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メラノコルチン受容体結合コンジュゲート
説明

メラノコルチン受容体結合コンジュゲート

メラノコルチン受容体結合コンジュゲート、並びにその製造及び使用の方法が開示される。メラノコルチン受容体結合コンジュゲートは、所望により製薬上許容される担体と組み合わせて、α−MSH誘導体−Fc免疫グロブリンを含み得る。更に、α−MSH誘導体の医薬組成物をメラノコルチン受容体と接触させることを含む、メラノコルチン受容体の生物活性を調節する方法が開示される。開示される別の一態様は、本発明の医薬組成物をそれを必要とする被験体に投与することを含む、メラノコルチン受容体媒介の状態を調節する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラノコルチン受容体結合コンジュゲート、並びにその製造及び使用の方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、体のサイズに対する過度の脂肪量の割合により明らかになる慢性疾患である。今日、米国人の3分の1は体重超過(ボディマス指数(BMI)>25kg/m2)であると見られている。肥満があると、2型糖尿病、うっ血性心不全、変形性関節症、睡眠時無呼吸症、メタボリック症候群、アテローム性脂質異常症、高血圧、及びインスリン抵抗性にかかりやすくなる。体重がわずかに減少するだけで(初期体重の5〜10%)、肥満関連の疾患を発症する危険因子が有意に低下することがある(Wing et al.,Arch.Intern.Med.147:1749〜53(1987);Tuomilehto et al.,New Engl.J.Med.344:1343〜50(2001);Knowler et al.,New Engl.J Med.346:393〜403(2002);Franz et al.,Diabetes Care 25:148〜98(2002))。加えて、ある文化においては、しばしば肥満者に付随する社会的不名誉に起因して、肥満の治療はメンタルヘルスの観点から重要である場合がある。
【0003】
メラノコルチン系は、エネルギーバランスと食物摂取の調節に主要な役割を果たしている(Garfield et al.,Trends Endocrinol Metab.20:203〜15(2009))。ヒト及び齧歯類において、メラノコルチン系の異なる構成成分の突然変異機能の喪失は、肥満及び関連する疾患と密接に相関している。マウスにおいては、メラノコルチン受容体4(MC4R)、メラノコルチン受容体3(MC3R)又はプロオピオメラノコルチン(POMC)の内部での突然変異が、肥満、インスリン抵抗性及び過食症をもたらしている(Goodfellow and Saunders,Curr.Topics Med.Chem.3:855〜83(2003);Huszar et al.,Cell 88:131〜41(1997);Yaswen et al.,Nat.Med.5:1066〜70(1999))。ヒトにおいては、POMC又はMC4Rの内部での突然変異が、食物摂取増大に関連する肥満の進行をもたらしている(Krude et al.,Nat.Genet.19:155〜7(1998);Yeo et al.,Nature Genetics 20:111〜2(1998);Branson et al.,New Engl.J.Med.348:1096〜103(2003);Vaisse et al.,J.Clin.Invest.106:253〜62(2000);Ho and MacKenzie,J.Biol.Chem.275:35816〜22(1999))。齧歯類においては、MC4Rの薬理学的刺激が、食物摂取量の低下、エネルギー消費の増加、及び重量喪失を引き起こす(Pierroz et al.,Diabetes 51:1337〜45(2002))。ヒトにおいては、MC4R作動薬α−MSHの経鼻投与が、体脂肪量の減少による体重減少をもたらす(Fehm et al.,J.Clin.Endo.Metabol.86:1144〜48(2001))。野生型α−MSHは血清半減期が非常に短いため、薬剤としての使用は限定的である。α−MSH類似体については記述がなされている(Cai et al.,Peptides 26:1481〜5,(2005);Al−Obeidi et al.,J.Am.Chem.Soc.111:3413〜3416(1989);Kask et al.,Endocrinology 139:5006〜5014(1998);Nijenhuis et al.,Peptides 24:271〜80,(2003);Schoth et al.,Peptides 18:1009〜13(1997);PCT国際公開特許出願第WO06/073772号;米国特許第6,716,810号)。
【0004】
α−MSHは、中枢的に発現したメラノコルチン受容体によって介在される抗炎症効果を有し得る。分子レベルではα−MSHは、炎症及び保護の調節(例えばNF−kB活性化)、炎症性サイトカイン及びメディエーター、IL−10合成、T細胞及び炎症細胞の増殖及び活性、炎症細胞の遊走、抗酸化酵素の発現、並びにアポトーシスに影響を与えるさまざまな経路を有利に調節する。α−MSHの抗炎症性効果は、いくつかの炎症動物モデルにおいて検証されている(論評についてはBrzoska et al.,Endocr Rev.29:581〜602(2008);Getting et al.,ScientificWorldJournal.9:1394〜414(2009),Maaser et al.,Ann N Y Acad Sci.1072:123〜34(2006)を参照)。
【0005】
近年では、テトラペプチド配列His−Phe−Arg−Trpを共通して有するプロオピオメラノコルチン(POMC)誘導ペプチド(メラノコルチン類、例えばα−MSH、β−MSH及びγ−MSH、並びに副腎皮質刺激ホルモン(ACTH))が、さまざまなメラノコルチン受容体を介した作用によって、性的不能、冷感症、拒食症、悪液質、出血性ショック、心筋梗塞、虚血、神経障害性疼痛、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、神経外傷並びに神経障害など、多数の疾患に関与していることが示されている(論評についてはBertolini et al.,Pharmacol Res.59:13〜47(2009);Brzoska et al.,Endocrine Rev.29:581〜602(2008)を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、肥満及びその他のメラノコルチン系介在の病的状態を治療するため、更なるメラノコルチン受容体結合コンジュゲートを開発する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートであって、式I:
B−(L)n−(X)m−(D)p−CH2−CH3 (I)
式中、Bはα−MSH誘導体であり、
Lはリンカーであり、
Xは天然生成の任意のアミノ酸であり、
Dは免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部分であり、
CH2は、免疫グロブリンCH2定常部位の少なくとも一部分であり、
CH3は、免疫グロブリンCH3定常部位の少なくとも一部分であり、
nは0又は1であり、
mは0〜20であり、及び
pは0又は1である
で示されるコンジュゲートである。
【0008】
本発明の別の一態様は、製薬上許容される担体と組み合わせた、請求項1に記載のα−MSH誘導体−Fcを含む医薬組成物である。
【0009】
本発明の別の一態様は、請求項1に記載の医薬組成物をメラノコルチン受容体と接触させることを含む、メラノコルチン受容体の生物活性を調節する方法である。
【0010】
本発明の別の一態様は、本発明の医薬組成物をそれを必要とする被験体に投与することを含む、メラノコルチン受容体媒介の状態を調節する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に引用する特許及び特許出願を含むがそれらに限定されないすべての刊行物は、あたかもその全体が記載されているのと同様に本願に参照によって組み入れるものである。
【0012】
本明細書で使用される用語「α−MSH誘導体」は、野生型α−MSHの断片、同族体、又は類似体を指し、その誘導体内に組み入れられている少なくとも1つの非天然生成アミノ酸を有する。α−MSH断片は、野生型α−MSH又はその類似体のN末端及び/又はC末端からの、1つ以上のアミノ酸の切断後に得られるペプチドである。α−MSH同族体は、野生型α−MSH又はその断片若しくは類似体のN末端及び/又はC末端に1つ以上のアミノ酸が付加されたペプチドである。α−MSH類似体は、野生型α−MSH又は断片の1つ以上のアミノ酸が修飾及び/又は置換されているペプチドである。α−MSH誘導体は、その類似体が野生型α−MSHの生物活性を少なくとも部分的に保持している限りにおいて、野生型α−MSHに対して十分な相同性を有している。α−MSH誘導体は、環状ペプチドであり得、又は、少なくとも1つのアミノ酸側基、α−炭素原子、末端アミノ基、若しくは末端カルボン酸基の化学修飾を有する。「野生型α−MSH」は前駆体のプロオピオメラノコルチン(POMC)から処理されたアミノ酸13個のペプチドであり、MC4Rに対して高い親和性で結合し、MC3R及びMC5Rに対しては低い親和性を有する。「野生型α−MSH」は配列番号:1に示すアミノ酸配列を有する。α−MSH誘導体は、野生型α−MSHの生物活性と実質的に同じか、又はその一部を保持し得る。
【0013】
本明細書で使用される「メラノコルチン受容体」は、メラノコルチン1受容体(MC1R)(配列番号:5)、メラノコルチン2受容体(MC2R)(配列番号:9)、メラノコルチン3受容体(MC3R)(配列番号:6)、メラノコルチン4受容体(MC4R)(配列番号:7)、及びメラノコルチン5受容体(MC5R)(配列番号:8)を含むヒトメラノコルチン受容体群を指す。
【0014】
用語「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミド結合により連結された2つ以上のアミノ酸残基を指すのに同じ意味で用いられる。用語は、あらゆる大きさ、構造又は機能のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドを包含するものとする。典型的には、ペプチドは少なくともアミノ酸6個分の長さであり、タンパク質は少なくともアミノ酸50個分の長さである。
【0015】
本明細書で使用される用語「コンジュゲート」は、抗体のFc部分にα−MSH誘導体が共有結合した結果として形成される分子を指す。このα−MSH誘導体は、誘導体のN末端からFc部分のC末端へと結合でき、あるいは、誘導体のC末端からFc部分のN末端へと結合でき、あるいは、内部アミノ酸から結合できる。α−MSH誘導体とFc部分との間に、所望によりリンカーが挿入され得る。α−MSHとFcの代表的な共有結合は、ヒドラゾン又はセミカルバゾン連結によって達成され得る。
【0016】
本明細書で使用される用語「Fc」又は「Fc部分」はさまざまなペプチダーゼ(例えばペプシンなど)による抗体の消化によって生成される、十分に特性付けられる断片の1つを指し、抗体のヒンジ領域を含み得、ヒンジ領域CH2及びCH3領域の少なくとも一部分を含む。
【0017】
本明細書で使用される用語「リンカー」(L)は、α−MSH誘導体とFcとを例えば1つ以上の共有結合で連結させるのに使用される原子、又は原子の集合を指す。
【0018】
「非天然生成」又は「非天然」アミノ酸は、同じ意味で用いられ、自然から分離されるタンパク質に存在しないアミノ酸を指す。代表的な非天然生成アミノ酸は表1に示されており、更に、D−アミノ酸、β−アミノ酸、擬似グルタミン酸塩、γ−アミノブチラート、ホモシステイン、N−置換アミノ酸(Simon et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:9367〜71(1992);PCT国際公開特許WO91/19735号、米国特許第5,646,285号)、α−アミノメチレンオキシ酢酸(アミノ酸−Glyジペプチド同配体)、並びに、遺伝子にコード化されていない側鎖官能基を有するα−アミノオキシ酸及びその他のアミノ酸誘導体も含まれる。
【0019】
本明細書で使用される用語「エチレングリコールユニット」は、エチレンオキシユニットの繰り返しからなる直鎖オリゴマーを指す。エチレンオキシユニットの末端は、アミノ基及びカルボン酸基、並びにその誘導体の追加によって官能化することができる。代表的なアミノ基はヒドラジンである。
【0020】
「血清半減期の増加」又は「増加したt1/2は、修飾された生物活性分子の、その非修飾形に対する循環半減期の正の変化を指す。タンパク質の血清半減期は、ヒト、又は例えばカニクイザル(Macaca fascicularis)若しくはキイロヒヒなどの動物モデルにおいて測定することができる。血清半減期の代表的な増加は約2倍であるが、これより小さな増加でも有用であり得る。
【0021】
本発明は、非天然生成アミノ酸又は更なる有機部分をα−MSH誘導体内に組み込み、これによりα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの特性改善をもたらし得るような、α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートに関連する。
【0022】
【表1】

【0023】
本発明の一実施形態は、α−MSH−Fcコンジュゲートであって、式I:
B−(L)n−(X)m−(D)p−CH2−CH3 (I)
式中、Bはα−MSHであり、
Lはリンカーであり、
Xは天然生成のアミノ酸であり、
Dは免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部分であり、
CH2は、免疫グロブリンCH2定常部位の少なくとも一部分であり、
CH3は、免疫グロブリンCH3定常部位の少なくとも一部分であり、
nは0又は1であり、
mは0〜20であり、及び
pは0又は1である
で示される前記コンジュゲートである。
【0024】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式II:
【0025】
【化1】

で示される。
【0026】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式III:
【0027】
【化2】

で示される。
【0028】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式IV:
【0029】
【化3】

で示される。
【0030】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式V:
【0031】
【化4】

で示される。
【0032】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式VI:
【0033】
【化5】

で示される。
【0034】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式VII:
【0035】
【化6】

で示される。
【0036】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式VIII:
【0037】
【化7】

で示される。
【0038】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式IX:
【0039】
【化8】

で示される。
【0040】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式X:
【0041】
【化9】

で示される。
【0042】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式XI:
【0043】
【化10】

で示される。
【0044】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式XII:
【0045】
【化11】

で示される。
【0046】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式XIII:
【0047】
【化12】

で示される。
【0048】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式XIV:
【0049】
【化13】

で示される。
【0050】
本発明の別の実施形態において、α−MSH誘導体は式XV:
【0051】
【化14】

で示される。
【0052】
α−MSH誘導体は、よく知られた方法を用いて、例えば化学合成又は組換え型発現又はこれらの組み合わせによって、生成することができる。固相ペプチド合成については、ポリアミド又はポリスチレン樹脂上で、N末端保護基を参照し、t−Boc(tert−ブチロキシカルボニル)及びFmoc(フルオレニル−メトキシ−カルボニル)の化学反応を使用することができる(Merrifield,Ann N Y Acad Sci.104:161〜71(1963))。
【0053】
組換え型生成については、例えばコドン抑制を利用して、α−MSH誘導体内の任意の好適な位置にアルデヒド又はケトン官能基を導入し、非天然生成アミノ酸残基を導入することができ、あるいは、シュードモナス宿主細胞内にα−MSH誘導体を発現させることによって、導入することができる(PCT国際公開特許第WO06/132969号)。代表的な非天然生成アミノ酸は、前述されている。
【0054】
機能に必須であるポリペプチド内のアミノ酸は、よく知られた方法によって識別することができ、例えば化学合成を使用するか又は部位特異的突然変異誘発を使用して変異体を生成し、望ましい生物活性(例えば同系受容体を介して下流への信号を誘発する能力)に関してその変異体を試験することができる。
【0055】
α−MSH誘導体は更に、例えば分子の薬物動態学的特性を改善するために、少なくとも1つの有機部分の共有結合によって修飾することができる。この有機部分は例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリアルカングリコール(ポリエチレングリコール(PEG)を含む)、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー、又はポリビニルピロリドンであり得る。この脂肪酸及び脂肪酸エステルは、約8〜40個の炭素原子を含み得る。代表的な脂肪酸は、ラウレート、ミリステート、ステアレート、アラキデート、ベヘネート、n−トリアコンタノエート、n−テトラアコンタノエート、オレエート、アラキドネート、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、及びドコサン二酸である。ポリアルカングリコールは約800〜約120,000ダルトンの分子量を有し得る。ポリエチレングリコール(PEG)は約100〜5000kD、又は約100〜500kDの分子量を有し得る。これらPEG、脂肪酸及びそのエステルは、末端のアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、及び/又はカルボキシ基で誘導体化され得る。有機部分は、よく知られた方法を用いてα−MSH誘導体に連結することができる(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996);Kolb,Finn and Sharpless,「Click Chemistry:Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions」.Angewandte Chemie International Edition 40:2004〜21(2001);Evans,Australian J.Chem.60:384〜95(2007))。PEGの選択的結合の代表的な方法については記述がなされている(PCT国際公開特許WO99/45026号、同第WO99/03887、米国特許第5,206,344号、及び同第5,766,897号)。
【0056】
本発明のα−MSH誘導体−FcコンジュゲートのFc部分は、例えばパパイン開裂後の無傷の天然生成分離抗体から誘導することができ、あるいは、標準的手法を用いて組換え的又は化学的に新たに合成することができる。ヒト及び動物の免疫グロブリンの配列は、ImMunoGeneTicsデータベース(http://_www._imgt_org)、あるいはKabat,et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1983)で見出すことができる。ヒト生殖細胞系列の情報から得られる配列、並びに既知の有用な治療用ヒト抗体配列及びその変種は、PCT国際公開特許WO05/005604にまとめられている。このFc部分は、任意の免疫グロブリン分類、例えばIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG21、IgG31、IgG24、及びIgM重鎖から誘導され得る。代表的なFc部分は配列番号:2〜3に示されているアミノ酸配列を有する。このFc部分は、Fcを発現することによって、哺乳類においてはグリコシル化形態で、また原核細胞においては非グリコシル化形態で、生成され得る。グリコシル化された抗体は、脱グリコシル化又は非グリコシル化(aglycosylated)又は無グリコシル化(non-glycosylated)された抗体よりもパパイン消化に対してより高い耐性があり、よって脱グリコシル化工程は、天然生成の分離抗体からFc部分を生成するパパイン消化の後で実施すべきである。
【0057】
Fc部分は、例えば補体結合及び抗体依存性細胞の細胞毒性(ADCC)などの抗体エフェクター機能を媒介する。改変エフェクター機能を備えた、Fc領域のポリペプチド配列の特定の天然及び合成変異体には、例えば米国特許第5,624,821号、同第6,528,624号、同第7,122,637号、同第7,183,387号に記述されている変異体ポリペプチドが挙げられる。抗体エフェクター機能はまた、CH2領域においてFcに結合しているグリカンの存在にも依存し得る(Jefferis & Lund,Immunol.Letters.82:57〜65,(2002))。エフェクター機能を誘導することができない無グリコシル化Fc領域は、細菌宿主細胞において組換え的にFc領域を発現することによって生成することができ、あるいは、このグリカンはグリコシダーゼを使用して酵素的に除去することができる。
【0058】
α−MSH誘導体は、所望によりリンカーを介して、免疫グロブリン中の少なくとも1つのFc部分に抱合され得る。相同でないα−MSH誘導体は、1つを超えるα−MSH誘導体が抱合されているときに、このFc部分に抱合され得る。最終的α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートが望ましい生物活性を呈する限り、抱合は、α−MSH誘導体の任意の残基から形成することができる。生物活性は、例えば結合活性についてはインビトロアッセイにより、また例えば動物の疾病モデルにおけるインビボ活性により、あるいは抱合物を投与した後の被験者の反応により、測定することができる。代表的な生物活性は、実施例に記述されているように、MC4R刺激に対する細胞内cAMPにおける増加を測定する。
【0059】
α−MSH誘導体のFc部分に対する抱合は、例えば、α−MSH誘導体に導入された求核基とFc内の反応性カルボニルとの間の還元的アルキル化によって達成することができる。代表的な求核基は、一級アミン基、ヒドラジン基、アシルヒドラジド基、カルバジド基、セミカルバジド基、又はチオカルバジド基である。代表的なカルボニル基は、アルデヒド基又はケトン基である。求核基は、誘導体のN末端、誘導体のC末端、又はアミノ、ヒドロキシル、チオール、カルボン酸、若しくはカルボキサミド官能基を含む任意の側鎖、非天然アミノ酸上の類似の基、又はα−MSH誘導体に結合する有機部分に結合し得る。Fc部分に対する抱合のためのα−MSH誘導体の活性化は、樹脂からの開裂の前に、最終残基でのtri−Boc−ヒドラジノ酢酸を使用した固相合成中になすことができ、これによりヒドラジン誘導体化されたα−MSH誘導体がもたらされ得る。
【0060】
Fc部分のN末端は、例えばアルデヒド又はケトンから反応性(求電子的)カルボニルを生成することによって抱合のための準備がなされる。N末端スレオニン(Thr)又はセリン(Ser)を含むFc部分(例えば反応性カルボニル)は、過ヨウ素酸で酸化することによりN末端グリオキシル酸(glycoxylic acid)誘導体がもたらされ得る(Geoghegan and Stroh,Bioconjugate Chem.3:138〜46(1992);米国特許第5,362,852号;Garnter et al.,Bioconjugate Chem.7:38〜44,(1996);PCT国際公開特許WO98/05363号;米国特許出願第US09/0181037号)。Fc部分は天然にセリン又はスレオニンを有し得、又は、よく知られた方法によってN末端でセリン又はスレオニンを呈するように遺伝子工学的又は化学的に改変することができ、この方法は例えば、Fmoc保護されたα,α’−ジアミノ酢酸誘導体((Fmoc−NH)2CHCO2H)を使用したグリオキシリルペプチドの合成によるものである(Far and Melnyk,J.Peptide Sci.11:424〜30,2005)。別の方法としては、N末端Ser又はThr残基は、トリプシン又はカルボキシペプチダーゼYを使用した逆タンパク質分解を利用することによって、タンパク質中に生成することができ(Rose et al.,Biochem J.211:671〜6(1983))、又は、グリオキシルアミノ基転移反応を使用してアルデヒドを生成することができる(Dixon and Fields,Methods Enzymol.25:409〜19(1979),米国特許第6,077,393号)。
【0061】
このFcがN結合又はO結合グリコシル基を含有する場合、炭化水素は、用いられる酸化剤によって酸化を生じ易く、N末端グリオキサル基の形成に影響を及ぼして、追加の反応性カルボニル種を生成する。炭化水素は、PNGアーゼを用いて化学結合する前に除去され、続いて、疎水性相互作用HPLCで精製することができる。
【0062】
組み込みのストイキオメトリーは、反応のストイキオメトリーを調節することによって、又は好適な立体化学的相互作用を組み入れて制御することによって、制御することができる。
【0063】
代表的なα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートは、IgG1FcのN末端Thrを酸化してグリオキシレートを形成し、その酸化したFcを、結合した有機部分(PEG)のヒドラジン結合を介して式IXのα−MSH誘導体と抱合させ、次にNaBH3CN還元によりこのコンジュゲートを安定化させることによって形成される。
【0064】
α−MSH誘導体は、リンカーを介してFcに抱合され得る。代表的なリンカーには、例えば−NH−(CH2s−C(O)−などのアルキルリンカーが挙げられ、式中、s=2〜20である。このアルキルリンカーは更に、低級アルキル(例えばC1〜C6)、低級アシル、ハロゲン(例えばCl、Br)、CN、NH2、又はフェニルなどの非立体障害性基で置換されていてもよい。代表的なポリマーリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸類、無水マレイン酸ジビニルエーテル、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストランを包含するデキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、セルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを包含するセルロース誘導体、デンプン及びデンプン誘導体、ポリアルキレングリコール及びその誘導体、ポリアルキレングリコール類のコポリマー及びその誘導体、ポリビニルエチルエーテル類、並びにα,β−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルタミド等、又はこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコール(PEG)リンカーは、α−MSHのPEG修飾に関して上述したものと同じ特性を有し得る。
【0065】
このリンカーは生物学的安定性又は生分解性であるポリマー鎖又はユニットを含み得る。例えば、反復結合を有するポリマーは、結合の不安定性に応じて、生理学的条件下での安定度を変化させることができる。そのような結合を有するポリマーは、低分子量類似体類の既知の加水分解速度に基づく生理学的条件下でのその相対的な加水分解速度で分類することができ、例えば、不安定なものからより安定なものまでであって、ポリカーボネート類(−O−C(O)−O−)>ポリエステル類(−C(O)−O−)>ポリウレタン類(−NH−C(O)−O−)>ポリオルトステル類(−O−C((OR)(R’))−O−)>ポリアミド類(−C(O)−NH−)であり得る。同様に、水溶性ポリマーを対象分子に結合させる結合系、例えば、より不安定なものからより安定なもの順でカーボネート(−O−C(O)−O−)>エステル(−C(O)−O−)>ウレタン(−NH−C(O)−O−)>オルトエステル(−O−C((OR)(R’))−O−)>アミド(−C(O)−NH−)は、生物学的に安定又は生分解性であってよい。
【0066】
リンカーは、例えばα−MSH誘導体の、脱保護されたN末端アミノ基、又は側鎖アミノ基を有するその他のアミノ酸(例えばリジン、ジアミノ酪酸、及び4−アミノフェニルアラニン)に対して、保護された二官能基を有するリンカーを結合させることにより、固相合成中にα−MSH誘導体に付加することができる。リンカーは、樹脂に対するリンカーの直接希有号によってα−MSH誘導体のC末端で抱合することができ、次に、このペプチドの集合と、ヒドラジン又はヒドラジン誘導体によるα−MSH誘導体−リンカーの樹脂からの開裂が行われる。このペプチドは、例えばUniversal PEG NovaTag樹脂(Novabiochem)などの樹脂上で調製することもできる。結合の方法はよく知られている。
【0067】
α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートは、式Iに示すように、リンカー(L)とヒンジ(D)との間に、天然生成アミノ酸(X)を1つ以上含み得る。リンカーとヒンジとの間のアミノ酸は、典型的に、抗体のさまざまな領域から誘導され、α−MSH誘導体とFcとの間の距離を増大させるために挿入され、これによってα−MSH誘導体の適切な立体配座構造と活性を促進する。α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートにおける天然生成アミノ酸の代表的な例は、配列GTLVTVSS(配列番号:4)を有するペプチドであり得る。この配列は、リンカーとの共有結合形成を可能にするよう誘導体化され得る。
【0068】
治療の方法
本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートは、幅広い疾患及び病的状態の治療に使用することができる。特定の理論に拘束されるものではないが、本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートは、MC3R及び/又はMC4Rを刺激することにより、メラノコルチン系を刺激することができる。本発明の方法を用いて、任意の分類に属する被験体を治療することができる。こうした被験体の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。例えば、本発明のα−MSH−Fcコンジュゲートは肥満、2型糖尿病、及びメタボリック症候群の治療においてメラノコルチン受容体を刺激するのに有用であり、また、そのような治療のための薬剤の調製にも有用であり、その薬剤は、本明細書で定義される用量での投与用に調製される。
【0069】
本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの投与によって治療され得る疾患及び病的状態には、1型糖尿病、2型糖尿病、脳卒中(PCT国際特許出願WO00/16797号)、心筋梗塞(PCT国際特許出願WO98/08531号)、肥満(PCT国際特許出願WO98/19698号)、手術後の異化(米国特許第6,006,753号)、機能性消化不良及び過敏性腸症候群(PCT国際特許出願WO99/64060号)が挙げられる。耐糖能異常、空腹時血糖異常のある被験体、体重指数(BMI)が25超の体重超過被験体、一部膵切除又は妊娠糖尿病のある被験体、及び急性又は慢性膵炎を有する被験体は、本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートで治療することができる。また、例えば非インスリン依存性糖尿病を発症するリスクのある被験体(PCT国際特許出願WO00/07617号)など、MSH化合物での予防的治療が必要な被験体も含まれる。
【0070】
具体的な生物学的効果は、限定的な機能のα−MSH誘導体での治療によって誘発され得る。野生型α−MSHの生物活性の一部を有するα−MSH誘導体で被験者を治療することにより、天然生成形態のタンパク質で治療することに比べて、被験者に副作用をほとんど発症させない可能性がある。
【0071】
投与/医薬組成物
メラノコルチン系の調節が望ましいような病的状態の治療又は予防における、α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの「治療的有効量」は、標準的な研究技法によって決定することができる。例えば、肥満、糖尿病又はインスリン抵抗性の治療又は予防において有効となる薬剤用量は、関連する動物モデルにその薬剤を投与することによって決定することができる。
【0072】
更に、場合によりインビトロアッセイを用いて最適な用量範囲を特定することができる。特定の有効用量の選択は、当業者であれば幾つかの因子の考慮に基づいて(例えば臨床試験によって)決定することができる。このような因子としては、治療又は予防される疾患、伴う症状、患者の体重、患者の空腹時グルコース及びインスリン、及び当事者により既知の他の因子が挙げられる。製剤に使用される正確な用量は、投与経路、及び疾患の重篤度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に基づいて決定されなければならない。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から外挿することができる。
【0073】
本発明の方法では、α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートは単独で、又は少なくとも1種類の他の分子と組み合わせて投与することができる。そのような付加的分子としては、他のメラノコルチン受容体作動薬か、又はメラノコルチン受容体のシグナリングによって媒介されない治療的利益を有する分子が可能である。体重を低下させ、又はインスリン抵抗性を改善する小分子は、そのような付加的分子の例である。
【0074】
本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの治療的使用のための投与方法は、α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートを宿主へと送達するのに好適な任意の経路であり得る。α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの医薬組成物は、例えば経口、直腸、経鼻、下気道、筋肉内、静脈内又は皮下経路を用いて投与することができる。
【0075】
本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートは、製薬上許容される担体内にα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの有効量を有効成分として含む医薬組成物として調製され得る。「担体」という用語は、活性化合物が一緒に投与される希釈剤、助剤、賦形剤、又は溶媒のことを指す。こうした医薬用溶媒は、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物又は合成物由来の水及び油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを使用することができる。これらの溶液は滅菌され、粒子状物質を含まないものである。これらの溶液は、従来の公知の滅菌法(例えば濾過)によって滅菌することができる。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤などの、適切な生理学的状態に必要とされるような、製薬上許容できる補助物質を含有し得る。そのような薬学的製剤中の本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの濃度は、幅広く変化することができ、すなわち、約0.5重量%未満から、通常は約1重量%又は少なくとも約1重量%から最高15又は20重量%程度まで変化でき、選択された投与の特定の様式に応じて、必要な用量、流体の容積、粘度等に主に基づいて選択される。
【0076】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌緩衝水、及び約1ng〜約100mg、例えば約50ng〜約30mg、又はより好ましくは約5mg〜約25mgの本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートを含むように調製することができる。同様に、静脈内注射用の本発明の薬学的組成物は、250mLの無菌リンゲル溶液、及び約1mgから約30mgの、又はより好ましくは、約5mgから約25mgの本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートを含むように調製されることができる。非経口投与可能な組成物を調製する実際の方法は周知のものであり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PAにより詳細に記載されている。
【0077】
本発明のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートは、保存のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体中に入れて元に戻すことができる。この技術は他のタンパクの調製において有効であることが示されており、周知の凍結乾燥と再構成の技術を援用することができる。
【0078】
本発明は一般的な用語で説明したが、本発明の実施形態は、以下の実施例において更に開示される。
【実施例】
【0079】
(実施例I)
α−MSH誘導体の合成
このペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc 0.1mM Monitoring Previous Peakソフトウェアにより、Fmoc/HBTU化学用SynthAssist 2.0 Versionを用いて調製した。
【0080】
式II〜IVのペプチド。
NovaSyn TGR Novabiochemアミド樹脂(0.1mmol)が合成に使用された。この合成の最終アミノ酸誘導体2つは、tri−BOC−ヒドラジノ酢酸と、O−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−O’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコールであった。
【0081】
合成後、その樹脂に、N−メチルピロリドンで2分洗浄を3回、塩化メチレン/N−メチルピロリドンで2分洗浄を1回、塩化メチレンで2分洗浄を3回、メタノールで2分洗浄を3回、エチルエーテルで2分洗浄を1回行い、減圧下で2時間乾燥させた。
【0082】
ペプチドは、トリフルオロ酢酸(30mL)とフェノール(2.25g)とジチオトリエトール(1.5g)とチオアニソール(1.5mL)とトリイソプロピルシラン(1.5mL)と水(1.5mL)との開裂混合物20mLを用いてシンチレーションバイアル瓶内で室温において4時間攪拌することによって、樹脂から開裂させた。その樹脂を濾過によって除去し、あらかじめ冷却したエチルエーテル(600mL)を加えることでペプチドを沈殿させた。結果として得られた固体を濾過によって分離し、エチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させた。一部のペプチドの合成のため、開裂混合物15mLが使用され、あらかじめ冷却したエチルエーテル400mLでこのペプチドを沈殿させた。
【0083】
ペプチド環化
開裂から得た粗製材料を、微量の酢酸を含んだ50mLの水に溶かした。水600mLを、1M NH4OHを用いてpH8.0に調節した。0.01M K3Fe(CN)6の溶液を水中で調製した。4時間かけて、このペプチドのアリコートをこの水に加え、1M NH4OHを用いてpHを8.0に調節した。フェリシアニド溶液のアリコートを加えて、薄黄色を維持した。添加後、この溶液を更に1時間攪拌した。この溶液に、50mLのBioRad AG−4−X3(100〜200メッシュ、遊離塩基形態)を加えた。この溶液を1時間攪拌し、濾過により樹脂を除去した。濾液を凍結乾燥して、粗製環状ペプチドを得た。
【0084】
この粗製ペプチドを、2本のVydac C−18カラム(10mm、2.5×25cm)で、ペプチドに応じて勾配0〜100%、10〜90%又は10〜80%とし(緩衝液A=0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、緩衝液B=水中80%アセトニトリル/20%水(GAH)中の0.1%トリフルオロ酢酸)、流量6mL/分で60分間かけて精製した。画分を回収し、HPLCで分析し、純粋な画分を蓄積して凍結乾燥した。
【0085】
式V〜VIIのペプチド。式II〜IVのペプチドについての記述と同様に、ただし環化工程を削除して、合成と精製を行った。
【0086】
式VIII及びIXのペプチド。0.25mmolのNovaSyn TGR Novabiochemアミド樹脂が合成に使用された。Lys5については、DDE−Lys(FMOC)が使用された。DDE−Lys(FMOC)を結合させた後、tri−BOC−ヒドラジノ酢酸とO−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−O’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコールを加えた。手動浸透器中で、2分間×4回、2%無水ヒドラジンのDMF溶液で樹脂を処理することにより、DDE基を除去した。この樹脂を合成器に戻し、最後の4つのアミノ酸を結合させ、N末端FMOC基を除去した。
【0087】
シンチレーションバイアル瓶中で、20mLのトリフルオロ酢酸、3gのフェノール、6mLのエタンジチオール、1mLのチオアニソール及び1mLの水の混合物15mLを用いて、室温で4時間攪拌することにより、ペプチドを樹脂から開裂させた。この樹脂を濾過により除去し、あらかじめ冷却したエチルエーテル(200mL)を加えることによってこのペプチドを沈殿させ、このペプチドは上述のように精製された。
【0088】
式Xのペプチド。0.50gの0.20meq/g NovaSyn TGR Novabiochemアミド樹脂が使用された。使用した保護基は、N−末端FMOC、His(Trt)、Arg(Pmc)、Ser(t−Bu)、Lys(BOC)及びLys(DDE)であった。脱保護は、FastMocプログラムに従って希釈されたピペラジン中5% DBUで行われた。残基を結合させ、Ser(O−t−Bu)−Tyr(BOC)−Ser(O−t−Bu)−Nle−Lys(DDE)−His(Trt)−Phe−Arg(Pmc)−Trp(BOC)−Gly−Lys(BOC)−Pro−Val樹脂を得た。この樹脂を、1mL無水酢酸、9mL DMF、及び0.1mL DIEAの溶液で10分間処理することにより、手動でアセチル化した。DMFで洗浄した後、手動浸透器中で、2分間×4回、2%無水ヒドラジンのDMF溶液で樹脂を処理することにより、DDE基を除去した。この樹脂を合成器に戻し、上記のプロトコルに従って最終アミノ酸を結合させた。
【0089】
ペプチド樹脂(0.748g)を、TFA/フェノール/エタンジチオール/チオアニソール/水(10mL/1.5g/3mL/0.5mL/0.5mL)の10mLの混合物で、室温で4時間攪拌することにより、脱保護と樹脂からの開裂を同時に行った。この樹脂を濾過によって除去し、濾液を200mLのジエチルエーテルに加え、半時間攪拌した。結果として得られた固体を遠心分離により分離し、エーテルでよく洗い、減圧下で乾燥させて、白色固体0.26gを得た。
【0090】
粗製材料を2本のVydac C−18(25×250mm、10μ)カラムを縦一列にして、3つの等量のアリコートに分けて注入し、20〜100%(水中80%アセトニトリル/20%0.1%トリフルオロ酢酸)を用い、流量5mL/分で120分間かけて溶出させた。ペプチドの収量は典型的に36〜65mgであった。実測分子量と計算分子量は良好に一致した。合成されたα−MSH誘導体の特性は表2に示されている。
【0091】
【表2】

【0092】
式XI〜XVのペプチド。1.25gの0.20meq/g NovaSyn TGR Novabiochemアミド樹脂が使用された。使用した保護基は、N末端FMOC、His(Trt)、Arg(Pmc)、Tyr(BOC)、Lys(BOC)、Lys(Mtt)及びAsp(O−Dmb)であった。脱保護は、FastMocプログラムに従って、ピペリジンで行われた。残基を結合させ、残基を結合させ、例えばFMOC−Asp(O−Dmb)−His(Trt)、Phe−Lys(BOC)−Tyr(BOC)−Lys(Mtt)樹脂を得た。この樹脂を塩化メチレン中1% TFAで20分間、手動で処理し、次に塩化メチレン及びNMPでよく洗浄した。部分的に脱保護された樹脂ペプチドを、室温で30分間、DMFとNMPの混合物中のHATUで処理し、ラクタムの形態を形成した。ラクタムの形成後、この樹脂を合成器に戻し、FMOC−Nle、FMOC−PEG12−CO2H、及びBOC3−ヒドラジノ酢酸の最終結合を行った。ペプチド樹脂(2.15g)を、TFA/フェノール/エタンジチオール/チオアニソール/水(10mL/1.5g/3mL/0.5mL/0.5mL)の10mLの混合物で、室温で4時間攪拌することにより、脱保護と樹脂からの開裂を同時に行った。この樹脂を濾過によって除去し、濾液を400mLのジエチルエーテルに加え、半時間攪拌した。結果として得られた固体を遠心分離により分離し、エーテルでよく洗い、減圧下で乾燥させて、白色固体0.48gを得た。
【0093】
粗製材料を2本のVydac C−18(25×250mm、10μ)カラムを縦一列にして、3つの等量のアリコートに分けて注入し、20〜100%(水中80%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸)を用い、流量5mL/分で120分間かけて溶出させた。ペプチドの収量は典型的に15〜18mgであった。観察分子量と算出分子量は良好に一致した。
【0094】
(実施例2)
一置換又は二置換のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの調製
7E3 IgG Fcの脱グリコシル化
7E3 IgG Fcは、標準的方法を用いてアブシキシマブ(CAS登録番号143653−53−6)を生成するために、パパイン消化によって調製されたIgGのFc部分である。Fc135mL(5mg/mL)をpH7.5の10mMトリスに透析した。この透析液に、PNGアーゼF(500,000μ/mL)を100μLを加え、結果として得られた溶液を37°で3日間インキュベートした。脱グリコシル化されたFcを、TosoHaasフェニル5PWカラム(5.5×200mm、10μm)において緩衝液B0〜50%の勾配、流量11mL/分で溶出させて精製した(緩衝液A:0.1Mリン酸ナトリウム、1M硫酸アンモニウム、pH6.5;緩衝液B:0.1Mリン酸ナトリウム、pH6.5)。分子量:計算値:49,864.4。測定値:49,868.4。
【0095】
脱グリコシル化Fcの酸化
脱グリコシル化Fc(8.9mg/mL)55mLを、pH8.4の1% NaHCO3に透析し、8.6mg/mLの濃度で56.3mLを得た。この濃度を、1% NaHCO3、pH8.4を40.6mL加えることによって、5.1mg/mL(タンパク質10-4mmol/mL、N末端スレオニン2×10-4mmol/mLに等価)に調製した。1% NaHCO3中メチオニン12.5mg/mL(pH8.4)の11.9mLを、Fc溶液に加えた。20mg/mL水中NaIO4の2.12mL(42.4mg)を、Fcに加えた。この反応混合物を、室温で15分間穏やかに攪拌した。エチレングリコール(2.8g、2.3mL)を加えて、反応物を更に20分間穏やかに攪拌した。この溶液を0.1M NaOAc(pH4.5)に透析して、4.0mg/mLを120mL得た。この溶液は2.5mLのアリコートに分け、−20℃に冷凍して、それ以上精製せずに使用した。
【0096】
一置換及び二置換のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの調製
式II〜XVを有するペプチド0.5〜10mgを、Fcアルデヒド(通常3.0mL、2.68mg/mL)に加えた。この試験管を4℃で一晩保管した。100μLの水中10mg/mL NaBH3CNをこの反応混合物に加え、この反応物を4℃で一晩保管した。100〜200mgの硫酸アンモニウムを加えた後、このサンプルをTosoHaasフェニル又はエーテル5PWカラム(21.5×150mm、10μ)に注入し、0〜100%の勾配(緩衝液A=0.1Mリン酸ナトリウム/1M硫酸アンモニウム、pH6.5;緩衝液B:0.1Mリン酸ナトリウム/1M硫酸アンモニウム、pH6.5)で180分間かけて溶出させ、6mLの画分を収集した。
【0097】
カラム画分を、Protein 80 Kitを用いてAgilent Bioanalyzer 2100で分析し、メーカーの説明書に従って処理を行った。望ましい生成物を含む画分を蓄積し、10kDa分子量カットオフでAmicon Ultra−15遠心分離フィルターデバイスを用いて濃縮し、10kDa分子量カットオフでPierce Slide−a−Lyzer透析カセットを用いてPBSへと透析を行った。典型的な収量は1.2〜12mgであった。実測分子量と計算分子量は良好に一致した。表3は、調製したα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートを示す。
【0098】
【表3】

【0099】
(実施例3)
一置換又は二置換α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの生物活性
環状AMP(cAMP)アッセイ
アッセイのため、ウェル当たり細胞数65,000個の密度でCHO細胞を、DMEM/F12、10% FBS、1%ピルビン酸ナトリウム、1%L−グルタミン中、ウェル当たり100μL中、96ウェル組織培養プレートに入れ、37℃で一晩インキュベートした。翌日、この培地を細胞培養プレートから吸引し、代わりに、温めた無血清DMEM/F12及び1mM IBMX(Sigma I7018)90μLを入れて、37℃で15分間インキュベートした。それぞれのα−MSH誘導体−FcコンジュゲートをPBS中0.5% BSAで希釈した連続希釈10μL(40μM〜4nM)を、IBMX培地及び細胞90μLに加え、37℃で15分間刺激した。この刺激済み培地を吸引し、代わりに、キット中に提供されている溶出緩衝液(Tropix cAMP−Screen(商標)システム化学ルミネセンスイムノアッセイシステム(Applera−Applied Biosystemsから販売))100μLを入れ、37℃で30分間インキュベートした。cAMP標準(60μL/ウェル)の細胞可溶化物をアッセイプレートに加えた。cAMP標準の濃度は、60μL当たりcAMPが0.006〜6000pmolであった。このcAMP−APコンジュゲートを、コンジュゲート希釈緩衝液で1:100に希釈し、Tropixキット中に提供されている抗マウス抗体でコーティングされたプレートの各ウェルに30μL加え、次に、抗cAMP抗体60μL/ウェルを加えた。このプレートを、穏やかに振盪しながら室温で60分間インキュベーションした後、提供されている洗浄用緩衝液で6回(300μL/ウェル)洗浄した。100μL/ウェルの基質/エンハンサー溶液を加え、プレートをホイルで覆い、穏やかに振盪しながら室温で30分間インキュベーションした。このプレートを、ルミネセンス測定を用いて、Victor3V 1420 Multilabel Counter(Perkin Elmer)で測定した。
【0100】
試験を行ったα−MSH誘導体−FcコンジュゲートのEC50値を表3に示す。アシル化α−MSH(Phoenix Pharamceuticals)(Ac−NH−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−CO−NH2)が参照として用いられた。この参照は、S字状の用量−反応曲線を呈し、EC50値は0.1549nMであった。
【0101】
α−MSH誘導体−Fcコンジュゲート一置換の式V−Fc、二置換の式V−Fc、及び一置換の式XIV−Fcコンジュゲートが、cAMPアッセイにおいて、0.26μMの単回用量で検査された。これらのコンジュゲートで刺激されたcAMPの濃度は、平均でそれぞれ、35.663pmol/ウェル、12.879pmol/ウェル、及び48.717pmol/ウェルであった。
【0102】
(実施例4)
一置換又は二置換のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートの選択性
式X−Fcコンジュゲート及び式VII−Fcコンジュゲートの受容体選択性が、GeneBLAzerアッセイキットと、メーカーの説明書に従いMC1R(配列番号:5)、MC3R(配列番号:6)、MC4R(配列番号:7)、又はMC5R(配列番号:8)(Invitrogen(Carlsbad,CA))を過剰発現しているCHO−K1細胞株とを用いて、分析が行われた。受容体活性化に伴うcAMPの増加は、環状AMP反応エレメント(CRE)の制御下で、β−ラクタマーゼレポーター遺伝子を用いて評価された。
【0103】
この分析のEC50値が表4に示されている。
【0104】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−MSH誘導体−Fcコンジュゲートであって、式I:
B−(L)n−(X)m−(D)p−CH2−CH3 (I)
式中、Bはα−MSH誘導体であり、
Lはリンカーであり、
Xは天然生成の任意のアミノ酸であり、
Dは免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部分であり、
CH2は、免疫グロブリンCH2定常部位の少なくとも一部分であり、
CH3は、免疫グロブリンCH3定常部位の少なくとも一部分であり、
nは0又は1であり、
mは0〜20であり、及び
pは0又は1である
で示される前記コンジュゲート。
【請求項2】
前記α−MSH誘導体が、少なくとも1つのエチレングリコールユニットによって修飾されている、請求項1に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲート。
【請求項3】
前記α−MSH誘導体が、12個のエチレンオキシユニットによって修飾されている、請求項1に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲート。
【請求項4】
前記エチレンオキシユニットが、前記α−MSH誘導体のN末端に結合している、請求項3に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲート。
【請求項5】
前記エチレンオキシユニットが、前記α−MSH誘導体の内部リジンアミノ酸残基に結合している、請求項3に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲート。
【請求項6】
mが0である、請求項1に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲート。
【請求項7】
前記リンカーが、ヒドラジン基又はカルボヒドラジド基である、請求項1に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲート。
【請求項8】
前記α−MSH誘導体が、式II〜XVに示す構造を有する、請求項1に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲート。
【請求項9】
製薬上許容される担体と組み合わせた、請求項1に記載のα−MSH誘導体−Fcコンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の医薬組成物をメラノコルチン受容体と接触させることを含む、メラノコルチン受容体の生物活性を調節する方法。
【請求項11】
前記メラノコルチン受容体が、メラノコルチン1受容体(MC1R)、メラノコルチン3受容体(MC3R)、メラノコルチン4受容体(MC4R)、又はメラノコルチン5受容体(MC5R)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9に記載の前記医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記メラノコルチン受容体が媒介する状態を調節する方法。
【請求項13】
前記メラノコルチン受容体が媒介する状態が、肥満又は2型糖尿病である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記メラノコルチン受容体が媒介する状態が、男性勃起不全、女性の性的機能不全、炎症状態、又は線維症である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症状態が、アレルギー性炎、痛風性関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、虚血後の腎損傷、肝炎、虚血脳障害又は末梢神経障害である、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−526116(P2012−526116A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509836(P2012−509836)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/032501
【国際公開番号】WO2010/129248
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(509087759)ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】