説明

メントール含有製剤

L−メントールに平滑筋蠕動抑制作用のあることは知られているが、これを消化管内視鏡検査時の消化管蠕動抑制剤として実用に供するためには、L−メントール含有液が調製後長時間安定で、澄明または殆ど濁りがなく、投与時泡立ちの少ない製剤となるよう工夫する必要がある。本発明においては、平均粒子径が100nm未満である比較的澄明なL−メントール乳剤を含有する平滑筋蠕動抑制剤または消化管蠕動抑制剤に、さらに消泡剤を添加することにより、長時間安定で光透過率が高く、製剤の容器への充填時や消化管などの内視鏡検査時に局所に投与する際も泡立ちが起こらず、患部が見やすい製剤が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間安定で、光透過性が高く、消化管などの内視鏡検査時に蠕動抑制を目的に局部に吹き付けた際に泡立ちがなく局部が見やすいL−メントール含有平滑筋蠕動抑制剤、特に消化管蠕動抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
胃や大腸などの消化管内視鏡検査時における消化管の過剰な蠕動は正確な診断の妨げとなり、微少癌などの微細な病変を見逃す原因ともなっている。
従来、消化管内視鏡検査時の抗蠕動薬として抗コリン剤である臭化ブチルスコポラミン(商品名;ブスコパン注射液、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社製)やグルカゴンが用いられてきた。しかしながら臭化ブチルスコポラミンは緑内障、前立腺肥大、不整脈を有する患者には使用禁忌であり、グルカゴンは消化管蠕動抑制効果が非常に弱い等の問題があった。更に臭化ブチルスコポラミンは、静脈投与用又は筋肉内投与用であるため、検査直前又は検査中に行わなければならない。
また、これらの製剤の中には、投与により目の調節障害、眩暈などを起こす可能性が危惧されるものもあり、内視鏡検査時にこれらの製剤を投与された人は、検査終了後も暫くの間は自動車などの運転を避けねばならないなどの問題もあった。
【0003】
そこで、近年上記のような問題を解決すべく、ペパーミントオイルを使用した消化管蠕動抑制剤の検討がなされている(非特許文献1)。この従来法による製法では、ペパーミントオイルと水を攪拌、混合したのち、室温で24時間放置し、水の表面に浮かんだ油分を避けて澄明な部分のみを採取後使用する方法や、攪拌、混合したのち、室温で24時間放置し、水層を濾過して油分を除いた部分を採取して使用する方法が開示されている。しかし、これらの方法で得られる製剤は揮発性の高いペパーミントオイルが長時間室温下で放置される間に昇華してしまうおそれがあり、患者に使用する際のペパーミントオイルの含量が不均一又は不明確であるとの問題がある。そのため、従来の方法で調製された製剤の一定量を例えば胃蠕動抑制剤として胃壁に噴霧しても効果が一定せず、蠕動が充分には抑制できないという問題もあった。更に、これらの製剤では、長期保存ができず用時調製する必要があるが、個々の医療現場での調製では品質が一定しない等の問題もあった。
【非特許文献1】Gastrointestinal Endoscopy,Vol.53,No.2,172〜177(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、L−メントールを油脂と共に界面活性剤で乳化することにより、長期間安定で透明性の高いL−メントール含有平滑筋蠕動抑制剤または消化管蠕動抑制剤を開発することに成功し、特許出願した。しかし、この製剤も、透明性を得るため界面活性剤を比較的多く含ませる必要があり、製剤の容器への充填時や、管などにより内視鏡検査時に患部に吹き付けた際に泡立ちが起こり、局部が見づらいとの問題があった。このような状況のもと、透明度、すなわち光透過率が良好で、且つ泡立ちの少ない長期間安定なL−メントール含有消化管蠕動抑制剤の開発が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、長期間安定で光透過率の高く、容器への充填時や局所への使用時に泡立ちの起こりにくいL−メントール含有平滑筋蠕動抑制剤、特に消化管蠕動抑制剤を得るために種々研究を重ねた結果、L−メントール、界面活性剤及び水を混合したものに、消泡剤の少量を添加し、乳剤粒子の平均粒子径を100nm未満にすることによって、製剤充填時や使用時に泡立ちが少なく、光透過率が良好で且つ長期に亘り安定なL−メントール含有製剤が得られることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)L−メントール、界面活性剤および消泡剤を含有し、平均粒子径が100nm未満の乳剤からなるL−メントール含有平滑筋蠕動抑制剤、
(2)更に油脂を含有してなる請求項1記載の平滑筋蠕動抑制剤、
(3)光透過率が50%以上である(1)又は(2)記載の平滑筋蠕動抑制剤、
(4)製剤全体に対し、L−メントールを0.01〜5.0重量%、界面活性剤を0.1〜10重量%および消泡剤を0.0001〜0.01重量%含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の平滑筋蠕動抑制剤、
(5)油脂の含有量が0.1〜10重量%である(4)記載の平滑筋蠕動抑制剤、
(6)消泡剤が、シリコン系消泡剤より選ばれた少なくとも一種である(1)〜(5)のいずれかに記載の平滑筋蠕動抑制剤、
(7)界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはショ糖脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも一種である(1)〜(6)のいずれかに記載の平滑筋蠕動抑制剤、である。
【0006】
本発明に使用されるL−メントールの由来に特に制限はないが、一般的にセイヨウハッカ又はニホンハッカの植物を水蒸気蒸留することにより得られるペパーミントオイルの主成分で、その中に30重量%以上含まれている。L−メントール含有原料としては、ペパーミントオイル又はハッカ油などを用いることも可能であるが、好ましくはこれらのペパーミントオイルなどから分別蒸留などにより高度精製されたL−メントールを使用することができる。さらに好ましくは純度90重量%以上のものを使用するのが良い。また、最近では、合成によっても製造されている。いずれにしても日本薬局方記載のL−メントールの規格に適合するものが好適である。
また、本発明でL−メントールは、製剤全体に対して0.01〜5.0重量%使用し、好ましくは0.1〜3.0重量%、更に好ましくは0.3〜1.5重量%使用することができる。
【0007】
本発明で使用する消泡剤は、医薬品で使用することが可能な消泡剤であれば特に規定はなく、複数の消泡剤の混合物を使用することができる。中でもシリコン系の消泡剤を使用することが好ましく、特にジメチルポリシロキサン系が好ましく、さらにジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物を使用することが好ましい。
また、本発明において、消泡剤の使用量は、製剤全体に対して通常0.0001〜0.01重量%、好ましくは、0.0005〜0.007重量%、更に好ましくは0.0007〜0.005である。
【0008】
本発明で使用する界面活性剤は、医薬品で使用することが可能な界面活性剤であれば特に規定はなく、複数の界面活性剤の混合物を使用することができる。界面活性剤の使用量は製剤全体に対して、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。本発明の界面活性剤は、少なくともポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有していることが好ましい。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する場合のその濃度は製剤全体に対して通常1〜3重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%である。また、蔗糖脂肪酸エステルやポリソルベートなども好ましく使用することができ、特に、ポリソルベート80等が好ましく使用できる。
また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に加え、他の医薬品で使用することが可能な界面活性剤、例えば可食性の非イオン界面活性剤、イオン界面活性剤などがあげられ、これらのものを組み合わせて使用しても良い。
【0009】
本発明の製剤は、このL−メントール、界面活性剤及び消泡剤、必要により更に油脂を含む水を攪拌する際に加熱処理するか、攪拌混合した後、加熱処理を行うことによって得ることができる。
このようにして得られる本発明の平滑筋蠕動抑制剤である乳剤の消泡効果については直径33mm、内容30mLのガラス瓶に試料20mLを入れ、この瓶を振とう機(170回/分、ストローク40mm)で1分間振とうした後、泡が消失するまでの時間を測定することにより評価した。本発明の製剤は、泡消失までの時間が3分以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましく、20秒以内であることが特に好ましい。
本発明の平滑筋蠕動抑制剤である乳剤の平均粒子径は100nm未満で、好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。
なお、乳剤の平均粒子径の測定は、10mmセルに試料を2,3滴入れ、蒸留水を加えて試料溶液とし、この液を光散乱光度計(ELS8000、大塚電子株式会社)を用いて行った。
【0010】
平均粒子径が大きいと製剤が白濁し、消化管などの内視鏡検査時に患部に吹き付けた際に患部が確認しにくい等の問題があるが、本発明で得られる製剤は、澄明もしくは僅かな濁りのある液体であり、泡立ちも抑制されるため、上記のような問題は生じない。
また、本発明の製剤は、光透過率が、50%以上であることが好ましく、特に70%以上であることが好ましい。
光透過率の測定は、10mmセルに試料溶液を入れ、U−2001形ダブルビーム分光光度計(株式会社日立製作所)にて測定波長900nmでおこなった。
【0011】
本製剤の調製に当たっては、既知の乳化、可溶化のいずれの方法も使用することができる。好ましい方法として、次の方法を例示するがこれに限定されるものではない。
i)まず、L−メントールを油脂に溶解させる。溶解は、室温下、又は加温下に行っても良い。次に、水に界面活性剤を加えてホモミキサーなどの攪拌機でよく分散させたものに、得られたL−メントールと油脂の均一な混合物を加え、ホモミキサーなどの攪拌機を用いて良く攪拌する。必要により、さらに超音波処理をしたり、高圧乳化機を用いるなどして製剤の粒子がなるべく均質かつ微細なものとなるようにする。その後、この調製された製剤を115℃、30分間オートクレーブ滅菌する。
ii)その他の方法としては、上記の方法にて製剤を調製し、オートクレーブによる加熱滅菌を行うことなく、60℃以上の温度で一週間程度保存する。
iii)また、その他の方法としては、水に界面活性剤を加え、ホモミキサーなどの攪拌機で分散させた後、メントールと油脂を加えてホモミキサーで約80℃、10分間程度攪拌する。
【0012】
本発明の蠕動抑制剤を調製するに際し、油脂を使用することができる。使用される油脂は、医薬品で使用することが可能な油脂であれば特に規定はないが、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)や大豆油、オリーブ油、椰子油などの長鎖脂肪酸トリグリセライド(LCT)が使用できる。
【0013】
MCTとしては、脂肪酸部分の炭素数がC6〜C12のものが使用でき、炭素数の異なるものを混合して使用することができる(例、「パナセート800」日本油脂社製、「ココナードRK」花王株式会社製)。
また、この油脂は、L−メントールの溶剤として使用することができ、L−メントールに対して0.5〜10重量倍、好ましくは、1〜5重量倍使用できる。なお、油脂は、乳剤全体に対しては通常0.1〜5重量%、好ましくは、0.5〜3重量%程度使用される。
また油脂を用いる場合の蠕動抑制剤は、L−メントール、油脂および界面活性剤、消泡剤を含む水を攪拌すれば良いが、攪拌時加熱処理するか、攪拌混合した後加熱処理を行うことによって、より安定な製剤とすることができる。
【0014】
加熱処理は、製造工程中のいずれかの時点で、L−メントールと油脂、界面活性剤、消泡剤を含むL−メントール含有乳剤を加熱すれば良く、特にその方法は限定されない。加熱処理の一例としては、例えばホモミキサーで混合物の乳化を加熱条件下で実施する、高圧乳化機で混合物の乳化を加熱条件下で実施する、乳剤を容器に充填した後に加熱滅菌する、乳剤を容器に充填し加熱下で保存する、又は乳化の際に加熱処理した後さらに加熱滅菌をする等いずれの方法でも実施できる。加熱時間は攪拌条件によっても異なるが、1分から14日間、好ましくは5分〜6時間加熱処理された状態にすることが好ましい。
また、加熱温度は、60℃以上であれば良く、好ましくは70℃〜130℃、特に好ましくは80℃〜121℃である。加熱滅菌を通常の脂肪乳剤などの加熱条件(110〜121℃)で行うことにより満足な結果が得られる。
さらに必要により、他の有効成分や、増粘剤、安定化剤、保存剤など適宜添加することができる。
【0015】
増粘剤としては、カラギナン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、ペクチンなどがあげられる。これらの増粘剤を添加することにより、製剤が消化管内部に散布されたときの垂下速度を適当なものに調節することができる。
増粘剤の添加量は、増粘剤の種類により異なるが、通常0.01〜5重量%の範囲で選択される。
安定化剤としては、例えばエデト酸ナトリウムなどが、保存剤としては、例えばソルビン酸、塩化ベンザルコニウム、パラベン等があげられ、それぞれの適量を添加することができる。
【0016】
本発明のL−メントール含有製剤は、例えば開腹による消化管手術時や内視鏡による手術時、内視鏡による消化管検査時、その他の消化管蠕動を抑制する必要のある医療行為において、噴霧器や内視鏡鉗子孔などを通じて、消化管内部などの局所に直接散布される。噴霧器や内視鏡先端の鉗子孔からの一定量の乳剤の直接投与を可能とするため、前記の調製した製剤をプレフィルドシリンジなどの押出可能な容器に一回投与分を充填することが好ましい。もちろん本発明の製品は、バイアル、アンプルなどの容器に充填し保存することも出来る。
本発明の製剤は、長期保存後も安定で、たとえば25℃、1ヶ月保存後も乳剤の平均粒子径は100nm以上には増大せず、また光透過率も50%未満に低下することはない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乳剤からなる平滑筋蠕動抑制剤は、長期間安定で、光透過率が高く、容器への充填時や使用時、即ち投与時にも泡立ちが起こりにくい。したがって、特に消化管内視鏡検査時の蠕動抑制剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に実施例、比較例および試験例をあげて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0019】
ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)4.0g,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物(KS−69,信越化学工業株式会社)0.02gを水200mLに添加し、ホモミキサー(液温60℃)で乳化し、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液とした。ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)20.0g,HCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)36.0g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)30.0gを水1600mLに添加し、ホモミキサーで分散した。この液に、日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)16.0g及びジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液を添加し、液温80℃でホモミキサーで乳化した。この液に水を加えて全量を2000mLとし、目的の乳剤とした。この乳剤の平均粒子径は28.5nm、光透過率は96.09%であった。
【実施例2】
【0020】
ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)4.0g,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物(KS−69,信越化学工業株式会社)0.06gを水200mLに添加し、ホモミキサー(液温60℃)で乳化し、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液とした。ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)20.0g,HCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)36.0g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)30.0gを水1600mLに添加し、ホモミキサーで分散した。この液に、日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)16.0g及びジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液を添加し、液温80℃でホモミキサーで乳化した。この液に水を加えて全量を2000mLとし、目的の乳剤とした。この乳剤の平均粒子径は、28.8nm、光透過率は94.68%であった。
【実施例3】
【0021】
ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)4.0g,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物(KS−69,信越化学工業株式会社)0.10gを水200mLに添加し、ホモミキサー(液温60℃)で乳化し、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液とした。ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)20.0g,HCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)36.0g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)30.0gを水1600mLに添加し、ホモミキサーで分散した。この液に、日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)16.0g及びジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液を添加し、液温80℃でホモミキサーで乳化した。この液に水を加えて全量を2000mLとし、目的の乳剤とした。この乳剤の平均粒子径は、27.7nm、光透過率は93.72%であった。
【実施例4】
【0022】
ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)4.0g,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物(KS−66,信越化学工業株式会社)0.02gを水200mLに添加し、ホモミキサー(液温60℃)で乳化し、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液とした。ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)20.0g,HCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)36.0g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)30.0gを水1600mLに添加し、ホモミキサーで分散した。この液に、日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)16.0g及びジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液を添加し、液温80℃でホモミキサーで乳化した。この液に水を加えて全量を2000mLとし、目的の乳剤とした。この乳剤の平均粒子径は、27.6nm、光透過率は95.75%であった。
【実施例5】
【0023】
ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)4.0g,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物(KS−66,信越化学工業株式会社)0.06gを水200mLに添加し、ホモミキサー(液温60℃)で乳化し、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液とした。ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)20.0g,HCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)36.0g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)30.0gを水1600mLに添加し、ホモミキサーで分散した。この液に、日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)16.0g及びジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液を添加し、液温80℃でホモミキサーで乳化した。この液に水を加えて全量を2000mLとし、目的の乳剤とした。この乳剤の平均粒子径は、26.3nm、光透過率は94.16%であった。
【実施例6】
【0024】
ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)4.0g,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物(KS−66,信越化学工業株式会社)0.10gを水200mLに添加し、ホモミキサー(液温60℃)で乳化し、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液とした。ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)20.0g,HCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)36.0g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)30.0gを水1600mLに添加し、ホモミキサーで分散した。この液に、日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)16.0g及びジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液を添加し、液温80℃でホモミキサーで乳化した。この液に水を加えて全量を2000mLとし、目的の乳剤とした。この乳剤の平均粒子径は、27.2nm、光透過率は92.58%であった。
【実施例7】
【0025】
ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)4.0g,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物(KS−66,信越化学工業株式会社)0.02gを水200mLに添加し、ホモミキサー(液温60℃)で乳化し、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液とした。ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)20.0g,HCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)36.0g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)24.0gを水1600mLに添加し、ホモミキサーで分散した。この液に、日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)16.0g及びジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物溶液を添加し、液温80℃でホモミキサーで乳化した。この液に水を加えて全量を2000mLとし、目的の乳剤とした。この乳剤の平均粒子径は、23.2nm、光透過率は97.34%であった。
〔比較例1〕
【0026】
日本薬局方に適合したL−メントール(L−メントール(薄荷脳),鈴木薄荷株式会社)1.12g及びMCT(ココナードRK,花王株式会社)2.8gを混合し、60℃の水浴中で溶解させ、L−メントール溶液とした。ツイーン80(レオドールTW−O120V,花王株式会社)0.28g、ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ J1616,三菱化学フーズ株式会社)1.68g及びHCO−60(NIKKOL HCO−60,日光ケミカルズ株式会社)2.8gに水60mLを添加し、ホモミキサーで分散した(水浴:60℃)。この液に、L−メントール溶液を加え、ホモミキサーで乳化した(水浴:60℃)。ついで、この液に水を加えて全量を140mLとし、さらにこの液を10分間超音波乳化を行い、乳剤とした。その後、この乳剤を115℃20分間オートクレーブ滅菌を行うことで、目的の乳剤を得た。この乳剤の平均粒子径は30.3nm、光透過率は97.48%であった。
〔試験例1〕
【0027】
30mL瓶に試料20mLを入れ、この瓶を振とう機SR−IIW(大洋科学工業株式会社、170回/分、40nmストローク)で1分間振とうした。
1分間振とう後、泡が消失するまでの時間を測定した。その結果を平均粒子径、光透過率とともに表1に示した。
【0028】


【0029】
表1から明らかなように、本発明の実施例の製剤はいずれも、調製直後はもとより、25℃、1ヶ月保存後も平均粒子径は元の粒子径の1.2倍程度であり、光透過率も元の値に較べて95%以上であり、泡の消失時間は6秒以下と極めて短時間に泡が消えた。一方、比較例1では、平均粒子径、初期透過率は実施例のものとあまり変わらないものが得られたが、泡の消失に至るまでに6時間30分を要した。
〔試験例2〕
【0030】
麻酔下イヌの胃蠕動運動に対する抑制効果
試験材料及び試験方法
一昼夜絶食したイヌ(約10Kg)に、麻酔前投薬として硫酸アトロピンを静脈内投与した後、チオペンタールナトリウムを静脈内投与し、麻酔導入した。気管内チューブを挿入・固定した。亜酸化窒素と酸素の混合ガスを吹送した。イソフルラン気化器よりイソフルランを送った。イソフルランの濃度は0.5%より徐々に上昇させ維持麻酔とした。
この麻酔下のイヌの腹部を正中線切開し、胃体部及び幽門部にストレインゲージフォーストランスデューサー(SGT)を、常法に従い固定した。
IMC(食間伝播性収縮運動)終了10分後に、エリスロマイシン6mg/匹を静脈内投与し、胃蠕動運動を誘発させた。その10分後に25℃、1ヶ月保存しておいた実施例7の組成物10mLを、胃カテーテルを通じて胃体部又は幽門部に投与し、蠕動をグラフに記録した。そして、組成物投与後10分毎の波形面積の変化率から蠕動抑制効果を見た。その結果を図1および2に示した。対象として、無処置の場合の波形変化率も求めた。
図1および図2から明らかなように、本発明の蠕動抑制剤はエリスロマイシン投与により誘発させた胃の胃体部および幽門部に噴霧し、無処置のものに比して有意に蠕動を抑制した。また、内視鏡検査時にも蠕動抑制剤の噴霧により泡立ちがなく、局所観察に全く支障がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のL−メントール含有平滑筋蠕動抑制剤は、調製後も長期安定で、光透過率が高く、且つ消化管に投与した場合も泡立ちが起こりにくいので、内視鏡による食道、胃、小腸、大腸、直腸等の消化管検査に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】試験例2における、イヌの胃体部の蠕動波形面積変化率を示す。
【図2】試験例2における、イヌの幽門部の蠕動波形面積変化率を示す。
【符号の説明】
【0033】
実線と●印は実施例7の組成物のグラフを示し、点線と×印は無処置例のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−メントール、界面活性剤および消泡剤を含有し、平均粒子径が100nm未満の乳剤からなるL−メントール含有平滑筋蠕動抑制剤。
【請求項2】
更に油脂を含有してなる請求項1記載の平滑筋蠕動抑制剤。
【請求項3】
光透過率が50%以上である請求項1又は2記載の平滑筋蠕動抑制剤。
【請求項4】
製剤全体に対し、L−メントールを0.01〜5.0重量%、界面活性剤を0.1〜10重量%および消泡剤を0.0001〜0.01重量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の平滑筋蠕動抑制剤。
【請求項5】
油脂の含有率が0.1〜10重量%である請求項4記載の平滑筋蠕動抑制剤。
【請求項6】
消泡剤が、シリコン系消泡剤より選ばれた少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の平滑筋蠕動抑制剤。
【請求項7】
界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはショ糖脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の平滑筋蠕動抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/000361
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511070(P2005−511070)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009096
【国際出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000231648)日本製薬株式会社 (17)
【Fターム(参考)】