説明

メトフォルミン療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な患者におけるDPP−IV阻害剤を含む糖尿病治療

本発明は、特定のDPP−4阻害剤が、メトフォルミン療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するのにとりわけ適していることの発見に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するための、例えば、ヘモグロビンA1c(HbA1c)および/または空腹時血漿グルコース(FPG)を改善するための特定のDPP−4阻害剤、ならびに抗糖尿病療法におけるこれらDPP−4阻害剤の使用に関する。本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤を1種または複数のその他の活性物質と任意選択で一緒に含む、これらの患者における代謝性疾患(とりわけ、糖尿病、特に2型糖尿病、およびそれに関連する疾患)を治療および/または予防するための医薬組成物も考えられる。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病は、インスリン抵抗性およびインスリン分泌障害の2種の内分泌効果を含む複雑な病態生理から起こる広く知られた慢性かつ進行性の疾患である。2型糖尿病の治療は、典型的には、食事および運動、それに続く経口抗糖尿病薬の単剤療法から始まり、従来の単剤療法は、一部の患者において最初のうちは血中グルコースをコントロールできるが、高い二次無効率を伴う。血糖コントロールの維持に関する単剤療法の限界は、長期療法中に単剤で維持することのできない血中グルコースの低下を達成するために複数の経口薬物を併用することによって、少なくとも一部の患者において限られた期間は克服することができる。入手可能なデータは、ほとんどの2型糖尿病患者において、単剤療法は失敗し、複数薬物での治療が要求されるという結論を支持している。
【0003】
しかし、2型糖尿病は進行性疾患であり、血中グルコースレベルを長期間安定的に維持するのが極めて困難なので、従来の併用療法に対して良好な初期応答を示した患者でさえ、結局、投与量の増加またはインスリンでのさらなる治療を必要とする。したがって、現行の併用療法は、血糖コントロールを高める潜在能力を有するが、限界がある(特に、長期の有効性に関して)。さらに、多くの結果は、低血糖症および/または体重増加のリスクが従来の併用療法で増大する可能性があり、かつ多数の薬物を要求することが患者の服薬遵守を低下させる可能性もあることを指摘している。加えて、多数の抗高血糖薬を服用することは、患者が利用する可能性のある他の薬物療法との薬物動態学的相互作用の可能性を増大させることがある。
【0004】
したがって、多くの患者にとって、これら現行の薬物療法は、治療にもかかわらず血糖コントロールの進行性憎悪をもたらし、血糖症を特に長期にわたって十分にはコントロールせず、そのため、例えば進行したまたは後期の2型糖尿病および/または二次薬物無効を伴う糖尿病において代謝調節を達成することおよび維持することができない。
したがって、高血糖症の徹底的な治療は、慢性傷害の発生率を低下させることができるが、多くの2型糖尿病患者は、部分的には従来の抗高血糖療法の長期有効性、耐容性および投与上の不便に関する限界のため、相変わらず治療が不十分である。
【0005】
治療失敗のこの高い発生は、2型糖尿病患者における、長期高血糖症に付随する合併症または慢性傷害(例えば糖尿病性腎症、網膜症または神経傷害、あるいは心血管性合併症などの微小および大血管性合併症を含む)の高い発生率に対する主要な誘因因子である。
療法(例えば、一次もしくは二次の、および/または単剤もしくは(初期もしくは付加的)併用療法など)において通常的に使用される経口抗糖尿病薬には、それらに限定はされないが、メトフォルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン、グリニド、およびα−グルコシダーゼ阻害剤が含まれる。
【0006】
メトフォルミンは、腎障害、メトフォルミンに対する禁忌または不耐性のリスクが存在しないなら、始めにまたは一次抗糖尿病療法のために選択される薬物である(特に、体重過多の患者に対して)。
しかし、上述のように、メトフォルミン療法を受けているにもかかわらず、一部の糖尿病患者は、長期にわたって血糖コントロールを達成または維持することができない可能性がある。
【0007】
したがって、臨床ガイドラインによれば、メトフォルミン単独でグルコース濃度を目標レベルにコントロールできない場合、血糖コントロールを少なくとも特定の期間改善するために、例えば次のような複数のその他の薬物療法、例えば、2種類または3種類の併用治療が、段階的に必要となる。すなわち、メトフォルミンの単剤療法でグルコース濃度を目標レベルまでコントロールできない場合(例えば、HbA1c>6.5%)、最初の例では、スルホニルウレア(もしくはグリニド)またはチアゾリジンジオンをメトフォルミンに対する付加療法として使用することができる。さらに、血糖コントロールのさらなる悪化で、メトフォルミンとスルホニルウレアとの併用もグルコース濃度を目標レベルまでコントロールできない場合(例えば、HbA1c>6.5%)、チアゾリジンジオンをメトフォルミン/スルホニルウレアの併用に付加して使用することができる。さらに、血糖コントロールのさらなる悪化で、メトフォルミン、スルホニルウレアおよびチアゾリジンジオンの3種併用もグルコース濃度を目標レベルまでコントロールできない場合(例えば、HbA1c>7.5%)、メトフォルミン/スルホニルウレアの併用を、1日1回の基礎インスリンと共に使用することができ、なおさらなる悪化の場合には、メトフォルミンを、1日2回のプレミックスインスリンと共に使用することができ、最終的には、1日に多数回のインスリンを使用することができる。
【0008】
メトフォルミン単独での療法にもかかわらず血糖コントロールが最適に達しない2型糖尿病患者に対して推奨される標準的薬物療法は、とりわけメトフォルミン基礎療法に対するスルホニルウレアの付加薬物療法のように、スルホニルウレアおよびメトフォルミンを採用する併用療法である。
【0009】
スルホニルウレア(SU)は、グリニドと同様、膵臓β細胞からのインスリン分泌をグルコースに依存しない方式で刺激し、一般におよび頻繁に、2型糖尿病における一次および二次(単独または併用)治療として使用される(特に、非肥満患者に対して、および/またはメトフォルミン療法に関して不適格または無効である患者に対して指示される)。しかし、上述のように、一部の患者は、必ずしもこれら従来の経口抗糖尿病薬に対して特に長期治療において十分に応答するとは限らず、スルホニルウレア薬での治療にもかかわらず血糖コントロールの不足または悪化を示す可能性がある(二次SU無効)。また、長期のスルホニルウレア療法を受けている患者は、やがて膵臓β細胞の衰弱または枯渇を経験する。
【0010】
時間経過による有効性の継続的低下は、グリニドおよびスルホニルウレアを含む分泌促進薬の使用に伴う大きな懸念である(二次SU無効)。さらに、スルホニルウレアは、インスリンの血漿中レベルを増大し、体重増加に加え、とりわけ腎障害に関連し、かつ/または高齢患者におけるそれらの主要副作用の1つである低血糖症を引き起こす可能性がある。したがって、SU薬物療法の範囲内で、一方では有効性に関してスルホニルウレアの投与量を増加させることが時には要求され、他方では安全性/耐容性に関してスルホニルウレアの投与量を低減することが時には要求される可能性があり、そのため、SU薬物療法において納得のいかない妥協を要求されることが多い。
【0011】
したがって、メトフォルミン単独で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者を治療するのに従来の抗糖尿病併用療法、例えば、メトフォルミン/スルホニルウレアの併用療法を使用することは、それらの進行性β細胞機能不全および/または血糖コントロールの進行性喪失の予防に対する無力性によって、二次無効のリスクによって、ならびに/あるいは低血糖エピソードおよび/または体重増加などの該薬物療法に付随する有害作用のリスクまたは発生などによって制約される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者のために効果的で安全でかつ耐容性のある抗糖尿病療法を提供することは、相変わらず当技術分野の要求である。
さらに、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者のために、十分な血糖コントロールを提供すること(例えば、HbA1cおよび/またはFPGの十分かつ妥当な改善を提供すること)は、相変わらず当技術分野の要求である。
さらに、2型糖尿病は、長期治療を必要とすることが多い進行性の慢性容態なので、2型糖尿病患者を治療している医師は、彼らが療法を個々の必要性に合わせることができるように、ある範囲の治療および併用レジメンを有することを必要とする。
【0013】
そのうえ、治療は、進行した段階の糖尿病で見出されることの多い長期合併症を予防するのみならず、腎障害などの発症済みの合併症を有する患者における治療選択肢であることを立証することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
HbA1cおよびFPGレベルは、2型糖尿病の効果的な管理の鍵となる診断尺度である。
糖尿病の治療をモニターする上で、ヘモグロビンB鎖の非酵素的糖化生成物であるHbA1cの値は、特別な重要性を有する。その形成は血糖レベルおよび赤血球の寿命に本質的に左右されるので、HbA1cは、「血糖記憶」の意味で、4〜12週間前の平均血糖レベルを反映する。そのHbA1cレベルがより徹底的な糖尿病治療によって長期にわたって十分にコントロールされていた糖尿病患者(すなわち、検体中の総ヘモグロビンが6.5%未満)は、糖尿病性微小血管障害から有意により良好に保護されている。糖尿病に利用できる治療は、糖尿病に平均で1.0〜1.5%程度のHbA1cの改善をもたらすことができる。HbA1cレベルのこの低下は、すべての糖尿病において、それらのレベルを7.0%未満の、好ましくは6.5%未満の、より好ましくは6%未満であるHbA1cの望ましい目標範囲に導くのに十分ではない。
【0015】
血糖コントロールの範囲内で、HbA1cレベルの改善に加えて、2型糖尿病患者のために推奨されるその他の治療目標は、空腹時血漿中グルコース(FPG)および食後血漿中グルコース(PPG)レベルの正常またはできる限り正常近辺までの改善である。食前(絶食時)血漿中グルコースの推奨される望ましい目標範囲は、70〜130mg/dL(もしくは90〜130mg/dL)または110mg/dL未満であり、食後2時間の血漿中グルコースは、180mg/dL未満または140mg/dL未満である。
【0016】
本発明の趣旨の範囲内で、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分または不足している患者には、限定はされないが、メトフォルミンでの療法にもかかわらず、とりわけ1日につき1g以上のメトフォルミンでの薬物療法にもかかわらず、ベースラインで7.5〜10%(または、別の実施形態で、7.5〜11%)のHbA1c値を有する患者が含まれる。
コントロールが不十分な患者の本発明の趣旨の範囲内での特定の下位実施形態は、進行したまたは後期の2型糖尿病患者、および/または限定はされないがベースラインで9%以上のHbA1c値を有する患者を含む血糖コントロールの不足した患者に関する。
【0017】
CD26としても知られる酵素DPP−4(ジペプチジルペプチダーゼIV)は、それらのN−末端にプロリンまたはアラニン残基を有するいくつかのタンパク質のN−末端からのジペプチドの開裂をもたらすことが知られているセリンプロテアーゼである。この特性のため、DPP−4阻害剤は、ペプチドGLP−1を含む生理活性ペプチドの血漿中レベルに干渉し、糖尿病の治療のための有望な薬物であると考えられる。
【0018】
例えば、DPP−4阻害剤およびそれらの使用、とりわけ代謝性疾患(特に糖尿病性)におけるそれらの使用は、WO2002/068420、WO2004/018467、WO2004/018468、WO2004/018469、WO2004/041820、WO2004/046148、WO2005/051950、WO2005/082906、WO2005/063750、WO2005/085246、WO2006/027204、WO2006/029769またはWO2007/014886;またはWO2004/050658、WO2004/111051、WO2005/058901またはWO2005/097798;またはWO2006/068163、WO2007/071738またはWO2008/017670;またはWO2007/128721またはWO2007/128761中に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のさらなる実施形態、特徴および利点は、以下の実施例から明らかとなろう。以下の実施例は、実施例によって本発明の原理を明らかにするのに役立つが、その原理に限定されるものではない。
さらなるDPP−4阻害剤として次の化合物を挙げることができる:すなわち、
・下記の構造式A
【0020】
【化1】

を有するシタグリプチン(MK−0431)は、(3R)−3−アミノ−1−[3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−5H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7−イル]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−1−オン、別名(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンである。
【0021】
一実施形態において、シタグリプチンは、そのリン酸二水素塩、すなわちリン酸シタグリプチンの形態で存在する。さらなる実施形態において、リン酸シタグリプチンは、結晶性の無水物または一水和物の形態で存在する。この部類の実施形態は、リン酸シタグリプチン一水和物に関する。シタグリプチンの遊離塩基およびその薬学的に許容される塩は、米国特許第6699871号中、およびWO03/004498の実施例7中に開示されている。結晶性リン酸シタグリプチン一水和物は、WO2005/003135中およびWO2007/050485中に開示されている。したがって、例えばこの化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
シタグリプチンのための錠剤製剤は、Janivia(登録商標)の商品名で市販されている。シタグリプチン/メトフォルミン合剤のための錠剤製剤はJanumet(登録商標)の商品名で市販されている。
・下記の構造式B
【0022】
【化2】

を有するビルダグリプチン(LAF−237)は、(2S)−{[(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アミノ]アセチル}ピロリジン−2−カルボニトリル、別名(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンである。
【0023】
ビルダグリプチンは、米国特許第6166063号中、およびWO00/34241の実施例1中に具体的に開示されている。ビルダグリプチンの特定の塩が、WO2007/019255中に開示されている。ビルダグリプチンの結晶性形態およびビルダグリプチンの錠剤製剤が、WO2006/078593中に開示されている。ビルダグリプチンは、WO00/34241またはWO2005/067976に記載のように製剤化することができる。調節放出型ビルダグリプチン製剤が、WO2006/135723中に開示されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0024】
ビルダグリプチンの錠剤製剤は、Galvus(登録商標)の商品名で市販されている。ビルダグリプチン/メトフォルミン合剤のための錠剤製剤は、Eucreas(登録商標)の商品名で市販されている。
・下記の構造式C
【0025】
【化3】

を有するサキサグリプチン(BMS−477118)は、(1S,3S,5S)−2−{(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アセチル}−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル、別名(S)−3−ヒドロキシアダマンチルグリシン−L−cis−4,5−メタノプロリンニトリルである。
【0026】
サキサグリプチンは、米国特許第6395767号中、およびWO01/68603の実施例60中に具体的に開示されている。
【0027】
一実施形態において、サキサグリプチンは、WO2004/052850中に開示のように、そのHCl塩またはそのモノ安息香酸塩の形態で存在する。さらなる実施形態において、サキサグリプチンは、遊離塩基の形態で存在する。さらなる実施形態において、サキサグリプチンは、WO2004/052850中に開示のように、遊離塩基の一水和物の形態で存在する。サキサグリプチンの結晶性形態のHCl塩および遊離塩基は、WO2008/131149中に開示されている。サキサグリプチンの調製方法は、また、WO2005/106011およびWO2005/115982中に開示されている。サキサグリプチンは、WO2005/117841中に開示のように、錠剤の形態で製剤化することができる。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
・下記の構造式E
【0028】
【化4】

を有するアログリプチン(SYR−322)は、2−({6−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリルである。
【0029】
アログリプチンは、US2005/261271、EP1586571、およびWO2005/095381中に開示されている。一実施形態において、アログリプチンは、WO2007/035629中に開示されているように、それぞれその安息香酸塩、その塩酸塩、またはそのトシル酸塩の形態で存在する。この部類の実施形態は、安息香酸アログリプチンに関する。安息香酸アログリプチンの多形体が、WO2007/035372中に開示されている。アログリプチンの調製方法は、WO2007/112368、および特にWO2007/035629中に開示されている。アログリプチン(すなわち、その安息香酸塩)は、WO2007/033266に記載のように錠剤に製剤化し、投与することができる。アログリプチンのピオグリタゾンまたはメトフォルミンを含む製剤が、それぞれWO2008/093882またはWO2009/011451中に記載されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0030】
−(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくはメシル酸塩、または
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたは薬学的に許容されるその塩:
これらの化合物およびそれらの調製方法は、WO03/037327中に開示されている。前者の化合物のメシル酸塩およびその結晶性多形体は、WO2006/100181中に開示されている。後者の化合物のフマル酸塩およびその結晶性多形体は、WO2007/071576中に開示されている。これらの化合物は、WO2007/017423に記載のように医薬組成物に製剤化することができる。したがって、これらの化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0031】
−(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンまたは薬学的に許容されるその塩:
【0032】
【化5】

この化合物およびその調製方法は、WO2005/000848中に開示されている。この化合物(特に、その二塩酸塩)の調製方法は、また、WO2008/031749、WO2008/031750およびWO2008/055814中に開示されている。この化合物は、WO2007/017423に記載のように医薬組成物に製剤化することができる。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0033】
−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン(別名ゴソグリプチン)または薬学的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、WO2005/116014およびUS7291618中に開示されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0034】
−(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オンまたは薬学的に許容されるその塩:
【0035】
【化6】

この化合物およびその調製方法は、WO2007/148185およびUS20070299076中に開示されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0036】
−(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル(別名メログリプチン)または薬学的に許容されるその塩:
【0037】
【化7】

この化合物およびその調製方法は、WO2006/040625およびWO2008/001195中に開示されている。具体的に特許請求される塩には、メタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩が含まれる。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
−(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリルまたは薬学的に許容されるその塩:
【0038】
【化8】

この化合物、その調製および使用方法は、WO2005/095381、US2007060530、WO2007/033350、WO2007/035629、WO2007/074884、WO2007/112368、WO2008/033851、WO2008/114800およびWO2008/114807中に開示されている。具体的に特許請求される塩には、コハク酸塩(WO2008/067465)、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、(R)−マンデル酸塩および塩酸塩が含まれる。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0039】
−5−{(S)−2−[2−((S)−2−シアノ−ピロリジン−1−イル)−2−オキソ−エチルアミノ]−プロピル}−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−2,8−ジカルボン酸ビス−ジメチルアミドまたは薬学的に許容されるその塩:
【0040】
【化9】

この化合物およびその調製方法は、WO2006/116157およびUS2006/270701中に開示されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0041】
−3−{(2S,4S)−4−[4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−5−イル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2−イルカルボニル}チアゾリジン(別名テネリグリプチン)または薬学的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、WO02/14271中に開示されている。具体的な塩は、WO2006/088129およびWO2006/11827中に開示されている(とりわけ、塩酸塩、臭化水素酸塩を含む)。この化合物を使用する併用療法は、WO2006/129785に記載されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0042】
−[(2R)−1−{[(3R)−ピロリジン−3−イルアミノ]アセチル}ピロリジン−2−イル]ボロン酸(別名ズトグリプチン)または薬学的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、WO2005/047297、WO2008/109681およびWO2009/009751中に開示されている。具体的な塩は、WO2008/027273中に開示されている(とりわけ、クエン酸塩、酒石酸塩を含む)。この化合物の製剤は、WO2008/144730に記載されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0043】
−(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリルまたは薬学的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、WO2005/075421、US2008/146818およびWO2008/114857中に開示されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
【0044】
−2−({6−[(3R)−3−アミノ−3−メチルピペリジン−1−イル]−1,3−ジメチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル}メチル)−4−フルオロベンゾニトリルまたは薬学的に許容されるその塩、または6−[(3R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル]−5−(2−クロロ−5−フルオロ−ベンジル)−1,3−ジメチル−1,5−ジヒドロ−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−2,4−ジオンまたは薬学的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、それぞれWO2009/084497およびWO2006/068163中に開示されている。したがって、この化合物またはその塩を製造、製剤化または使用するための方法に関する詳細については、これらの文献が参照される。
少しでも疑念を回避するため、前記で引用されたこれまでの文献の各開示を、参照によりその全体で本明細書に具体的に組み込む。
【0045】
本発明の範囲内で、驚くべきことに、本明細書中で示すような特定のDPP−4阻害剤が、それらの阻害剤を、メトフォルミン単独で不十分にコントロールされていた2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するのにとりわけ適したものにする予想外でとりわけ好都合な特性を有することが見出されるに至った。
【0046】
さらにこの文脈で、驚くべきことに、特定投与量のDPP−4阻害剤、例えば、1日1回経口で投与される5mgのBI 1356を用いて、HbA1cおよびFPGの最大の低下を達成することができ、こうして治療量を提供することが見出された。
【0047】
2型糖尿病で血糖コントロールの不十分な患者における実施中のメトフォルミン療法に加えて、1、5および10mgのBI 1356を1日1回経口で投与する用量−反応研究から、BI 1356での12週間の治療は、BI 1356のすべての投与量(1、5および10mg)についてベースラインに比較して臨床的に妥当なHbA1cおよびFPGの低下、ならびにプラセボに比較してより低いHbA1cおよびFPGレベルをもたらす。最大のグルコース低下効果は、その後にプラトーを伴って8週後に達成されると思われる。1日に5mgのBI 1356は、極めて大きな比率の患者が、ベースラインから少なくとも0.5%のHbA1c低下目標を達成し(53.2%が0.5%以上、27.4%が1.0%以上)、かつ7.0%以下のHbA1c目標値を達成して(14.5%)、患者に最大の血糖効果を提供する。
【0048】
さらに、この文脈で、驚くべきことに、谷値で患者の80%超で80%を超えるDPP−4阻害をもたらす投与量のDPP−4阻害剤、例えば、1日1回経口で投与される5mgのBI 1356が、治療量であることが見出された。
さらに、臨床的に意味のあるHbA1cの変化(0.5%以上)を示す本発明の患者の大部分が、より高いベースラインHbA1cレベル(9%以上)を有する者の中に存在することが見出された。
したがって、本発明は、メトフォルミン療法にもかかわらず、とりわけメトフォルミンでの単剤療法、例えば、最大耐容投与量の経口メトフォルミン療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するのに使用するための、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤を提供する。
【0049】
本発明の特定の実施形態は、メトフォルミン療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するのに使用するための、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤に関連し、ここで、前記DPP−4阻害剤は、グリコシル化ヘモグロビンHbA1cおよび/または空腹時血漿中グルコースを有意に低下させる。
本発明の別の特定の実施形態は、メトフォルミン療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するのに使用するための、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤に関連し、ここで、前記DPP−4阻害剤は、メトフォルミンとの付加的または初期併用療法として、とりわけメトフォルミンとの付加的併用療法として使用することができる。
【0050】
本発明の別の特定の実施形態は、メトフォルミン単独で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者におけるグリコシル化ヘモグロビンHbA1cおよび/または空腹時血漿中グルコースを有意に低下させるのに使用するための、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤に関連し、ここで、前記DPP−4阻害剤は、メトフォルミンでの基礎療法に対する付加薬剤として、前記患者に1日1回1mg〜10mg、とりわけ1日1回5mgの量で12週間にわたって投与される。
【0051】
本発明は、さらに、1日につき1g以上のメトフォルミンでの単剤療法にもかかわらずベースラインで7.5〜10%のHbA1cを有する血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の80%超において、谷値で80%を超えるDPP−4阻害をもたらすための本明細書に示すようなDPP−4阻害剤を提供し、ここで、前記DPP−4阻害剤は、メトフォルミン基礎療法に対する付加薬剤として、経口で1日1回5mgの量で12週間にわたって投与される。
【0052】
本発明は、さらに、メトフォルミンでの療法にもかかわらず、とりわけメトフォルミンでの単独療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な患者における、代謝性疾患、とりわけ糖尿病(特に2型糖尿病)およびそれに関連する疾患(例えば、糖尿病性合併症)の治療および/または予防(進行を予防または減速すること、あるいは開始を遅延することを含む)で使用するための、本明細書に示すようなDPP−4阻害剤を提供する。
本発明は、さらに、メトフォルミンでの治療にもかかわらず血糖コントロールが不十分な患者において、本明細書に記載の療法で使用するための医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤、および任意選択で1種または複数の薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む。
【0053】
本発明は、さらに、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な患者において、本明細書に記載の療法中で使用するためのパーツキットを含む固定または非固定の組合せを提供し、前記組合せは、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤、および1種または複数の別の活性物質、例えば、本明細書中で言及するもののいずれかを含む。
【0054】
本発明は、さらに、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールの不十分な患者における本明細書に記載の療法のための医薬組成物を製造するための、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤の、任意選択で1種または複数のその他の活性物質、例えば本明細書中で言及するもののいずれかと組み合わせた使用を提供する。
本発明は、さらに、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールの不十分な患者における、本明細書に記載の療法で使用するための医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本明細書に示すようなDPP−4阻害剤、および任意選択で1種または複数のその他の活性物質、例えば本明細書中で言及するもののいずれかを含む。
【0055】
本発明は、さらに、メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールの不十分な患者における代謝性疾患、とりわけ2型糖尿病を治療および/または予防する方法を提供し、前記方法は、それを必要とする対象(とりわけヒト患者)に有効量の本明細書に示すようなDPP−4阻害剤を、有効量の1種または複数のその他の活性物質、例えば本明細書中で言及するもののいずれかと任意選択で別々に、逐次的に、同時に、併用してまたは順にずらして投与することを含む。
さらに、本明細書に示すような阻害剤DPP−4は、次の方法の1つまたは複数で有用である可能性がある:
・代謝性障害を予防する、進行を減速する、遅延する、または治療する方法;
・血糖コントロールを改善する、ならびに/あるいは空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させる方法;
・糖尿病の合併症からなる群から選択される容態または障害を予防する、進行を減速する、遅延するまたは治療する方法;
・体重を低減する、体重増加を予防する、または体重低減を促進する方法;
・膵臓β細胞の変性を予防または治療する、ならびに/あるいは膵臓β細胞の機能を改善および/または回復する、ならびに/あるいは膵臓のインスリン分泌機能を刺激および/または回復する方法;ならびに/あるいは
・インスリン感受性を維持および/または改善する、ならびに/あるいは高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防する方法。
【0056】
メトフォルミン療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な患者における、本発明の療法によって扱い易いこのような代謝性疾患または障害の例としては、限定はされないが、1型糖尿病、2型糖尿病、不十分な耐糖能、インスリン抵抗性、高血糖症、高脂血症、高コレステロール血症、脂質異常症、メタボリック症候群X、肥満、高血圧症、慢性全身性炎症、網膜症、神経傷害、腎障害、アテローム性動脈硬化症、内皮機能不全、および骨粗鬆症を挙げることができる。
【0057】
本発明は、さらに、次の方法の1つまたは複数の中で使用するための、1種または複数のその他の活性物質、例えば本明細書中で言及するもののいずれかと組み合わせた、本明細書中で示すようなDPP−4阻害剤を提供する:
・代謝性障害または疾患、例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時血中グルコース障害(IFG)、高血糖症、食後高血糖症、体重過多、肥満、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、内皮機能不全、骨粗鬆症、慢性全身性炎症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、網膜症、神経傷害、腎障害、および/またはメタボリック症候群を予防する、進行を減速する、遅延するまたは治療する方法;
・血糖コントロールを改善する、ならびに/あるいは空腹時血漿中グルコース、食後血漿中グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させる方法;
・耐糖能障害(IGT)、空腹時血中グルコース障害(IFG)、インスリン抵抗性から、および/またはメタボリック症候群から2型糖尿病への進行を予防、減速、遅延する方法;
・微小および大血管性疾患などの糖尿病の合併症、例えば、腎障害、ミクロまたはマクロアルブミン症、タンパク尿、網膜症、白内障、神経障害、学習または記憶障害、神経変性または認知障害、心または脳血管疾患、組織虚血、糖尿病性足変病または潰瘍、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、内皮機能不全、心筋梗塞、急性冠不全症候群、不安定型狭心症、安定型狭心症、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心拍障害、血管再狭窄、および/または脳卒中のリスクを予防、低減する、進行を減速する、遅延または治療する方法;
・体重を低減する、または体重増加を予防する、または体重低減を促進する方法;
・膵臓β細胞の変性および/または膵臓β細胞の機能低下を予防、減速、遅延する、ならびに/あるいは膵臓β細胞の機能を改善および/または回復する、ならびに/あるいは膵臓のインスリン分泌機能を刺激および/または回復する方法;
・脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および/または肝線維症を含む非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を予防、減速、遅延または治療する方法;
・従来の抗糖尿病単剤または併用療法に対して無効である2型糖尿病を予防する、進行を減速する、遅延または治療する方法;
・十分な治療効果のために要求される従来の抗糖尿病薬物療法の投与量の低減を達成する方法;
・従来の抗糖尿病薬物療法に付随する有害効果に関するリスクを低減する方法;ならびに/あるいは
・インスリン感受性を維持および/または改善する、ならびに/あるいは高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療または予防する方法。
【0058】
本発明の他の態様も、当業者にとって、前述のおよび次の所見から明白になる。
【0059】
本発明の趣旨内のDPP−4阻害剤には、限定はされないが、前にまたは後に言及するそれら阻害剤DPP−4のいずれか、好ましくは経口で活性のあるDPP−4阻害剤が含まれる。
【0060】
例えば、本発明によるDPP−4阻害剤は、それ自体およびその活性代謝産物が好ましくは比較的広範な(例えば、100倍を超える)治療濃度域を有し、かつ/または特に主として肝代謝または胆汁排泄を介して排出されるような経口DPP−4阻害剤でよい。
【0061】
より詳細な例において、本発明によるDPP−4阻害剤は、比較的広範な(例えば100倍を超える)治療濃度域を有し、かつ/または次の薬物動態学的特性の1つまたは複数を満たすような(好ましくは、その経口治療量レベルで)経口で投与されるDPP−4阻害剤でよい:
・DPP−4阻害剤は、実質的にまたは主として肝臓を介して排泄され(例えば、投与された経口投与量の80%超、またはさらには90%超)、かつ/またはそれに対して、腎排泄は、実質的でない、またはほんの副次的な排出経路を意味する(例えば、経口投与の放射能標識化炭素(14C)物質の排泄に続いて測定して、投与された経口投与量の、例えば10%未満、好ましくは7%未満);
・DPP−4阻害剤は、主として親薬物として未変化で排泄され(放射能標識化炭素(14C)物質の経口投与後に尿および糞便中に排泄された放射能の平均で70%超、80%超、または好ましくは90%超)、かつ/または、それは、実質的でない、またはほんの僅かな程度が代謝を介して排出され(例えば、30%未満、20%未満、または好ましくは10%);
・DPP−4阻害剤の(主要)代謝産物(複数)は、薬理学的に不活性である。例えば主要代謝産物は、標的酵素DPP−4に結合せず、親化合物に比較して急速に排泄されてもよい(例えば、代謝産物の最終半減期は20時間以下、または好ましくは約16時間以下、例えば15.9時間)。
【0062】
一実施形態において、3−アミノ−ピペリジン−1−イル置換基を有するDPP−4阻害剤の血漿中(主要)代謝産物(薬理学的に不活性でもよい)は、3−アミノ−ピペリジン−1−イル部分のアミノ基が、ヒドロキシル基で置き換えられて3−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル部分(キラル中心の立体配位置の反転によって形成される、例えば、3−(S)−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル部分)を形成するような誘導体である。
【0063】
本発明によるDPP−4阻害剤のさらなる特性は、次の1つまたは複数であってよい:定常状態の急速な達成(例えば、経口治療量レベルでの治療の2〜5日目の間に定常状態の血漿中レベル(定常状態の血漿中レベルの90%超)に到達すること);蓄積がほとんどないこと(例えば、平均蓄積率RA,AUCは経口治療量レベルで1.4以下);および/または好ましくは1日1回で使用された場合にDPP−4阻害に関して長期持続性効果を保持すること(例えば、経口治療量レベルでほとんど完全(90%超)なDPP−4阻害、1日1回の経口薬物治療量の摂取後、24時間にわたって80%超の阻害);治療量レベルでの食事2時間後血中グルコース可動域の80%以上までの有意な減少(既に療法初日に);および初日で投与量の1%未満であり、かつ定常状態で約3〜6%を超えるまで増加することのない尿中に排泄される未変化親化合物の累積量。
したがって、例えば、本発明によるDPP−4阻害剤は、前記阻害薬DPP−4が腎臓を介して排泄されるのは実質的でないか、またはほんの副次的程度(例えば、経口投与量の10%未満、好ましくは7%未満)であること(例えば、後に続く経口投与の放射能標識化炭素(14C)物質の排出によって測定して)を特徴とすることができる。
【0064】
さらに、本発明によるDPP−4阻害剤は、前記DPP−4阻害剤が、実質的にまたは主として肝臓を介して排泄されること(例えば、後に続く経口投与の放射能標識化炭素(14C)物質の排出によって測定して)を特徴とすることができる。
【0065】
さらに、本発明によるDPP−4阻害剤は、前記DPP−4阻害剤が、変化せずに主として親化合物として排泄されること(例えば、放射能標識化炭素(14C)物質の経口投与後に尿および糞便中に排泄された放射能の平均で70%超、または80%超、あるいは好ましくは90%)を特徴とすることができ、前記DPP−4阻害剤が代謝を介して排出されるのは実質的でないか、またはほんの副次的程度であり、かつ/または前記DPP−4阻害薬の主要代謝産物は、薬理学的に不活性であるか、あるいは比較的広範な治療濃度域を有する。
第1実施形態(実施形態A)において、本発明の文脈におけるDPP−4阻害剤は、次式の化合物またはその薬学的に許容される塩の中のいずれかのDPP−4阻害剤である:
式(I)
【0066】
【化10】

または式(II)
【0067】
【化11】

または式(III)
【0068】
【化12】

または式(IV)
【0069】
【化13】

式中、R1は、([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル、(キナゾリン−2−イル)メチル、(キノキサリン−6−イル)メチル、(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル、2−シアノ−ベンジル、(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル、(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル、(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル、または(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチルおよびR2は3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル、(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノまたは(2−(S)−アミノ−プロピル)−メチルアミノを意味する。
【0070】
第2実施形態(実施形態B)において、本発明の文脈におけるDPP−4阻害剤は、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、
(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン、
(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン、
(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オン、
(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、
(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリル、
5−{(S)−2−[2−((S)−2−シアノ−ピロリジン−1−イル)−2−オキソ−エチルアミノ]−プロピル}−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−2,8−ジカルボン酸ビス−ジメチルアミド、
3−{(2S,4S)−4−[4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−5−イル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2−イルカルボニル}チアゾリジン、
[(2R)−1−{[(3R)−ピロリジン−3−イルアミノ]アセチル}ピロリジン−2−イル]ボロン酸、
(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、
2−({6−[(3R)−3−アミノ−3−メチルピペリジン−1−イル]−1,3−ジメチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル}メチル)−4−フルオロベンゾニトリル、および
6−[(3R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル]−5−(2−クロロ−5−フルオロ−ベンジル)−1,3−ジメチル−1,5−ジヒドロ−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−2,4−ジオン、
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択されるDPP−4阻害剤である。
【0071】
第1実施形態(実施形態A)に関して、好ましいDPP−4阻害剤は、次の化合物およびその薬学的に許容される塩のいずれかまたはすべてである:
・1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2004/018468、実施例2(142)):
【0072】
【化14】

・1−[([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2004/018468、実施例2(252)):
【0073】
【化15】

・1−[(キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2004/018468、実施例2(80)):
【0074】
【化16】

・2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−(ブタ−2−イニル)−5−(4−メチル−キナゾリン−2−イルメチル)−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−d]ピリダジン−4−オン(比較対象はWO2004/050658、実施例136):
【0075】
【化17】

・1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチイン−1−イル)−8−[(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(比較対象はWO2006/029769、実施例2(1)):
【0076】
【化18】

・1−[(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2005/085246、実施例1(30)):
【0077】
【化19】

・1−(2−シアノ−ベンジル)−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2005/085246、実施例1(39)):
【0078】
【化20】

・1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[(S)−(2−アミノ−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(比較対象はWO2006/029769、実施例2(4)):
【0079】
【化21】

・1−[(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2005/085246、実施例1(52)):
【0080】
【化22】

・1−[(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2005/085246、実施例1(81)):
【0081】
【化23】

・1−[(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2005/085246、実施例1(82)):
【0082】
【化24】

・1−[(キノキサリン−6−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(比較対象はWO2005/085246、実施例1(83)):
【0083】
【化25】

【0084】
これらのDPP−4阻害剤は、それらが、特別に優れた有効性および長期持続性効果を有利な薬理学的特性、受容体選択性、および有利な副作用プロフィールと兼ね備えるか、あるいは他の薬学的活性物質と併用した場合に予想外の治療上の利点または改善を成し遂げるので、構造的に類似したDPP−4阻害剤から区別される。それらの調製は、言及される刊行物中に開示されている。
【0085】
本発明の実施形態A中の前述のDPP−4阻害剤の中でより好ましいDPP−4阻害剤は、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、とりわけその遊離塩基(BI 1356としても知られる)である。
【0086】
そうでないことを言及しない限り、本発明によれば、これまでおよびこれから言及される活性化合物(DPP−4阻害剤を含む)の定義は、それらの薬学的に許容される塩、ならびにそれらの水和物、溶媒和物および多形形態をも含むと解すべきである。その塩、水和物および多形形態に関して、本明細書中で言及される参考文献がとりわけ参照される。
【0087】
実施形態Aに関して、本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤のための合成方法は、当業者に周知である。有利には、本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤は、文献に記載のような合成方法を使用して調製できる。したがって、例えば、式(I)のプリン誘導体は、その開示が本明細書に組み込まれるWO2002/068420、WO2004/018468、WO2005/085246、WO2006/029769、またはWO2006/048427に記載のようにして得ることができる。式(II)のプリン誘導体は、例えば、その開示が本明細書に組み込まれるWO2004/050658またはWO2005/110999中に記載のようにして得ることができる。式(III)および(IV)のプリン誘導体は、例えば、その開示が本明細書に組み込まれるWO2006/068163、WO2007/071738またはWO2008/017670中に記載のようにして得ることができる。これまで具体的に言及したそれらDPP−4阻害剤の調製は、それに関連して言及した刊行物中に開示されている。特定のDPP−4阻害剤の多形性結晶の修正形態および製剤は、その開示がその全体で本明細書に組み込まれるWO2007/128721およびWO2007/128724中にそれぞれ開示されている。特定のDPP−4阻害剤のメトフォルミンまたはその他の併用パートナーとの製剤は、その開示がその全体で本明細書に組み込まれるWO2009/121945中に記載されている。BI 1356/メトフォルミンの2種固定型併用の典型的な投与強度は、2.5/500mg、2.5/850mg、および2.5/1000mgであり、それは1日に1〜3回で、とりわけ1日2回で投与される。
【0088】
実施形態Bに関して、実施形態BのDPP−4阻害剤のための合成法は、技術文献および/または公開特許文献、とりわけ本明細書中で引用される文献中に記載されている。
【0089】
温血脊椎動物、とりわけヒトでの薬学的適用に関し、本発明の化合物は、通常、0.001〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜15mg/kg体重の投与量で、それぞれの場合に1日1〜4回で使用される。この目的の場合、任意選択で他の活性物質と組み合わせた該化合物を、1種または複数の通常の不活性担体および/または賦形剤、例えば、コーンスターチ、乳糖、ブドウ糖、微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース、または脂肪性物質(硬質脂肪など)、あるいはこれらの適切な混合物と一緒に、裸錠剤もしくは被覆錠剤、カプセル剤、散剤、懸濁剤または坐剤などの通常のガレヌス製剤中に組み込むことができる。
本明細書中に示すようなDPP−4阻害剤を含む本発明による医薬組成物は、したがって、当技術分野で発表されているような薬学的に許容される製剤用添加剤を使用して当業者によって調製される。このような添加剤の例には、限定はされないが、賦形剤、結合剤、担体、増量剤、滑沢剤、流動促進剤、結晶化遅延剤、崩壊剤、可溶化剤、着色剤、pH調節剤、界面活性剤、および乳化剤が含まれる。
【0090】
実施形態Aによる化合物に適した賦形剤の例には、セルロース粉末、リン酸水素カルシウム、エリスリトール、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトール、α化デンプン、またはキシリトールが含まれる。
実施形態Aによる化合物に適した滑沢剤の例には、タルク、ポリエチレングリコール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水素化ヒマシ油、またはステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0091】
実施形態Aによる化合物に適した結合剤の例には、コポビドン(ビニルピロリドンとその他のビニル誘導体との共重合物)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、α化デンプン、または低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)が含まれる。
【0092】
実施形態Aによる化合物に適した崩壊剤の例には、コーンスターチまたはクロスポビドンが含まれる。
本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤の医薬製剤を調製するのに適した方法は、次の方法である:
・適切な打錠用添加剤との粉末混合物の状態の活性物質を直接打錠する方法;
・適切な添加剤と共に造粒し、続いて適切な添加剤と混合し、続いて打錠およびフィルムコーティングする方法;または
・粉末混合物または顆粒をカプセル中に充填する方法。
【0093】
適切な造粒法は、次の方法である:
・強力な混合機中で湿式造粒し、続いて流動床で乾燥する方法;
・ワンポットで造粒する方法;
・流動床で造粒する方法;または
・適切な添加剤と共に乾式で(例えば、ローラーコンパクターで)造粒し、続いて打錠するか、またはカプセル中に充填する方法。
本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤の例示組成物は、第1賦形剤としてのマンニトール、付加的に結合剤の特性をも有する第2賦形剤としてのα化デンプン、結合剤としてのコポビドン、崩壊剤としてのコーンスターチ、および滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウムを含み、ここで、コポビドンおよび/またはコーンスターチは任意選択で存在できる。
【0094】
本発明のDPP−4阻害剤の剤形、製剤および投与に関する詳細については、技術文献、および/または公開特許文献、とりわけ本明細書中で引用される文献が参照される。
医薬組成物(または医薬製剤)は、種々の方式で包装することができる。一般に、配送用商品には、医薬組成物を適切な形態で含む容器が含まれる。錠剤は、典型的には、容易な取扱い、配送および貯蔵のために、かつ貯蔵中での環境との長期接触に際して組成物の本来の安定性を保証するために、適切な一次包装中に包装される。錠剤用一次容器は、瓶またはブリスターパックでよい。
【0095】
例えば本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物または組合せに適した瓶は、ガラスまたはポリマー製(好ましくは、ポリプロピレン(PP)または高密度ポリエチレン(HD−PE))でよく、スクリューキャップで密閉される。スクリューキャップは、子供による内容物への接触を予防または妨げるための子供用安全蓋(例えば、押込み−捩り蓋)を備えることができる。必要であれば(例えば、高湿度の地域)、乾燥剤(例えば、ベントナイト粘土、モレキュラーシーブ、または好ましくはシリカゲル)を付加的に使用して、包装された組成物の貯蔵寿命を延長することができる。
【0096】
例えば本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物または組合せに適切なブリスターパックは、頂部ホイル(錠剤で破ることのできる)および底部(錠剤のためのポケットを含む)を含むか、それらから形成される。頂部ホイルは、その内側(シーリング側)上にヒートシール性ポリマーで被覆された金属ホイル、とりわけアルミニウムまたはアルミニウム合金ホイル(例えば、20μm〜45μm、好ましくは20μm〜25μmの厚さを有する)を含むことができる。底部は、複層ポリマーホイル(ポリ(塩化ビニリデン)(PVDC)で被覆されたポリ(塩化ビニル)(PVC)、またはポリ(クロロトリフルオロエチレン)(PCTFE)でラミネートされたPVCホイル)、あるいはポリマー−金属−ポリマーの複層ホイル(例えば、PVC/アルミニウム/ポリアミドの冷間成形が可能なラミネート組成物)を含むことができる。
【0097】
商品は、さらに、治療用製品の市販パッケージ中に慣習的に含められる、適応症、使用法、用量、投与、禁忌および/またはこのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含むことのできる、説明に関連するラベルまたは添付文書を含むことができる。一実施形態において、ラベルまたは添付文書は、該組成物が本明細書に記載の目的のいずれかのために使用できることを指摘する。
【0098】
第1実施形態(実施形態A)に関して、実施形態Aにおいて本明細書中で言及されるDPP−4阻害剤の典型的な必要投与量は、それぞれの場合に1日に1〜4回で、静脈内で投与される場合には、0.1mg〜10mg、好ましくは0.25mg〜5mg;経口で投与される場合には、0.5mg〜100mg、好ましくは2.5mg〜50mg、または0.5mg〜10mg、より好ましくは2.5mg〜10mgまたは1mg〜5mgである。したがって、例えば、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンの投与量は、経口で投与される場合には、患者ごとに1日につき0.5mg〜10mg、好ましくは患者ごとに1日につき2.5mg〜10mgまたは1mg〜5mgである。
【0099】
実施形態Aにおいて本明細書中で言及されるDPP−4阻害薬を含む医薬組成物を用いて調製される剤形は、活性成分を0.1〜100mgの投与量範囲で含む。したがって、例えば、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンの特定の投与強度は、0.5mg、1mg、2.5mg、5mgおよび10mgである。
【0100】
第2実施形態(実施形態B)に関して、哺乳動物、例えば体重がほぼ70kgの人間に投与すべき実施形態B中の本明細書中で言及されるDPP−4阻害剤の投与量は、一般に、1人ごとに1日につき活性部分として約0.5mg〜約350mg、例えば約10mg〜約250mg、好ましくは約20mg〜約200mg、より好ましくは20〜100mg、または例えば同一サイズでよい好ましくは1〜4回の単回投与に分割して1人ごとに1日につき約0.5mg〜約20mg、好ましくは2.5〜10mgでよい。単回投与強度は、例えば、10、25、40、50、75、100、150および200mgのDPP−4阻害剤の活性部分を含む。
【0101】
DPP−4阻害剤シタグリプチンの投与強度は、通常、活性部分として25〜200mgである。シタグリプチンの推奨投与量は、活性部分(遊離塩基無水物)として計算して1日に1回100mgである。シタグリプチン遊離塩基無水物(活性部分)の単位投与強度は、25、50、75、100、150および200mgである。シタグリプチンの特定の単位投与強度(例えば、錠剤当たり)は、25、50および100mgである。リン酸シタグリプチン一水和物のシタグリプチン遊離塩基無水物に対する等価量、すなわちそれぞれ32.13、64.25、96.38、128.5、192.75および257mgが、医薬組成物中で使用される。調整済みで25mgおよび50mgのシタグリプチンの投与量が、腎不全患者に使用される。シタグリブチン/メトフォルミンの2種併用の典型的な投与強度は、50/500mgおよび50/1000mgである。
【0102】
DPP−4阻害剤ビルダグリプチンの投与量範囲は、通常、1日に10〜150mg、とりわけ25〜150mg、25〜100mg、または1日に25〜50mgもしくは50〜100mgである。経口1日量の特定の例が、25、30、35、45、50、55、60、80、100または150mgである。より特定の態様において、ビルダグリプチンの1日量は、25〜150mg、または50〜100mgでよい。別のより特定の態様において、ビルダグリプチンの1日量は、50mgまたは100mgである。活性成分の適用は、1日に3回まで、好ましくは1日に1または2回行うことができる。特定の投与強度は、50mgまたは100mgのビルダグリプチンである。ビルダグリプチン/メトフォルミンの2種併用の典型的な投与強度は、50/850mgおよび50/1000mgである。
【0103】
アログリプチンは、患者に5mg/日〜250mg/日、場合によっては10mg〜200mg、場合によっては10mg〜150mg、および場合によっては10mg〜100mgの1日量(それぞれの場合に、アログリプチンの遊離塩基形態の分子質量を基準にして)でアログリプチンを投与することができる。したがって、使用できるアログリプチンの具体的投与量としては、限定はされないが、1日につき10mg、12.5mg、20mg、25mg、50mg、75mgおよび100mgが挙げられる。アログリプチンは、遊離塩基の形態で、または薬学的に許容される塩の形態として投与することができる。
【0104】
サキサグリプチンは、患者に2.5mg/日〜100mg/日、場合によっては2.5mg〜50mgの1日量で投与することができる。使用できるサキサグリプチンの具体的投与量としては、限定はされないが、1日につき2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mgおよび100mgが挙げられる。サキサグリプチン/メトフォルミンの2種併用の典型的な投与強度は、2.5/500mgおよび2.5/1000mgである。
【0105】
本発明のDPP−4阻害剤の特定の実施形態は、低投与レベル、例えば、患者ごとに1日につき100mg未満または70mg未満、患者ごとに1日につき好ましくは50mg未満、より好ましくは30mg未満もしくは20mg未満、さらにより好ましくは1mg〜10mg、とりわけ1mg〜5mg(より好ましくは5mg)の経口投与レベルで治療上有効である経口で投与されるDPP−4阻害剤(必要なら、同一サイズでよい1〜4回の単回投与、とりわけ1または2回の単回投与に分割され、優先的には経口で1日に1回または2回(より優先的には1日1回)で投与され、有利には食物と共に、または食物なしで1日の任意の時刻に投与することができる)に関する。したがって、例えば、BI 1356の1日当たり経口投与量である5mgは、1日1回の投与レジメン(すなわち5mgのBI 1356を1日1回、)または1日2回の投与レジメン(すなわち、2.5mgのBI 1356を1日2回)で1日の任意の時刻に食物と共にまたは食物なしで与えることができる。
【0106】
本発明の趣旨の範囲内で強調されるべきとりわけ好ましいDPP−4阻害剤は、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(BI 1356としても知られる)である。BI 1356は、高い有効性、24時間の活性持続時間、および広範な治療濃度域を示す。1日1回、1、2.5、5または10mgのBI 1356の12日間の多回経口投与を受けている2型糖尿病患者において、BI 1356は、急速な定常状態の達成(すべての用量群において治療2〜5日目の間に定常状態の血漿中レベル(13日目の投与前血漿中濃度の90%超)を達成);最小の蓄積(例えば、1mgを超える投与量で、平均蓄積比RA,AUC≦1.4);DPP−4阻害に関する長期持続性効果の保存(例えば、5mgおよび10mgの投与レベルでほとんど完全な(90%超の)DPP−4阻害、すなわち、定常状態でそれぞれ92.3および97.3%の阻害;および薬物摂取後24時間にわたる80%超の阻害)、ならびに2.5mg以上の投与量で80%以上(既に1日目に)までの食後2時間血中グルコース可動域の有意な減少;および1日目に尿中に排泄される未変化親化合物の累積量は、投与量の1%未満であり、12日目で約3〜6%超えて増加することはないこと(腎クリアランスCLR、SSは、経口投与の場合、約14〜約70mL/分、例えば、5mg投与の場合、腎クリアランスは約70mL/分である)を伴う有利な薬力学および薬物動態プロフィール(例えば下表1参照)を示す。2型糖尿病の人々において、BI 1356は、プラセボと同様の安全性および耐容性を示す。約5mg以上の低い投与量で、BI 1356は、DPP−4阻害が十分に24時間持続する真の1日1回経口薬物として作用する。経口治療量レベルで、BI 1356は、主として肝臓を介して、そしてほんの少量が腎臓を介して(経口投与量の約7%未満)排泄される。BI 1356は、主に、胆汁を介して未変化で排泄される。BI 1356の腎臓を介して排出される部分は、投与の増加と共に、長期にわたりほんの極めて僅かに増加し、その結果、患者の腎機能に基づいてBI 1356の投与量を修正する必要がない。BI 1356の非腎臓性排出は、その低い蓄積可能性および安全性の広い余裕と合わせて、腎機能不全および糖尿病性腎障害の高い有病率を有する患者集団においてかなりの利点を有する可能性がある。
【0107】
【表1】

【0108】
異なる代謝機能障害が同時に発生することが多いので、いくつかの異なる活性成分を互いに併用することを指示されることがかなり多い。したがって、診断された機能障害に応じて、DPP−4阻害剤を、それぞれの障害に対して通例的な活性物質、例えば、その他の抗糖尿病薬物質、特に血中糖レベルまたは血中脂質レベルを低下させ、血中HDLレベルを上昇させ、血圧を下げ、あるいはアテローム性動脈硬化症もしくは肥満の治療で指示される活性物質から選択される1種または複数の活性物質と併用すると、改善された治療結果を得ることができる。
【0109】
前述のDPP−4阻害剤は、単剤療法におけるそれらの使用に加え、他の活性物質と合わせて使用することもでき、それによって、改善された治療結果を得ることができる。このような併用治療は、物質の自由な併用として、または固定型の併用、例えば錠剤またはカプセル剤の形態で付与することができる。このために必要とされる併用パートナーの医薬製剤は、医薬組成物として購入することができるか、あるいは当業者が通常の方法を使用して製剤化することができる。医薬組成物として購入できる活性物質は、先行技術の多くの箇所に、例えば、年1回出版される薬物リスト、製薬工業連盟の「Rote Liste(登録商標)」中に、または「Physicians’Desk Reference」として知られる処方薬に関する製造業者の年1回更新される編集物中に記載されている。
【0110】
抗糖尿病薬の併用パートナーの例が、メトフォルミン;グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリドおよびグリクラジドなどのスルホニルウレア;ナテグリニド;レパグリニド;ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンなどのチアゾリジンジオン;メタグリダーゼなどのPPAR−γモジュレーター;GI262570などのPPAR−γアゴニスト;PPAR−γアンタゴニスト;テサグリタザール、ムラグリタザール、アレグリタザール、インデグリタザールおよびKRP297などのPPAR−γ/αモジュレーター;PPAR−γ/α/δモジュレーター;AICARなどのAMPK活性化剤;アセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACC1およびACC2)阻害剤;ジアシルグリセロール−アセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤;SMT3−受容体アゴニストおよびGPR119などの膵臓β細胞GCRPアゴニスト;11β−HSD−阻害剤;FGF19アゴニストまたは類似体;アカルボース、ボグリボースおよびミグリトールなどのα−グルコシダーゼ遮断剤;α2−アンタゴニスト;ヒトインスリン、インスリンリスプロ、インスリングルシリン、r−DNA−インスリンアスパルト、NPHインスリン、インスリンデテミル、インスリン亜鉛懸濁剤およびインスリングラルギンなどのインスリンおよびインスリン類似体;胃液抑制ペプチド(GIP);アミリンおよびアミリン類似体(例えば、プラムリンチドまたはダバリンチド);またはエキセンディン−4、例えばエキセナチド、エキセナチドLAR,リラグルチド、タスポグルチド、リキシセナチド(AVE−0010)、LY−2428757(GLP−1のペグ化版)、LY−2189265(IgG4−Fc重鎖に連結されたGLP−1類似体)、セマグルチドまたはアルビグルチドなどのGLP−1およびGLP−1類似体;KGT−1251などのSGLT2−阻害剤;タンパク質チロシン−ホスファターゼの阻害剤(例えば、トロダスケミン);グルコース−6−ホスファターゼの阻害剤;フルクトース−1,6−ビスホスファターゼモジュレーター;グリコーゲンホスホリラーゼモジュレーター;グルカゴン受容体アンタゴニスト;ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤;ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)阻害剤;PDGF−受容体キナーゼなどのチロシン−キナーゼの阻害剤(50mg〜600mg)(欧州特許出願公開第564409号、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、およびWO2006/041976参照);グルコキナーゼ活性化剤を含むグルコキナーゼ/調節タンパク質モジュレーター;グリコーゲン合成酵素キナーゼ阻害剤;SH2−ドメイン含有イノシトール5−ホスファターゼ2型(SHIP2)の阻害剤;高用量サリチレートなどのIKK阻害剤;JNK1阻害剤;タンパク質キナーゼC−シータ阻害剤;リトベグロン、YM 178、ソラベグロン、タリベグロン、N−5984、GRC−1087、ラファベグロン、FMP825などのβ3アゴニスト;AS3201、ゼナレスタット、フィダレスタット、エパルレスタット、ラニレスタット、NZ−314、CP−744809、およびCT−112などのアルドースレダクターゼ阻害剤;例えば、ダパグリフロジン、セルグリフロジン、アチグリフロジン(atigliflozin)、カナグリフロジンまたは(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[3−(1−ベンゾチオフェン−2−イルメチル)−4−フルオロフェニル]−D−グルシトールなどのSGLT−1またはSGLT−2阻害剤;KV1.3チャネル阻害剤;GPR40モジュレーター;SCD−1阻害剤;CCR−2アンタゴニスト;ドーパミン受容体アゴニスト(メシル酸ブロモクリプチン[Cycloset]);サーチュイン刺激剤;ならびにその他のDPP IV阻害剤である。
【0111】
メトフォルミンは、通常、約100mg〜500mg、または200mg〜850mg(1日に1〜3回の)、または1日に1回または2回での約300mg〜1000mgの種々の投与レジメン、あるいは1日に1回または2回での約100mg〜1000mg、または好ましくは500mg〜1000mg、または1日1回での約500mg〜2000mgの投与量の遅延放出メトフォルミンを使用する、1日につき約500mgから2000mg、最大で2500mgまで変化する投与量で与えられる。塩酸メトフォルミンの特定の投与強度は、250、500、625、750、850および1000mgでよい。
【0112】
メトフォルミンに関する最大耐容投与量は、例えば、1日につき2000mg、1日につき1500mg(例えば、アジア諸国で)または1日に3回で850mg、またはその任意の等価量である。
ピオグリタゾンの投与量は、通常、1日1回で、約1〜10mg、15mg、30mg、または45mgである。
【0113】
ロシグリタゾンは、通常、1日1回で(または2回に分割して)4〜8mgの投与量で与えられる(典型的な投与強度は2、4および8mgである)。
グリベンクラミド(グリブリド)は、通常、1日1回で(または2回に分割して)2.5から5〜20mgの投与量で与えられる(典型的な投与強度は1.25、2.5および5mgである)か、ミクロ化されたグリベンクラミドは、1日1回で(または2回に分割して)0.75から3〜12mgまでの投与量で与えられる(典型的な投与強度は、1.5、3、4.5および6mgである)。
グリジドは、通常、1日1回で2.5から10〜20mgまで(または2回に分割して40mgまで)の投与量で(典型的な投与強度は5および10mgである)、または徐放性グリピジドは、1日1回で5から10mgまで(最大20mgまで)の投与量で与えられる(典型的な投与強度は2.5、5および10mgである)。
【0114】
グリメピリドは、通常、1日1回で1から2〜4mgまで(最大で8mgまで)の投与量で与えられる(典型的な投与強度は1、2および4mgである)。
グリベンクラミド/メトフォルミンの2種併用は、通常、1日1回での1.25/250mgから1日2回で10/1000mgまでの投与量で与えられる(典型的な投与強度は、1.25/250、2.5/500および5/500mgである)。
グリピジド/メトフォルミンの2種併用は、通常、1日2回で2.5/250〜10/1000mgの投与量で与えられる(典型的な投与強度は、2.5/250、2.5/500および5/500mgである)。
グリメピリド/メトフォルミンの2種併用は、通常、1日2回で1/250〜4/1000mgの投与量で与えられる。
【0115】
ロシグリタゾン/グリメピリドの2種併用は、通常、1日に1回または2回での4/1から1日2回での4/2mgまでの投与量で与えられる(典型的な投与強度は、4/1、4/2、4/4、8/2および8/4mgである)。
ピオグリタゾン/グリメピリドの2種併用は、通常、1日1回で30/2〜30/4mgの投与量で与えられる(典型的な投与強度は30/4および45/4mgである)。
ロシグリタゾン/メトフォルミンの2種併用は、通常、1日2回で1/500〜4/1000mgの投与量で与えられる(典型的な投与強度は、1/500、2/500、4/500、2/1000および4/1000である)。
【0116】
ピオグリタゾン/メトフォルミンの2種併用は、通常、1日に1回または2回での15/500から1日3回での15/850mgの投与量で与えられる(典型的な投与強度は、15/500および15/850mgである)。
【0117】
非スルホニルウレア系インスリン分泌促進物質ナテグリニドは、通常、60〜120mgの投与量で食事と一緒に与えられ(最大で360mg/日まで、典型的な投与強度は60および120mgである);レパグリニドは、通常、0.5〜4mgの投与量で食事と一緒に与えられる(最大で16mg/日まで、典型的な投与強度は、0.5、1および2mgである)。レパグリニド/メトフォルミンの2種併用は、1/500および2/850mgの投与強度で利用できる。
アカルボースは、通常、25〜100mgの投与量で食事と一緒に与えられる。ミグリトールは、通常、25〜100mgの投与量で食事と一緒に与えられる。
【0118】
血中脂質レベルを低下させる併用パートナーの例が、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチンおよびロスバスタチンなどのHMG−CoA−レダクターゼ阻害剤;ベザフィブラート、フェノフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、エトフィブラートおよびエトフィリンクロフィブラートなどのフィブラート;ニコチン酸、およびアシピモックスなどのその誘導体;PPAR−αアゴニスト;PPAR−δアゴニスト;アシル−補酵素A阻害剤;アバシミブなどのコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT;EC2.3.1.26);エゼチミブなどのコレステロール再吸収阻害剤;胆汁酸に結合するコレスチラミン、コレスチポールおよびコレセベラムなどの物質;胆汁酸輸送阻害剤;D4F、逆D4F、LXR調節活性物質およびFXR調節活性物質などのHDL調節活性物質;トルセトラピブ、JTT−705(ダルセトラピブ)またはWO2007/005572からの化合物12(アナセトラピブ)などのCETP阻害剤;LDL受容体モジュレーター;MTP阻害剤(例えば、ロミタピド);およびApoB10アンチセンスRNAである。
【0119】
アトルバスタチンの投与量は、通常、1日1回で1mg〜40mg、または10mg〜80mgである。
血圧を低下させる併用パートナーの例が、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、メトプロロールおよびカルベジロールなどのβ−遮断剤;ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、キシパミド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、スピロノラクトン、エプレレノン、アミロリドおよびトリアムテレンなどの利尿剤;アムロジピン、ニフェジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、イスラジピン、ニルバジピン、ベラパミル、ガロパミルおよびジルチアゼムなどのカルシウムチャネル遮断剤;ラミプリル、リシノプリル、シラザプリル、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、フォシノプリルおよびトランドラプリルなどのACE阻害剤;ならびにテルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタンおよびエプロサルタンなどのアンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)である。
【0120】
テルミサルタンの投与量は、通常、1日につき20mg〜320mg、または40mg〜160mgである。
【0121】
血中HDLレベルを高める併用パートナーの例が、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤;内皮リパーゼ阻害剤;ABC1調節剤;LXRαアンタゴニスト;LXRβアゴニスト;PPAR−δアゴニスト;LXRα/β調節剤;およびアポリポタンパク質A−1の発現および/または血漿中濃度を高める物質である。
【0122】
肥満治療のための併用パートナーの例が、ジブトラミン;テトラヒドロリプスタチン(オルリスタット);アリザイム(セチリスタット);デクスフェンフルラミン;アクソキン;CB1アンタゴニストであるリモノバントなどのカンナビノイド受容体1アンタゴニスト;MCH−1受容体アンタゴニスト;MC4受容体アゴニスト;NPY5およびNPY2アンタゴニスト(例えば、ベルネペリット);SB−418790およびAD−9677などのβ3−ARアゴニスト;APD356(ロルカセリン)などの5HT2c受容体アゴニスト;ミオスタチン阻害剤;Acrp30およびアジポネクチン;ステロイルCoAデサチュラーゼ(SCD1)阻害剤;脂肪酸シンターゼ(FAS)阻害剤;CCK受容体アゴニスト;グレリン受容体モジュレーター;Pyy3−36;オレキシン受容体アンタゴニスト;およびテソフェンシン;ならびに2種併用のブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、トピラメート/フェンテルミンおよびプラムリンチド/メトレレプチンである。
【0123】
アテローム性動脈硬化症の治療のための併用パートナーの例が、ホスホリパーゼA2阻害剤;PDGF−受容体−キナーゼなどのチロシン−キナーゼの阻害剤(50mg〜600mg)(欧州特許出願公開第564409号、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、およびWO2006/041976参照);ウシLDL抗体およびウシLDLワクチン;アポA−1ミラノ;ASA;ならびにVCAM−1阻害剤である。
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。本開示から、本明細書に記載の形態に加えて種々の修正形態が、当業者にとって明らかとなろう。このような修正形態は、添付の特許請求の範囲に包含されると解釈される。
【0124】
本明細書中で引用されるすべての特許出願は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0125】
[実施例]
(強力かつ選択的なDPP−4阻害剤であるBI 1356は、メトフォルミン療法にもかかわらずコントロールが不十分な2型糖尿病患者において安全かつ効果的である)
強力かつ選択的なジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害剤であるBI 1356の有効性および安全性は、メトフォルミン(MET、1日に1g以上)で治療されてはいるがコントロールが不十分な2型糖尿病患者(T2DM、ベースラインでのHbA1cが7.5〜10.0%)において試験した。効果は、12週間の無作為二重盲検研究において、プラセボ(PBO)またはオープンラベルのグリメピリド(GLIM、毎日1〜3mg)の付加薬剤と比較した。メトフォルミン以外の抗糖尿病薬物療法は6週間で中止した(患者の34.7%)。
【0126】
主要評価項目は、抗糖尿病薬物療法に先立って調節されていたHbA1cのベースラインからの変化である。333名の患者(平均ベースラインHbA1cは8.3%;空腹時血漿中グルコース(FPG)は185mg/dL)を、BI 1356、PBO、またはオープンラベルGLIMに対して無作為化した。12週間後に、BI 1356治療は、プラセボ補正済みの平均でHbA1cの有意な低下をもたらした(BI 1356が1mgで、n=65、−0.39%;5mgで、n=66、−0.75%;10mgで、n=66、−0.73%)。GLIMを服用した患者は、12週の時点にPBOで補正済みの平均でHbA1cの僅かにより大きい低下を示した(n=64、−0.90%)。BI 1356での12週までのベースラインからのFPGの低下は、統計的に有意であった(1mgで−19mg/dL;5mgで−35mg/dL;10mgで−30mg/dL)。それゆえ、HbA1cおよびFPGに関して用量−反応関係が立証され、5mgのBI 1356で効果のプラトーに到達した。この投与量の場合、12週の時点で患者の80%超において、谷値で80%を超えるDPP−4阻害が達成された。
【0127】
全体の中で、106名の患者(43.1%)が、すべての治療にわたって類似の発生率で有害事象(AE)を経験した。最も頻繁に報告されたエピソードは、鼻咽頭炎(7.5%)、下痢(3.3%)、および吐き気(3.0%)であった。薬物関連低血糖症は、BI 1356またはPBOで発生しなかったが、GLIMを服用した3名の患者で発生した。10名の患者(3.7%)が深刻なAEを経験したが、これらの事象のいずれも薬物関連性とは考えられなかった。
【0128】
メトフォルミン単独ではコントロールが不十分なT2DM患者において、メトフォルミンにBI 1356を付加すると、臨床的に妥当で統計的に有意なHbA1cの低下が達成された。1、5および10mgのBI 1356とメトフォルミンとの組合せ治療は、十分に耐容性があり、低血糖症の事例は報告されなかった。AEの発生率は、BI 1356およびPBOと同等であった。
【0129】
(強力かつ選択的なDPP−4阻害剤であるBI 1356は、治療量および20倍の超治療量で与えられた場合に、その用量はQT間隔を延長しない)
強力かつ選択的なジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤であるBI 1356の徹底的なQT研究を、女性および男性の健常対象において、5mg(治療量)および100mgを使用して実施した。研究は、陽性対照としてオープン−ラベルのモキシフロキサシン(400mg)を用いる、無作為化、単回投与、プラセボ対照、二重盲検、四元交差研究とした。10秒間の12電極心電図(ECG)を、三つ組みで、すべての対象について、投与前、および各治療後の24時間にわたる異なる時点で記録した。主たるパラメーターは、対象に特異的な心拍数で補正済みのQT間隔(QTc1)である。
44名の対象が登録され、その中の26名(59.1%)は男性であった。平均年齢は36.4歳(22〜48歳の範囲)であった。単回経口投与後のgMeanは、5mgのBI 1356で7.05nM(gCVは28.5%)、100mgのBI 1356で267nM(gCVは66.6%)であった。
【0130】
プラセボと比較したBI 1356のベースライン(1〜4時間)からの調節済み平均QTc1変化の片側95%信頼区間の上限は、0.5ms(5mg)および−0.9ms(100mg)であり、それぞれ平均推定値は、それぞれ−1.1および−2.5msであった。24時間の観察期間にわたって、プラセボと比較したベースラインからの調節済みQTc1変化に関する片側95%信頼区間の最大上限は、双方の投与量で2.5ms未満であり、それゆえ十分に10msの非劣性限度未満であった。試験のアッセイ感度は、8.1msの両側90%信頼区間のより低い限界で10.5msであるモキシフロキサシンとプラセボとの間のQTc1差の最も大きい推定効果の大きさによって示された。
【0131】
心拍数またはその他のECGパラメーターにおいて顕著な変化は存在せず、全体として、安全性評価は、すべての治療について同様の結果をもたらした。
【0132】
要約すれば、治療量(5mg)および超治療量(100mg)のBI 1356の単回投与は、QT間隔を延長しなかった。超治療量は、5mgの治療量の投与後に得られる濃度に比べて約38倍高い最大血漿中濃度をもたらし、DPP−4阻害剤の部類の範囲内でのBI 1356の独特な安全性プロフィールに関するさらなる支持を提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトフォルミン療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するためのDPP−4阻害剤であって、前記患者に経口で1日につき1mg〜10mgの量で投与される、前記DPP−4阻害剤。
【請求項2】
メトフォルミン療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するための経口で患者ごとに1日につき5mgの量で投与される、請求項1に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項3】
1日につき1g以上のメトフォルミンでの薬物療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するための経口で1日1回5mgの量で投与される、請求項1または2に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項4】
メトフォルミンでの療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者におけるグリコシル化ヘモグロビンHbA1cおよび/または空腹時血漿中グルコースを低下させるためのメトフォルミンと組み合わせて経口で患者ごとに1日につき5mgの量で投与される、請求項1から3までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項5】
1日につき1g以上のメトフォルミンでの単剤薬物療法にもかかわらずベースラインで7.5〜10%のHbA1cを有する血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者におけるグリコシル化ヘモグロビンHbA1cおよび/または空腹時血漿中グルコースを低下させるためのメトフォルミンへの付加薬剤として経口で1日に1回5mgの量で12週間にわたって投与される、請求項1から4までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項6】
前記患者の80%超において80%を超えるDPP−4阻害をもたらすことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項7】
1−[(4−メチル−1−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンである、請求項1から6までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項8】
1日につき1g以上のメトフォルミンでの単剤薬物療法にもかかわらずベースラインで7.5〜10%のHbA1cを有する血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者におけるグリコシル化ヘモグロビンHbA1cおよび/または空腹時血漿中グルコースを低下させるためのメトフォルミンに対する付加薬剤として経口で1日に1回5mgの量で12週間にわたって投与される、
8.3%の平均ベースラインHbA1cからプラセボ補正済み平均で−7.5%のHbA1cの低下をもたらし、かつ/または
185mg/dLの平均ベースラインFPGからプラセボ補正済み平均で−35mg/dLのFPGの低下をもたらすことを特徴とする、請求項7に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項9】
メトフォルミン療法にもかかわらず血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者における血糖コントロールを改善するためのDPP−4阻害剤であって、経口で患者ごとに1日につき5mgの量で投与され、それによって前記患者の80%超で80%を超えるDPP−4阻害をもたらす、前記DPP−4阻害剤。
【請求項10】
1日につき1g以上のメトフォルミンでの単剤薬物療法にもかかわらずベースラインで7.5〜10%のHbA1cを有する血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の80%超で80%を超えるDPP−4阻害をもたらすためのDPP−4阻害剤であって、前記患者にメトフォルミンに対する付加薬剤として経口で1日に1回5mgの量で12週間にわたって投与される、前記DPP−4阻害剤。
【請求項11】
1日につき1g以上のメトフォルミンでの単剤薬物療法にもかかわらずベースラインで7.5〜10%のHbA1cを有する血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者において、
前記患者に8.3%の平均ベースラインHbA1cからプラセボ補正済みの平均で−0.75%のHbA1cの低下をもたらすために、かつ/または
前記患者に185mg/dLの平均ベースラインFPGからプラセボ補正済みの平均で−35mg/dLのFPGの低下をもたらすために使用するためのDPP−4阻害剤であって、前記患者にメトフォルミンに対する付加薬剤として経口で1日に1回5mgの量で12週間にわたって投与される、前記DPP−4阻害剤。
【請求項12】
メトフォルミン療法にもかかわらずベースラインで9%以上のHbA1cを有する血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者において使用される、請求項1から11までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項13】
さらに、前記患者におけるインスリン感受性および/または膵臓β細胞機能を改善するために使用される、請求項1から12までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項14】
投与された経口投与量の10%未満、好ましくは7%以下が腎臓を介して排泄されることを特徴とする、糖尿病患者における経口治療で使用するためのDPP−4阻害剤。
【請求項15】
胆汁を介して主として未変化で排泄されることを特徴とする、請求項14に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項16】
投与された経口投与量の80%超、好ましくは90%以上が、親薬物として未変化で排泄されることを特徴とする、請求項14または15のいずれかに記載のDPP−4阻害剤。
【請求項17】
DPP−4阻害剤の主要代謝産物が、薬理学的に不活性であることを特徴とする、請求項14から16までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。
【請求項18】
1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンである、請求項9から17までのいずれか1項に記載のDPP−4阻害剤。

【公表番号】特表2012−514589(P2012−514589A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544060(P2011−544060)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050103
【国際公開番号】WO2010/079197
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】