説明

メルカプトチアゾールの製造方法および製造中間体

【課題】医薬品として有用な化合物の、工業的に有利な製造法および中間体の提供。
【解決手段】式(7)で表される化合物(式中、nは、1または2を表し、X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品原体として有用な化合物の前駆体またはその中間体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)および式(7)で表される化合物は、医薬品原体として有用な化合物の製造中間体として用いられている(特許文献1)。その合成方法としていくつかの方法が知られている(例えば特許文献1、2、非特許文献1、2参照)。
また、マロン酸エステルを塩化マグネシウムと塩基存在下溶媒中で反応させ、酸クロリドと反応させ、マロン酸エステルのα位をアシル化する方法が知られている(非特許文献3)。
【特許文献1】国際公開第02/38564号パンフレット
【特許文献2】特開2006−8641号公報
【非特許文献1】J. Antibiotics, 2002, 55, 722.
【非特許文献2】J. Med. Chem., 1981, 24, 994.
【非特許文献3】J. Org. Chem., 1985, 50, 2622
【0003】
【化1】

[式中、R1、R2、X2およびnは、後述のものと同義である。]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第02/38564号パンフレットには、式(1)および式(7)で表される化合物の合成方法として、以下の方法が挙げられている。
【0005】
【化2】

特開2006−8641号公報には、式(1)および式(7)で表される化合物の合成方法として、以下の方法が挙げられている。
【0006】
【化3】

J. Antibiotics, 2002, 55, 722.には、式(1)および式(7)で表される化合物の合成方法として、以下の方法が挙げられている。
【0007】
【化4】

J. Med. Chem., 1981, 24, 994.には、式(7)で表される化合物であるα-ハロケトン類の合成方法として、以下の方法が挙げられている。
【0008】
【化5】

しかしながらこれらの方法は、高価な試薬を用いる必要がある、爆発性・毒性のある試薬を用いている、反応を極低温で行う必要がある、収率が低いなどの問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは種々の検討を行った結果、下記式(7)で表される化合物の、工業的に適した新しい合成ルートを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、
〔1〕 式(2):
【0010】
【化6】

で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させて、式(3):
【0011】
【化7】

で表される化合物とし、これと式(4):
【0012】
【化8】

で表される化合物とを反応させて、式(5):
【0013】
【化9】

で表される化合物を得、これとハロゲン化剤とを反応させて、式(6):
【0014】
【化10】

で表される化合物を得、これを脱エステル化および脱炭酸することを特徴とする、式(7):
【0015】
【化11】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)、
〔2〕 R1がアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R3がアルキル基、nが1である、〔1〕に記載の製造方法、
〔3〕 式(2a):
【0016】
【化12】

で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させて、式(3a):
【0017】
【化13】

で表される化合物とし、これと式(4):
【0018】
【化14】

で表される化合物とを反応させて、式(5a):
【0019】
【化15】

で表される化合物を得、これとハロゲン化剤とを反応させて、式(6a):
【0020】
【化16】

で表される化合物を得、これを脱エステル化および脱炭酸することを特徴とする、式(7a):
【0021】
【化17】

で表される化合物の製造方法
(式中R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)、
〔4〕 R1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R3がアルキル基、nが1である、〔3〕に記載の製造方法、
〔5〕 R1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R3がtert-ブチル、nが1である、〔3〕に記載の製造方法、
〔6〕 式(5)または(5a)で表される化合物を、ハロゲン化剤と反応させ、式(6)または(6a)で表される化合物を得る工程において、ルイス酸を共存させる、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法、
〔7〕 式(6)または(6a)で表される化合物を、脱エステル化および脱炭酸させ、式(7)または(7a)で表される化合物を得る工程において、
(i)不活性ガスを反応系中に吹き込む方法;
(ii)低沸点溶媒を還流させる方法;または
(iii)減圧下で行う方法を用いる、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法、
〔8〕 式(7)または(7a)で表される化合物を得た後に、さらに晶析を行う、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法、
〔9〕 式(8):
【0022】
【化18】

(式中R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
4は、水素原子またはハロゲン原子を表す。)
で表される化合物、
〔10〕 式(9):
【0023】
【化19】

(式中R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
4は、水素原子またはハロゲン原子を表す。)
で表される化合物、
〔11〕 R1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R3がアルキル基、nが1である、〔10〕記載の化合物、または
〔12〕 R1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R3がtert-ブチル、R4が水素原子または塩素原子、nが1である、〔10〕記載の化合物に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、医薬品原体として有用な化合物の前駆体またはその中間体を工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の原料として用いられる式(2)で表される化合物は、公知の方法により合成することができる(例えば、特開2006−8641)。
【0026】
本発明における各種の用語を詳細に説明すると次の通りである。なお、特に指示のない限り、各々の基の説明は他の置換基の一部である場合も含む。
【0027】
ハロゲン原子としては例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0028】
アルキル基としては、例えば直鎖または分枝した炭素原子数1〜6個のアルキル基等が挙げられ、具体的には例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、3−ペンチル、3−メチルブチル、ヘキシル、3−ヘキシル、4−メチルペンチル等が挙げられる。
【0029】
アルケニルオキシカルボニル基のアルケニル基部分としては、例えばビニル、アリル、プロペニル、2−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等の直鎖または分枝した炭素原子数2〜6個のアルケニル基等が挙げられる。
【0030】
アラルキル基のアリール部分としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数6〜10個のアリール基等が、アルキル部分としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素原子数1〜6個のアルキル基等が挙げられる。代表的なアラルキル基としては、例えばベンジル基、1−または2−フェネチル基等が挙げられる。
【0031】
置換アルキル基および置換アルケニルオキシカルボニル基の置換基は一個または同一もしくは異なって複数個あってもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子、シアノ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルカノイルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、フタルイミド基、アリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基等によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)またはヘテロアリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基等によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)が挙げられる。
【0032】
アルコキシ基としては、上記アルキル基の結合手に酸素原子が結合した基が挙げられる。
【0033】
アリール基としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数6〜10個のアリール基等が挙げられる。
【0034】
ヘテロアリール基としては、例えば窒素原子を1〜2個含む5〜6員単環式の基、窒素原子を1〜2個と酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5〜6員単環式の基、酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、または窒素原子1〜4個を含み、6員環と5または6員環が縮合した二環式の基等が挙げられ、具体的には、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、ピラジニル、2−ピリミジニル、3−ピリダジニル、3−オキサジアゾリル、2−チアゾリル、3−イソチアゾリル、2−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−キノリル、8−キノリル、2−キナゾリニルまたは8−プリニル等が挙げられる。
【0035】
置換アラルキル基における置換基としては、1または複数、同一または異なって、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0036】
次に本発明の合成方法および合成中間体について詳細に説明する。
【0037】
【化20】

(式中、R1、R2、X1およびnは前記と同じ意味を表す)
【0038】
式(2)で表される化合物を、酸ハロゲン化剤と反応させることにより、式(3)で表される化合物を合成することができる。酸ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル、ホスゲン、オキシ塩化リンまたは臭化チオニル等が挙げられ、その使用量は、式(2)で表される化合物に対し、通常0.8〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍である。反応溶媒としては、反応に不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒が挙げられる。酸ハロゲン化剤と反応させるとき、反応促進剤としてN,N-ジメチルホルムアミドを添加することができる。N,N-ジメチルホルムアミドの使用量としては式(2)で表される化合物に対し、通常0.001〜1モル倍、好ましくは0.005〜0.05モル倍が挙げられる。反応温度としては通常0℃〜100℃、好ましくは50℃〜70℃が挙げられる。反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは1〜3時間が挙げられる。得られた反応混合物は、必要に応じ溶媒を留去することにより、式(3)で表される化合物を含む粗生成物を得ることができる。この粗生成物は、これ以上精製されることなく、次工程に用いることができる。溶媒を完全に留去することなく、溶液として次工程に用いてもよい。
【0039】
【化21】

(式中、R1、R2、R3、X1およびnは前記と同じ意味を表す)
【0040】
式(4)で表される化合物と塩化マグネシウムを塩基存在下溶媒中で反応させ、さらに式(3)で表される化合物の溶液を添加することにより、式(5)で表される化合物を合成することができる。
【0041】
使用される塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、2,6−ルチジンまたはN,N−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基等が挙げられ、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、2,6−ルチジンまたはN,N−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。塩基の使用量としては、式(4)で表される化合物に対し、通常、0.8〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍が挙げられる。使用される溶媒としては、反応に不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒が挙げられる。
【0042】
式(4)で表される化合物と塩化マグネシウムを塩基存在下溶媒中で反応させる反応温度は、通常0〜80℃、好ましくは20〜40℃が挙げられる。反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは1〜3時間が挙げられる。塩化マグネシウムの使用量としては、式(4)で表される化合物に対し、通常、0.5〜5モル倍、好ましくは0.7〜2モル倍が挙げられる。
【0043】
式(4)で表される化合物と塩化マグネシウムを塩基存在下溶媒中で反応させた後、式(3)で表される化合物と反応させる反応温度は、通常0〜80℃、好ましくは20〜40℃が挙げられる。反応時間としては、通常10分〜1日程度、好ましくは1〜3時間が挙げられる。
【0044】
【化22】

(式中、R1、R2、R3、X2およびnは前記と同じ意味を表す)
【0045】
式(5)で表される化合物をハロゲン化剤と反応させることにより、式(6)で表される化合物を合成することができる。ハロゲン化剤としては、N-クロロスクシイミド、N-ブロモスクシイミドまたは塩化スルフェニル等が挙げられ、好ましくはN-クロロスクシイミドが挙げられる。ハロゲン化剤の使用量としては式(5)で表される化合物に対し、通常0.8〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍が挙げられる。使用される溶媒としては、反応に不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒が挙げられる。反応温度としては通常0℃〜80℃、好ましくは10℃〜40℃が挙げられる。反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは1〜3時間が挙げられる。
【0046】
ハロゲン化剤と反応させる本工程において、好ましくは例えば、反応促進剤としてルイス酸を加える方法等が挙げられる。使用されるルイス酸としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化銅、塩化鉄または塩化リチウム等が挙げられ、好ましくは塩化マグネシウムが挙げられる。ルイス酸の使用量としては、式(5)で表される化合物に対し、通常0.05〜1モル倍、好ましくは0.1〜0.3モル倍が挙げられる。
【0047】
【化23】

(式中、R1、R2、R3、X2およびnは前記と同じ意味を表す)
【0048】
式(6)で表される化合物を、脱エステル化剤と反応させ、引き続き酸と反応させ脱炭酸させることにより、式(7)で表される化合物を合成することができる。脱エステル化剤が酸の場合、脱エステル化と脱炭酸を同時に行うこともできる。
脱エステル化剤としては、酸またはアルカリが挙げられ、酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸または酢酸等が挙げられ、好ましくはp-トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸が挙げられる。酸の使用量としては、式(6)で表される化合物に対し、通常0.1〜10モル倍、好ましくは4〜6モル倍が挙げられる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カルシウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。アルカリの使用量としては、式VIで表される化合物に対し、通常1〜10モル倍、好ましくは2〜4モル倍が挙げられる。
脱炭酸させる酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸または酢酸等が挙げられ、好ましくはp-トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸が挙げられる。酸の使用量としては、式(6)で表される化合物に対し、通常0.1〜10モル倍、好ましくは0.5〜6モル倍が挙げられる。
使用される溶媒としては、反応に不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、トリフルオロ酢酸または酢酸等の酸系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒とトリフルオロ酢酸または酢酸等の酸系溶媒との混合溶媒が挙げられる。反応温度としては通常0℃〜80℃、好ましくは20℃〜40℃が挙げられる。反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは1〜3時間が挙げられる。
脱エステル化・脱炭酸させる本工程において、好ましくは例えば、不活性ガスを反応系中に吹き込む方法、低沸点溶媒を還流させる方法、または、減圧下で反応させる方法等が挙げられる。不活性ガスとしては反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されず、例えば、ヘリウム、窒素またはアルゴン等が挙げられ、好ましくは窒素が挙げられる。低沸点溶媒としては不活性なものなら特に限定されず、また沸点が60℃以下の溶媒が好ましく、例えば、ペンタン、石油エーテル、またはジエチルエーテル等が挙げられ、好ましくはペンタンが挙げられる。特にR3がt−ブチル基の場合で、脱エステル化と脱炭酸を酸により同時に行う場合、上記方法を用いることで反応速度が向上し、優れた効果を有する。
【0049】
式(7)で表される化合物は、そのまま次の反応に用いても良く、また、晶析などにより精製して次の反応に使用しても良い。式(7)で表される化合物の晶析に使用される溶媒としては、不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノール等のアルコール系溶媒とヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられる。晶析温度としては通常−20℃〜70℃、好ましくは−10〜40℃が挙げられる。この晶析により、式(7)で表される化合物の純度及び光学純度が向上する。
【0050】
【化24】

(式中、R1、R2、X2およびnは前記と同じ意味を表す)
【0051】
式(7)で表される化合物をジチオカルバミン酸アンモニウムと反応させることにより、式(1)で表される化合物を合成することができる。使用される溶媒としては、反応に不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒が挙げられる。ジチオカルバミン酸アンモニウムと反応させるとき反応促進剤として酸を使用してもよい。使用される酸としては、硫酸、りん酸、メタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは硫酸またはメタンスルホン酸が挙げられる。反応温度としては通常−20〜80℃、好ましくは−20〜30℃が挙げられる。反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは1〜5時間が挙げられる。
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【実施例1】
【0053】
実施例1
【0054】
【化25】

窒素雰囲気下、(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸(2b)のトルエン溶液175.1g(含量27.2%、純分47.6g)に、24℃で撹拌下N,N−ジメチルホルムアミド0.16gを加え、60℃に加熱した。塩化チオニル34.8gを滴下し、3時間後、原料の消失を確認し、溶媒を減圧下留去した。トルエン71gを加え再度減圧下留去し、トルエンを加え濃度調整してトルエン溶液として117.4g(純分理論値53.8g)の アリル (2S)-4-(クロロカルボニル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(3b)を得た。
【0055】
実施例2
【0056】
【化26】

窒素雰囲気下30℃にてトルエン144g、トリエチルアミン56.9g、塩化マグネシウム24.5gの混合物に、マロン酸t-ブチル(4b)55.8gを滴下した。2時間撹拌後、得られた反応液にアリル (2S)-4-(クロロカルボニル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(3b)のトルエン溶液117.4g(理論純分53.8g)を滴下し、2時間撹拌後、35%塩酸47g、水90gを20℃にて滴下した。有機相を水137gで洗浄し、溶媒を減圧下留去した。トルエンを加えてトルエン溶液としてジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)マロナート(5b)216.15g(含量43.2%、純分93.3g、収率定量的)を得た。
【0057】
実施例3
【0058】
【化27】

窒素雰囲気下20℃撹拌下、ジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)マロナート(5b)のトルエン溶液213.15g(含量43.2%、純分92.0g)にメタノール66.7g、塩化マグネシウム4.4gを加え、さらにN-クロロスクシイミド37.0gを6分割で加えた。2時間後、原料の消失を確認後、反応溶液を水473gにより3回洗浄し、溶媒を減圧下留去した。2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール0.05g及びトルエンを加えトルエン溶液としてジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(6b)234.67g(含量43.63g、純分102.38g、収率定量的)を得た。
【0059】
クロル化を行うときに、塩化マグネシウムを添加すると反応速度が向上するデータを下表に示した。塩化マグネシウムを加えない場合、反応終了までにおよそ72時間必要であった。一方、塩化マグネシウムを加えた場合反応は加速され2時間で原料が1%以下になった。いずれの場合も生成物のHPLC%は約96%と高く、収率は同等であった。
反応条件
溶媒:トルエン/メタノール混液
ハロゲン化剤:N-クロロスクシイミド(1.2モル倍)
【0060】
【表1】

【0061】
実施例4
【0062】
【化28】

(p-TsOH、窒素バブリングなし、晶析なし)
窒素雰囲気下撹拌下、p-トルエンスルホン酸1水和物84g(0.44mol)のトルエン335g懸濁液を60℃に加熱し、そこへジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(6b)(理論純分195g, 0.44mol)のトルエン360g溶液を滴下ロートにより少量ずつ40分で滴下した。2時間後、原料は完全に消失していた。24℃に冷却後、水390g、2.5%炭酸ナトリウム水溶液781g、水390gで洗浄し、溶媒を減圧下留去し、粗収量119.92gのアリル (2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)を得た。
含量は67.03%で、純分80.38g、(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸(2b)からの収率73%であった。
【0063】
実施例5
(p-TsOH、窒素バブリングなし、晶析あり)
窒素雰囲気下撹拌下、p-トルエンスルホン酸1水和物52.9g(0.28mol)のトルエン210g懸濁液を60℃に加熱し、そこへジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(理論純分123.5g, 0.28mol)のトルエン230g溶液を滴下ロートにより少量ずつ3時間で滴下した。2時間後、原料は消失していた。22℃に冷却後、水247g、2.5%炭酸ナトリウム水溶液247g(2回)、5%食塩水247gで洗浄し、溶媒を減圧下留去し、粗収量117.50gのアリル (2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラートを得た。2-プロパノール271gを加え、溶媒を減圧下留去後、31℃に昇温した。結晶が析出した。n-ヘプタン352gを加え、1℃に冷却し、結晶をろ取した。(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート52.71gを得た。含量96.6%、純分50.92g、(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸(2b)からの収率75.1%であった。
【0064】
実施例6
(メタンスルホン酸5.0MR、30℃、窒素バブリングあり、晶析あり)
窒素雰囲気下、メタンスルホン酸64.95gと酢酸102.0gを混合し、25mL/分の速度で窒素ガスをバブリングしながら、28℃にてジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(6b)のトルエン溶液170.5g(含量35.2%、純分60.0g)を2時間かけて滴下した。35℃に昇温し3時間後に原料の消失を確認した。25℃に冷却後、水168gを滴下し、有機相を取り、水相をトルエン102gにて2回抽出した。有機相をあわせ、2.5%炭酸ナトリウム水溶液120g、水120gにて洗浄し、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール0.03gを加え、溶媒を減圧下留去した。2-プロパノール132gを加え、トルエン132gを留去し、35℃にてn-ヘプタン86gを滴下し、(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)種晶0.02gを加え、n-ヘプタン86gを滴下した。4℃に冷却後、析出した結晶をろ過し、15%2-プロパノール/n-ヘプタン21gで2回洗浄し、減圧下乾燥した。(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)26.43g(含量98.4%、純分26.01g、収率79%)を得た。
【0065】
実施例7
(メタンスルホン酸0.5MR、60℃、窒素バブリングあり、晶析あり)
窒素雰囲気下、メタンスルホン酸10.83gと酢酸85gとトルエン85gを混合し、60℃に昇温し、20mL/分の速度で窒素ガスをバブリングしながら、ジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(6b)のトルエン溶液284.1g(含量35.2%、純分100.0g)を4時間かけて滴下した。滴下3時間後に原料の消失を確認した。25℃に冷却後、水280gを滴下し、有機相を取り、水相をトルエン170gにて2回抽出した。有機相をあわせ、2.5%炭酸ナトリウム水溶液200g、水200gにて洗浄し、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを加えた。この溶液のうち260.5g(含量9.4%、純分24.60g)を濃縮し、2-プロパノール110gを加え、トルエン110gを留去し、35℃にてn-ヘプタン71gを滴下し、(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)種晶0.02gを加え、n-ヘプタン71gを滴下した。4℃に冷却後、析出した結晶をろ過し、15%2-プロパノール/n-ヘプタン18gで2回洗浄し、減圧下乾燥した。(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)22.34g(含量98.2%、純分21.94g、収率80%)を得た。
【0066】
上記の通り、この段階で晶析しなかった場合含量(純度)は67.0%で、晶析した場合含量(純度)は96.6%〜98.4%と向上した。
【0067】
実施例8
(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)11g(含量97.8%、純分10.76g、光学純度99.3%ee)にトルエンを加えて溶かし、2-プロパノール21.5gを加え減圧下留去した。2-プロパノール21.5gを加え溶媒を減圧下留去後、残留物に35℃にてn-ヘプタン28gを滴下し、(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)種晶0.01gを加え、n-ヘプタン28gを滴下した。4℃に冷却後、析出した結晶をろ過し、15%2-プロパノール/n-ヘプタン5.4gで2回洗浄し、減圧下乾燥した。(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)9.67g(収率89.9%、光学純度99.8%ee以上)を得た。ろ液の光学純度は76.8%eeであった。
【0068】
実施例9
(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)11g(含量96.6%、純分10.63g、光学純度97.6%ee)にトルエンを加えて溶かし、2-プロパノール21.5gを加え減圧下留去した。2-プロパノール21.5gを加え溶媒を減圧下留去後、残留物に35℃にてn-ヘプタン28gを滴下し、(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)種晶0.01gを加え、n-ヘプタン28gを滴下した。4℃に冷却後、析出した結晶をろ過し、15%2-プロパノール/n-ヘプタン5.4gで2回洗浄し、減圧下乾燥した。(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)9.31g(収率87.6%、光学純度99.8%ee以上)を得た。ろ液の光学純度は69.1%eeであった。
【0069】
晶析による光学純度向上効果を下表にまとめた。光学純度が97.6%eeの粗生成物を晶析した場合でも、99.8%ee以上(対掌体の検出限界を0.1%として)の結晶が得られた。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例10
窒素雰囲気下、メタンスルホン酸0.433gとトルエン6.8gを混合し、60℃に昇温し、20mL/分の速度で窒素ガスをバブリングしながら、ジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(6b)のトルエン溶液10.18g(含量39.4%、純分4.00g)を滴下した。滴下1.5時間後に原料の消失を確認した。25℃に冷却後、水12gを滴下し、有機相20.49gを得た。有機相中の生成物を定量したところ(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)は含量10.22%、純分2.10g、収率95.4%であった。
【0072】
実施例11
窒素雰囲気下、メタンスルホン酸0.433gとトルエン4.5gとペンタンを混合し、60℃に昇温し還流させながら、ジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(6b)のトルエン溶液10.18g(含量39.4%、純分4.00g)を滴下した。滴下4時間後に原料の消失を確認した。25℃に冷却後、水12gを滴下し、有機相18.72gを得た。有機相中の生成物を定量したところ(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)は含量11.08%、純分2.07g、収率94.5%)であった。
【0073】
実施例12
窒素雰囲気下、メタンスルホン酸0.433gとトルエン6.8gを混合し、60℃に昇温し、ジ-tert-ブチル ({(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-イル}カルボニル)(クロロ)マロナート(6b)のトルエン溶液10.18g(含量39.4%、純分4.00g)を滴下した。滴下7時間後に原料の消失を確認した。25℃に冷却後、水12gを滴下し、有機相19.92gを得た。有機相中の生成物を定量したところ(2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)は含量10.20%、純分2.03g、収率92.6%であった。
【0074】
脱エステル・脱炭酸時の窒素ガスバブリングの効果を下表にまとめた。窒素バブリングを行わない場合と比較して、行った場合は反応が速くなり、反応時間が7時間から1時間30分に短縮される。反応収率に大きな影響はないが、窒素バブリングを行った場合の方が、わずかに高い。また、低沸点溶媒であるペンタン(沸点35-36℃)を添加して反応を行った場合も反応は速くなり、反応時間は4時間に短縮された。
【0075】
【表3】

【0076】
参考例1
【0077】
【化29】

窒素雰囲気下撹拌下、4-ピリジンカルボチオアミド3.8mg(0.028mmol)、ジチオカルバミン酸アンモニウム455mg(4.13mmol)のメタノール4.2g溶液を−15℃(内温)に冷却した。白色固体が析出した。この懸濁液にアリル (2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)1.00g(含量67.03%, 純分0.67g, 2.75mmol)のメタノール1.8g溶液を5分で滴下した。0.5時間後、原料の消失を確認し、24℃に昇温した。硫酸0.34g(3.42mmol)のメタノール1.3g溶液を加えた。0.5時間後、原料は完全に消失していた。
水5gを30分でゆっくりと滴下し、さらに30分撹拌した。析出した固体をろ取し、白色粉末として620mgのアリル (2S)-4-(2-メルカプト-1,3-チアゾール-4-イル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(1b)を得た。収率80%。
【0078】
参考例2
窒素雰囲気下撹拌下、ジチオカルバミン酸アンモニウム9.45gに2-プロパノール38gを加え、アリル (2S)-4-(クロロアセチル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(7b)19.35g(含量98.2%、純分19.0g)の2-プロパノール溶液を4℃で滴下した。2時間後、20℃で20%メタンスルホン酸/2-プロパノール溶液を加えた。2時間後、原料の消失を確認し、水133gを滴下し、4℃に冷却した。析出した固体をろ取し、冷却した2-プロパノール29gで2回洗浄した。減圧下乾燥し、アリル (2S)-4-(2-メルカプト-1,3-チアゾール-4-イル)-2-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-カルボキシラート(1b)20.47g(含量93.5%、純分19.1g、収率87%)を得た。
【0079】
式(2)で表される化合物から式(7)で表される化合物までの収率は73〜75%であり、式(2)で表される化合物のエチルエステルから式(7)で表される化合物までの国際公開第02/38564号パンフレットでの収率34%を大きく上回っている。また、本発明においては爆発性・毒性のあるジアゾメタンを使用せず、−70℃などの極低温条件を必要としない。このことから、本発明が収率の高い、操作性の良い特徴を有する、優れた製造方法であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
【化1】

で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させて、式(3):
【化2】

で表される化合物とし、これと式(4):
【化3】

で表される化合物とを反応させて、式(5):
【化4】

で表される化合物を得、これとハロゲン化剤とを反応させて、式(6):
【化5】

で表される化合物を得、これを脱エステル化および脱炭酸することを特徴とする、式(7):
【化6】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)。
【請求項2】
1がアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R3がアルキル基、nが1である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(2a):
【化7】

で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させて、式(3a):
【化8】

で表される化合物とし、これと式(4):
【化9】

で表される化合物とを反応させて、式(5a):
【化10】

で表される化合物を得、これとハロゲン化剤とを反応させて、式(6a):
【化11】

で表される化合物を得、これを脱エステル化および脱炭酸することを特徴とする、式(7a):
【化12】

で表される化合物の製造方法
(式中R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)。
【請求項4】
1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R3がアルキル基、nが1である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R3がtert-ブチル、nが1である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
式(5)または(5a)で表される化合物を、ハロゲン化剤と反応させ、式(6)または(6a)で表される化合物を得る工程において、ルイス酸を共存させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
式(6)または(6a)で表される化合物を、脱エステル化および脱炭酸させ、式(7)または(7a)で表される化合物を得る工程において、
(i)不活性ガスを反応系中に吹き込む方法;
(ii)低沸点溶媒を還流させる方法;または
(iii)減圧下で行う方法を用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法、
【請求項8】
式(7)または(7a)で表される化合物を得た後に、さらに晶析を行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
式(8):
【化13】

(式中R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
4は、水素原子またはハロゲン原子を表す。)
で表される化合物。
【請求項10】
式(9):
【化14】

(式中R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
nは、1または2を表し、
4は、水素原子またはハロゲン原子を表す。)
で表される化合物。
【請求項11】
1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R3がアルキル基、nが1である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R3がtert-ブチル、R4が水素原子または塩素原子、nが1である、請求項10記載の化合物。

【公開番号】特開2008−208056(P2008−208056A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44973(P2007−44973)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】