説明

メンタルケア装置、メンタルケア方法及びメンタルケアプログラム

【課題】精神状態の診断を受ける人から得られた感情についての情報の種類に応じた柔軟な処置を行うことができるメンタルケア装置を提供する。
【解決手段】メンタルケア装置は、入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定する感情極性判定手段2と、前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力するタイプ別応答手段3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の自他に対する思考傾向をチェックし、思考タイプに応じた対処を行なうメンタルケア装置、メンタルケア方法及びメンタルケアプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末やインターネットの普及・浸透により、多数の人間同士での非対面コミュニケーションや架空人物・キャラクターとの仮想的コミュニケーションが、日常で多くの時間を占めるまでに活発化している。逆に、実世界の家庭や職場における対面コミュニケーションが不足し、人間関係の問題や、その悩みによる精神疾患の問題が深刻化している。実世界での協調作業に馴染めない人が、仕事を効率的に遂行できなかったり成果が出せないことで更に対人関係が疎になる負の循環に陥ったり、さらには休職・休学して自宅へ引き篭もるケースも多く見られるようになっている。
【0003】
このような人々の精神的問題に対して、心理カウンセリングなどによる対策が実施されている。しかし、資格を持つ専門のカウンセラーは人数が限られており、学校や会社での定期健康診断のように多くの人をまとめて診察したり、継続的に診察することは困難である。そこで、自己診断の手順書や情報処理技術を用いた簡易な診断・カウンセリングの手段が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ストレス診断機能によって利用者のストレス状態を評価し、リラクゼーション機能によって音楽や簡単な対話を用いたストレス軽減処置を施すことにより、深刻な高ストレス状態に至らないようにする方法が開示されている。また、カウンセリング受付機能によって専門家によるカウンセリング・サービスに結びつけることができる。そして、これらの機能を情報処理装置によって提供することで、利用者が都合のよい時にストレス診断を受けたり、ストレスが増大している時期に簡便なストレス軽減処置を受けたり、さらには専門家のカウンセリングの申込みが容易に行なえる。
【0005】
また、特許文献1では、リラクゼーション機能の1つであるキャラクタ・ストレス代謝機能において、利用者が感情的内容(例えば「寂しい」)を入力すると、その感情的内容に対応する応答メッセージ(例えば「いつもそばで見ているよ」)がリラクゼーションファイル群にされていれば、その応答メッセージを利用者に提示するというストレス軽減の手段を開示している。
【0006】
一方、精神的ストレスが主要な原因の1つと見なされている鬱病を改善するための心理療法として、認知療法または認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy、以下、CBTと記載することがある)がある。CBTの一手法であるコラム法は、クライアント(受診者)が自ら体験した出来事やそれに対する自動思考(抱いた印象)を話すか書き記し、その内容を使ってクライアントのネガティブな思考を修正する。一定の手順に従うことによってクライアント単独で実施することもできるため、コラム法とその手順を解説した書籍や情報処理端末用のアプリケーションが提供されている。非特許文献1は、CBTの一般向け入門書であり、7ステップからなるコラム法を読者自ら実施できるようになっている。また、コラム法の学習と実施ができる会員制Webサイトとして非特許文献2が開示されている。また、iPhone(登録商標)向けのアプリケーションソフトウェアである「i認知療法」も、コラム法をクライアント自身が手軽に実践できる。
【0007】
このように、特許文献1のようなストレス診断・軽減手段を用いたり、コラム法のような心理療法を用いることで、人間関係の問題などに起因する精神的な不健全性に気づき、精神疾患の予防や改善に導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−108674号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】大野裕著「こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳」創元社,2003年3月20日、p.39-41、p.68-69
【非特許文献2】“うつ・不安ネット”、[online]、[平成23年11月8日検索]、インターネット〈URL:http://www.cbtjp.net〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1等の一般的なストレス診断や対処の手段、及びコラム法に基づき自ら診断や思考修正を行なう手段では、受診者自身を含め誰に対してネガティブな印象を持っているのか、ストレスの軽減やポジティブな思考傾向が見られた場合にはどう対応するのかといった、ケースの分類と各状況に応じた対処の方法が提供されていない。従って、人間のカウンセラーならば可能な柔軟な診断や対処の仕組みが実現されておらず、不足するカウンセラーを十分に代替できない。
【0011】
本発明は、精神状態の診断を受ける人から得られた感情についての情報の種類に応じた柔軟な処置を行うことができるメンタルケア装置、メンタルケア方法及びメンタルケアプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のメンタルケア装置は、入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定する感情極性判定手段と、前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力するタイプ別応答手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明のメンタルケア方法は、入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定し、前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力することを特徴とする。
【0014】
本発明のメンタルケアプログラムは、コンピュータに、入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定する感情極性判定処理と、前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力するタイプ別応答処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、精神状態の診断を受ける人から得られた感情についての情報の種類に応じた柔軟な処置を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の感情極性判定手段の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の感情表現辞書の具体例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の対象識別辞書の具体例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の感情表現検出手段と対象識別手段による処理の具体例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態におけるメンタルケア装置のタイプ別応答手段の動作の具体例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態のハードウェア構成を説明する図である。
【図8】本発明のメンタルケア装置の主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
実施形態.
図1は、本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のメンタルケア装置は、情報取得手段1と、感情極性判定手段2と、タイプ別応答手段3とを備える。
【0019】
情報取得手段1は、メンタルケアの対象者となりうる人が述べた情報をテキストデータとして取得する。その実現方法としては、例えば、情報取得手段1が文章入力のためのユーザインタフェースを備える。そして、例えば前述した非特許文献2のように利用者に最近の出来事を記入させてもよく、又は日記帳や掲示板のような体裁で前述と同様に自由に日々の出来事や意見を書けるようにしてもよい。又は、情報取得手段1が音声認識装置を備え、口頭で話した内容をテキストに変換して記録してもよい。又は、情報取得手段1がEメールのサーバーや外部の掲示板アプリケーションを参照してテキストデータを取得してもよい。
【0020】
感情極性判定手段2は、情報取得手段1が取得したテキストデータから感情を表す感情表現を検出し、当該感情表現がポジティブ(肯定的)な感情を表すのかネガティブ(否定的)な感情を表すのかを示す感情極性を判別する。さらに、当該感情表現の対象がそのテキストデータの執筆者または発言者(以後、単に執筆者と称す)自身かそれ以外の他者かを判別する。例えば、「自分が嫌になる」という記述がテキストデータに含まれていた場合、感情表現「嫌になる」の対象は「自分」すなわち執筆者自身となる。
【0021】
タイプ別応答手段3は、感情極性判定手段2から出力された判定結果を受け取り、感情表現の極性(感情極性)とその感情表現の対象(感情対象)とに基づく応答処理を実行する。
【0022】
感情極性判定手段2の構成の具体例について説明する。図2は、本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の感情極性判定手段2の構成例を示すブロック図である。図3は、本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の感情表現辞書の具体例を示す説明図である。図4は、本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の対象識別辞書の具体例を示す説明図である。図2に示すように、感情極性判定手段2は、言語解析手段21と感情表現検出手段22と対象識別手段23とを備える。
【0023】
言語解析手段21は、文章を単語単位に分割(形態素解析)し、さらに文法的係り受け関係を判定(構文解析)する。感情表現検出手段22は、図3に示す感情表現辞書を用いてテキストデータから感情表現を検出する。
【0024】
対象識別手段23は、検出された感情表現の対象が何であるか、すなわち、ポジティブ又はネガティブに捉えている対象がテキストデータの執筆者自身か他者かを、文法的係り受け関係と、図3の感情表現辞書及び図4の対象識別辞書から識別する。
【0025】
また、図3の感情表現辞書を変更または追加することにより、特定の職種や業界、地域、言語などに応じて、より精度良く感情表現を検出してもよい。例えば、営業担当者向けには感情表現辞書に「成績が伸びない」「契約が取れない」などを加えることで、ネガティブな感情表現をより網羅的に検出できる。
【0026】
感情極性判定手段2の処理について、詳細に説明する。図5は、本発明の実施形態におけるメンタルケア装置の感情表現検出手段22と対象識別手段23による処理の具体例を示す説明図である。図5において、文章T0が情報取得手段1により取得されたとする。言語解析手段21は、文章T0を単語に分割し、単語分割結果T1を得る。文章の単語単位への分割は、例えば、webサイト(http://mecab.sourceforge.net/)に開示されている形態素解析ソフトウェアMeCabを用いることで実現できる。
【0027】
言語解析手段21は、さらに単語分割結果T1の係り受け関係を解析し、係り受け判定結果T2を出力する。文章の単語分割結果からの係り受け関係の解析は、例えばwebサイト(http://code.google.com/p/cabocha/)に開示されている構文解析ソフトウェアCaboChaを用いることで実現できる。感情表現検出手段22は、係り受け判定結果T2に含まれる単語から感情表現辞書に登録されている感情表現の文字列を検出する。
【0028】
図5に示す係り受け判定結果T2からは、図3に示した感情表現辞書の「嫌になる」(感情極性はネガティブ)が含まれていることを検出でき、感情表現検出結果T3を得る。対象識別手段23は、検出された感情表現「嫌になる」の対象が何かを識別するため、まず図3の感情表現辞書を参照する。図3の感情表現辞書には、「嫌になる」の対象が「(PRE:Xが)」で示されるXにより検出できると定義されている。「(PRE:Xが)」は、感情表現に係っている「Xが」(Xは変数)という記述が感情表現の前(PRE)にある場合、Xに対応する語が当該感情表現の対象になることを表す。
【0029】
図5に示す例では、係り受け判定結果として感情表現「嫌になる」に「自分/が」が係っており、感情表現辞書で得た「Xが」のパターンに合致することから、Xに対応する「自分」が対象であると判定する。対象識別手段23はさらに、感情表現の対象が前記テキストデータの執筆者自身か否かを、図4に示した対象識別辞書のいずれかの項目に合致するか否かで判定する。
【0030】
図4に示す対象識別辞書の例では、例えば「私」、「僕」など感情表現の対象(感情対象)を表す語句に対し、「me」という感情対象の種類を表す単語が付属している。この「me」という単語は、執筆者自身を表す単語として登録されている。また、「彼」、「彼女」など、「other」という感情対象の種類を表す単語が付属している単語は、他者を表す感情対象の単語として登録されている。本例では対象識別辞書の「自分」に合致し、「自分」は「me」すなわち執筆者自身を表すため、図5の例の「自分/が」と「嫌になる」の係り受け関係の組が、テキストデータの執筆者自身に対するネガティブな記述であると判定する。
【0031】
以上により、図5に示す例では、感情極性判定手段2は、文章T0に執筆者自身に対するネガティブな極性を持つ記述が含まれるとする判定結果(例えば“極性=ネガティブ,対象=me”と文章T0)を出力する。
【0032】
次に、タイプ別応答手段3の処理の流れを詳細に説明する。図6は、本発明の実施形態におけるメンタルケア装置のタイプ別応答手段3の動作の具体例を示すフローチャートである。
【0033】
まず、感情極性判定手段2の判定結果から、前記テキストデータに含まれる感情表現の極性がネガティブかポジティブかでタイプを分ける(ステップS1)。次に、ステップS1の判定において、ネガティブ及びポジティブのいずれの場合も、その感情表現の対象が自分(執筆者自身)か他者かでさらにタイプを分ける(ステップS2およびステップS3)。以上の処理の結果、感情極性判定手段2から出力された判定結果により、ステップS4からステップS7の4つのタイプに分かれる可能性がある。
【0034】
感情極性判定手段2の判定結果が、ネガティブ且つ自分が対象ならば、前記感情表現の内容に対して慰めや根拠を問う質問を行なう(ステップS4)。ステップS4の応答文の具体例として、情報取得手段1が取得したテキストデータに含まれる感情表現とその対象を表す部分が「自分が嫌になる」であった場合、自分(執筆者自身)に対するネガティブな感情表現であるため、慰めを示す「そういう時もあります」と、根拠を問う質問として「なぜそう思うのですか」を応答文として出力する(D1)。
【0035】
感情極性判定手段2の判定結果が、ネガティブ且つ他者が対象ならば、前記感情表現の内容に対して同情や根拠を問う質問を行なう(ステップS5)。ステップS5の応答文の具体例として、情報取得手段1が取得したテキストデータに含まれる感情表現とその対象を表す部分が「あいつは何様だ」であった場合、他者に対するネガティブな感情表現であるため、同情する「ご不満のようですね」と、根拠を問う質問として「なぜそう思うのですか」を応答文として出力する(D2)。
【0036】
感情極性判定手段2の判定結果が、ポジティブ且つ自分が対象ならば、前記感情表現の内容に対して同調やさらに強調するような応答文を返す(ステップS6)。ステップS6の応答文の具体例として、情報取得手段1が取得したテキストデータに含まれる感情表現とその対象を表す部分が「僕でも何とかできた」であった場合、自分に対するポジティブな感情表現であるため、同調する「良かったですね。」と、強調する「その調子です。」を応答文として出力する(D3)。
【0037】
感情極性判定手段2の判定結果が、ポジティブ且つ他者が対象ならば、前記感情表現の内容に対して単に同調する相槌などの応答文を返す(ステップS7)。ステップS7の応答文の具体例として、情報取得手段1が取得したテキストデータに含まれる感情表現とその対象を表す部分が「彼はさすがだ」であった場合、他者に対するポジティブな感情表現であるため、単に同調する「なるほど」を応答文として出力する(D4)。
【0038】
本実施形態のメンタルケア装置の構成について具体例を用いて説明する。図7は、本発明の実施形態のハードウェア構成を説明する図である。メンタルケア装置は、例えば図7に示すような一般的なコンピュータ装置と同様のハードウェア構成によって実現できる。図7において、メンタルケア装置Aは、CPU(Central Processing Unit)A1、主記憶部A2、出力部A3、入力部A4、及び補助記憶部A6を少なくとも含む。また、通信部A5を備えていてもよい。
【0039】
主記憶部A2は、例えばRAM(Random Access Memory)等のメインメモリであって、データの作業領域やデータの一時退避領域として用いられる。出力部A3は、例えば、液晶ディスプレイ装置等の表示装置、又はプリンタ等の印刷装置であり、データを出力する機能を備える。入力部A4は、例えば、キーボードやマウス等の入力デバイスであり、データを入力する機能を備える。また、ファイル読み込みによってデータ入力を行なう場合には、入力部A4は、外部記録媒体読取装置等であってもよい。補助記憶部A6は、例えば、ROM(Read Only Memory)やハードディスク装置等である。また、図10に示すように、以上の各構成要素A1〜A6は、システムバスA7を介して相互に接続されている。
【0040】
図7に示すハードウェア構成において、メンタルケア装置Aの補助記憶部A6は、図1に示した情報取得手段1、感情極性判定手段2及びタイプ別応答手段3をそれぞれ実現するプログラムを記憶している。さらに、補助記憶部A6は、図3に示した感情表現辞書および図4に示した対象識別辞書を記憶している。
【0041】
情報取得手段1は、入力部A4または通信部A5を通じて文章を取得する。また、本実施形態におけるタイプ別応答手段3は、出力部A3を通じてメンタルケア装置Aの利用者に、図6に示したD1〜D4のような応答文を出力する。
【0042】
なお、メンタルケア装置Aは、その内部に、図1に示したような機能を実現するプログラムを組み込んだLSI(Large Scale Integration)等のハードウェア部品からなる回路を実装することで、ハードウェアにより実現してもよい。また、図7に示したように、図1に示したような機能を提供するプログラムを、コンピュータのCPUA1に実行させることで、ソフトウェアにより実現してもよい。この場合、CPUA1は、補助記憶部A6に格納されているプログラムを、主記憶部A2にロードして実行し、メンタルケア装置Aの動作を制御することにより、上述した各機能をソフトウェアにより実現することができる。
【0043】
また、通信部A5は、周辺機器と接続され、データの送受信を行なう機能を備える。周辺機器の1つとして、図10に示す外部記憶装置Bが通信部A5によりネットワークを介してメンタルケア装置Aと接続され、外部記憶装置Bに格納してされたテキストデータを情報取得手段1が取得してもよい。
【0044】
本実施形態のメンタルケア装置は、以上のような構成と処理により、例えばメンタルケア対象者による自分自身へのネガティブな記述や発言に対し、慰めや根拠を問う質問などを行なって思考の修正を促すだけでなく、自分自信に対してポジティブな記述や発言をした場合にはそうした思考をさらに促すような同調・強調的な応答をする。また、他者に対するネガティブまたはポジティブな記述や発言をしている場合にも、それらに応じた応答をすることで、他者への協調性を高めるようなカウンセリングが可能となる。
【0045】
したがって、本実施形態のメンタルケア装置によれば、精神状態の診断を受ける人から得られた情報の内容が、その人自身にまたは他者に対して肯定的か否定的かを判定するため、それぞれの判定結果に応じた柔軟な処置が可能になる。
【0046】
図8は、本発明のメンタルケア装置の主要部を示すブロック図である。図4に示すように、メンタルケア装置Aは、入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定する感情極性判定手段2と、前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力するタイプ別応答手段3とを備えている。
【0047】
また、上記の実施形態では、以下の(1)〜(5)に示すようなメンタルケア装置も開示されている。
【0048】
(1)タイプ別応答手段(例えば、タイプ別応答手段3)は、感情極性及び感情対象に応じて、2種類以上の異なる応答を行なうメンタルケア装置。
【0049】
(2)メンタルケア装置において、感情極性判定手段(例えば、感情極性判定手段2)は、感情表現を示す語句と当該語句の感情極性とを含む感情表現辞書を備え、前記感情表現辞書を用いて、入力した文章の感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定するように構成されていてもよい。
(3)メンタルケア装置において、感情極性判定手段は、感情対象を示す語句と当該語句が表す感情対象の種類とを含む対象識別辞書を備え、前記対象識別辞書を用いて、入力した文章の感情表現の感情対象の種類を判定するように構成されていてもよい。
(4)メンタルケア装置において、対象識別辞書は、感情対象の種類として、文章の執筆者自身と当該執筆者以外の他者とをそれぞれ含むように構成されていてもよい。
(5)メンタルケア装置において、タイプ別応答手段(例えば、タイプ別応答手段3)は、文章から検出された感情表現の感情極性が否定的であり、且つ感情対象の種類が前記文章の執筆者自身であった場合、前記感情表現を記した根拠を問う質問を前記文章の執筆者に対して行なうように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、適当なテキストデータの入力ツール、または組織内のEメールやメッセージング・サービス、掲示板などの情報共有ツールを用いて人々の感情を表すテキストデータを取得することにより、メンタルケアを必要とする人に対して様々なタイプの感情表現に応じた応答ができるメンタルケア・サービスを提供可能になる。
【符号の説明】
【0051】
1 情報取得手段
2 感情極性判定手段
3 タイプ別応答手段
21 言語解析手段
22 感情表現検出手段
23 対象識別手段
A メンタルケア装置
A1 CPU
A2 主記憶部
A3 出力部
A4 入力部
A5 通信部
A6 補助記憶部
A7 システムバス
B 外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定する感情極性判定手段と、
前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力するタイプ別応答手段と
を備えたことを特徴とするメンタルケア装置。
【請求項2】
タイプ別応答手段は、感情極性及び感情対象に応じて、2種類以上の異なる応答を行なう
請求項1記載のメンタルケア装置。
【請求項3】
感情極性判定手段は、感情表現を示す語句と当該語句の感情極性とを含む感情表現辞書を備え、
前記感情表現辞書を用いて、入力した文章の感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定する
請求項1または2記載のメンタルケア装置。
【請求項4】
感情極性判定手段は、感情対象を示す語句と当該語句が表す感情対象の種類とを含む対象識別辞書を備え、
前記対象識別辞書を用いて、入力した文章の感情表現の感情対象の種類を判定する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のメンタルケア装置。
【請求項5】
対象識別辞書は、感情対象の種類として、文章の執筆者自身と当該執筆者以外の他者とをそれぞれ含む
請求項4記載のメンタルケア装置。
【請求項6】
タイプ別応答手段は、文章から検出された感情表現の感情極性が否定的であり、且つ感情対象の種類が前記文章の執筆者自身であった場合、前記感情表現を記した根拠を問う質問を前記文章の執筆者に対して行なう
請求項5記載のメンタルケア装置。
【請求項7】
入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定し、
前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力する
ことを特徴とするメンタルケア方法。
【請求項8】
コンピュータに、
入力した文章から感情表現を検出し、前記感情表現が肯定的か否定的かを示す感情極性を判定し、前記感情表現の対象を示す感情対象の種類を判定する感情極性判定処理と、
前記感情極性及び前記感情対象の種類に応じた所定の応答文を出力するタイプ別応答処理と
を実行させるためのメンタルケアプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−109575(P2013−109575A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254031(P2011−254031)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)