説明

メモリーカード用コネクタ

【課題】ケースを加工することなく、簡単な構成で確実に誤姿勢のメモリーカードの挿入を防止できるメモリーカード用コネクタを提供する。
【解決手段】カバーに片持ち支持される板バネ片を一体に形成し、板バネ片の少なくとも自由端側の誤挿入防止板部を、後方側面が、メモリーカードの挿入方向に直交してカード収容部内に臨み、カード収容部に挿入されるメモリーカードの傾斜面の移動軌跡を横切るようにカバーに対して下方に傾斜させる。通常の姿勢で挿入されるメモリーカードは、傾斜面が後方側面の下部に当接して、誤挿入防止板部を押し上げるが、誤姿勢で挿入されるメモリーカードは、平坦面が後方側面に当接するので、誤挿入防止板部によりその挿入が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード収容部内に収容したメモリーカードを電子機器へ接続するメモリーカード用コネクタに関し、更に詳しくは、誤姿勢で挿入しようとするメモリーカードの挿入を規制する誤挿入防止機構を備えたメモリーカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型のSDカード等のメモリーカード10には、図8に示すように、カード収容部へ挿入する挿入方向の前面片側に傾斜面10aが形成されている。この傾斜面10aが形成されたメモリーカード10と接続するメモリーカード用コネクタ100では、図11に示すように、メモリーカード10の傾斜面10aによって欠けた部位に誤挿入防止突起101などを形成して、前後や表裏が逆の姿勢(以下、誤姿勢という)でカード収容部103へ挿入しようとするメモリーカード10の挿入を排除している(特許文献1)。
【0003】
メモリーカード10の裏面には、前端に沿って前端から後方に向かって複数の凹溝11、11・・が形成され、その凹溝11内にそれぞれ導電パッド12、12・・が露出しているが、傾斜面10aが形成されることにより、その部位の導電パッド12aは、他の導電パッド12よりやや後方(図8において下方)に露出するものとなっている。そこで、この導電パッド12aに接触するメモリーカード用コネクタ100のコンタクト102aも図9に示すように、他のコンタクト102に比べて挿入方向の後方に突き出て配置され、誤挿入するメモリーカード10の他の導電パッド12がこの突き出たコンタクト102aに先に接触しないよう、上記誤挿入防止突起101は、コンタクト102aの更に後方に立設される。
【特許文献1】特許第3924677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の誤挿入防止機構を備えたメモリーカード用コネクタ100は、コンタクト102aに、通常姿勢で挿入されるメモリーカード10の導電パッド12aを接触させるために、図10に示すように、誤挿入防止突起101が凹溝11を通過する高さとしなければならず、その高さが制限されていた。例えば、凹溝11の深さは、約0.5mmであり、誤挿入防止突起101は、少なくともこの高さ0.5mm以下の高さとする必要があった。
【0005】
一方、カード収容部103は、コンタクト102やメモリーカード10を遮蔽する為に、その上面が金属板等の弾性材料からなるカバー104で覆われることが多く、誤挿入するメモリーカード10であってもカバー104が撓むことにより誤挿入防止突起101を乗り越え、誤挿入防止機能が果たせない恐れがあった。
【0006】
これに加えて、誤挿入防止突起101は、導電パッド12aに接触するコンタクト102aの後方で、メモリーカード10に当接しない凹溝11内に配置する必要があるので、その挿入方向についても充分な厚さをとることができず、強度が得られないので、誤姿勢で挿入するメモリーカード10が当接して破損しやすいものであった。
【0007】
更に、カード収容部103を構成するケースの内面に微少な突起101を精度良く形成する必要があり、ケースを製造する金型構造が複雑となり、厳しい製造精度が要求されるものとなった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、ケースを加工することなく、簡単な構成で確実に誤姿勢のメモリーカードの挿入を防止できるメモリーカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数のコンタクト片が互いに絶縁して取り付けられたケースと、ケースの上面を覆い、後方から前方に向かって挿入されるメモリーカードを収容するカード収容部がケースとの間に形成されるカバーとを備え、挿入方向の前面と一側面との間に誤挿入防止用の傾斜面が形成されたメモリーカードがカード収容部に収容された際に、メモリーカードの前方で露出する複数の導電部に前記各コンタクトが接触するメモリーカード用コネクタであって、カバーに、カバーの中央側の基端からメモリーカードの挿入方向と交差する方向に向けて片持ち支持される板バネ片を一体に形成し、板バネ片の少なくとも自由端側を、カバーに対して下方に傾斜させて誤挿入防止板部とし、誤挿入防止板部の後方側面が、メモリーカードの挿入方向に直交してカード収容部内に臨み、カード収容部に挿入されるメモリーカードの傾斜面の移動軌跡を横切るメモリーカード用コネクタを最も主要な特徴とする。
【0010】
通常姿勢でカード収容部に挿入されるメモリーカードの傾斜面は、傾斜面の移動軌跡を横切る誤挿入防止板部の後方側面の下端に当接する。誤挿入防止板部の後方側面は、メモリーカードの挿入方向と直交する方向でカード収容部に臨むので、メモリーカードの前方への挿入にともなってメモリーカードとの当接位置が自由端側にずれていき、誤挿入防止板部の全体がカード収容部から上方に退避するように誘導され、メモリーカードは更に前方へ挿入自在となる。一方、誤姿勢で挿入するメモリーカードは、傾斜面以外の挿入方向に直交する面が、誤挿入防止板部の後方側面とほぼ平行に当接するので、誤挿入防止板部は当接位置がずれずに、カード収容部から退避しないので、メモリーカードの更なる前方への挿入が規制される。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、カバーが、導電性金属板で形成され、カバーを略U字状に切り欠いて、カバーの一部から板バネ片を切り起こして形成したことを特徴とする。
【0012】
導電性金属板からなるカバーをメモリーカードの挿入方向と交差する方向に略U字状に切り欠くことにより、その内側に片持ち支持される板バネ片が形成される。傾斜面の移動軌跡に鉛直方向で交差する板バネ片の自由端側を下方へ折り曲げてカード収容部内に臨ませるだけで、誤挿入防止板部が形成される。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、誤挿入防止板部の先端が、基端側の後方側面より後方に突出することを特徴とする。
【0014】
誤挿入防止板部は、カバーに対して下方に傾斜しているので、その先端の後方側面は基端側より最も下方で後方に突出する。挿入方向の前面の上下が湾曲面となっているメモリーカードを誤姿勢で挿入しても、先端の後方側面が湾曲面下方の前面に最初に当接し、上方に誘導されない誤挿入防止板部によって挿入が規制される。また、通常の姿勢で挿入されるメモリーカードが挿入されると、誤挿入防止板部の後方側面の中間が最初にメモリーカードの傾斜面に当接して、当接位置が自由端側にずれることにより、誤挿入防止板部体がカード収容部から上方に退避し、メモリーカードは更に前方へ挿入自在となる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、板バネ片の上面は、自由端から基端に向かって幅広に形成されることを特徴とする。
【0016】
前方に挿入されるメモリーカードが後方側面に当接し、片持ち支持される板バネ片の基端に最も大きな曲げモーメントが発生するが、基端に向かって断面係数が増加するので、挿入方向への撓みに対して板バネ片が破損しにくい。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、誤挿入防止板部の後方側面と下面の間に下向きに傾斜する案内面が形成されることを特徴とする。
【0018】
通常の姿勢で挿入されるメモリーカードの傾斜面が、下向きに傾斜する案内面に当接するので、誤挿入防止板部を上方に退避するように誘導する。誤姿勢で挿入するメモリーカードは、挿入方向の前面が鉛直方向で平行な後方側面に当接し、案内面には当接しないので、誤挿入防止板部は上方に誘導されない。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、メモリーカードの挿入方向と交差する方向に向けて自由端側をカード収容部内に臨ませた板バネ片をカバーに形成する簡単な構成で、誤姿勢でカード収容部に挿入されるメモリーカードの挿入を確実に排除できる。
【0020】
また、カバーに誤挿入防止板部を有する板バネ片を形成するので、従来のケース側に形成する誤挿入防止突起枠部と併用することができ、より確実に誤姿勢の挿入を防止できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、新たな部品を用いずに、カード収容部を形成するカードから誤挿入防止板部を有する板バネ片を形成することができる。
【0022】
カバーから切り起こされる板バネ片は、後方側面にメモリーカードが当接する方向での断面係数が大きいので、メモリーカードの挿入方向に対して大きな曲げ応力が発生せず、破損しにくい。
【0023】
コンタクトやメモリーカードをシールドするカバーから、簡単なプレス加工だけで誤挿入防止板部を形成できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、メモリーカードの挿入方向の前面上下に湾曲面が形成されていても、誤姿勢で挿入するメモリーカードは、前面の鉛直平坦面が誤挿入防止板部の後方側面に当接し、確実にその挿入が規制される。
【0025】
請求項4の発明によれば、板バネ片が塑性変形せずに、誤姿勢で挿入するメモリーカードの挿入を規制できる。
【0026】
請求項5の発明によれば、通常の姿勢で挿入されるメモリーカードの傾斜面が案内面に当接し、誤挿入防止板部はより確実にカード収容部から退避する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の一実施の形態に係るメモリーカード用コネクタ1に通常の姿勢でメモリーカード10を挿入する状態を斜め前方の上方からみた斜視図である。
【図2】ケース2とカバー3の分解斜視図である。
【図3】カバー3の(a)は、平面図、(b)は、板バネ片4を示す要部斜視図(c)は、(b)のA−A線断面図である。
【図4】カバー3を波線で示すメモリーカード用コネクタ1に通常の姿勢でメモリーカード10を挿入する状態の(a)は、斜め後方の上方からみた斜視図、(b)は、要部斜視図である。
【図5】メモリーカード用コネクタ1に通常の姿勢でメモリーカード10を挿入する状態の(a)は、要部平面図、(b)は、板バネ片4に沿って切断した縦断面図、(c)は、(a)のB−B線断面図である。
【図6】メモリーカード用コネクタ1にメモリーカード10を誤姿勢で挿入した状態の(a)は、要部平面図、(b)は、板バネ片4に沿って切断した縦断面図、(c)は、(a)のC−C線断面図である。
【図7】カバー3を波線で示すメモリーカード用コネクタ1にメモリーカード10を誤姿勢で挿入した状態を示す要部斜視図である。
【図8】メモリーカード10の底面図である。
【図9】従来のメモリーカード用コネクタ100にメモリーカード10を挿入する状態を示す斜視図である。
【図10】従来のメモリーカード用コネクタ100に通常の姿勢でメモリーカード10を挿入する状態を示す縦断面図である。
【図11】従来のメモリーカード用コネクタ100にメモリーカード10を誤挿入した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態に係るメモリーカード用コネクタ1を図1乃至図8を用いて説明する。メモリーカード用コネクタ1の各部の説明は、図2のカバー3側を上方、ケース2側を下方と、図3(a)において上下方向を前後方向と、左右方向を左右方向として説明する。このメモリーカード用コネクタ1は、図2に示すように、後方を除く周辺に沿ったコの字状の枠部により、その内側に凹部が形成されたケース2と、ケース2の上面に沿って組み立付けられる導電性の金属カバー3とから構成され、金属カバー3がケース2の凹部を上方から覆うことにより、その間にメモリーカード10を収容するカード収容部6が形成される。
【0029】
ケース2は、絶縁性合成樹脂で成形され、ケース2の成形の際にその前方寄りに前後方向に沿って多数のコンタクト5がインサート成形で一体に取り付けられている。各コンタクト5の後方の接触部は、カード収容部6内に突出し、カード収容部6に通常の姿勢で挿入されるメモリーカード10の導電パッド12に接触する。図7に示すように、各コンタクト5のうち、メモリーカード10の傾斜面10a後方に露出する導電パッド12aに接触するコンタクト5aは、他のコンタクト5よりわずかに後方位置でその接触部がコンタクト収容部6内に臨むように取り付けられ、その後方を含む周囲は、誤挿入防止枠部7で囲まれている。誤挿入防止枠部7は、上記従来の従来の誤挿入防止突起101と同様に作用するもので、従って、その高さはメモリーカード10の凹溝11内を干渉せずに通過するように、高さ0.5mm以下の高さとなっている。
【0030】
ケース2の左右の枠部間には、コンタクト5の接触部の前後で摺動自在の排出板13が掛け渡され、この排出板13は、ケース2の右枠部内に装着された圧縮バネ14により後方に付勢されるとともに、その前方の右枠部内に形成されたハートカム溝に先端が係合するリンクが回動自在に連結されることにより、周知のプッシュ−プッシュ型イジェクト機構が構成される。すなわち、通常の姿勢で挿入するメモリーカード10は、排出板13に当接し、圧縮バネ14に抗して更に前方へ挿入すると、リンクがハートカム溝のロック位置に係合し、排出板13はロック位置で位置決めされ、メモリーカード10はコンタクト5に接続した状態で挿入力を解除しても保持される。また、この状態から更にメモリーカード10を押し込むと、リンクがハートカム溝のロック位置から外れ、圧縮バネ14により付勢され排出板13によってメモリーカード10がカード収容部6から排出される。
【0031】
ケース2の左右の枠部間の更に後方のカード収容部6の開口近傍には、シャッター15が回動自在に掛け渡されている。シャッター15は、メモリーカード10が収容されていないカード収容部6の開口付近を覆い、カード収容部6内への埃の進入を防いでいる。また、シャッター15の係合部15aは、金属カバー3側の左右の離れた位置に形成された一対のV字状検知片16、16とカード収容部6の開口付近を覆う状態で係合し、メモリーカード10が前後方向の挿入方向以外の斜めから挿入された場合には、一方のV字状検知片16との係合が解除されずに回動が規制され、前後方向以外のメモリーカード10のカード収容部6内への挿入が規制される構造となっている。
【0032】
更に、シャッター15の係合部15aのカード収容部6の内底面からの高さhは、メモリーカード用コネクタ1に接続する規定のメモリーカード10の厚さよりわずかに低い高さとなっている。これにより、係合部15aの高さhより薄いメモリーカードは、カード収容部6へ挿入しようとしても、一対のV字状検知片16、16を押し上げてシャッター15との係合を解除させることができず、カード収容部6への挿入が規制される。
【0033】
金属カバー3は、図2に示すように、長方形状の導電性金属板の左右両側を、ケース2の左右の枠部を外側から囲うように折り曲げて、ケース2の凹部を覆い取り付けられるもので、その平面の後方側に上述の一方のV字状検知片16が切り起こして形成されている他、ケース2に取り付けられるコンタクト5aよりやや後方の平面に、平面が右方に向かって略U字状に切り欠かれることにより、その内側に板バネ片4が一体に形成されている。ここで略U字状とは、V字状の他、基端側の一辺を残して細長帯状に形成される全ての形状を含む。
【0034】
板バネ片4は、図3(a)、(b)に示すように、金属カバー3平面の中央側を基端4aとして右方に向けて一体に片持ち支持され、鉛直方向に見たその後方側辺4bは左右方向と平行で、メモリーカード10の挿入方向に直交している。一方、前方側辺4cは、右方に向かって後方に傾斜し、これにより、板バネ片4の前後方向幅は自由端から基端側に向かって太幅とし、鉛直方向の中立軸回りの断面係数を基端4aに向けて増大させている。板バネ片4は、後述するようにその自由端側の誤挿入防止板部8がメモリーカード10から前方への挿入力を受け、基端4aに最も大きな曲げモーメントが発生するが、基端4aの断面係数が最大で曲げ応力を低下させることが出来るので、強い挿入力を受けても塑性変形しにくい。
【0035】
また、板バネ片4は、中央付近で斜め下方に折り曲げられ、その自由端側がカード収容部6内に臨む誤挿入防止板部8となっている。誤挿入防止板部8は、図4(a)、(b)に示すように、通常の姿勢で前方に挿入されるメモリーカード10の傾斜面10aがカード収容部6内を移動する移動軌跡を横切るようにカード収容部6内に臨み、これにより、通常の姿勢で挿入されるメモリーカード10は、図5(a)、(b)、(c)に示すように、傾斜面10aの上端が誤挿入防止板部8の後方側面8aの下端に当接する。
【0036】
基端側が斜め下方に折り曲げられた誤挿入防止板部8は、その自由端が最も下方の位置でカード収容部6内に臨むが、ここでは、少なくとも自由端とカード収容部6の内底面までの間隔が、シャッター15の係合部15aの高さh以下となっている。これにより、シャッター15を回動させて挿入されるメモリーカード10は、その挿入姿勢にかかわらず確実に誤挿入防止板部8に当接する。
【0037】
また、この誤挿入防止板部8の自由端の後方側面8dは、図6(a)、(c)に示すように、その基端側の後方側面8aより後方に突出するように形成されている。従って、図6(c)に示すように、誤姿勢で挿入されるメモリーカード10の前面上部が湾曲面となっていても、最も下方に位置する後方側面8dがメモリーカード10の平坦な前面に当接し、誤って誤挿入防止板部8の下方にメモリーカード10が潜り込み、誤挿入防止板部8を上方へ退避させてしまうことがない。
【0038】
本実施の形態では、図3(c)に示すように、誤挿入防止板部8の後方側面8aと下面8bとの境界に沿って後方下向きに面する案内面8cを形成するので、傾斜面10aの上部は、確実に後方側面8a下部の傾斜面8cに当接する。
【0039】
このように構成されたメモリーカード用コネクタ1に、始めに図1に示すように、傾斜面10aを右前方隅とした通常の姿勢のメモリーカード10をカード収容部6へ挿入する場合について説明する。通常の姿勢で挿入されるメモリーカード10であっても、規定の挿入方向である前後方向に対して挿入方向が傾斜する場合やカード収容部6の高さに対して規定以下の薄いメモリーカードが挿入される場合には、一対のV字状検知片16、16の少なくとも一方が、挿入するメモリーカードによって上方に押し上げられず、シャッター15との係合が外れないので、シャッター15はカード収容部6の開口を覆う状態で回動しない。すなわち、通常の姿勢のメモリーカード10は、ほぼ前後方向に沿ってカード収容部6の前方に挿入される。
【0040】
図4(a)、(b)に示すように、メモリーカード10を誤挿入防止板部8との当接位置まで挿入すると、誤挿入防止板部8は、右前方隅の傾斜面10aの移動軌跡を横切るようにカード収容部6内に臨んでいるので、内底面からの高さがメモリーカード10と同じ高さにある誤挿入防止板部8の下部(案内面8c)の中間位置に当接する。図5(a)、(b)、(c)に示すように、誤挿入防止板部8は、右方(図5(b)では左方)に向かって下方に傾斜しているのに対し、傾斜面10aは、右方に向かって後方に傾斜するので、メモリーカード10の前方への移動にともない、当接位置は誤挿入防止板部8の案内面8cに沿って自由端側(右方)に移動する。一方、誤挿入防止板部8に当接する傾斜面10aの内底面からの高さは変わらないので、当接位置の高さは変化せず、誤挿入防止板部8はカード収容部6から退避する上方へ押し上げられる。
【0041】
従って、メモリーカード10を誤挿入防止板部8の下方で更に前方へ挿入することができる。このとき、誤挿入防止枠部7は、通常の姿勢で前方に挿入されるメモリーカード10の傾斜面10aと干渉しない部位に設けられているので、メモリーカード10の凹溝11内を通過し、メモリーカード10は、各導電パッド12がコンタクト5に接触する接続位置まで挿入される。この状態で、前方への挿入力を解いても、上述のプッシュ−プッシュ型イジェクト機構により、メモリーカード10はその接続位置に保持される。
【0042】
メモリーカード10をカード収容部6から排出する場合には、接続位置から更にメモリーカード10を押し込むと、圧縮バネ14により後方へ付勢される排出板13によりメモリーカード10がカード収容部6から排出される。誤挿入防止板部8と一方のV字状検知片16は、それぞれ弾性片からなるので、メモリーカード10が排出されることにより、挿入前の原位置、すなわち、カード収容部6内に臨む位置に復帰し、一方のV字状検知片16はそれぞれシャッター15の係合部15aに係合する。
【0043】
次に、メモリーカード用コネクタ1のカード収容部6に、表裏を逆にしたり、傾斜面10aを後方とした誤姿勢のメモリーカード10を挿入する場合について説明する。このような誤姿勢のメモリーカード10であっても、その厚みは同一であるので、前後方向に沿って挿入されれば、シャッター15の係合が解かれ、カード収容部6前方へ挿入することが出来る。
【0044】
シャッター15を回転させ、前方に挿入される誤姿勢のメモリーカード10は、誤挿入防止板部8が当接する部位に傾斜面10aがなく、上方が湾曲して上面に連続する平坦な鉛直面10bとなっている。一方、カード収容部6内に臨む誤挿入防止板部8では、自由端の後方側面8dが最も後方に突出しているので、図6(a)、(b)、(c)に示すように、誤挿入防止板部8の最も下方の自由端が、メモリーカード10の平坦な鉛直面10bに当接する。従って、鉛直面10b上方の湾曲面が誤挿入防止板部8の基端側下部に当接して、誤って誤挿入防止板部8が上方へ押し上げられることがない。
【0045】
誤挿入防止板部8の自由端が当接するメモリーカード10の鉛直面10bは、挿入方向に対して直交する平坦面であるので、当接位置は移動せず、誤挿入防止板部8はカード収容部6から上方へ退避しない。従って、誤姿勢のメモリーカード10は、誤挿入防止板部8によって更に前方への挿入が規制され、各導電パッド12がコンタクト5に接触する接続位置まで挿入することができない。
【0046】
誤挿入防止板部8との当接に前後して、前方へ挿入しようとするメモリーカード10は、誤挿入防止枠部7の位置に傾斜面10aがないので、図7に示すように、誤挿入防止枠部7に当接し、挿入が規制される。すなわち、同図に示すように、誤挿入防止板部8と誤挿入防止枠部7のいずれか一方、若しくは双方で、誤姿勢で挿入されるメモリーカード10の接続位置までの挿入が規制される。この位置まで挿入されたメモリーカード10は、接続位置まで達していないので、挿入力を解除すると、圧縮バネ14により後方へ付勢される排出板13によってカード収容部6から排出される。誤挿入防止板部8と一方のV字状検知片16は、それぞれ弾性片からなるので、メモリーカード10が排出されることにより、挿入前の原位置、すなわち、カード収容部6内に臨む位置に復帰し、一方のV字状検知片16はそれぞれシャッター15の係合部15aに係合する。
【0047】
本実施の形態では、誤挿入防止枠部7でも誤姿勢のメモリーカード10の挿入を規制しているが、誤挿入防止板部8のみで規制できれば、必ずしも設ける必要はない。
【0048】
また、誤挿入防止板部8の自由端の後方側面8dを、最も後方へ突出させているが、誤姿勢で挿入されるメモリーカードの上方に湾曲面が形成されていない板状のメモリーカードであれば、誤挿入防止板部8の後方側面8aを自由端まで挿入方向に直交する平面としてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、下面側の前方に導電パッド12が露出するメモリーカード10の挿入姿勢を通常の姿勢として説明したが、表裏逆に挿入するメモリーカード10の挿入姿勢を通常の姿勢としてもよい。この場合には、傾斜面10aは、左前方隅となるので、板バネ片4は、カバー3の中央から左方に向かって片持ち支持される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
メモリーカードを携帯電話機などの電子機器へ接続するメモリーカード用コネクタに適している。
【符号の説明】
【0051】
1 メモリーカード用コネクタ
2 ケース
3 カバー(金属カバー)
4 板バネ片
5 コンタクト
6 カード収容部
8 誤挿入防止板部
8a 後方側面
8c 案内面
10 メモリーカード
10a 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクト片が互いに絶縁して取り付けられたケースと、
ケースの上面を覆い、後方から前方に向かって挿入されるメモリーカードを収容するカード収容部がケースとの間に形成されるカバーとを備え、
挿入方向の前面と一側面との間に誤挿入防止用の傾斜面が形成されたメモリーカードがカード収容部に収容された際に、メモリーカードの前方で露出する複数の導電部に前記各コンタクトが接触するメモリーカード用コネクタであって、
カバーに、カバーの中央側の基端からメモリーカードの挿入方向と交差する方向に向けて片持ち支持される板バネ片を一体に形成し、
板バネ片の少なくとも自由端側を、カバーに対して下方に傾斜させて誤挿入防止板部とし、
誤挿入防止板部の後方側面が、メモリーカードの挿入方向に直交してカード収容部内に臨み、カード収容部に挿入されるメモリーカードの傾斜面の移動軌跡を横切ることを特徴とするメモリーカード用コネクタ。
【請求項2】
カバーは、導電性金属板で形成され、
カバーを略U字状に切り欠いて、カバーの一部から板バネ片を切り起こして形成したことを特徴とする請求項1に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項3】
誤挿入防止板部の先端は、基端側の後方側面より後方に突出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項4】
板バネ片の上面は、自由端から基端に向かって幅広に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項5】
誤挿入防止板部の後方側面と下面の間に下向きに傾斜する案内面が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメモリーカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−59446(P2012−59446A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199920(P2010−199920)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】