説明

メマンチンの製造方法

本発明は、不純物を実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩(例えばメマンチン塩酸塩)を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩(例えばメマンチン塩酸塩)の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メマンチン(1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン、例えば米国特許第4,122,193号明細書、同第4,273,774号明細書、同第5,061,703号明細書に開示されている)は、受容体に対する中等度のアフィニティー並びに強い電位依存性及び迅速な遮断/脱遮断キネティクスを有する、全身性に活性(systemically active)な不競合的(uncompetitive)NMDA受容体アンタゴニストである。メマンチンは、中等度〜重度のアルツハイマー病、パーキンソン病、及び痙縮を有する患者において、認知症などのさまざまな進行性神経変性障害の軽減に役立つことが示されている(例えば米国特許第5,061,703号明細書、同第5,614,560号明細書及び同第6,034,134号明細書;Parsons et al., Neuropharmacology 1999 Jun;38(6):735-67; Moebius, ADAD, 1999,13:S172-178;Danysz et al., Neurotox. Res., 2000, 2:85-97;Winblad及びPoritis, Int. J. Geriatr. Psychiatry, 1999, 14:135-146;Danysz et al., Curr. Pharm. Des., 2002, 8:835-843;Jirgensons et. al., Eur. J. Med. Chem., 2000, 35:555-565を参照されたい)。メマンチンは、AIDS認知症(米国特許第5,506,231号明細書)、神経障害性痛(米国特許第5,334,618号明細書)、てんかん、緑内障、肝性脳症、多発性硬化症、脳卒中、遅発性ジスキネジア(Parsons et al., 1999, 前掲)、自閉症、注意欠陥多動障害(ADHD)及び他の自閉症スペクトラム障害(米国特許出願公開第2006/0079582号明細書)の処置に役立つことも示唆されている。メマンチンは現在、欧州及び米国において、アルツハイマーの治療に承認されている。
【0003】
米国特許第3,391,142号明細書は、メマンチン塩酸塩を含むアダマンチルアミン類を合成するための方法であって、1-ブロモ-3,5-ジメチルアダマンタンをアセトニトリル及び濃硫酸で処理することによって、対応する1-アセトアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、それを水酸化ナトリウムで加水分解することによって1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、それを塩酸で処理することによってメマンチン塩酸塩に変換することを伴う方法を開示している。
【化1】

【0004】
米国特許第4,122,193号明細書は、メマンチン塩酸塩を含む1-アミノ-3,5-ジアルキルアダマンタン誘導体を合成するための方法であって、1-ハロ-3,5-ジアルキルアダマンタン誘導体を尿素で処理した後、塩酸で処理することを伴う方法を開示している。
【化2】

【0005】
米国特許第5,061,703号明細書は、メマンチン塩酸塩を含むアミノアダマンタン類を合成するための方法であって、アダマンタン環をハロゲン化及び/又はアルキル化した後、そのハロゲン化誘導体をホルムアミドで処理し、続いて加水分解することによって、アミノ基を導入することを伴う方法を開示している。
【化3】

【0006】
チェコ共和国特許第288445号明細書は、1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を合成するための方法であって、1-クロロ-3,5-ジメチルアダマンタンをホルムアミドと反応させた後、そのホルムアミド中間体を塩酸水溶液で処理することによって、1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を得る方法を開示している。
【化4】

【0007】
チェコ共和国特許第282398号明細書は、1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を合成するための方法であって、1-アセトアミド-3,5-ジメチルアダマンタンを、メタノール、エタノール、又は2-プロパノールなどの溶媒中、塩基(例えば水酸化カリウム)で処理することを伴う方法を開示している。
【化5】

【0008】
中国特許出願公開第1566075号明細書は、メマンチン塩酸塩を含む1-アミノアダマンタン誘導体を製造するための方法であって、ハロゲン化アダマンタン化合物(3位及び5位にアルキル基を含む置換基を有してもよい)をホルムアルデヒド又は置換ホルムアルデヒドと反応させた後、酸性条件下で脱ホルミル化することによって、1-アミノアダマンタン誘導体を得る方法を開示している。
【化6】

【0009】
米国特許第5,599,998号明細書は、メマンチンを含む1-アミノアダマンタン誘導体を合成するための方法であって、1-ハロアダマンタン誘導体を金属リチウムで処理してリチオ化中間体とし、それをソニケーション条件下にアミノ化剤(NH2Clなど)で処理することを伴う方法を開示している。
【化7】

【0010】
米国特許出願公開第2006/025885号明細書は、メマンチン塩酸塩を含む1-アミノアダマンタン誘導体を合成するための方法であって、ハロゲン化アダマンタン化合物(アダマンタン環の3位及び5位にアルキル置換基を有してもよい)を氷酢酸及び濃硫酸の存在下でアセトニトリルと反応させた後、1-メトキシ-2-プロパノールなどの溶媒中、アルカリ土類金属の存在下で加水分解することによって、1-アミノアダマンタン誘導体(これは次に、適当な酸(例えば塩酸)で処理することによって、酸付加塩に変換することができる)を得る方法を開示している。
【化8】

【0011】
国際公開第2006/076562号明細書は、メマンチン塩酸塩を合成するための方法であって、1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタンをリン酸の存在下でアセトニトリルと反応させて、N-アセチル-1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン(これは(例えば塩基加水分解によって)メマンチンに変換することができ、次に、そのメマンチンを塩酸で処理することによって、メマンチン塩酸塩を得ることができる)を得る方法を開示している。
【化9】

【0012】
国際公開第2006/122238号明細書は、メマンチン又はメマンチンの酸付加塩を製造するための方法であって、1-ブロモ-3,5-ジメチルアダマンタンをホルムアミドと反応させてN-ホルミル-1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンを形成させること、又は1-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアダマンタンをハロゲン化水素と反応させて1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、次にそれをホルムアミドと反応させて、N-ホルミル-1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンを得ることを伴う方法を開示している。N-ホルミル-1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を酸性条件下で脱ホルミル化するとメマンチン塩酸塩が得られる。
【化10】

【0013】
国際公開第2005/062724号明細書は、メマンチンを含む1-アミノアダマンタン誘導体を合成するための方法であって、式IIaの化合物を臭素化した後、加水分解することによって式IIdの化合物とし、それを酸(例えば硫酸)の存在下にアセトニトリルで処理することによって、式IIcのアセトアミド中間体を得ることを伴う方法を開示している。次に、式IIcの化合物を酸又は塩基の存在下で加水分解すると、式Iのアミノアダマンタン誘導体が得られる。
【化11】

【0014】
国際公開第2007/101536は、1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンを合成するための方法であって、1,3-ジメチルアダマンタンを濃酸中、ホルムアミドで処理することを伴う方法、及び1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンを塩酸で加水分解することによってメマンチン塩酸塩に変換するための方法を開示している。
【化12】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,122,193号明細書
【特許文献2】米国特許第4,273,774号明細書
【特許文献3】米国特許第5,061,703号明細書
【特許文献4】米国特許第5,061,703号明細書
【特許文献5】米国特許第5,614,560号明細書
【特許文献6】米国特許第6,034,134号明細書
【特許文献7】米国特許第5,506,231号明細書
【特許文献8】米国特許第5,334,618号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2006/0079582号明細書
【特許文献10】米国特許第3,391,142号明細書
【特許文献11】米国特許第4,122,193号明細書
【特許文献12】米国特許第5,061,703号明細書
【特許文献13】チェコ共和国特許第288445号明細書
【特許文献14】チェコ共和国特許第282398号明細書
【特許文献15】中国特許出願公開第1566075号明細書
【特許文献16】米国特許第5,599,998号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2006/025885号明細書
【特許文献18】国際公開第2006/076562号明細書
【特許文献19】国際公開第2006/122238号明細書
【特許文献20】国際公開第2005/062724号明細書
【特許文献21】国際公開第2007/101536号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Parsons et al., Neuropharmacology 1999 Jun;38(6):735-67
【非特許文献2】Moebius, ADAD, 1999,13:S172-178
【非特許文献3】Danysz et al., Neurotox. Res., 2000, 2:85-97
【非特許文献4】Winblad及びPoritis, Int. J. Geriatr. Psychiatry, 1999, 14:135-146
【非特許文献5】Danysz et al., Curr. Pharm. Des., 2002, 8:835-843
【非特許文献6】Jirgensons et. al., Eur. J. Med. Chem., 2000, 35:555-565
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
医薬活性成分は純度に関して厳しい規制要件を満たさなければならない。通例、そのような純度要件を満たす製品は、標準的な精製技法を使って粗活性医薬成分を精製することによって得ることができる。
【0018】
当分野で知られる方法によって製造されるメマンチンは、1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを含む微量の不純物を含有し得る。そのような微量不純物はメマンチンと密接な関係があるので、標準的な精製技法を使って粗調製物からメマンチンを単離することは困難である。
【0019】
したがって、1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンなどの不純物を実質的に含まないメマンチンの製造方法を開発することが必要とされている。
【0020】
本発明者らは、メマンチン又は医薬上許容されるその塩を製造するための従来の方法において、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを使用することにより、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチンを得ることが可能であることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩を合成するための方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを適当な試薬又は一連の試薬と反応させて、1位の置換基がアミノ基に変換され得る官能基(例えばホルムアミド、アセトアミド、又はハロアセトアミド)である1-置換-3,5-ジメチルアダマンタンとし、次にその1-置換-3,5-ジメチルアダマンタンをメマンチン又は医薬上許容されるその塩に変換することを含む方法に関する。
【0022】
本発明のさらなる一態様は、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩(例えばメマンチン塩酸塩)を合成するための方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンをハロゲン化して1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その化合物をホルムアミドで処理して1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンを得ることを含み、その1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を塩基加水分解に供して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン(この化合物は、医薬上許容される酸で処理することによって、医薬上許容される塩に変換することができる)を得るか、前記1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を酸加水分解に供して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンを、酸付加塩として得る方法に関する。
【0023】
本発明のさらなる一態様は、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩(例えばメマンチン塩酸塩)を合成するための方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを、濃酸の存在下にホルムアミドで処理して、1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を塩基加水分解に供して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン(この化合物は、医薬上許容される酸で処理することによって、医薬上許容される塩に変換することができる)を得るか、前記1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を酸加水分解に供して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンを、酸付加塩として得る方法に関する。
【0024】
本発明のさらなる一態様は、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩(例えばメマンチン塩酸塩)を合成するための方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンをハロゲン化して1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その化合物を、酸(例えば硫酸、リン酸、硝酸、酢酸と硫酸の組合せ、又はそれらの混合物)の存在下にアセトニトリルで処理して、1-アセトアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その化合物を加水分解して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン(この化合物は、医薬上許容される酸で処理することによって、医薬上許容される塩に変換することができる)を得ることを含む方法に関する。
【0025】
本発明のさらなる一態様は、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン塩酸塩を合成するための方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを臭素で処理して1-ブロモ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その化合物をホルムアミドで処理して1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を塩酸で加水分解して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を得ることを含む方法に関する。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、得られた1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩が、適当な溶媒、例えば水、C1-C4アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール)及びそれらの混合物からの再結晶によって、さらに精製される、上述の方法に関する。
【0027】
本発明のさらなる一態様は、メマンチン又は医薬上許容されるその塩を合成するための方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンが出発物質として使用される方法に関する。
【0028】
本発明のさらなる一態様は、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを製造するための方法であって、アセナフテンを高温高圧で接触水素化してペルヒドロアセナフテンとし、その化合物を、HClの存在下又は非存在下に、AlCl3及び/又はAlBr3などのルイス酸で処理して1,3-ジメチルアダマンタンとし、それを分別蒸留によって精製することを含む方法に関する。
【0029】
本発明のさらなる一態様は、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩の合成における、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンの使用に関する。
【0030】
本発明のもう一つの態様は、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン塩酸塩の合成における、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】1,3-ジメチルアダマンタンの高純度試料のガスクロマトグラム(GC)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1,3-ジメチルアダマンタンを製造するための方法を反応式1に示す。
【0033】
アセナフテン(1)を高温高圧下にラネーニッケルなどの触媒上で水素化してペルヒドロアセナフテン(2)を得る。ペルヒドロアセナフテンを、HClの存在下又は非存在下に、AlCl3及び/又はAlBr3などのルイス酸で処理すると、1,3-ジメチルアダマンタンが得られ、これを(例えば分別蒸留によって)さらに精製すれば、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタン(4)を得ることができる。
【化13】

【0034】
0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンは、反応式2に従って、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩(例えばメマンチン塩酸塩)に変換することができる。
【0035】
0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタン(4)をハロゲン化剤(例えば臭素、塩素、又はt-ブチルクロリド)で処理して、1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタン誘導体5を得ることができる。誘導体5をホルムアミドで処理して、1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン誘導体6を得ることができる。或いは、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを、濃酸の存在下にホルムアミドで処理して、1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン誘導体6を得ることもできる。誘導体6を、塩基性又は酸性条件下で加水分解して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩を得ることができる。
【0036】
誘導体5を、酸(例えば硫酸、リン酸、硝酸、酢酸と硫酸の組合せ、又はそれらの混合物)の存在下にアセトニトリルで処理して、1-アセトアミド-3,5-ジメチルアダマンタン誘導体7を得ることもできる。誘導体7を加水分解して、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチンとし、それを、医薬上許容される酸で処理することによって、医薬上許容される塩に変換することができる。
【化14】

【0037】
本明細書において、ハロゲンという用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0038】
本明細書において、1,3-ジメチルアダマンタンに関連して使用される「不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない」という用語は、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを包含する。
【0039】
本明細書において、メマンチン(又は医薬上許容されるその塩、例えばメマンチン塩酸塩)に関連して使用される「不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まない」という用語は、0.02%以下の不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを含有するメマンチン(又は医薬上許容されるその塩、例えばメマンチン塩酸塩)を包含する。
【0040】
本明細書において、医薬上許容される塩には、酸付加塩、例えば塩酸、メチルスルホン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、及び2-アセトキシ安息香酸を使って製造されるものが含まれるが、これらに限るわけではない。これらの塩(又は他の類似する塩)はいずれも、通常の手段によって製造することができる。塩の性質は、それが無毒性であり、所望の薬理学的活性を実質的に妨害しない限り、重大ではない。
【0041】
本発明の方法に従って製造される、不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩(例えばメマンチン塩酸塩)は、医薬組成物として製剤化することができる。
【0042】
そのような医薬組成物は、以下の説明に従って、固形、半固形、薄膜/フラッシュドーズ(flash dose)、又は液状製剤の形態をとることができる。
【0043】
本組成物は、医薬上許容される従来の無毒性担体を含有する投薬単位製剤として、経口投与、外用投与、非経口投与、又は粘膜(例えば口腔粘膜、吸入、又は直腸)投与することができる。本組成物は、カプセル剤、錠剤などの形態で、又は半固形、薄膜/フラッシュドーズ、若しくは液状製剤として、経口的に投与することができる(A.R.Gennaro編「Remington's Pharmaceutical Sciences」第20版参照)。
【0044】
錠剤又はカプセル剤の形態で経口投与するには、本組成物を、無毒性の医薬上許容される賦形剤、例えば結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール並びに他の還元糖及び非還元糖、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ、ステアリン酸(steric acid)、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなど);崩壊剤(例えばバレイショデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤及び着香剤(flavoring agent)、ゼラチン、甘味剤、天然ゴム及び合成ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカント又はアルギナート)、緩衝塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどと組み合わせることができる。
【0045】
錠剤は、例えばアラビアゴム、ゼラチン、滑石、二酸化チタンなどを含有し得る濃縮糖溶液でコーティングすることができる。或いは、易揮発性有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解するポリマーで錠剤をコーティングすることができる。特定の実施形態では、活性物質が即放性(IR)剤形又は放出調節(MR)剤形に製剤化される。即放性固形剤形は、短期間、例えば60分以下で、活性成分の大半又は全てを放出させて、薬物の迅速な吸収を可能にする(メマンチンの即放性製剤は米国特許出願公開第2006/0002999号明細書及び同第2007/0065512号明細書に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。放出調節固形経口剤形は、長期間にわたって治療的に有効な血漿中レベルを維持し、且つ/又は活性成分の他の薬物動態特性を修飾する目的で、同じように長期間にわたる活性成分の徐放を可能にする(メマンチンの放出調節製剤は米国特許出願公開第2006/0051416号明細書及び同第2007/0065512号明細書に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0046】
軟ゼラチンカプセル剤を製剤化するには、活性物質を、例えば植物油又はポリエチレングリコールと混合することができる。硬ゼラチンカプセル剤は、上述の錠剤用賦形剤、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えばバレイショデンプン、トウモロコシデンプン又はアミロペクチン)、セルロース誘導体又はゼラチンを使った、活性物質の顆粒を含有し得る。液状又は半固形の薬物も硬ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0047】
本発明の組成物は、マイクロスフェア又はマイクロカプセル(例えばポリグリコール酸/乳酸(PGLA)から作製されるもの)に導入することもできる(例えば米国特許第5,814,344号明細書、同第5,100,669号明細書及び同第4,849,222号明細書、PCT公開番号WO95/11010号パンフレット及び同WO93/07861号パンフレットを参照されたい)。薬物の放出制御の達成には生体適合性ポリマーを使用することができ、これには、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーが含まれる。
【0048】
半固形又は液状である本発明の組成物の製剤も使用することができる。活性成分(即ちメマンチン又は医薬上許容されるその塩)は、その製剤の0.1〜99重量%を構成することができ、より具体的に述べると、注射用製剤の場合は0.5〜20重量%を、また経口投与に適した製剤の場合は0.2〜50重量%を構成することができる。
【0049】
本発明の一実施形態では、本組成物が放出調節製剤として投与される。放出調節剤形は、患者のコンプライアンスを改善する手段になり、薬物有害反応の発生頻度を低下させることによって効果的且つ安全な治療を保証する手段にもなる。即放性剤形と比較して、放出調節剤形は、投与後の薬理作用を引き延ばすために使用することができ、また、投薬の合間全体にわたって薬物の血漿中濃度の変動を低減し、それによって急激なピークを排除又は低減するために使用することができる。
【0050】
放出調節剤形は薬物でコーティングされたコア又は薬物を含有するコアを含み得る。次に、コア部は放出調節ポリマーでコーティングされ、その内部に薬物が分散される。放出調節ポリマーは徐々に崩壊し、時間をかけて薬物を放出する。こうして、組成物の最外層は、組成物が水性環境、即ち消化管にばく露された時に、コーティング層を横切る薬物の拡散を、効果的に減速することによって調節する。薬物の正味の拡散速度は、主として、コーティング層又はマトリックスに浸透する胃液の能力と、薬物自体の溶解性とに依存する。
【0051】
本発明のもう一つの実施形態では、本組成物が、経口液状製剤に製剤化される。経口投与用の液状調製物は、例えば溶液剤、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤の形態をとるか、使用前に水若しくは他の適切な媒体で再構成するための乾燥製品として提示することができる。経口投与用の調製物は活性化合物の放出制御又は放出延期が起こるように適切に製剤化することができる。例えば、メマンチンの経口液状製剤はPCT出願番号PCT/US2004/037026明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
液状での経口投与には、本組成物を、無毒性の医薬上許容される不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水)、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂)、乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム)、非水性媒体(例えばアーモンド油、油状エステル、エチルアルコール又は分画植物油)、保存剤(例えばメチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)などと組み合わせることができる。剤形を安定化するために、酸化防止剤(例えばBHA、BHT、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸)などの安定剤も加えることができる。例えば、溶液剤は約0.2重量%〜約20重量%の活性物質を含有し、残りは糖並びにエタノール、水、グリセロール及びプロピレングリコールの混合物であることができる。場合により、そのような液状製剤は、着色剤、着香剤、サッカリン、及び増粘剤としてのカルボキシメチル-セルロース、又は他の賦形剤を含有してもよい。
【0053】
もう一つの実施形態では、治療有効量の活性物質が、保存剤、甘味剤、可溶化剤、及び溶媒を含有する経口溶液剤として投与される。経口溶液剤は、一つ以上の緩衝剤、香料(flavoring)、又は追加の賦形剤を含み得る。さらなる一実施形態では、ペパーミント又は他の香料が、経口液状製剤に加えられる。
【0054】
吸入による投与の場合は、本組成物を、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切な気体を使って、加圧容器又は噴霧器から、エアロゾルスプレー提示の形で、都合よく送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計測された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器用又は吹入器(insufflator)用の、例えばゼラチン製などのカプセル及びカートリッジを製剤化することができる。
【0055】
注射による非経口適用のための溶液剤は、活性物質の医薬上許容される水溶性塩の水溶液として、好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の濃度で製造することができる。これらの溶液剤は、安定剤及び/又は緩衝剤も含有することができ、さまざまな投薬単位アンプルに入れて、都合よく提供することができる。
【0056】
本発明の製剤は、非経口的に、即ち、静脈内(i.v.)、脳室内(i.c.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、真皮下(s.d.)、又は皮内(i.d.)投与により、例えばボーラス注射又は持続注入による直接的注射で、送達することができる。注射用の製剤は、単位剤形で、例えばアンプルに入れて、又は保存剤を添加して多用量容器に入れて、提示することができる。或いは、活性成分は、使用前に適切な媒体、例えば滅菌パイロジェンフリー水で再構成するための粉末の形態をとることもできる。
【0057】
本発明は、活性物質(即ちメマンチン又は医薬上許容されるその塩)と、場合により、さらなる製剤成分とを含有する一つ又はそれ以上の容器を含む、医薬パック又は医薬キットも提供する。ある具体的実施形態では、組成物が、2ティスプーン容量(2 teaspoon capacity)シリンジ(dosage KORC(登録商標))を使って投与するための経口溶液剤(2mg/ml)として提供される。各経口シリンジは測定用の青いハッチマークを有し、シリンジ(先端を下)の右側にtsp単位を表す線、左側にml単位を表す線が引かれている。
【0058】
最適な治療有効量は、薬物を投与する際の厳密な投与様式、その投与が目的とする適応症、関与する対象(例えば体重、健康状態、年齢、性別など)、並びに担当する医師又は獣医師の好み及び経験を考慮して、実験的に決定することができる。
【0059】
直腸適用のための投薬単位は溶液剤又は懸濁剤であるか、中性脂肪基剤と混合された活性物質を含む坐剤若しくは停留浣腸剤、又は植物油若しくはパラフィン油と混合された活性物質を含むゼラチン直腸カプセル剤の形態で製造することができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0061】
実施例1
1,3-ジメチルアダマンタン中の不純物を決定するための分析方法
分析は、CTC 200S自動サンプラーを装備したDANI 86.10 HTガスクロマトグラフで行う。データの取得と処理にはMillennium 3.20ソフトウェアを応用する。さらなる計算は全て、MS Excel 97ソフトウェアによって行い、統計データは「Validierung in Chromotographie」(Novia GmbH., 08.02.1996, フランクフルト・アム・マイン)に従って計算する。
【0062】
1,3-ジメチルアダマンタンの不純物プロファイルを決定するためのガスクロマトグラフィー分析は、SE-52キャピラリーカラム(長さ25;ID:0.32mm;df=0.25μm)で行う。検出にはフレームイオン化検出器(FID)を応用する。インジェクター温度は250℃、検出器温度も250℃とする。キャリアーガスは窒素とする。
【0063】
キャリブレーション用標準物質と分析試料はどちらも、構成要素をヘキサンに溶解することによって製造する。1-ヒドロキシアダマンタンを内部標準物質として応用する。全ての不純物を1,3-ジメチルアダマンタンピークに対してキャリブレーションする。
【0064】
1,3-ジメチルアダマンタンの高純度試料に関する結果を下記表1と図1に示す。
表1:高純度1,3-ジメチルアダマンタンの不純物プロファイル
【表1】

【0065】
実施例2
1,3-ジメチルアダマンタンの製造
アセナフテンをトルエン中のベントナイトで洗浄し、次にシクロヘキセンによる2回目の洗浄を行う。次に、そのアセナフテンを、ラネーニッケル上、150バール、140〜180℃の温度で水素化する。触媒を濾去し、粗ペルヒドロアセナフテン(240kg)を、80〜90℃において4時間、AlCl3(45kg)及びHCl(100mL)で処理する。次に、反応混合物を120℃に8時間加熱する。100mLの塩酸と5kgのAlCl3とを追加し、反応混合物を80〜90℃に4時間加熱する。粗1,3-ジメチルアダマンタンを、最低60段の理論段数を与える配向(oriented)スルザー型パッキンを充填したDN 300カラムでの分別蒸留によって精製する(温度プロファイルはカラム圧に依存する)。臨界点(critical point)は傾向(trend)に基づいて推定され、分析管理(analytical control)によって確認される。0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンが、約75%の収率で得られる。
【0066】
実施例3
1-ブロモ-3,5-ジメチルアダマンタンの製造
実施例2で製造した、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを臭素(3当量)で処理し、16時間にわたって加熱還流する。反応混合物を約15℃まで冷却し、塩化メチレン中の亜硫酸水素ナトリウムでクエンチする。水層を除去し、有機層を水で洗浄する。有機層を減圧下で濃縮することにより、1-ブロモ-3,5-ジメチルアダマンタンを油状物として得る。
【0067】
実施例4
1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩の製造
実施例3で製造した1-ブロモ-3,5-ジメチルアダマンタンを、過剰量のホルムアミドで処理し、120℃に3〜5時間加熱する。反応混合物を冷却し、塩化メチレンで希釈する。この混合物を30%水酸化ナトリウム溶液で4回洗浄する。有機層を蒸留によって濃縮した後、水を加える。蒸留を続けて有機層を除去した後、その混合物を80℃未満まで冷却する。次に、N-ホルミル-1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン中間体(場合によっては単離する)を、37%塩酸溶液の添加によって加水分解する。反応混合物を約3時間にわたって加熱還流してから、反応混合物を5℃まで冷却することにより、粗1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を得て、それを遠心分離によって単離し、水で洗浄し、次に酢酸エチルで洗浄する。次に、その粗1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を再沈殿させることにより、標題の化合物を得る。
【0068】
実施例3〜4に従って製造されるメマンチン塩酸塩の純度を表2に示す。
表2
【表2】

【0069】
実施例5
1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンの製造
実施例2で製造した、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを、0℃において、硝酸で処理し、次に硫酸で処理する。反応を0℃で一晩撹拌する。反応混合物を、乾燥管を装備した丸底フラスコ中の(0℃の)ホルムアミド100mLに注ぐ。反応を0℃で30分間撹拌し、次に室温で90分間撹拌する。次にジクロロメタン及び水を加える。有機相を取り出し、水及び2%NaHCO3溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮する。得られた油状物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標題の化合物を固形物として得る。
【0070】
実施例6
1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンの製造
実施例5で製造した1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンを、37%塩酸溶液の添加によって加水分解する。反応混合物を約3時間にわたって加熱還流してから、反応混合物を5℃まで冷却することにより、粗1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を得て、それを濾過し、水で洗浄し、次に酢酸エチルで洗浄する。次に、粗1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を再沈殿させることにより、標題の化合物を得る。
【0071】
実施例7
メマンチン中の1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタン(TMM)不純物含有量と1,3-ジメチルアダマンタン中の1,3,5-トリメチルアダマンタン不純物含有量との関係
異なるレベルのアルキルアダマンタン不純物1,3,5-トリメチルアダマンタン(TMA)をスパイクした1,3-ジメチルアダマンタン(1,3-DMA)から出発し、実施例5〜6に従って、メマンチンを合成する。最終メマンチン生成物中の対応するアミノアルキルアダマンタン不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタン(TMM)のレベルを決定する。その結果(表3に示す)は、メマンチン最終生成物中の1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタン(TMM)不純物の量が、1,3-ジメチルアダマンタン出発物質中に存在する1,3,5-トリメチルアダマンタン(TMA)不純物の量に依存することを示す。
表3
【表3】

【0072】
本発明は、本明細書に記載する具体的実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、上述の説明から当業者には、本明細書に記載する実施形態の他に、本発明のさまざまな変更実施形態が明白になるだろう。そのような変更実施形態は添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0073】
本明細書において言及する特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の資料は全て、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩の合成方法であって、0.05%以下の1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを、適当な試薬又は一連の試薬と反応させて、1位の置換基がアミノ基に変換され得る官能基である1-置換-3,5-ジメチルアダマンタンとし、次にその1-置換-3,5-ジメチルアダマンタンをメマンチン又は医薬上許容されるその塩に変換することを含む、上記合成方法。
【請求項2】
アミノ基に変換され得る官能基が、ホルムアミド、アセトアミド、及びハロアセトアミドから選択される、請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンをハロゲン化して1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタン中間体をホルムアミドで処理して1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を加水分解させて、医薬上許容される酸で処理することによって医薬上許容される塩に変換することができる1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンを得る、請求項1に記載の合成方法。
【請求項4】
0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを、濃酸の存在下にホルムアミドで処理して、1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を加水分解させて、医薬上許容される酸で処理することによって医薬上許容される塩に変換することができる1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンを得る、請求項1に記載の合成方法。
【請求項5】
0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンをハロゲン化して、1-ハロ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その化合物を、酸の存在下にアセトニトリルで処理して、1-アセトアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その化合物を加水分解して、医薬上許容される酸で処理することによって医薬上許容される塩に変換することができる1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタンを得る、請求項1に記載の合成方法。
【請求項6】
メマンチン塩酸塩の合成方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを臭素化して1-ブロモ-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その化合物をホルムアミドで処理して1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタンとし、その1-ホルムアミド-3,5-ジメチルアダマンタン中間体を塩酸で加水分解して1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を得ることを含む、上記合成方法。
【請求項7】
1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩が適当な溶媒からの再結晶によってさらに精製される、請求項6に記載の合成方法。
【請求項8】
溶媒が、メタノール、エタノール、及びその混合物から選択される、請求項7に記載の合成方法。
【請求項9】
メマンチン又は医薬上許容されるその塩の合成方法であって、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを出発物質として使用する、上記合成方法。
【請求項10】
0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンの製造方法であって、アセナフテンを高温高圧で接触水素化してペルヒドロアセナフテンとし、その化合物をルイス酸で処理して1,3-ジメチルアダマンタンとし、それを分別蒸留によって精製して、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンを得ることを含む、上記製造方法。
【請求項11】
不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン又は医薬上許容されるその塩の合成における、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンの使用。
【請求項12】
不純物1-アミノ-3,5,7-トリメチルアダマンタンを実質的に含まないメマンチン塩酸塩の合成における、0.05%以下の不純物1,3,5-トリメチルアダマンタンを含有する1,3-ジメチルアダマンタンの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−513451(P2012−513451A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542845(P2011−542845)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000329
【国際公開番号】WO2010/083996
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】