説明

メラミンベースの難燃剤の製造方法及びポリマー組成物

【課題】メラミンベースの難燃剤の製造方法及びポリマー組成物
【解決手段】
本発明は、メラミン含有化合物とポリオールを1.0:1ないし4.0:1のモル比での反応によってメラミンベースの難燃剤の製造方法に関するものであり、該反応は、200℃ないし300度の温度で、脱ガス手段を装備した押出し機内で、実施される。
さらに、本発明は、前述の方法によって得られるメラミンベースの難燃剤と、前述のメラミンベースの難燃剤を含むポリマー組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出し機内での、ポリマー状キャリア材料の任意的な添加を伴う、メラミン含有化合物とポリオールとの相互間の反応による、メラミンベースの難燃剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は特許文献1から知られている、そこでは、メラミンピロホスフェートとペンタエリスリトールを単一成分の難燃剤として組合せ、容器の中で175℃から275℃の温度で0.5時間から4時間加熱する方法が開示されている。特定の脱ガス条件が合成樹脂中への有効量の難燃剤の配合を保証する。合成樹脂組成物が成形条件に付された場合、重要な発泡は観測されない。生じた生成物は特にポリプロピレンを含む難燃剤の製造に使用される。さらに、この公報は260℃以下の温度で成形できる、安定したメラミンベースの難燃剤の必要性を教える。リン酸、五酸化リン、ジペンタエリスリトール、そしてメラミンの反応生成物は特に安定した難燃剤として開示される。この生成物は発泡することなく246℃以下の温度で成形可能である。この参考文献中に開示された方法の明らかに不利な点は、難燃剤の製造には少なくとも0.5時間から4時間以下の反応時間を必要とするという事実に起因する。
【0003】
メラミンベースの難燃剤の製造方法は特許文献2に開示されている。この参考文献はペンタエリスリトールとメラミンホスフェートを含むパウダーブレンドが製造される方法を開示している。これらのパウダーブレンドは、しかしながら、ポリマー組成物の製品用としてはそれらの適用可能性が大きく制限されており、それは、ポリマー内でパウダーブレンドの形成時、たとえば混合時あるいは射出成形時、に発泡が起こるという事実によっている。
【0004】
難しい問題はリン酸エステル基を含む単一成分の難燃剤は加水分解を受けやすいという事実に起因する。これら難燃剤は、ポリプロピレンのようなポリマー材料とともに混合される場合、それらの感湿性が、ポリマー組成物の難燃効率を減少させ、電気絶縁特性を減少させる原因となる、ポリマーマトリクスからの多量の難燃剤分子浸出を引き起こす。
【0005】
ポリマー状難燃性組成物の耐水性を向上させるさまざまな方法が知られている。それらは、ポリ酢酸ビニルのようなポリマーの部分的リン酸化、ビニルピロリドン及びコモノマーの共重合体を用いたAPP粒子酸源のような極性難燃成分のカプセル化、界面活性剤(非イオン性あるいはイオン性)を用いた難燃剤の改質、あるいはジアルキル酸化錫、ジアルキル錫ジアルコキシド、あるいはポリオール(アルキル炭酸塩)のような他の炭化物形成物間によるポリオール(極性種)の置換を含んでいる。これら方法のうちいくつかはポリマー状難燃性組成物の耐水性の改善に効果があるが、しかししばしば環境上の処理が伴った複雑な付加的処理に終わる。
【特許文献1】米国特許第4,010,137号明細書
【特許文献2】国際公開第00/68337号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の対象はメラミンベースの難燃剤と高い流動性を持つそのマスターバッチのより速い製造方法を提供することである。
本発明のそのほかの対象は難燃性能(UL94 V−0)と機械的特性を保持しながら耐水性を向上させたポリマー状難燃性組成物の製造である。
これらの対象は、本発明による方法によって達成され、それはメラミン含有化合物とポリオールの反応によるメラミンベースの難燃剤の製造方法に関するものである。
【0007】
本発明による方法によって得られるメラミンベースの難燃剤は特に高耐水性の難燃性ポリマー組成物の製造に適している。本発明の方法によって得られ得るメラミンベースの難燃剤の高い熱安定性により、特許文献1に開示されているポリマー組成物と比べると該ポリマー組成物は高い温度の下で成形可能である。
メラミン含有化合物とペンタエリスリトールの混合物を含む難燃性ポリマー組成物は米国特許第4,632,946号明細書に開示されている。この参考文献は、230℃以下の溶融温度において処理されることが可能であるが230℃よりさらに高温では発泡が起こる、ポリマー組成物のみ開示している。これは特許文献1内にすでに言及されているような安定性問題を確認するものである。
【0008】
本発明の対象のさらなる利点は、得られたメラミンベースの難燃剤が特許文献1中に記載されている方法によって得られるメラミンベースの難燃剤よりもさらに高い安定性を表すという事実によって確立される。特許文献1の実施態様IIの難燃剤を含む組成物は、発泡を防止するために232℃より
下の温度で成形しなければならない。本発明の方法によるメラミンベースの難燃剤は280℃以下の温度において少しも発泡を示さない。
【0009】
したがって、本発明はまた、本発明の方法によって得られるメラミンベースの難燃剤に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
メラミン含有化合物とポリオールの反応によるメラミンベースの難燃剤の製造方法に関する本発明による方法は、メラミン含有化合物はメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート及びメラミンポリホスフェートからなる群から選択され、ポリオールはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールからなる群から選択され、そして該反応は押出し機内でメラミン含有化合物とポリオール1.0:1.0ないし4.0:1.0のモル比で反応押出しによって行われ、そして該反応は200℃ないし300℃の温度で実施されることを特徴とする。
本発明の好ましい実施態様では、メラミンベースの難燃剤はメラミンホスフェートとペンタエリスリトールの反応によって製造される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法を用いて、メラミンベースの難燃剤のより速い製造方法が、短期間で得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による方法の中で使用されるメラミンホスフェートのようなメラミン含有化合物と、ペンタエリスリトールのようなポリオールは、どの標準化学品質でもあり得る。好ましくはパウダー形状で該物質は使用される。純粋なペンタエリスリトールは260℃でならびに混合物は260℃より下の温度で溶融する。好ましくは微粉体が使用される。メラミンホスフェートあるいは他のメラミン含有化合物及びペンタエリスリトール並びに他のポリオールは、別々に押出し機に供給されるかあるいはたとえば高剪断ミキサーを用いて予備混合される。好ましくはプレミックスが使用される。これは物質の流出量のコントロールする必要性を減らす。
【0013】
本発明の方法において、メラミンホスフェートのようなメラミン含有化合物とペンタエリスリトールのようなポリオールは押出し機内で反応させる。この方法の実施態様は反応押
出しとして言及される。たとえば一軸あるいは二軸スクリュー押出し機などの、ポリマー加工産業で通常使用されるような押出し機が、この目的に適している。二軸スクリュー押出し機は特に微粉体の取り扱いにおいて好ましい。本発明の方法において、押出し機は脱ガス装置を装備する。通常この脱ガス化の手段は真空ポンプに接続された押出し機内のポートあるいは開口部である。
押出し機内でメラミンベースの難燃剤は生産され、それは押出し物として金型を通って押出し機を出る。押出し物は冷やされ、ならびに、好ましくは切断によって成形された粒子に、好ましくはペレットに成形される。
【0014】
本発明の方法において、メラミン含有化合物とポリオールは反応してメラミンホスフェート−ポリオール縮合物を形成し、それによって対応するモル当量の水が除去される。水は脱ガス化装置によって押出し機から除去される。本出願においてメラミンホスフェート−ペンタエリスリトール縮合物もまたメラミンベースの難燃剤として言及される。
【0015】
メラミンホスフェートのペンタエリスリトールに対するモル比は約1.0:1.0ないし4.0:1.0の範囲である。好ましくはモル比は約2.0:1.0ないし2.4:1.0が選ばれる。優れた安定性のメラミンベースの難燃剤が得られる。最も好ましくは、モル比は約2.2:1.0である。本発明の記載と関連して、熱安定性はメラミンベースの難燃剤を加熱した際の発泡に対する抵抗の度合として定義される。難燃性組成物の熱安定性におけるより厳密な識別のために、熱重量分析(TGA)や示差走査熱量計(DSC)のような、物理化学的な方法を使用され得る。
【0016】
メラミンベースの難燃剤を得るためのメラミン含有化合物とポリオールの反応は約100℃ないし300℃の温度で行うことが可能である。しかしながら、完全な変換のためには反応は200℃より高い温度で行われなければならない。
反応のための最高温度は300℃より下の温度が選ばれる。好ましくは、メラミンホスフェートとペンタエリスリトールの反応は220℃ないし280℃の温度で行われる。220℃ないし280℃で、反応率と反応生成物であるメラミンベースの難燃剤の分解との間によいバランスが得られる。より好ましくは、メラミンホスフェートとペンタエリスリトールの反応は240℃ないし260℃の温度で行われる。この温度範囲で生産されるメラミンベースの難燃剤の熱安定性は優れている。
【0017】
本発明の方法における反応時間範囲は、一般に、1分ないし20分である。240℃から260℃の特に好ましい温度範囲の押出し機内で、非発泡性のメラミンベースの難燃剤の生産には、1バッチで十分であることがわかった。該反応の代替的な実施態様において、押出し機は得られたメラミンベースの難燃剤をもう一度供給される。押出し機の2回の通過で、二倍の滞留時間とそしてそのため二倍の反応時間が得られる。押出し機内のより長い反応時間により、得られたメラミンベースの難燃剤の安定性の増加が達成され得る。この安定性の違いはTGAによって簡単に評価でき、その方法は後述する。さらに、反応の時間は他の手段によって、たとえば、押出し機内のスクリューの毎分回転数の調節によって、あるいは押出し機内でいわゆる静的ミキサーの使用によってもまた変更できる。反応生成物の発泡性は後述の発泡試験の適用によって測定可能である。
【0018】
メラミン含有化合物とポリオールを加えてキャリア樹脂として押出し機にポリマー材料を加えることに利点があることがわかっている。特に、押出し機を270℃より下の温度で操作する際、より一定の押出機処理量は難燃性組成物内に30質量%未満のポリマーが存在する条件によって得られる。ポリマーの量は難燃性組成物の全質量に対して低く、たとえば5.0から30.0質量、特に5.0から20.0%に保たれる。水に晒される時、ポリプロピレンのような適切なポリマー材料の存在下で難燃性組成物は高い耐水性を有し、それは難燃剤のいわゆる浸出効果によって引き起こされる浸食に対してポリマー材料を
保護することにおいて好ましいものであり、この場合、難燃剤はメラミン含有化合物とポリオールの反応生成物である。
【0019】
本発明の好ましい実施態様において、メラミン含有化合物とポリオールの反応は、第三成分の存在下、特に5.0から20.0質量%のポリマーの存在下で行われる。
本発明の特に好ましい実施態様において、メラミンホスフェートとペンタエリスリトールの反応は5.0から20.0質量%のポリマーの存在下で行われる。
【0020】
押出し温度、好ましくは300℃より低い処理温度での溶融処理に適しているどんな種類のポリマー材料でも選ぶことができる。一般に、ポリマーあるいはキャリア樹脂は難燃性を必要とするポリマーマトリクス材料によって選ばれる。ポリエチレンはその大きな入手可能性と容易な処理特性によって最初の選択肢となる。高密度ポリエチレン(HDPE)の使用によって明るい色彩のメラミンベースの難燃剤ペレットが生産され得るという点がわかっており、このことは明るい色彩の難燃性ポリマー組成物を生産するのに有利である。代替的な実施態様において、ポリプロピレンの使用は有利であることがわかっている。高い流動性と優れた難燃性と複合材料の機械的特性を併せ持った、難燃剤マスターバッチとして許容できる色彩が得られる。さらに、ポリマーの使用によってメラミンベースの難燃剤ペレットを得ることはより簡単になる。
【0021】
本発明のポリマー組成物に適する他のポリマーは、300℃より下の温度で、好ましくは280℃より下の温度で加工されるポリマーである。これらポリマーの例としては、たとえばポリプロピレン(PP)(ホモポリマー、コポリマー、あるいはターポリマーのどれでも)などのポリオレフィンである。
【0022】
ポリマー材料としてポリプロピレンを含む難燃性組成物は加工中によい熱安定性を有する。その分解温度はPPの熱分解温度に一致する。典型的な溶融過程はないが、180℃より上では軟化域が観察される。PPと混合する場合、形成粒子は変形し流れることができ、そして有効な混合物と分散物を簡単に得ることができる。混合に際し、柔らかい難燃性組成物は溶融PP樹脂を可塑化することができる。また、少量のPPは組成物の流動性を大幅に改善することができる。したがって、難燃剤含量並びに高い流動性のマスターバッチ生成物が得られる。難燃剤粒子は変形しポリマー溶融物の流出方向に整えられ典型的なファイバー構造を形成する。
【0023】
追加的なポリマー材料の全てを網羅するものではないリストを以下にリストアップする。HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)のようなスチレンを含むポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリウレタン及びこれら材料の混合物並びにブレンド。
【0024】
本発明によるポリマー組成物は、たとえば押出し、混合あるいは射出成形として、よく知られた方法で製造可能である。ポリマー組成物の中の、本発明の方法によって得られるメラミンベースの難燃剤の量は必要とされる難燃性のレベルによる。この必要とされる難燃性のレベルは用途によって異なる。一般に、電子用途あるいは建築用途においては、異なる量が必要とされる。多くの用途で、最大30質量%の量があれば難燃性を保証するのに十分な量である。難燃性組成物は、分解、変色あるいは酸化に対する組成物の特性を改善するために、ポリマー組成物の形成に通常使用される、他の添加剤あるいは助剤材料、たとえば着色剤、顔料、熱そして紫外線安定剤、離型剤、共難燃剤、柔軟剤、潤滑剤、酸化防止剤、流動促進剤、分散剤、充填剤そして強化剤、を含むこともできる。
【0025】
塗料組成物の実施例は顔料充填アルキド樹脂、アクリレートベースのホモあるいはコポリマー、ウレタン、エステル、エポキシあるいはその改質物である。所望により、一般的な
架橋剤をこれらに入れることができる。この塗料組成物の硬化後、塗膜が形成される。難燃性組成物が液体ポリマー、ポリマー溶液あるいは、たとえば塗料のようなポリマー分散液に配合される方法においては、前述の液体ポリマー、ポリマー溶液あるいはポリマー分散液中での助剤材料の選択は該助剤材料の溶解性によって決定される。
【0026】
適切な有機助剤材料は、有機化合物、ビニルピロリドン、酢酸ビニル及びビニルカプロラクタムをベースとするポリマーあるいはコポリマー、あるいはその混合物である。同様に適切であるのはエポキシド、ウレタン、アクリレート、エステル、アミド、ステアレート、オレフィン、セルロース誘導体あるいはその混合物ベースの上記のポリマー、あるいはコポリマー、あるいは追加ポリマー、あるいはコポリマーである。組成物を水性スラリーから製造する場合、このスラリーに容易に添加することができるので、水溶性の有機助剤材料は有利である。
【0027】
本発明の方法によって得られ得るメラミンベースの難燃剤が水を含む液体ポリマー、ポリマー溶液あるいはポリマー分散液に添加される際、凝集体は容易に分散する。ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールならびにポリビニルカプロラクタムは操作が簡単であり、水中でよい溶解性を持つために、広範囲の目的に使用されることができる。
【0028】
有機助剤材料の量は組成物の総質量に対して0.1から10.0質量%に達する。もし、本発明の方法によって得られ得るメラミンベースの難燃剤が、とても高い難燃性の要求を満たさねばならない場合、総凝集体に対して好ましくは0.1から5.0質量%、さらに好ましくは0.1から3.0質量%が使用される。
【0029】
本発明の方法によって得られ得るメラミンベースの難燃剤に言及された有利点はまた、含ハロゲンそしてハロゲン非含有のものも含め、他の難燃性化合物の組成物にも適用されることがわかっている。しかしながら、メラミン、アメリン、ならびに/あるいはアメライドのようなトリアジン化合物、そしてメラム、メレム、そしてあるいはメロンのようなそれらの高濃縮生成物、たとえばメラミンホスフェート塩、メラミンアセテート、メラミンピロホスフェート塩、メラミンポリホスフェートならびに/あるいはメラミンアンモニウムホスフェート塩のようなメラミン誘導体;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、Sb25、酸化亜鉛、アンチモン酸ソーダ、スズ酸亜鉛、ならびに/あるいはホウ酸亜鉛、などの金属化合物を含む、ハロゲン非含有難燃性化合物がより好ましい。
【0030】
本発明に記載された方法によって得られる難燃性組成物の難燃性は、所望によりポリマー組成物の中で炭化物の形成を促進する触媒とともに組合された、難燃性組成物と相乗的な効果を発揮する、炭化物形成化合物のような、追加的な化合物の存在によって増加する。一般的に、フェノール、エポキシ、ポリウレタン、ノボラック、メラミン、アルキド、アリル、不飽和ポリエステル、シリコン、ウレタンそしてアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン コビニル)、スターチあるいはグルコース、からなる群から選択された樹脂状ポリマーのような、炭化物の形成によって難燃性の向上する能力がある、どんな化合物も適する。
タングステン酸の金属塩、タングステンと非金属の酸化物の酸の複合体、酸化スズの塩、アンモニウムサルファメイト、ならびに/あるいはその二量体が炭化物形成を促進するための触媒として使用されることができる。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の非限定的な実施例と比較例で、さらに説明する。
【0032】
適用例では、以下に説明される、さまざまな試験方法を参照する。
●LOI(限界酸素指数)値:ASTM D2863−77に従い、120mm(l)×
6.5mm(b)×3mm(t)のシートにより、ATLAS 限界酸素指数測定機
で測定する。より高いLOI値はよい難燃性能を示す:
●可燃性試験は標準UL94HB試験によって測定する。UL94は、水平に配置された
ロッドの形態の硬質プラスチック試験片のための試験手順を含む。ロッドの寸法は1
27mm(l)×12.7mm(b)である。ロッドの厚さ(t)は目的とする用途
の最小値に応じたものとするべきである。ISO 527−1Aに従い、引張試験と
破断点伸び試験を行う。
●衝撃試験:ノッチ付き衝撃強さはISO180−A/Uに従い、XJ−40A衝撃試験
機を用いて測定する。
●発泡試験:速い成形シミュレーションと生成物の安定性確認のために使用される。発泡
試験において、試料はビーカーに入れられ、280℃の温度で30分間オーブンに入
れられる。発泡は目視評価する。
●TGA:熱重量分析はDupont2100 熱分析機を用いて行われる。試料は室温
から毎分20℃の速度で加熱され、温度に対する質量減少が記録される。
【0033】
実施例1:押出し機を用いたメラミンベースの難燃剤の製造。
メラミンホスフェートとペンタエリスリトールを2.2:1.0のモル比で高剪断ミキサー内で予備混合した。得られたプレミックスを二軸スクリュー押出し機(o=30mm;L/D=32;真空脱気装置を装備)に供給し、該押出し機はスクリュー速度35rpmで操作した。さらに、HDPEを、5:20のHDPE:プレミックス比で押出し機に供給した。押出し機中の平均温度は250℃であり、滞留時間は3ないし5分で、平均4分であった。得られた押出し物はペレット状に切断され、その後、乾燥された。ペレットは明るい色彩を有した。ペレットの安定性は発泡試験とTGAを用いて測定された。結果を表1にまとめた。メラミンベースの難燃剤は、280℃で発泡を示さず、とても安定であることが判る。
【0034】
実施例2ないし4:押出し機の何回かの通過による、メラミンベースの難燃剤の製造。
実施例1で得られたメラミンベースの難燃剤を再度二軸スクリュー押出し機の中に供給し、実施例1で示されたのと同じ処理を与えた。より長い反応時間が得られ、4回の押出し機の通過によって最大16分になった。以下の総滞留時間を得た。
実施例2:2回の押出し機の通過:総滞留時間 = 8分
実施例3:3回の押出し機の通過:総滞留時間 = 12分
実施例4:4回の押出し機の通過:総滞留時間 = 16分
ペレットの安定性は発泡試験とTGAを使用することによって測定された。結果を表1にまとめた。実施例1のように、これらの実施例によって得られた難燃剤は発泡を示さなかった。その上、TGAの結果は、実施例4の生成物のより低い質量減少を示し、難燃剤の安定性はより長い総滞留時間においてさらに増加することが反映されている。
【0035】
比較例A,B:特許文献1中の表1の実施態様2に従う、250℃でのメラミンピロホスフェートとペンタエリスリトールの加熱。
メラミンピロホスフェートとペンタエリスリトールを、モル比2.2:1.0で、高剪断ミキサー内で、予備混合した。得られたプレミックスをビーカーに入れ、250℃のオーブンの中で加熱した。加熱は20分間(比較例A)、あるいは40分間(比較例B)行った。
【0036】
得られた生成物の安定性は、発泡試験を使用することによって測定した。結果を表1にまとめた。
【表1】

【0037】
実施例5:メラミンホスフェートとペンタエリスリトールのモル比を1.6:1.0にし、そして追加キャリア樹脂をポリプロピレン(PP)にし、PP:プレミックス比率を10:90にした以外は、実験条件と手順は実施例1で適用されたものと同様であった。
【0038】
実施例6:実験条件と手順は、追加キャリア樹脂を高HIPSにし、HIPS:プレミックス比率を10:90にした以外は、実施例5で適用されたものと同様であった。
【0039】
実施例7ないし9:本発明に従うメラミンベースの難燃剤を含むポリマー組成物の製造。実施例5ないし6によって得られたメラミンベースの難燃剤と二種類の酸化防止剤を含む、ポリプロピレン(PP、ホモポリマー、メルトインデックス 3.4g/10分[230℃、2.16kg、ISO1133(手順A)による])ベースのポリマー組成物を生産した。表2で定義された組成物は実施例1で示された二軸スクリュー押出し機に供給され、該押出し機は70rpm、190℃の温度で操作された。押出し機を出た押出し物は水浴中で冷却され、ペレット状に切断され、乾燥された。以下のポリマー組成物が得られた:
【0040】
実施例7:難燃性組成物は実施例1によって製造された。
実施例8:難燃性組成物は実施例5によって製造された。
実施例9:難燃性ポリマーマトリクスはHIPSでありそして使用された難燃剤は実施例6によって製造された。
これらのペレットから、試験片は250℃の温度で成形された。成形は問題なく実施された。どんな発泡あるいは取り込まれたガスも試験片中に見られなかった。試料のいくつかの特性を評価し、表2にまとめた。引張強度と衝撃強度は純PPのレベルにあり、引張強度と衝撃強度は各々36.1MPaと45l/mであった。その上さらに、LOIは純PPについては17.5から28に増加し、UL94レベルは、ポリマー組成物については失格からV−Oレートに増加した。
【0041】
比較例C:メラミンホスフェートとペンタエリスリトールの混合物を含むポリマー組成物の製造
ポリマー組成物は実施例7と類似の方法で生産された。難燃剤としてメラミンホスフェートとペンタエリスリトールの混合パウダー(2.2:1.0の比率)はポリプロピレンと一緒に押出し機へ供給された。試験片は、実施例7にまとめられたものと類似の手順で成形された。成形の間に発泡が起こった。さらに、表2に見られるように、36MPaの引
張強度をもつ純PPと比べて、機械的特性は減少した。
【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン含有化合物とポリオールの反応によるメラミンベースの難燃剤の製造方法であり、メラミン含有化合物はメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート及びメラミンポリホスフェートからなる群から選択され、ポリオールはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールからなる群から選択され、該反応は押出し機内でメラミン含有化合物とポリオールを1.0:1.0ないし4.0:1.0のモル比で反応押出しによって行われ、該反応は200℃ないし300℃の温度で実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
メラミンベースの難燃剤はペンタエリスリトールとメラミンホスフェートの反応によって製造されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
押出機は二軸スクリュー押出機であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メラミン含有化合物とポリオールの反応は30質量%以下のポリマーの存在下で行われることを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
メラミン含有化合物とポリオールの反応は5から20質量%のポリマーの存在下で行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーはポリエチレン、ポリプロピレン及び耐衝撃性ポリスチレンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ポリエチレンは高密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって得られるメラミンベースの難燃剤。
【請求項9】
少なくとも一種のポリマー及び請求項8に記載のメラミンベースの難燃剤を最大30質量%含むポリマー組成物。
【請求項10】
ポリマーはポリプロピレンであることを特徴とする、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
請求項8に記載のポリマー組成物を含む成形物。


【公表番号】特表2006−510755(P2006−510755A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560501(P2004−560501)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050955
【国際公開番号】WO2004/055029
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】