メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法並びにそれらを用いるメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステム
【課題】人物のメラニン合成能力を評価し、データベースを利用して人物毎に美容アドバイスを作成し、メラニン量を予測する美容アドバイス方法等を提供する。
【解決手段】美容アドバイスシステム10は、人物毎に少なくとも2回測定されたメラニンの変化量と紫外線照射量からメラニン合成能力を算出するメラニン合成能力演算処理部53と、気象データベース61と、人物毎にメラニン量や内的要因データを蓄積する顧客情報データベース62と、メラニン合成能力が被検者と近い参照人物を抽出する適合情報検索処理部54と、参照人物においてメラニン合成能力に影響度が高かった影響要因を抽出する将来予測処理部55と、を備える。更に、内的要因が被験者と類似する参照人物のデータから被験者のメラニン量を予測するメラニン量予測処理部551、影響要因と被験者の内的要因とから美容アドバイスを作成するアドバイス作成処理部552を備える。
【解決手段】美容アドバイスシステム10は、人物毎に少なくとも2回測定されたメラニンの変化量と紫外線照射量からメラニン合成能力を算出するメラニン合成能力演算処理部53と、気象データベース61と、人物毎にメラニン量や内的要因データを蓄積する顧客情報データベース62と、メラニン合成能力が被検者と近い参照人物を抽出する適合情報検索処理部54と、参照人物においてメラニン合成能力に影響度が高かった影響要因を抽出する将来予測処理部55と、を備える。更に、内的要因が被験者と類似する参照人物のデータから被験者のメラニン量を予測するメラニン量予測処理部551、影響要因と被験者の内的要因とから美容アドバイスを作成するアドバイス作成処理部552を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法、並びにそれらを用いるメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムに関し、詳しくは、紫外線照射量及びメラニン量の変化から人物のメラニン合成能力を評価するメラニン合成能力評価方法、並びにデータベースに蓄積されたデータに基づき、人物毎に将来のメラニン量を予測し、美容アドバイスを提示することができる美容アドバイス方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容カウンセリングや医療の分野において、シミやしわ、毛穴、キメ、皮脂量、肌色等の皮膚の状態を解析し、それに応じた美容アドバイスを行うサービスがある。その場合、シミやしわ、毛穴、キメ等の評価は、それぞれに対して異なる測定や解析の方法によって行われている。
例えば、シミの評価に関しては、その原因となる過剰なメラニン量を測定し解析することにより、シミのでき具合もしくはでき易さを評価している。このとき、メラニン量の解析には、細胞レベルの解析や皮膚レベルの解析等がある。細胞レベルの解析では、角質標本を作製し、1細胞当りのメラニン量とメラニン分布の不均一性の2面から測定を行うことによって、シミの評価が行われている。また、皮膚レベルの解析では、マイクロスコープ等を用いて皮膚の表面状態を撮影し、その画像を色要素別に解析することによってメラニン量を測定し、シミの評価が行われている。
【0003】
シミの評価では、上記のような細胞レベル又は皮膚レベル等でのメラニン量の評価結果を蓄積することによって、疫学的な集団のデータベースが作成されている。このデータベースを使用して、年代別、地域別など任意のグループについて、メラニン量やシミの平均値が求められる。そして、その平均値と新たに測定した個人のデータとを比較することによって、その個人の現在のシミの状態を評価するシステムが開発されている(特許文献1及び2を参照)。このような技術は、いずれも測定時のメラニン量を評価する場合には適しているが、あくまでも平均値を基準とした評価であり、その個人の体質や通常のメラニン量を考慮したものではないことから、個人毎にシミの状態を評価し、その状態に対する今後の美容アドバイスを行うためには不十分であった。
【0004】
これに対して近年では、シミの状態が、季節等によって異なる紫外線量や乾燥等の外部要因、ホルモンバランス(月経周期等)や加齢等の内部要因によって影響を受けることが明らかにされてきている。このため、これらの要因もデータベースに組み込むことにより、それぞれの要因を考慮し、さらに詳細なシミの現状とともに、季節や生活習慣等の要因に対してアドバイスを行うシステムが考案されている(特許文献3〜5を参照)。このような技術により、シミの状態を評価し、今後の生活パターンや季節の変化に対して美容アドバイスを具体的に行うこともできるようになってきた。
しかしながら、いずれのシステムも、これまでの疫学的なデータから得られる平均値や経験値を基に現在のシミの状態が評価されるため、相対的な評価となり、個人差が十分に考慮されないという問題があった。
【0005】
近年の研究から、人の生理状態を示す値(血圧、血糖値等)には個人差が存在し、その個人の状態によっても変動することが分かってきている。例えば、血圧には正常範囲が示されているものの、血圧は体調や測定する時間帯等で変動し、その個人の通常の値を評価するには1回の測定のみでは不十分と考えられている。メラニン量も、個人により又時期により大きく異なる値の1つである。なぜなら、メラニンの合成には、メラニン合成が開始される初期、最もメラニン合成が盛んな時期、そしてメラニン合成が終息する時期等の段階があり、メラニン合成の状態は日々変化しているからである(非特許文献1及び2を参照)。また、その変化の度合いやメラニン合成能力には個人差があるからである。このため、従来行われているように、メラニン量の1回の測定、平均値を基準とする比較だけでは、その時点でのメラニン量は評価できても、メラニン合成の段階や今後のメラニン合成の進行を見極めることは困難であった。また、個人毎にメラニン合成能力を判断することも困難であった。このような状況から、個人のメラニン合成について、より効果的で将来的な評価を可能にし、その個人に最適な美容アドバイスを行う方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−199727号公報
【特許文献2】特開2007−133518号公報
【特許文献3】特開2001−353129号公報
【特許文献4】特開2006−103051号公報
【特許文献5】特開2007−130104号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル、北原隆他、9、p9−15、2000
【非特許文献2】フレグランスジャーナル、正木仁他、9、p16−23、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のとおり、個人の皮膚の状態(メラニンの合成)は日々変化しており、その変化の度合いやメラニン合成能力も人により差異が大きい。そのため、1回のメラニン量の測定のみで、個人のメラニン合成能力やメラニン合成の段階を見極めることは困難である。特に、メラニン合成に関しては、様々な外的要因(気候、紫外線照射量、季節等)や内的要因(月経周期、スキンケア、生活習慣、ストレス等)に反応してメラニン合成が誘起され、その後メラニン合成が盛んな時期を経て、メラニン合成が終息する時期へと移行する。また、各個人によってメラニン合成能力は異なり、実際にメラニンが合成される量は人により様々である。
例えば、一般的に春から夏に向けてメラニンの合成量が増えることが知られているが、その増える度合(具体的には、メラニン産出の能力や速度、メラニンの蓄積量等による。)は、外的要因が同程度の地域で生活する同世代の人においても、個人によって異なる。その原因には、個人により、スキンケアや生活習慣が異なること、メラニン合成能力に差異があることが考えられる。このため、メラニン量を1回測定する従来の方法では、その個人の現在のメラニン量を知ることはできても、メラニン合成の段階を判断したり今後のメラニン量の変化を精度よく予測したりすることは困難であるという問題があった。また、個人のメラニン合成能力を評価することもできなかった。
【0009】
また、近年の紫外線防御意識や美白意識の高まりにも関わらず、個人のメラニン合成能力を評価する方法がなかったため、個人のメラニン合成能力に合わせた日々のスキンケア及び生活習慣を含む美容アドバイスを行うことができなかった。
【0010】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、様々な外的要因及び内的要因によって誘起された個人のメラニン合成が現在どの段階にあるかを知ることができ、その個人のメラニン合成能力を評価することができ、更にその個人のメラニン合成能力に合わせたスキンケア及び生活習慣を含む美容アドバイスを行うと共に将来のメラニン量の変動を予測することが可能な、メラニン合成能力評価及び美容アドバイスの方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討し、個人のメラニン量の変動を見極め、個人のメラニン合成能力とメラニン合成の段階を評価することができるメラニン合成能力評価方法を見出した。また、個人のメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因及び/又は内的要因を精度よく判断し、各個人のメラニン合成能力とメラニン合成の段階に合わせた効果的な美容アドバイスを行い、将来のメラニン量を予測することができる美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステムを開発した。
【0012】
本発明は、以下のとおりである。
1.人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、該メラニン量を人物データとして顧客情報データベースに蓄積して記憶するメラニン量測定工程と、
前記メラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した日の間を測定期間として、該測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、該測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、
を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価方法。
2.上記1.記載のメラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法であって、
人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を、人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する顧客情報入力工程と、
被検者についてメラニン量を測定した前記測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも該参照期間における前記メラニン合成能力が前記被検者の前記メラニン合成能力と近い1又は2以上の人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程と、
前記被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物について、該将来参照期間における前記メラニン合成能力に影響度が高かった前記内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程と、
を備えることを特徴とする美容アドバイス方法。
3.前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物のうち、前記将来参照期間における前記内的要因が、前記被検者の前記内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の該将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、前記被検者の前記将来期間におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含む前記2.記載の美容アドバイス方法。
4.前記将来予測工程は、抽出した前記影響要因と前記被検者の前記内的要因とに基づいて、前記被検者に対するメラニン量抑制のためのアドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む前記2.又は3.に記載の美容アドバイス方法。
5.前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含み、
前記顧客情報入力工程は、前記内的要因毎の程度を数値化した内的要因スコアを作成して、該内的要因スコアを人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する前記2.乃至4.のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
6.前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記人物の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する前記2.乃至5.のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
7.前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記被検者の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する前記1.記載のメラニン合成能力評価方法。
8.前記1.又は7.に記載のメラニン合成能力評価方法を用いるメラニン合成能力評価システムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価システム。
9.前記2.乃至6.のいずれかに記載の美容アドバイス方法を用いる美容アドバイスシステムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備えることを特徴とする美容アドバイスシステム。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメラニン合成能力評価方法によれば、人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、そのメラニン量を人物データとして顧客情報データベースに蓄積して記憶するメラニン量測定工程と、そのメラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した日の間を測定期間として、該測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、該測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、を備えるため、その測定時期及び人物の生活地域に関わらず、人物毎に、精度よくメラニン合成能力を知ることができ、メラニン合成の段階を判断することができる。
【0014】
上記メラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法によれば、人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する顧客情報入力工程を備えるため、顧客情報データベースには、人物毎に、内的要因と、前記メラニン量測定工程により測定されたメラニン量とが、人物データとして経時的に記録される。また、被検者についてメラニン量を測定した測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも参照期間におけるメラニン合成能力が被検者のメラニン合成能力と近い人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程を備えるため、前年以前の同時期において、被検者のメラニン合成能力に近似するメラニン合成能力であった参照人物を1人又は複数人(例えば、数十人〜数百人)抽出することができる。そして、被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、顧客情報データベースに記憶されている人物データと気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、参照人物について、将来参照期間におけるメラニン合成能力に影響度が高かった内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程を備えるため、所定の将来期間(例えば、今後の3ヶ月間)に対応する過去の期間において、参照人物のメラニン量変動に影響が大きかった内的要因を、影響要因として統計的に抽出することができる。これによって、被検者の今後のメラニン量変動に影響が大きいと評価される内的要因に基づいて、スキンケアや生活習慣を含む適切な美容アドバイスを精度よく行うことが可能になる。
また、本美容アドバイス方法を適用すれば、個人の将来のメラニン量の経時変化を提示することが可能になるだけでなく、個人のメラニン合成能力を基に、その内的要因や気象データを仮定することで、1年後、5年後、10年後等のメラニン量の経時変化を予測することができ、スキンケア方法や生活習慣の違い等による様々なメラニン量の経時変化パターンをシミュレーションすることができる。これにより、理想のメラニン量に近づけるための、又は現在のメラニン量を維持するためのスキンケアや生活習慣をアドバイスすることが可能になる。また、個人のメラニン合成能力を求めるという特徴から、新たにメラニン量を測定しなくても、日々のスキンケアや生活習慣、そして気象等のデータを記録(入力)することで、記録時の肌のメラニン量を推定したり、リアルタイムに理想のメラニン量に向けた日々のスキンケア、生活習慣等のアドバイスを行ったりすることが可能になる。
【0015】
前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された参照人物のうち、前記将来参照期間における内的要因が、前記被検者の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、被検者の将来期間におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含む場合には、今後の時期に対応し、統計的に被検者の内的要因に最も近い参照人物のメラニン量の変動データに基づいて、被検者のメラニン量の変動が予測される。これにより、メラニン合成能力が被検者と近く、且つ生活習慣やスキンケア等が被検者に似ている人物のデータに基づいて、被検者の今後のメラニン量の変動を精度よく予測することができる。
前記将来予測工程は、抽出した前記影響要因と前記被検者の内的要因とに基づいて、被検者に対するメラニン量抑制のためのアドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む場合には、被検者の今後のメラニン量変動に影響が大きいと予測される内的要因に基づいて、スキンケアや生活習慣を含む適切なアドバイスを自動的に生成することができ、より確実且つ迅速に美容アドバイスを行うことができる。
前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含み、前記顧客情報入力工程は、内的要因毎の程度を数値化した内的要因スコアを作成して、人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する場合には、一般にメラニン量変動に影響が大きい内的要因である喫煙頻度等の生活習慣、紫外線対策(例えば、ファンデーション、日焼け止め、帽子、日傘等)の頻度、スキンケア(例えば、洗顔、ミルクローション、クリーム、マッサージ、美白用化粧品、美白用サプリメント、化粧を落とさずに就寝等)の頻度、ストレスレベル等を適宜選択し、その要因毎の程度によりメラニン量を増加又は抑制する順で数値化した内的要因スコアを作成することができるため、美容アドバイス方法の適用を容易にし、分析処理を精度よく行うことができる。
前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、前記メラニン合成能力演算工程は、気象データベースに記憶されている地域毎の紫外線照射量に基づき、人物の居住地域に応じた紫外線照射量によりメラニン合成能力を算出する場合には、人物の生活地域の気象に応じて、よりきめ細かく精度のよい分析処理や美容アドバイスを行うことができる。
【0016】
前記メラニン合成能力評価方法であって、前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、前記メラニン合成能力演算工程は、気象データベースに記憶されている地域毎の紫外線照射量に基づき、人物の居住地域に応じた紫外線照射量によりメラニン合成能力を算出する場合には、人物の生活地域の気象に応じて、よりきめ細かく且つ精度よく、メラニン合成能力やメラニン合成段階の評価を行うことができる。
【0017】
いずれかの前記メラニン合成能力評価方法を用いるメラニン合成能力評価システムであって、前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、を備えるメラニン合成能力評価システムによれば、前記メラニン合成能力評価方法を効果的に使用して、人物毎のメラニン測定時期や生活地域等に応じて精度よくメラニン合成能力を知ることができ、メラニン合成の段階を判断することが可能になる。
【0018】
いずれかの前記美容アドバイス方法を用いる美容アドバイスシステムであって、前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備える美容アドバイスシステムによれば、前記美容アドバイス方法を効果的に用いて、人物毎に、今後のスキンケアや生活習慣を含む適切な美容アドバイスを迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本実施形態に係るメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】メラニン合成能力演算工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図3】時間(年月日)によるメラニン量の変化と日毎の紫外線照射量の変動を説明するためのグラフである。
【図4】ある1年間の各地域における月毎の日積算UV−B量(紫外線照射量)を表すグラフである。
【図5】図4に示した年の3月の紫外線照射量と地域毎の緯度との関係を表すグラフである。
【図6】測定期間、参照期間、将来期間及び将来参照期間の関係を説明するための図である。
【図7】顧客の現在の状態(内的要因)を入力するために表示される入力画面の例を表す図である。
【図8】内的要因及びその数値化(内的要因スコア)の例を示す表である。
【図9】美容アドバイスシステムにおける主要な処理の例を示すフローチャートである。
【図10】適合情報検索工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図11】将来予測工程における影響要因抽出処理の例を示すフローチャートである。
【図12】内的要因とメラニン合成能力との関連性の例を示す散布図である。
【図13】メラニン量予測工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図14】内的要因の類似度を評価するための数式の例である。
【図15】アドバイス作成工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図16】美容アドバイスシステムの結果表示画面の例を表す図である。
【図17】美容アドバイスシステムの別の構成を示すブロック図である。
【図18】所定期間に対応するメラニン量の推定方法を説明するための図である。
【図19】所定期間に対応する内的要因スコアの推定方法を説明するための図である。
【図20】メラニン合成能力の算出例を説明するための表である。
【図21】顧客情報データベースに蓄積されている人物データから、参照期間におけるデータが記録されている人物についてメラニン合成能力を算出した例を示す表である。
【図22】参照人物について将来参照期間におけるメラニン合成能力を算出した例を示す表である。
【図23】参照人物の将来参照期間における内的要因の例を示す表である。
【図24】参照人物の将来参照期間における内的要因とメラニン合成能力との関連性を算出し、影響度の高い内的要因を影響要因として抽出した例を示す表である。
【図25】作成された美容アドバイスの例を示す表である。
【図26】別の被検者に対して抽出した影響要因の例を示す表である。
【図27】被検者の内的要因、及び被検者と参照人物との内的要因の類似度(距離)を求めた例を示す表である。
【図28】(a)被検者の居住地域の紫外線照射量を示す表、及び(b)被検者のメラニン量変動を予測した例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜28を参照しながら、本発明のメラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法、並びにそれらを用いるメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムを詳しく説明する。ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものである。
【0021】
本発明の方法及びシステムの実施形態においては、顧客(人物)毎のメラニン合成能力を評価し、それを基に美容アドバイスを作成するために、人物毎のメラニン量測定データと共に、メラニンの合成に影響を及ぼす外的要因及び内的要因についての情報を蓄積したデータベースを使用している。
このデータベースには、アンケート等により、日焼け時の肌の反応性が異なる人物を多数(例えば、100人以上)選別し、その人物毎に、長期的且つ経時的に特定部位の角質標本を採取し、その角質標本からメラニン量を測定すると共に、各人物のメラニン合成能力に対して影響を及ぼすと考えられる外的要因や内的要因に関する情報を調査し、得られたデータを蓄積している。
【0022】
すなわち、紫外線に対して異なる反応性を示す人物の通年のメラニン量の変動と、それに対応した外的要因及び内的要因に関するデータを収集し、データベースを作成した。このデータベースには、メラニン量の段階的な変動と、それに対応した外的要因及び内的要因の情報が、同一人物における通年の経時的なデータとして、平均値でなく個人単位で蓄積されている。本発明では、このデータベースを利用することで、各個人のメラニン合成能力やメラニン合成の段階を評価し、またメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因及び内的要因を導き出す。
【0023】
前記「外的要因」とは、人物のメラニン合成に影響を及ぼす気象(例えば、気温、湿度、天気、紫外線照射量)等を意図している。
前記「内的要因」とは、メラニン合成に影響を及ぼす人物の状態(例えば、年齢、生活地域、肌質、紫外線に対する意識(紫外線対策)、スキンケア、月経周期、生活習慣、ストレスレベル)等を意図している。
本発明において、外的要因としてどの事項を用いるか、また内的要因としてどの事項を用いるか、は特に限定されない。例えば、外的要因を紫外線照射量とすることができる。また、内的要因を、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含むものとすることができる。
【0024】
前記「データベース」は任意の構成とすることができ、例えば、主として外的要因に関する情報を蓄積して記憶する気象データベースと、人物のメラニン量及び主として内的要因に関する情報を蓄積して記憶する顧客情報データベースと、を備えて構成することができる。顧客情報データベースには、人物毎に関連付けて、メラニン量や内的要因に関するデータが経時的に蓄積される(人物毎のデータをまとめて「人物データ」という)。
【0025】
本発明では、1人の人物(同一の単一個人)についてメラニン量を少なくとも2回以上測定し、その間のメラニン量の変動(メラニン変動の傾き)を算出することで、その個人のメラニン合成能力を数値化する方法を見出した。
「メラニン合成能力」とは、ある期間において、人物の外的要因又は内的要因により、その人物のメラニンの合成及び排出量がどれだけ変化したかを表わす数値をいう。人物のメラニンの変動に最も大きな影響を及ぼす要因として紫外線照射量が挙げられる。以下では、主として紫外線照射量に対するメラニン合成能力を取り上げている。その場合、メラニン合成能力は、次式のように、単位紫外線照射量当りのメラニン変化量として算出することができる。
メラニン合成能力=メラニン変化量÷紫外線照射量
【0026】
さらに、1人の人物(「被検者」という。)に対して効果的な美容アドバイスを行うことができる美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステムを開発した。この美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステムは、被検者について算出したメラニン合成能力の数値を基に、前記データベースに蓄積された人物データを検索して、被検者と類似したメラニン合成能力を示す他者(「参照人物」という。)を抽出し、その他者が示したメラニン合成能力に対して影響を及ぼした外的要因及び内的要因のデータに基づいて、被検者の現在のメラニン合成の段階や将来のメラニン量の変動を予測することができると共に、被検者のメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因又は内的要因を精度よく判断し、最も効果的な美容アドバイスを行うことができる。
前記「被検者」は、通常は新たな顧客であるが、それに限られず、既に顧客情報データベースに継続的に人物データが記録されている従来の顧客のうちの1人としてもよい。
前記抽出する参照人物の数は限定されず、1人であってもよいし、複数人(例えば、数百人以上)であってもよい。
【0027】
本発明では、撮影手段と計算手段と記憶手段とを備え、被検者のメラニン合成能力を算出し、更にその被検者の将来のメラニン量の経時変化を予測し、メラニン合成の状態改善又は状態維持のために有効な方法(スキンケア、生活習慣等)を選定して美容アドバイスを提示するように構成される。そのために、少なくとも1週間間隔にて2回以上、被検者の角質細胞を採取又は撮影してメラニン量を測定すると共に、1回目の測定から2回目の測定までの期間(「測定期間」という。)における被検者の内的要因に関する情報と、過去の気象データ、並びに複数人についてのメラニン量及び内的要因に関する情報の各項目における状態の経時(通年)データを蓄積したデータベースとに基づき、当該被検者の将来のメラニン量の経時変化と、理想のメラニン量の経時変化と、理想に近づけるためのスキンケア及び生活習慣を選定する方法を提供するように構成することができる。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るメラニン合成能力評価方法を効果的に行うためのメラニン合成能力評価システム1、及び美容アドバイス方法を効果的に行うための美容アドバイスシステム10の構成を示すブロック図である。メラニン合成能力評価システム1及び美容アドバイスシステム10は、画像撮影装置2、入力装置3、出力装置4、情報処理装置(サーバ)5、気象データベース(記憶装置)61及び顧客情報データベース(記憶装置)62を備えて構成することができる。
メラニン合成能力評価システム1及び美容アドバイスシステム10の具体的な構成方法や接続方法等は特に限定されない。例えば、情報処理装置5は1台又は2台以上のコンピュータによって構成することができる。画像撮影装置2、入力装置3、出力装置4等のそれぞれの台数は問わない。気象データベース61及び顧客情報データベース62は、情報処理装置5内に備えられてもよいし、外部のデータベースを接続して利用するように構成されてもよい。また、情報処理装置5と各装置との間や、情報処理装置5と各データベースとの間等は、通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続されていてもよい。
【0029】
前記画像撮影装置2は、人物の角質細胞を撮影する装置である。角質細胞の撮影方法は、例えば、テープストリッピング法で採取された角質細胞標本を、フォンタナ・マッソン法によりメラニンを染色し、該角質細胞標本を画像撮影装置2に接続された顕微鏡で撮影するのが好ましい。その他、テープストリッピング法で採取された角質細胞標本を、蛍光色素やメラニン抗体によりメラニンを標識し、該角質細胞標本を画像撮影装置2に接続したレーザー顕微鏡を用いて撮影してもよい。また、角質細胞を採取せず、画像撮影装置2に接続した共焦点レーザー顕微鏡や2光子励起顕微鏡を用いて、プローブを顔に密着させて直接角質細胞を撮影してもよい。
【0030】
前記入力装置3は、情報処理装置5に対して情報を入力するための装置であり、入力情報に応じて、パーソナルコンピュータやキーボード、タッチパネル、スキャナ等を適宜用いることができる。
前記出力装置4は、情報処理装置5による処理結果や操作者への指示等を出力するための装置であり、出力情報に応じて、パーソナルコンピュータやモニタ、プリンタ、音声出力装置等を適宜用いることができる。
【0031】
前記情報処理装置5は、各種情報処理を行うコンピュータによって構成され、メラニン量測定処理部51、顧客情報入力処理部52、メラニン合成能力(影響係数)演算処理部53、適合情報検索処理部54、将来予測処理部55、結果表示処理部56及び履歴検索処理部57を備えている。将来予測処理部55には、メラニン量予測処理部551及びアドバイス作成処理部552を備えることができる。前記各処理部の機能は、主としてコンピュータのソフトウェアにより構成することができるが、演算回路等のハードウェアと組み合わせて構成されてもよい。
【0032】
本メラニン合成能力評価方法は、主として前記メラニン量測定処理部51によって行われるメラニン量測定工程と、主として前記メラニン合成能力演算処理部53によって行われるメラニン合成能力演算工程とを備える。本美容アドバイス方法は、更に、主として前記顧客情報入力処理部52によって行われる顧客情報入力工程と、主として前記適合情報検索処理部54により行われる適合情報検索工程と、主として前記将来予測処理部55により行われる将来予測工程と、を備える。また、将来予測工程には、主として前記メラニン量予測処理部551により行われるメラニン量予測工程と、主として前記アドバイス作成処理部552により行われるアドバイス作成工程と、を備えることができる。
【0033】
前記気象データベース61及び前記顧客情報データベース62は、記憶装置上に構成され、情報処理装置5の前記各処理部によりアクセス可能とされている。データベース(気象データベース61及び顧客情報データベース62)は、統合して1つのデータベースとして構成されてもよいし、それぞれが複数に分割して構成されてもよい。
気象データベース61には、過去の全国各地域の気象に関するデータを蓄積して記憶することができる。気象データに含まれる地域毎の紫外線照射量等は、その地域で生活する人物のメラニン量の変動に影響を及ぼす外的要因となる。
また、顧客情報データベース62には、過去及び新規の顧客に関する人物データが蓄積して記憶される。人物データには、人物毎に、少なくとも2回のメラニン量測定日(角質細胞採取又は撮影年月日)と、各測定日における該角質細胞のメラニン量と、各測定日の間の該人物の内的要因に関するデータを含むことができる。内的要因に関するデータは、内的要因毎にその程度等を数値化した内的要因スコアとして記憶することができる。
【0034】
1.メラニン合成能力評価方法及びメラニン合成能力評価システム
本メラニン合成能力評価方法は、人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、測定したメラニン量を人物データとして顧客情報データベース62に記憶するメラニン量測定工程と、メラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、を備える。
「測定期間」とは、前記のとおり対象人物のメラニン量を測定した2つの日の間をいうが、その2回目のメラニン量の測定を行った日が最近である場合には、対象人物の最近のメラニン合成能力を得ることができる。また、測定期間が過去である場合には、対象人物のその過去の期間におけるメラニン合成能力が算出されることになる。測定期間は、1週間〜数ヶ月、好ましくは1ヶ月程度とすることができる。
【0035】
(メラニン量測定工程)
画像撮影装置2により撮影された人物の角質細胞の画像は、メラニン量測定処理部51に送られる。メラニン量測定処理部51は、受信された角質細胞画像に対して、例えばセグメンテーション処理と二値化処理を行うことにより、メラニン量を測定する。
前記セグメンテーション処理とは、角質細胞の部分とそうでない部分とを区分する処理のことであり、詳しくは、画像の緑色成分ヒストグラムを複数個の正規分布でモデル化し、正規分布のパラメータにより動的に角質細胞の部分とそうでない部分とを区分する処理である。また、前記二値化処理とは、メラニンが存在する部分とそうでない部分に区分する処理であり、具体的には、セグメンテーション処理により画像の角質細胞に区分された部分を、閾値によりメラニンが存在する部分とそうでない部分とを区分している。それにより、角質細胞の部分に占めるメラニンが存在する部分の割合をメラニン量として求めることができる。
メラニン量測定工程により、1人の人物についてメラニン量は少なくとも2回(2つの日に)測定される。メラニン量測定工程は、人物(人物番号、氏名等)に関連付けて、測定したメラニン量、測定日(角質細胞の採取年月日)、角質細胞画像等を顧客情報データベース62に記録することができる。
【0036】
(メラニン合成能力演算工程)
図2は、メラニン合成能力演算工程によって行われるメラニン合成能力演算処理(S20)の流れを示している。メラニン合成能力演算処理S20では、1人の人物について2回測定されたメラニン量と、気象データベース61に記録されている紫外線照射量と、から対象人物のメラニン合成能力を算出する。
先ず、対象人物について、2つの測定日(A、B)に測定されたメラニン量データを顧客情報データベース62から取得する(S21)。例えば、図3(a)は、時間(年月日)による対象人物のメラニン量の変化を表わしている。先の測定日Aにおける対象人物のメラニン量がmAであり、後の測定日Bにはメラニン量がmBであった場合、測定日Aと測定日Bとの間(測定期間T0)におけるメラニン変化量は(mB−mA)となる。
【0037】
一方、その測定期間T0における紫外線照射量を気象データベース61から読み出し(S22)、当該期間における紫外線照射量の積算値Uを求める(S23)。例えば、図3(b)は、日毎の紫外線照射量の変動を同図(a)と同じ時間軸で表わしている。この場合、測定期間T0における日毎の紫外線照射量を積算することによって、当該期間の紫外線照射積算量Uが求められる。なお、測定期間T0に測定当日(AやB)を含めるか否かは、適宜に設定されればよい。
紫外線照射積算量Uは対象人物が受けた紫外線量とすることが好ましいので、対象人物の内的要因(日中の屋外活動時間)等によって、紫外線照射積算量Uの値が補正されてもよい。
【0038】
そして、測定期間T0におけるメラニン変化量(mB−mA)と紫外線照射積算量Uとから、単位紫外線照射量当りのメラニン量の変化率を、対象人物のメラニン合成能力M(M=(mB−mA)/U)として算出する(S24)。メラニン合成能力Mの値(メラニン量の変化の傾き)から、対象人物のメラニン合成の段階を判断することができる。
【0039】
測定期間T0における紫外線照射積算量Uを求めるために、月毎の紫外線照射量の平均値を用いてもよい。例えば、図4は、気象庁により公開されている各地域(札幌、つくば、鹿児島及び那覇)における日積算UV−B量の月平均値の例(2003年)を示したグラフである。UV−B量とは波長が280〜315nmの紫外線強度の積算値(単位kJ/m2/day)であり、この月平均の日積算UV−B量を、当該月の「1日当りの紫外線照射量」(以下、「平均紫外線照射量」という。)として用いることができる。測定期間が2以上の月にまたがる場合には、各月に属する日数と各月の平均紫外線照射量とから、当該測定期間における平均紫外線照射量及び前記紫外線照射積算量Uを求めることができる。以下で、他の期間について平均紫外線照射量を算出する場合も同様である。
また、上例において、測定期間T0における「1日当りのメラニン変化量」(以下、「平均メラニン変化量」という。)は、((mB−mA)/(測定期間の日数))となる。したがって、簡単には、メラニン合成能力Mを次式により求めてもよい。
メラニン合成能力=平均メラニン変化量÷平均紫外線照射量
【0040】
気象データベース61に地域毎の紫外線照射量を蓄積して記憶し、対象人物の居住地域(生活地域)に近い地域の紫外線照射量に基づいてメラニン合成能力を算出することが好ましい。
例えば、図5は、図4に示した年の3月の平均紫外線照射量と地域毎の緯度との関係を表したグラフである。このように、各地域の紫外線照射量は緯度が小さいほど高く、紫外線照射量と緯度とはほぼ一定の関係にあることが見出される。したがって、人物毎にメラニン合成能力を算出するためには、その人物の居住地域と緯度が最も近い地域の紫外線照射量を用いることが好ましい。また、例えば、図5中に示した回帰式を用いて、その人物の居住地域(緯度x)における平均紫外線照射量(y)を推定するようにすることもできる。
【0041】
2.美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステム
本実施形態に係る美容アドバイス方法は、前記メラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法であって、人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を、人物データとして顧客情報データベース62に蓄積して記憶する顧客情報入力工程を備える。また、1人の被検者についてメラニン量を測定した前記測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、顧客情報データベース62に記憶されている人物データと気象データベース61に記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも該参照期間におけるメラニン合成能力が被検者のメラニン合成能力と近い、1又は2以上の人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程を備える。更に、被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、顧客情報データベース62に記憶されている人物データと気象データベース61に記憶されている紫外線照射量とに基づき、前記参照人物について、将来参照期間におけるメラニン合成能力に影響度が高かった内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程を備える。
【0042】
また、前記将来予測工程は、メラニン量予測工程を含んで構成することができる。メラニン量予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された参照人物のうち、前記将来参照期間における内的要因が、前記被検者の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、被検者の将来期間におけるメラニン量を予測する工程である。
また、前記将来予測工程は、アドバイス作成工程を含んで構成することができる。アドバイス作成工程は、将来予測工程において抽出した前記影響要因と前記被検者の内的要因とに基づいて、被検者に対するメラニン量抑制のための美容アドバイスを作成する工程である。
【0043】
本実施形態に係る美容アドバイスシステム10(図1参照)は、気象データベース61と、顧客情報データベース62と、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備えて構成することができる。
【0044】
図6は、本美容アドバイス方法において処理対象とする期間について説明するための図である。同図(a)に示す日(年月日)A及びBは、新たな人物(被検者)について角質細胞を採取した年月日(測定日)を表し、先の測定日Aと後の測定日Bとの間を「測定期間」T0とする。例えば、測定日Aが2010年5月1日、測定日Bが同年6月1日(今日)とすると、測定期間T0は同年5月1日から6月1日までの32日間(測定日AとBを含む場合)となる。
図6(a)に示す日Cは将来の日であり、測定日Bから将来日Cまでの間を「将来期間」T1とする。将来期間の長さは適宜に設定することができ、例えば、将来日Cを1月後、3月後、6月後等とすることができる。
【0045】
図6(b)に示す日BP、AP及びCPは、それぞれ、前年以前の年において、前記測定日B、A及び前記将来日Cに対応する日(それぞれ月日が同じ日)である。そして、前年以前の年において、上記測定期間T0に対応する期間を「参照期間」T0P、前記将来期間T1に対応する期間を「将来参照期間」T1Pとする。なお、測定期間T0の日数に測定日AやBを含めるか否かは適宜に設定されればよく、将来期間T1、参照期間T0P及び将来参照期間T1Pの日数ついても同様とすることができる。
【0046】
本美容アドバイス方法の各工程においては、顧客情報データベース62から、参照期間及び将来参照期間における人物のメラニン量や内的要因スコアを取得し、必要な処理を行っている。しかし、前年以前に人物のメラニン量を測定した日が被検者のメラニン量の測定日(A、B)に対応しない場合がある。このような場合、前記適合情報検索工程では、人物の測定日及び測定されたメラニン量に基づいて、参照期間における該人物のメラニン変化量を推定することができる。また、前記将来予測工程では、人物の測定日の間の内的要因(内的要因スコア)に基づいて、参照期間における該人物の内的要因(内的要因スコア)を推定することができる。また、前記アドバイス作成工程では、人物の測定日の間の内的要因(内的要因スコア)に基づいて、将来参照期間における該人物のメラニン量及び内的要因(内的要因スコア)を推定することができる。
【0047】
図7は、顧客毎の状態の情報を得るために入力装置3に表示される顧客情報入力画面の一例を表している。ここで表示されているような顧客の年齢、居住地域、肌質、日中の屋外活動時間、紫外線対策(紫外線に対する意識。日焼け止め、帽子、日傘等。)、日焼け時の肌、生活習慣(喫煙、飲酒、食生活の乱れ、職種、運動、睡眠時間)、フェイシャルエステティック、生理周期、ストレスレベル、朝及び夜のスキンケア(ローション、ミルクローション、クリーム、マッサージ、飲用サプリメント)等を、内的要因の項目として挙げることができる。このような項目毎に程度や頻度が入力されるようにし、評価や分析の対象とする内的要因の項目は、任意に選択することができる。
【0048】
取得された顧客の状態の情報から、内的要因毎に数値化することによって、内的要因スコアが作成される。内的要因スコアは、内的要因毎の程度や頻度を点数付けすることにより生成することができる。点数は、各項目の程度や頻度について、一般にメラニン量を増加させると考えられる順、又はメラニン量を抑制しないと考えられる順等で点数付けすることができる。
図8は、内的要因毎に5段階で点数付けする例を示している。例えば、「飲酒」はメラニン量を増加させる要因と考えられるため、その頻度が高いほど高い点数(5)を与えている。また、「ダブル洗顔」はメラニン量を抑制する効果があると考えられるため、その頻度が低いほど高い点数(5)を与えている。
【0049】
(顧客情報入力工程)
顧客情報入力工程では、図7に示したような顧客情報入力画面を入力装置3等に表示し、それに従って入力された顧客の情報を取得することができる。これによって取得された顧客の情報を、図8に示したように内的要因毎に数値化して、内的要因スコアを作成することができる。そして、人物(人物番号、氏名等)に関連付けて、居住地域、年齢、肌質等の基本情報や内的要因(内的要因スコア)、情報取得日等を顧客情報データベース62に記録する。
【0050】
図9は、本美容アドバイス方法で行う主要な処理の流れを示している。本美容アドバイス方法には、図示しない前記メラニン合成能力評価方法(メラニン量測定工程及びメラニン合成能力演算工程)及び上記顧客情報入力工程が組込まれている。
本美容アドバイス方法では、気象データベース61及び顧客情報データベース62を適宜使用して、適合情報検索工程により適合情報検索処理(S40)が行われ、将来予測工程により将来予測処理(S50)が行われる。その将来予測工程S50では影響要因抽出処理(S51)を行い、更に、メラニン量予測工程によりメラニン量予測処理(S52)、アドバイス作成工程によりアドバイス作成処理(S53)を行うようにすることができる。
【0051】
(適合情報検索工程)
図10は、前記適合情報検索処理S40の例を示している。先ず、前記メラニン合成能力演算処理S20により、被検者の測定期間T0におけるメラニン合成能力M0を算出する(S41)。
次に、顧客情報データベース62に蓄積されている人物データの中から、測定期間T0に対応する参照期間T0Pにおいてメラニン量が測定されている人物を1人抽出する(S42)。メラニン量の測定日が参照期間と完全に対応しなくても、前記のとおり、参照期間におけるメラニン量を推定することが可能である。また、気象データベース61に蓄積されている参照期間における紫外線照射量を取得する(S43)。そして、当該人物の参照期間T0Pにおけるメラニン合成能力(単位紫外線照射量当りのメラニン変化量)M0Pを算出する(S44)。メラニン合成能力M0Pは、前記メラニン合成能力演算処理S20を適用して求めることができる。
そして、顧客情報データベース62に蓄積されている人物データ中の、参照期間T0Pにおいてメラニン量が測定されている人物の全てについて、上記ステップS42〜S44を繰り返してメラニン合成能力を求める(S45)。
【0052】
参照期間T0Pにおいてメラニン量が測定されている全ての人物についてメラニン合成能力M0Pが求められたら、メラニン合成能力M0Pが被検者のメラニン合成能力M0に近い人物を、参照人物として抽出する(S46)。抽出する参照人物の数は特に問わず、例えば、人物のメラニン合成能力M0Pと被検者のメラニン合成能力M0との差が所定範囲内である人物を参照人物とすることができる。これによって抽出された参照人物のデータは、以下の各工程において参照される。
【0053】
上記ステップS46では、ステップS42で抽出された人物すなわち参照期間にデータが存在する全ての人物の中から、メラニン合成能力M0Pが被検者のメラニン合成能力M0に近い人物を参照人物として抽出したが、参照人物を抽出する条件は、種々変更し又は組み合わせることが可能である。例えば、被検者と同じ世代の人物や、被検者と同様の肌質の人物、被検者と同じ地域の人物等の中から、メラニン合成能力が近い人物を参照人物として抽出するようにすることができる。また、参照人物を絞り込むように更に条件を組み合わせてもよい。世代、肌質、地域等の条件を適宜付加すれば、特性が被検者により近い人物を参照人物とすることが可能である。
【0054】
(将来予測工程)
図11は、前記将来予測工程における影響要因抽出処理S51の例を示している。先ず、顧客情報データベース62から、前記適合情報検索工程によって抽出された参照人物毎に、将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の測定データを取得するともに、気象データベース61から当該期間における紫外線照射量を取得して、当該人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pを算出する(S511)。メラニン合成能力M1Pは、前記メラニン合成能力演算処理S20を適用して求めることができる。これによって、将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の測定データが存在する参照人物の全てについて、メラニン合成能力M1Pが算出される。メラニン量の測定日が将来参照期間T1Pと完全に対応していなくても、前記のとおり、将来参照期間T1Pにおけるメラニン量を推定することが可能である。
また、顧客情報データベース62から、全ての参照人物について、将来参照期間T1Pにおける内的要因スコアを取得する(S512)。内的要因スコアの記録日が将来参照期間T1Pと完全に対応しなくても、前記のとおり、将来参照期間T1Pにおける内的要因スコア(平均内的要因スコア)を推定することが可能である。
【0055】
そして、全ての参照人物について、将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pに対する内的要因毎の影響度を求める(S513)。
前記「影響度」は、メラニン合成能力と1つの内的要因との関連の度合を評価し得る数値である限り、特に限定されない。例えば、図12は、1つの内的要因のスコア(横軸)と参照人物全てのメラニン合成能力(縦軸)との関係を表す散布図である。この場合には、相関分析により、当該内的要因とメラニン合成能力との間には有意な相関が見出される。また、両者の回帰分析を行うこともできる。すなわち、参照人物全てのメラニン合成能力と、各内的要因スコアとの相関を求め、有意な相関係数を「影響度」とすることができる。その場合、相関係数が大きい内的要因の影響度が高いといえる。また、有意な相関係数が得られた内的要因について、メラニン合成能力と内的要因スコアとの回帰分析を行うことによって回帰式を求めることができる。その場合、得られた相関係数と回帰係数との積の大きさを影響度の高さとすることもできる。
上記により求められた影響度の高い内的要因を、影響要因として抽出する(S514)。抽出する影響要因の数は問わず、前記影響度の大きい順に選出すればよい。抽出された影響要因は、次工程に送られる。
【0056】
以上によって、被検者の測定期間T0に対応する参照期間T0Pにおいて、メラニン合成能力が被検者に近い参照人物が抽出され、その参照人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力に影響の大きかった内的要因が影響要因として抽出されることとなる。この影響要因は、被検者の今後のメラニン量の変動に影響を及ぼす可能性が高いと評価することができる。したがって、本美容アドバイス方法の使用者は、出力された影響要因と被検者の内的要因スコアとに基づいて、被検者に対して今後のメラニン量の増加を抑制するために最適な美容アドバイスを行うことが可能になる。
【0057】
(メラニン量予測工程)
前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された参照人物のうち、将来参照期間T1Pにおける内的要因が、前記被検者の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、その人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の変化に基づいて、被検者の将来期間T1におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含んで構成することができる。
【0058】
図13は、将来予測工程におけるメラニン量予測処理S52の例を示している。先ず、顧客情報データベース62から、被検者の測定期間T0における内的要因スコアを取得する(S521)。また、顧客情報データベース62から、全ての参照人物について、将来参照期間T1Pにおける内的要因スコアを取得する(S522)。そして、取得した被検者の内的要因スコアと各参照人物の内的要因スコアとの類似度を評価し、類似度が高い人物を抽出する(S523)。
前記「類似度」は、被検者の内的要因(内的要因スコア)と参照人物の内的要因(内的要因スコア)との類似性を評価し得る数値である限り、特に限定されない。例えば、図14は、被検者の内的要因スコアと前記抽出された人物の内的要因スコアとの距離を求める式を示す。この式では、内的要因毎の、被検者の内的要因スコアSc、抽出された参照人物の内的要因スコアSi、及びメラニン合成能力との相関係数Rから、内的要因間距離Diを求めている。この内的要因間距離Diを「類似度」とし、内的要因間距離Diが小さいほど類似度が高いと評価することができる。
上記で抽出する人物の数は特に問わず、類似度が高い順に所定数の人物を選択することができる。本例では、最も類似度が高い1人を抽出するものとする。
【0059】
次に、前記ステップS523によって抽出された、被検者と内的要因スコアの類似度が最も高かった参照人物について、顧客情報データベース62及び気象データベース61を参照して、将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pを算出する(S524)。メラニン合成能力M1Pは、前記メラニン合成能力演算処理を適用して求めることができる。
そして、算出された参照人物のメラニン合成能力M1P、被検者の現在のメラニン量mB、及び将来期間T1における紫外線照射量の推定値を用いて、被検者の将来期間T1経過時におけるメラニン量mCの予測値を算出することができる(S525)。ここで、将来期間T1における紫外線照射量の推定値は、例えば、気象データベース61に蓄積されている、被検者の居住地域における過去(将来参照期間T1P)の紫外線照射量の平均値等とすることができる。
【0060】
(アドバイス作成工程)
図15は、前記将来予測工程におけるアドバイス作成処理S53の例を示している。先ず、顧客情報データベース62から、被検者の測定期間T0における内的要因スコアを取得する(S531)。そして、前記影響要因抽出処理S51により抽出された影響要因と、被検者の内的要因スコアと、に基づいて、被検者に対して今後のメラニン量を抑制するための美容アドバイスを作成する(S532)。
美容アドバイスとして、例えば、アドバイス文言とその重要度を挙げることができる。前記影響要因の順位とそれに対応する被検者の内的要因スコアの値とに基づいて、重要度を算定し、予め用意されている文言を選択して組み合わせる等の方法によってアドバイス文言を作成することができる。
美容アドバイスを作成する際には、影響要因のうち、被検者の内的要因で改善余地のない要因を除き、改善要因とすることができる。メラニン量を抑制するために最善のスコアである被検者の内的要因については、それ以上に改善することができないからである。この改善要因と被検者の内的要因スコアの値とに基づいて、美容アドバイスを作成するようにすることができる。
【0061】
(結果表示処理)
前記各工程による処理結果(角質細胞画像、メラニン量、メラニン合成能力、影響要因、メラニン量予測値、美容アドバイス等の情報)は、結果表示処理部56に送信して出力するように構成することができる。結果表示処理部56では、各工程による出力情報を処理し、出力データを出力装置4へと送信する。出力データの形式は任意であり、例えば、HTML、XML、画像、動画、音声ファイル等が可能である。
図16は、出力装置4がモニターを有する場合の結果表示画面の一例である。この結果表示画面には、顧客(被検者)の3回のメラニン量測定結果とその角質細胞画像、メラニン量の未来予測、美容アドバイスが表示されている。本美容アドバイス方法は、以上に説明した工程を変形したり、対象期間の長さ等を種々設定したりすることによって、3ヶ月後、6ヶ月後など任意の期間でのメラニン量変動の予測を行うことができる。
【0062】
履歴検索処理部57は、例えば、出力装置4から指令を受けた場合、指令された日付の情報をデータベースより検索して処理し、出力データとして出力装置4へ送信する。
【0063】
3.メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイスシステムの別の構成例
図17は、メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイスシステムの別の構成を説明するためのブロック図である。この美容アドバイスシステム10’は、通信ネットワーク7を介して接続されており、前記顧客情報データベース62が、顧客情報データベース621と影響係数データベース622とに分けられて構成されている。また、影響係数演算処理部53’、適合情報検索処理部54’、及び将来予測処理部55’が、図1に示した美容アドバイスシステム10の各部から変形されている。その他の構成は、図1と同様である。以下では、美容アドバイスシステム10’が前記美容アドバイスシステム10と異なる点についてのみ説明する。
【0064】
顧客情報データベース621は、過去及び新規の顧客の情報に関するデータが記録されている。前記顧客の情報に関するデータには、図17中に示されているように、顧客毎に、角質細胞採取又は撮影年月日、該角質細胞のメラニン量、顧客の状態(例えば、年齢、生活地域、肌質、紫外線に対する意識(紫外線対策)、月経周期、スキンケア、生活習慣及びストレスレベル等)を含むことができる。
【0065】
影響係数データベース622には、過去の複数人の通年データ及びメラニン量の変動への影響係数が記録されている。すなわち、図17中に示されているように、系列毎に、その系列に属する人物の基本情報(年齢、肌質、紫外線対策等)、通年時系列情報(年月日、スキンケア、月経周期、生活習慣、ストレスレベル等)、及びメラニン変化量への影響係数(紫外線照射量影響係数、スキンケア影響係数、月経周期影響係数、生活習慣影響係数、ストレスレベル影響係数等)が蓄積して記録されている。
【0066】
前記「影響係数」とは、各個人のメラニン量に対して外的及び内的要因(複数の項目)が及ぼす影響の度合を算出し数値化したものであり、外的及び内的要因の項目毎に値が存在する。すなわち、外的及び内的要因に対して顧客個人のメラニン量がどのように変動するかを示す係数である。例えば、外的要因に関する影響係数として、前記メラニン合成能力が挙げられる。また、内的要因に関する影響係数は、前記影響度に相当する係数とすることができる。すなわち、影響係数は、外的及び内的要因の各項目が顧客個人のメラニン合成に対して及ぼす影響の度合を示す値である。
前記「系列」とは、外的及び内的要因の1又は2以上の項目について、又は、前記影響係数の1又は2以上について、類似する人物のグループをいう。
【0067】
前記影響係数演算処理部53’では、同一顧客による角質採取又は撮影年月日が異なる2つ以上のメラニン量データを顧客情報データベース621から選出し、それらメラニン量データから一定期間のメラニン変化量を求め、該一定期間の紫外線照射量変化を気象データベース61から選出し、該メラニン変化量と紫外線照射量変化の比から顧客の紫外線照射量影響係数(メラニン合成能力)を求め、適合情報検索処理部54’に演算結果として送信する。
【0068】
前記適合情報検索処理部54’では、影響係数演算処理部53’から送信された顧客(被検者)の紫外線照射量影響係数と、顧客情報データベース621から選出した顧客に関する情報(例えば、年齢、肌質、紫外線に対する意識、スキンケア、生活習慣及びストレスレベル等)から算出された影響係数と、が最も類似する系列を影響係数データベース622の系列群から検索し、将来予測処理部55’に検索結果として送信する。
【0069】
前記将来予測処理部55’では、適合情報検索処理部54’から送信された系列のメラニン変化量への各種影響係数と、データベース61に蓄積された紫外線照射量のデータ、及びデータベース621、622に蓄積された顧客に関する情報の各項目のデータ等を要素として、複数の将来のメラニン量変動(パターン)がシミュレーションできる。このシミュレーションの際には、例えば、下記数式を用いて将来のメラニン量を求め、その変動を予測する。予測結果は結果表示処理部26に送信する。
結果表示処理部26は、前記美容アドバイスシステム10と同様、メラニン量の予測や美容アドバイスを、結果表示画面(図16参照)として出力装置4に表示することができる。
【0070】
(数式) Y=a1X1+a2X2+a3X3+・・・anXn+b
【0071】
なお、Yは特定時期(現在及び将来)のメラニン量予測値、Xは顧客データベース621に蓄積された顧客の外的及び/又は内的要因に関する情報を評価した値、aは影響係数データベース622より導き出された顧客のX(外的及び/又は内的要因に関する情報を評価した値)についての影響係数である。bは顧客により異なる、メラニン量の基準となる定数である。
【0072】
以上の構成により、美容アドバイスシステム10’は、
(1)同一の単一個人におけるメラニン量に関する情報、並びにメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因及び/又は内的要因に関する情報を各個人別に複数人分蓄積して作製したデータベースを利用し、
(2)そのデータベースから、自己と類似した他者(単一個人)のデータのみを抽出することができ、
(3)更に、前記抽出した他者のデータから自己のメラニン合成能力に対して最も影響を及ぼす外的要因及び/又は内的要因を導き出すことができる、美容アドバイスシステムとすることができる。また、メラニン合成能力の評価方法は、
(4)時期が異なる少なくとも2回以上のメラニン量の測定からメラニン合成の変化量を求め、その変化量から、メラニン合成能力を算出するメラニン合成能力の評価方法とすることができる。また、上記(1)〜(3)において、
(5)外的要因は、個人の生活する地域の気象とすることができ、
(6)内的要因は、個人の年齢、肌質、月経周期、生活習慣、スキンケア、紫外線に対する意識及びストレスレベルから選ばれる1種又は2種以上とすることができる。
【0073】
そして、美容アドバイスシステム10’によれば、将来のメラニン量の経時変化を表示等できるだけでなく、個人のメラニン合成能力を基に、仮の個人の状態データ及び気象データを設定することで、1年後、5年後、10年後のメラニン量の経時変化や、スキンケア方法の違いや、生活習慣の違い等による様々なメラニン量の経時変化パターンをシミュレーションし表示することができる。これにより、理想のメラニン量に近づける或いは現在のメラニン量を維持するためのスキンケア及び生活習慣をアドバイスするシステムとすることができる。また、個人のメラニン合成能力を求めるという特徴から、新たにメラニン量を測定しなくても、日々のスキンケアや生活習慣、そして気象等のデータを記録(入力)することで、記録時の肌のメラニン量を予測することができ、リアルタイムに理想のメラニン量に向けた日々のスキンケア、生活習慣等のアドバイスを行うことができる。
【0074】
4.実施例
以下では、前記メラニン合成能力評価システム1及び前記美容アドバイスシステム10(図1参照)によって行った、メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法の実施例を説明する。
【0075】
以下の工程において、被検者の測定期間・将来期間に対応する参照期間・将来参照期間のデータ処理については、前述のとおり適宜推定を行っている。図18は、被検者の測定期間T0が5月1日〜6月1日であり、顧客情報データベース62に記録されている人物の前年以前のメラニン測定日がそれと異なっている場合の処理例を示している。同図(a)は、その人物の先のメラニン測定日が5月1日より前、且つ後のメラニン測定日が6月1日より後であった場合であり、図示するように先後の測定日のメラニン量から内挿して、5月1日〜6月1日(参照期間T0P)におけるその人物のメラニン量を推定し、その推定値に基づいて参照期間T0Pにおける人物の平均メラニン変化量及びメラニン合成能力を推定することができる。また、同図(b)のように3回の測定値が参照期間T0Pを挟んで存在する場合や、参照期間T0P内に複数回の測定値が存在する場合も、適宜に参照期間T0Pにおける人物のメラニン量を推定すればよい。将来参照期間T1Pについてのデータ処理も同様である。
また、図19は、被検者についての将来期間T1が6月1日〜9月1日であり、顧客情報データベース62に記録されている人物の前年以前の内的要因作成日がそれと異なっている場合の処理例を示している。同図は、その人物の先の内的要因スコア作成日が9月1日より前で且つ後の内的要因スコア作成日が9月1日より後である2つの場合を示している。(a)はスコアの数値は同じであり、(b)はスコアに変化があった場合である。いずれであっても、図示するように先後に作成されたスコアを期間内の日数によって按分する等の方法により、6月1日〜9月1日(将来参照期間T1P)におけるその人物の内的要因スコア(平均内的要因スコア)を推定することができる。その他の場合についても適宜に将来参照期間T1Pにおける人物の内的要因スコアを推定すればよいし、参照期間T0Pについての内的要因スコアの処理も同様である。
【0076】
(メラニン合成能力の算出)
図20は、1人の人物についてメラニン合成能力を算出した例を示している。東京に居住する人物(被検者1)のメラニン量を2回測定したところ、同図(a)に示すように、2010年5月1日のメラニン量は3.59%、同年6月1日のメラニン量は3.86%であった。東京と緯度が近いつくばの平均紫外線照射量は、同図(b)に示すように、同年5月が19.88kJ/m2/day、6月が23.64kJ/m2/dayであった。これらから、同図(c)に示すように、測定期間T0(5月1日から6月1日までの32日間)において、平均メラニン変化量は84.38(10-4%/day)、平均紫外線照射量は20.0kJ/m2/dayとなるため、被検者1のメラニン合成能力M0は4.22(10-4%・m2/kJ)と算出された。なお、平均メラニン変化量は、測定期間T0における1日当りのメラニン変化量を104倍した値としている(以下、同様)。
別の人物(被検者2)について、上記と同じ測定期間T0にメラニン量を測定したところ、平均メラニン変化量は37.50(10-4%/day)であり、メラニン合成能力は1.88(10-4%・m2/kJ)と算出された。
【0077】
(参照人物の抽出)
適合情報検索工程によるデータ処理(参照人物の抽出)結果の例を挙げる。図21は、顧客情報データベース62に蓄積されている人物データのうち、参照期間T0P(前年以前の5月1日〜6月1日)においてメラニン量が測定されている人物を検索し、抽出された人物148人(番号1〜148)毎に、当該期間におけるメラニン合成能力M0P等を算出した結果である。メラニン合成能力M0Pは、参照期間T0Pにおける平均紫外線照射量と平均メラニン変化量から算出される。例えば、札幌に居住している人物番号2の人物については、2002年にメラニン量が測定されており、平均メラニン変化量は89.34(10-4%/day)であった。一方、気象データベース61を参照すると、当該期間における札幌の平均紫外線照射量は20.46kJ/m2/dayであった。これらから、この人物の当該参照期間(2002年5月1日〜6月1日)におけるメラニン合成能力M0Pは、4.37(10-4%・m2/kJ)と算出される。この人物のメラニン合成能力M0Pと前記被検者1のメラニン合成能力M0(4.22(10-4%・m2/kJ))との差(絶対値)は、図の最右欄に示すように0.15(10-4%・m2/kJ)となる。上記差が小さい順に、被検者のメラニン合成能力と近い人物として、50名の参照人物を抽出した(図中*印)。尚、本図ではデータの1部のみを表示している(以下において同様)。
【0078】
(影響要因の抽出)
将来予測工程によるデータ処理結果の例を挙げる。図22は、被検者1の将来期間T1を6月1日〜9月1日として、前記抽出された50人の参照人物について、将来参照期間T1P(前年以前の6月1日〜9月1日)におけるメラニン合成能力M1P等を算出した結果である。人物毎の将来参照期間T1Pにおけるメラニン量は顧客情報データベース62に蓄積されており、当該将来参照期間における平均紫外線照射量は気象データベース61を参照して導き出すことができる。例えば、札幌に居住している人物番号2の人物については2002年に継続的にメラニン量が測定されており、当該将来参照期間における平均メラニン変化量は12.74(10-4%/day)であった。一方、当該将来参照期間における札幌の平均紫外線照射量は19.87kJ/m2/dayであった。これらから、この人物の当該将来参照期間(2002年6月1日〜9月1日)におけるメラニン合成能力M1Pは、−0.64(10-4%・m2/kJ)と算出される。
【0079】
また、図23は、前記抽出された50人の参照人物について、将来参照期間T1Pにおける平均内的要因スコアを示した表である。人物毎の将来参照期間T1Pにおける平均内的要因スコアは、顧客情報データベース62に蓄積されている内的要因スコアから取得し又は推定することができる。例えば、人物番号2の人物については、2002年の将来参照期間における内的要因「ダブル洗顔」の平均内的要因スコアは2.00であった。
【0080】
図24(a)は、前記参照人物50人について、将来参照期間T1Pにおける各平均内的要因スコア(図23参照)とメラニン合成能力M1P(図22参照)との相関係数及び回帰係数を求めた結果である。本例では、相関係数と回帰係数との積(E)を、前記影響度として用いることとした。ただし、相関係数が有意と判断されない内的要因(本例では、相関係数<0.235の内的要因)は除くものとした。そして、上記影響度が大きい順に内的要因を影響要因として抽出すると、同図(b)のようになった。これにより、影響要因は、影響度の高い順に「ダブル洗顔」、「ストレスレベル」、「喫煙」、「朝のミルクローション」等であると評価された。
【0081】
(美容アドバイスの作成)
図24(b)の右欄は、前記影響要因に対応する被検者1の測定期間T0における内的要因スコアを示している。この被検者1の内的要因スコアから、被検者1は「ダブル洗顔」がほとんどなく、「ストレス」を大いに感じていて、「喫煙」は毎日であり、「朝のミルクローション」をほぼ毎日使用している(図8参照)。したがって、被検者1の「朝のミルクローション」については、改善する余地がないといえる。「飲酒」や「夜のミルクローション」についても同様である。本例では、このように改善余地がない内的要因(同図(b)*印)は、被検者1のメラニン量抑制のための改善要因から除くこととした。
そして、被検者1に対する美容アドバイスとして、前記改善要因の項目について、前記影響度の順位及び被検者1の内的要因スコアに基づいて、図25に示すようなアドバイスの文言及び重要度(「おススメ度」)が作成された。
【0082】
図26は、以上と同様の処理により、別の前記被検者2(メラニン合成能力1.88(10-4%・m2/kJ))について、影響度が大きい順に6つの内的要因を影響要因として抽出した結果を示す。被検者1と被検者2とはメラニン合成能力に差異があるため、選択される参照人物が異なることとなり、それによって抽出される影響要因も異なってくる。被検者2の場合の改善要因は、重要度の順に「朝のマッサージ」、「帽子」、「日傘」、「夜の美白用サプリメント」となった。このように、人物毎に、最適な美容アドバイスを作成することができる。
【0083】
(メラニン量の予測)
前記参照人物50人から、将来参照期間T1P(前年以前の6月1日〜9月1日)における内的要因が、被検者1の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、その人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の変化に基づいて被検者1の将来期間T1(今年の6月1日〜9月1日)におけるメラニン量を予測した例について説明する。
先ず、被検者1と内的要因の類似度が高い人物を、図14に示した内的要因間距離Diを求めることによって抽出することとした。参照人物iの将来参照期間における内的要因スコアSiは、図23に挙げられている。また、参照人物50人についての将来参照期間における各平均内的要因スコアとメラニン合成能力M1Pとの相関係数は図24に示されており、これを内的要因間距離Diを算出するための内的要因の相関係数Rとした。
【0084】
図27(a)は、被検者1の測定期間T0における内的要因スコアScを示している。このSc、上記Si及び上記Rを用いて算出された内的要因間距離Diは、同図(b)に示すとおりであった。本例では、内的要因間距離Diの最も小さい人物(人物番号89)を選択し、その人物の将来参照期間TiPにおけるメラニン合成能力M1Pに基づいて、被検者1の将来期間T0におけるメラニン量を予測することとした。被検者1の将来期間におけるメラニン量の変化は、番号89の人物の将来参照期間におけるメラニン量の変化傾向に近いものと考えることができるからである。
【0085】
人物番号89の人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pは、−0.05(10-4%・m2/kJ)と算出されている(図22参照)。現在(6月1日)の被検者1のメラニン量mBは、3.86%である(図20(a)参照)。図28(a)は、気象データベース61に蓄積されている紫外線照射量データから得られる、つくばにおける過去(1994〜2008年)の月毎の平均紫外線照射量を示している。この月毎の平均紫外線照射量から、将来期間T1における平均紫外線照射量u1Pを推定することとした。そうすると、被検者1の将来期間T1経過時(9月1日)におけるメラニン量MCは、3.85%と予測することができる(MC=MB+m1P×u1P×(将来期間T1の日数)/104)。図28(b)は、被検者1のメラニン量の、5月1日及び6月1日の実測値と、9月1日の上記予測値を表したグラフである。
【0086】
尚、本発明においては、上述の実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法並びにメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムは、皮膚科、美容皮膚科、エステティックサロン、化粧品販売等において、顧客のシミや肌色に対して、現在のメラニン量やその顧客の持つメラニン合成能力を評価すると共に、その結果を基に美容におけるスキンケアや生活習慣の提案を行うことが可能な方法及びシステムとして、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1、1’;メラニン合成能力評価システム、10、10’;美容アドバイスシステム、2;画像撮影装置、3;入力装置、4;出力装置、5;情報処理装置(サーバ)、51;メラニン量測定処理部、52;顧客情報入力処理部、53;メラニン合成能力演算処理部、53’;影響係数演算処理部、54、54’;適合情報検索処理部、55、55’;将来予測処理部、551;メラニン量予測処理部、552;アドバイス作成処理部、56;結果表示処理部、57;履歴検索処理部、61;気象データベース、62、621;顧客情報データベース、622;影響係数データベース、7;通信ネットワーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法、並びにそれらを用いるメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムに関し、詳しくは、紫外線照射量及びメラニン量の変化から人物のメラニン合成能力を評価するメラニン合成能力評価方法、並びにデータベースに蓄積されたデータに基づき、人物毎に将来のメラニン量を予測し、美容アドバイスを提示することができる美容アドバイス方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容カウンセリングや医療の分野において、シミやしわ、毛穴、キメ、皮脂量、肌色等の皮膚の状態を解析し、それに応じた美容アドバイスを行うサービスがある。その場合、シミやしわ、毛穴、キメ等の評価は、それぞれに対して異なる測定や解析の方法によって行われている。
例えば、シミの評価に関しては、その原因となる過剰なメラニン量を測定し解析することにより、シミのでき具合もしくはでき易さを評価している。このとき、メラニン量の解析には、細胞レベルの解析や皮膚レベルの解析等がある。細胞レベルの解析では、角質標本を作製し、1細胞当りのメラニン量とメラニン分布の不均一性の2面から測定を行うことによって、シミの評価が行われている。また、皮膚レベルの解析では、マイクロスコープ等を用いて皮膚の表面状態を撮影し、その画像を色要素別に解析することによってメラニン量を測定し、シミの評価が行われている。
【0003】
シミの評価では、上記のような細胞レベル又は皮膚レベル等でのメラニン量の評価結果を蓄積することによって、疫学的な集団のデータベースが作成されている。このデータベースを使用して、年代別、地域別など任意のグループについて、メラニン量やシミの平均値が求められる。そして、その平均値と新たに測定した個人のデータとを比較することによって、その個人の現在のシミの状態を評価するシステムが開発されている(特許文献1及び2を参照)。このような技術は、いずれも測定時のメラニン量を評価する場合には適しているが、あくまでも平均値を基準とした評価であり、その個人の体質や通常のメラニン量を考慮したものではないことから、個人毎にシミの状態を評価し、その状態に対する今後の美容アドバイスを行うためには不十分であった。
【0004】
これに対して近年では、シミの状態が、季節等によって異なる紫外線量や乾燥等の外部要因、ホルモンバランス(月経周期等)や加齢等の内部要因によって影響を受けることが明らかにされてきている。このため、これらの要因もデータベースに組み込むことにより、それぞれの要因を考慮し、さらに詳細なシミの現状とともに、季節や生活習慣等の要因に対してアドバイスを行うシステムが考案されている(特許文献3〜5を参照)。このような技術により、シミの状態を評価し、今後の生活パターンや季節の変化に対して美容アドバイスを具体的に行うこともできるようになってきた。
しかしながら、いずれのシステムも、これまでの疫学的なデータから得られる平均値や経験値を基に現在のシミの状態が評価されるため、相対的な評価となり、個人差が十分に考慮されないという問題があった。
【0005】
近年の研究から、人の生理状態を示す値(血圧、血糖値等)には個人差が存在し、その個人の状態によっても変動することが分かってきている。例えば、血圧には正常範囲が示されているものの、血圧は体調や測定する時間帯等で変動し、その個人の通常の値を評価するには1回の測定のみでは不十分と考えられている。メラニン量も、個人により又時期により大きく異なる値の1つである。なぜなら、メラニンの合成には、メラニン合成が開始される初期、最もメラニン合成が盛んな時期、そしてメラニン合成が終息する時期等の段階があり、メラニン合成の状態は日々変化しているからである(非特許文献1及び2を参照)。また、その変化の度合いやメラニン合成能力には個人差があるからである。このため、従来行われているように、メラニン量の1回の測定、平均値を基準とする比較だけでは、その時点でのメラニン量は評価できても、メラニン合成の段階や今後のメラニン合成の進行を見極めることは困難であった。また、個人毎にメラニン合成能力を判断することも困難であった。このような状況から、個人のメラニン合成について、より効果的で将来的な評価を可能にし、その個人に最適な美容アドバイスを行う方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−199727号公報
【特許文献2】特開2007−133518号公報
【特許文献3】特開2001−353129号公報
【特許文献4】特開2006−103051号公報
【特許文献5】特開2007−130104号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル、北原隆他、9、p9−15、2000
【非特許文献2】フレグランスジャーナル、正木仁他、9、p16−23、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のとおり、個人の皮膚の状態(メラニンの合成)は日々変化しており、その変化の度合いやメラニン合成能力も人により差異が大きい。そのため、1回のメラニン量の測定のみで、個人のメラニン合成能力やメラニン合成の段階を見極めることは困難である。特に、メラニン合成に関しては、様々な外的要因(気候、紫外線照射量、季節等)や内的要因(月経周期、スキンケア、生活習慣、ストレス等)に反応してメラニン合成が誘起され、その後メラニン合成が盛んな時期を経て、メラニン合成が終息する時期へと移行する。また、各個人によってメラニン合成能力は異なり、実際にメラニンが合成される量は人により様々である。
例えば、一般的に春から夏に向けてメラニンの合成量が増えることが知られているが、その増える度合(具体的には、メラニン産出の能力や速度、メラニンの蓄積量等による。)は、外的要因が同程度の地域で生活する同世代の人においても、個人によって異なる。その原因には、個人により、スキンケアや生活習慣が異なること、メラニン合成能力に差異があることが考えられる。このため、メラニン量を1回測定する従来の方法では、その個人の現在のメラニン量を知ることはできても、メラニン合成の段階を判断したり今後のメラニン量の変化を精度よく予測したりすることは困難であるという問題があった。また、個人のメラニン合成能力を評価することもできなかった。
【0009】
また、近年の紫外線防御意識や美白意識の高まりにも関わらず、個人のメラニン合成能力を評価する方法がなかったため、個人のメラニン合成能力に合わせた日々のスキンケア及び生活習慣を含む美容アドバイスを行うことができなかった。
【0010】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、様々な外的要因及び内的要因によって誘起された個人のメラニン合成が現在どの段階にあるかを知ることができ、その個人のメラニン合成能力を評価することができ、更にその個人のメラニン合成能力に合わせたスキンケア及び生活習慣を含む美容アドバイスを行うと共に将来のメラニン量の変動を予測することが可能な、メラニン合成能力評価及び美容アドバイスの方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討し、個人のメラニン量の変動を見極め、個人のメラニン合成能力とメラニン合成の段階を評価することができるメラニン合成能力評価方法を見出した。また、個人のメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因及び/又は内的要因を精度よく判断し、各個人のメラニン合成能力とメラニン合成の段階に合わせた効果的な美容アドバイスを行い、将来のメラニン量を予測することができる美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステムを開発した。
【0012】
本発明は、以下のとおりである。
1.人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、該メラニン量を人物データとして顧客情報データベースに蓄積して記憶するメラニン量測定工程と、
前記メラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した日の間を測定期間として、該測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、該測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、
を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価方法。
2.上記1.記載のメラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法であって、
人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を、人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する顧客情報入力工程と、
被検者についてメラニン量を測定した前記測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも該参照期間における前記メラニン合成能力が前記被検者の前記メラニン合成能力と近い1又は2以上の人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程と、
前記被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物について、該将来参照期間における前記メラニン合成能力に影響度が高かった前記内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程と、
を備えることを特徴とする美容アドバイス方法。
3.前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物のうち、前記将来参照期間における前記内的要因が、前記被検者の前記内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の該将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、前記被検者の前記将来期間におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含む前記2.記載の美容アドバイス方法。
4.前記将来予測工程は、抽出した前記影響要因と前記被検者の前記内的要因とに基づいて、前記被検者に対するメラニン量抑制のためのアドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む前記2.又は3.に記載の美容アドバイス方法。
5.前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含み、
前記顧客情報入力工程は、前記内的要因毎の程度を数値化した内的要因スコアを作成して、該内的要因スコアを人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する前記2.乃至4.のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
6.前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記人物の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する前記2.乃至5.のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
7.前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記被検者の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する前記1.記載のメラニン合成能力評価方法。
8.前記1.又は7.に記載のメラニン合成能力評価方法を用いるメラニン合成能力評価システムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価システム。
9.前記2.乃至6.のいずれかに記載の美容アドバイス方法を用いる美容アドバイスシステムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備えることを特徴とする美容アドバイスシステム。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメラニン合成能力評価方法によれば、人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、そのメラニン量を人物データとして顧客情報データベースに蓄積して記憶するメラニン量測定工程と、そのメラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した日の間を測定期間として、該測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、該測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、を備えるため、その測定時期及び人物の生活地域に関わらず、人物毎に、精度よくメラニン合成能力を知ることができ、メラニン合成の段階を判断することができる。
【0014】
上記メラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法によれば、人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する顧客情報入力工程を備えるため、顧客情報データベースには、人物毎に、内的要因と、前記メラニン量測定工程により測定されたメラニン量とが、人物データとして経時的に記録される。また、被検者についてメラニン量を測定した測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも参照期間におけるメラニン合成能力が被検者のメラニン合成能力と近い人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程を備えるため、前年以前の同時期において、被検者のメラニン合成能力に近似するメラニン合成能力であった参照人物を1人又は複数人(例えば、数十人〜数百人)抽出することができる。そして、被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、顧客情報データベースに記憶されている人物データと気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、参照人物について、将来参照期間におけるメラニン合成能力に影響度が高かった内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程を備えるため、所定の将来期間(例えば、今後の3ヶ月間)に対応する過去の期間において、参照人物のメラニン量変動に影響が大きかった内的要因を、影響要因として統計的に抽出することができる。これによって、被検者の今後のメラニン量変動に影響が大きいと評価される内的要因に基づいて、スキンケアや生活習慣を含む適切な美容アドバイスを精度よく行うことが可能になる。
また、本美容アドバイス方法を適用すれば、個人の将来のメラニン量の経時変化を提示することが可能になるだけでなく、個人のメラニン合成能力を基に、その内的要因や気象データを仮定することで、1年後、5年後、10年後等のメラニン量の経時変化を予測することができ、スキンケア方法や生活習慣の違い等による様々なメラニン量の経時変化パターンをシミュレーションすることができる。これにより、理想のメラニン量に近づけるための、又は現在のメラニン量を維持するためのスキンケアや生活習慣をアドバイスすることが可能になる。また、個人のメラニン合成能力を求めるという特徴から、新たにメラニン量を測定しなくても、日々のスキンケアや生活習慣、そして気象等のデータを記録(入力)することで、記録時の肌のメラニン量を推定したり、リアルタイムに理想のメラニン量に向けた日々のスキンケア、生活習慣等のアドバイスを行ったりすることが可能になる。
【0015】
前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された参照人物のうち、前記将来参照期間における内的要因が、前記被検者の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、被検者の将来期間におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含む場合には、今後の時期に対応し、統計的に被検者の内的要因に最も近い参照人物のメラニン量の変動データに基づいて、被検者のメラニン量の変動が予測される。これにより、メラニン合成能力が被検者と近く、且つ生活習慣やスキンケア等が被検者に似ている人物のデータに基づいて、被検者の今後のメラニン量の変動を精度よく予測することができる。
前記将来予測工程は、抽出した前記影響要因と前記被検者の内的要因とに基づいて、被検者に対するメラニン量抑制のためのアドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む場合には、被検者の今後のメラニン量変動に影響が大きいと予測される内的要因に基づいて、スキンケアや生活習慣を含む適切なアドバイスを自動的に生成することができ、より確実且つ迅速に美容アドバイスを行うことができる。
前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含み、前記顧客情報入力工程は、内的要因毎の程度を数値化した内的要因スコアを作成して、人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する場合には、一般にメラニン量変動に影響が大きい内的要因である喫煙頻度等の生活習慣、紫外線対策(例えば、ファンデーション、日焼け止め、帽子、日傘等)の頻度、スキンケア(例えば、洗顔、ミルクローション、クリーム、マッサージ、美白用化粧品、美白用サプリメント、化粧を落とさずに就寝等)の頻度、ストレスレベル等を適宜選択し、その要因毎の程度によりメラニン量を増加又は抑制する順で数値化した内的要因スコアを作成することができるため、美容アドバイス方法の適用を容易にし、分析処理を精度よく行うことができる。
前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、前記メラニン合成能力演算工程は、気象データベースに記憶されている地域毎の紫外線照射量に基づき、人物の居住地域に応じた紫外線照射量によりメラニン合成能力を算出する場合には、人物の生活地域の気象に応じて、よりきめ細かく精度のよい分析処理や美容アドバイスを行うことができる。
【0016】
前記メラニン合成能力評価方法であって、前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、前記メラニン合成能力演算工程は、気象データベースに記憶されている地域毎の紫外線照射量に基づき、人物の居住地域に応じた紫外線照射量によりメラニン合成能力を算出する場合には、人物の生活地域の気象に応じて、よりきめ細かく且つ精度よく、メラニン合成能力やメラニン合成段階の評価を行うことができる。
【0017】
いずれかの前記メラニン合成能力評価方法を用いるメラニン合成能力評価システムであって、前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、を備えるメラニン合成能力評価システムによれば、前記メラニン合成能力評価方法を効果的に使用して、人物毎のメラニン測定時期や生活地域等に応じて精度よくメラニン合成能力を知ることができ、メラニン合成の段階を判断することが可能になる。
【0018】
いずれかの前記美容アドバイス方法を用いる美容アドバイスシステムであって、前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備える美容アドバイスシステムによれば、前記美容アドバイス方法を効果的に用いて、人物毎に、今後のスキンケアや生活習慣を含む適切な美容アドバイスを迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本実施形態に係るメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】メラニン合成能力演算工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図3】時間(年月日)によるメラニン量の変化と日毎の紫外線照射量の変動を説明するためのグラフである。
【図4】ある1年間の各地域における月毎の日積算UV−B量(紫外線照射量)を表すグラフである。
【図5】図4に示した年の3月の紫外線照射量と地域毎の緯度との関係を表すグラフである。
【図6】測定期間、参照期間、将来期間及び将来参照期間の関係を説明するための図である。
【図7】顧客の現在の状態(内的要因)を入力するために表示される入力画面の例を表す図である。
【図8】内的要因及びその数値化(内的要因スコア)の例を示す表である。
【図9】美容アドバイスシステムにおける主要な処理の例を示すフローチャートである。
【図10】適合情報検索工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図11】将来予測工程における影響要因抽出処理の例を示すフローチャートである。
【図12】内的要因とメラニン合成能力との関連性の例を示す散布図である。
【図13】メラニン量予測工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図14】内的要因の類似度を評価するための数式の例である。
【図15】アドバイス作成工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図16】美容アドバイスシステムの結果表示画面の例を表す図である。
【図17】美容アドバイスシステムの別の構成を示すブロック図である。
【図18】所定期間に対応するメラニン量の推定方法を説明するための図である。
【図19】所定期間に対応する内的要因スコアの推定方法を説明するための図である。
【図20】メラニン合成能力の算出例を説明するための表である。
【図21】顧客情報データベースに蓄積されている人物データから、参照期間におけるデータが記録されている人物についてメラニン合成能力を算出した例を示す表である。
【図22】参照人物について将来参照期間におけるメラニン合成能力を算出した例を示す表である。
【図23】参照人物の将来参照期間における内的要因の例を示す表である。
【図24】参照人物の将来参照期間における内的要因とメラニン合成能力との関連性を算出し、影響度の高い内的要因を影響要因として抽出した例を示す表である。
【図25】作成された美容アドバイスの例を示す表である。
【図26】別の被検者に対して抽出した影響要因の例を示す表である。
【図27】被検者の内的要因、及び被検者と参照人物との内的要因の類似度(距離)を求めた例を示す表である。
【図28】(a)被検者の居住地域の紫外線照射量を示す表、及び(b)被検者のメラニン量変動を予測した例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜28を参照しながら、本発明のメラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法、並びにそれらを用いるメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムを詳しく説明する。ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものである。
【0021】
本発明の方法及びシステムの実施形態においては、顧客(人物)毎のメラニン合成能力を評価し、それを基に美容アドバイスを作成するために、人物毎のメラニン量測定データと共に、メラニンの合成に影響を及ぼす外的要因及び内的要因についての情報を蓄積したデータベースを使用している。
このデータベースには、アンケート等により、日焼け時の肌の反応性が異なる人物を多数(例えば、100人以上)選別し、その人物毎に、長期的且つ経時的に特定部位の角質標本を採取し、その角質標本からメラニン量を測定すると共に、各人物のメラニン合成能力に対して影響を及ぼすと考えられる外的要因や内的要因に関する情報を調査し、得られたデータを蓄積している。
【0022】
すなわち、紫外線に対して異なる反応性を示す人物の通年のメラニン量の変動と、それに対応した外的要因及び内的要因に関するデータを収集し、データベースを作成した。このデータベースには、メラニン量の段階的な変動と、それに対応した外的要因及び内的要因の情報が、同一人物における通年の経時的なデータとして、平均値でなく個人単位で蓄積されている。本発明では、このデータベースを利用することで、各個人のメラニン合成能力やメラニン合成の段階を評価し、またメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因及び内的要因を導き出す。
【0023】
前記「外的要因」とは、人物のメラニン合成に影響を及ぼす気象(例えば、気温、湿度、天気、紫外線照射量)等を意図している。
前記「内的要因」とは、メラニン合成に影響を及ぼす人物の状態(例えば、年齢、生活地域、肌質、紫外線に対する意識(紫外線対策)、スキンケア、月経周期、生活習慣、ストレスレベル)等を意図している。
本発明において、外的要因としてどの事項を用いるか、また内的要因としてどの事項を用いるか、は特に限定されない。例えば、外的要因を紫外線照射量とすることができる。また、内的要因を、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含むものとすることができる。
【0024】
前記「データベース」は任意の構成とすることができ、例えば、主として外的要因に関する情報を蓄積して記憶する気象データベースと、人物のメラニン量及び主として内的要因に関する情報を蓄積して記憶する顧客情報データベースと、を備えて構成することができる。顧客情報データベースには、人物毎に関連付けて、メラニン量や内的要因に関するデータが経時的に蓄積される(人物毎のデータをまとめて「人物データ」という)。
【0025】
本発明では、1人の人物(同一の単一個人)についてメラニン量を少なくとも2回以上測定し、その間のメラニン量の変動(メラニン変動の傾き)を算出することで、その個人のメラニン合成能力を数値化する方法を見出した。
「メラニン合成能力」とは、ある期間において、人物の外的要因又は内的要因により、その人物のメラニンの合成及び排出量がどれだけ変化したかを表わす数値をいう。人物のメラニンの変動に最も大きな影響を及ぼす要因として紫外線照射量が挙げられる。以下では、主として紫外線照射量に対するメラニン合成能力を取り上げている。その場合、メラニン合成能力は、次式のように、単位紫外線照射量当りのメラニン変化量として算出することができる。
メラニン合成能力=メラニン変化量÷紫外線照射量
【0026】
さらに、1人の人物(「被検者」という。)に対して効果的な美容アドバイスを行うことができる美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステムを開発した。この美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステムは、被検者について算出したメラニン合成能力の数値を基に、前記データベースに蓄積された人物データを検索して、被検者と類似したメラニン合成能力を示す他者(「参照人物」という。)を抽出し、その他者が示したメラニン合成能力に対して影響を及ぼした外的要因及び内的要因のデータに基づいて、被検者の現在のメラニン合成の段階や将来のメラニン量の変動を予測することができると共に、被検者のメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因又は内的要因を精度よく判断し、最も効果的な美容アドバイスを行うことができる。
前記「被検者」は、通常は新たな顧客であるが、それに限られず、既に顧客情報データベースに継続的に人物データが記録されている従来の顧客のうちの1人としてもよい。
前記抽出する参照人物の数は限定されず、1人であってもよいし、複数人(例えば、数百人以上)であってもよい。
【0027】
本発明では、撮影手段と計算手段と記憶手段とを備え、被検者のメラニン合成能力を算出し、更にその被検者の将来のメラニン量の経時変化を予測し、メラニン合成の状態改善又は状態維持のために有効な方法(スキンケア、生活習慣等)を選定して美容アドバイスを提示するように構成される。そのために、少なくとも1週間間隔にて2回以上、被検者の角質細胞を採取又は撮影してメラニン量を測定すると共に、1回目の測定から2回目の測定までの期間(「測定期間」という。)における被検者の内的要因に関する情報と、過去の気象データ、並びに複数人についてのメラニン量及び内的要因に関する情報の各項目における状態の経時(通年)データを蓄積したデータベースとに基づき、当該被検者の将来のメラニン量の経時変化と、理想のメラニン量の経時変化と、理想に近づけるためのスキンケア及び生活習慣を選定する方法を提供するように構成することができる。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るメラニン合成能力評価方法を効果的に行うためのメラニン合成能力評価システム1、及び美容アドバイス方法を効果的に行うための美容アドバイスシステム10の構成を示すブロック図である。メラニン合成能力評価システム1及び美容アドバイスシステム10は、画像撮影装置2、入力装置3、出力装置4、情報処理装置(サーバ)5、気象データベース(記憶装置)61及び顧客情報データベース(記憶装置)62を備えて構成することができる。
メラニン合成能力評価システム1及び美容アドバイスシステム10の具体的な構成方法や接続方法等は特に限定されない。例えば、情報処理装置5は1台又は2台以上のコンピュータによって構成することができる。画像撮影装置2、入力装置3、出力装置4等のそれぞれの台数は問わない。気象データベース61及び顧客情報データベース62は、情報処理装置5内に備えられてもよいし、外部のデータベースを接続して利用するように構成されてもよい。また、情報処理装置5と各装置との間や、情報処理装置5と各データベースとの間等は、通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続されていてもよい。
【0029】
前記画像撮影装置2は、人物の角質細胞を撮影する装置である。角質細胞の撮影方法は、例えば、テープストリッピング法で採取された角質細胞標本を、フォンタナ・マッソン法によりメラニンを染色し、該角質細胞標本を画像撮影装置2に接続された顕微鏡で撮影するのが好ましい。その他、テープストリッピング法で採取された角質細胞標本を、蛍光色素やメラニン抗体によりメラニンを標識し、該角質細胞標本を画像撮影装置2に接続したレーザー顕微鏡を用いて撮影してもよい。また、角質細胞を採取せず、画像撮影装置2に接続した共焦点レーザー顕微鏡や2光子励起顕微鏡を用いて、プローブを顔に密着させて直接角質細胞を撮影してもよい。
【0030】
前記入力装置3は、情報処理装置5に対して情報を入力するための装置であり、入力情報に応じて、パーソナルコンピュータやキーボード、タッチパネル、スキャナ等を適宜用いることができる。
前記出力装置4は、情報処理装置5による処理結果や操作者への指示等を出力するための装置であり、出力情報に応じて、パーソナルコンピュータやモニタ、プリンタ、音声出力装置等を適宜用いることができる。
【0031】
前記情報処理装置5は、各種情報処理を行うコンピュータによって構成され、メラニン量測定処理部51、顧客情報入力処理部52、メラニン合成能力(影響係数)演算処理部53、適合情報検索処理部54、将来予測処理部55、結果表示処理部56及び履歴検索処理部57を備えている。将来予測処理部55には、メラニン量予測処理部551及びアドバイス作成処理部552を備えることができる。前記各処理部の機能は、主としてコンピュータのソフトウェアにより構成することができるが、演算回路等のハードウェアと組み合わせて構成されてもよい。
【0032】
本メラニン合成能力評価方法は、主として前記メラニン量測定処理部51によって行われるメラニン量測定工程と、主として前記メラニン合成能力演算処理部53によって行われるメラニン合成能力演算工程とを備える。本美容アドバイス方法は、更に、主として前記顧客情報入力処理部52によって行われる顧客情報入力工程と、主として前記適合情報検索処理部54により行われる適合情報検索工程と、主として前記将来予測処理部55により行われる将来予測工程と、を備える。また、将来予測工程には、主として前記メラニン量予測処理部551により行われるメラニン量予測工程と、主として前記アドバイス作成処理部552により行われるアドバイス作成工程と、を備えることができる。
【0033】
前記気象データベース61及び前記顧客情報データベース62は、記憶装置上に構成され、情報処理装置5の前記各処理部によりアクセス可能とされている。データベース(気象データベース61及び顧客情報データベース62)は、統合して1つのデータベースとして構成されてもよいし、それぞれが複数に分割して構成されてもよい。
気象データベース61には、過去の全国各地域の気象に関するデータを蓄積して記憶することができる。気象データに含まれる地域毎の紫外線照射量等は、その地域で生活する人物のメラニン量の変動に影響を及ぼす外的要因となる。
また、顧客情報データベース62には、過去及び新規の顧客に関する人物データが蓄積して記憶される。人物データには、人物毎に、少なくとも2回のメラニン量測定日(角質細胞採取又は撮影年月日)と、各測定日における該角質細胞のメラニン量と、各測定日の間の該人物の内的要因に関するデータを含むことができる。内的要因に関するデータは、内的要因毎にその程度等を数値化した内的要因スコアとして記憶することができる。
【0034】
1.メラニン合成能力評価方法及びメラニン合成能力評価システム
本メラニン合成能力評価方法は、人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、測定したメラニン量を人物データとして顧客情報データベース62に記憶するメラニン量測定工程と、メラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、を備える。
「測定期間」とは、前記のとおり対象人物のメラニン量を測定した2つの日の間をいうが、その2回目のメラニン量の測定を行った日が最近である場合には、対象人物の最近のメラニン合成能力を得ることができる。また、測定期間が過去である場合には、対象人物のその過去の期間におけるメラニン合成能力が算出されることになる。測定期間は、1週間〜数ヶ月、好ましくは1ヶ月程度とすることができる。
【0035】
(メラニン量測定工程)
画像撮影装置2により撮影された人物の角質細胞の画像は、メラニン量測定処理部51に送られる。メラニン量測定処理部51は、受信された角質細胞画像に対して、例えばセグメンテーション処理と二値化処理を行うことにより、メラニン量を測定する。
前記セグメンテーション処理とは、角質細胞の部分とそうでない部分とを区分する処理のことであり、詳しくは、画像の緑色成分ヒストグラムを複数個の正規分布でモデル化し、正規分布のパラメータにより動的に角質細胞の部分とそうでない部分とを区分する処理である。また、前記二値化処理とは、メラニンが存在する部分とそうでない部分に区分する処理であり、具体的には、セグメンテーション処理により画像の角質細胞に区分された部分を、閾値によりメラニンが存在する部分とそうでない部分とを区分している。それにより、角質細胞の部分に占めるメラニンが存在する部分の割合をメラニン量として求めることができる。
メラニン量測定工程により、1人の人物についてメラニン量は少なくとも2回(2つの日に)測定される。メラニン量測定工程は、人物(人物番号、氏名等)に関連付けて、測定したメラニン量、測定日(角質細胞の採取年月日)、角質細胞画像等を顧客情報データベース62に記録することができる。
【0036】
(メラニン合成能力演算工程)
図2は、メラニン合成能力演算工程によって行われるメラニン合成能力演算処理(S20)の流れを示している。メラニン合成能力演算処理S20では、1人の人物について2回測定されたメラニン量と、気象データベース61に記録されている紫外線照射量と、から対象人物のメラニン合成能力を算出する。
先ず、対象人物について、2つの測定日(A、B)に測定されたメラニン量データを顧客情報データベース62から取得する(S21)。例えば、図3(a)は、時間(年月日)による対象人物のメラニン量の変化を表わしている。先の測定日Aにおける対象人物のメラニン量がmAであり、後の測定日Bにはメラニン量がmBであった場合、測定日Aと測定日Bとの間(測定期間T0)におけるメラニン変化量は(mB−mA)となる。
【0037】
一方、その測定期間T0における紫外線照射量を気象データベース61から読み出し(S22)、当該期間における紫外線照射量の積算値Uを求める(S23)。例えば、図3(b)は、日毎の紫外線照射量の変動を同図(a)と同じ時間軸で表わしている。この場合、測定期間T0における日毎の紫外線照射量を積算することによって、当該期間の紫外線照射積算量Uが求められる。なお、測定期間T0に測定当日(AやB)を含めるか否かは、適宜に設定されればよい。
紫外線照射積算量Uは対象人物が受けた紫外線量とすることが好ましいので、対象人物の内的要因(日中の屋外活動時間)等によって、紫外線照射積算量Uの値が補正されてもよい。
【0038】
そして、測定期間T0におけるメラニン変化量(mB−mA)と紫外線照射積算量Uとから、単位紫外線照射量当りのメラニン量の変化率を、対象人物のメラニン合成能力M(M=(mB−mA)/U)として算出する(S24)。メラニン合成能力Mの値(メラニン量の変化の傾き)から、対象人物のメラニン合成の段階を判断することができる。
【0039】
測定期間T0における紫外線照射積算量Uを求めるために、月毎の紫外線照射量の平均値を用いてもよい。例えば、図4は、気象庁により公開されている各地域(札幌、つくば、鹿児島及び那覇)における日積算UV−B量の月平均値の例(2003年)を示したグラフである。UV−B量とは波長が280〜315nmの紫外線強度の積算値(単位kJ/m2/day)であり、この月平均の日積算UV−B量を、当該月の「1日当りの紫外線照射量」(以下、「平均紫外線照射量」という。)として用いることができる。測定期間が2以上の月にまたがる場合には、各月に属する日数と各月の平均紫外線照射量とから、当該測定期間における平均紫外線照射量及び前記紫外線照射積算量Uを求めることができる。以下で、他の期間について平均紫外線照射量を算出する場合も同様である。
また、上例において、測定期間T0における「1日当りのメラニン変化量」(以下、「平均メラニン変化量」という。)は、((mB−mA)/(測定期間の日数))となる。したがって、簡単には、メラニン合成能力Mを次式により求めてもよい。
メラニン合成能力=平均メラニン変化量÷平均紫外線照射量
【0040】
気象データベース61に地域毎の紫外線照射量を蓄積して記憶し、対象人物の居住地域(生活地域)に近い地域の紫外線照射量に基づいてメラニン合成能力を算出することが好ましい。
例えば、図5は、図4に示した年の3月の平均紫外線照射量と地域毎の緯度との関係を表したグラフである。このように、各地域の紫外線照射量は緯度が小さいほど高く、紫外線照射量と緯度とはほぼ一定の関係にあることが見出される。したがって、人物毎にメラニン合成能力を算出するためには、その人物の居住地域と緯度が最も近い地域の紫外線照射量を用いることが好ましい。また、例えば、図5中に示した回帰式を用いて、その人物の居住地域(緯度x)における平均紫外線照射量(y)を推定するようにすることもできる。
【0041】
2.美容アドバイス方法及び美容アドバイスシステム
本実施形態に係る美容アドバイス方法は、前記メラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法であって、人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を、人物データとして顧客情報データベース62に蓄積して記憶する顧客情報入力工程を備える。また、1人の被検者についてメラニン量を測定した前記測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、顧客情報データベース62に記憶されている人物データと気象データベース61に記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも該参照期間におけるメラニン合成能力が被検者のメラニン合成能力と近い、1又は2以上の人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程を備える。更に、被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、顧客情報データベース62に記憶されている人物データと気象データベース61に記憶されている紫外線照射量とに基づき、前記参照人物について、将来参照期間におけるメラニン合成能力に影響度が高かった内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程を備える。
【0042】
また、前記将来予測工程は、メラニン量予測工程を含んで構成することができる。メラニン量予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された参照人物のうち、前記将来参照期間における内的要因が、前記被検者の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、被検者の将来期間におけるメラニン量を予測する工程である。
また、前記将来予測工程は、アドバイス作成工程を含んで構成することができる。アドバイス作成工程は、将来予測工程において抽出した前記影響要因と前記被検者の内的要因とに基づいて、被検者に対するメラニン量抑制のための美容アドバイスを作成する工程である。
【0043】
本実施形態に係る美容アドバイスシステム10(図1参照)は、気象データベース61と、顧客情報データベース62と、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備えて構成することができる。
【0044】
図6は、本美容アドバイス方法において処理対象とする期間について説明するための図である。同図(a)に示す日(年月日)A及びBは、新たな人物(被検者)について角質細胞を採取した年月日(測定日)を表し、先の測定日Aと後の測定日Bとの間を「測定期間」T0とする。例えば、測定日Aが2010年5月1日、測定日Bが同年6月1日(今日)とすると、測定期間T0は同年5月1日から6月1日までの32日間(測定日AとBを含む場合)となる。
図6(a)に示す日Cは将来の日であり、測定日Bから将来日Cまでの間を「将来期間」T1とする。将来期間の長さは適宜に設定することができ、例えば、将来日Cを1月後、3月後、6月後等とすることができる。
【0045】
図6(b)に示す日BP、AP及びCPは、それぞれ、前年以前の年において、前記測定日B、A及び前記将来日Cに対応する日(それぞれ月日が同じ日)である。そして、前年以前の年において、上記測定期間T0に対応する期間を「参照期間」T0P、前記将来期間T1に対応する期間を「将来参照期間」T1Pとする。なお、測定期間T0の日数に測定日AやBを含めるか否かは適宜に設定されればよく、将来期間T1、参照期間T0P及び将来参照期間T1Pの日数ついても同様とすることができる。
【0046】
本美容アドバイス方法の各工程においては、顧客情報データベース62から、参照期間及び将来参照期間における人物のメラニン量や内的要因スコアを取得し、必要な処理を行っている。しかし、前年以前に人物のメラニン量を測定した日が被検者のメラニン量の測定日(A、B)に対応しない場合がある。このような場合、前記適合情報検索工程では、人物の測定日及び測定されたメラニン量に基づいて、参照期間における該人物のメラニン変化量を推定することができる。また、前記将来予測工程では、人物の測定日の間の内的要因(内的要因スコア)に基づいて、参照期間における該人物の内的要因(内的要因スコア)を推定することができる。また、前記アドバイス作成工程では、人物の測定日の間の内的要因(内的要因スコア)に基づいて、将来参照期間における該人物のメラニン量及び内的要因(内的要因スコア)を推定することができる。
【0047】
図7は、顧客毎の状態の情報を得るために入力装置3に表示される顧客情報入力画面の一例を表している。ここで表示されているような顧客の年齢、居住地域、肌質、日中の屋外活動時間、紫外線対策(紫外線に対する意識。日焼け止め、帽子、日傘等。)、日焼け時の肌、生活習慣(喫煙、飲酒、食生活の乱れ、職種、運動、睡眠時間)、フェイシャルエステティック、生理周期、ストレスレベル、朝及び夜のスキンケア(ローション、ミルクローション、クリーム、マッサージ、飲用サプリメント)等を、内的要因の項目として挙げることができる。このような項目毎に程度や頻度が入力されるようにし、評価や分析の対象とする内的要因の項目は、任意に選択することができる。
【0048】
取得された顧客の状態の情報から、内的要因毎に数値化することによって、内的要因スコアが作成される。内的要因スコアは、内的要因毎の程度や頻度を点数付けすることにより生成することができる。点数は、各項目の程度や頻度について、一般にメラニン量を増加させると考えられる順、又はメラニン量を抑制しないと考えられる順等で点数付けすることができる。
図8は、内的要因毎に5段階で点数付けする例を示している。例えば、「飲酒」はメラニン量を増加させる要因と考えられるため、その頻度が高いほど高い点数(5)を与えている。また、「ダブル洗顔」はメラニン量を抑制する効果があると考えられるため、その頻度が低いほど高い点数(5)を与えている。
【0049】
(顧客情報入力工程)
顧客情報入力工程では、図7に示したような顧客情報入力画面を入力装置3等に表示し、それに従って入力された顧客の情報を取得することができる。これによって取得された顧客の情報を、図8に示したように内的要因毎に数値化して、内的要因スコアを作成することができる。そして、人物(人物番号、氏名等)に関連付けて、居住地域、年齢、肌質等の基本情報や内的要因(内的要因スコア)、情報取得日等を顧客情報データベース62に記録する。
【0050】
図9は、本美容アドバイス方法で行う主要な処理の流れを示している。本美容アドバイス方法には、図示しない前記メラニン合成能力評価方法(メラニン量測定工程及びメラニン合成能力演算工程)及び上記顧客情報入力工程が組込まれている。
本美容アドバイス方法では、気象データベース61及び顧客情報データベース62を適宜使用して、適合情報検索工程により適合情報検索処理(S40)が行われ、将来予測工程により将来予測処理(S50)が行われる。その将来予測工程S50では影響要因抽出処理(S51)を行い、更に、メラニン量予測工程によりメラニン量予測処理(S52)、アドバイス作成工程によりアドバイス作成処理(S53)を行うようにすることができる。
【0051】
(適合情報検索工程)
図10は、前記適合情報検索処理S40の例を示している。先ず、前記メラニン合成能力演算処理S20により、被検者の測定期間T0におけるメラニン合成能力M0を算出する(S41)。
次に、顧客情報データベース62に蓄積されている人物データの中から、測定期間T0に対応する参照期間T0Pにおいてメラニン量が測定されている人物を1人抽出する(S42)。メラニン量の測定日が参照期間と完全に対応しなくても、前記のとおり、参照期間におけるメラニン量を推定することが可能である。また、気象データベース61に蓄積されている参照期間における紫外線照射量を取得する(S43)。そして、当該人物の参照期間T0Pにおけるメラニン合成能力(単位紫外線照射量当りのメラニン変化量)M0Pを算出する(S44)。メラニン合成能力M0Pは、前記メラニン合成能力演算処理S20を適用して求めることができる。
そして、顧客情報データベース62に蓄積されている人物データ中の、参照期間T0Pにおいてメラニン量が測定されている人物の全てについて、上記ステップS42〜S44を繰り返してメラニン合成能力を求める(S45)。
【0052】
参照期間T0Pにおいてメラニン量が測定されている全ての人物についてメラニン合成能力M0Pが求められたら、メラニン合成能力M0Pが被検者のメラニン合成能力M0に近い人物を、参照人物として抽出する(S46)。抽出する参照人物の数は特に問わず、例えば、人物のメラニン合成能力M0Pと被検者のメラニン合成能力M0との差が所定範囲内である人物を参照人物とすることができる。これによって抽出された参照人物のデータは、以下の各工程において参照される。
【0053】
上記ステップS46では、ステップS42で抽出された人物すなわち参照期間にデータが存在する全ての人物の中から、メラニン合成能力M0Pが被検者のメラニン合成能力M0に近い人物を参照人物として抽出したが、参照人物を抽出する条件は、種々変更し又は組み合わせることが可能である。例えば、被検者と同じ世代の人物や、被検者と同様の肌質の人物、被検者と同じ地域の人物等の中から、メラニン合成能力が近い人物を参照人物として抽出するようにすることができる。また、参照人物を絞り込むように更に条件を組み合わせてもよい。世代、肌質、地域等の条件を適宜付加すれば、特性が被検者により近い人物を参照人物とすることが可能である。
【0054】
(将来予測工程)
図11は、前記将来予測工程における影響要因抽出処理S51の例を示している。先ず、顧客情報データベース62から、前記適合情報検索工程によって抽出された参照人物毎に、将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の測定データを取得するともに、気象データベース61から当該期間における紫外線照射量を取得して、当該人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pを算出する(S511)。メラニン合成能力M1Pは、前記メラニン合成能力演算処理S20を適用して求めることができる。これによって、将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の測定データが存在する参照人物の全てについて、メラニン合成能力M1Pが算出される。メラニン量の測定日が将来参照期間T1Pと完全に対応していなくても、前記のとおり、将来参照期間T1Pにおけるメラニン量を推定することが可能である。
また、顧客情報データベース62から、全ての参照人物について、将来参照期間T1Pにおける内的要因スコアを取得する(S512)。内的要因スコアの記録日が将来参照期間T1Pと完全に対応しなくても、前記のとおり、将来参照期間T1Pにおける内的要因スコア(平均内的要因スコア)を推定することが可能である。
【0055】
そして、全ての参照人物について、将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pに対する内的要因毎の影響度を求める(S513)。
前記「影響度」は、メラニン合成能力と1つの内的要因との関連の度合を評価し得る数値である限り、特に限定されない。例えば、図12は、1つの内的要因のスコア(横軸)と参照人物全てのメラニン合成能力(縦軸)との関係を表す散布図である。この場合には、相関分析により、当該内的要因とメラニン合成能力との間には有意な相関が見出される。また、両者の回帰分析を行うこともできる。すなわち、参照人物全てのメラニン合成能力と、各内的要因スコアとの相関を求め、有意な相関係数を「影響度」とすることができる。その場合、相関係数が大きい内的要因の影響度が高いといえる。また、有意な相関係数が得られた内的要因について、メラニン合成能力と内的要因スコアとの回帰分析を行うことによって回帰式を求めることができる。その場合、得られた相関係数と回帰係数との積の大きさを影響度の高さとすることもできる。
上記により求められた影響度の高い内的要因を、影響要因として抽出する(S514)。抽出する影響要因の数は問わず、前記影響度の大きい順に選出すればよい。抽出された影響要因は、次工程に送られる。
【0056】
以上によって、被検者の測定期間T0に対応する参照期間T0Pにおいて、メラニン合成能力が被検者に近い参照人物が抽出され、その参照人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力に影響の大きかった内的要因が影響要因として抽出されることとなる。この影響要因は、被検者の今後のメラニン量の変動に影響を及ぼす可能性が高いと評価することができる。したがって、本美容アドバイス方法の使用者は、出力された影響要因と被検者の内的要因スコアとに基づいて、被検者に対して今後のメラニン量の増加を抑制するために最適な美容アドバイスを行うことが可能になる。
【0057】
(メラニン量予測工程)
前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された参照人物のうち、将来参照期間T1Pにおける内的要因が、前記被検者の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、その人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の変化に基づいて、被検者の将来期間T1におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含んで構成することができる。
【0058】
図13は、将来予測工程におけるメラニン量予測処理S52の例を示している。先ず、顧客情報データベース62から、被検者の測定期間T0における内的要因スコアを取得する(S521)。また、顧客情報データベース62から、全ての参照人物について、将来参照期間T1Pにおける内的要因スコアを取得する(S522)。そして、取得した被検者の内的要因スコアと各参照人物の内的要因スコアとの類似度を評価し、類似度が高い人物を抽出する(S523)。
前記「類似度」は、被検者の内的要因(内的要因スコア)と参照人物の内的要因(内的要因スコア)との類似性を評価し得る数値である限り、特に限定されない。例えば、図14は、被検者の内的要因スコアと前記抽出された人物の内的要因スコアとの距離を求める式を示す。この式では、内的要因毎の、被検者の内的要因スコアSc、抽出された参照人物の内的要因スコアSi、及びメラニン合成能力との相関係数Rから、内的要因間距離Diを求めている。この内的要因間距離Diを「類似度」とし、内的要因間距離Diが小さいほど類似度が高いと評価することができる。
上記で抽出する人物の数は特に問わず、類似度が高い順に所定数の人物を選択することができる。本例では、最も類似度が高い1人を抽出するものとする。
【0059】
次に、前記ステップS523によって抽出された、被検者と内的要因スコアの類似度が最も高かった参照人物について、顧客情報データベース62及び気象データベース61を参照して、将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pを算出する(S524)。メラニン合成能力M1Pは、前記メラニン合成能力演算処理を適用して求めることができる。
そして、算出された参照人物のメラニン合成能力M1P、被検者の現在のメラニン量mB、及び将来期間T1における紫外線照射量の推定値を用いて、被検者の将来期間T1経過時におけるメラニン量mCの予測値を算出することができる(S525)。ここで、将来期間T1における紫外線照射量の推定値は、例えば、気象データベース61に蓄積されている、被検者の居住地域における過去(将来参照期間T1P)の紫外線照射量の平均値等とすることができる。
【0060】
(アドバイス作成工程)
図15は、前記将来予測工程におけるアドバイス作成処理S53の例を示している。先ず、顧客情報データベース62から、被検者の測定期間T0における内的要因スコアを取得する(S531)。そして、前記影響要因抽出処理S51により抽出された影響要因と、被検者の内的要因スコアと、に基づいて、被検者に対して今後のメラニン量を抑制するための美容アドバイスを作成する(S532)。
美容アドバイスとして、例えば、アドバイス文言とその重要度を挙げることができる。前記影響要因の順位とそれに対応する被検者の内的要因スコアの値とに基づいて、重要度を算定し、予め用意されている文言を選択して組み合わせる等の方法によってアドバイス文言を作成することができる。
美容アドバイスを作成する際には、影響要因のうち、被検者の内的要因で改善余地のない要因を除き、改善要因とすることができる。メラニン量を抑制するために最善のスコアである被検者の内的要因については、それ以上に改善することができないからである。この改善要因と被検者の内的要因スコアの値とに基づいて、美容アドバイスを作成するようにすることができる。
【0061】
(結果表示処理)
前記各工程による処理結果(角質細胞画像、メラニン量、メラニン合成能力、影響要因、メラニン量予測値、美容アドバイス等の情報)は、結果表示処理部56に送信して出力するように構成することができる。結果表示処理部56では、各工程による出力情報を処理し、出力データを出力装置4へと送信する。出力データの形式は任意であり、例えば、HTML、XML、画像、動画、音声ファイル等が可能である。
図16は、出力装置4がモニターを有する場合の結果表示画面の一例である。この結果表示画面には、顧客(被検者)の3回のメラニン量測定結果とその角質細胞画像、メラニン量の未来予測、美容アドバイスが表示されている。本美容アドバイス方法は、以上に説明した工程を変形したり、対象期間の長さ等を種々設定したりすることによって、3ヶ月後、6ヶ月後など任意の期間でのメラニン量変動の予測を行うことができる。
【0062】
履歴検索処理部57は、例えば、出力装置4から指令を受けた場合、指令された日付の情報をデータベースより検索して処理し、出力データとして出力装置4へ送信する。
【0063】
3.メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイスシステムの別の構成例
図17は、メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイスシステムの別の構成を説明するためのブロック図である。この美容アドバイスシステム10’は、通信ネットワーク7を介して接続されており、前記顧客情報データベース62が、顧客情報データベース621と影響係数データベース622とに分けられて構成されている。また、影響係数演算処理部53’、適合情報検索処理部54’、及び将来予測処理部55’が、図1に示した美容アドバイスシステム10の各部から変形されている。その他の構成は、図1と同様である。以下では、美容アドバイスシステム10’が前記美容アドバイスシステム10と異なる点についてのみ説明する。
【0064】
顧客情報データベース621は、過去及び新規の顧客の情報に関するデータが記録されている。前記顧客の情報に関するデータには、図17中に示されているように、顧客毎に、角質細胞採取又は撮影年月日、該角質細胞のメラニン量、顧客の状態(例えば、年齢、生活地域、肌質、紫外線に対する意識(紫外線対策)、月経周期、スキンケア、生活習慣及びストレスレベル等)を含むことができる。
【0065】
影響係数データベース622には、過去の複数人の通年データ及びメラニン量の変動への影響係数が記録されている。すなわち、図17中に示されているように、系列毎に、その系列に属する人物の基本情報(年齢、肌質、紫外線対策等)、通年時系列情報(年月日、スキンケア、月経周期、生活習慣、ストレスレベル等)、及びメラニン変化量への影響係数(紫外線照射量影響係数、スキンケア影響係数、月経周期影響係数、生活習慣影響係数、ストレスレベル影響係数等)が蓄積して記録されている。
【0066】
前記「影響係数」とは、各個人のメラニン量に対して外的及び内的要因(複数の項目)が及ぼす影響の度合を算出し数値化したものであり、外的及び内的要因の項目毎に値が存在する。すなわち、外的及び内的要因に対して顧客個人のメラニン量がどのように変動するかを示す係数である。例えば、外的要因に関する影響係数として、前記メラニン合成能力が挙げられる。また、内的要因に関する影響係数は、前記影響度に相当する係数とすることができる。すなわち、影響係数は、外的及び内的要因の各項目が顧客個人のメラニン合成に対して及ぼす影響の度合を示す値である。
前記「系列」とは、外的及び内的要因の1又は2以上の項目について、又は、前記影響係数の1又は2以上について、類似する人物のグループをいう。
【0067】
前記影響係数演算処理部53’では、同一顧客による角質採取又は撮影年月日が異なる2つ以上のメラニン量データを顧客情報データベース621から選出し、それらメラニン量データから一定期間のメラニン変化量を求め、該一定期間の紫外線照射量変化を気象データベース61から選出し、該メラニン変化量と紫外線照射量変化の比から顧客の紫外線照射量影響係数(メラニン合成能力)を求め、適合情報検索処理部54’に演算結果として送信する。
【0068】
前記適合情報検索処理部54’では、影響係数演算処理部53’から送信された顧客(被検者)の紫外線照射量影響係数と、顧客情報データベース621から選出した顧客に関する情報(例えば、年齢、肌質、紫外線に対する意識、スキンケア、生活習慣及びストレスレベル等)から算出された影響係数と、が最も類似する系列を影響係数データベース622の系列群から検索し、将来予測処理部55’に検索結果として送信する。
【0069】
前記将来予測処理部55’では、適合情報検索処理部54’から送信された系列のメラニン変化量への各種影響係数と、データベース61に蓄積された紫外線照射量のデータ、及びデータベース621、622に蓄積された顧客に関する情報の各項目のデータ等を要素として、複数の将来のメラニン量変動(パターン)がシミュレーションできる。このシミュレーションの際には、例えば、下記数式を用いて将来のメラニン量を求め、その変動を予測する。予測結果は結果表示処理部26に送信する。
結果表示処理部26は、前記美容アドバイスシステム10と同様、メラニン量の予測や美容アドバイスを、結果表示画面(図16参照)として出力装置4に表示することができる。
【0070】
(数式) Y=a1X1+a2X2+a3X3+・・・anXn+b
【0071】
なお、Yは特定時期(現在及び将来)のメラニン量予測値、Xは顧客データベース621に蓄積された顧客の外的及び/又は内的要因に関する情報を評価した値、aは影響係数データベース622より導き出された顧客のX(外的及び/又は内的要因に関する情報を評価した値)についての影響係数である。bは顧客により異なる、メラニン量の基準となる定数である。
【0072】
以上の構成により、美容アドバイスシステム10’は、
(1)同一の単一個人におけるメラニン量に関する情報、並びにメラニン合成能力に対して影響を及ぼす外的要因及び/又は内的要因に関する情報を各個人別に複数人分蓄積して作製したデータベースを利用し、
(2)そのデータベースから、自己と類似した他者(単一個人)のデータのみを抽出することができ、
(3)更に、前記抽出した他者のデータから自己のメラニン合成能力に対して最も影響を及ぼす外的要因及び/又は内的要因を導き出すことができる、美容アドバイスシステムとすることができる。また、メラニン合成能力の評価方法は、
(4)時期が異なる少なくとも2回以上のメラニン量の測定からメラニン合成の変化量を求め、その変化量から、メラニン合成能力を算出するメラニン合成能力の評価方法とすることができる。また、上記(1)〜(3)において、
(5)外的要因は、個人の生活する地域の気象とすることができ、
(6)内的要因は、個人の年齢、肌質、月経周期、生活習慣、スキンケア、紫外線に対する意識及びストレスレベルから選ばれる1種又は2種以上とすることができる。
【0073】
そして、美容アドバイスシステム10’によれば、将来のメラニン量の経時変化を表示等できるだけでなく、個人のメラニン合成能力を基に、仮の個人の状態データ及び気象データを設定することで、1年後、5年後、10年後のメラニン量の経時変化や、スキンケア方法の違いや、生活習慣の違い等による様々なメラニン量の経時変化パターンをシミュレーションし表示することができる。これにより、理想のメラニン量に近づける或いは現在のメラニン量を維持するためのスキンケア及び生活習慣をアドバイスするシステムとすることができる。また、個人のメラニン合成能力を求めるという特徴から、新たにメラニン量を測定しなくても、日々のスキンケアや生活習慣、そして気象等のデータを記録(入力)することで、記録時の肌のメラニン量を予測することができ、リアルタイムに理想のメラニン量に向けた日々のスキンケア、生活習慣等のアドバイスを行うことができる。
【0074】
4.実施例
以下では、前記メラニン合成能力評価システム1及び前記美容アドバイスシステム10(図1参照)によって行った、メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法の実施例を説明する。
【0075】
以下の工程において、被検者の測定期間・将来期間に対応する参照期間・将来参照期間のデータ処理については、前述のとおり適宜推定を行っている。図18は、被検者の測定期間T0が5月1日〜6月1日であり、顧客情報データベース62に記録されている人物の前年以前のメラニン測定日がそれと異なっている場合の処理例を示している。同図(a)は、その人物の先のメラニン測定日が5月1日より前、且つ後のメラニン測定日が6月1日より後であった場合であり、図示するように先後の測定日のメラニン量から内挿して、5月1日〜6月1日(参照期間T0P)におけるその人物のメラニン量を推定し、その推定値に基づいて参照期間T0Pにおける人物の平均メラニン変化量及びメラニン合成能力を推定することができる。また、同図(b)のように3回の測定値が参照期間T0Pを挟んで存在する場合や、参照期間T0P内に複数回の測定値が存在する場合も、適宜に参照期間T0Pにおける人物のメラニン量を推定すればよい。将来参照期間T1Pについてのデータ処理も同様である。
また、図19は、被検者についての将来期間T1が6月1日〜9月1日であり、顧客情報データベース62に記録されている人物の前年以前の内的要因作成日がそれと異なっている場合の処理例を示している。同図は、その人物の先の内的要因スコア作成日が9月1日より前で且つ後の内的要因スコア作成日が9月1日より後である2つの場合を示している。(a)はスコアの数値は同じであり、(b)はスコアに変化があった場合である。いずれであっても、図示するように先後に作成されたスコアを期間内の日数によって按分する等の方法により、6月1日〜9月1日(将来参照期間T1P)におけるその人物の内的要因スコア(平均内的要因スコア)を推定することができる。その他の場合についても適宜に将来参照期間T1Pにおける人物の内的要因スコアを推定すればよいし、参照期間T0Pについての内的要因スコアの処理も同様である。
【0076】
(メラニン合成能力の算出)
図20は、1人の人物についてメラニン合成能力を算出した例を示している。東京に居住する人物(被検者1)のメラニン量を2回測定したところ、同図(a)に示すように、2010年5月1日のメラニン量は3.59%、同年6月1日のメラニン量は3.86%であった。東京と緯度が近いつくばの平均紫外線照射量は、同図(b)に示すように、同年5月が19.88kJ/m2/day、6月が23.64kJ/m2/dayであった。これらから、同図(c)に示すように、測定期間T0(5月1日から6月1日までの32日間)において、平均メラニン変化量は84.38(10-4%/day)、平均紫外線照射量は20.0kJ/m2/dayとなるため、被検者1のメラニン合成能力M0は4.22(10-4%・m2/kJ)と算出された。なお、平均メラニン変化量は、測定期間T0における1日当りのメラニン変化量を104倍した値としている(以下、同様)。
別の人物(被検者2)について、上記と同じ測定期間T0にメラニン量を測定したところ、平均メラニン変化量は37.50(10-4%/day)であり、メラニン合成能力は1.88(10-4%・m2/kJ)と算出された。
【0077】
(参照人物の抽出)
適合情報検索工程によるデータ処理(参照人物の抽出)結果の例を挙げる。図21は、顧客情報データベース62に蓄積されている人物データのうち、参照期間T0P(前年以前の5月1日〜6月1日)においてメラニン量が測定されている人物を検索し、抽出された人物148人(番号1〜148)毎に、当該期間におけるメラニン合成能力M0P等を算出した結果である。メラニン合成能力M0Pは、参照期間T0Pにおける平均紫外線照射量と平均メラニン変化量から算出される。例えば、札幌に居住している人物番号2の人物については、2002年にメラニン量が測定されており、平均メラニン変化量は89.34(10-4%/day)であった。一方、気象データベース61を参照すると、当該期間における札幌の平均紫外線照射量は20.46kJ/m2/dayであった。これらから、この人物の当該参照期間(2002年5月1日〜6月1日)におけるメラニン合成能力M0Pは、4.37(10-4%・m2/kJ)と算出される。この人物のメラニン合成能力M0Pと前記被検者1のメラニン合成能力M0(4.22(10-4%・m2/kJ))との差(絶対値)は、図の最右欄に示すように0.15(10-4%・m2/kJ)となる。上記差が小さい順に、被検者のメラニン合成能力と近い人物として、50名の参照人物を抽出した(図中*印)。尚、本図ではデータの1部のみを表示している(以下において同様)。
【0078】
(影響要因の抽出)
将来予測工程によるデータ処理結果の例を挙げる。図22は、被検者1の将来期間T1を6月1日〜9月1日として、前記抽出された50人の参照人物について、将来参照期間T1P(前年以前の6月1日〜9月1日)におけるメラニン合成能力M1P等を算出した結果である。人物毎の将来参照期間T1Pにおけるメラニン量は顧客情報データベース62に蓄積されており、当該将来参照期間における平均紫外線照射量は気象データベース61を参照して導き出すことができる。例えば、札幌に居住している人物番号2の人物については2002年に継続的にメラニン量が測定されており、当該将来参照期間における平均メラニン変化量は12.74(10-4%/day)であった。一方、当該将来参照期間における札幌の平均紫外線照射量は19.87kJ/m2/dayであった。これらから、この人物の当該将来参照期間(2002年6月1日〜9月1日)におけるメラニン合成能力M1Pは、−0.64(10-4%・m2/kJ)と算出される。
【0079】
また、図23は、前記抽出された50人の参照人物について、将来参照期間T1Pにおける平均内的要因スコアを示した表である。人物毎の将来参照期間T1Pにおける平均内的要因スコアは、顧客情報データベース62に蓄積されている内的要因スコアから取得し又は推定することができる。例えば、人物番号2の人物については、2002年の将来参照期間における内的要因「ダブル洗顔」の平均内的要因スコアは2.00であった。
【0080】
図24(a)は、前記参照人物50人について、将来参照期間T1Pにおける各平均内的要因スコア(図23参照)とメラニン合成能力M1P(図22参照)との相関係数及び回帰係数を求めた結果である。本例では、相関係数と回帰係数との積(E)を、前記影響度として用いることとした。ただし、相関係数が有意と判断されない内的要因(本例では、相関係数<0.235の内的要因)は除くものとした。そして、上記影響度が大きい順に内的要因を影響要因として抽出すると、同図(b)のようになった。これにより、影響要因は、影響度の高い順に「ダブル洗顔」、「ストレスレベル」、「喫煙」、「朝のミルクローション」等であると評価された。
【0081】
(美容アドバイスの作成)
図24(b)の右欄は、前記影響要因に対応する被検者1の測定期間T0における内的要因スコアを示している。この被検者1の内的要因スコアから、被検者1は「ダブル洗顔」がほとんどなく、「ストレス」を大いに感じていて、「喫煙」は毎日であり、「朝のミルクローション」をほぼ毎日使用している(図8参照)。したがって、被検者1の「朝のミルクローション」については、改善する余地がないといえる。「飲酒」や「夜のミルクローション」についても同様である。本例では、このように改善余地がない内的要因(同図(b)*印)は、被検者1のメラニン量抑制のための改善要因から除くこととした。
そして、被検者1に対する美容アドバイスとして、前記改善要因の項目について、前記影響度の順位及び被検者1の内的要因スコアに基づいて、図25に示すようなアドバイスの文言及び重要度(「おススメ度」)が作成された。
【0082】
図26は、以上と同様の処理により、別の前記被検者2(メラニン合成能力1.88(10-4%・m2/kJ))について、影響度が大きい順に6つの内的要因を影響要因として抽出した結果を示す。被検者1と被検者2とはメラニン合成能力に差異があるため、選択される参照人物が異なることとなり、それによって抽出される影響要因も異なってくる。被検者2の場合の改善要因は、重要度の順に「朝のマッサージ」、「帽子」、「日傘」、「夜の美白用サプリメント」となった。このように、人物毎に、最適な美容アドバイスを作成することができる。
【0083】
(メラニン量の予測)
前記参照人物50人から、将来参照期間T1P(前年以前の6月1日〜9月1日)における内的要因が、被検者1の内的要因と類似度が高い人物を抽出し、その人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン量の変化に基づいて被検者1の将来期間T1(今年の6月1日〜9月1日)におけるメラニン量を予測した例について説明する。
先ず、被検者1と内的要因の類似度が高い人物を、図14に示した内的要因間距離Diを求めることによって抽出することとした。参照人物iの将来参照期間における内的要因スコアSiは、図23に挙げられている。また、参照人物50人についての将来参照期間における各平均内的要因スコアとメラニン合成能力M1Pとの相関係数は図24に示されており、これを内的要因間距離Diを算出するための内的要因の相関係数Rとした。
【0084】
図27(a)は、被検者1の測定期間T0における内的要因スコアScを示している。このSc、上記Si及び上記Rを用いて算出された内的要因間距離Diは、同図(b)に示すとおりであった。本例では、内的要因間距離Diの最も小さい人物(人物番号89)を選択し、その人物の将来参照期間TiPにおけるメラニン合成能力M1Pに基づいて、被検者1の将来期間T0におけるメラニン量を予測することとした。被検者1の将来期間におけるメラニン量の変化は、番号89の人物の将来参照期間におけるメラニン量の変化傾向に近いものと考えることができるからである。
【0085】
人物番号89の人物の将来参照期間T1Pにおけるメラニン合成能力M1Pは、−0.05(10-4%・m2/kJ)と算出されている(図22参照)。現在(6月1日)の被検者1のメラニン量mBは、3.86%である(図20(a)参照)。図28(a)は、気象データベース61に蓄積されている紫外線照射量データから得られる、つくばにおける過去(1994〜2008年)の月毎の平均紫外線照射量を示している。この月毎の平均紫外線照射量から、将来期間T1における平均紫外線照射量u1Pを推定することとした。そうすると、被検者1の将来期間T1経過時(9月1日)におけるメラニン量MCは、3.85%と予測することができる(MC=MB+m1P×u1P×(将来期間T1の日数)/104)。図28(b)は、被検者1のメラニン量の、5月1日及び6月1日の実測値と、9月1日の上記予測値を表したグラフである。
【0086】
尚、本発明においては、上述の実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本メラニン合成能力評価方法及び美容アドバイス方法並びにメラニン合成能力評価システム及び美容アドバイスシステムは、皮膚科、美容皮膚科、エステティックサロン、化粧品販売等において、顧客のシミや肌色に対して、現在のメラニン量やその顧客の持つメラニン合成能力を評価すると共に、その結果を基に美容におけるスキンケアや生活習慣の提案を行うことが可能な方法及びシステムとして、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1、1’;メラニン合成能力評価システム、10、10’;美容アドバイスシステム、2;画像撮影装置、3;入力装置、4;出力装置、5;情報処理装置(サーバ)、51;メラニン量測定処理部、52;顧客情報入力処理部、53;メラニン合成能力演算処理部、53’;影響係数演算処理部、54、54’;適合情報検索処理部、55、55’;将来予測処理部、551;メラニン量予測処理部、552;アドバイス作成処理部、56;結果表示処理部、57;履歴検索処理部、61;気象データベース、62、621;顧客情報データベース、622;影響係数データベース、7;通信ネットワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、該メラニン量を人物データとして顧客情報データベースに蓄積して記憶するメラニン量測定工程と、
前記メラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した日の間を測定期間として、該測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、該測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、
を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価方法。
【請求項2】
請求項1記載のメラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法であって、
人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を、人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する顧客情報入力工程と、
被検者についてメラニン量を測定した前記測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも該参照期間における前記メラニン合成能力が前記被検者の前記メラニン合成能力と近い1又は2以上の人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程と、
前記被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物について、該将来参照期間における前記メラニン合成能力に影響度が高かった前記内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程と、
を備えることを特徴とする美容アドバイス方法。
【請求項3】
前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物のうち、前記将来参照期間における前記内的要因が、前記被検者の前記内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の該将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、前記被検者の前記将来期間におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含む請求項2記載の美容アドバイス方法。
【請求項4】
前記将来予測工程は、抽出した前記影響要因と前記被検者の前記内的要因とに基づいて、前記被検者に対するメラニン量抑制のためのアドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む請求項2又は3に記載の美容アドバイス方法。
【請求項5】
前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含み、
前記顧客情報入力工程は、前記内的要因毎の程度を数値化した内的要因スコアを作成して、該内的要因スコアを人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する請求項2乃至4のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
【請求項6】
前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記人物の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する請求項2乃至5のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
【請求項7】
前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記被検者の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する請求項1記載のメラニン合成能力評価方法。
【請求項8】
請求項1又は7に記載のメラニン合成能力評価方法を用いるメラニン合成能力評価システムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価システム。
【請求項9】
請求項2乃至6のいずれかに記載の美容アドバイス方法を用いる美容アドバイスシステムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備えることを特徴とする美容アドバイスシステム。
【請求項1】
人物毎に少なくとも2つの日にメラニン量を測定し、該メラニン量を人物データとして顧客情報データベースに蓄積して記憶するメラニン量測定工程と、
前記メラニン量測定工程により1人の人物についてメラニン量を測定した日の間を測定期間として、該測定期間における該人物のメラニンの変化量と気象データベースに蓄積して記憶された紫外線照射量とから、該測定期間における単位紫外線照射量当りのメラニン変化量を該人物のメラニン合成能力として算出するメラニン合成能力演算工程と、
を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価方法。
【請求項2】
請求項1記載のメラニン合成能力評価方法を用いる美容アドバイス方法であって、
人物毎に入力された前記測定期間における内的要因を、人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する顧客情報入力工程と、
被検者についてメラニン量を測定した前記測定期間に対応する、前年以前の期間を参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、少なくとも該参照期間における前記メラニン合成能力が前記被検者の前記メラニン合成能力と近い1又は2以上の人物を参照人物として抽出する適合情報検索工程と、
前記被検者の所定の将来期間に対応する、前年以前の期間を将来参照期間として、前記顧客情報データベースに記憶されている人物データと前記気象データベースに記憶されている紫外線照射量とに基づき、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物について、該将来参照期間における前記メラニン合成能力に影響度が高かった前記内的要因を影響要因として抽出する将来予測工程と、
を備えることを特徴とする美容アドバイス方法。
【請求項3】
前記将来予測工程は、前記適合情報検索工程により抽出された前記参照人物のうち、前記将来参照期間における前記内的要因が、前記被検者の前記内的要因と類似度が高い人物を抽出し、該人物の該将来参照期間におけるメラニン量の変化に基づいて、前記被検者の前記将来期間におけるメラニン量を予測するメラニン量予測工程を含む請求項2記載の美容アドバイス方法。
【請求項4】
前記将来予測工程は、抽出した前記影響要因と前記被検者の前記内的要因とに基づいて、前記被検者に対するメラニン量抑制のためのアドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む請求項2又は3に記載の美容アドバイス方法。
【請求項5】
前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含み、
前記顧客情報入力工程は、前記内的要因毎の程度を数値化した内的要因スコアを作成して、該内的要因スコアを人物データとして前記顧客情報データベースに蓄積して記憶する請求項2乃至4のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
【請求項6】
前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記人物の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する請求項2乃至5のいずれかに記載の美容アドバイス方法。
【請求項7】
前記気象データベースには地域毎の紫外線照射量が蓄積して記憶されており、
前記メラニン合成能力演算工程は、前記気象データベースに記憶されている前記地域毎の紫外線照射量に基づき、前記被検者の居住地域に応じた紫外線照射量により前記メラニン合成能力を算出する請求項1記載のメラニン合成能力評価方法。
【請求項8】
請求項1又は7に記載のメラニン合成能力評価方法を用いるメラニン合成能力評価システムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、を備えることを特徴とするメラニン合成能力評価システム。
【請求項9】
請求項2乃至6のいずれかに記載の美容アドバイス方法を用いる美容アドバイスシステムであって、
前記気象データベースと、前記顧客情報データベースと、前記メラニン量測定工程を行うメラニン量測定処理部と、前記メラニン合成能力演算工程を行うメラニン合成能力演算処理部と、前記顧客情報入力工程を行う顧客情報入力処理部と、前記適合情報検索工程を行う適合情報検索処理部と、前記将来予測工程を行う将来予測処理部と、を備えることを特徴とする美容アドバイスシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図16】
【図2】
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【図5】
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【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図23】
【図24】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図16】
【公開番号】特開2012−211886(P2012−211886A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189819(P2011−189819)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】
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