説明

メンテナンス支援システム

【課題】メンテナンス支援システムにおいて、メンテナンスコンピュータに必要なアプリケーションソフトウェアの外部流出を防止することである。
【解決手段】建物6に設置されているエレベータ装置10に対するメンテナンス作業を支援するメンテナンス支援システム30は、エレベータ装置10を構成するエレベータ運行制御装置24と、情報センタ32とを共用して構成される。そして、メンテナンス支援システム30は、さらに、機械室8にしっかりと固定されて設けられるエレベータ運行制御装置24に内蔵され、メンテナンスソフトウェアが搭載された親機40と、自らはメンテナンスソフトウェアが搭載されず、親機40と接続しているときに限り親機40のメンテナンスソフトウェアを利用できる可搬型子機60とを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス支援システムに係り、特に、メンテナンス用可搬型コンピュータを用いてメンテナンスを行う場合のメンテナンス支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等に設けられる各種建物関係設備には保守等のためのメンテナンス作業を行う必要があるものが多い。例えば、建物に設けられるエレベータ、エスカレータ、空調設備、給排水設備、建物全体のセキュリティ設備等は、定期的、あるいは必要に応じて点検、保守等のメンテナンス作業が行なわれる。
【0003】
これらの設備のメンテナンス作業には、設備の点検、保守等に関する専門知識が必要で
あり、また、メンテナンス履歴を記録に残すことが好ましい。そこで、保守作業員はノート型パーソナルコンピュータ等の携帯型あるいは可搬型のコンピュータを用いて、保守、点検等の手順を表示させ、あるいは保守、点検等の結果をメンテナンス履歴としてメモリに記憶させることが行われる。このようなコンピュータは、メンテナンスコンピュータ等と呼ばれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、エレベータの技術支援システムとして、エレベータの使用機器に関する技術情報が記録された技術情報ファイルを備える中央管理装置を設け、この中央管理装置と通信回線を介して携帯端末を接続してエレベータの使用機器を特定する情報を中央管理装置に伝送し、技術情報ファイルから該当する使用機器の技術情報を読み出して携帯端末に返送する構成が開示されている。
【0005】
なお、本発明に関連する技術として、特許文献2には、現品管理システムとして、現場に現品管理を行うための端末としてハンディターミナルが配備され、ハンディターミナルにはWebブラウザが搭載され、Webブラウザによりネットワークに接続されたWebサーバとの間で通信を行い、Webサーバとの間で製品の在庫情報をやり取りすることが述べられている。ここでは、Webサーバにハンディターミナルで用いられる業務プログラムが登録されており、ハンディターミナルは搭載されたWebブラウザにより、必要に応じWebサーバ上に登録された業務プログラムを呼び出すことが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−205882号公報
【特許文献2】特開2002−342432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、建物関係設備等のメンテナンス作業にはメンテナンスコンピュータが用いられる。このメンテナンスコンピュータには、上記のように保守、点検等の手順がアプリケーションソフトウェアとして搭載され、また、保守、点検等の結果であるメンテナンス履歴等が記憶されているメモリを備えている。さらに、メンテナンス現場での判断を支援するために、故障解析用のアプリケーションソフトウェア、メンテナンス対象装置と接続してその装置の動作状態の表示を行わせることのできるアプリケーションソフトウェア等が搭載される場合がある。
【0008】
これらの各種アプリケーションソフトウェアは、メンテナンス作業実績を積み上げて開発されたものであるので、貴重な財産である。ところで、メンテナンスコンピュータは、メンテナンス先に持ち運びできるように可搬型であるので、これが一旦紛失されると、上記の貴重な財産が外部に流出することが起こる。
【0009】
本発明の目的は、メンテナンスコンピュータに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することを防止できるメンテナンス支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るメンテナンス支援システムは、メンテナンス先の建物に固定されて設けられ、メンテナンスソフトウェアが搭載された親機と、自らはメンテナンスソフトウェアが搭載されず、親機と接続しているときに限り親機のメンテナンスソフトウェアを利用できる可搬型子機と、を含むメンテナンス支援システムであって、親機は、電源供給部と、電源供給部から電力の供給を受けて作動し、予め定めた所定の始動用アクセスを受け付けて初めて始動するスタータジョブを含むメンテナンスソフトウェアが搭載されたソフト基板と、電源供給部から電力の供給を受けて作動し、ソフト基板に所定の始動用アクセスを実行してソフト基板を起動させる起動ソフトウェアが搭載された起動基板と、可搬型子機の接続アクセスを認証して、可搬型子機にメンテナンスソフトウェアの読み出しを許可する認証部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るメンテナンス支援システムにおいて、可搬型子機は、Webブラウザを搭載しており、Webブラウザにより、親機からメンテナンスソフトウェアを読み出すことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るメンテナンス支援システムにおいて、親機に設けられ、電源接続端子を含むソフト基板装着用インタフェースコネクタと、ソフト基板は、電源供給が絶たれると内容が消失するRAMにメンテナンスソフトウェアを搭載することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るメンテナンス支援システムにおいて、親機に設けられ、電源接続端子を含む起動基板装着用インタフェースコネクタと、起動基板は、電源が絶たれると内容が消失するRAMに起動ソフトウェアを搭載することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るメンテナンス支援システムにおいて、認証部は、可搬型子機の機械アドレスが予め登録された機械アドレスと一致したときに可搬型子機の接続アクセスの認証を開始することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成により、メンテナンス支援システムは、メンテナンス先の建物に固定されて設けられ、メンテナンスソフトウェアが搭載された親機と、自らはメンテナンスソフトウェアが搭載されず、親機と接続しているときに限り親機のメンテナンスソフトウェアを利用できる可搬型子機とを含む。したがって、可搬型子機が紛失されても、メンテナンスに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することがない。
【0016】
また、親機は、電源供給部と、電源供給部から電力の供給を受けて作動し、予め定めた所定の始動用アクセスを受け付けて初めて始動するスタータジョブを含むメンテナンスソフトウェアが搭載されたソフト基板と、電源供給部から電力の供給を受けて作動し、ソフト基板に所定の始動用アクセスを実行してソフト基板を起動させる起動ソフトウェアが搭載された起動基板と、可搬型子機の接続アクセスを認証して、可搬型子機にメンテナンスソフトウェアの読み出しを許可する認証部とを備える。これにより、親機からソフト基板と起動基板と認証部とを共に紛失しない限り、つまり、親機を紛失しない限り、メンテナンスに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することがないことになる。例えば、親機を建物に固定する等によって、メンテナンスに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することを防止できる。
【0017】
また、メンテナンス支援システムにおいて、可搬型子機は、Webブラウザを搭載しており、Webブラウザにより、親機からメンテナンスソフトウェアを読み出すので、可搬型子機を紛失しても、メンテナンスに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することがない。
【0018】
また、メンテナンス支援システムにおいて、親機に設けられ、電源接続端子を含むソフト基板装着用インタフェースコネクタと、ソフト基板は、電源供給が絶たれると内容が消失するRAMにメンテナンスソフトウェアを搭載するので、ソフト基板を紛失しても、その内容は消失するので、メンテナンスに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することを防止できる。
【0019】
また、メンテナンス支援システムにおいて、親機に設けられ、電源接続端子を含む起動基板装着用インタフェースコネクタと、起動基板は、電源が絶たれると内容が消失するRAMに起動ソフトウェアを搭載するので、起動基板を紛失しても、起動ソフトウェアが消失するので、その起動基板でもってメンテナンスソフトウェアをもはや起動させることができず、メンテナンスに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することを防止できる。
【0020】
また、メンテナンス支援システムにおいて、認証部は、可搬型子機の機械アドレスが予め登録された機械アドレスと一致したときに可搬型子機の接続アクセスの認証を開始するので、登録された可搬型子機のみが接続アクセスでき、他のコンピュータでは親機からアプリケーションソフトウェアを読み出すことができない。したがって、他のコンピュータを用いてのメンテナンスに必要なアプリケーションソフトウェアの外部流出を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、メンテナンス対象の建物用設備として、エレベータ設備を説明するが、これ以外であっても、可搬型コンピュータを用いてメンテナンス作業を行なう設備であればよい。例えば、エスカレータ、空調設備、給排水設備、建物全体のセキュリティ設備等であってもよい。また、以下において、親機は、建物の機械室に設置されるエレベータ運行制御装置に内蔵されるものとして説明するが、親機はメンテナンス先の建物に固定される状態であればよい。例えば、専用の親機であっても、簡単には他人によって持ち去られて紛失しないように、建物にしっかり固定された状態であればよい。
【0022】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0023】
図1は、建物6に設置されているエレベータ装置10に対するメンテナンス作業を支援するメンテナンス支援システム30の構成を説明する図である。図2は、メンテナンス支援システム30における親機40と可搬型子機60について、詳細な構成を説明する図である。最初に、メンテナンス作業の対象であるエレベータ装置10の内容を説明し、その後に、メンテナンス支援システム30の内容を詳細に述べる。
【0024】
エレベータ装置10は、複数階の階床を有する建物6に設けられ、乗客を希望の階床から希望の階床まで運ぶ機能を有する設備である。昇降路12は、建物6の上下階を貫通して設けられるエレベータかご14の昇降用通路である。エレベータかご14は、乗客を乗せる移動かごである。バランス錘16は、昇降用ロープを介してエレベータかご14の質量とバランスを取る錘である。巻上機18は、昇降用ロープを正転逆転方向に巻き上げることでエレベータかご14とバランス錘16とを昇降させる駆動装置で、例えば電動機で構成される。
【0025】
エレベータかご14の室内に設けられるかご内操作盤20は、昇降する先の希望階等を登録するための操作ボタン等を有する操作盤である。建物6の各階床のエレベータ乗場に設けられる乗場ボタン操作盤22は、乗場においてエレベータかご14を呼ぶためのかご呼びボタン等を有する操作盤である。
【0026】
建物6の屋上等に設けられる機械室8は、上記の巻上機18のほか、エレベータ運行制御装置24等を設置するための室内空間である。ここで、エレベータ運行制御装置24は、かご内操作盤20と乗場ボタン操作盤22等の指示に従って、エレベータかご14の運行に関する制御を行う機能を有する装置であり、機械室8にしっかりと固定されている。エレベータ運行制御装置24とネットワークによって接続される情報センタ32は、複数の設備の運転状態等を遠隔監視する機能を有する監視センタで、ここでは、エレベータ装置10の運転状態等を遠隔監視する機能を有する。
【0027】
以上で、エレベータ装置10についての説明を行ったので、次に、メンテナンス支援システム30の内容について説明する。メンテナンス支援システム30は、エレベータ装置10について行われるメンテナンス作業を支援するシステムで、ここでは特に、メンテナンスコンピュータに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することを防止しながら、メンテナンス作業を支援する機能を有する。
【0028】
メンテナンス支援システム30は、エレベータ装置10を構成するエレベータ運行制御装置24と、情報センタ32とを共用して構成される。そして、メンテナンス支援システム30は、さらに、機械室8にしっかりと固定されて設けられるエレベータ運行制御装置24に内蔵され、メンテナンスソフトウェアが搭載された親機40と、自らはメンテナンスソフトウェアが搭載されず、親機40と接続しているときに限り親機40のメンテナンスソフトウェアを利用できる可搬型子機60とを含んで構成される。
【0029】
図1では、作業員4が、可搬型子機60を機械室8へ持ち込んで親機40と接続し、親機40からメンテナンスソフトウェアを読み出してメンテナンス作業を行なっている様子が示されている。メンテナンス作業は機械室8以外でも行うことがあるので、親機40との接続インタフェースは、エレベータかご14内にも設けられる。また、必要に応じ、建物6の適当な箇所に設けるものとしてもよい。
【0030】
図2は、親機40と可搬型子機60について、詳細な構成を説明する図である。親機40は、上記のように、機械室8に固定設置されるエレベータ運行制御装置24の筐体内に固定して内蔵されるコンピュータである。可搬型子機60は、作業員4がメンテナンス作業の指示を受けて、メンテナンス先に赴くときに持参するコンピュータで、例えば、ノート型のコンピュータである。可搬型子機60は、メンテナンス作業のための入出力操作に適した専用のコンピュータで構成することができるが、場合によっては、Webブラウザが搭載されるものであれば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0031】
親機40は、親機40を構成する各種要素に電力を供給する電源供給部である電源42と、電源供給端子を含む2つのインタフェースコネクタ44,46と、外部との交信のためのインタフェースコネクタ48と、親機40を構成する各要素の作動を制御する制御部50を含んで構成される。
【0032】
インタフェースコネクタ44に挿入されるソフト基板52は、メンテナンス作業に必要なメンテナンスソフトウェア54が搭載された回路基板である。メンテナンスソフトウェア54は、電源42からの電力供給を受けて作動し、予め定めた所定の始動用アクセスを受け付けて初めて始動するスタータジョブを含んで構成される。
【0033】
スタータジョブとは、そのジョブを実行して初めて本体のアプリケーションジョブの実行が開始されるものである。スタータジョブの先頭アドレスへのアクセスが始動用アクセスとなるが、これは起動基板56の起動ソフトウェア58によって実行される。つまり、起動基板56の起動ソフトウェア58の実行によるアクセスを受けて初めてメンテナンスソフトウェア54の本体部分が作動開始する。
【0034】
メンテナンスソフトウェア54は、1つのアプリケーションソフトウェアであってもよいが、複数のアプリケーションソフトウェアの集合であってもよい。例えば、メンテナンス作業の保守、点検の手順の表示を行わせるためのソフトウェア、エレベータ装置10を構成する各種要素の動作状態の表示を行わせるためのソフトウェア、故障解析を実行するためのソフトウェア、故障解析の手順を表示させるためのソフトウェア、エレベータ装置10の各種要素のメンテナンス履歴を表示させるためのソフトウェア、情報センタ32と交信して取得した技術情報等を表示させるためのソフトウェア等の集合であってもよい。
【0035】
メンテナンスソフトウェア54は、ソフト基板52に実装されて設けられるRAM(Randam Access Memory)に記憶されて搭載される。RAMは、電源供給がなくなるとその内容が消失するメモリである。したがって、RAMにメンテナンスソフトウェア54が搭載されていても、一旦、ソフト基板52がインタフェースコネクタ44から抜かれて電源供給がなくなると、記憶された内容が全部消失し、再び記憶内容が復活することがない。このように、RAMにメンテナンスソフトウェア54を搭載することで、ソフト基板52がインタフェースコネクタ44から外されて持ち去られても、そのときにはメンテナンスソフトウェア54は消失しているので、メンテナンスソフトウェア54が外部に流出することがない。
【0036】
メンテナンスソフトウェア54をソフト基板52に搭載する方法はいくつかある。1つの方法は、インタフェースコネクタ48を用いて、情報センタ32等からメンテナンスソフトウェア54を送信して、RAMに書込む方法である。この場合には、ソフト基板52がインタフェースコネクタ44に挿入され、電源42から電源供給を受けている状態であるので、メンテナンスソフトウェア54の送信の前に、RAMに余分のメンテナンスソフトウェアが搭載されていないように、アンインストール作業を行なう。
【0037】
もう1つの方法は、親機40から独立して用意されたソフト基板52を書込装置に搭載し、電源を供給して、RAMにメンテナンスソフトウェア54を書き込む方法である。書込装置は、情報センタ32、あるいはメンテナンス会社に備えておくことができる。この場合には、ソフト基板52に、所定の短時間の電力供給を行うことができるが、所定の短時間が経過すると電源供給がなくなる素子、例えばキャパシタ等を搭載しておく。これにより、外部からの電源供給がなされなくとも、キャパシタから供給される電力を用いて所定の短時間だけRAMの記憶内容が保持される。RAMの記憶内容が保持される所定の短時間として、例えば、ソフト基板をコネクタから着脱するのに要する時間の数倍程度とすることが好ましい。例えば、数秒間とすることが好ましい。
【0038】
このようにすることで、書込装置でソフト基板52のRAMにメンテナンスソフトウェア54を書き込んだ後、ソフト基板52を書込装置から取外し、所定の短時間の間に、適当な電源回路を含むアダプタにソフト基板52を搭載し直す。これによって、アダプタ付ソフト基板のRAMには、メンテナンスソフトウェア54は消失することなく保持される。そして、アダプタ付ソフト基板を親機40のところまで運び、そこで、アダプタからソフト基板52を取外し、所定の短時間の間に、親機40のインタフェースコネクタ44に挿入する。適当な電源回路を含むアダプタにソフト基板52を搭載し直す。このようにすることで、親機40に、メンテナンスソフトウェア54が保持されたRAMを有するソフト基板52が搭載される。
【0039】
インタフェースコネクタ46に挿入される起動基板56は、ソフト基板52の作動を起動させる起動ソフトウェア58が搭載された回路基板である。起動ソフトウェア58も電源42からの電力供給を受けて作動する。起動基板56は、インタフェースコネクタ46とインタフェースコネクタ44とを接続する信号線で、ソフト基板52と接続される。
【0040】
起動ソフトウェア58は、メンテナンスソフトウェア54に対し、予め定めた所定の始動用アクセスを行う機能を有する。すなわち、ソフト基板52に関連して述べたように、メンテナンスソフトウェア54のスタータジョブの最初のアドレスにアクセスする機能を有する。このように、アクセス信号またはアクセス情報をメンテナンスソフトウェア54のスタータジョブに送信することで、メンテナンスソフトウェア54の本体部が初めて作動する。
【0041】
また、起動ソフトウェア58も、起動基板56に実装されて設けられるRAMに記憶されて搭載される。したがって、メンテナンスソフトウェア54に関連して説明したように、RAMに起動ソフトウェア58が搭載されていても、一旦、起動基板56がインタフェースコネクタ46から抜かれて電源供給がなくなると、記憶された内容が全部消失し、再び記憶内容が復活することがない。このように、RAMに起動ソフトウェア58を搭載することで、起動基板56がインタフェースコネクタ46から外されて持ち去られても、そのときには起動ソフトウェア58は消失しているので、その起動基板56によってメンテナンスソフトウェア54が作動することはない。
【0042】
なお、起動基板56のRAMに起動ソフトウェア58を搭載する方法は、メンテナンスソフトウェア54をRAMに搭載する方法と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0043】
図2における親機40の制御部50は、親機40を構成する各要素の作動を全体として制御する機能を有するが、ここでは特に、インタフェースコネクタ48を介して可搬型子機60と接続したときに、可搬型子機の接続アクセスを認証して、可搬型子機にメンテナンスソフトウェアの読み出しを許可する認証部としての機能を有する。
【0044】
認証は、可搬型子機60から送信されてくる認証用データを取得し、その評価によって実行される。認証は、少なくとも2段階の手順で実行するものとできる。最初の手順は、可搬型子機60から送信されてくる可搬型子機60の機械アドレスデータが、親機40において予め登録された機械アドレスと一致するか否かを判断する手順である。一致しないときは次の認証手続が開始しない。一致するときに、初めて可搬型子機60の接続アクセスの認証を開始する。次の認証手続は、可搬型子機60から送信されてくる接続アクセス用のパスワードデータが親機40に予め登録されているパスワードと一致するか否かを判断する手順である。接続アクセス用のパスワードデータの認証は、複数のパスワードについて行うものとしてもよい。
【0045】
このように、複数の手順によって可搬型子機60の接続アクセスが認証されると、可搬型子機60にメンテナンスソフトウェア54の読み出しの許可が与えられる。
【0046】
図2に示される可搬型子機60は、キーボード等の入力部64と、液晶ディスプレイ等の出力部66と、親機40と適当な信号線62等の通信手段によって交信する通信制御部68と、制御プログラム等を記憶する記憶部70と、CPU74を含んで構成されるコンピュータである。
【0047】
記憶部70には、上記の制御プログラムとは別に、Webブラウザ72が記憶されている。Webブラウザ72は、親機40からメンテナンスソフトウェア54の読み出しが許可されたときに、メンテナンスソフトウェア54を可搬型子機60にインストールし直すのではなく、親機40をWebサーバとして、そのソフト基板52に搭載されている状態のメンテナンスソフトウェア54を直接読み出すために用いられる。このようにWebブラウザ72の機能を利用することで、可搬型子機60にメンテナンスソフトウェア54を搭載することなく、親機40と接続しているときに限り、メンテナンスソフトウェア54を読み出して利用することができる。
【0048】
CPU74は、親機40と接続アクセスして認証用データを送信し、認証を受ける認証交信モジュール76と、親機40への接続アクセスが認証されたときに、Webブラウザ72を用いて親機40に搭載されているメンテナンスソフトウェア54を読み出すソフトウェア読出モジュール78を含んで構成される。これらの機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、対応する制御プログラムを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
【0049】
上記構成の作用を図3、図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。図3は、親機40におけるメンテナンスソフトウェア54の搭載手順を説明するフローチャートである。図4は、可搬型子機60におけるメンテナンスソフトウェア54の読出と、これを利用するメンテナンス作業に関する手順を説明するフローチャートである。これらの手順は、それぞれ、親機40、可搬型子機60における制御プログラムの各処理手順に対応する。なお、これらの図で、破線枠で囲んだ手順は、親機40または可搬型子機60が行う手順ではなくて、人間が行う手順である。
【0050】
上記で説明したメンテナンス支援システム30を構築するには、メンテナンス先の建物に親機40を固定設置する必要がある。そのためには、メンテナンス先と保守契約を行う。保守契約の前に、ハードウェアとしての親機40を設置する場合には、ソフト基板52と起動基板56をアンインストール状態としておく(S10)。つまり、ソフトウェアが搭載されていない基板をインタフェースコネクタ44,46に挿入しておく。そして、保守契約が実際に締結(S12)されると、親機40のインタフェースコネクタ48を介して、情報センタ32と接続する。
【0051】
そして、親機40によって情報センタ32を認証し、その後に、メンテナンスソフトウェア54と起動ソフトウェア58がネットワークを介して送信される。送信されたメンテナンスソフトウェア54はソフト基板52に搭載され(S14)、起動ソフトウェア58は起動基板56に搭載される(S16)。
【0052】
このソフトウェア搭載の仕方は、メンテナンスソフトウェア54のソフト基板52への搭載に関連して説明した第1の方法によるものである。第2の方法によるときは、S10においてソフト基板52、起動基板56がインタフェースコネクタ44,46に挿入されない状態とされる。そして保守契約が成立すると、メンテナンスソフトウェア54が搭載されたソフト基板52が電源付アダプタと一体となって、作業員4によって親機40のところに運ばれてくる。起動ソフトウェア58が搭載された起動基板56も同様に電源付アダプタと一体となって運ばれてくる。そして、所定の短時間の間に、電源付アダプタから外されたソフト基板52と起動基板56がそれぞれインタフェースコネクタ44,46に挿入される。これによって、メンテナンスソフトウェア54が搭載されたソフト基板52と、起動ソフトウェア58が搭載された起動基板56が親機40に備えられることになる。
【0053】
その後に、ソフト基板52、起動基板56がインタフェースコネクタ44,46から抜かれる(S18)と、抜かれた基板のRAMは電源供給が止まるので、搭載されていたソフトウェアが消失する(S20)。これによって、メンテナンスコンピュータに必要なアプリケーションソフトウェアが外部に流出することを防止できる。基板が抜かれていなければ、図4に示されるメンテナンス作業を行なうことができる。仮に基板が抜かれていると、その情報が、親機40が内蔵されているエレベータ運行制御装置24を介して情報センタ32に通報されるので、原因の究明と、新しい基板の搭載等の適切な処置が取られる。
【0054】
図4は、メンテナンス作業が行なわれるときの手順を示すフローチャートである。メンテナンス作業の指示が発行される(S30)と、担当の作業員4は、可搬型子機60を持参して、メンテナンス先へ赴く。そして、メンテナンス先の建物6における機械室8、または適当な箇所に設けられたインタフェースコネクタ48に適当な信号線62を介して可搬型子機60を接続する。
【0055】
これ以後、可搬型子機60の動作と作用について説明する。可搬型子機60がインタフェースコネクタ48に接続する前後において、可搬型子機60の電源が入れられ、立ち上げ用パスワードが取得されて、可搬型子機60の動作が立ち上げられる(S32)。立ち上げ用パスワードは、作業員固有パスワードと、可搬型子機60固有のパスワード等、2重に入力されるものとしてもよい。
【0056】
可搬型子機60の動作が立上ると、親機40に認証用データを送信する(S34)。認証用データは、親機40の制御部50に関連して説明したように、可搬型子機60の機械アドレスデータと、接続アクセス用のパスワードデータの2段階とすることができる。
【0057】
そして、親機40によって認証されたか否かが判断される(S36)。具体的には、親機40から、メンテナンスソフトウェア54の読み出しを許可する旨のメッセージを受領したか否かが判断される。ここまでの手順は、可搬型子機60のCPU74の認証交信モジュール76の機能によって実行される。
【0058】
親機40によって接続アクセスが認証されたと判断されると、次に、Webブラウザ72を利用して、親機40をWebサーバとして、そこに搭載されているメンテナンスソフトウェア54の読み出しが行われる(S38)。この手順は、可搬型子機60のCPU74のソフトウェア読出モジュール78の機能によって実行される。これにより、可搬型子機60は、自らはメンテナンスソフトウェアが搭載されず、親機40と接続しているときに限り親機40のメンテナンスソフトウェア54を利用できるものとできる。
【0059】
メンテナンスソフトウェア54は、上記のように、メンテナンス作業に必要なアプリケーションソフトウェアの集合である。したがって、作業員4は、メンテナンス作業の様々な状況に合わせて、Webブラウザを用いて、必要なアプリケーションソフトウェアを読み出し、メンテナンス作業を進めることができる。そして、メンテナンス作業の進展に応じて、可搬型子機60は作業員4が要求する必要な情報を出力し、また作業員4が入力したメンテナンスに関するデータを取得する(S40)。取得されたメンテナンスデータは、予め定められたデータ送信ルールに従って、親機40、エレベータ運行制御装置24を介して情報センタ32と交信して送信される(S42)。
【0060】
このように、Webブラウザを利用し、必要に応じ情報センタ32と交信して、保守作業が進められると、可搬型子機60は、保守作業終了か否かを判断する(S44)。具体的には、作業員4による「作業完了」アイコン等の入力の有無を監視する。保守作業終了と判断されると、Webブラウザが閉鎖され(S46)、これによって、可搬型子機60によるメンテナンスソフトウェア54の読み出しが終了する。そして、次のメンテナンス作業の指示が発行されると、再びS30へ戻る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る実施の形態において、エレベータ設備に対するメンテナンス作業を支援するメンテナンス支援システムの構成を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のメンテナンス支援システムにおける親機と可搬型子機について、詳細な構成を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、親機におけるメンテナンスソフトウェアの搭載手順を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に係る実施の形態において、可搬型子機におけるメンテナンスソフトウェアの読出と、これを利用するメンテナンス作業に関する手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
4 作業員、6 建物、8 機械室、10 エレベータ装置、12 昇降路、14 エレベータかご、16 バランス錘、18 巻上機、20 かご内操作盤、22 乗場ボタン操作盤、24 エレベータ運行制御装置、30 メンテナンス支援システム、32 情報センタ、40 親機、42 電源、44,46,48 インタフェースコネクタ、50 制御部、52 ソフト基板、54 メンテナンスソフトウェア、56 起動基板、58 起動ソフトウェア、60 可搬型子機、62 信号線、64 入力部、66 出力部、68 通信制御部、70 記憶部、72 Webブラウザ、74 CPU、76 認証交信モジュール、78 ソフトウェア読出モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンテナンス先の建物に固定されて設けられ、メンテナンスソフトウェアが搭載された親機と、自らはメンテナンスソフトウェアが搭載されず、親機と接続しているときに限り親機のメンテナンスソフトウェアを利用できる可搬型子機と、を含むメンテナンス支援システムであって、
親機は、
電源供給部と、
電源供給部から電力の供給を受けて作動し、予め定めた所定の始動用アクセスを受け付けて初めて始動するスタータジョブを含むメンテナンスソフトウェアが搭載されたソフト基板と、
電源供給部から電力の供給を受けて作動し、ソフト基板に所定の始動用アクセスを実行してソフト基板を起動させる起動ソフトウェアが搭載された起動基板と、
可搬型子機の接続アクセスを認証して、可搬型子機にメンテナンスソフトウェアの読み出しを許可する認証部と、
を備えることを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載のメンテナンス支援システムにおいて、
可搬型子機は、Webブラウザを搭載しており、Webブラウザにより、親機からメンテナンスソフトウェアを読み出すことを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載のメンテナンス支援システムにおいて、
親機に設けられ、電源接続端子を含むソフト基板装着用インタフェースコネクタと、
ソフト基板は、電源供給が絶たれると内容が消失するRAMにメンテナンスソフトウェアを搭載することを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項4】
請求項2に記載のメンテナンス支援システムにおいて、
親機に設けられ、電源接続端子を含む起動基板装着用インタフェースコネクタと、
起動基板は、電源が絶たれると内容が消失するRAMに起動ソフトウェアを搭載することを特徴とするメンテナンス支援システム。
【請求項5】
請求項2に記載のメンテナンス支援システムにおいて、
認証部は、可搬型子機の機械アドレスが予め登録された機械アドレスと一致したときに可搬型子機の接続アクセスの認証を開始することを特徴とするメンテナンス支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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