説明

メトロノーム

【課題】 途中で一部だけ拍子やテンポが異なる曲や、不規則に変拍子が続く曲などでも、対応できるメトロノームを提供する。
【解決手段】 制御部4aが、操作子3aのトリガー信号を受信した時に、現在の拍子パターン及びテンポに従った拍子音の再生を上記再生部2aに停止させて該記憶部1aに記憶されている別の拍子パターン及びテンポを読み出してそのパターン及びテンポに従った拍子音を上記再生部2aに再生させ、他方上記制御部4aが、トリガー信号の出力を受信しなくなった時、同じく現在の拍子パターン及びテンポに従った拍子音の再生を上記再生部2aに停止させて、元の拍子パターン及びテンポを読み出してそのパターン及びテンポに従った拍子音を再び上記再生部2aに再生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拍子パターン変更が可能なメトロノームに関する。
【背景技術】
【0002】
楽器の練習時に拍子音を一定に刻むメトロノームは欠かせないものである。最近では、電子式のメトロノームも発売され、正確で携帯性の高い製品が製造されている。また、メトロノームが搭載された電子楽器も数多く製造されている。
【0003】
これらのメトロノームには、あらかじめ一般的によく利用される拍子パターンが記憶されている。例えば、4分の2(2/4)拍子、4分の4(4/4)拍子、8分の6(6/8)拍子等である。ユーザは、これらの中から、練習する曲に適した拍子パターンを選択してメトロノームから拍子音を再生する。
【0004】
ここで、もっとも一般的な4分の4拍子をメトロノームで再生する場合を説明する。図10に、メトロノームのパネル操作表示部30と再生される拍子のパターンを示す。メトロノームのパネル操作表示部30のビートスイッチ38を何度か押下して、「4/4」の拍子を選ぶ。そして、スタート・ストップスイッチ36を押し下げることにより、その拍数のメトロノームの拍子音が再生される。4分の4拍子の場合は、同図に示すように最初の1拍が強く(強拍)、以降の3拍は弱い(弱拍)。強拍では「カッ」、弱拍では「コッ」というようにその音色を変えたり、強拍のみ音量を大きくしたりして、拍の頭をユーザに分かるようにして、小節の頭を認識しやすくしている。
【0005】
テンポスイッチ34のうち、テンポアップを示す印のスイッチを押し下げると再生速度が速くなり、テンポダウンを示す印のスイッチを押し下げると再生速度が遅くなる。スタート・ストップスイッチ36を再度押し下げると、再生が停止する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的な曲を練習するためには、上述したように記憶されている拍子パターンで充分である。しかし、曲の中には規則的な拍子でないものもある。例えば、4拍子だが特定の小節のみ3拍子のものや、拍子は同じでも特定の小節のみテンポが異なるものなどがある。このような曲の場合には、記憶されている一般的な拍子パターンでは対応できず、強拍の無い弱拍のみの拍子パターン(1/4等)を使用せざるを得ず、強拍が無いために練習時に小節の頭や拍の頭を捉えることができないという問題があった。また、テンポが異なる場合はその方法すら用いられず、メトロノームに合わせて練習することができないという問題も生じていた。
【0007】
本発明は、以上のような問題に鑑み創案されたもので、途中で一部だけ拍子やテンポが異なる曲や、不規則に変拍子が続く曲などでも、対応できるメトロノームを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るメトロノームの構成は、
予め2以上の拍子パターンを少なくとも記憶しておく記憶手段と、
任意の拍子パターンに従った拍子音を繰り返し再生する再生手段と、
操作子の操作によって、一時的な拍子音再生を指示する拍子一時変更指示手段と、
上記拍子一時変更指示手段の指示によって、現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生手段に停止させて該記憶手段に記憶されている別の拍子パターンを読み出してそのパターンに従った拍子音を上記再生手段に再生させ、他方上記拍子一時変更指示手段の指示の終了によって、同じく現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生手段に停止させて、元の拍子パターンを読み出してそのパターンに従った拍子音を再び上記再生手段に再生させる制御手段と
を有することを基本的特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、上記制御手段が、拍子一時変更指示手段の指示を受信した時に、現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生手段に停止させて該記憶手段に記憶されている別の拍子パターンを読み出してそのパターンに従った拍子音を上記再生手段に再生させ、他方上記制御手段が、拍子一時変更指示手段の指示の終了によって、同じく現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生手段に停止させて、元の拍子パターンを読み出してそのパターンに従った拍子音を再び上記再生手段に再生させることになる。
【0010】
従って、メトロノームの発音動作において、ペダルやスイッチなどの操作子の操作によって、予め設定された、動作中のものとは異なる拍子で一時的に動作し、操作後には元の拍子に戻って動作するようになる。これによって、途中で一部だけ拍子が異なる曲や、不規則に変拍子が続く曲などでも、該メトロノームを使って演奏することができるようになる。
【0011】
上記メトロノームの使用開始前に、ユーザによって、予め任意の拍子パターンを上記記憶手段に書き込み記憶させておくことができるようにすることもできる。ユーザの作成した上記拍子パターンは、メトロノームの刻む拍子音の一時的に変わる拍子パターンの場合の他、一時的に変わるその前後の拍子パターンであっても良い。
【0012】
また上記記憶手段には、拍子パターンと共に、テンポデータについても記憶されており、制御手段によって再生手段に拍子音を再生させる際に、そのテンポデータの変更も一緒に行われることで一時的にテンポの変更がなされ、その後、元の拍子パターン及びテンポデータに従った拍子音の再生がなされる構成とすることも可能である。そのような構成とすることで、予め設定された、動作中のものとは異なる拍子及びテンポで一時的に動作し、操作後には元の拍子及びテンポに戻って動作するようになる。これによって、途中で一部だけ拍子やテンポが異なる曲や、不規則に変拍子が続く曲などでも、該メトロノームを使って演奏することができるようになる。
【0013】
上記拍子一時変更指示手段は、上記操作子の操作によって一時的な拍子音再生の指示を開始し、その操作が終了した時点で一時的な拍子音再生の指示を終了するようにして、上記制御手段による再生手段の再生の切替タイミングが、上記操作子の操作の有無でなされるようにすると、使い勝手が良くなる。
【0014】
さらに、上記拍子一時変更指示手段は、上記操作子が操作された時点で再生中の拍子パターンが最後まで再生された後に一時的な拍子音再生の指示を開始し、操作が終了した時点で再生中の拍子パターンが最後まで再生された後に一時的な拍子音再生の指示を終了するようにして、上記制御手段による再生手段の再生の切替タイミングが、上記操作子の操作時に再生中の拍子パターンが最後まで再生された時点でなされるようにする、すなわち小節の途中でチェンジスイッチが押し下げられると、その時の小節からではなく、次の小節から拍子とテンポが変更され、さらに小節の途中で押し下げ中のチェンジスイッチを開放すると、同じく次の小節から元の拍子とテンポに戻るようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明の構成によれば、メトロノームの発音動作において、ペダルやスイッチなどの操作子の操作によって、予め設定された、動作中のものとは異なる拍子(やテンポ)で一時的に動作し、操作後には元の拍子(やテンポ)に戻って動作するようになるので、途中で一部だけ拍子(やテンポ)が異なる曲や、不規則に変拍子が続く曲などでも、該メトロノームを使って演奏することが可能になるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係るメトロノームの機能構成ブロック図である。同図に示すように、該メトロノームは、記憶部1aと、再生部2aと、操作子3aと、制御部4aとを備えており、その他に後述するパネル操作表示部30の表示部5aの構成も備えている。
【0018】
そのうち上記記憶部1aは、既にデフォルトで用意された拍子パターンをテーブル上に用意する拍子テーブルメモリ12を構成する後述するROM10及びデータの読み書きがいつでも可能なRAM14(その他シリコンディスクドライブやハードディスクなど)で構成されており、本実施例では、予め(演奏開始前の意味)2以上の拍子パターンが上記拍子テーブルメモリ12等に記憶されている。また後述する操作子3aや後述するパネル操作表示部30の他のスイッチなどにより、演奏開始前に拍子パターンを刻み、或いはテンポデータを一緒に変更して、それを上記RAM14に記憶しておくことも可能である。
【0019】
上記再生部2aは、後述する制御部4aの制御により、該制御部4aによって記憶部1aから読み出された拍子パターンに従って、「カッ」や「コッ」といった拍子を刻む楽音を繰り返し出力する。その構成は、後述する用に楽音発生部20、波形メモリ22、D/A変換器24及びサウンドシステム26で構成される。
【0020】
上記操作子3aは、その操作によって、一時的な拍子音再生を指示する本発明の拍子一時変更指示手段を構成している。本実施例では後述するパネル操作表示部30のチェンジスイッチ32で構成されており、その操作子3aを押し続けることによって、一時的にトリガー信号を出し続ける構成である。もちろん、その他に例えばペダルスイッチなどや他の信号出力構成とすることも可能である。またこの操作子3aは、1回操作する毎に、変更のためのトリガー信号を出し、さらに次の操作により、復帰信号を出す構成とするようにしても良い。
【0021】
上記制御部4aは、後述する本実施例システムのCPU40で構成されており、上記操作子3aのトリガー信号を受信した時に、現在の拍子パターンの再生を上記再生部2aに停止させて該記憶部1aに記憶されている別の拍子パターンを読み出して上記再生部2aに再生させ、他方出し続けられていたトリガー信号を上記操作子3aから受信しなくなった時(又は復帰信号を操作子3aから受信した時)、同じく現在の拍子パターンの再生を上記再生部2aに停止させて記憶部1aに記憶された元の拍子パターンを読み出して再び上記再生部2aに再生させる機能を有している。
【0022】
図2は、本実施形態によるメトロノームのシステム構成例を示すブロック図である。
【0023】
同図に示すように、バス100には、CPU40、ROM10、RAM14及び楽音発生を行う上記楽音発生部部20が接続される。パネル操作表示部30は、後述する図3のパネル構成に対応し、そこに例えば液晶表示装置(LCD)等で構成される上記表示部5aや操作子3aを構成するチェンジスイッチ32、テンポスイッチ34、スタート・ストップスイッチ36、ビートスイッチ38等を備えており、上記CPU40に接続される。
【0024】
上記CPU40は、後述するROM10上のプログラムメモリ16から本メトロノームのプログラムを読み出して、本装置全体の制御を行うと共に、本実施例で説明する本発明で特有の制御を同時に実施する。その制御には、上述のように、操作子3aのトリガー信号を受信して、既に刻まれている現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生部2aに停止させて、上記記憶部1aに記憶されている別の拍子パターンを読み出して、再生部2aにその拍子パターンに従った拍子音の再生をさせ、他方トリガー信号を上記操作子3aから受信しなくなった時(又は操作子3aの操作開始時に出力され、またその操作終了時に再度出力されたトリガー信号を操作子3aから受信した時)、同じく現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生部2aに停止させて、元の拍子パターン(該拍子パターンはデフォルトで記憶部1aに記憶されている)を読み出してそのパターンに従った拍子音を再び上記再生部2aに再生させる制御も含まれている。すなわち、後述する図6及び図7のフローチャートの処理等も行う。
【0025】
上記ROM10は、プログラムメモリ16及び拍子テーブルメモリ12を有している。プログラムメモリ16は、上述のように、本メトロノームの全体を制御し且つその全体制御の中に、本発明の制御部4aの制御を行うプログラムを内包した状態で記憶している。拍子テーブルメモリ12は、図4に示す拍子テーブル12a及びそのテーブル(BN)を使用して指定されるビートメモリ12b群を記憶する。
【0026】
上記RAM14は、上述のように、ユーザにより、上記操作子3aなどを使用して、予め任意の拍子パターンを、上記記憶部1aに書き込み記憶させておくために用いられる(ユーザが設定した拍子パターンを記憶するユーザビートメモリ14aを構成する)他、CPU40での演算制御で、一時的に使用されるワーキング領域を提供したり、上記制御中に使用されるフラグなどを記憶しておく。ユーザにより記憶部1aのRAM14上のユーザビートメモリ14aに記憶される拍子パターンは、上述のように、操作子3aなどを使用しながら、RAM14のユーザビートメモリ14a上に1(強迫)か0(弱拍)かを入力し、上記拍子テーブル上のBN=0で、ユーザが指定した拍子が設定された場合に、拍子パターンとして使用されることになる。
【0027】
図3は、操作子3aたるチェンジスイッチ32と表示部5aが設けられているメトロノームのパネル操作表示部30を示す説明図である。一般的なメトロノームのパネル操作表示部に対し、チェンジスイッチ32が追加されている。このスイッチ32を操作することにより、メトロノーム動作中に異なる拍子やテンポで動作させたり、一時的な拍子やテンポの設定を行う。
【0028】
上述のように、上記チェンジスイッチ32が、本実施例に係る操作子3aの構成に対応し、RAM14で構成されるユーザビートメモリ14a及びROM10で構成される拍子テーブルメモリ12(デフォルトで設定される図4の拍子テーブル12a及びビートメモリ12bを含む)が、本実施例構成の記憶部1aに対応する。上記のように、ユーザは、例えばチェンジスイッチ32を操作することにより、任意の拍子パターンを記憶部1aの一つであるRAM14上のユーザビートメモリ14aに記憶させることができる。
【0029】
図4(c)は、ユーザビートメモリ14aに記憶される拍子パターンの例を示す図である。Nは、拍の番号を示すアドレスである。拍子は、「1」が強拍を示し、「0」が弱拍を示す。拍子パターンの終わりは、図4(a)の拍子パターン拍数BTを参照することにより識別可能である。
【0030】
図4(a)は、拍子テーブルメモリ12aに記憶される拍子テーブルの例を示す図である。各拍子番号(アドレス)BNには、各拍子が対応している。図3のビートスイッチ38を押下する毎に、拍子番号BNが巡回してインクリメントされ、拍子を選択することができる。例えば、ビートスイッチ38を押下する毎に、順次、「USER」、「1/4」、「2/4」等の拍子が選択される。ここで、「USER」は、ユーザがビートスイッチ38及びテンポスイッチ34(上向き又は下向き)を用いて設定した拍子であり、1個に限定されず、2個以上設けても良い。
【0031】
図2において、楽音発生部20、波形メモリ22、D/A変換器24及びサウンドシステム26は、図1の再生部2aに対応する。楽音発生部20は、図3のスタート・ストップスイッチ36が押下されると、選択された拍子のメトロノーム音波形を発生する。「USER」の拍子が選択されているときには、楽音発生部20は、ユーザビートメモリ14aに記憶されている拍子パターンを基にメトロノーム音波形を生成する。波形メモリ22は、強拍の「カッ」のメトロノーム音の波形及び弱拍の「コッ」のメトロノーム音の波形を記憶する。楽音発生部20は、拍子パターンに応じて、強拍又は弱拍のメトロノーム音波形をD/A変換器24に出力する。D/A変換器24は、メトロノーム音波形をデジタル形式からアナログ形式に変換し、サウンドシステム26に出力する。サウンドシステム26は、アンプ及びスピーカを有し、メトロノーム音波形を基にメトロノーム音(拍子音)を発音する。
【0032】
図5は、本発明の実施例に係るメトロノームの動作の具体的様子を示す説明図である。この例では、4分の4拍子、テンポが四分音符120で通常動作している。メトロノーム動作中にチェンジスイッチ32を押し下げると、押し下げされた時点の1小節が終了した後、4分の3拍子、テンポ四分音符90で動作する。この間にチェンジスイッチ32が開放されると、次の小節からは元の4分の4拍子、テンポが四分音符120で動作する。
【0033】
一時的な拍子やテンポの設定方法は図示しないが、図3のパネル操作表示部30において、メトロノーム停止中にチェンジスイッチ32を押し下げながら、テンポスイッチ34やビートスイッチ38を操作することにより設定することができる。
【0034】
図6は、本実施形態によるメトロノームのメインルーチンの処理例を示すフローチャートである。電源を入れると、CPU40、RAM14及び楽音発生部(音源LSI)20等の初期化がなされる(ステップS100)。また、メトロノームの動作指示状態を示す変数Rが0に初期化される(ステップS102)。Rが0の時は、メトロノームが動作せず、Rが1の時に動作する。次に、一時拍子動作実行フラグである変数Eが0に初期化される(ステップS104)。Eが0の時は通常動作、Eが1の時は一時的動作(一時拍子動作実行)となる。その後、パネルイベント処理(ステップS106)、その他の処理(ステップS108)がなされ、その後、ステップS106に戻り、該ステップS106及びS108の処理が繰り返される。パネルイベント処理の詳細は、後に図7を参照しながら説明する。
【0035】
図7は、図6のステップS106のパネルイベント処理の処理例を示すフローチャートである。ここではチェンジスイッチ32が押し下げされたか否かがチェックされ(ステップS200)、該スイッチ32が押し下げされた場合(ステップS200;Y)、メトロノームが停止か(R=0?)否かがチェックされる(ステップS202)。メトロノームが停止であれば(R=0;ステップS202;Y)、一時拍子設定処理が行われる(ステップS204)。これは、上述したように、拍子が一時的に変わる場合の設定を行う処理である。
【0036】
反対にメトロノームが動作中の場合(R≠0;ステップS202;N)、オンイベントがあるか(チェンジスイッチ32の押し下げがあるか)否かがチェックされ(ステップS206)、オンイベントがあれば(ステップS206;Y)、一時拍子動作実行フラグEが1にセットされて(ステップS208)、一時拍子変更処理が行われる(ステップS210)。すなわち、拍子テーブルメモリ12の拍子テーブル12aから、予め設定されてあるBN(拍子ナンバ)により、一時拍数Bがロードされる。これにより、該拍数Bで一時的拍子動作が実行されるようになる。ここで表示部5aの表示が書き換えられる(ステップS212)。
【0037】
上記ステップS206でオンイベントがなければ(ステップS206;N)、オフイベントがあるか(チェンジスイッチ32の開放があるか)否かがチェックされ(ステップS214)、オフイベントがあれば(ステップS214;Y)、一時拍子動作実行フラグEが0にセットされて(ステップS216)、通常拍子変更処理が行われる(ステップS218)。すなわち、拍子テーブルメモリ12の拍子テーブル12aから、元のBN(拍子ナンバ)により、通常拍数Bがロードされる。これにより、通常拍子動作が実行される(元の拍数に戻る)ようになる。ここで表示部5aの表示が書き換えられる(ステップS220)。
【0038】
上記ステップS214でオフイベントがなければ(ステップS214;N)、パネルイベント処理は終了し、図6のその他の処理(ステップS108)に移行し、それ以後パネルイベント処理(ステップS106)と該その他の処理(ステップS108)が繰り返し実行されることになる。
【0039】
他方ステップS200で、チェンジスイッチ32が押し下げが検出されなかった場合(ステップS200;N)、スタート・ストップスイッチ36が押し下げされたか否かがチェックされ(ステップS222)、該スイッチ36が押し下げされた場合(ステップS222;Y)、メトロノームが停止か(R=0?)否かがチェックされる(ステップS224)。メトロノームが停止であれば(R=0;ステップS224;Y)、メトロノーム停止状態からのスタートであるから、変数Rが1にセットされ(ステップS226)、メトロノームの拍子音の発音が開始される(ステップS228)。
【0040】
メトロノームが停止でなければ(R≠0;ステップS224;N)、メトロノーム動作状態からのストップ処理であるから、変数Rが0にセットされ(ステップS230)、メトロノームの拍子音の発音が停止される(ステップS232)。
【0041】
上記ステップS222で、スタート・ストップスイッチ36が押し下げられていなかった場合(ステップS222;N)、その他のスイッチが入ったか否かのチェックがなされる(ステップS234)。その他のスイッチが入った場合(ステップS234;Y)は、その他の処理がなされ(ステップS236)、その処理後、或いはその他のスイッチが入っていない場合(ステップS234;N)についても、上記メインルーティンに復帰する。
【0042】
図8は、本メトロノームの発音処理のフローチャートである。この処理は、一度発音が開始されると、メインルーチンとは独立に動作し、本メトロノームの動作状態を表す変数Rが0になるか、電源が切られるまで繰り返し動作する。また本フローチャートでは、チェンジスイッチ32が押し下げられると、直ぐに、拍子音が変更される態様のものが示されている。
【0043】
先ずカウンタNの初期値として1が代入される(ステップS300)。このカウンタNは、1小節の拍数を計測するものとして使用される。そして上記表示部5aのN番目に発音文字(●)が表示され(ステップS302)、拍子音が発音される(ステップS304)。
【0044】
その後一定時間停止処理、すなわちテンポ処理が実行される(ステップS306)。これは、メトロノームの拍子音(「カッ」「コッ」「コッ」「コッ」など)を一定時間毎に発音させるための処理である。ここでパネルイベント処理で設定された、その動作状態を表す一時拍子動作実行フラグEが使用される。詳細は図示しないが、動作状態に従って停止時間が変更されることになる。
【0045】
そして、表示部5aの発音文字が元に戻され(ステップS308)、カウンタNがインクリメントされる(ステップS310)。
【0046】
さらにこのカウンタNが拍数Bより大きくなったか否かがチェックされ(ステップS312)、カウンタNが拍数Bを超えた場合(ステップS312;Y)、1小節が終了したことになるので、ステップS300に復帰し、カウンタNの値が初期値に設定され、以上の処理が繰り返される。
【0047】
他方カウンタNが拍数Bを超えていない場合(ステップS312;N)、まだ1小節が終了していないので、ステップS302に復帰し、小節の終わりまで、以上の処理が繰り返される。
【0048】
尚、拍数Bの値は、パネルイベント処理のチェンジスイッチ32の押し下げによって変化するが、発音処理ではその時点の拍数Bを使用するため、動作状態は1拍毎に反映される。これによって、チェンジスイッチ32を押し下げ中のみ、一時的に拍子とテンポが変更されることを実現している。
【0049】
この点、予め記憶されたテンポのみをスイッチ操作により切り替える先行文献(特開昭57−199981号)があるが、テンポを切り替えるだけの構成であり、しかも拍子については何ら記載がない。これに対し、本願発明では、スイッチの操作中のみ、予め設定された拍子(及びテンポ)に一時的に切り替えられ、そのスイッチの操作後は元の拍子(及びテンポ)に戻る(戻すことが簡単にできる)構成である。メトロノームをこのような構成とすることで、途中で一部だけ拍子(やテンポ)が異なる曲や、不規則に変拍子が続く曲などでも、該メトロノームを使って演奏することができるようになる。
【0050】
また、元の拍子やテンポに戻すために再度スイッチを操作する必要が無く、少ない操作で所望の動作を実現でき、元の拍子やテンポに戻す時の操作ミスも減少することになる。
【0051】
図8の発音処理は、チェンジスイッチ32を押し下げると、その場で拍子やテンポが一時的に変わる構成の場合の処理フローチャートを示していた。これに対し、図9は、メトロノームが通常動作しているときに、小節の途中でチェンジスイッチ32が押し下げられると、その時の小節からではなく、次の小節から拍子とテンポが変更され、さらに小節の途中で押し下げ中のチェンジスイッチ32を開放すると、同じく次の小節から元の拍子とテンポに戻る場合の処理フローチャートを示している。
【0052】
これは、小節の変わり目でタイミングよくチェンジスイッチ32を押下するのが難しい場合に、早めにスイッチ32を押下しても小節が変わってから拍子とテンポが変更されるので、確実に拍子とテンポを変更することができるようになるので、操作が非常に楽になる。
【0053】
まず、バッファBFに拍数Bが代入される(ステップS400)。次に1小節の拍数をカウントするカウンタNに、初期値として1が代入される(ステップS402)。
【0054】
そして、上記表示部5aのN番目に発音文字(●)が表示され(ステップS404)、拍子音が発音される(ステップS406)。
【0055】
その後一定時間停止処理、すなわちテンポ処理が実行される(ステップS408)。ここでパネルイベント処理で設定された、その動作状態を表す一時拍子動作実行フラグEが使用される。詳細は図示しないが、動作状態に従って停止時間が変更されることになる。
【0056】
そして、表示部5aの発音文字が元に戻され(ステップS410)、カウンタNがインクリメントされる(ステップS412)。
【0057】
さらにこのカウンタNがバッファBFより大きくなったか否かがチェックされ(ステップS414)、カウンタNがバッファBFを超えた場合(ステップS414;Y)、1小節が終了したことになるので、バッファBFに拍数Bが代入され(ステップS400)、カウンタNの値は初期値に設定される(ステップS402)。このように、ステップS400に復帰し、以上の処理が繰り返される。
【0058】
他方カウンタNがバッファBFを超えていない場合(ステップS414;N)、まだ1小節が終了していないので、ステップS404に復帰し、小節の終わりまで、以上の処理が繰り返される。
【0059】
なお、拍数Bの値は、パネルイベント処理のチェンジスイッチ32の押し下げによって変化するが、発音処理では1小節のはじめにバッファBFに代入された値を使用するため、動作状態は1小節毎に反映される。これによって、チェンジスイッチ32を押し下げした次の小節から、一時的に拍子とテンポを変更することができるようになっている。
【0060】
以上詳述した本実施例構成によれば、制御部4aが、操作子3aのトリガー信号を受信した時に、現在の拍子パターン及びテンポに従った拍子音の再生を上記再生部2aに停止させて該記憶部1aに記憶されている別の拍子パターン及びテンポを読み出してそのパターン及びテンポに従った拍子音を上記再生部2aに再生させ、他方上記制御部4aが、トリガー信号の出力を受信しなくなった時、同じく現在の拍子パターン及びテンポに従った拍子音の再生を上記再生部2aに停止させて、元の拍子パターン及びテンポを読み出してそのパターン及びテンポに従った拍子音を再び上記再生部2aに再生させることになる。
【0061】
従って、メトロノームの発音動作において、チェンジスイッチ32で構成される操作子3aの操作によって、予め設定された、動作中のものとは異なる拍子及びテンポで一時的に動作し、操作後には元の拍子及びテンポに戻って動作するようになる。これによって、途中で一部だけ拍子やテンポが異なる曲や、不規則に変拍子が続く曲などでも、該メトロノームを使って演奏することができるようになる。
【0062】
上記メトロノームの使用開始前に、ユーザによって、予め任意の拍子パターンやテンポを上記記憶部1aに書き込み記憶させておくことができるようにすることもできる。
【0063】
尚、本発明のメトロノームは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のメトロノームは、単体として用いられるだけではなく、例えば電子楽器中に組み入れられて使用されても良いことは言うまでもない。その場合、チェンジスイッチ(操作子)をパネル上のスイッチとすることはもちろん良いが、足元で操作するペダルを操作子とすることで、演奏を妨げることなく変更することができる。また、膝元で操作するスイッチを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施例に係るメトロノームの機能構成ブロック図である。
【図2】本実施形態によるメトロノームのシステム構成例を示すブロック図である。
【図3】メトロノームのパネル操作表示部30を示す説明図である。
【図4】拍子テーブル12a及びビートメモリ12bを有する拍子テーブルメモリ12とユーザビートメモリ14aで構成される記憶部1aの構成説明図である。
【図5】本発明の実施例に係るメトロノームの動作の具体的様子を示す説明図である。
【図6】本実施形態によるメトロノームのメインルーチンの処理例を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS106のパネルイベント処理の処理例を示すフローチャートである。
【図8】本メトロノームの発音処理のフローチャートである。
【図9】本メトロノームの別の形式の発音処理のフローチャートである。
【図10】従来のメトロノームのパネル操作表示部30と再生される拍子のパターンを示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1a 記憶部
2a 再生部
3a 操作子
4a 制御部
5a 表示部
10 ROM
12 拍子テーブルメモリ
12a 拍子テーブル
12b ビートメモリ
14 RAM
14a ビートメモリ
16 プログラムメモリ
20 楽音発生部
22 波形メモリ
24 D/A変換器
26 サウンドシステム
30 パネル操作表示部
32 チェンジスイッチ
34 テンポスイッチ
36 スタート・ストップスイッチ
38 ビートスイッチ
40 CPU
100 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め2以上の拍子パターンを少なくとも記憶しておく記憶手段と、
任意の拍子パターンに従った拍子音を繰り返し再生する再生手段と、
操作子の操作によって、一時的な拍子音再生を指示する拍子一時変更指示手段と、
上記拍子一時変更指示手段の指示によって、現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生手段に停止させて該記憶手段に記憶されている別の拍子パターンを読み出してそのパターンに従った拍子音を上記再生手段に再生させ、他方上記拍子一時変更指示手段の指示の終了によって、同じく現在の拍子パターンに従った拍子音の再生を上記再生手段に停止させて、元の拍子パターンを読み出してそのパターンに従った拍子音を再び上記再生手段に再生させる制御手段と
を有することを特徴とするメトロノーム。
【請求項2】
ユーザによって、予め任意の拍子パターンを、上記記憶手段に書き込み記憶させておくことができる請求項1記載のメトロノーム。
【請求項3】
上記記憶手段には、拍子パターンと共に、テンポデータについても記憶されており、制御手段によって再生手段に拍子音を再生させる際に、そのテンポデータの変更も一緒に行われることで一時的にテンポの変更がなされ、その後、元の拍子パターン及びテンポデータに従った拍子音の再生がなされることを特徴とする請求項1又は2記載のメトロノーム。
【請求項4】
上記拍子一時変更指示手段は、上記操作子の操作によって一時的な拍子音再生の指示を開始し、その操作が終了した時点で一時的な拍子音再生の指示を終了するようにして、上記制御手段による再生手段の再生の切替タイミングが、上記操作子の操作の有無でなされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のメトロノーム。
【請求項5】
上記拍子一時変更指示手段は、上記操作子が操作された時点で再生中の拍子パターンが最後まで再生された後に一時的な拍子音再生の指示を開始し、操作が終了した時点で再生中の拍子パターンが最後まで再生された後に一時的な拍子音再生の指示を終了するようにして、上記制御手段による再生手段の再生の切替タイミングが、上記操作子の操作時に再生中の拍子パターンが最後まで再生された時点でなされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のメトロノーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−64615(P2011−64615A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216467(P2009−216467)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】