになり、個人情報を見られたくないと考えるに至ることも考えられる。この場合には、個人情報記入欄4にメッセージカード12を貼付することで、個人情報を秘匿することが可能となる。この場合には、メッセージカード12の接着面はノート用紙10に対して剥離不能に(無理やり剥がそうとすると破れてしまうように)設けることが好適である。
【0028】
図4は、本発明の落とし物回収方法を概略的に描いている。同図中、Xは仲介者、Yは物品の持ち主、Zは物品の拾得者である。
【0029】
(イ)第1の行程(登録行程)
この行程では、物品の持ち主に代わって回収業務を行う業務を有する仲介者Xが物品の持ち主Yからの業務の依頼により少なくとも物品の持ち主のアドレスを含む個人情報を持ち主名簿に記録する。持ち主との通信手段は電話・メールなどで行うことができる(後述の拾得者の場合も同様)。
(ロ)第2の行程(登録番号の設定)
この行程では、仲介者Xが上記要請を行った物品の持ち主Yに対して持ち主の識別番号(数字だけではなく文字の組合せでもよい)を設定する。要請があった段階で順次登録番号を付与してもよいが、予めメッセージカードに登録番号を記載しておき、物品の持ち主Yから要請があったときに、物品に記載された番号を聴取するようにしてもよい。さらに物品の持ち主が決めた識別番号を仲介者Xに伝えて登録してもよい。
(ハ)第3の行程(物品の回収)
この行程では、上記物品が落し物となり、拾得者Zから当該物品を拾った旨の連絡が仲者に対してあったときに、仲介者Aが物品の持ち主に代わって当該物品を受領する。
(ニ)第4の行程(物品の返還)
上記仲介者Xが、物品の持ち主Yに対して、拾われた物品を返還する。
【符号の説明】
【0030】
2…物品 4…個人情報記入欄 6、8…表装リーフ 8a…表装リーフ内面
10…ノート用紙 10a…最終ページ
12…メッセージカード 12a…カード本体 12b…剥離用シート
14…印刷面 14a…メッセージ欄 14b…連絡先表示欄
14c…識別番号表示 16…収納袋 18…破断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッセージカード付き物品であって、
上記物品は、物品が落し物として拾われたときに拾得者が視認可能な個所に物品の持ち主を特定するための情報を書き込むための個人情報記入欄を有しており、
上記メッセージカードは、表面にメッセージ印刷面をかつ裏面に接着面を有する、シールタイプのカード本体と、上記接着面を保護する剥離用シートとで構成され、
このメッセージカードは、上記個人情報記入欄に隣接する箇所に配置され、かつ個人情報記入欄の全体を覆うことが可能な大きさを有しており、
上記メッセージ印刷面には、物品が落し物として拾われた場合に物品の持ち主に代わって当該物品を受領する任務を有する仲介者の連絡先を表示する連絡先表示欄と、その仲介者が拾得者に対して物品の届け出を呼びかけるメッセージ欄と、物品の持ち主の識別番号を表示する識別番号表示欄とが形成されていることを特徴とする、メッセージカード付き物品。
【請求項2】
上記物品は手帳であり、
この手帳は、表裏2枚の表装リーフとこれら表装リーフの間に束ねられた複数のノート用紙とを有し、これらノート用紙で形成するページのうちの最終ページ、又はこの最終ページと向かい合う裏側の表装リーフの内面に、手帳の持ち主を特定するための情報を書き込むための上記個人情報記入欄が印刷してあり、
上記メッセージカードは、手帳から不意に脱落しない程度の拘束力で手帳に連係されていることを特徴とする、請求項1記載のメッセージカード付き物品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のメッセージカード付き物品を用いた落し物回収方法であって、
物品の持ち主に代わって回収業務を行う業務を有する仲介者が物品の持ち主からの業務の依頼により少なくとも物品の持ち主のアドレスを含む個人情報を持ち主名簿に記録する第1の行程と、
上記仲介者が上記要請を行った物品の持ち主に対して持ち主の識別番号を設定する第2の行程と、
上記物品が落し物となり、拾得者から当該物品を拾った旨の連絡が仲介者に対してあったときに、仲介者が物品の持ち主に代わって当該物品を受領する第3の行程と、
上記仲介者が、物品の持ち主に対して、拾われた物品を返還す4の行程と、
からなる落し物回収方法。
【請求項4】
上記持ち主の識別番号は予めメッセージカードに記載されており、物品の持ち主の要請の際に、仲介者が当該物品の持ち主に対して物品に記載した識別番号を知らせるように促すことを特徴とする、請求項3記載の落し物回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−39778(P2013−39778A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179160(P2011−179160)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(595137239)株式会社カンミ堂 (9)