説明

メラノーマ関連MHCクラスI関連オリゴペプチドおよびその使用

【課題】ヒト主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子に結合可能である免疫原性ペプチドの新規なアミノ酸配列を提供すること。さらに、癌治療におけるこれらのメラノーマ関連オリゴペプチドを提供する。
【解決手段】CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によってペプチド抗原として認識され、CTLに誘導される腫瘍細胞の溶解および/またはアポトーシスを誘発する特定のメラノーマ関連オリゴペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によってペプチド抗原として認識され、CTLが誘導する腫瘍細胞の溶解および/またはアポトーシスを誘発する特定のメラノーマ関連オリゴペプチドに関する。本発明はまた、癌治療におけるこれらのメラノーマ関連オリゴペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD8陽性CTLは細胞免疫系のエフェクター細胞である。それらの機能は、感染または変性した内在細胞を特異的に排除することにある。とりわけCTLは、クラスI主要組織適合複合体(MHC)に結合し、変性細胞の表面に提示されている腫瘍特異性または腫瘍関連性ペプチド抗原(TAA)を認識する。MHCクラスI分子に関してペプチド抗原は、CTLの特定の膜結合T細胞受容体(TCR)により認識される。認識後、CTLは標的細胞を溶解し、および/または標的細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)を誘導するか、またはサイトカインを放出して、関連した細胞は死滅する。本発明は、ヒト主要組織適合複合体(MHC)クラスIの分子への結合能を有するこれらの腫瘍関連ペプチドに関連する。このようなペプチドは、例えば腫瘍疾患の免疫療法で使用する。
【0003】
免疫系を経て腫瘍細胞を排除する際、免疫系の成分による腫瘍関連抗原(TAA)の認識は優れた役割を担っている。この機序は、腫瘍細胞と正常細胞間には質的または量的差異があるという前提条件に基づいている。抗腫瘍応答を誘発するため、腫瘍細胞は、腫瘍を排除するに十分な免疫学的応答が起こる抗原を発現する必要がある。
【0004】
細胞傷害性T細胞によりこのような免疫反応を誘起するため、外来タンパク質/ペプチドをT細胞に提示しなければならない。MHC分子によりこれらを細胞表面に提示すれば、T細胞はペプチドフラグメントとしての抗原のみを認識する。これらMHC分子(「主要組織適合複合体」)は、細胞内で通常ペプチドに結合し、ペプチドを細胞表面へ輸送するペプチド受容体である。ペプチドとMHC分子のこの複合体はT細胞により認識可能である。ヒトMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称する。
【0005】
MHC分子には2つのクラスがある:MHCクラスI分子はほとんどの有核細胞に見られ、内在タンパク質のタンパク質分解により形成されるペプチドを提示する。MHCクラスII分子はプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)においてのみ見られ、エンドサイトーシスの間、APCに受け取られ処理される外来タンパク質のペプチドを提示する。ペプチドおよびMHCクラスIの複合体は、CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球に認識され、ペプチドおよびMHCクラスIIの複合体は、CD4ヘルパーT細胞に認識される。
【0006】
細胞性免疫応答を誘起することが可能なペプチドについて、そのペプチドはMHC分子に結合する必要がある。この過程はMHC分子の対立遺伝子およびペプチドのアミノ酸配列に依存している。MHCクラスI結合ペプチドは通常8〜12残基長であり、その配列中に、MHC分子の対応する結合溝と相互に作用する2つの保存残基(「アンカー」)を含んでいる。
【0007】
腫瘍由来ペプチドに対して有効なCTL応答を開始することが可能な免疫系にとって、そのペプチドは、腫瘍細胞によって発現する特定のMHCクラスI分子に単に結合可能であるというだけでなく、特定のT細胞受容体(TCR、「T細胞受容体」)でT細胞に認識される必要がある。
腫瘍ワクチンを開発する主な目的は、CD8CTLに認識される腫瘍関連抗原の同定および性質決定である。
【0008】
腫瘍特異性細胞傷害性Tリンパ球により認識される抗原またはそのエピトープはそれぞれ、酵素、受容体、転写因子等の全クラスのタンパク質由来の分子であり得る。他の重要なクラスの腫瘍関連抗原は、例えば多様な腫瘍タイプおよび健常精巣組織で発現するCT(「癌精巣」)抗原といった組織特異的構造体である。
【0009】
MHCクラスI分子に関して腫瘍細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチド抗原には、例えば、MAGE‐3ではWO95/25739A1(特許文献1);メラノーマおよびチロシナーゼではUS6,660,276(特許文献2)ならびにメラノーマおよびgp100ではEP0 668 350 B1(特許文献3)の記述が挙げられる。
【0010】
したがってTAAは腫瘍ワクチンの開発の出発点を意味する。TAAを同定および性質決定する方法は、一方では患者で事前に誘導されたCTLの使用に基づいているか、あるいは腫瘍と正常組織間の差次的転写プロファイルの作成に基づいている。
【0011】
ワクチン接種研究はこれまで、癌タイプ/生殖細胞系およびメラノソームタンパク質のカテゴリーから数種の腫瘍関連抗原を使用することに限定されていた。腫瘍組織で高頻度に発現し、集団内で高頻度に発生するHLA対立遺伝子中で提示される抗原が主に使用される。研究中治療を受ける患者がワクチン抗原に対して免疫応答可能であるかはまた、調査しなかった(例えばRosenberg, YangおよびRestifo Nat Med 10:909, 2004(非特許文献1)を参照)。
【0012】
しかしながら、この戦略は腫瘍組織と生体自身の免疫系間の相互作用の、推定される基本的特性を考慮していないものである。集団全体において、伝染性で生命を脅かす感染での選択過程で、免疫応答のための優性抗原(dominant antigen)および優先的(preferential)HLA制限分子は認識可能となり、感染の克服およびその後の耐久性のある保護に本質的に寄与する。このような一定で、しかも反復的に観察可能な反応パターンは悪性腫瘍との相互作用において予期されないものである。この原因は:
‐腫瘍での遺伝的および後成的事象に起因する、悪性腫瘍の(同様の組織学的起源でさえ)個体間で多様な抗原表現型、
‐HLA対立遺伝子の明白な多型、
‐特定のエピトープに反応する個々のT細胞レパートリーの能力にある。
【0013】
数十種の腫瘍ペプチド抗原がT細胞に認識されることが知られている(例えばhttp://www.cancerimmunity.org/peptidedatabase)。しかし、これらは患者の抗腫瘍T細胞応答を立証するには確かに不十分である。本発明者らが説明したモデルにおいて、既知のペプチドに向けられていた抗腫瘍T細胞クローンは最大で11%であった。それに代わりそれらは、個々に特異的に突然変異したペプチド、または患者自身のHLA対立遺伝子を経て提示された構造的に正常な腫瘍関連抗原の未知のペプチドを認識した。このことから、ヒト抗腫瘍T細胞レパートリーの組成物では個体間差が大きいことが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第95/25739号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,660,276号明細書
【特許文献3】欧州特許第0 668 350号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Rosenberg, YangおよびRestifo Nat Med 10:909, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この背景技術に対して、本発明の目的は、ヒト主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子に結合可能である免疫原性ペプチドの新規なアミノ酸配列を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第一の態様では、この目的は、メラノーマ特異性免疫原、特に単離した形態による発明にしたがって解決するものであり、この免疫原は9〜約15残基長のペプチドで、配列番号1〜12、さらに特定すると配列番号2、3および6〜12より選択されたアミノ酸配列から成り、ここでは、基礎となる腫瘍抗原の全長配列にペプチドが応答しないのであれば、免疫原はメラノーマ特異性HLA制限CTL応答を誘発する。
【0018】
2名のメラノーマ患者(D05‐GSおよびD14‐SJRと称する)における本発明の範囲内では、12種の新規なエピトープ(免疫原性ペプチド)を、癌/生殖細胞系(=CG)およびメラノソームタンパク質のカテゴリーの既知の腫瘍抗原から同定する。ここでは前記エピトープは、患者の血液由来の腫瘍反応性CD8T細胞に、それ自身の腫瘍細胞上で、また前記患者に存在するHLAクラスI対立遺伝子に関連して認識される。2種の突然変異抗原は、腫瘍特異的「ミスセンス」変異で遺伝子にコードされたことが分かった。突然変異の結果として、個々の患者のT細胞に認識される免疫原性ペプチドが産生される。以下の表1ではペプチドが収載されており、これらは最低濃度のT細胞、ならびにペプチドが提示されるためのHLA対立遺伝子に認識される。
【0019】
本発明の範囲内では、用語「免疫原」、「免疫原性オリゴペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は同じ意味として使用される。
【0020】
本発明にしたがって同定された免疫原は、ペプチド配列WQYFFPVIF(配列番号1;HLA‐Cw020202制限);KRCFPVIFGK(配列番号2;HLA‐B270502制限);KVDELAHFL(配列番号3;HLA‐Cw0501制限);NMVPFFPPV(配列番号4;HLA‐A020101制限);MPREDAHFIY(配列番号5;HLA‐B510101制限);LYPEWTEAQR(配列番号6;HLA‐A24020101制限);KYKDYFPVI(配列番号7;HLA‐Cw0702またはHLA‐A24020101制限);ASSASSTLYL(配列番号8;HLA‐Cw150201制限)、SSASSTLYL(配列番号9;HLA‐Cw150201制限)およびVPSGVIPNL(配列番号13;HLA‐B070201制限)から成る。本発明にしたがって、野生型配列と比較して、変異した2種のTAAエピトープも同定し(下線の変異アミノ酸)、すなわちLRTKVAEL(配列番号10;HLA−B270502制限)およびYPPPPPAL(配列番号11;HLA‐B510101制限)であった。
【0021】
免疫原/オリゴペプチドを用いて、本発明にしたがって細胞傷害性T細胞を生成することが可能であり、これは本発明の免疫原/オリゴペプチドを発現する腫瘍細胞に対する抗原特異的MHC制限細胞傷害性活性を起こし、その腫瘍細胞を破壊するものである。
【0022】
したがってこれらのペプチドは、腫瘍患者に頻繁に見られる免疫反応の抑制が解除可能である有効な腫瘍治療の可能性を開拓するものである。
【0023】
実施態様に示すように、本発明者らは、細胞傷害性T細胞が本発明に記載のオリゴペプチドに対して非常に有効に産生され、対応するTAAを産生してそれを細胞表面に運ぶMHCクラスI制限的方式で腫瘍細胞を死滅させることを首尾よく立証している。MHCクラスI分子を介して、これらの腫瘍細胞は自身で産生した全タンパク質のフラグメントを提示する。ペプチドを経てT細胞をあらかじめ活性化し、MHCクラスI分子によって提示されたペプチドを、細胞傷害性T細胞がここで認識すれば、T細胞は腫瘍細胞を死滅させる。したがってTAA発現細胞のMHCクラスI分子により提示されたペプチドは、対応するTAAを産生する腫瘍に対する免疫反応を特異的に誘発する有利な能力を呈する。
【0024】
本発明において、本発明による免疫原は9〜11残基長であることが好ましい。配列番号1〜12のさらなるアミノ酸の「中核領域」にはNおよび/またはC末端が存在し得る。これらのさらなるアミノ酸は対応するTAAの元の配列から選択されることが好ましいが、他の既知の20アミノ酸から選択することも可能である。したがって、ペプチドの長さは500、400、300、200、100または50アミノ酸であることが好ましいが、対応するTAAの全体配列に対応しているわけではない(例えばMAGE、gp100等にも言えることである。表1を参照)。これらの拡張されたペプチドは特に細胞の外部負荷に適しており、(この理論に束縛されるわけではないが)さらに提示に対して処理される。ペプチドの長さは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸であることがより好ましい。このような拡張された免疫原はまた、本発明による用語「オリゴペプチド」により構成される。
【0025】
本発明はまた、前述したオリゴペプチドの1つおよび他のペプチドまたはタンパク質から成る融合タンパク質に関しており、それは診断剤または治療剤または予防剤としての使用に、あるいは一般的に配列番号1〜12に見られるオリゴペプチドの1つを認識するT細胞の検出および/または操作に適している。例えば融合タンパク質は、HSA、コラーゲンまたは他のタンパク質および本発明の1つ以上のオリゴペプチドといった担体タンパク質から成ることが可能である。これらの融合はまた、アミノ酸カセットとして本発明に記載の1つ以上のエピトープも含む。この融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは本発明の対象でもある。
【0026】
配列番号1〜12のペプチドの形態を修飾すると、目的の免疫応答も可能となる。
【0027】
本発明の用語では、「修飾」は、ペプチドの任意の化学的、酵素的または他の修飾を意味する。このことは、ペプチドの産生中またはその後にすでに起こり得ることであり、個々のアミノ酸残基の除去または付加、個々のアミノ酸残基の置換、または特定の化学基の結合を介した個々のアミノ酸残基の化学的修飾によっても起こり得る。
【0028】
本発明のさらなる態様は本発明に記載の免疫原に関しており、該免疫原はアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、逆位、および/またはその1つ以上のアミノ酸の化学的または物理的修飾により誘導可能であるアミノ酸配列を有し、前記アミノ酸配列は配列番号1〜12のペプチドの1つのアミノ酸配列に対する機能的な同等物を表しており、前記免疫原はCD8陽性CTLに対するエピトープであり、腫瘍細胞に対するCD8陽性CTLの免疫応答を誘導することに適しており、前記免疫応答は、分子群MHCクラスI、変異型対立遺伝子AまたはBのヒト白血球抗原に制限されている。本発明のさらなる態様は、請求項1〜4のいずれか1項記載の免疫原に対応しているという特徴を有するレトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチドに関しており、‐CO‐NH‐ペプチド結合に代わり、‐NH‐CO‐結合または他の非ペプチド結合が形成される(例えばMeziere C, Viguier M, Dumortier H, Lo-Man R, Leclerc C, Guillet JG, Briand JP, Muller S. In vivo T helper cell response to retro-inverse peptidomimetics. J Immunol. 1997 Oct 1;159(7):3230-7.)。
【0029】
免疫原は本発明にしたがう免疫原であることが特に好ましく、該免疫原は配列番号1〜12のペプチドの1つと同一である。
【0030】
本発明はまた、上述のオリゴペプチドの1つ、HLA分子の重鎖および柔軟なリンカーから成ることが好ましく、オリゴペプチドがHLA分子のペプチド結合溝を占めるように構成される(それぞれ、占めるのに適した、または占めることが可能な、または可能ならしめられた)方式で設計されている融合タンパク質に関しており、融合タンパク質は診断剤または治療剤または予防剤としての使用に、あるいは一般的に配列番号1〜12に配置されているオリゴペプチドの1つを認識するT細胞の検出および/または操作に適している。この融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは本発明の対象でもある。
【0031】
さらなる好ましい実施態様において、本発明は、本発明にしたがう少なくとも1つの免疫原をコードする配列セグメントを含むヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに関している。それ以外に、核酸は、ペプチドに対応する核酸配列を発現するのに必要なさらなる配列を任意に含む。使用の核酸は、細胞中のペプチドに対応する核酸配列の発現を可能にするのに適したベクターに含まれることは可能である。
【0032】
このような核酸は、ペプチドより化学的に安定していて感受性が低いという利点を有する。したがって操作はペプチドの場合よりも簡便であり、核酸の保存に対する適合性はほとんど無限である。それらは化学的におよび/または分子生物学的に非常に費用効率が高く、非限定的な量で原則的に産生可能である。核酸を含むベクターのように、発現に必要な核酸配列は、これにより、核酸を介した細胞発現系を使用することで、非常に費用効率的に大量のペプチドを産生することができる利点を有する。
【0033】
しかしながら、核酸は、対応するペプチドを自身で産生する方式で抗原提示細胞、特に樹状細胞を形質転換し、またその後MHCI分子により、それらを細胞傷害性T細胞またはその前駆細胞に提示することにも使用可能である。このことには、抗原提示細胞による対応するペプチドの提示は、外部からのみ提供されたペプチドを提示する場合より長期間持続するという利点がある。
【0034】
本発明のさらなる態様は、T細胞、特にCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球のインビボまたはインビトロでの活性のための医薬組成物であり、これは、本発明にしたがう少なくとも1つの免疫原および/または本発明にしたがう少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または本発明にしたがう少なくとも1つの融合タンパク質および/または本発明にしたがう少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、任意に許容できる担体および賦形剤も含む。
【0035】
その上、本発明のさらなる態様は、本発明にしたがう少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドを含み、自己、同種、異種または微生物学的起源の細胞に発現し得る組換えDNAまたはRNAベクター分子である。本発明のさらなる態様は、このようなポリヌクレオチドまたはこのようなベクター分子を含んでいる個々の宿主細胞である。
【0036】
本発明のさらなる態様は、MHCIに制限された免疫応答を有効に誘発する量で、本発明にしたがうペプチドまたは本発明にしたがう核酸を含む医薬組成物に関する。
【0037】
このために、該ペプチドおよび/または核酸は適当な通常の生薬として調製可能である。ペプチドの場合、これは例えば、ワクチン接種に通常使用されるアジュバントを含む製剤であり得る。核酸の場合、リポソームまたは小胞を有する製剤も可能である。適当な医薬製剤を使用することにより、初めはそれらを培養し、ペプチドまたは核酸での処理後、患者にそれらを投与するために、あらかじめ抗原提示細胞またはその前駆細胞を抽出する必要なく、生体を直接処理することが可能である。適当な医薬製剤を用いて、腫瘍は予防接種という形で治療し得る。
【0038】
本発明のさらなる態様は、遺伝子治療との関連において、本発明にしたがう核酸の使用に関する。
【0039】
ここで、遺伝子治療は、あらかじめ治療対象の生体から採取した抗原提示細胞、特に樹状細胞またはその前駆細胞を上述のように形質転換した形で行うことが可能であり、形質転換後に体に再投与することを目的としている。すでに述べたとおり、ペプチドの使用と比較して、提示期間が長いという利点がある。
【0040】
他の可能性は、核酸を生体に誘導することであり、核酸が、抗原提示細胞、特に樹状細胞に選択的に受け取られ発現される方式で行われる。この応用の利点は、投与は別として、抽出した樹状細胞またはその前駆細胞の培養および選択的複製などの手段は追加する必要がないことである。
【0041】
本発明はまた、細胞のインビトロでの形質転換または形質移入のための本発明にしたがう核酸の使用に関する。核酸のインビトロでの使用の利点は、例えば、細胞内への核酸の取り込みをかなり促進および改善するがインビボでは使用できないエレクトロポレーションなどの工程および/またはリン酸カルシウムやDEAEデキストランなどの補助剤が使用可能であるということである。
【0042】
すでに述べたとおり、抗原提示細胞、特に樹状細胞は、例えば患者由来のその前駆細胞から得て、その後患者へ再誘導するなどの処理が可能である。
【0043】
本発明の他の態様は、本発明にしたがう少なくとも1つのペプチドまたは核酸を使用し、腫瘍治療または腫瘍予防処置に関する免疫反応を誘発することである。ここでの利点は、腫瘍疾患において高頻度に見られる免疫抑制およびTAAへの耐性は、本発明にしたがうペプチドおよび核酸を使用することによって修復可能であるという事実である。腫瘍治療を確立することに加えて、本発明にしたがう使用も採用可能である。
【0044】
予防的治療は、例えば、遺伝的に素因があるか、あるいはすでに以前腫瘍を発症したことから腫瘍発生のリスクが多い人に主に有益であると思われる。
【0045】
さらなる開発では、本発明にしたがう少なくとも1つのペプチドまたは核酸は抗原提示細胞、特に樹状細胞と共にインキュベートし、その後初めて、抗原提示細胞またはその前駆体が事前に抽出された生体に誘導される。
【0046】
本方法の利点は、この方式で免疫反応を誘発した場合、免疫反応の強弱が変動するアジュバントと共にペプチドを注入した場合と比較して成功がより確実で制御可能になるということである。しかし、特に腫瘍治療の場合、効果のない治療で貴重な時間を失うことのないように免疫反応を誘導する場合、成功を常に確実にしなければならない。
【0047】
本発明にしたがうオリゴペプチド(配列番号1〜12およびその誘導体)はメラノーマ患者の活性的で受動的な免疫化に使用可能であり、配列番号1〜12の対応するエピトープは特定の細胞傷害性Tリンパ球の誘導、生成および増加をもたらすために提示される。該Tリンパ球は個々の患者の腫瘍細胞を特異的に死滅させ、それによってどのような治癒でも媒介し、および/または支持することが可能である。
【0048】
配列番号1〜12のオリゴペプチドおよびレトロ逆位ペプチドまたはそれらから得られた擬ペプチドの誘導体は、関連した元のオリゴペプチド自体と比較して、(配列番号1〜12のオリゴペプチドに対する)機能的自己寛容の可能性をT細胞レベルで回避できるという利点を有する。その反面、いくつかの正常組織での(低)発現に起因するオリゴペプチドは、ある状況では、関連生物(患者生体)のいわゆる寛容原であり、生物自体の(患者自体の)CTLに関して免疫原性はなく、これらのオリゴペプチド(配列番号1〜12の)誘導体は概して、抗原として認識され、CTLの活性化および増加を誘導する。これらの誘導体誘導CTLは概して、関連した野生型配列、配列番号1〜12との高い交差反応性を有し、結果として、その表面上のHLAとの関連において配列番号1〜12を提示するこのような(腫瘍)細胞の溶解および/またはアポトーシスも誘導する。
【0049】
配列番号1〜12のオリゴペプチドの誘導体は、他の哺乳動物または脊椎動物、例えばマウス由来の配列番号1〜12の相同体において自然発生することが特に好ましい。配列番号1〜12の(タンパク質)およびペプチド相同体ならびにそれらをコードする核酸は、生物から比較的簡単に、すなわち直接、従来の単離法で得ることが可能である。
【0050】
オリゴペプチド配列番号1〜12およびその誘導体ならびにレトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチドは従来のペプチド合成法により産生可能であり、これらのオリゴペチドをコードするヌクレオチド配列は、公知の化学的および分子生物学的方法で得ることが可能である。
【0051】
上記の、本発明にしたがうオリゴペプチド、HLA分子の柔軟なリンカーおよび重鎖で、すなわちオリゴペプチドがHLA分子のペプチド結合溝を占めることが可能なように(それぞれ、行い得る位置で、あるいは好適な位置で)行う方式で、融合タンパク質を産生することも可能である。これらの融合タンパク質およびそれらをコードするポリヌクレオチドは診断剤、治療剤または予防剤(の活性物質)として特に適しており、あるいは一般的に、配列番号1〜12に配置されたオリゴペプチドの1つを認識するT細胞の検出および/または操作に適している。
【0052】
本発明にしたがうオリゴペプチド(配列番号1〜12およびそれらの誘導体)、ならびにレトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチドおよび上述の融合タンパク質は、患者のTリンパ球のインビボ誘導にも、患者に本来備わっているか、または適合しない個々の反応性Tリンパ球のインビトロ誘導および増加にも適している。
【0053】
患者のTリンパ球のインビボ誘導および増加のために、様々な方法、例えば(a)本発明にしたがうオリゴペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの1つまたは両方の1つ以上の誘導体および/またはレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または上述した融合生成物を、ペプチド単独またはアジュバントまたはサイトカインと併用して、あるいはリポソームなどの好適な放出系中で注入する方法、(b)少なくとも本発明にしたがうオリゴペプチドの1つ以上またはその誘導体および/またはレトロ逆位ペプチドの1つもしくは擬ペプチドおよび/または融合タンパク質の1つをコードする核酸を‐単独で、あるいは混合して、あるいはウイルスまたは非ウイルスベクターの形態で、あるいは陽イオン性脂質や陽イオン性ポリマーなどの放出系と共に注入する方法、(c)自己、同種異系、異種または微生物学的起源の細胞に、本発明にしたがうオリゴペプチドまたはその誘導体またはそれに類似したレトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチドを負荷する方法、(d)自己、同種異系、異種または微生物学的起源の細胞に本発明にしたがうオリゴペプチドまたは他の種の相同体を、結果的にオリゴペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの1つもしくは両方の誘導体が関連した細胞上に提示されるように、負荷する方法、あるいは(e)自己、同種異系、異種または微生物学的起源の細胞を、少なくとも本発明にしたがうオリゴペプチドもしくはその誘導体またはそれ由来のレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドまたは上述の融合タンパク質をコードする核酸で(「単独」で、あるいは混合して、あるいはウイルスまたは非ウイルスベクターの形態で)形質移入または感染させる方法、が考えられる。
【0054】
インビトロでの誘導および増加の場合、インビトロで得たTリンパ球はその後、点滴または注射または類似の工程により患者に投与する。
【0055】
したがって本発明は、本発明にしたがうオリゴペプチド、および/またはその誘導体、および/またはそれに類似したレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチド、および/または上述の融合タンパク質、および/または少なくとも本発明にしたがうオリゴペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、および/またはT細胞、特にCD8陽性CTLの活性化および機能的状態を検出および/または影響および/または生成および/または増加および/または制御するための共有結合または非共有結合および/または予防剤および/または治療剤(特にワクチン)を使用して、少なくとも1つのこのような本発明にしたがうオリゴペプチドまたはレトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチドが結合する診断剤、特にMHC四量体またはMHC二量体または他の構造を産生するためのオリゴペプチドの1つまたは両方の誘導体、の使用にも関する。
【0056】
治療剤および/または予防剤として、特にワクチンまたは輸液の注射が考えられ、活性薬としてこれらは(a)本発明にしたがうオリゴペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの少なくとも1つの誘導体および/またはこれらのオリゴペプチドもしくはその誘導体の1つに類似した少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または少なくとも1つの上述の融合タンパク質を含み、および/または(b)本発明にしたがうオリゴペプチドをコードする核酸または少なくともこれらのオリゴペプチドの1つの誘導体を含み、および/または(c)特異的にオリゴペプチドおよび/またはその誘導体に向けられた、および/またはこれらのオリゴペプチドまたはこれらのオリゴペプチドの誘導体の1つに類似したレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドに向けられたインビトロ産生Tリンパ球を含む。
【0057】
少なくとも配列番号1〜12のオリゴペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの1つの少なくとも1つの誘導体をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、自己、同種異系、異種または微生物学的起源の細胞でそれぞれ転写または発現し得る組換えDNAまたはRNAベクター分子は、診断剤または治療剤または予防剤をも生成することに特に適している。したがって本発明は組換えDNAまたはRNAベクター分子およびこのベクター分子を含む宿主細胞も含む。
【0058】
本発明にしたがって、診断剤または治療剤または予防剤として、あるいは一般的にTAAを過剰発現する個々の細胞を検出および/または操作するために、ポリクローナル、モノクローナルまたは組換え抗体が使用可能であり、これらは配列番号1〜12のオリゴペプチドに対しておよび/またはこれらのオリゴペプチドの1つの誘導体に対しておよび/またはこれらのオリゴペプチドまたはその誘導体の1つに類似しているレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドに対しておよび/または上述の融合生成物に対して向けられているか、あるいはそれぞれ、個々のオリゴペプチドの1つおよび/またはその誘導体および/またはレトロ逆位ペプチドおよび/またはその擬ペプチドとHLAとの複合体と反応する。
【0059】
配列番号1〜12のオリゴペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの誘導体および/またはこれらのオリゴペプチドの1つまたはこれらのオリゴペプチドの誘導体に類似したレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドあるいは比較的本発明にしたがうこのようなオリゴペプチドまたはレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドに対するポリクローナル、モノクローナルまたは組換え抗体を産生する融合タンパク質、ならびに個々の抗体自体を使用することも本発明の一部を形成している。
【0060】
本発明にしたがって、診断剤または治療剤または予防剤として、あるいは一般的にTAAを過剰発現する個々の細胞を検出および/または操作するために、ポリクローナル、モノクローナルまたは組換えHLA制限T細胞受容体またはそれと機能的に同等の分子が使用可能であり、これらは配列番号1〜12のオリゴペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの1つの誘導体および/またはこれらに類似したレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または上述の融合生成物に特異的である。T細胞受容体またはそれと機能的に同等の分子は自己、同種異系または異種起源であり得る。
【0061】
したがって、以下もまた、本発明の一部を形成する:上述の、配列番号1〜12のオリゴペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの1つの誘導体および/またはこれらに類似したレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドの使用、あるいは、配列番号1〜11の少なくとも1つのオリゴペプチドおよび/または本発明にしたがうこのようなオリゴペプチドまたはレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチド、関連のT細胞受容体自体およびそれと機能的に同等の分子に対する特異性を有するポリクローナル、モノクローナルまたは組換えHLA制限T細胞受容体またはそれと機能的に同等の分子を産生するためのこれらのオリゴペプチドの誘導体をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、ならびにこれらのT細胞受容体またはこれと機能的に同等の分子をコードするポリヌクレオチド、これらのT細胞受容体またはこれと機能的に同等の分子を発現する能力がある発現ベクターならびに対応する宿主細胞の使用。
【0062】
本発明はまたT細胞、特にCD8陽性CTLのインビボまたはインビトロでの活性のための試薬にも関しており、その試薬は特徴として、配列番号1〜12のオリドペプチドおよび/またはこれらのオリゴペプチドの1つの少なくとも1つの誘導体および/またはこれらに類似した少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドまたは上述の少なくとも1つの融合タンパク質を使用し、および/または少なくともオリゴペプチドまたはその誘導体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを使用し、および/または対応するTAAタンパク質または他の種のその相同体を使用して産生される。これらの試薬は、特に治療剤、とりわけワクチン全般であり得る。
【0063】
本発明のさらなる態様は、本発明に記載の配列番号1〜12の免疫原と関連する疾患、特にメラノーマを治療するための医薬組成物であり、該医薬組成物は特徴として、少なくとも1つの免疫原および/または少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または少なくとも1つの融合タンパク質および/または少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび/または少なくとも1つのT細胞受容体および/または少なくとも1つのベクターモジュールおよび/または少なくとも1つの宿主細胞および/または少なくとも1つの本発明にしたがう抗体を含み、任意に好適な添加剤および賦形剤も含む。
【0064】
また、本発明のさらなる態様は、T細胞、特にCD8陽性細胞傷害性T細胞の活性化および機能的状態を検出および/または影響および/または生成および/または増加および/または制御するための診断剤および/または治療剤および/または予防剤を生成するための本発明にしたがう免疫原および/または本発明にしたがうレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または本発明にしたがう融合タンパク質の使用に関する。
【0065】
本発明のいっそうさらなる態様は、腫瘍治療または腫瘍形成を防ぐ処理に関連する免疫反応を誘発するための、本発明にしたがう少なくとも1つの免疫原および/または本発明にしたがうレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または本発明にしたがう融合タンパク質の使用に関する。
【0066】
最終的に、本発明はメラノーマ患者を治療する方法に関しており、該方法は、治療有効量の、少なくとも1つの免疫原および/または少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または少なくとも1つの融合タンパク質および/または少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび/または少なくとも1つのT細胞受容体および/または少なくとも1つのベクター分子および/または少なくとも1つの宿主細胞および/または少なくとも1つの本発明の抗体を、それにより治療効果が得られる量で投与することを含む。他の態様はメラノーマ特異的CTL応答を誘発する方法であり、これは本発明にしたがう応答を誘発する量のメラノーマ特異性免疫原を投与することを含んでおり、任意に上述の賦形剤を併用することもある。
【0067】
本発明にしたがうさらに定義された免疫原の提供は、より多くの患者で治療的ワクチン接種研究を行うことを可能にする。このことに関し、個々に関連した抗原を含有させる機会は増えつつある。
【0068】
前述の特性と明細書に記述された以下の特性は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ示された併用のみならず他の併用または単独でも使用可能であることは理解されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】ワクチン接種の過程、血液採取の時点ならびに患者D05‐GSの腫瘍反応性MLTCおよびT細胞クローンの起源が図式的に示されている。
【図2】リンパ球/腫瘍細胞混合培養(MLTC)において、血液リンパ球を同一のドナー起源の個々の(自己の)腫瘍細胞で刺激した。それにより応答系リンパ球において腫瘍特異性T細胞が増加した。各患者モデルにおいて、数年の研究から血液リンパ球により数種のこのようなMLTC応答系集団が産生され、CD8陽性T細胞を事前除去した後に様々な時点で低温保存した。
【図3A】患者モデルD05‐GSのMLTC3.2(図3A)の試験例。
【図3B】患者モデルD14‐SJRのMLTC4.1(図3B)の試験例。
【図4】図4には、患者モデルD05‐GSのMAGE‐A4/HLA‐Cw5ペプチドの同定を示してある。
【図5】図5には、いわゆるクロム遊離試験における患者モデルD05‐GSから得た全抗原の認識をまとめてある。
【図6A】図6Aおよび6Bには、IFN‐γELISPOTアッセイにおける患者モデルD14‐SJRから得た抗原の認識をまとめてある。
【図6B】図6Aおよび6Bには、IFN‐γELISPOTアッセイにおける患者モデルD14‐SJRから得た抗原の認識をまとめてある。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明はここに、実施態様の例および添付図面の参照を用いて以下詳細に説明するが、これらに限定されるわけではない。
【0071】
メラノーマ患者D05‐GSおよびD14‐SJRにおける本発明にしたがうT細胞認識抗原
【表1】

【実施例】
【0072】
本発明にしたがうメラノーマペプチド抗原の同定を可能にする方法論的手技は以下に記述する。添付図面も参照のこと。
【0073】
安定的に成長するメラノーマ細胞系を患者D05‐GSおよびD14‐SJRの腫瘍から樹立した。また、数年間、オーストラリアのブリズベンでワクチン接種研究に参加したこれらの患者から血液を採取した。図1では、ワクチン接種の過程、血液採取の時点ならびに患者D05‐GSの腫瘍反応性MLTCおよびT細胞クローンの起源が図式的に示されている。それに類似して対応する工程を患者モデルD14‐SJRにも行った(図示せず)。
【0074】
ブリズベンで、これらの血液試料からリンパ球を単離し、低温保存した。本発明を支持するものとして、ブリュッセルのLudwig Institute for Cancer Research(LICRと省略)のPierre van der Bruggen教授は、癌/生殖細胞系(CG)カテゴリーおよびメラニン細胞分化抗原カテゴリー中の合計31個の抗原をコードする発現プラスミド中のcDNAクローンのパネルを作成した(表2)。
【0075】
患者D05‐GSのメラノーマ系から、本発明者らはRT‐PCRを用いて、HLA対立遺伝子、HLA‐A020101、HLA‐B270502、HLA‐B44020101、HLA‐Cw0501、HLA‐Cw020202をクローン化し、患者D14‐SJRのメラノーマ系から、HLA対立遺伝子、HLA‐A030101、HLA‐A24020101、HLA‐B070201、HLA‐B510101およびHLA‐Cw150201をクローン化した。患者D14‐SJRの対立遺伝子、HLA‐Cw0702もまた協力という形で本発明者らは入手することができた。両者のメラノーマ系から、cDNAバンクをpcDNA3.1で構築した。
【0076】
腫瘍反応性MLTCによる候補抗原の試験
【表2】

【0077】
いわゆるリンパ球/腫瘍細胞混合培養(MLTC)において、血液リンパ球を同一のドナー起源の個々の(自己の)腫瘍細胞で刺激した(図2)。
【0078】
それにより応答系リンパ球において腫瘍特異性T細胞が増加した。各患者モデルにおいて、数年の研究から血液リンパ球により数種のこのようなMLTC応答系集団が産生され、CD8陽性T細胞を事前除去した後に様々な時点で低温保存した(図2)。低温保存に先立って、それらを自己メラノーマ細胞および自己EBV形質転換B細胞の認識について調査した。また、MLTC応答系の優先的HLA制限は、腫瘍細胞認識をHLA群特異性抗体で遮断することで判定した(図示せず)。
【0079】
様々な時点で低温保存したMLTC集団を、既知のメラノーマ関連抗原に対する反応性の「パネルテスト」で調査した。このため、前述の抗原をコードする発現プラスミドを、COS‐7細胞または293T細胞中の両患者の各HLA対立遺伝子で形質移入した(表2)。形質移入体はその後、インターフェロン‐ガンマELISPOTアッセイで、MLTC応答系による認識について試験した。図3には、患者モデルD05‐GSのMLTC3.2(図3A)の、ならびに患者モデルD14‐SJRのMLTC4.1(図3B)の試験例がそれぞれ示されている。本発明者らは以下の未知の抗原‐HLA複合体に対するT細胞反応性を総括的に判定した(表2も参照):
【0080】
患者(モデル)D05‐GS
チロシナーゼ/HLA‐Cw5;MAGE‐A3/HLA‐Cw2;MAGE‐A6/HLA‐Cw2;MAGE‐A4/HLA‐B27およびMAGE‐A4/HLA‐Cw5
【0081】
患者(モデル)D14‐SJR
メラン‐A/HLA−B51;gp100/HLA‐A24;MAGE‐A3/HLA‐A24;MAGE‐A6/HLA‐A24;MAGE‐C2/HLA‐A24;MAGE‐C2/HLA−B7;MAGE‐C2/HLA‐Cw7およびMAGE‐C2/HLA‐Cw15
【0082】
次の工程では、これらの抗原に対するペプチドコード遺伝子領域を同定した。このため、抗原コードcDNAはPCRにより断片化し、該フラグメントを発現ベクター中で再度クローン化し、COS‐7または293T細胞中へそれぞれの提示HLA対立遺伝子を同時形質移入し、MLTC集団またはT細胞クローンによる認識についてIFN‐γ‐ELISPOT試験で試験した。認識されたフラグメントをさらに裁断し、認識されたペプチドのC末端が同定されるまで試験した。図4には例として、患者モデルD05‐GSのMAGE‐A4/HLA‐Cw5ペプチドの同定を示してある。数字はcDNAフラグメントにコードされたアミノ酸中のポリペプチド鎖の長さを示している。ペプチドは3工程(I〜III)で同定された。第1の8つのフラグメントの試験から、ペプチドコード領域はアミノ酸86と126間にあることが結論付けられた(I)。第2の試験では、認識されたペプチドのC末端は必ずアミノ酸116〜126間にあることが分かった(II)。1つのアミノ酸によりC末端で連続的に裁断したポリペプチドをコードしたフラグメントの試験の結果として、認識されたペプチドのC末端はアミノ酸121と判定した(III)。C末端ペプチドを正確に位置測定した後、9および10アミノ酸長の最後のペプチドを合成し、T細胞による認識について調査した。表1にこの方式で同定されたペプチドを示す。
【0083】
MLTC応答系の抗腫瘍反応性は既知のメラノーマ関連抗原に対する反応性の合計を上回っていた。MLTC集団を限界希釈法でクローン化し、メラノーマ細胞は認識するが公知の抗原は全く認識しない細胞傷害性T細胞クローンを選択した。
【0084】
このようなクローンを、新規の抗原を探索するcDNAバンクスクリーニングのために選択した。cDNAライブラリーを各100個のcDNAクローンのプール(100プール)群に分けた。このような100プール群の中の2000個からプラスミドを抽出した。cDNAプール群は、COS‐7および/または293T細胞中の個々のモデル系の各HLA‐cDNAで同時形質移入し、形質移入体を、T細胞による認識についてIFN‐γ‐ELISPOTアッセイで試験した。陽性100プール群から、抗原コードcDNAをクローン化した。該クローンの挿入の配列決定を行った。比較のため、データベースの配列、ならびにRT‐PCRにより作製した両患者の自己EBV‐B‐形質転換B細胞由来の相同cDNA配列を使用した。
【0085】
2つの抗原(モデルD14‐SJRのN‐WASPおよびモデルD05のCCT6A(TCP20はCCT6Aと同義語である))で、腫瘍特異的点突然変異が見られた。これらの変異を含み、利用可能なペプチドアルゴリズムにしたがった提示HLA対立遺伝子に結合する合成ペプチドを合成し、T細胞認識について調査した。両ケースで突然変異ペプチドが認識されるが、相同非突然変異ペプチド(CCT6A、図5)は認識されず、野生型ペプチドの認識は変異型(N‐WASP、図6B)と比較して1000倍低頻度である。したがって腫瘍特異的新規突然変異により免疫原性ペプチドが生成された。これまで、他のメラノーマもN‐WASPおよびCCT6Aの突然変異を示すかは不明であった。バンクスクリーニング中に見られる他の抗原、TRP‐2は、T細胞抗原としても知られている構造的に正常なメラノソーム分化抗原に対応している。cDNA断片化を介して、本発明者らは、HLA‐A2、白人集団に最も一般的なHLAクラスI対立遺伝子に提示される新規のペプチドを見出した(表1を参照)。
【0086】
図5には、いわゆるクロム遊離試験における患者モデルD05‐GSから得た全抗原の認識をまとめてある。放射性51Crを用いてクロム酸化した患者のB細胞を、10nmol/lから10−4nmol/lの濃度の指定のペプチドで滴定により添加し、ペプチド反応性T細胞クローンと4時間共インキュベートした。T細胞が該ペプチドを認識するとB細胞が溶解し、それによって細胞からクロムが放出し、その放出を細胞上清から判定した(灰色部分のKは対照を含んでいる;中黒の丸はペプチドのないB細胞の認識を示す;三角は自己クロム酸化メラノーマ細胞を示す;E:T=標的細胞に対するエフェクター細胞の割合)。
【0087】
図6Aおよび6Bには、IFN‐γELISPOTアッセイにおける患者モデルD14‐SJRから得た抗原の認識をまとめてある。ここで、個々のHLA‐cDNAを形質移入した自己B細胞またはCOS‐7または293T細胞も抗原提示細胞として働く。これらは指定のペプチドを添加し、T細胞と20時間共インキュベートした。これらの試験で該ペプチドもまた滴定した(6Aの灰色部分のKは対照を含んでいる:中黒の丸はペプチドのないB細胞の認識を示す;三角はD14メラノーマ細胞の認識を示す。)。
【0088】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原は9〜約15残基長のペプチドであり、配列番号2、3、6、7、8、9、10、11、12、1、4および5から選択されるアミノ酸配列を含み、該免疫原はメラノーマに特異的なHLAによって制限されるCTL応答を誘発し、該ペプチドは基礎となる腫瘍抗原の全長配列には対応していない、メラノーマに特異的な免疫原。
【請求項2】
該免疫原が9〜11残基長である請求項1記載の免疫原。
【請求項3】
該免疫原が配列番号2、3、6、7、8、9、10、11、12、1、4および5のペプチドの1つと同一である請求項1記載の免疫原。
【請求項4】
該免疫原のアミノ酸配列はアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、逆位によって、および/または該配列の1つ以上のアミノ酸の化学的または物理的修飾によって誘導化が可能であり、該アミノ酸配列は配列番号1〜12のペプチドの1つのアミノ酸配列に機能的に同等であり、該免疫原はCD8陽性CTLに対するエピトープであり、腫瘍細胞に対するCD8陽性CTLの免疫応答を誘発可能であり、該免疫応答はMHCクラスI、対立遺伝子変異体AまたはBの分子群のヒト白血球抗原に制限されている請求項1〜3のいずれかに記載の免疫原。
【請求項5】
‐NH‐CO‐結合または‐CO‐NH‐ペプチド結合の代わりに他の非ペプチド結合で設計され、請求項1〜4のいずれかに記載の免疫原に対応することを特徴とする、レトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の免疫原またはレトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチド、HLA分子の重鎖および自由リンカーからなり、該免疫原またはレトロ逆位ペプチドまたは擬ペプチドがHLA分子のペプチド結合溝を占有するように設計された融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の免疫原または請求項6記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原および/または請求項5記載の少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または請求項6記載の融合タンパク質および/または請求項7記載のポリヌクレオチドを含み、任意にそれぞれ許容可能な担体および賦形剤と共に含む組成物であることを特徴とする、T細胞、特にCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球をインビボまたはインビトロで活性化する医薬組成物。
【請求項9】
請求項7記載の少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドを含み、自己、同種、異種または微生物起源の細胞において発現可能な組換えDNAまたはRNAベクター分子。
【請求項10】
請求項7記載のポリヌクレオチドまたは請求項9のベクター分子を含む宿主細胞。
【請求項11】
各免疫原に対する、あるいは各免疫原とHLAとの複合体に対するポリクローナル、モノクローナルまたは組換え抗体を産生するための、請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原および/または請求項5記載のレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または請求項7記載の融合タンパク質の使用。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原および/または請求項5記載のレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または請求項7記載の融合タンパク質と、あるいは各免疫原とHLAとの複合体と特異的に反応する抗体。
【請求項13】
各免疫原に対するポリクローナルまたはモノクローナルまたは組換えT細胞受容体またはそれらと機能的に同等の分子を生産するための、請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原および/または請求項5記載のレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または請求項7記載の融合タンパク質の使用。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原および/または請求項5記載のレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または請求項7記載の融合タンパク質と特異的に反応するT細胞受容体またはそれと機能的に同等の分子。
【請求項15】
請求項14記載のT細胞受容体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項14記載のT細胞受容体を発現する発現ベクター。
【請求項17】
請求項15記載のポリヌクレオチドまたは請求項16記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
少なくとも1つの免疫原および/または少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または少なくとも1つの融合タンパク質および/または少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび/または少なくとも1つのT細胞受容体および/または少なくとも1つのベクター分子および/または少なくとも1つの宿主細胞および/または前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの抗体を含み、任意に好適な添加剤および賦形剤と共に含む医薬組成物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の免疫原の1つに関連する疾患治療用医薬組成物。
【請求項19】
T細胞、特にCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球の活性化および機能状態を検出および/または影響および/または生成および/または増加および/または制御するための診断剤および/または治療剤および/または予防剤を生産するための、請求項1〜4のいずれかに記載の免疫原および/または請求項5記載のレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または請求項7記載の融合タンパク質の使用。
【請求項20】
腫瘍治療または腫瘍形成予防処置に関連する免疫反応を誘発するための請求項1〜4のいずれかに記載の免疫原および/または請求項5記載のレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または請求項7記載の融合タンパク質の使用。
【請求項21】
前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原および/または少なくとも1つのレトロ逆位ペプチドもしくは擬ペプチドおよび/または少なくとも1つの融合タンパク質および/または少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび/または少なくとも1つのT細胞受容体および/または少なくとも1つのベクター分子および/または少なくとも1つの宿主細胞および/または少なくとも1つの抗体の治療有効量を投与し、それにより治療効果を達成することを含む、メラノーマ患者の治療方法。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれかに記載のメラノーマに特異的な免疫原の応答誘発量を投与することを含む、メラノーマに特異的なCTL応答を誘発する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−180359(P2012−180359A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97324(P2012−97324)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2008−528423(P2008−528423)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(506261523)ヨハネス グーテンベルク ウニベルジテート マインツ (6)
【Fターム(参考)】