説明

メモリ用途のセレクタデバイス

【課題】本発明は、メモリ用途のセレクタデバイスに関する。
【解決手段】本発明に係るセレクタデバイスは、MIT素子およびこれに熱的に連動する分割ヒータを備えたメモリアレイ内のメモリ素子を選択するためのセレクタデバイスであって、MIT素子は、MIT材料構成要素とバリア構成要素とを有し、分割ヒータを用いて相転移温度より高い温度に加熱されることにより、高抵抗状態から低抵抗状態に切り換え可能であり、バリア構成要素は、高抵抗状態にあるMIT素子の抵抗値を大きくするように構成されたことを特徴とするものである。セレクタデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ用途のセレクタデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロスバーアレイ(クロスバー配列)は、メモリアレイを構成する上でもっとも密度の高い配列の1つである。これは、RRAM(登録商標)(Resistive Random Access Memory:抵抗変化型ランダムアクセスメモリ)、PCRAM(Phase Change RAM:位相変化型ランダムアクセスメモリ)、CBRAM(Conductive Bridging RAM:導電ブリッジランダムアクセスメモリ)、およびその他のタイプのメモリ部品に用いることができる。クロスバーアレイを用いるためには、非選択の素子に意図しない電流が流れることを阻止し、選択された素子に電流が流れることを許容することにより、選択された素子または素子列の読み出し、書き込み、消去を可能とするためにセレクタ素子が必要となる。さらにセレクタ機能を実現するためにクロバー配列内のセレクタ部品を適当に構成することは、クロスバーアレイの適切な機能を得る上で重要である。たとえばビットコスト低減技術(大容量メモリ技術)などの3次元クロスバー構造に対して、これらの考察がなされる。
【0003】
上述のクロスバーアレイのためのセレクタ素子を実現する基準は、厳格であり、達成困難である。たとえば、オフ抵抗は、非選択素子に流れる意図しない漏れ電流を抑制するのに十分に大きく、オン抵抗は、素子が選択された際のセレクタデバイスの両端にかかるバイアス電圧を回避するのに十分に小さくなるようにする必要がある。またオンからオフへのスイッチングはできるだけ急勾配でなければならない。このデバイスは、クロスバーアレイの製造プロセスと互換性を有するものでなくてはならず、時には、3次元積層体製造プロセスとも互換性を有するものでなければならない。さらに、このデバイスは、できる限り短い処理ステップ実現できるものでなければならない。
【0004】
既知のセレクタにおいて、従来型の半導体ダイオードを解決手段としている。しかしながら、従来型の半導体ダイオードは、バイポーラRRAM(登録商標)とは互換性がなく、電圧に対する電流変化が十分に急峻/急勾配なものではない。択一的には、第3の端子を有するMOSFETは、急峻なスイッチング動作が可能であるが、アレイ内で必要なスペースがより大きくなってしまう。同様に、パンチスルー・ダイオード(たとえばバイポーラ)またはピンチオフFETが潜在的な解決手段ではある。しかしながら、これらの解決手段は、メモリアレイに比較的に複雑で追加的なデバイスを組み込む必要がある。したがって、より適当なセレクタが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
メモリ素子のためのセレクタデバイスが記載されている。1つの実施形態では、セレクタデバイスは、MIT材料構成要素とバリア構成要素とを有するMIT素子と、分割ヒータとを備え、分割ヒータは、オフ状態にあるMIT素子の抵抗値より低い抵抗値を有し、MIT素子と熱的に連動するものである。
【0006】
いくつかの実施形態では、バリア構成要素は、MIT素子の抵抗値を大きくし、相転移温度におけるMIT素子の素子抵抗の急激なスイッチングを担保するように選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、セレクタデバイスは電極を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、MIT材料構成要素は、n型MIT材料またはp型MIT材料からなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、バリア構成要素は、n型MIT材料の電子のためのバリアポテンシャルを形成するように選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、バリア構成要素は、p型MIT材料の正孔のためのバリアポテンシャルを形成するように選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、MIT材料は、二酸化バナジウム(VO)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、MIT材料は、さらにドーパントを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、バリア構成要素は、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ハフニウム(HfO)、または二酸化ジルコニウム(ZrO)、およびこれらの混合物または組み合わせからなる群から選択されたバリア材料を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、分割ヒータは、複数のMIT素子と熱的に連動する。
【0015】
いくつかの実施形態では、分割ヒータは、ワードラインもしくはビットラインに集積され、またはワードラインもしくはビットラインに沿って平行に配設される
【0016】
上記セレクタデバイスのいずれかと接続されたメモリ素子が記載されている。
【0017】
上記セレクタデバイスのいずれかと接続されたメモリ素子アレイが記載されている。
【0018】
上記セレクタデバイスのいずれかを有するメモリデバイスが記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、一実施形態に係るクロスバーアレイの金属絶縁体転移型のセレクタの概略回路図である。
【図2】図2は、一実施形態に係る第1の具体例による回路の概略回路図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る第2の具体例による回路の概略回路図である。
【図4】図4は、一実施形態に係る第3の具体例による回路の概略回路図である。
【図5】図5は、一実施形態に係る第1の具体例によるクロスバーアレイの一部を構成するデバイスの概略断面図である。
【図6】図6は、一実施形態に係る第2の具体例によるクロスバーアレイの一部を構成するデバイスの概略断面図である。
【図7】図7は、一実施形態に係る第3の具体例によるクロスバーアレイの一部を構成するデバイスの概略断面図である。
【図8】図8は、一実施形態に係る第1の具体例による金属絶縁体相転移型セレクタのいわゆるビットコスト低減型の抵抗変化式ランダムアクセスメモリの3次元構造の概略図である。
【図9】図9は、一実施形態に係る第2の具体例による金属絶縁体相転移型セレクタのいわゆるビットコスト低減型の抵抗変化式ランダムアクセスメモリの3次元構造の概略図である。
【図10】図10は、一実施形態に係る第3の具体例による金属絶縁体相転移型セレクタのいわゆるビットコスト低減型の抵抗変化式ランダムアクセスメモリの3次元構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の明細書および添付図面を参照することにより、本発明の開示内容が明確となる。各図面は、本発明のいくつかの態様および実施形態を図示するものである。これらの図面は、概略的なものに過ぎず、限定的なものではない。
【0021】
本発明について、特定の実施形態に関し、図面を参照しながら説明するが、本発明は、クレームにより限定され、これらの開示内容に限定されるものではない。添付図面は、概略的なものに過ぎず、限定的なものではない。説明しやすくするために、添付図面において、いくつかの素子は、その寸法が誇張されており、実寸大で図示されたものではない。寸法および相対的な寸法は、必ずしも実際の本明細書に記載の実施例に対応するものではない。
【0022】
また本明細書およびクレームにおいては、類似する構成要素を区別するために、第1、第2、第3などの用語を用いるが、これらの用語は必ずしも連続的順序または経時的順序を示すものではない。これらの用語は、適当な状況下において置換可能であり、本明細書の実施形態は、記載され、図示された順序以外の順序で実施することができる。
【0023】
さらに本明細書およびクレームにおいては、理解しやすくするために、上部、下部、上方、下方などの用語を用いるが、必ずしも相対的な位置関係を示すものではない。このように用いられる用語は、適当な状況下において置換可能であり、本明細書の実施形態は、記載され、図示された方向以外の方向で実施することができる。
【0024】
さらに、さまざまな実施形態が例示的な具体例として「好ましい」ものとして説明するが、本明細書の開示内容が本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0025】
クレームにおける「備える(comprising)」なる用語は、列挙された構成要素または方法ステップに限定するものと解釈すべきではなく、他の構成要素または方法ステップを排除するものではない。それは、記載された特徴、整数、方法ステップ、または構成部品の存在を特定するものとして理解すべきであり、1つまたはそれ以上のその他の特徴、整数、方法ステップ、構成部品、またはグループの存在または追加を除外するものではない。すなわち「AおよびBを備えたデバイス」というクレーム文言の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスであると限定してはならず、むしろデバイスの列挙されたに過ぎない構成要素が構成要素AおよびBであって、これらの構成要素に均等なものは含まれるものと解釈すべきである。
【0026】
メモリ素子のクロスバーアレイ構造のためのセレクタに関し、メモリ素子、ワードライン、およびビットラインとともに、セレクタの構成について以下説明する。
【0027】
1つの実施形態では、セレクタは、分離ヒータと協働する金属絶縁体転移素子(MIT素子)を有していてもよい。MIT素子は、MIT材料素子と、MIT素子の抵抗値を増大させるバリア素子とを備え、MIT素子の転移温度付近で素子抵抗が急激にスイッチングすることを維持する(影響を与えることのない)ようにするものである。
【0028】
一般に、MIT材料は、あまりにも小さい抵抗を有するため、セレクタ素子として機能することはできない。しかしながら、バリア構成要素を導入して、MIT素子の抵抗を増大させることにより、オフ状態にある(低温状態ともいう)MIT素子の抵抗値を大きくすると、非選択素子に流れる意図しない漏れ電流を低減/抑制することに有用である。
【0029】
さらに本明細書のMIT素子は、分断ヒータで転移温度を超えて加熱することにより、高抵抗および低抵抗の間で切り換えることができる。MIT素子のオフ状態のときに漏れ電流を抑制するのに必要とされる電圧が高いため、マイクロ電子工学の用途で広く用いられる電圧(1〜3Vから12Vまで)で加熱することはできず、MIT素子は、自ら熱(たとえば、MIT素子自体に電流が流れることにより生じるジュール熱など)を発することはない。したがってMIT素子は、分断ヒータで加熱される。
【0030】
異なる実施形態では、本明細書に開示するセレクタは、MIT素子および分断ヒータを有する。MIT素子は、MIT材料構成部品およびバリア構成部品を備える。MIT材料は、たとえば特定の温度で一次相転移を示す材料であってもよい。温度が変化して、抵抗値に急峻な変化が生じ、自由電荷キャリアの密度が急激に変化するときに、相転移が起こる。この材料は、転移温度より高い抵抗値を有する。いくつかの実施形態では、MIT材料は、「金属絶縁体相転移」においては「絶縁体」と称されるが、低温状態では半導体であり得る。
【0031】
MIT材料構成部品は、2つの電極の間に配設され、2端子温度依存性抵抗素子として表現される。これらの電極は、ワードライン配線あるいはビットライン配線、隣接するメモリ素子、ヒータ、メモリアレイのその他の構成要素の一部、またはMIT素子をライン配線、ヒータ、メモリ素子、あるいはメモリアレイのその他の構成要素に接続する独立して設けられた電極材料の一部であってもよい。さらにバリア層(バリア構成要素ともいう。)をMIT材料構成要素と、一方または他方の電極との間に配設し、オフ状態にあるMIT素子の電気抵抗値を増大させるようにしてもよい。バリア構成要素は、n型のMIT材料(低温状態におけるMIT材料の多数自由電荷キャリアが電子であるMIT材料)の電子に対するバリアポテンシャルを形成し、p型のMIT材料(低温状態におけるMIT材料の多数自由電荷キャリアが正孔であるMIT材料)の正孔に対するバリアポテンシャルを形成するように選択されたバリア材料で構成されている。
【0032】
バリア層の電流貫通を可能にするトンネル効果および熱電子放出メカニズムは、MIT材料の自由電荷キャリアの密度に依存する。したがってMIT材料が低温状態から高温状態に状態変化したとき、MIT材料の自由電荷キャリアの密度が急激に増大し、バリア層を貫通する電流が変動する。そのためMIT材料自体が温度とともにバルク抵抗(体積抵抗)が変化するのと同様に、キャリア層の抵抗要素の抵抗値を温度とともに急激に増大させることができる。
【0033】
利用可能なMIT材料の具体例は、二酸化バナジウムまたはドープされた二酸化バナジウムである。MIT材料はメモリ素子として集積され、またMIT材料はメモリ素子のための電極として機能させることができる。逆もしかりである。
【0034】
有利なことに、MIT材料およびバリア層は、RRAM(登録商標)およびその他の形式のメモリのBICS型3次元構造またはその他の3次元構造として挿入することができる。
【0035】
本明細書におけるバリア層は、堆積処理(deposition)、結晶成長、化学処理、アニール処理を用いて、またはMIT材料または電極上に自然に形成されるバリア層(たとえば酸化膜)を除去するために特定の処理を省略することにより挿入することができる。
【0036】
本明細書におけるセレクタは、分割ヒータ(decoupled heater)を備える。すなわち、(MIT材料構成要素とバリア構成要素とからなる)MIT素子は、オフ状態にあるときの抵抗値はあまりに大きく、通常の電子機器の電圧範囲(1〜3Vで12Vまで)の電圧では発熱しないため、それ自体に電流が流れることによりジュール熱が発生することはない。しかしながら本明細書のMIT素子は、分割ヒータ素子により加熱され、その抵抗値が加熱されたMIT素子の付近にあるMIT素子より低く、大部分がMIT素子に流れない電流により加熱される。ヒータとMIT素子の熱伝導性が高いため、両者の素子は、熱的に連動し、そのMIT素子または一連のMIT素子を加熱するように効率的に伝熱する。ヒータは、ジュール熱により加熱し、または熱電素子を用いて実現することができる。
【0037】
十分な断熱性を与えることにより、意図しない任意の要素を加熱しないようにすることができる。各MIT素子のためにヒータを設けるか、または一連のMIT素子のためにヒータを設けてもよい。択一的には、ヒータをワードラインに集積してもよい。ワードライン自体は、電流を流すことにより加熱してもよいし、より大きなヒータ電流に起因するワードラインの電圧降下を回避するために、ワードラインに沿って配置された電気絶縁性を有するが伝熱性の高いヒータにより加熱してもよい。電気絶縁性を有するが伝熱性の高い材料の具体例は、酸化アルミニウム(Al)または酸化ハフニウム(HfO)である。
【0038】
各メモリ素子のためにMIT素子を設けてもよいし、または一連のメモリ素子のためにMIT素子を設けてもよい。特別の実施形態において、MIT素子をワードラインに組み込んでもよい。
【0039】
ここで「オン電圧」および相転移温度について簡単に説明する。MIT素子がオン状態になり、または低抵抗状態に切り換わったときのヒータの両端の電圧を「オン電圧」という。セレクタのオン電圧を調整するために、分割ヒータを用いてヒータの抵抗値を選択することができる。ヒータの両端にかかる電圧を選択し、周囲温度に適応させて、周囲温度からMIT素子に加わる熱エネルギの変化を補償することができる。
【0040】
(MIT素子を加熱するために用いられる熱ではなく)周囲に発散される熱は、局部的な温度と周辺温度との差に比例する(すなわち周囲温度が高いほど、相転移温度までMIT素子を加熱するのに必要な熱エネルギは小さい。)。周囲温度はオン電圧に影響を与える。オン電圧が選択のためのヒータの両端にかかる電圧より高い場合、セレクタはもはや機能することはない。よって、動作温度範囲内における機能を確保するためには、印加電圧は、動作温度範囲におけるすべての温度におけるオン電圧より高くなければならない。
【0041】
ヒータの両端にかかる電圧を「オン電圧」に近づけ、それより大きくすることにより、ヒータの両端にかかる電圧を周囲温度に適応させ、MIT素子を相転移温度よりはるかに高くなるように過剰に加熱することを防止すると、MIT素子をオン状態に変えるために必要なエネルギを最小限に抑えることができる。これは、潜在的な熱的クロストークを低減するものである。オン電圧は、MIT材料の相転移温度により決定され、相転移温度が高くなると、周囲温度に対するオン電圧は影響を受けにくくなる。相転移温度が高くなるほど、周囲温度の変化に伴うオン電圧の変化はより小さくなる。
【0042】
一般に、MIT材料の相転移温度は、意図的に加熱したことによってのみ、オン状態に切り換える必要があるので、デバイスの選択された動作温度範囲より高くなるようにしなければならない。MIT材料の相転移温度を動作温度範囲より高く選定することにより、オン電圧帆周囲温度に適応させる必要性を低減または排除することができる。基準周囲温度、すなわち室温と比較して動作温度範囲の最高温度において、MIT素子の抵抗値が(オフ抵抗値セレクタ仕様に準ずることなく)あまり大きく変化しないとき、相転移温度は十分に高いものとなる。たとえば二酸化バナジウム(VO)を用いる場合、ドーピングすることにより相転移温度を高くすることができる。
【0043】
この解決手段は、MIT素子およびそのバリア層が選択されたバイポーラRRAM(登録商標)と置換可能なものとなり、両極性におけるオン抵抗およびオフ抵抗は、選択されたメモリ素子およびクロスバーアレイ構成が必要とする条件を満たすことになる。
【0044】
本明細書のMIT素子および分割ヒータは、容易に小型化可能で、高速で、省エネルギ化可能であり、3次元構造として互換性を有するものである。図1は、一実施形態に係るクロスバーアレイの金属絶縁体転移型(MIT型)のセレクタの概略的な回路図である。図示のように、クロスバーアレイは、分割ヒータ(1)、改善されたバリアを有するMIT素子(2)、メモリ素子(3)、分割ヒータとMIT素子との間の熱的な連動(thermal link)を示すシンボル(4)、ワードライン(5)、およびビットライン(6)を備える。
【0045】
図2は、実施形態2に係る第1の具体例による回路の概略的な回路図である。図示のように、この回路は、図1に示すすべての構成要素に加え、ヒータ(1)のために設けられた余剰ライン(7)を有する。
【0046】
図3は、実施形態2に係る第2の具体例による回路の概略的な回路図である。特に、この実施形態では、ヒータはワードラインを加熱し、これに平行して配設されている。この実施形態において、ワードラインのすべてまたは一部が同時に選択される。参照符号は、図1のものと同一である。
【0047】
図4は、一実施形態に係る第3の具体例による回路の概略的な回路図である。この具体例では、ワードライン自体がヒータとして機能する。ワードライン上のすべてまたはいくつかの要素が同時に加熱される。参照符号は、図1のものと同一である。
【0048】
第1の実施形態に係る例示的な実施例は、2次元クロスバーアレイにおいて、分断ヒータ(decoupled heater)を有するMITセレクタ素子が設けられたメモリ素子である。図5は、実施形態に係る第1の具体例によるクロスバーアレイの一部を構成するデバイスの概略的な断面図である。このデバイスは、図5に示すように、MIT素子のバリア材料からなる層(10)と、MIT素子のMIT材料からなる層(20)と、RRAM(登録商標)の場合にはたとえば窒化チタン(TiN)などの導電性材料からなる任意的な上部電極(30)と、たとえば酸化ハフニウム(HfO)または二酸化チタン(TiO)などの誘電体材料のメモリ材料からなる層(40)と、RRAM(登録商標)の場合にはたとえばハフニウム(Hf)または窒化チタン(TiN)などの導電性材料からなる任意的な下部電極(50)と、たとえばチタン/窒化チタン(Ti/TiN)などからなる相互接続配線に接続できるアルミニウム(Al)または銅(Cu)からなるビットライン導電体(60)と、任意的な加熱機能のために選択された抵抗値および熱伝導性を有するヒータ材料からなる層(70)と、二酸化ケイ素(SiO)、低誘電率材料、空気あるいは真空などの電気絶縁性および断熱性を有する誘電部(80)と、熱伝導性が比較的低い導電材料からなるヒータライン導電部(90)とを備える。
【0049】
下部ビットラインと上部ワードラインとの間であって、これらが交差する交差領域において、任意的な下部電極部材(RRAM(登録商標)の場合、窒化チタン(TiN))、メモリ部材(酸化ハフニウム(HfO)または二酸化チタン(TiO)のRRAM(登録商標)誘電体)、任意的な上部電極部材(RRAM(登録商標)の場合には、ハフニウム(Hf)または窒化チタン(TiN))、MIT部材、およびバリア部材からなる積層体が構成されている。ビットラインとワードラインとの交差領域において、ヒータが、ワードライン上にヒータが選択された抵抗値および熱伝導性を有するのに最適な加熱機能を有する材料で構成されている。熱伝導性のより低い導電体を有する金属などの比較的に低熱伝導性の導電体を含む導電体からなるヒータラインが、ヒータの上部であって、ワードラインと交差するように形成されている。またワードラインは、比較的に低い熱伝導性を有する材料からなる。この積層構造体は、二酸化ケイ素(SiO)、低誘電率材料、空気あるいは真空などの電気絶縁性および断熱性を有する誘電材料で包囲されている。
【0050】
第2の実施形態に係る例示的な実施例は、分離ワードラインヒータ(separated word line heater)を有するMITセレクタ素子が設けられたメモリ素子である。図6は、実施形態に係る第2の具体例によるクロスバーアレイの一部を構成するデバイスの概略的な断面図である。このデバイスは、図6に示すように、MIT素子のバリア材料からなる層(10)と、MIT素子のMIT材料からなる層(20)と、RRAM(登録商標)の場合にはたとえば窒化チタン(TiN)などの導電性材料からなる任意的な上部電極(30)と、RRAM(登録商標)ならば、たとえば酸化ハフニウム(HfO)または二酸化チタン(TiO)などの誘電体材料のメモリ材料からなる層(40)と、RRAM(登録商標)の場合にはたとえばハフニウム(Hf)または窒化チタン(TiN)などの導電性材料からなる任意的な下部電極(50)と、たとえばチタン/窒化チタン(Ti/TiN)などからなる相互接続配線に接続できるアルミニウム(Al)または銅(Cu)からなるビットライン導電体(60)と、酸化アルミニウム(Al)または酸化ハフニウム(HfO)などの電気絶縁性を有するが、高い伝熱性を有する材料からなる層(70’’)と、酸化ケイ素(SiO)、低誘電率材料、空気あるいは真空などの電気絶縁性および断熱性を有する誘電部(80)と、ワードライン導電部(90’’)と、最適な加熱機能が得られる電気抵抗および熱伝導性を有する材料からなる分離ワードラインヒータ(100)とを備える。
【0051】
この実施例において、ヒータはワードラインの上方にあって、酸化アルミニウム(Al)または酸化ハフニウム(HfO)などの電気絶縁性を有するが、高い伝熱性を有する層を介して、ワードラインとは分離されている。これは、このワードラインに接続されるすべての素子は、加熱され、選択されることを示唆するものである。このワードラインは、その一部分のみが加熱され、選択されるように分割することができる。この実施例の利点は、一般に、異なるワードラインの素子に対する断熱性を増大させ、熱的クロストークを改善する(improved thermal cross talk)ことにある。ヒータの両端にかかる電圧により、メモリ素子の両端にかかる電圧が変化することはなく、ヒータ抵抗をワードライン抵抗とは独立して加熱するために最適化することができる。
【0052】
第3の実施形態に係る別の例示的な実施例は、ワードラインヒータを有するMITセレクタ素子が結合/接合されたメモリ素子である。図7は、実施形態に係る第3の具体例によるクロスバーアレイの一部を構成するデバイスの概略的な断面図である。このデバイスは、図7に示すように、MIT素子のバリア材料からなる層(10)と、MIT素子のMIT材料からなる層(20)と、RRAM(登録商標)の場合にはたとえば窒化チタン(TiN)などの導電性材料からなる任意的な上部電極(30)と、RRAM(登録商標)ならば、たとえば酸化ハフニウム(HfO)または二酸化チタン(TiO)などの誘電体材料のメモリ材料からなる層(40)と、RRAM(登録商標)の場合にはたとえばハフニウム(Hf)または窒化チタン(TiN)などの導電性材料からなる任意的な下部電極(50)と、たとえばチタン/窒化チタン(Ti/TiN)などからなる相互接続配線に接続できるアルミニウム(Al)または銅(Cu)からなるビットライン導電体(60)と、二酸化ケイ素(SiO)、低誘電率材料、空気あるいは真空などの電気絶縁性および断熱性を有する誘電部(80)と、ヒータとしても機能するワードライン導電部(90’)とを備える。
【0053】
先の実施例のようにワードラインの上部にヒータを追加する代わりに、この実施例ではワードライン自体がヒータとしての機能を有する。ヒータ配線とヒータとの追加的な相互配線を省略することにより、製造処理ステップを実質的に簡便にすることができる。ただし、選択されたメモリ素子の両端にかかる電圧が変化しないようにして、意図した読み出し/書き込み/消去動作に影響を与えないようにするためには、ワードラインによる電圧降下を最小限に抑えなければならない。
【0054】
図8〜図10はそれぞれ、実施形態に係る第1〜第3の具体例による金属絶縁体相転移型セレクタのいわゆるビットコスト低減型の抵抗変化式ランダムアクセスメモリの3次元構造の概略図である。図示のように、MIT型セレクタは、垂直ビットラインを含むBICS(ビットコスト低減型)構造として実現される。図8および図10に示すように、ワードラインは加熱することができる。
【0055】
図8には、垂直ビットライン(500)の部分的な断面およびその周辺部が概略的に図示されており、RRAM(登録商標)材料(400)、MIT材料(200)、MIT素子のスイッチング抵抗を調節するバリア材料(200)、およびワードラインの断面図(100)が図示されている。この実施例では、ワードライン自体が加熱される。図8に示す具体例において、バリア層がワードラインに最も近接して配置されている。
【0056】
図10において、低温状態にあるMIT材料の異なるレベル間に流れ得る寄生電流を抑制することができる。追加的な電極(600)を挿入してもよい。
【0057】
択一的には、図9に示すようにビットラインを加熱してもよい。この具体例では、バリア層は、ビットラインの近傍に配設される。2次元の場合と同様、図6に示す2次元構成と同様に3次元構成において、別体のヒータをワードライン(またはビットライン)に平行に追加的に配設してもよい。この平行に配設されたヒータは、良好な導電体である電気絶縁体を介してワードラインから分離されている。
【符号の説明】
【0058】
1…分割ヒータ、2…MIT素子、3…メモリ素子、4…熱的連動を示すシンボル、5…ワードライン、6…ビットライン、7…余剰ライン、10…バリア材料からなる層、20…MIT材料からなる層、30…上部電極、40…メモリ材料からなる層、50…下部電極、60…ビットライン導電体、70…ヒータ材料からなる層、80…誘電部、90…ヒータライン導電部、100…分離ワードラインヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIT素子およびこれに熱的に連動する分割ヒータを備えたメモリアレイ内のメモリ素子を選択するためのセレクタデバイスであって、
MIT素子は、MIT材料構成要素とバリア構成要素とを有し、分割ヒータを用いて相転移温度より高い温度に加熱されることにより、高抵抗状態から低抵抗状態に切り換え可能であり、
バリア構成要素は、高抵抗状態にあるMIT素子の抵抗値を大きくするように構成されたことを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のセレクタデバイスであって、
分割ヒータは、高抵抗状態にあるMIT素子の抵抗値より低い抵抗値を有することを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセレクタデバイスであって、
MIT材料構成要素は、n型MIT材料からなることを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載のセレクタデバイスであって、
MIT材料構成要素は、p型MIT材料からなることを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項5】
請求項3に記載のセレクタデバイスであって、
バリア構成要素は、n型MIT材料の電子のためのバリアポテンシャルを形成するように選択されることを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項6】
請求項4に記載のセレクタデバイスであって、
バリア構成要素は、p型MIT材料の正孔のためのバリアポテンシャルを形成するように選択されることを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載のセレクタデバイスであって、
MIT材料は、二酸化バナジウム(VO)を含むことを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載のセレクタデバイスであって、
MIT材料は、さらにドーパントを含むことを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載のセレクタデバイスであって、
バリア構成要素は、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ハフニウム(HfO)、または二酸化ジルコニウム(ZrO)、およびこれらの混合物または組み合わせからなる群から選択されたバリア材料を含むことを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1に記載のセレクタデバイスであって、
分割ヒータは、複数のMIT素子と熱的に連動することを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1に記載のセレクタデバイスであって、
分割ヒータは、ワードラインもしくはビットラインに集積され、またはワードラインもしくはビットラインに沿って平行に配設されることを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のセレクタデバイスであって、
分割ヒータは、酸化アルミニウム(Al)または酸化ハフニウム(HfO)を含むことを特徴とするセレクタデバイス。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1に記載のセレクタデバイスの少なくとも1つと接続されたメモリ素子。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1に記載のセレクタデバイスの少なくとも1つと接続されたメモリ素子アレイ。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1に記載のセレクタデバイスの少なくとも1つを有するメモリデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115437(P2013−115437A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−258774(P2012−258774)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】