説明

メモリーカード及びその作成方法

【課題】 メモリーカードに格納したデータの解析を困難にすることにより、秘匿性の高いデータをメモリーカードに安全に格納する。
【解決手段】 半導体メモリー42のデータ領域30内に、FATファイルシステム用の管理領域33〜36を設けるとともに、FATファイルシステムとは異なる専用ファイルシステムのデータを格納した専用データ領域31と、専用データ領域31へのアクセス方法を示す専用ファイルシステム管理領域32とを設け、FATファイルシステム用の管理領域33〜36中の情報に基づいて再生されるデータを、専用ファイルシステム管理領域32中の情報に基づいて専用データ領域31から再生されるデータとは異なるデータで、且つ、専用データ領域31に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異なるデータとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、秘匿性の高いデータを格納するためのメモリーカード及びその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリーを用いたカード型の外部記憶装置であるメモリーカードとして、メモリースティック(商標)等が普及している。こうしたメモリーカードでは、データを管理するためのファイルシステムとしてFAT(File Allocation Tables )ファイルシステムを採用するのが一般である(例えば、特許文献1参照)。これは、メモリーカードに格納したデータを、Windows(登録商標)等のOSを搭載した一般的なシステムで容易に扱えるようにすることを目的としたものである。
【特許文献1】特開2002−373314号公報(段落番号0020、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、その反面、こうしたメモリーカードでは、秘匿性の高いデータ(例えば試験問題や個人情報等)を格納した場合にも、そのデータが容易に再生されて漏洩したり、不正な複製が容易に行われてしまうことになる。また、データを暗号化して格納した場合にも、その暗号化データが解析されることによってデータが漏洩する可能性がある。したがって、既存のメモリーカードは、秘匿性の高いデータを格納することには適していない。
【0004】
本発明は、上記のような問題を解決し、メモリーカードに格納したデータの解析を困難にすることにより、秘匿性の高いデータをメモリーカードに安全に格納することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明に係るメモリーカードは、半導体メモリーのデータ領域内に、FATファイルシステム用の管理領域を有するとともに、FATファイルシステムとは異なる専用ファイルシステムのデータを格納した専用データ領域と、この専用データ領域へのアクセス方法を示す専用ファイルシステム管理領域とを有し、このFATファイルシステム用の管理領域中の情報に基づいて再生されるデータが、この専用ファイルシステム管理領域中の情報に基づいてこの専用データ領域から再生されるデータとは異なるデータであり、且つ、この専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異なるデータであることを特徴とする。
【0006】
このメモリーカードは、半導体メモリー内のデータ領域に、FATファイルシステムとは異なる専用ファイルシステムのデータを格納した専用データ領域と、この専用データ領域へのアクセス方法を示す専用ファイルシステム管理領域とを有している。
【0007】
したがって、‘専用ファイルシステム管理領域へのアクセス’→‘その管理領域が示すアクセス方法による専用データ領域へのアクセス’という手順の専用ファイルシステムによって、専用データ領域からデータを再生することができる。
【0008】
他方、データ領域にはFATファイルシステム用の管理領域も存在するので、FATファイルシステムによってもデータを再生することができる。但し、FATファイルシステム用の管理領域中の情報に基づいて再生されるデータは、専用ファイルシステム管理領域中の情報に基づいて専用データ領域から再生されるデータとは異なるデータになっている。したがって、Windows(登録商標)等のOSを搭載した一般的なシステムでこのメモリーカードからデータを再生しても、本来のデータとは異なったデータとして認識されるので、本来のデータが漏洩することはない。
【0009】
そして、このFATファイルシステム用の管理領域中の情報に基づいて再生されるデータは、専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異なるデータになっている。
【0010】
したがって、専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカードからFATファイルシステムによってデータを再生しまたはデータの読出しをしても、互いに異なるデータとして認識されるので、その2つのメモリーカードに同一のデータが格納されていることがわからなくなる。
【0011】
これにより、メモリーカードに格納したデータの解析が困難になるので、秘匿性の高いデータをメモリーカードに安全に格納することができる。
【0012】
なお、このメモリーカードにおいて、一例として、FATファイルシステム用の管理領域中の情報によるファイル数やファイルサイズを、専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異ならせることが好適である。
【0013】
このように、同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で、FATファイルシステムによるファイル数やファイルサイズを互いに異ならせることにより、格納したデータの解析を一層困難なものにすることができる。
【0014】
次に、本発明に係るメモリーカードの作成方法は、半導体メモリーのデータ領域内に、FATファイルシステム用の管理領域を有するとともに、FATファイルシステムとは異なる専用ファイルシステムのデータを格納した専用データ領域と、この専用データ領域へのアクセス方法を示す専用ファイルシステム管理領域とを有し、このFATファイルシステム用の管理領域中の情報に基づいて再生されるデータが、この専用ファイルシステム管理領域中の情報に基づいてこの専用データ領域から再生されるデータとは異なるデータであるメモリーカードの作成方法において、このFATファイルシステム用の管理領域に、この専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異なるデータを再生させる情報を格納することを特徴とする。
【0015】
この作成方法によって作成した2つのメモリーカードからFATファイルシステムによってデータを再生しまたはデータの読出しをしても、互いに異なるデータとして認識されるので、その2つのメモリーカードに同一のデータが格納されていることがわからなくなる。
【0016】
これにより、メモリーカードに格納したデータの解析が困難になるので、秘匿性の高いデータをメモリーカードに安全に格納することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同一のデータを格納した2つのメモリーカードからFATファイルシステムによってデータを再生しまたはデータの読出しをしても、その2つのメモリーカードに同一のデータが格納されていることがわからなくなる。これにより、メモリーカードに格納したデータの解析が困難になるので、秘匿性の高いデータをメモリーカードに安全に格納できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面を用いて具体的に説明する。なお、以下では、語学のヒヤリング試験用の問題(単語等を発音した音声データ)を格納したメモリースティックと、このメモリースティックから試験問題を再生する専用のプレーヤーとに本発明を適用した例について説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用したメモリースティックの回路構成例を示すブロック図である。メモリースティック1は、コントロールブロック41とフラッシュメモリ42が1チップICとして構成されたものである。メモリースティック1と外部のシステムとの間の双方向シリアルインタフェースは、10本の線から成る。主要な4本の線は、データ伝送時にクロックを伝送するためのクロック線SCKと、ステータスを伝送するためのステータス線SBSと、データを伝送するデータ線DIO、インターラプト線INTとである。その他に電源供給用線として、2本のGND線および2本のVCC線が設けられる。2本の線Reservは、未定義の線である。
【0020】
クロック線SCKは、データに同期したクロックを伝送するための線である。ステータス線SBSは、メモリカード40のステータスを表す信号を伝送するための線である。データ線DIOは、コマンドおよび暗号化されたオーディオデータを入出力するための線である。インターラプト線INTは、メモリカード40からレコーダ1のCPU2に対しての割り込みを要求するインターラプト信号を伝送する線である。
【0021】
コントロールブロック41のシリアル/パラレル変換・パラレル/シリアル変換・インタフェースブロック(S/P,P/S,IFブロックと略す)43は、上述した複数の線を介して接続された外部のシステムとコントロールブロック41とのインタフェースである。S/P,P/S,IFブロック43は、外部のシステムから受け取ったシリアルデータをパラレルデータに変換し、コントロールブロック41に取り込み、コントロールブロック41からのパラレルデータをシリアルデータに変換して外部のシステムに送る。
【0022】
データ線DIOを介して伝送されるフォーマットでは、最初にコマンドが伝送され、その後にデータが伝送される。S/P,P/S,IFブロック43は、コマンドをコマンドレジスタ44に格納し、データをページバッファ45およびライトレジスタ46に格納する。ライトレジスタ46と関連してエラー訂正符号化回路47が設けられている。ページバッファ45に一時的に蓄えられたデータに対して、エラー訂正符号化回路47がエラー訂正符号の冗長コードを生成する。
【0023】
コマンドレジスタ44、ページバッファ45、ライトレジスタ46およびエラー訂正符号化回路47の出力データがフラッシュメモリインタフェースおよびシーケンサ(メモリI/F,シーケンサと略す)51に供給される。メモリIF,シーケンサ51は、コントロールブロック41とフラッシュメモリ42とのインタフェースであり、両者の間のデータのやり取りを制御する。メモリIF,シーケンサ51を介してデータがフラッシュメモリ42に書き込まれる。
【0024】
フラッシュメモリ42から読み出されたデータは、メモリIF,シーケンサ51を介してページバッファ45、リードレジスタ48、エラー訂正回路49に供給される。ページバッファ45に記憶されたデータがエラー訂正回路49によってエラー訂正がなされる。エラー訂正がされたページバッファ45の出力およびリードレジスタ48の出力がS/P,P/S,IFブロック43に供給され、上述した双方向シリアルインタフェースを介して外部のシステムに供給される。
【0025】
コンフィグレーションROM50には、メモリースティック1のバージョン情報、各種の属性情報等が格納されている。スイッチ60は、ユーザーが必要に応じて操作可能な誤消去防止用のスイッチであり、このスイッチ60が消去禁止の接続状態にある場合には、フラッシュメモリ42の消去を指示するコマンドが外部のシステムから送られても消去が禁止される。発振器61は、メモリカード40の処理のタイミング基準となるクロックを発生する。
【0026】
図2は、本発明を適用したプレーヤーの回路構成例を示すブロック図である。このプレーヤー11は、図1のメモリースティック1を着脱可能に装着して試験問題を再生する専用の装置である。プレーヤー11には、インタフェースブロック12と、操作部14と、マイクロコンピュータから成るコントローラ15と、デコーダ16と、D/A変換器17と、イヤホン端子18とが設けられている。インタフェースブロック12は、上述した双方向シリアルインタフェースの複数の線を介して接続されたメモリースティック1とのインタフェースである。インタフェース12,操作部14,コントローラ15及びデコーダ17は、バス13に接続されている。
【0027】
操作部14は、プレーヤー11の筐体表面に設けられており、メモリースティック1から試験問題を1問ずつ再生するための再生釦を含んでいる。コントローラ15は、この再生釦の操作に基づき、メモリースティック1にコマンドを送ることによって後出の図3に示すような処理を実行する。
【0028】
メモリースティック1からインタフェースブロック12に入力したデータは、インタフェースブロック12からバス13を介してデコーダ16に送られる。デコーダ16は、例えばATRAC3(Adaptive TRansformAcoustic Coding 3)のような圧縮方式で圧縮されている音声データを復号する処理を行う。デコーダ16で復号された音声データは、D/A変換器17でアナログ音声信号に変換されて、イヤホン端子18から出力される。
【0029】
図3Aは、同一の試験問題を格納した複数のメモリースティック1のうちの任意の1つのメモリースティック1のフラッシュメモリー42の物理フォーマットを示す。フラッシュメモリー42の領域は、システム領域20とデータ領域30とに分かれている。システム領域20には、個々のフラッシュメモリー42に固有の情報を格納した固有情報領域(Boot Block)21と、専用ファイル用領域22とが設けられている。専用ファイル用領域22は、Boot Block21とは別の領域であり、FATファイルシステムによってアクセスすることはできない。
【0030】
データ領域30には、専用データ領域31及び専用ファイルシステム管理領域32が設けられている。図4は、専用データ領域31及び専用ファイルシステム管理領域32の詳細を示す図である。専用データ領域31には、N問の試験問題(音声データ)が、ファイル31(1)〜31(N)のデータとして、例えばATRAC3のような圧縮方式で圧縮されて格納されている。1つ1つのファイル31(1)〜31(N)のデータは、データの再生順番に従って、物理的に連続した(セクタ番号が連続した)領域に格納されている。1セクタのサイズは、512バイトである。
【0031】
専用ファイルシステム管理領域32には、ヘッダ情報の領域32aと、ファイル情報の領域32bと、ファイル拡張情報の領域32cとが含まれる。ヘッダ情報領域32aには、ファイル情報領域32b,ファイル拡張情報32c内の情報へのオフセットやバージョン情報等が格納されている。
【0032】
ファイル情報領域32bには、専用データ領域31内の個々のファイル31(1)〜31(N)毎に、データ開始セクタ番号,ファイルサイズ,ファイル名等の、ファイルのアクセスに必要な情報が格納されている。
【0033】
ファイル拡張情報領域32cには、専用データ領域31内の個々のファイル31(1)〜31(N)毎に、そのファイルに対するコマンド(図2のプレーヤー11がそのファイルに対して行う操作の情報)が格納されている。
【0034】
なお、専用データ領域31及び専用ファイルシステム管理領域32には、ファイルサイズがゼロで、ファイル拡張情報領域32cにファイルに対するコマンドのみを格納したファイルを作成することも可能であり、そのファイルについては、データは再生されず、ファイル拡張情報領域32cに格納したコマンドのみが実行される。
【0035】
図3のシステム領域20内の専用ファイル用領域22は、この専用ファイルシステム管理領域32へのアクセス方法を示す情報として、専用ファイルシステム管理領域32のセクタ番号の情報を格納した領域である。なお、図2のプレーヤー11のコントローラ15内のメモリーには、この専用ファイル用領域22のセクタ番号の情報が予め格納されている。
【0036】
データ領域30には、FATファイルシステム用の管理領域として、ブート領域33,FAT34,ルートディレクトリ35及びその下のフォルダ(ここでは「A」という1つのフォルダのみ)の領域36が設けられている。フォルダ「A」内の各ファイル(ここでは「A」〜「E」という5つのファイルとする)の領域としては、前述の専用データ領域31及び専用ファイルシステム管理領域32が割り当てられている。
【0037】
フォルダ領域36には、各ファイル「A」〜「E」についての開始クラスタ及びサイズの情報が格納されているが、これらの開始クラスタは、図にも矢印で描いているように、専用データ領域31中のファイル31(1)〜31(N)のデータ配列とは無関係に、専用データ領域31または専用ファイルシステム管理領域32中の適宜の位置のクラスタになっている。1クラスタのサイズは、16Kバイトである。
【0038】
また、FAT34には、各ファイル「A」〜「E」についての開始クラスタに続く各クラスタのクラスタ番号の情報が格納されているが、これらのクラスタも、専用データ領域31中のファイル31(1)〜31(N)のデータ配列とは無関係に、専用データ領域31または専用ファイルシステム管理領域32中の適宜の位置のクラスタになっている。
【0039】
したがって、FATファイルシステム用の管理領域中の情報に基づいて読み出されるデータは、専用データ領域31中のデータ(本来の試験問題の音声データ)の配列を変更したデータとなるようにされている。
【0040】
図3Bは、同一の試験問題を格納した複数のメモリースティック1のうち、図3Aに示したのとは別の1つのメモリースティック1のフラッシュメモリー42の物理フォーマットを示す。
【0041】
このフォーマットは、FATファイルシステム用の管理領域のうちのFAT34及びフォルダ領域36のみが、図3Aに示したものと異なっている。すなわち、ルートディレクトリ35の下には「A’」という1つのフォルダのみが存在しており、このフォルダ「A’」内には「A」〜「C」という3つのファイルが存在している。したがって、図3Aのフォーマットのメモリースティック1と図3Bのフォーマットのメモリースティック1とは、同一の試験問題を格納しているが、FATファイルシステムによるファイルの数が互いに異なっている。
【0042】
これらのファイル「A」〜「C」の領域には、やはり専用データ領域31及び専用ファイルシステム管理領域32が割り当てられている。また、フォルダ領域36には各ファイル「A」〜「C」についての開始クラスタ及びサイズの情報が格納されているが、これらの開始クラスタも、図にも矢印で描いているように、専用データ領域31中のファイル31(1)〜31(N)のデータ配列とは無関係に、専用データ領域31または専用ファイルシステム管理領域32中の適宜の位置のクラスタになっている。
【0043】
また、FAT34には、各ファイル「A」〜「C」についての開始クラスタに続く各クラスタのクラスタ番号の情報が格納されているが、これらのクラスタも、やはり、専用データ領域31中のファイル31(1)〜31(N)のデータ配列とは無関係に、専用データ領域31または専用ファイルシステム管理領域32中の適宜の位置のクラスタになっている。
【0044】
そして、図3Bのフォーマットでは、FAT34内の各ファイル「A」〜「C」についてのクラスタの数が、図3AのフォーマットにおけるFAT34内の各ファイル「A」〜「C」についてのクラスタの数とはそれぞれ異なっている。したがって、図3Aのフォーマットのメモリースティック1と図3Bのフォーマットのメモリースティック1とは、FATファイルシステムによる同じファイル名のファイル「A」〜「C」のサイズも互いに異なっている。(図ではファイル「A」〜「C」の面積によってこのファイルサイズの相違を表現している。)
【0045】
この図3に例示したように、メモリースティック1としては、同一の試験問題を格納しているが、FATファイルシステムによるファイル数やファイルサイズが互いに異なるものが複数作成されている。図5は、このような複数のメモリースティック1の作成方法の一例を示すフローチャートである。
【0046】
最初に、専用ファイル用領域22及び専用ファイルシステム管理領域32に格納すべき情報と専用データ領域31に格納すべきデータ(試験問題の音声データ)とを作成して(ステップS01)、各メモリースティック1の専用ファイル用領域22,専用データ領域31及び専用ファイルシステム管理領域32に書き込む(ステップS02)。また、各メモリースティック1のブート領域33にFATファイルシステムのブート情報を書き込み(ステップS03)。
【0047】
続いて、FATファイルシステムのファイル数を決定するための乱数を発生する(ステップS04)。そして、1つ1つのメモリースティック1毎に、この乱数によってファイル数を決定するとともに、各ファイルのファイルサイズ以外のファイル情報(ファイル名等)を決定する(ステップS05)。
【0048】
続いて、各ファイルについてのクラスタチェーン(開始クラスタに続く各クラスタの数及びクラスタ番号の情報)を作成するための乱数を発生する(ステップS06)。そして、1つ1つのメモリースティック1毎に、この乱数によってファイル数分のクラスタチェーンを作成し(ステップS07)、作成したクラスタチェーンをFAT34に書き込む(ステップS08)。
【0049】
そして、1つ1つのメモリースティック1毎に、ステップS05で決定したファイル情報をルートディレクトリ35の下のフォルダ領域36に書き込んで(ステップS09)、処理を終了する。
【0050】
なお、図5の例では乱数によって1つ1つのメモリースティック1のFATファイルシステムによるファイル数やファイルサイズを決定しているが、別の例として、1つ1つのメモリースティック1を作成する日時によってこのファイル数やファイルサイズを自動的に決定したり、あるいは1つ1つのメモリースティック1毎に手動での入力によってこのファイル数やファイルサイズを決定してもよい。
【0051】
図6は、図2のプレーヤー11のコントローラ15が、操作部14の再生釦の操作に基づき、メモリースティック1のコントロールブロック41を制御して実行する処理を示すフローチャートである。この処理では、最初に、フラッシュメモリー42のシステム領域20内の専用ファイル用領域22(図3)にアクセスして、この専用ファイル用領域22中の情報を読み出す(ステップS1)。
【0052】
そして、データ領域30内の専用ファイルシステム管理領域32(図3)のセクタ番号の情報を取得し、その情報に基づいて専用ファイルシステム管理領域32にアクセスして、専用データ領域31(図3)中の最初のファイル31(1)についての情報を読み出す(ステップS2)。
【0053】
続いて、読み出した情報が、今回の読出し対象のファイル31(X)(X問目の試験問題)についてのものであるか否かを判断する(ステップS3)。ノーであれば、次のファイル31(2),31(3),…についての情報を1つずつ読み出しながら(ステップS4)、ステップS3の判断を繰り返す。
【0054】
そしてイエスになると、読出し対象のファイル31(X)のデータについての開始セクタ及びサイズの情報を取得し(ステップS5)、専用データ領域31内のその開始セクタからそのサイズ分だけ連続したデータを読み出すことによってファイル31(X)のデータを読み出す(ステップS6)。そして処理を終了する。
【0055】
このようにしてフラッシュメモリー42から読み出されたファイル31(X)のデータは、前述のように、メモリースティック1からプレーヤー11に供給され、プレーヤー11のイヤホン端子18から音声信号として出力される。したがって、ヒヤリング試験の受験者は、それぞれプレーヤー11を1台ずつ使用することにより、メモリースティック1から試験問題を再生して試験を受けることができる。
【0056】
次に、プレーヤー11を使用することなく、FATファイルシステムによってメモリースティック1からデータを再生する様子について説明する。図7は、FATファイルシステムによるメモリースティック1からのデータの再生処理を示すフローチャートである。この処理では、最初に、データ領域30内のブート領域33,FAT34及びルートディレクトリ35を読み出すことにより、メモリースティック1を、FATファイルシステムによるフォーマット済みのメモリースティックであると認識する(ステップS11)。
【0057】
続いて、読出し対象となるフォルダ(ここでは図2のフォーマットのメモリースティック1のフォルダ「A」とする)についての情報を読み出したか否かの判断を、ルートディレクトリ35からフォルダについての情報を1つずつ読み出しながら繰り返す(ステップS12,S13)。
【0058】
イエスになると、フォルダ領域36にアクセスし、読出し対象となるファイル(ここでは図2Aのフォーマットのメモリースティック1のファイル「A」とする)についての情報を読み出したか否かの判断を、フォルダ領域36から各ファイル「A」〜「E」についての情報を1つずつ読み出しながら繰り返す(ステップS14〜S16)。
【0059】
イエスになると、ファイル「A」についての開始クラスタ及びサイズの情報を取得して(ステップS17)、取得したクラスタの情報に基づいて1クラスタ分のデータを読み出す(ステップS18)。続いて、取得したサイズの情報に基づき、ファイル「A」の読出しを完了したか否かを判断する(ステップS19)。
【0060】
ノーであれば、FAT34からファイル「A」についての次のクラスタ番号の情報を1つずつ取得して(ステップS20)、ステップS18の処理及びステップS19の判断を繰り返す。そしてイエスになると、処理を終了する。
【0061】
このようにして、メモリースティック1からは、FATファイルシステムによってもデータを再生することができる。但し、前述のように、各フォルダ内のファイルの開始クラスタやそれに続く各クラスタが、専用データ領域31中のファイル31(1)〜31(N)のデータ配列とは無関係に、専用データ領域31または専用ファイルシステム管理領域32中の適宜の位置のクラスタになっていることから、FATファイルシステムによって再生されるデータは、専用データ領域31中のデータ(本来の試験問題の音声データ)の配列を変更したデータとなる。
【0062】
したがって、Windows(登録商標)等のOSを搭載した一般的なシステムでメモリーカード1から試験問題を再生しても、試験問題の音声データとは異なったでたらめな音声データとして認識されるので、試験問題が漏洩することはない。
【0063】
以上のように、このメモリースティック1によれば、メモリースティックに、FATファイルシステムとは互換性のない専用ファイルシステムのみによって再生可能なデータ形式で試験問題を格納した上で、FATファイルシステムによるフォーマット済みのメモリースティックとしても認識可能な状態を実現させている。したがって、FATファイルシステムを使用している既存のメモリースティックに、FATファイルシステムとは互換性のないデータ形式で試験問題を格納することができる。これにより、既存のメモリースティックが持つFATファイルシステム機能を保持しつつ、試験問題という秘匿性の高いデータをメモリースティックに安全に格納することができる。
【0064】
また、FATファイルシステムによって再生されるデータが、専用データ領域31中のデータの配列を変更したデータであるので、専用データ領域31以外にデータを格納する領域を追加することなく、FATファイルシステムによって再生されるデータを、専用ファイルシステムによって再生されるデータとは異なるデータとすることができる。
【0065】
そして、図3に例示したように、FATファイルシステムによって再生されるデータは、同一の試験問題を格納した2つのメモリースティック1同士で互いにファイル数やファイルサイズが異なっている。
【0066】
したがって、例えばこのメモリースティック1が2つ外部に流出し、それらのメモリースティック1からFATファイルシステムによってデータが再生されまたはデータの読出しをされても、互いに異なるデータとして認識されるので、その2つのメモリースティック1に同一の試験問題が格納されていることがわからなくなる。
【0067】
図8は、こうした2つのメモリースティック1からの再生データの比較の様子(図3Aのフォーマットのメモリースティック1と図3Bのフォーマットのメモリースティック1とが外部に流出した場合の例)示すフローチャートである。図3A,図3Bのフォーマットのメモリースティック1からFATファイルシステムによってそれぞれファイル「A」〜「E」,「A」〜「C」を再生した後、両者のファイル「A」のサイズ及びデータの比較(ステップS21)、両者のファイル「B」のサイズ及びデータの比較(ステップS22)、両者のファイル「C」のサイズ及びデータの比較(ステップS23)、両者のファイル「D」のサイズ及びデータの比較(ステップS24)、両者のファイル「E」のサイズ及びデータの比較(ステップS25)の結果が全てが一致していれば比較に成功した(2つのメモリースティック1に同一のデータが格納されている)と判定し(ステップS26)、他方、ステップS21〜S25のうちの少なくとも1つで一致していなければ比較に失敗した(2つのメモリースティック1に異なるデータが格納されている)と判定する(ステップS27)。
【0068】
図3Aのフォーマットのメモリースティック1と図3Bのフォーマットのメモリースティック1とでは、ファイル数が異なる(図3Bのフォーマットのメモリースティック1にはファイル「D」,「E」が存在しない)とともにファイル「A」〜「C」のファイルサイズも異なっているので、ステップS21〜S25のいずれでも一致しておらず、したがって比較に失敗することになる。これにより、メモリースティック1に格納したデータの解析が困難になるので、その点でも試験問題を安全に格納することができる。
【0069】
さらに、このメモリースティック1では、図2に示したように、フラッシュメモリー42のシステム領域20内に、専用ファイルシステム管理領域32へのアクセス方法を示す専用ファイル用領域22が設けられている。
【0070】
したがって、FATファイルシステムによってメモリースティック1のフラッシュメモリー42のデータ領域30から読み出したデータを別のメモリースティックに不正に複製し、その別のメモリースティックからプレーヤー11で試験問題を再生しようとした場合、専用ファイル用領域22が含まれていないので、専用ファイルシステム管理領域32にアクセスできず、その結果専用データ領域31にアクセスして試験問題を再生することができない。また、Windows(登録商標)のようなシステムでファイルデータを別のメモリーカードに複製した場合には、通常は各ファイルのクラスタを昇順に綺麗に並べるため、元のメモリーカードのデータ配置は復元できない。したがって、メモリースティック1の不正な複製を防止することができるので、その点でも試験問題を安全に格納することができる。
【0071】
なお、以上の例では、FATファイルシステム用の管理領域中の情報によるファイル数やファイルサイズを、2つのメモリースティック1同士で互いに異ならせている。しかし、それ以外の態様で、FATファイルシステムによって再生されるデータを2つのメモリースティック1同士で互いに異ならせる(例えば、ファイル数やファイルサイズは同じにして、各ファイルのデータの内容のみを異ならせる)ようにしてもよい。
【0072】
また、以上の例では、試験問題(音声データ)を格納したメモリースティックと、このメモリースティックから試験問題を再生する専用のプレーヤーとに本発明を適用している。しかし、これに限らず、試験問題以外の秘匿性の高いデータ(例えば住所・氏名・メールアドレス・クレジットカード番号等の個人情報)をメモリースティックに格納し、そのデータを専用のプレーヤーで再生(画面表示)するようにしてもよい。
【0073】
個人情報の場合には、具体的な情報の内容(住所・氏名等)は個人毎に相違しているが、情報の種類や配置等の形式は共通している。したがって、或る個人の個人情報を格納したメモリースティックと、別の個人の個人情報を格納したメモリースティックとが外部に流出した場合に、FATファイルシステムによってその2つのメモリースティックから再生されたデータに規則的な相違(具体的な住所・氏名等に由来する相違)しかなければ、やはりそれらの再生データが解析されることによって個人情報が漏洩する可能性がある。
【0074】
これに対し、本発明によれば、メモリースティックに個人情報を格納する場合に、2つのメモリースティックから再生または読出しされるデータを、具体的な住所・氏名等に由来する規則的な相違を超えて相違させることができる。これにより、データの解析が困難になるので、個人情報を安全に格納することができる。
【0075】
また、以上の例ではメモリースティックに本発明を適用しているが、スマートメディア(商標)やコンパクトフラッシュ(登録商標)といったようなメモリースティック以外のメモリーカードにも本発明を適用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明を適用したメモリースティックの回路構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用したプレーヤーの回路構成例を示すブロック図である。
【図3】図1のメモリースティックのフラッシュメモリーのフォーマットを例示する図である。
【図4】図3の専用データ領域及び専用ファイルシステム管理領域の詳細を示す図である。
【図5】図3のようなフォーマットのメモリースティックの作成方法を示すフローチャートである。
【図6】図2のプレーヤーのコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
【図7】FATファイルシステムによる図1のメモリースティックからのデータの再生処理を示すフローチャートである。
【図8】FATファイルシステムによる2つのメモリースティックからの再生データの比較の様子を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1 メモリースティック、 11 プレーヤー、 12 インタフェースブロック、 13 バス、 14 操作部、 15 コントローラ、 16 デコーダ、 17 D/A変換器、 18 イヤホン端子、 20 システム領域、 21 固有情報領域、 22 専用ファイル用領域、 30 データ領域、 31 専用データ領域、 32 専用ファイルシステム管理領域、 33 ブート領域、 34 FAT、 35 ルートディレクトリ、 36 フォルダ、 41 コントロールブロック、 42 フラッシュメモリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体メモリーのデータ領域内に、FATファイルシステム用の管理領域を有するとともに、FATファイルシステムとは異なる専用ファイルシステムのデータを格納した専用データ領域と、前記専用データ領域へのアクセス方法を示す専用ファイルシステム管理領域とを有し、
前記FATファイルシステム用の管理領域中の情報に基づいて再生されるデータが、前記専用ファイルシステム管理領域中の情報に基づいて前記専用データ領域から再生されるデータとは異なるデータであり、且つ、前記専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異なるデータであることを特徴とするメモリーカード。
【請求項2】
請求項1に記載のメモリーカードにおいて、
前記FATファイルシステム用の管理領域中の情報によるファイル数及び/またはファイルサイズが、前記専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異なることを特徴とするメモリーカード。
【請求項3】
半導体メモリーのデータ領域内に、FATファイルシステム用の管理領域を有するとともに、FATファイルシステムとは異なる専用ファイルシステムのデータを格納した専用データ領域と、前記専用データ領域へのアクセス方法を示す専用ファイルシステム管理領域とを有し、
前記FATファイルシステム用の管理領域中の情報に基づいて再生されるデータが、前記専用ファイルシステム管理領域中の情報に基づいて前記専用データ領域から再生されるデータとは異なるデータであるメモリーカードの作成方法において、
前記FATファイルシステム用の管理領域に、前記専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いに異なるデータを再生させる情報を格納することを特徴とするメモリーカードの作成方法。
【請求項4】
請求項3に記載のメモリーカードの作成方法において、
前記FATファイルシステム用の管理領域に、前記専用データ領域に同一のデータを格納した2つのメモリーカード同士で互いにファイル数及び/またはファイルサイズが異なる情報を格納することを特徴とするメモリーカードの作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−65401(P2006−65401A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244044(P2004−244044)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】