説明

メディアの確認装置および確認方法

媒体を確認するための分類装置を生成するための方法。真性な媒体アイテムからの一組のトレーニング画像のすべてからの情報は、後で各トレーニング・セット画像をセグメント分割するために使用されるセグメント分割マップを形成する。特徴はセグメントから抽出され、好適には、1クラス統計的分類装置であることが好ましい分類装置を形成するために使用される。分類装置は、媒体が銀行券である場合、この方法で、偽造紙幣の例を使用しなくても、異なる貨幣および金種に対して迅速に容易に形成することができる。このような分類装置を使用する媒体確認装置およびこのような分類装置を使用して銀行券を確認するための方法についても説明する。好ましい実施形態の場合には、異なる数のセグメントを有する複数のセグメント分割マップが形成される。品質の高い偽造媒体アイテムが媒体アイテムの母集団内に入った場合には、媒体確認装置は、再トレーニングを行わなくても、多くの数のセグメントを有するセグメント分割マップの使用に切り替わることにより直ちに反応することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を確認するための方法および装置に関する。本発明は、特に、パスポート、小切手、銀行券、債権、株券または他のこのような媒体のような品質の向上した偽造媒体に反応することができるこのような方法および装置に関するものであるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2005年12月16日付けで出願された米国特許出願第11/305,537号の一部継続出願である2006年3月2日付けで出願された米国特許出願第11/366,147号の一部継続出願である。2006年3月2日付けで出願された米国特許出願第11/366,147号および2005年12月16日付けで出願された米国特許出願第11/305,537号は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0003】
簡単で、信頼性が高く、コスト・パフォーマンスの良い方法で、異なる貨幣および金種の銀行券の自動検証および確認に対するニーズはますます増大している。このようなチェックおよび確認は、例えば、セルフサービス・キオスク、券売機、預金を受け入れるように配置されている自動金銭受け払い機、セルフサービス両替機等のような銀行券を受け入れるセルフサービス装置の場合に必要になる。
【0004】
以前は、媒体確認のための手動式方法は、銀行券、パスポート、小切手等の画像のチェック、すかしのような透過効果、および糸のすき入れ(thread registration mark)、銀行券の手触りおよびさらに匂いを含んでいた。他の周知の方法は、半手動式質問を必要とする半ば公然の特徴に依存していた。例えば、磁気的手段、紫外線センサ、蛍光、赤外線検出器、キャパシタンス、金属ストリップ、画像パターンおよび類似のものを使用していた。しかし、これらの性質そのものにより、これらの方法は手動式または半手動式であり、長時間手動の介入を使用することができない多くの用途に適していない。例えば、セルフサービス装置には適していない。
【0005】
自動貨幣確認装置を作成するには、かなり面倒な問題を克服しなければならない。例えば、異なるセキュリティ形体(security feature)および基材のタイプと一緒に多くの異なるタイプの貨幣が存在する。これらの異なる金種においても、異なるレベルのセキュリティ形体を含むものが共通に存在する。それ故、これらの異なる貨幣および金種に対して容易にまた簡単に貨幣の確認を行うための一般的な方法が求められている。
【0006】
以前の自動確認方法は、通常、分類装置をトレーニングするために知らなければならない偽造紙幣の比較的多数の例を必要とした。さらに、これらの以前の分類装置は、既知の偽造紙幣のみを検出するためにトレーニングされる。このことは厄介なことである。何故なら、多くの場合、可能な偽造についての情報はほとんど入手することができないか、または全然入手することができないからである。例えば、このことは、新しく導入された金種または新しく導入された貨幣の場合に特に問題になる。
【0007】
Chao He、Mark GirolamiおよびGary Ross(このうちの2人は本願の発明者である)のPattern Recognition 37(2004年)1085〜1096ページ掲載の、「Employing optimized combinations of one−class classifiers for automated currency validation」という名称の以前の論文に自動貨幣確認方法が開示されている(欧州特許第EP1484719号公報、米国第US2004247169号公報)。この方法は、グリッド構造を使用して銀行券全体の画像をいくつかの領域にセグメント分割するステップを含む。個々の「1クラス」分類装置は、各領域に対して組み立てられ、領域特定分類装置の小さなサブセットが全体の判定を提供するように組み合わされる。(「1クラス」という用語については以下にさらに詳細に説明する。)性能をよくするための領域特定分類装置のセグメント分割および組合せは、遺伝的アルゴリズムを使用することにより行われる。この方法は、遺伝的アルゴリズムの段階で少数の偽造サンプルを必要とするので、偽造データが入手できない場合には適していない。
【0008】
以前は、貨幣を確認する場合、通常、銀行券が真券であるか偽造紙幣であるかの分類しか行わなかった。しかし、最近になると、銀行券を偽造紙幣または真券の2つのクラスよりもっと多くのクラスに分類することが必要になってきている。例えば、追加のクラスは、銀行券が、真券および偽造紙幣のクラスの間に位置する「疑わしい」というクラスも含んでいる。異なる管轄区内の種々の法規要件は、通常、例えば、現金を受け入れたりまたは現金をリサイクルする自動金銭受け払い機、または自動販売機、キオスク等の他のセルフ・サービス装置のような銀行券確認システムで使用するクラスを規定している。
【特許文献1】欧州特許第EP1484719号公報
【特許文献2】米国第US2004247169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
真券または偽造紙幣に対して「疑わしい」とする銀行券の分類は、自動銀行券確認装置のユーザにとって金融上の意味を持つことができる。さらに、法規および商業的要件により、疑わしい銀行券と真券または偽造紙幣との間を区別するニーズが増大している。
【0010】
リアルタイムで実行することができる計算コストが安い方法での自動的な貨幣の確認も求められている。上記問題の多くは、パスポートおよび小切手のような他のタイプの媒体の確認にも適用される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
媒体を3つ以上のクラスに分類する媒体確認装置について説明する。真性な媒体からの一組のトレーニング画像のすべてからの情報は、後で各トレーニング・セット画像をセグメント分割するために使用される1つまたは複数のセグメント分割マップを形成するために使用される。特徴は、セグメントから抽出され、1つまたは複数の分類装置を形成するために使用される。分類装置は、この方法で、偽造媒体アイテムの例を使用しなくても、銀行券の貨幣および金種のような異なるタイプの媒体アイテムに対して迅速に容易に形成することができる。ある例の場合には、分類装置は、複数の予め指定した信頼水準で動作するように配置される。他の例の場合には、複数の分類装置が、異なるセグメントから入手した特徴情報から形成される。他の例の場合には、セグメント分割マップは、媒体アイテムの画像の異なる領域と関連している。媒体確認装置は、自動金銭受け払い機のようなセルフ・サービス装置に組み込むことができる。
【0012】
この方法は、記憶媒体上で機械可読形態でソフトウェアにより実行することができる。この方法ステップは、当業者であれば理解できると思うが、任意の適切な順序でおよび/または並列に実行することができる。
【0013】
このことは、ソフトウェアが、高価で、個々に取引することができる商品であり得ることを示している。所望の機能を実行するために、「ダム(dumb)」端末または標準ハードウェア上で稼働し、または制御するソフトウェアを含むことを意図していて、(およびそれ故、ソフトウェアが、媒体確認装置の機能を本質的に定義し、それ故、その標準ハードウェアと結合する前でも、媒体確認装置と呼ぶことができる)。類似の理由のために、所望の機能を実行する目的で、シリコンチップを設計するために、または汎用プログラマブル・チップを構成するために使用するように、HDL(ハードウェア記述言語)ソフトウェアのようなハードウェアの構成を「記述」または定義するソフトウェアを含めることを意図している。
【0014】
好適な機能は、当業者であれば理解できると思うが、必要に応じて組み合わせることもできるし、本発明の任意の態様と結合することもできる。
【0015】
添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。これらの例は、出願人が現在知っている本発明を実行するための最善の方法を示しているが、本発明は他の方法でも実行することができる。本明細書においては、これらの例は、銀行券確認システムで実施するものとして説明し、図示してあるが、このシステムは例示としてのものであって本発明を制限するためのものではない。当業者であれば理解することができると思うが、これらの例は、パスポート確認システム、小切手確認システム、債券確認システム、および株券確認システムを含むが、これらに限定されない種々のタイプの種々の媒体確認システムでの用途に適している。
【0017】
「1クラス分類装置」という用語は、1つのクラスからだけの例についての情報を使用して形成または構成する分類装置を指すために使用されるが、新しく提示された例をその1つのクラスに割り当てるか割り当てないかを決めるために使用される。これが、2つのクラスからの例についての情報を使用して形成され、これら2つのクラスの一方または他方に新しい例を割り当てるために使用される従来の2進分類装置と異なるところである。1つのクラスの分類装置は、その境界ではみ出す例が、既知のクラスに属さないと見なされるように、既知のクラスの周囲の境界を定義するものと見なされる。
【0018】
すでに説明したように、偽造紙幣かまたは真券という2つのクラスよりもっと多くのクラスへの銀行券の分類が求められている。例えば、追加のクラスは、銀行券が、真券および偽造紙幣のクラスの間に位置する「疑わしい」というクラスを含んでいる。下記のテーブルが4つの分類の例を示す。この例の場合には、銀行券は、認識不能(カテゴリ1)、偽造紙幣(カテゴリ2)、真券(カテゴリ4)、または疑わしい(カテゴリ3)のいずれかに分類される。
【0019】
【表1】

【0020】
図1は、銀行券確認のための分類装置を形成する方法のハイレベルの流れ図である。
【0021】
最初に、真券の画像のトレーニング・セットが入手される(図1のボックス10参照)。これらは、同じ貨幣および金種の銀行券から入手した同じタイプの画像である。画像のタイプは、画像の入手方法に関連し、これは当業者であれば周知の任意の方法で行われる。例えば、反射画像、透過画像、赤、青または緑のチャネルのうちの任意の色の画像、熱画像、赤外線画像、紫外線画像、x線画像または他の画像タイプを使用することができる。トレーニング・セットの画像は、登録されていて、同じサイズである。当業者であれば周知のように、必要な場合には、画像を整合し、適切なサイズにスケーリングするために、前処理を行うことができる。
【0022】
次に、本発明者らは、トレーニング・セットの画像からの情報を使用してセグメント分割マップを生成する(図1のボックス12参照)。セグメント分割マップは、複数のセグメントへの画像の分割方法に関する情報を含む。セグメントは、連続していなくてもよい。すなわち、所与のセグメントは、画像の異なる領域内に2つ以上のパッチを含むことができる。好適には、しかし、必ずしもそうする必要はないが、セグメント分割マップは、また、使用するための指定の数のセグメントを含むことが好ましい。
【0023】
本発明者らは、セグメント分割マップを使用して、トレーニング・セット内の各画像をセグメント分割する(図1のボックス14参照)。次に、本発明者らは、各トレーニング・セット画像内の各セグメントから1つまたは複数の特徴を抽出する(図1のボックス16参照)。「特徴(feature)」という用語は、セグメントの任意の統計的または他の特徴を意味する。例えば、平均画素輝度、中間画素輝度、画素輝度のモード、テクスチャ、ヒストグラム、フーリエ変換記述子、ウェーブレット変換記述子、および/またはセグメント内の任意の他の統計を意味する。
【0024】
次に、特徴情報を使用して分類装置が形成される(図1のボックス18参照)。当業者であれば周知のように、任意の適切なタイプの分類装置を使用することができる。本発明の特に好ましい実施形態の場合には、分類装置は、1クラス分類装置であり、偽造紙幣に関する情報を必要としない。しかし、当業者であれば周知のように、2進分類装置または任意の適切なタイプの他のタイプの分類装置も使用することができる。例えば、銀行券を3つ以上のクラス(例えば、真券、偽造紙幣および疑わしい等)に分類する必要がある場合には、適当な数のクラスに分類する分類装置を使用することができる。
【0025】
図1の方法を使用すれば、特定の貨幣および金種の銀行券の確認のための分類装置を簡単に、迅速に、効果的にまた自動的に形成することができる。他の貨幣または金種に対する分類装置を形成するためには、適当なトレーニング・セット画像でこの方法が反復して使用される。
【0026】
特定の例の場合には、2つのクラス、すなわち、真券または偽造紙幣だけに分類を行う1クラス分類装置が形成される。この場合、上記の「疑わしい」クラスのような追加のクラスを可能にする手段を必要とする場合がある。これを可能にするために、本発明者らは、各分類装置がセグメント分割マップからの1つのセグメントだけに関連している2つ以上の分類装置を形成するために、図1の方法を修正した(図2参照)。これにより、(セグメント分割マップ内に2つ以上のセグメントが存在すると仮定する)2つ以上の分類装置ができる。次に、分類装置の出力は、図3のところで以下に説明する2つ以上のクラスへの分類を行うために結合される。
【0027】
図2は、2つ以上の分類装置を生成するための図1の方法の修正方法を示す。1つの分類装置ではなく、複数の分類装置が形成される点を除けば、この方法は図1の方法と同じものである。各分類装置は、1つのセグメントからの特徴情報により形成される。
【0028】
図3に示すように、この方法により、本発明者らは、銀行券を3つ以上のクラスに分類することができる。分類(または確認)する銀行券は、自動銀行券確認装置に入力される(ボックス30参照)。銀行券の1つまたは複数の画像が、すでに説明したように、補足され、前処理される。次に、(本明細書に記載する方法のうちのいずれか、または他の適切な方法によりすでに形成済みの)セグメント分割マップが、銀行券の画像をK個のセグメントにセグメント分割するために使用される(ボックス32参照)。ここで、Kは、2以上の整数値である。
【0029】
情報は、K個のセグメントから抽出され(ボックス33参照)、本明細書に記載するように、または任意の他の適切な方法ですでに形成済みのK個の各分類装置内に入力される。すべての分類装置からの出力が、銀行券が真券であることを示している場合には、銀行券が真券であるという表示が行われる(ボックス35参照)。すべての分類装置からの出力が、銀行券が偽造紙幣であることを示している場合には、銀行券が偽造紙幣であるという表示が行われる(ボックス36参照)。1つまたは複数の分類装置が、銀行券が真券であることを示していて、1つまたは複数の他の分類装置が銀行券が偽造紙幣であることを示している場合には、銀行券が「疑わしい」という表示が行われる(ボックス37参照)。
【0030】
ここで、セグメント分割マップの形成について説明する。
【0031】
(発明の背景のところで説明したように)上記欧州特許第EP1484719号公報および米国特許第US2004247169号公報のところでは、セグメント分割マップを形成するために、画像面上でのグリッド構造の使用、および遺伝的アルゴリズム方法の使用を含むセグメント分割技術を使用した。そのため、偽造紙幣に関する情報を使用しなければならなくなり、遺伝的アルゴリズム探索を行う場合に、計算上のコストがかかるようになった。
【0032】
本発明は、多数の可能なセグメント分割マップ内で優れたセグメント分割マップを探索するために、遺伝的アルゴリズムまたは等価の方法を使用しないですむセグメント分割マップを形成するための異なる方法を使用する。これにより、計算に関するコストが低減し、性能が改善する。さらに、偽造紙幣に関する情報が必要なくなる。
【0033】
本発明者らは、通常、偽造プロセスにおいて、銀行券全体の模造の質を均一にすることは難しく、それ故、銀行券のある領域は他の領域と比較してうまくコピーするのがもっと難しいと考える。それ故、厳格に均一なグリッド・セグメント分割を使用するよりも、もっと精巧なセグメント分割を使用することにより銀行券の確認を改善することができることを認識している。本発明者らが行った経験的な試験は、全くその通りであることを示していた。パターン、色およびテクスチャのような形態的特徴に基づくセグメント分割により、偽造紙幣を検出する際の性能が改善された。しかし、エッジ検出器の使用のような従来の画像セグメント分割方法は、トレーニング・セット内の各画像に適用した場合は使用するのが難しかった。それは、各トレーニング・セット部材に対して入手する結果が変化するからであり、異なるトレーニング・セット画像内の対応する特徴を整合するのが難しいからである。セグメント整合のこの問題を回避するために、ある好ましい実施形態の場合には、いわゆる「時空間画像分解」を使用した。
【0034】
ここでセグメント分割マップを形成するための方法について詳細に説明する。ハイレベルにおいて、この方法は、画像面を、それぞれが複数の指定した画素を含む複数のセグメントに分割するための方法の指定とみなすことができる。セグメントは、すでに説明したように、連続していなくてもよい。本発明の場合には、この指定は、トレーニング・セット内のすべての画像からの情報に基づいて行われる。対照的に、厳格なグリッド構造を使用するセグメント分割は、トレーニング・セット内の画像からの情報を必要としない。
【0035】
例えば、各セグメント分割マップは、トレーニング・セット内のすべての画像間の対応する画像要素の関係に関する情報を含む。
【0036】
スタック状態にあって、同じ向きに相互に整合しているトレーニング・セット内の画像について考えてみよう。銀行券画像面内の所与の画素を取り上げてみると、この画素は、各トレーニング・セット画像内の特定の画素位置のところの画素輝度に関する情報を含む「画素輝度プロファイル」を有していると見なされる。任意の適切なクラスタリング・アルゴリズムを使用して、画像面内の画素位置が、セグメント内にクラスタリングされる。この場合、これらセグメント内の画素位置は、類似のまたは相互に関連する画素輝度プロファイルを有する。
【0037】
好ましい例の場合には、これら画素輝度プロファイルを使用する。しかし、画素輝度プロファイルは必ずしも使用しなくてもよい。また、トレーニング・セット内のすべての画像からの他の情報を使用することもできる。例えば、4つの隣接する画素のブロックに対する輝度プロファイル、または各トレーニング・セット画像内の同じ位置のところの画素に対する画素輝度の平均値を使用することもできる。
【0038】
ここでセグメント分割マップを形成するための方法の特に好ましい実施形態について詳細に説明する。この実施形態は、下記の刊行物Lecture Notes in Computer Science、2352:747〜758ページ、2002年に掲載のS.Avidanの、「EigenSegments:A spatio−temporal decomposition of an ensemble of images」に教示されている方法に基づいている。
【0039】
同じサイズr×cの登録され、スケーリングされた画像{I}i=1,2,Λ,Nのアンサンブルの場合には、各画像Iは、ベクトルの形で、その画素により
【数1】

として表すことができる。ここで、aji(j=1,2,Λ,M)は、i番目の画像のj番目の画素の輝度であり、M=r・cは画像内の画素の全数である。次に、アンサンブル内のすべての画像の(平均値を使用してゼロにした)ベクトルIをスタックすることにより、デザイン・マトリクス
【数2】

を生成することができる。それ故、
【数3】

となる。A内の行ベクトル
【数4】

は、N個の画像を横切る特定の画素(j番目)に対する輝度プロファイルとみなすことができる。2つの画素が、画像の同じパターン領域からのものである場合には、これらの画素は、類似の輝度値を有する可能性があり、それ故、強い時間的相関を有する可能性がある。本明細書においては、「時間的」という用語は、時間軸に正確に対応しないが、アンサンブル内のいくつかの画像を横切る軸を示すのに借用していることに留意されたい。我々のアルゴリズムは、これらの相関を発見しようとし、画像面を類似の時間的行動を有する画素の領域に空間的にセグメント分割する。本発明者らは、輝度プロファイル間のメトリックを定義することによりこの相関を測定する。簡単な方法としては、ユークリッド距離を使用する方法がある。すなわち、2つの画素jおよびk間の時間的相関は、
【数5】

で表示することができる。d(j,k)が小さくなればなるほど、2つの画素間の相関は強くなる。
【0040】
画素間の時間的相関により画像面を空間的に分解するために、本発明者らは、画素輝度プロファイル(デザイン・マトリクスAの行)上でクラスタリング・アルゴリズムを使用する。それにより時間的に相関付けられた画素のクラスタができる。最も簡単な選択は、K−平均アルゴリズムを使用することであるが、任意の他のクラスタリング・アルゴリズムを使用することもできる。その結果、画像面は、時間的に相関付けられた画素のいくつかのセグメントに分割される。次に、これは、トレーニング・セット内のすべての画像をセグメント分割するためのマップとして使用することができ、分類装置をトレーニング・セット内のすべての画像のこれらのセグメントから抽出した特徴上で構成することができる。
【0041】
偽造紙幣を使用しないで、トレーニングを達成するために、1クラス分類装置を使用することが好ましい。当業者であれば周知のように、任意の適切なタイプの1クラス分類装置を使用することができる。例えば、ニューラル・ネットワーク・ベースの1クラス分類装置および統計ベースの1クラス分類装置を使用することができる。
【0042】
1クラス分類に対する適切な統計的方法は、一般に、考慮対象の観察が、対象クラスから行われるヌル仮説の下のログ尤度比の最大化に基づいていて、これらのものは、対象クラス(真券)に対する多変量ガウス分布を仮定するD試験(DF.Morrisonの、「Multivariate Statistical Methods」(第3版)、McGraw−Hill Publishing Company社、ニューヨーク、1990年に記載)を含む。任意の非ガウス分布の場合には、対象クラスの密度は、例えば、ガウシアンの半パラメトリック混合(CM.Bishopの、「Neural Networks for Pattern Recognition」、Oxford University Press、ニューヨーク、1995年に記載)、または非パラメトリックParzen window(RO. Duda、PE. Hart、DG. Storkの、「Pattern Classification」(第2版)、John Wiley & Sons,INC社、ニューヨーク、2001年に記載)を使用して推定することができ、ヌル仮説の下のログ尤度比の分布は、ブートストラップ(S. Wang、WA. Woodward、HL. Gary他の、「A new test for outlier detetion from a multivariate mixture distribution」、Journal of Computational and Graphical Statistics社、6(3):285〜299ページ、1997年に記載)のようなサンプリング技術により入手することができる。
【0043】
1クラス分類に使用することができる他の方法は、「支持推定(support estimation)」(P.Hayton、B.Schoelkopf、L.Tarrassenko、P.Anuzisの、「Support Vector Novelty Detection Applied to Jet Engine Vibration Spectra」、Advances in Neural Information Processing Systems、13、eds Todd K.LeenおよびThomas G.DietterichおよびVolker Tresp、MIT Press、946〜952ページ、2001年に記載)とも呼ばれる「支持ベクトル・データ・ドメイン記述(SVDD)」(DMJ.Tax、RPW.Duinの、「Support vector domain description」、Pattern Recognition Letters、20(11〜12)、1191〜1199ページ、1999年に記載)、および「極値理論(Extreme Value Theory (EVT)」(SJ.Robertsの、「Novelty detection using extreme Value statistics」、視覚、画像および信号処理に関するIEE議事録(IEE Proceedings on Vision, Image & Signal Processing)、146(3)、124〜129ページ、1999年に記載)である。SVDDにおいては、データ分布の支持が推定され、一方、EVTは、極端な数値の分布を推定する。この特定の用途の場合には、真券の多数の例を使用することができるので、この場合、対象クラスの分布の信頼性の高い推定値を入手することができる。それ故、本発明者らは、好ましい実施形態内で密度分布をはっきりと推定することができる1クラス分類方法を選択するが、必ずしもそうしなくても良い。好ましい実施形態の場合には、本発明者らは、パラメータD試験に基づいて1クラス分類方法を使用する。
【0044】
好ましい実施形態の場合には、本発明者らの1クラス分類装置のために使用する統計的仮説試験について以下に詳細に説明する。
【0045】
p(x|θ)で表されるパラメータθを含む基本的密度関数を含むN個の独立していて同様に分布しているp次元ベクトル・サンプル(各銀行券に対する特徴セット)x,Λ,x∈Cについて考えてみよう。下記の仮説試験が、
【数6】

になるように新しい点xN+1に対して行われる。ここで、Cはヌル仮説が真であり、p(x|θ)で定義される領域を示す。代替仮説の場合に分布は均一であると仮定した場合、ヌルおよび代替仮説に対する下式
【数7】

で表される標準ログ尤度比を、ヌル仮説に対する試験統計として使用することができる。この好ましい実施形態の場合には、本発明者らは、ログ尤度比を新しく提示された銀行券を確認するための試験統計として使用することができる。
【0046】
1)多変量ガウス密度を含む特徴ベクトル:サンプル内の個々の点を記述する特徴ベクトルは多変量ガウシアンであるという仮定の下で、サンプル内の各点が共通平均を共有するか否かを査定する、上記尤度比(1)から得られる試験は、(DF.Morrisonの、「Multivariate Statistical Methods」(第三版)、McGraw−Hill Publishing Company社、ニューヨーク、1990年)に記載されている。そのサンプルの推定値が
【数8】

および
【数9】

である平均μおよび共分散Cを有する多変量正規分布からのN個の独立していて同様に分布しているp次元ベクトル・サンプルx,Λ,xについて考えてみよう。このサンプルから、xで表すランダム選択について考えてみよう。下式
【数10】

で表す関連平方マハラノビス距離は、下式
【数11】

で表されるpおよびN−p−1自由度の中央F分布として分布していることを示すことができる。
【0047】
次に、共通母平均ベクトルxおよび残りxのヌル仮説が、下式の場合には拒否される。
【数12】

ここで、Fα;p,N−p−1は、(p,N−p−1)自由度を有するF分布の上部α・100%点である。
【0048】
ここで、xが、最大D統計を有する観察ベクトルとして選択されると仮定しよう。サイズNのランダム・サンプルからの最大Dの分布は複雑である。しかし、100αパーセント上部臨界値への内輪の近似値(conservative approximation)は、Bonferroni不等式により入手することができる。それ故、本発明者らは、下式の場合には、xは外れ値であると結論することができる。
【数13】

【0049】
実際には、外れ値を検出するために両方の式(4)または(5)を使用することができる。
【0050】
本発明者らは、追加のデータxN+1を入手することができる場合には、元のサンプルの一部を形成していない新しい例に対する試験を考える際に、平均および共分散の下記の増分推定値を使用することができる。すなわち、平均は、下式で表すことができ、
【数14】

共分散は、下式で表すことができる。
【数15】

【0051】
式(6)、(7)およびマトリクス反転補助定理を使用することにより、N−サンプルの参照セットおよびN+1番目の試験点の式(2)は、下式のようになる。
【数16】

ここで、
【数17】

および
【数18】

【数19】

による
【数20】

で表した場合、下式のようになる。
【数21】

【0052】
それ故、新しい点xN+1を、共通推定平均
【数22】

および共分散
【数23】

に対する推定されたおよび仮定された正規分布に対して試験することができる。多くの場合、多変量ガウス特徴ベクトルの仮定は実際には当てはまらないが、多くの用途に対する適当な実用的な選択が発見されている。本発明者らは、この仮定を緩和して、下記のセクションで任意の密度について考察する。
【0053】
2)任意の密度を有する特徴ベクトル:確率密度推定値
【数24】

は、当業者であれば周知のように、任意の適切な半パラメトリック(例えば、ガウスの混合モデル)または非パラメトリック(例えば、Parzenウィンドウ法)密度推定方法により、任意の密度p(x)から引いた有限データ・サンプル
【数25】

から入手することができる。次に、この密度は、ログ尤度比(1)を計算する際に使用することができる。多変量ガウス分布の場合とは異なり、ヌル仮説の下では試験統計(λ)に対する解析的分布はない。それ故、この分布を入手する目的で、推定した密度の下でそうでない解析的ではないヌル分布を入手するために数字ブートストラップ方法を使用することができ、それ故、λcritの種々の臨界値を入手した経験的分布から確立することができる。N→∞のような限界内においては、尤度比を下式により推定することができる。
【数26】

ここで、
【数27】

は、元のN個のサンプルから推定したモデルの下でのxN+1の確率密度を示す。
【0054】
参照データ・セットからのN個のサンプルのBセット・ブートストラップを生成し、密度分布
【数28】

のパラメータを推定するためにこれらのそれぞれを使用した後で、試験統計
【数29】

のBブートストラップ複製は、N+1’番目のサンプルをランダムに選択し、
【数30】

を計算することにより入手することができる。
【数31】

を昇順に並べることにより、
【数32】

である場合には、所望の有意水準でヌル仮説を拒否するために臨界値αを定義することができる。ここで、λαは、
【数33】

のj番目の最も小さな値であり、α=j/(B+1)である。
【0055】
好適には、分類装置を形成するための方法を異なる数のセグメントに対して反復し、偽造紙幣であるのかそうでないことが分かっている銀行券の画像により試験することが好ましい。次に、最善の性能になるセグメントの数が選択され、その数のセグメントを使用する分類装置が使用される。本発明者らは、セグメントの最善の数は約2〜15であることを発見した。しかし、任意の適切な数のセグメントを使用することもできる。
【0056】
すでに説明したように、実施形態のあるグループにおいては、1クラス分類装置が使用される。このタイプの分類装置は、上記境界の外側に位置する例が既知のクラスに属していないと見なされるように、既知のクラスの周囲の境界を定義するものと見なすことができる。しかし、1クラス分類装置は、通常、アイテムを2つのクラスだけに分類する。このことは、銀行券を、例えば、偽造紙幣、真券または疑わしいものとして分類しなければならない場合には問題になる。本発明者らは、1クラス分類装置が使用する有意水準または信頼水準を変えることによりこの問題を解決する方法を提案する。
【0057】
図4は、1クラス分類装置上の異なる有意水準の影響を示す略図である。所与の1クラス分類装置は、図4の楕円境界41が示すα1の有意水準を有するものと仮定しよう。銀行券が実際に真券であるかまたは実際に偽造紙幣であるか否かにより、銀行券は点または十字により図4に表示される。この例の場合には、大部分の真券は、境界41内に入り、1クラス分類装置により真券として分類される。1クラス分類装置の有意水準が図4の境界40が示すα2に下がったと仮定しよう。この時点で、いくつかの偽造紙幣が境界40内に入り、真券であると誤って分類される。本発明者らは、また、第3の分類を導入するために、2つの有意水準を使用することができる。境界40と境界41の間に入るこれらの銀行券は、疑わしい銀行券として分類することができる。このようにして、1クラス分類装置に対して複数の異なる有意水準が導入され、本発明者らは、分類が行われるクラスの数を増大することができる。
【0058】
都合のよいことに、有意水準が変化した場合、本明細書に詳細に記載する例示としての1クラス分類装置を再トレーニングする必要はない。
【0059】
図5は、異なる有意水準を有する1クラス分類装置により銀行券を確認するための方法の流れ図である。一方が他方より高い2つの有意水準は、例えば、手動構成により予め定義され、格納される(ボックス50参照)。銀行券の確認は、高い有意水準を有する1クラス分類装置により、本明細書に記載するように行われる(ボックス51参照)。銀行券が真券として分類された場合には、これを表示する出力が行われる(ボックス52および53参照)。銀行券が真券でないと分類された場合には、同一の1クラス分類装置であるが、低い有意水準を有する分類装置により確認が反復して行われる(ボックス54参照)。銀行券が偽造紙幣として分類された場合には、そのことを示す出力が行われる(ボックス55および57参照)。しかし、銀行券が真券として分類された場合には、銀行券が「疑わしい」という表示が行われる(ボックス56参照)。すなわち、自動確認プロセスが、同じであるが異なる有意水準を有する銀行券に対して反復して行われる。それぞれの場合において、その銀行券に対する1クラス分類装置の結果が異なる場合には、銀行券は「疑わしい」銀行券として分類される。1クラス分類装置は、真券の形態的特徴の統計的分布に対して試験を効果的に行うものと見なされる。この統計的分布の境界は、例えば、真券の対象とする誤り拒否率を設定する有意水準により定義される。
【0060】
他の実施形態の場合には、本発明者らは、2つ以上のセグメント分割マップを形成することにより、3つ以上のクラスに銀行券を分類することができる(このセグメント分割マップは、同じ数のセグメントを有していても有していなくてもよい)。各セグメント分割マップは、図6を参照しながらより詳細に説明する銀行券のある領域と関連している。これにより、各セグメント分割マップに対して1つずつ、複数の分類装置が使用され、そのため、分類装置は、それぞれ銀行券の異なる領域と関連する。本明細書においては、これらの分類装置を局所化分類装置と呼ぶ。
【0061】
図6は、特定の金種および貨幣の銀行券の表面の略図である。銀行券の表面は、図6に点線で示す3つの領域61、62、63に分割される。2つ以上の領域が使用され、これらの領域は、任意の適切な方法により位置決めされ、サイズが決められ、配置される。好ましい例の場合には、領域は、それぞれが、ホログラム、糸のすき入れおよび透かしのような銀行券の1つまたは複数のセキュリティ形体64を含むように選択される。しかし、必ずしもそうする必要はない。領域は、図6に示すように、均一であっても隣接していてもよいが、必ずしもそうである必要はない。都合のよいことに、領域がそれぞれ1つまたは複数のセキュリティ形体を含むように領域を選択することにより、本発明者らは、1つまたは複数のこれらのセキュリティ形体が存在しない尤度を査定することができる。これにより、偽造紙幣、真券および「疑わしい」を含む複数のカテゴリに銀行券を容易に分類することができる。領域は、セキュリティ形体を識別するために、画像処理または画像認識システムを使用することにより、任意の適切な方法で選択することができる。例えば、赤外線または熱画像形成を、透かしのような適当なセキュリティ形体を識別するために使用することができる。また、ホログラムまたは他の複雑な回折格子セキュリティ形体を識別するために調整した照明を使用することができる。別の方法としては、予め異なる貨幣および金種に対して領域を手動で構成することができる。
【0062】
図7は、銀行券を確認するための局所化した分類装置を使用するための方法の流れ図である。確認する銀行券は、確認装置に入力され(ボックス70参照)、銀行券の画像が補足される(ボックス71参照)。画像は、R個の指定の領域に分割される(ボックス72参照)。これらのR個の領域は、セグメント分割マップおよび対応する分類装置を形成するためにすでに使用した領域と同じ領域である。次に、画像の各領域は、その領域のためのセグメント分割マップによりセグメント分割され(ボックス73参照)、情報が各領域の各セグメントから抽出される。この情報は、適当なR個の分類装置に入力される(ボックス75参照)。すべての分類装置が、合格を表示した場合には、すなわち、銀行券が真券であることを表示した場合には、その銀行券は真券として表示される(ボックス76参照)。すべての分類装置が、合格でないと表示した場合には、その銀行券は偽造紙幣として表示される(ボックス77参照)。そうでない場合には、銀行券は疑わしい銀行券として表示される(ボックス78参照)。
【0063】
また、銀行券を2つ以上のカテゴリに分類するために、本明細書に記載する1つまたは複数の方法を組み合わせることもできる。
【0064】
すでに説明したように、ある方法は、それぞれがセグメント分割マップの1つのセグメントに関連している複数の分類装置を使用するステップを含む。この方法を方法Aと呼ぶことにする。
【0065】
もう1つの方法は、1つの分類装置ではあるが、複数の有意水準を含む分類装置を使用するステップを含む。この方法を方法Bと呼ぶことにする。
【0066】
もう1つの方法は、それぞれが銀行券の画像の異なる領域と関連している複数の局所化した分類装置を使用するステップを含む。この方法を方法Cと呼ぶことにする。
【0067】
これらの方法の可能な組合せとしては下記のものを含むが(これらに限定されない)。
・Aおよび次いでB
・Cおよび次いでB(図8に示す)
・Cおよび次いでA
・Cおよび次いでAおよび次いでB
【0068】
図8は、方法Cおよび次いで方法Bという組合せのある例の流れ図である。方法Cのステップは、図8にボックス82、83および84で表示してあり、方法Bのステップは、ボックス85、86、87、88および89で表示してある。試験対象の銀行券が入力され(ボックス80)、画像が補足され(ボックス81)、および画像がS個の領域に分割される(ボックス82)。次に、S個の局所化したセグメント分割マップが、本明細書に記載する方法により生成され(ボックス83)、情報が、適当なセグメント分割マップによりS個の領域から抽出される(ボックス84)。高い有意水準を使用してS個のすべての分類装置に対して分類装置試験が行われる(ボックス85)。すべての分類装置が、真券であることを表示している場合には、真券が表示される(ボックス87参照)。そうでない場合には、分類装置は、低い有意水準を使用して試験を反復する。すべての分類装置が、真券を表示している場合には、疑わしい銀行券が表示される(ボックス88)。そうでない場合には、偽造紙幣が表示される(ボックス89)。このようにして、本発明者らは、顧客に対して今まで以上の信頼性を提供することができる。ある流通期間が経過すると、真券が磨耗したり、破損することはよく起こることである。厳格な(高い)有意水準を使用した場合には、S個すべての分類装置によりこのような銀行券が偽造紙幣として分類される可能性が非常に高い。そのため顧客が経済的損失を受ける場合がある。それ故、もっと緩やかな(低い)有意水準により再度試験を行えば、この銀行券がS個すべての局所化した分類装置により真券と認識されることもあり得るし、それ故、他の調査に対して疑わしいと分類される場合もあり得る。これにより顧客の損失が避けられる。一方、本当の偽造紙幣は影響を受けないし、依然として認識されるので、セルフ・サービス装置またはこのプロセスを使用する他の構成要素のセキュリティは依然として維持される。また、この方法を使用すれば、銀行は、柔軟にその厳格さをカスタマイズし、どの品質の銀行券を疑わしいカテゴリに入れるかを標準化することができる。Sおよび有意水準を調整することができるので、このことを行うことができる。
【0069】
図9は、方法Aおよび次いで方法Bという組合せのある例の流れ図である。方法Aのステップは、ボックス92〜93で表示してあり、方法Bのステップは、ボックス94〜98で表示してある。ステップ90および91は、図8のステップ80および81に対応する。
【0070】
図10は、方法Cおよび次いで方法A、および次いで方法Bという組合せのある例の流れ図である。方法Cのステップは、ボックス100および101で表示してある。方法Aのステップは102である。この場合、各銀行券の領域Sおよび各銀行券の領域Kのセグメントに対して1つずつ、多数の分類装置が使用される。試験は、S×Kの各分類装置により2つの有意水準で行われる(ボックス103〜107参照)。
【0071】
複数のクラス(例えば、偽造紙幣、真券、疑わしい等)を使用する銀行券確認方法の利点は、この方法は、自動銀行券確認装置で消費者の信頼、評価および信用を増大することができることである。銀行券が疑わしいと分類された場合には、その銀行券は、受け入れられ、顧客の口座に短期の貸し方に記入され、一方、銀行券の有効性について手動または他のオフラインの調査が行われる。
【0072】
図11は、銀行券確認のための分類装置112を生成するための装置110の略図である。この装置は下記のものを含む。
・銀行券の画像のトレーニング・セットにアクセスするように配置されている入力111
・トレーニング・セット画像を使用してセグメント分割マップを生成するように配置されているプロセッサ113
・セグメント分割マップにより、各トレーニング・セット画像をセグメント分割するように配置されているセグメント分割装置114
・各トレーニング・セット画像内の各セグメントから1つまたは複数の特徴を抽出するように配置されている特徴抽出部115
・前記特徴情報を使用して前記分類装置を形成するように配置される分類形成手段116
この場合、プロセッサは、例えば、上記時空画像分解を使用して、トレーニング・セット内のすべての画像からの情報に基づいてセグメント分割マップを生成するように配置されている。
【0073】
図12は、銀行券確認装置121の略図である。この銀行券確認装置は、下記のものを含む。
・確認する銀行券の少なくとも1つの画像120を受け入れるように配置されている入力。
・セグメント分割マップ122
・セグメント分割マップを使用して銀行券の画像をセグメント分割するように配置されているプロセッサ123
・銀行券の画像の各セグメントから1つまたは複数の特徴を抽出するように配置されている特徴抽出部124
・銀行券を、抽出した特徴に基づいて真券であるかないかに分類するように配置されている分類装置125
この場合、セグメント分割マップは、銀行券のトレーニング画像の各セットに関する情報に基づいて形成される。図12の構成要素が相互に独立していることは必ずしも必要でないことに留意されたい。これらの構成要素は一体に形成することができる。
【0074】
図13は、銀行券を確認するための方法の流れ図である。この方法は下記のステップを含む。
・確認する銀行券の少なくとも1つの画像にアクセスするステップ(ボックス130)
・セグメント分割マップにアクセスするステップ(ボックス131)
・セグメント分割マップにより銀行券の画像をセグメント分割するステップ(ボックス132)
・銀行券の画像の各セグメントから特徴を抽出するステップ(ボックス133)
・分類装置により抽出した特徴に基づいて銀行券を真券であるかないかに分類するステップ(ボックス134)
この場合、セグメント分割マップは、銀行券のトレーニング画像の各セットに関する情報に基づいて作成される。これらの方法のステップは、当業者であれば周知のように、任意の適切な順序または組合せで実行することができる。セグメント分割マップは、暗黙にトレーニング・セット内の各画像に関する情報を含んでいるということができる。何故なら、セグメント分割マップはこの情報に基づいて作成されたものだからである。しかし、セグメント分割マップ内の明示の情報は、各セグメント内に内蔵させる画素・アドレスのリストを含む簡単なファイルであってもよい。
【0075】
図14は、銀行券確認装置143を備えるセルフサービス装置141の略図である。この装置は、下記のものを含む。
・銀行券を受け入れるための手段140
・銀行券のデジタル画像を入手するための画像形成手段142
・上記銀行券確認装置143
【0076】
本明細書に記載する方法は、銀行券の任意の適切なタイプの画像または他の表示上で実行される。例えば、赤、青および緑のチャネルのうちのいずれの上の画像、または上記他の画像上で実行することができる。
【0077】
セグメント分割は、例えば、赤のチャネルのようなたった1つのタイプの画像に基づいて行うことができる。別の方法としては、セグメント分割マップは、例えば、赤、青および緑のチャネルのようなすべてのタイプの画像に基づいて作成することができる。また、画像の各タイプまたは複数の画像タイプの組合せに対して複数のセグメント分割マップを形成することもできる。例えば、赤のチャネルの画像に対して1つ、青のチャネルの画像に対して1つ、および緑のチャネルの画像に対して1つ、3つのセグメント分割マップを使用することもできる。その場合、個々の銀行券を確認している間に、選択した画像のタイプにより、適当なセグメント分割マップ/分類装置が使用される。それ故、上記各方法は、異なるタイプの画像および対応するセグメント分割マップ/分類装置を使用して修正することができる。
【0078】
銀行券を受け入れる手段は、画像形成手段として当業者であれば周知の任意の適切なタイプのものである。特徴抽出のステップで使用するための1つまたは複数のタイプの特徴を選択するために、当業者であれば周知の任意の特徴選択アルゴリズムを使用することができる。また、分類装置を、本明細書に記載する特徴情報の他に、例えば、所与の貨幣および金種の色または他の情報、空間周波数または形状のような銀行券の特定の金種または貨幣に関する指定の情報に基づいて、特にデータを多く含んでいる領域に関する情報に基づいて形成することができる。
【0079】
本明細書に記載する任意の範囲またはデバイスの値は、当業者であれば理解することができると思うが、必要な効果を失わないで拡張または変更することができる。
【0080】
好ましい実施形態の上記説明は、単に例示としてのものにすぎないこと、および当業者であれば種々の修正を行うことができることを理解することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】銀行券を確認するための分類装置を作成するための方法の流れ図である。
【図2】銀行券を3つ以上のクラスに分類するための銀行券確認装置を生成するための方法の流れ図である。
【図3】それぞれがセグメント分割マップの1つのセグメントと関連している複数の分類装置により、銀行券を3つ以上のクラスに分類するための方法の流れ図である。
【図4】銀行券を分類するための異なる有意水準を含む同一の分類装置の使用方法の略図である。
【図5】2つの各有意水準で同一の分類装置により、3つ以上のクラスに銀行券を分類するための方法の流れ図である。
【図6】複数の領域に分割された銀行券の略図である。
【図7】それぞれが銀行券の異なる領域と関連している複数の分類装置により、銀行券を3つ以上のクラスに分類するための方法の流れ図である。
【図8】局所化したセグメント分割マップおよび分類装置の異なる有意水準の組合せにより、銀行券を3つ以上のクラスに分類するための方法の流れ図である。
【図9】セグメントおよび分類装置の異なる有意水準に基づいた分類装置の組合せにより、銀行券を3つ以上のクラスに分類するための方法の流れ図である。
【図10】セグメントおよび銀行券の領域、ならびに分類装置の異なる有意水準に基づいた分類装置の組合せにより、銀行券を3つ以上のクラスに分類するための方法の流れ図である。
【図11】銀行券を確認するための分類装置を作成するための装置の略図である。
【図12】銀行券確認装置の略図である。
【図13】銀行券を確認するための方法の流れ図である。
【図14】銀行券確認装置を含むセルフサービス装置の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体確認装置であって、
(i)確認する媒体アイテムの少なくとも1つの画像を受け入れるように配置される入力と、
(ii)媒体アイテムの一組のトレーニング・セット内のすべての画像間の対応する画像要素の関係に関する情報を含むセグメント分割マップと、
(iii)前記セグメント分割マップを使用して前記媒体アイテムの前記画像をセグメント分割するように配置されるプロセッサと、
(iv)前記媒体アイテムの前記画像の各セグメントから1つまたは複数の特徴を抽出するように配置される特徴抽出部と、
(v)前記銀行券を、前記抽出した特徴に基づいて、少なくとも3つのクラスに分類するように一緒に配置される1つまたは複数の分類装置と、
を備える媒体確認装置。
【請求項2】
複数の予め指定した信頼水準のそれぞれで動作するように配置される分類装置を1つだけ備える、請求項1に記載の媒体確認装置。
【請求項3】
複数の分類装置を備え、それぞれが、前記セグメントの異なるものから抽出した特徴情報から形成される、請求項1に記載の媒体確認装置。
【請求項4】
確認する前記媒体アイテムの前記画像を、複数の領域に分割するための手段を備え、さらに、複数のセグメント分割マップを備え、各セグメント分割マップが、前記領域のうちの異なるものに関連している、請求項1に記載の媒体確認装置。
【請求項5】
複数の分類装置を備え、各分類装置が、前記セグメント分割マップのうちの異なるものに関連している、請求項4に記載の媒体確認装置。
【請求項6】
前記各分類装置が、さらに、複数の予め指定した各信頼水準で動作するように配置される、請求項3に記載の媒体確認装置。
【請求項7】
前記各分類装置が、さらに、複数の予め指定した各信頼水準で動作するように配置される、請求項5に記載の媒体確認装置。
【請求項8】
複数の分類装置を備え、各分類装置が、前記セグメント分割マップのうちの異なるものおよびそのセグメント分割マップの異なるセグメントと関連している、請求項4に記載の媒体確認装置。
【請求項9】
前記各分類装置が、さらに、複数の予め指定した各信頼水準で動作するように配置される、請求項8に記載の媒体確認装置。
【請求項10】
前記媒体アイテムの前記画像が、特定のタイプのものであり、さらに、複数のセグメント分割マップを備え、各セグメント分割マップが、異なるタイプの媒体アイテムの画像に対するものである、請求項1に記載の媒体確認装置。
【請求項11】
前記分類装置が、1クラス分類装置である、請求項1に記載の媒体確認装置。
【請求項12】
複数の分類装置からの結果を組み合わせるための手段を備える、請求項1に記載の媒体確認装置。
【請求項13】
媒体アイテムを確認するための方法であって、
(i)確認する媒体アイテムの少なくとも1つの画像にアクセスするステップと、
(ii)媒体アイテムの一組のトレーニング画像のすべての画像間の対応する画像要素の関係に関する情報を含むセグメント分割マップにアクセスするステップと、
(iii)前記セグメント分割マップを使用して前記媒体アイテムの前記画像をセグメント分割するステップと、
(iv)前記媒体アイテムの前記画像の各セグメントから特徴を抽出するステップと、
(v)1つまたは複数の分類装置を一緒に使用して、前記抽出した特徴に基づいて前記媒体アイテムを少なくとも3つのクラスのうちの1つに分類するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
複数の予め指定した各信頼水準で動作するように配置される1つの分類装置だけを使用して前記媒体アイテムを分類するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
それぞれが前記セグメントのうちの異なるものから抽出した特徴情報を有する複数の分類装置により前記媒体アイテムを分類するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記媒体アイテムの前記画像を複数の領域に分割するステップと、それぞれが前記領域のうちの異なるものに関連している複数のセグメント分割マップにアクセスするステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
それぞれが前記セグメント分割マップのうちの異なるものと関連している複数の分類装置により前記媒体アイテムを分類するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数の予め指定した信頼水準で前記各分類装置を動作するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
複数の予め指定した信頼水準で、前記各分類装置を動作するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
複数の分類装置により前記媒体アイテムを分類するステップをさらに含み、各分類装置が、前記セグメント分割マップのうちの異なるもの、およびそのセグメント分割マップの異なるセグメントに関連している、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
複数の予め指定した信頼水準で、前記各分類装置を動作するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記媒体アイテムの前記画像が、特定のタイプのものであり、それぞれが異なるタイプの媒体アイテムの画像に対するものである複数のセグメント分割マップにアクセスするステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
複数の分類装置からの結果を組み合わせるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
銀行券確認のための方法のすべてのステップを実行することができるコンピュータ・プログラム・コード手段を含むコンピュータ・プログラムであって、
(i)確認する銀行券の少なくとも1つの画像にアクセスするステップと、
(ii)銀行券の一組のトレーニング画像のすべての画像間の対応する画像要素の関係に関する情報を含むセグメント分割マップにアクセスするステップと、
(iii)前記セグメント分割マップを使用して前記銀行券の前記画像をセグメント分割するステップと、
(iv)前記銀行券画像の各セグメントから特徴を抽出するステップと、
(v)1つまたは複数の分類装置を一緒に使用して、前記抽出した特徴に基づいて前記銀行券を少なくとも3つのクラスのうちの1つに分類するステップとを含むコンピュータ・プログラム。
【請求項25】
コンピュータ可読媒体上で実施される、請求項24に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項26】
セルフ・サービス装置であって、
(i)媒体アイテムを受け入れるための手段と、
(ii)前記媒体アイテムのデジタル画像を入手するための画像形成手段と、
(iii)媒体確認装置とを備え、前記媒体確認装置が、
(i)確認する媒体アイテムの少なくとも1つの画像を受け入れるように配置される入力と、
(ii)媒体アイテムの一組のトレーニング画像のすべての画像間の対応する画像要素の関係に関する情報を含むセグメント分割マップと、
(iii)前記セグメント分割マップを使用して前記媒体アイテムの前記画像をセグメント分割するように配置されるプロセッサと、
(iv)前記媒体アイテム画像の各セグメントから1つまたは複数の特徴を抽出するように配置される特徴抽出部と、
(v)前記媒体アイテムを、前記抽出した特徴に基づいて少なくとも3つのクラスのうちの1つに分類するように一緒に配置される1つまたは複数の分類装置と、
を備えるセルフ・サービス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−527029(P2009−527029A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545088(P2008−545088)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004676
【国際公開番号】WO2007/068930
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(391007161)エヌ・シー・アール・コーポレイション (85)
【氏名又は名称原語表記】NCR CORPORATION
【Fターム(参考)】