説明

メンテナンス装置、液体噴射装置、及びメンテナンス方法

【課題】液体受容部材に保守液が供給されたときに、液体受容部材から保守液が流れ出すことを抑制することができるメンテナンス装置、液体噴射装置、及びメンテナンス方法を提供することにある。
【解決手段】記録ヘッド12から廃液として排出されるインク(液体)を受容可能に配設されるキャップ3(液体受容部材)をメンテナンスするメンテナンス装置2は、キャップ3に対して接離可能であって、かつ、キャップ3に当接することによりキャップ3を覆う閉塞部材7と、閉塞部材7がキャップ3を覆うことにより形成される密閉空間(閉空間)に対して保守液を供給する保守液供給部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体受容部材に保守液を供給するメンテナンス装置、液体噴射装置、及びメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)から記録媒体に液体を噴射して画像を印刷するインクジェット式のプリンターが知られている。こうしたプリンターにおいては、記録ヘッドに形成されたノズル内におけるインク(液体)の乾燥を抑制するために、記録ヘッドに対してキャップが接離可能に配設される。そして、このようなキャップにはキャップ内の保湿に供するための保守液が供給される。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、記録ヘッドに形成されたノズルを覆うようにキャップを記録ヘッドに当接させて形成した閉空間を介してノズル内のインクを吸引する所謂クリーニングを行うことが知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、上記クリーニングの他に、印刷とは無関係の制御信号に基づき記録ヘッドに対向するキャップ内にノズルからインクを廃液として吐出する所謂フラッシング処理を行うこともある。このようなクリーニング時やフラッシング処理時にキャップ内に受容されたインクは、その後、キャップ内から廃インクタンクに排出されるが、一部のインクはキャップ内に残留する。このため、キャップにはキャップ内の洗浄に供するための保守液が供給される。
【0004】
従って、一般的に、上述のごとくキャップを備えた液体噴射装置では、液体を受容する液体受容部材としてのキャップに保守液を供給するメンテナンス装置を備え、キャップに保守液が供給されることにより、キャップ内の保湿や洗浄がなされて、キャップがメンテナンス(保守)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−101634号公報
【特許文献2】特開2006−192679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、キャップ内の保湿や洗浄を十分に行うためには多量の保守液がキャップに供給されることが好ましいが、キャップに過剰な量の保守液が供給された場合には、キャップ(液体受容部材)から保守液が溢れて流れ出すおそれがある。特に、キャップが水平方向に対して傾斜して設けられる場合には、キャップから保守液が溢れ出し易い。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体受容部材に保守液が供給されたときに、液体受容部材から保守液が流れ出すことを抑制することができるメンテナンス装置、液体噴射装置、及びメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス装置は、液体噴射ヘッドから廃液として排出される液体を受容可能に配設される液体受容部材をメンテナンスするメンテナンス装置であって、前記液体受容部材に対して接離可能であって、かつ、前記液体受容部材に当接することにより該液体受容部材を覆う閉塞部材と、前記閉塞部材が前記液体受容部材を覆うことにより形成される閉空間に対して保守液を供給する保守液供給部とを備える。
【0009】
この発明によれば、閉塞部材によって液体受容部材が覆われることで形成される閉空間に対して、保守液が供給される。そのため、保守液が液体受容部材に供給されるときには、閉塞部材が液体受容部材に当接することによって液体受容部材を覆っているため、液体受容部材から保守液が流れ出すことを抑制することができる。
【0010】
本発明のメンテナンス装置において、前記保守液供給部は、前記閉空間が吸引機構の吸引駆動により負圧になることに伴い前記保守液を前記閉空間に対して供給する。
この発明によれば、閉塞部材が液体受容部材を覆った状態で吸引機構の吸引駆動に伴い閉空間が負圧になると、保守液供給部から保守液が閉空間内に吸引され、液体受容部に保守液が円滑に供給されるようになる。
【0011】
本発明のメンテナンス装置において、前記保守液供給部は、保守液を貯溜する保守液貯溜部と、前記閉空間と前記保守液貯溜部とを連通する流路と、前記流路を開閉する流路開閉弁とを備える。
【0012】
この発明によれば、流路を開閉する流路開閉弁によって、保守液が貯溜された保守液貯溜部から、閉塞部材によって液体受容部材が覆われている閉空間への、保守液の供給を制御することができる。具体的には、流路開閉弁によって流路が開放されたときには、閉塞部材によって液体受容部材が覆われて形成される閉空間に対して、保守液を供給することができ、流路開閉弁によって流路が閉鎖されたときには、上記閉空間に対する保守液の供給を停止することができる。
【0013】
本発明のメンテナンス装置において、前記流路開閉弁は、前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接しているときに前記流路を開放し、前記閉塞部材が前記液体受容部材から離間しているときに前記流路を閉鎖する。
【0014】
この発明によれば、液体受容部材に対する閉塞部材の接離に連動して流路が開閉される。このため、閉塞部材が前記液体受容部材から離間している状態、即ち、閉塞部材によって液体受容部材が覆われていない状態であって、かつ、液体受容部材に保守液が供給されると液体受容部材から保守液が流れ出るおそれがある状態では、流路が閉鎖される。よって、液体受容部材から保守液が流れ出ることをより適切に抑制することができる。
【0015】
本発明のメンテナンス装置において、前記保守液供給部は、前記流路に気体を流入可能とする気体流路と、この気体流路を開閉する開放弁とをさらに備える。
この発明によれば、開放弁が気体流路を開放しているときには、気体流路を介して、上記空間と保守液貯溜部とを連通する流路に気体を流入させることができる。このため、閉塞部材によって液体受容部材が覆われて形成される閉空間に対して、流路を介して気体を供給することができる。
【0016】
本発明のメンテナンス装置は、前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を開放して前記吸引機構が吸引駆動する。
【0017】
この発明によれば、閉塞部材によって液体受容部材が覆われて形成される閉空間に対して、気体が混ざった状態である気液二相流の保守液が吸引されて、液体受容部材へ泡状の保守液の供給を図ることができる。泡状の保守液は、泡を含まない保守液に比べて洗浄効果が大きいため、液体受容部材の効果的な洗浄を図ることができる。
【0018】
本発明のメンテナンス装置は、前記吸引機構及び前記開放弁の制御により以下の(a)〜(c)の動作を切り替える制御部を備える。
(a)前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を閉鎖して前記吸引機構が吸引駆動する動作
(b)前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を閉鎖して前記吸引機構が吸引駆動し、その後、前記流路が閉鎖された状態において、前記気体流路を開放して前記吸引機構が吸引駆動する動作
(c)前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を開放して前記吸引機構が吸引駆動する動作
【0019】
この発明によれば、上記(a)〜(c)に記載の動作を切り替えて実行するように吸引機構及び開放弁が制御されるため、液体受容部材を適切かつ柔軟にメンテナンスすることができる。具体的には、上記(a)に記載の動作が実行されると、閉塞部材によって液体受容部材が覆われる閉空間に保守液が供給されて、その閉空間に保守液が満たされる保守液充填状態を維持し続けることができる。このため、例えば、メンテナンス装置が動作を停止するときに、保守液充填状態を維持して液体受容部材を十分にメンテナンスすることができる。また、上記(b)に記載の動作が実行されると、閉塞部材によって液体受容部材が覆われる閉空間に保守液が供給されて、その後、その閉空間に気体が供給される。このため、保守液を用いて液体受容部材がメンテナンスされた後に、保守液を上記空間から排出させるとともに閉塞部材を液体受容部材から離間させて、液体噴射ヘッドに対向して液体受容部材を配設させることができる。また、上記(c)に記載の動作が実行されると、液体受容部材の効果的な洗浄を図ることができる。
【0020】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成のメンテナンス装置とを備えた。
この発明によれば、上記メンテナンス装置の発明と同様の効果を得ることができる。
【0021】
本発明の液体噴射装置において、前記液体噴射ヘッドは、水平方向に対して傾斜して設けられている。
一般に、液体噴射ヘッドが、水平方向に対して傾斜して設けられていると、液体噴射ヘッドに対向して配設される液体受容部材も傾斜した状態で設けられるため、液体受容部材から保守液が溢れ出し易くなる。この点、本発明は上記構成のメンテナンス装置を備えたことにより、液体受容部材から保守液が流れ出すことを抑制することができる。
【0022】
また、本発明のメンテナンス方法は、液体噴射ヘッドから廃液として排出される液体を受容可能に配設される液体受容部材をメンテナンスするメンテナンス方法であって、前記液体受容部材を閉塞部材で覆うことにより閉空間を形成する工程と、前記閉空間に対して保守液を供給する工程とを備える。
【0023】
この発明によれば、閉塞部材によって液体受容部材が覆われることで形成される閉空間に対して、保守液が供給される。そのため、保守液が液体受容部材に供給されるときには、閉塞部材が液体受容部材に当接することによって液体受容部材を覆っているため、液体受容部材から保守液が流れ出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る液体噴射装置の概略構成を示す断面図。
【図2】同液体噴射装置が備えるメンテナンス装置の構成を示す概略構成図。
【図3】(a)(b)同メンテナンス装置の動作を説明するための断面模式図。
【図4】(a)〜(d)同メンテナンス装置の動作を説明するための断面模式図。
【図5】(a)〜(d)同メンテナンス装置の動作を説明するための断面模式図。
【図6】変更例に係るメンテナンス装置の構成を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「上下方向V」は、図中において矢印Vで示す上下方向をいうものであって、「水平方向H」は、図中において矢印Hで示す水平方向をいうものとする。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る液体噴射装置は、インクジェット式のプリンター1であって、大きな紙面に対して画像を印刷する大判プリンター(LFP:Large-Format Printer)である。
【0027】
プリンター1は、記録媒体である記録用紙Pを搬送する紙送りローラー11、搬送される記録用紙Pに対してインク(液体)を噴射する記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12、記録ヘッド12を移動させるキャリッジ13、記録用紙Pの支持体であるプラテン14等を備えている。
【0028】
プリンター1の上部には、記録用紙Pが巻かれてなるロール体P1が設けられる。記録用紙Pは、電動モーター11aを動力源として駆動する紙送りローラー11によって、プリンター1の上部から水平方向Hに対して斜め下方に搬送される。
【0029】
ロール体P1及び紙送りローラー11の下方には、記録用紙Pの幅方向(具体的には、図1の図面に対して垂直な方向)においてプラテン14が延設されている。紙送りローラー11によって斜めに搬送された記録用紙Pは、プラテン14上に給送される。
【0030】
斜めに搬送される記録用紙Pにおいて、画像が印刷される紙面Paに垂直な法線方向(図中の矢印Nで示す方向)は、上下方向V及び水平方向Hに対して所定の角度で公差する。このように斜めに搬送される記録用紙Pに対応して、記録用紙Pにおいて画像が印刷される紙面Paの反対側において、プラテン14の表面が水平方向Hに対して傾斜した状態で設けられている。
【0031】
プラテン14には、斜めに搬送される記録用紙Pをプラテン14の表面に吸着させるために貫通孔14aが形成されている。この貫通孔14aは、記録ヘッド12側である法線方向N側に向けて開口するとともに、負圧発生空間S1において開口している。電動モーター15aを動力源として駆動するファン15によって、負圧発生空間S1には負圧が発生する。このため、ファン15の駆動により、プラテン14上の記録用紙Pは、貫通孔14aを介して負圧発生空間S1側に吸引されて、プラテン14の表面に吸着される。
【0032】
プラテン14の斜め上方には、記録用紙Pの幅方向において延びるガイド軸16と、ガイド軸16によって支持されたキャリッジ13とが設けられている。キャリッジ13は、ガイド軸16に沿って移動可能に設けられている。即ち、キャリッジ13は、記録用紙Pの幅方向に移動可能に構成されている。
【0033】
キャリッジ13には、キャリッジ13とともに記録用紙Pの幅方向に移動する記録ヘッド12が設けられている。このようにして、画像が印刷される記録用紙Pの紙面Paに対する法線方向N側において、プラテン14に対して所定の間隔を空けて記録ヘッド12が配設されている。
【0034】
記録ヘッド12は、記録用紙Pにインクを噴射する液体噴射ヘッドであって、記録ヘッド12は、インクが噴射されるノズル12bを有している。本実施形態においては、記録ヘッド12は、斜めに搬送される記録用紙Pに対応して、水平方向Hに対して傾斜した状態で設けられている。より具体的には、記録ヘッド12は、複数のノズル12bが開口しているノズル形成面12aを有している。このノズル形成面12aは法線方向Nにおいて記録用紙Pに対向する。このように、斜め下方に向けてインクが噴射されるように記録ヘッド12が設けられることにより、記録ヘッド12が水平方向Hに対して傾斜した状態となっている。
【0035】
そして、インクカートリッジ(図示略)内に溜められているインクは、記録ヘッド12が有する圧電素子12cの駆動により、インクカートリッジから記録ヘッド12へと供給されて、記録ヘッド12の各ノズル12bからプラテン14上に給送された記録用紙Pに噴射される。このようにして、記録ヘッド12は、記録用紙Pに対してインクを噴射して、プラテン14上の記録用紙Pに画像を記録する。
【0036】
プラテン14の斜め下方には、巻き取り装置17が設けられている。画像が記録された記録用紙Pは、電動モーター17aを動力源として駆動する巻き取り装置17によって巻き取られる。なお、巻き取り装置17に代えて、記録用紙Pを裁断する裁断装置(不図示)が設けられていてもよい。
【0037】
図2に示すように、プリンター1により記録用紙Pに画像を印刷しないときには、記録ヘッド12を備えるキャリッジ13は、記録用紙Pの幅方向に移動されることによって、プラテン14に対向しない位置に配設される。このときに、メンテナンス装置2を用いて、記録ヘッド12のノズル12b内のクリーニング等が行われる。
【0038】
次に、本実施形態に係るメンテナンス装置2の構成について詳述する。
図2に示すように、プリンター1が備えるメンテナンス装置2は、移動機構(不図示)により移動可能に設けられたキャップ3と、吸引機構としての吸引ポンプ4と、吸引ポンプ4から送り出された液体(インク及び保守液)を溜めるタンク5とを備えている。
【0039】
有底四角箱状をなすキャップ3は、キャップ3内の底面31aを形成する底部31と、この底部31を凹部とするように突出して形成された周壁32とを備えている。底面31aは、その平面視において周壁32に囲まれている。
【0040】
キャップ3は、傾斜している記録ヘッド12に対応して、水平方向Hに対して傾斜した状態で設けられている。より具体的には、キャップ3内の底面31aがノズル形成面12aと平行となるようにキャップ3が傾斜した状態で設けられ、このように傾斜した状態を維持したままキャップ3が移動するように構成されている。従って、キャップ3内の底面31aが水平方向Hに対して傾斜した状態となっている。
【0041】
キャップ3の底部31には、排出チューブ41Aの上流側端部41aが接続されている。この排出チューブ41A内に設けられた排出通路41を通して、キャップ3内におけるインクや保守液等の液体がキャップ3外に排出される。
【0042】
可撓性材料からなる排出チューブ41Aの下流側端部41bは、有底四角箱状をなすタンク5内に配置されるとともに、排出通路41には、キャップ3内の流体(インクや保守液等の液体、並びに気体)を吸引して排出チューブ41Aの上流側端部41aから下流側端部41bへ送り出す吸引ポンプ4が設けられている。
【0043】
ノズル12b内の増粘したインクを吸引するノズル12b内のクリーニングを行う場合には、記録ヘッド12のノズル形成面12aに対してキャップ3の周壁32を当接させて、各ノズル12bを覆うようにキャップ3が設けられる。このようにしてキャップ3は記録ヘッド12から廃液として排出されるインクを受容可能に配設される。そして、ノズル12bがキャップ3で覆われている状態で電動ポンプである吸引ポンプ4を駆動させることにより、記録ヘッド12とキャップ3により形成される密閉空間を介して、ノズル12b内の増粘したインクが廃インクとして吸引ポンプ4に吸引される。そして、吸引ポンプ4により吸引されたインクは、排出チューブ41Aの排出通路41を介して廃インクタンクであるタンク5内に排出される。なお、タンク5内には、タンク5内に排出されたインクを吸収して保持する吸収材5aが収容されている。
【0044】
また、記録ヘッド12のノズル形成面12aに対してキャップ3の周壁32を当接させて、各ノズル12bを覆うようにキャップ3が設けられることにより、ノズル12b内におけるインクの乾燥が抑制される。なお、キャップ3内を保湿し易くするために、キャップ3内には保守液を吸収保持する吸収部材(図示略)が設けられていることが好ましい。
【0045】
以上のようにして記録ヘッド12をメンテナンスするために用いられるキャップ3には、キャップ3自体をメンテナンス(保守)するための保守液が供給される。即ち、ノズル12b内の増粘したインクを受容するキャップ3内を洗浄するために、また、キャップ3内を保湿するために、メンテナンス装置2は、キャップ3に保守液を供給してキャップ3をメンテナンスする。より具体的には、メンテナンス装置2は、周壁32に囲まれた空間における底面31a上に保守液を供給してキャップ3内をメンテナンスする。従って、キャップ3は保守液を受容する保守液受容部材である。
【0046】
本実施形態に係るメンテナンス装置2は、キャップ3に保守液を供給するための構成として、保守液貯溜部61等により構成される保守液供給部6と、キャップ3の開口を覆う閉塞部材7と、吸引機構である吸引ポンプ4とを有している。
【0047】
本実施形態に係る保守液供給部6は、保守液を貯溜する保守液貯溜部61、この保守液貯溜部61からキャップ3に保守液を導出する流路62、この流路62を開閉する流路開閉弁63、流路62に気体を流入可能とする気体流路64、及び、この気体流路64を開閉する大気開放弁65を備えている。
【0048】
保守液貯溜部61は、保守液を貯めるタンクであって、例えば、保守液貯溜部61には保守液として水が貯められている。保守液貯溜部61には流路62が接続され、この流路62を通して保守液貯溜部61の内部から外部へ保守液が導出されるように構成されている。なお、保守液貯溜部61を構成するタンクには、その内部の気圧を調整するために、内圧調整弁61aが設けられていることが好ましい。
【0049】
保守液貯溜部61には、導出チューブ62Aの上流側端部62aが接続されている。この導出チューブ62A内に設けられた流路62を通して、保守液貯溜部61からキャップ3に保守液が導出される。可撓性材料からなる導出チューブ62Aの下流側端部62bは、閉塞部材7に接続されるとともに、流路62には流路開閉弁63が設けられている。
【0050】
流路開閉弁63は、流路62を開放及び閉鎖するバルブである。流路開閉弁63が、流路62を開放する態様である開状態になると、流路62が開放されて、保守液が導出チューブ62Aの上流側端部62aから下流側端部62bに流れることが可能になる。また、流路開閉弁63が、流路62を閉鎖する態様である閉状態になると、流路62が閉鎖されて、保守液が導出チューブ62Aの上流側端部62aから下流側端部62bに流れることが制限される。本実施形態における流路開閉弁63は、電気力により駆動される電気的駆動弁である。
【0051】
流路開閉弁63よりも下流側の流路62には、気体流路64が接続され、この気体流路64を通して大気中の空気(気体)が流路62に流入するように構成されている。気体流路64は、導出チューブ62Aを分岐させることにより形成されている。分岐した導出チューブ62Aの一端における気体流路64は大気中に開放されている。
【0052】
大気開放弁65は、気体流路64を開放及び閉鎖するバルブである。大気開放弁65が、気体流路64を開放する態様である開状態になると、気体流路64が開放されて、空気が流路62に流れることが可能になる。また、大気開放弁65が、気体流路64を閉鎖する態様である閉状態になると、気体流路64が閉鎖されて、空気が流路62に流れることが制限される。本実施形態における大気開放弁65は、電気力により駆動される電気的駆動弁である。
【0053】
有底四角枠状をなす閉塞部材7は、キャップ3の底面31aを斜め上方から覆うように設けられる蓋部71と、この蓋部71を凹部とするように突出して形成された周壁72とを備えている。
【0054】
閉塞部材7は、キャップ3に対して接離可能(当接及び離間が可能)に構成されている。本実施形態においては、キャップ3が閉塞部材7に向けて移動することにより、閉塞部材7がキャップ3に当接する。そして、閉塞部材7は、キャップ3に当接することによりキャップ3を覆う構成となっている。
【0055】
より具体的には、閉塞部材7の周壁72が、キャップ3の周壁32に当接することにより、キャップ3内に密閉空間S2(図3(a)参照)が形成されるように閉塞部材7がキャップ3を覆う。このようにして閉塞部材7がキャップ3を覆って密閉空間S2が形成されたときには、導出チューブ62Aの下流側端部62bにおける流路62が、密閉空間S2において開口するように設けられる。そして、流路開閉弁63が開状態となることによって、流路62が密閉空間S2と保守液貯溜部61とを連通する。
【0056】
密閉空間S2が形成されている状態であって、かつ、流路62が密閉空間S2と保守液貯溜部61とを連通しているときに、吸引ポンプ4を駆動させることにより、流路62を介して保守液貯溜部61から密閉空間S2に保守液が吸引される。このように、吸引ポンプ4により密閉空間S2に保守液を吸引することにより、キャップ3に保守液供給部6から保守液が供給される。即ち、保守液供給部6は、密閉空間S2が吸引ポンプ4の吸引駆動により負圧になることに伴い、閉塞部材7がキャップ3を覆うことにより形成される密閉空間S2に対して保守液を供給する。
【0057】
メンテナンス装置2は、キャップ3に保守液を供給する際の一連の動作が自動で行われるための構成要素として、吸引ポンプ4及び流路開閉弁63及び大気開放弁65等を制御する制御部8を備えている。
【0058】
制御部8は、マイコンやCPU等の集積回路により構成され、電動ポンプにより構成される吸引ポンプ4や、電気的駆動弁により構成される流路開閉弁63及び大気開放弁65等の電動の構成要素を制御する。具体的には、閉塞部材7がキャップ3から離間しているときには、流路62を開放させずに閉鎖するように流路開閉弁63が制御部8によって制御される。また、閉塞部材7がキャップ3に当接しているときであって、かつ、キャップ3に保守液を供給するときには、流路62を開放するように流路開閉弁63が制御部8によって制御される。
【0059】
本実施形態においては、制御部8が、吸引ポンプ4及び大気開放弁65等を制御することにより、メンテナンス装置2が以下の(A)〜(C)の動作を切り替えて行うことができるように構成されている。即ち、メンテナンス装置2は、以下の(A)〜(C)の動作をいずれも行うことができ、いずれの動作を行うかを切り替えることができる。なお、動作の切り替えは、例えば、プリンター1の動作状況や、ユーザーの設定に基づいて行われる。
【0060】
・保守液の供給に係るメンテナンス装置2の動作(A〜C)
(A)閉塞部材7がキャップ3に当接している状態であって、かつ、流路62が開放された状態において、気体流路64を閉鎖して吸引ポンプ4が吸引駆動する動作
(B)閉塞部材7がキャップ3に当接している状態であって、かつ、流路62が開放された状態において、気体流路64を閉鎖して吸引ポンプ4が吸引駆動し、その後、流路62が閉鎖された状態において、気体流路64を開放して吸引ポンプ4が吸引駆動する動作
(C)閉塞部材7がキャップ3に当接している状態であって、かつ、流路62が開放された状態において、気体流路64を開放して吸引ポンプ4が吸引駆動する動作
【0061】
次に、上記(A)〜(C)に係るメンテナンス装置2がキャップ3をメンテナンスする方法を、図3〜5を参照しながら説明する。図3は、上記(A)に係るメンテナンス装置2の動作の流れを示した断面模式図である。また、図4は、上記(B)に係るメンテナンス装置2の動作の流れを示した断面模式図である。また、図5は、上記(C)に係るメンテナンス装置2の動作の流れを示した断面模式図である。
【0062】
図3(a)に示すように、上記(A)に記載の動作が行われるときには、まず、制御部8が、キャップ3を閉塞部材7に当接させるようにキャップ3の移動機構を制御する。即ち、キャップ3に閉塞部材7を当接させてキャップ3を閉塞部材7で覆うことにより密閉空間S2を形成する(ステップS1)。次いで、制御部8が、流路62を開放するように流路開閉弁63を開状態として、気体流路64を閉鎖するように大気開放弁65を閉状態とする(ステップS2)。
【0063】
そして、図3(b)に示すように、制御部8が吸引ポンプ4を駆動させることにより、密閉空間S2に対して流路62から保守液が吸引されて供給される(ステップS3)。即ち、ステップS3においては、閉塞部材7がキャップ3に当接している状態であって、かつ、流路62が開放された状態であって、かつ、気体流路64が閉鎖された状態において、密閉空間S2に保守液が吸引されるように吸引ポンプ4が吸引駆動する。
【0064】
以上のようにして、上記(A)に記載の動作が実行されると、閉塞部材7によってキャップ3が覆われて形成される密閉空間S2に保守液が供給されて、その密閉空間S2に保守液が満たされる保守液充填状態が維持される。
【0065】
また、図4(a)に示すように、上記(B)に記載の動作が行われるときには、まず、ステップS1と同様に、キャップ3に閉塞部材7を当接させてキャップ3を閉塞部材7で覆うことにより密閉空間S2を形成する(ステップS11)。次いで、ステップS2と同様に、制御部8が、流路62を開放するように流路開閉弁63を開状態として、気体流路64を閉鎖するように大気開放弁65を閉状態とする(ステップS12)。
【0066】
次いで、図4(b)に示すように、ステップS3と同様に、制御部8が吸引ポンプ4を駆動させることにより、密閉空間S2に対して流路62から保守液が吸引されて供給される(ステップS13)。
【0067】
次いで、保守液の吸引が所定時間行われた後に、制御部8が、流路62を閉鎖するように流路開閉弁63を閉状態として、気体流路64を開放するように大気開放弁65を開状態とする(ステップS14)。
【0068】
次いで、図4(c)に示すように、制御部8が吸引ポンプ4を駆動させることにより、ステップS13において密閉空間S2に吸引された保守液がタンク5に排出されるとともに、密閉空間S2に対して保守液に代えて空気が吸引される(ステップS15)。即ち、ステップS15においては、閉塞部材7がキャップ3に当接している状態であって、かつ、流路62が閉鎖された状態であって、かつ、気体流路64が開放された状態において、密閉空間S2に空気が吸引されるように吸引ポンプ4が吸引駆動する。キャップ3内の保守液がタンク5に排出されると、制御部8が吸引ポンプ4の駆動を停止させる。そして、図4(d)に示すように、制御部8がキャップ3の移動機構を制御して、キャップ3から閉塞部材7を離間させる(ステップS16)。
【0069】
以上のようにして、上記(B)に記載の動作が実行されると、閉塞部材7によってキャップ3が覆われて形成される密閉空間S2に保守液が供給されて、その後、その密閉空間S2に空気が吸引されてキャップ3内から保守液が排出される。
【0070】
また、図5(a)に示すように、上記(C)に記載の動作が行われるときには、まず、ステップS1,S11と同様に、キャップ3に閉塞部材7を当接させてキャップ3を閉塞部材7で覆うことにより密閉空間S2を形成する(ステップS21)。次いで、制御部8が、流路62を開放するように流路開閉弁63を開状態として、気体流路64を開放するように大気開放弁65を開状態とする(ステップS22)。
【0071】
次いで、図5(b)に示すように、制御部8が吸引ポンプ4を駆動させることにより、密閉空間S2に対して流路62から保守液が吸引されて供給される(ステップS23)。即ち、ステップS23においては、閉塞部材7がキャップ3に当接している状態であって、かつ、流路62が開放された状態であって、かつ、気体流路64も開放された状態において、密閉空間S2に保守液が空気とともに吸引されるように吸引ポンプ4が吸引駆動する。なお、大気開放弁65が全開であるときに空気とともに保守液が吸引できない場合には、ステップS22において、大気開放弁65が、全開に比べて開度の小さい開状態である半開状態となるように制御されていることが好ましい。
【0072】
次いで、空気とともに保守液の吸引が所定時間行われた後に、制御部8が、流路62を閉鎖するように流路開閉弁63を閉状態として、大気開放弁65の開状態を維持する(ステップS24)。
【0073】
次いで、図5(c)に示すように、ステップS15と同様に、制御部8が吸引ポンプ4を駆動させることにより、ステップS23において密閉空間S2に吸引された保守液がタンク5に排出されるとともに、密閉空間S2に対して保守液に代えて空気が吸引される(ステップS25)。そして、図5(d)に示すように、ステップS16と同様に、制御部8がキャップ3の移動機構を制御して、キャップ3から閉塞部材7を離間させる(ステップS26)。
【0074】
以上のようにして、上記(B)に記載の動作が実行されると、閉塞部材7によってキャップ3が覆われて形成される密閉空間S2に保守液が供給されて、その後、その密閉空間S2に空気が吸引されてキャップ3内から保守液が排出される。
【0075】
以上のようにして、上記(C)に記載の動作が実行されると、閉塞部材7によってキャップ3が覆われて形成される密閉空間S2に気体が混ざった状態である気液二相流の保守液が供給される。
【0076】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)キャップ3をメンテナンスするメンテナンス装置2は、キャップ3に対して接離可能であって、かつ、キャップ3に当接することによりこのキャップ3を覆う閉塞部材7と、閉塞部材7がキャップ3を覆うことにより形成される密閉空間S2に対して保守液を供給する保守液供給部6とを備える。即ち、閉塞部材7によってキャップ3が覆われることで形成される密閉空間S2に対して、保守液が供給される。そのため、保守液がキャップ3に供給されるときには、閉塞部材7がキャップ3に当接することによってキャップ3を覆っているため、キャップ3から保守液が流れ出すことを抑制することができる。よって、キャップ3が水平方向Hに対して傾斜して設けられている場合であっても、キャップ3から保守液が溢れ出すことを抑制することができる。
【0077】
(2)保守液供給部6は、密閉空間S2が吸引ポンプ4の吸引駆動により負圧になることに伴い保守液を密閉空間S2に対して供給する。従って、閉塞部材7がキャップ3を覆った状態で吸引ポンプ4の吸引駆動に伴い密閉空間S2が負圧になると、保守液供給部6から保守液が密閉空間S2内に吸引され、キャップ3に保守液が円滑に供給されるようになる。
【0078】
(3)保守液供給部6は、保守液を貯溜する保守液貯溜部61と、上記密閉空間S2と保守液貯溜部61とを連通する流路62と、流路62を開閉する流路開閉弁63とを備えている。このため、流路62を開閉する流路開閉弁63によって、保守液が貯溜された保守液貯溜部61から、閉塞部材7によってキャップ3が覆われている密閉空間S2への、保守液の供給を制御することができる。具体的には、流路開閉弁63によって流路62が開放されたときには、閉塞部材7によってキャップ3が覆われて形成される密閉空間S2に対して、保守液を供給することができ、流路開閉弁63によって流路62が閉鎖されたときには、上記密閉空間S2に対する保守液の供給を停止することができる。
【0079】
(4)流路開閉弁63は、閉塞部材7がキャップ3に当接しているときに流路62を開放し、閉塞部材7がキャップ3から離間しているときに流路62を閉鎖する。即ち、キャップ3に対する閉塞部材7の接離に連動して流路62が開閉される。このため、閉塞部材7がキャップ3から離間している状態、即ち、閉塞部材7によってキャップ3が覆われていない状態であって、かつ、キャップ3に保守液が供給されるとキャップ3から保守液が流れ出るおそれがある状態では、流路62が閉鎖される。よって、キャップ3から保守液が流れ出ることをより適切に抑制することができる。
【0080】
(5)保守液供給部6は、流路62に気体を流入可能とする気体流路64と、この気体流路64を開閉する大気開放弁65とをさらに備える。よって、大気開放弁65が気体流路64を開放しているときには、気体流路64を介して、上記密閉空間S2と保守液貯溜部61とを連通する流路62に気体を流入させることができる。このため、閉塞部材7によってキャップ3が覆われて形成される密閉空間S2に対して、流路62を介して空気(気体)を供給することができる。
【0081】
(6)メンテナンス装置2は、閉塞部材7がキャップ3に当接している状態であって、かつ、流路62が開放された状態において、気体流路64を開放して吸引ポンプ4が吸引駆動する。このため、閉塞部材7によってキャップ3が覆われて形成される密閉空間S2に対して、気体が混ざった状態である気液二相流の保守液が吸引されて、キャップ3へ泡状の保守液の供給を図ることができる。泡状の保守液は、泡を含まない保守液に比べて洗浄効果が大きいため、キャップ3の効果的な洗浄を図ることができる。
【0082】
(7)メンテナンス装置2は、吸引ポンプ4及び大気開放弁65の制御により上記の(A)〜(C)の動作を切り替える制御部8を備える。即ち、上記(A)〜(C)に記載の動作を切り替えて実行するように吸引ポンプ4及び大気開放弁65が制御されるためキャップ3を適切かつ柔軟にメンテナンスすることができる。具体的には、上記(A)に記載の動作が実行されると、閉塞部材7によってキャップ3が覆われる密閉空間S2に保守液が供給されて、その密閉空間S2に保守液が満たされる保守液充填状態を維持し続けることができる。このため、例えば、メンテナンス装置2が動作を停止するときに、保守液充填状態を維持してキャップ3を十分にメンテナンスすることができる。また、上記(B)に記載の動作が実行されると、閉塞部材7によってキャップ3が覆われる密閉空間S2に保守液が供給されて、その後、その密閉空間S2に気体が供給される。このため、保守液を用いてキャップ3がメンテナンスされた後に、保守液を上記密閉空間S2から排出させるとともに閉塞部材7をキャップ3から離間させて、記録ヘッド12に対向してキャップ3を配設させることができる。また、上記(C)に記載の動作が実行されると、キャップ3の効果的な洗浄を図ることができる。
【0083】
(8)プリンター1は、液体を噴射する記録ヘッド12と、上記構成のメンテナンス装置2とを備えている。このため、上記(1)〜(7)に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0084】
(9)記録ヘッド12が、水平方向Hに対して傾斜して設けられている。一般に、記録ヘッド12が、水平方向Hに対して傾斜して設けられていると、本実施形態のごとく、記録ヘッド12に対して配設されるキャップ3も傾斜した状態で設けられるため、キャップ3から保守液が溢れ出し易くなる。この点、本発明に係るプリンター1は上記構成を備えたことにより、キャップ3から保守液が流れ出すことを抑制することができる。即ち、記録ヘッド12が水平方向Hに対して傾斜して設けられるプリンター1に、本発明のメンテナンス装置2の構成を好適に適用することができる。
【0085】
(10)保守液を吸引する吸引ポンプ4は、ノズル12b内のクリーニングに用いられる吸引機構、即ち、ノズル12b内の増粘したインクを吸引する吸引機構でもある。従って、ノズル12b内の増粘したインクを吸引する吸引機構と、保守液を吸引する吸引機構とが、別体として構成される場合に比べて、メンテナンス装置2を備えるプリンター1の構成を簡略化することができる。
【0086】
(11)吸引ポンプ4により吸引された保守液は、排出通路41を通して廃インクタンクとしても用いられるタンク5に排出される。従って、保守液が排出されるタンク5と、廃インクタンクとが、別体として構成される場合に比べて、メンテナンス装置2を備えるプリンター1の構成を簡略化することができる。
【0087】
(12)キャップ3をメンテナンスするメンテナンス方法は、キャップ3に閉塞部材7で覆うことにより密閉空間S2を形成する工程(ステップS1,S11,S21)と、密閉空間S2に対して保守液を供給する工程(ステップS3,S13,S23)とを含んでいる。即ち、閉塞部材7によってキャップ3が覆われることで形成される密閉空間S2に対して、保守液が供給される。そのため、保守液がキャップ3に供給されるときには、閉塞部材7がキャップ3に当接することによってキャップ3を覆っているため、キャップ3から保守液が流れ出すことを抑制することができる。
【0088】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・記録ヘッド12が水平方向Hに対して傾斜せずに設けられて、キャップ3の底面31aが水平方向Hに平行に設けられる場合にも、本発明のメンテナンス装置2を適用してもよい。
【0089】
・メンテナンス装置2は、上記(A)〜(C)のすべての動作を実行する装置でなくてもよい。即ち、例えば、メンテナンス装置2が、(B)と(C)の動作を切り替えて実行するように構成されていてもよく、(B)の動作のみを実行するように構成されていてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、大気開放弁65により開閉される気体流路64から空気が流路62に流入する構成であったが、密閉空間S2から保守液が排出されるため、または、気液二相流の保守液が密閉空間S2に吸引されるのであれば、空気以外の気体が流路62に流入する構成であってもよい。
【0091】
・上記実施形態では、保守液供給部6は、流路62に気体を流入可能とする気体流路64と、この気体流路64を開閉する大気開放弁65とを備えていたが、流路62に気体を流入させないように構成されていてもよい。即ち、上記実施形態の保守液供給部6から気体流路64及び大気開放弁65を省いた構成であってもよい。
【0092】
具体的には、例えば、図6に示すように、キャップ3に気体導入チューブ42Aを接続して、キャップ3に、キャップ3内へ空気(気体)を流入可能とする気体流路42を設けるとともに、気体流路42に、この気体流路42を開閉する大気開放弁43を設けてもよい。このようにキャップ3側に気体流路42及び大気開放弁43が設けられている場合であっても、密閉空間S2に保守液を吸引した後に、密閉空間S2に対して保守液に代えて空気を吸引させることができる。
【0093】
・図6に示すように、流路開閉弁63が電気的駆動弁でなくてもよい。具体的には、図6に示すメンテナンス装置2においては、閉塞部材7の内部には保守液の流路73が設けられるとともに、可撓性材料からなる導出チューブ62Aの下流側端部62bが、閉塞部材7の内部に開口するように設けられている。そして、流路73には、キャップ3が閉塞部材7に当接することに伴い移動し、かつ、流路73を開閉する流路開閉弁63が設けられている。閉塞部材7がキャップ3に当接すると、流路開閉弁63は流路73を開放するように移動する。このように流路開閉弁63が移動することによって、流路73が、閉塞部材7によりキャップ3が覆われて形成される閉空間と保守液貯溜部61とを連通する。また、閉塞部材7がキャップ3から離間すると、流路開閉弁63は流路73を閉鎖するように移動する。このような、キャップ3に対する閉塞部材7の接離に連動して流路73が開閉される構成により、上記(4)と同様の作用効果を得ることができる。
【0094】
・キャップ3に対して閉塞部材7が接離可能であれば、キャップ3が閉塞部材7に向けて移動する構成でなくてもよい。例えば、閉塞部材7がキャップ3に向けて移動する構成であってもよい。即ち、キャップ3及び閉塞部材7の少なくとも一方が、互いが当接するように移動する構成であればよい。
【0095】
・上記実施形態では、閉塞部材7とキャップ3とにより密閉空間S2が形成されたが、閉塞部材7によりキャップ3が覆われて形成される閉空間は完全に密閉されていなくてもよい。即ち、キャップ3から保守液が流れ出さないように閉塞部材7がキャップ3を覆い、かつ、吸引機構によりキャップ3に保守液を吸引して供給できればよい。
【0096】
・上記実施形態では、吸引ポンプ4を駆動させることによりキャップ3内の保守液がタンク5に排出されたが、吸引ポンプ4以外の機構(不図示)によりキャップ3に供給された保守液をキャップ3外に排出するように構成してもよい。即ち、上記(B)に係る動作は吸引ポンプ4を用いてキャップ3外に保守液を排出する工程を含むものであるが、上記(A)及び(C)に係る動作は、吸引ポンプ4を用いて保守液を排出する工程を必ずしも含まない。
【0097】
・吸引ポンプ4以外の吸引機構によって、閉塞部材7によりキャップ3が覆われて形成される閉空間に保守液を供給してもよい。また、閉塞部材7によりキャップ3が覆われて形成される閉空間に保守液が供給できれば、メンテナンス装置2は吸引機構を備えなくてもよい。例えば、密閉空間S2に保守液供給部6から保守液が加圧供給される構成であってもよい。
【0098】
・上記実施形態では、保守液が供給される液体受容部材はキャップ3であったが、キャップ3以外の液体受容部材に対して保守液を供給する場合にも本発明を適用することができる。また、プリンター1は、記録ヘッド12に対向するキャップ3内にノズル12bからインクを廃液として吐出するフラッシング処理を行ってもよい。
【0099】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター1に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
P…記録用紙(記録媒体)、P1…ロール体、Pa…紙面、S1…負圧発生空間、S2…密閉空間(閉空間)、1…プリンター(液体噴射装置)、2…メンテナンス装置、3…キャップ(液体受容部材)、4…吸引ポンプ(吸引機構)、5…タンク、5a…吸収材、6…保守液供給部、7…閉塞部材、8…制御部、11…紙送りローラー、12…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、12a…ノズル形成面、12b…ノズル、12c…圧電素子、13…キャリッジ、14…プラテン、15…ファン、16…ガイド軸、17…巻き取り装置、31…底部、31a…底面、32…周壁、41…排出通路、41A…排出チューブ、41a…上流側端部、41b…下流側端部、42…気体流路、42A…気体導入チューブ、43…大気開放弁、61…保守液貯溜部、61a…内圧調整弁、62…流路、62A…導出チューブ、62a…上流側端部、62b…下流側端部、63…流路開閉弁、64…気体流路、65…大気開放弁(開放弁)、71…蓋部、72…周壁、73…流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドから廃液として排出される液体を受容可能に配設される液体受容部材をメンテナンスするメンテナンス装置であって、
前記液体受容部材に対して接離可能であって、かつ、前記液体受容部材に当接することにより該液体受容部材を覆う閉塞部材と、
前記閉塞部材が前記液体受容部材を覆うことにより形成される閉空間に対して保守液を供給する保守液供給部とを備える
ことを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記保守液供給部は、前記閉空間が吸引機構の吸引駆動により負圧になることに伴い前記保守液を前記閉空間に対して供給することを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記保守液供給部は、保守液を貯溜する保守液貯溜部と、前記閉空間と前記保守液貯溜部とを連通する流路と、前記流路を開閉する流路開閉弁とを備えることを特徴とする請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記流路開閉弁は、前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接しているときに前記流路を開放し、前記閉塞部材が前記液体受容部材から離間しているときに前記流路を閉鎖することを特徴とする請求項3に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記保守液供給部は、前記流路に気体を流入可能とする気体流路と、この気体流路を開閉する開放弁とをさらに備えることを特徴とする請求項3または4に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を開放して前記吸引機構が吸引駆動することを特徴とする請求項5に記載のメンテナンス装置。
【請求項7】
前記吸引機構及び前記開放弁の制御により以下の(a)〜(c)の動作を切り替える制御部を備える
(a)前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を閉鎖して前記吸引機構が吸引駆動する動作
(b)前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を閉鎖して前記吸引機構が吸引駆動し、その後、前記流路が閉鎖された状態において、前記気体流路を開放して前記吸引機構が吸引駆動する動作
(c)前記閉塞部材が前記液体受容部材に当接している状態であって、かつ、前記流路が開放された状態において、前記気体流路を開放して前記吸引機構が吸引駆動する動作
ことを特徴とする請求項6に記載のメンテナンス装置。
【請求項8】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、請求項1〜7のいずれか一項に記載のメンテナンス装置とを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項9】
前記液体噴射ヘッドが、水平方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
液体噴射ヘッドから廃液として排出される液体を受容可能に配設される液体受容部材をメンテナンスするメンテナンス方法であって、
前記液体受容部材を閉塞部材で覆うことにより閉空間を形成する工程と、
前記閉空間に対して保守液を供給する工程とを備える
ことを特徴とするメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−161868(P2011−161868A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29317(P2010−29317)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】