説明

メランジヘヤー調ファンシーヤーンの製造法

【目的】 メランジヘヤー調ファンシーヤーンの製造法を提供する。
【構成】 沸水収縮率20〜40%のカチオン可染アクリル繊維と、繊度8〜15dの異形断面の酸性可染アクリル繊維と、カチオン可染アクリル繊維との三者混綿の粗糸と、沸水収縮率20〜40%のカチオン可染アクリル繊維の粗糸とを一緒に紡出して所定の実撚をかけて紡績糸にしてから染色する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、メランジヘヤー調ファンシーヤーンの製造法に関し、詳しくは異色効果のある外観を有し、且つわん曲の少ないヘヤーを有するメランジヘヤー調ファンシーヤーンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ヘヤー調ファンシーヤーンの製造は、バルキーヤーンを起毛するか、または、ファンシーループヤーンを起毛するか、または、エアージェットにより強制的に糸より繊維を引出すかによって行なわれている。発生するヘヤーの状態は、それぞれの方法で異なるものの、紡績、染色工程以外に起毛工程の導入が必要であり、加工工程が長くなり、生産管理も繁雑であった。また、従来より、メランジ効果のある紡績糸を得るためには、異色の先染めステープルを混紡するか、または染色性の異なる異種繊維を混綿して染色する方法によって行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特別な起毛等の装置を使用することなく、メランジヘヤー調ファンシーヤーンを製造する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するために、次のような構成をとる。すなわち、本発明は、繊度が2〜5デニール、沸水収縮率が20〜40%、平均繊維長が70〜150mmのカチオン可染アクリル繊維と、繊度が8〜15デニール、平均繊維長70〜150mmの異形断面の酸性可染アクリル繊維と、繊度が2〜5デニール、平均繊維長が70〜150mmのカチオン可染アクリル繊維との三者混綿の粗糸と、繊度が2〜5デニール、沸水収縮率が20〜40%のカチオン可染アクリル繊維100%の粗糸とを同一の精紡機のドラフトゾーンに供給して紡出し、撚係数(メートル式)35〜45の実撚をかけて紡績糸となし、ついで染色することを特徴とするメランジヘヤー調ファンシーヤーンの製造法である。
【0005】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明において、沸水収縮率が20〜40%のカチオン可染アクリル繊維を三者混綿の粗糸に含ませ、さらに沸水収縮率が20〜40%のカチオン可染アクリル繊維100%の粗糸を用いるのは、繊度が8〜15デニール、平均繊維長70〜150mmの異形断面の酸性可染アクリル繊維と、繊度が2〜5デニール、平均繊維長が70〜150mmのカチオン可染アクリル繊維とを、沸水収縮率20〜40%の繊維により、前記酸性可染アクリル繊維とカチオン可染アクリル繊維との一端を把持し、他端を毛羽として存在させるためである。
【0006】次に本発明において、繊度が8〜15デニール、平均繊維長70〜150mmの異形断面の酸性可染アクリル繊維を用いるのは、他のカチオン可染アクリル繊維と組み合わせて異染効果を出すためであり、また、繊度8〜15デニールと太いものを用いるのは、わん曲の少ないヘヤーとするためである。8デニール未満になるとわん曲が多くなり、他方15デニールをこえると衣料用として好ましくなくなるからである。平均繊維長が70mm未満になるとヘヤーの本数は増えるものの紡績性が悪くなって好ましくなく、他方150mmをこえると該繊維が糸に撚込まれたままとなり、ヘヤーを形成し難くなって好ましくない。
【0007】また、異形断面を用いるのは繊維間の絡合性を甘くして長い毛羽すなわちヘヤーの発生を助長してヘヤー効果を高めるためである。例えば扁平度(ヨコ/タテの比)が5〜9のものがあげられる。
【0008】また、酸性可染アクリル繊維以外のカチオン可染アクリル繊維は2〜5デニールでなければならない。2デニール未満であるとカーデイング加工時にネップを形成し品質を損ねるため好ましくない。5デニールをこえると製品風合が硬くなり衣料用として好ましくない。
【0009】さらに、酸性可染アクリル繊維とカチオン可染アクリル繊維とを組み合わせるのは、染色工程に於いて一浴にて異色染めを行い、メランジー調にするためである。
【0010】また、紡績糸とするにあたり、加えられる実撚は、撚係数(メートル式)で35〜45でなければならない。35未満になると精紡での糸切れにより紡績加工ができなくなり、45をこえると有効なヘヤーが得られなくなることにより好ましくない。
【0011】さらに、繊度8〜15デニールの酸性可染アクリル繊維は、紡績糸において5〜30重量%の範囲を占めるのが良い。5重量%未満になるとメランジ効果が認められなくなり、他方30重量%をこえると紡績加工が難しくなることにより好ましくない。
【0012】また、三者混綿の粗糸と、カチオン可染アクリル繊維100%の粗糸との重量比率は0.3〜0.5:1の範囲にあるのが好ましい。0.3未満になると可紡性が悪く、糸品質低下を招くこととなり、0.5をこえると沸水収縮率20〜40%のカチオン可染アクリル繊維の混合比率が低下することによりバランスのとれたヘヤー糸が得られにくくなるので好ましくない。
【0013】さらに、紡績糸又は双糸(撚係数20〜40)を綛で染色するわけであるが、詰込密度0.020g/cm3 以下で染色するのが、液流の作用により酸性可染アクリル繊維の一端が解舒され、しかもその捲縮が伸ばされわん曲の少ないヘヤーが形成される上で好ましい。なお、流速30mm/秒以上又は流量0.5l/kg/秒以上とするのが好ましい。
【0014】また、染色時にカチオン染料と酸性染料がイオン結合せぬ様分散剤を介して一浴にて異色染めを行なわねばならない。もし、イオン結合すると沈殿物を生じ所定の糸が得られない。
【0015】
【実施例】
実施例1三者混綿の粗糸の構成繊維として、4.5d、沸水収縮率40%、平均繊維長115mmのカチオン可染アクリル繊維33.3重量%と、10d、平均繊維長76mm、扁平度8の酸性可染アクリル繊維33.3重量%と、3d、平均繊維長100mmのカチオン可染アクリル繊維33.4重量%とからなる粗糸(0.55g/m)と、繊度4.5d、沸水収縮率40%、平均繊維長115mmのカチオン可染アクリル繊維100重量%からなる粗糸(1.27g/m)とを同一精紡機のドラフトゾーンに供給してNm=1/14の紡績糸を実撚150T/Mをかけて紡出した。さらに、2本にして撚係数(撚数60T/M)の実撚をかけて双糸をつくり、さらに綛(125g×2200mm)にして、詰込密度0.015g/cm3 、流速30mm/秒で回転バックの中でカチオン可染繊維を赤色、酸性可染繊維を黄色に染色した。
【0016】得られた綛の糸を観察すると、異染効果にすぐれ、わん曲の少ない毛羽が輩出したメランジヘヤー調ファンシーヤーンが得られていることが判明した。
【0017】
【発明の効果】本発明方法によれば、異染効果にすぐれ、わん曲の少ないヘヤーを有するメランジヘヤー調ファンシーヤーンが容易に確実に得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊度が2〜5デニール、沸水収縮率が20〜40%、平均繊維長が70〜150mmのカチオン可染アクリル繊維と、繊度が8〜15デニール、平均繊維長70〜150mmの異形断面の酸性可染アクリル繊維と、繊度が2〜5デニール、平均繊維長が70〜150mmのカチオン可染アクリル繊維との三者混綿の粗糸と、繊度が2〜5デニール、沸水収縮率が20〜40%のカチオン可染アクリル繊維100%の粗糸とを同一の精紡機のドラフトゾーンに供給して紡出し、燃係数(メートル式)35〜45の実燃をかけて紡績糸となし、ついで染色することを特徴とするメランジヘアー調ファンシーヤーンの製造法。
【請求項2】 請求項1において染色を綛で詰込密度0.020g/cm3以下にて行なうメランジヘヤー調ファンシーヤーンの製造法。