説明

メンブレンカード並びにその製造方法及び使用方法

本発明は、トラックエッチングメンブレン、メンブレンカード、メンブレンスタック、分離要素、分離装置、及び分離プラントの製造方法、液体やガス媒体から粒子を分離するためのこれらの使用方法、及びメンブレン細孔の最大直径の決定方法に関する。本発明のトラックエッチングメンブレンの製造方法は、ポリマーフィルムに重イオン攻撃を及ぼしてポリマーフィルム中に決定されたトラック密度を形成するステップと、このようにして得ることができる多孔質トラックエッチングメンブレンを接着剤の使用により多孔質基材上に積層してメンブレンカードを製造するステップとを有する。メンブレンスタック及びターブュライザを、分離装置が形成されるような仕方で、処理済み液体(ガス)媒体の収集のためのコレクタ管に螺旋に巻き付ける。分離装置は、分離プラント中に組み込まれ、分離プラントは、処理済み液体(ガス)媒体コレクタ、初期未処理及び処理済み液体(ガス)媒体のパイプライン、未処理及び処理済み液体(ガス)媒体のパイプラインに連結されていて、初期処理済み液体(ガス)媒体から抽出された重要であると考えられる量の粒子がメンブレン上に集められたときに、分離プラントをバックフラッシュモードに切り換える圧力センサを更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、流体からの種々のサイズの物質の分離の分野に関する。特に、本発明は、かかる物質を流体から分離するメンブレン(膜)、メンブレンパッケージ、及び分離要素を製造する方法、かかるメンブレンの品質管理のための方法、及び流体からの物質の分離のための一層効率的なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀は、結果的に人口に対して多くの悪影響となる制御されない気候変化の期間として記憶されるかもしれない。悪影響の1つは、干ばつを経験していなかった世界の区域における多くの深刻な干ばつである。これは、結果的に追加の持ち運び可能な新鮮な水に関して非常に多くの要件が生じると考えられる。持ち運ぶことができる新鮮な水は、水が無ければ、あらゆる生命は終わってしまうので、地球上で最も重要な化合物であることは疑いの余地がない。
【0003】
新鮮で持ち運び可能な水を得るために生の未処理の水から望ましくない物質の分離に関して多くの先行技術が存在する。種々のサイズの粒子を原水から除去し、その結果、溶解塩、主として塩化ナトリウムを含む処理済み水を得るために濾過システムが用いられる。海水の脱塩又は汽水の鉱質除去若しくは脱イオン処理のためのシステムが用いられている。例えば、逆浸透又は超濾過膜分離システムは、約180〜15,000分子量の化合物を含む1〜10オングストローム単位範囲の物質、例えば溶解塩を除去し、ナノ濾過システムは、10〜100オングストローム単位範囲の物質を除去し、限外濾過システムは、10,000〜250,000の分子量の高分子を含む30〜1100オングストローム単位範囲の物質を除去し、精密濾過システムは、500オングストローム〜20,000オングストローム(0.05〜2μm)単位範囲の物質を除去する。これらについては、例えば、米国特許第6,540,915号明細書を参照されたい。
【0004】
これらメンブレン分離システムは、典型的には、結果的に圧力損失が低く、比較的安価に製造できる螺旋巻き型のメンブレンパッケージ又はモジュールを使用している。一般に、螺旋巻き型メンブレンパッケージは、ナノ濾過メンブレン、限外濾過メンブレン、又は精密濾過メンブレンを含む螺旋巻き型分離メンブレンで形成されている。これについては、例えば、米国特許第6,565,747号明細書を参照されたい。
【0005】
用いられる脱塩システムの特定の形式は、水の中の不純物の性状及び量で決まる。例えば、粒子の形態の不純物と溶液の状態の不純物は両方共、水から除去される必要がある。その目的は、水を浄化して水が飲み水、食品、及び飲料の製造、農業用灌漑、及び他の工業用途の品質に関する要件を満たすのに十分に少ない量の懸濁粒子、微生物、及び溶解塩を含むようにすることにある。これについては、例えば、米国特許第6,793,824号明細書を参照されたい。
【0006】
逆浸透法を別にすれば、水の浄化のための他のプロセスとしては、濾過及び蒸留が挙げられる。従来型の粒子濾過方法では、約10μm以上の粒子の形態をした不純物、例えば懸濁無機粒子は、多孔質構造物、例えば編組ウェブ、織布又は不織布を用いて除去される。非常に小さな粒子を濾過しなければならない場合、半透性又は微孔質のポリマーメンブレンが用いられ、かかるメンブレンは、メンブレンにエッチングして開けられた非常に小さな穴を有している。
【0007】
水不足に対処するために海水の脱塩又は汽水の鉱質処理のための多くの先行技術に加えて、電子工業界及び医療分野のための超純水を調製する分離システム、廃水の再循環及び分離のための分離システム、食品、及び精製化学製品の分野において流体を浄化して濃縮する分離システムが周知である。これらについては、米国特許第6,565,747号明細書を参照されたい。
【0008】
一般に、流体から望ましくない物質及び望ましい物質を分離して取り出すために分離システムが用いられる。分離方法により除去されるべき物質としては、例えば水、血液、油等のような流体から除去される懸濁固形物、溶解固形物、汚染物質、塩、生物学的材料、乳化油、及びこれらに類似した物質が挙げられる。
【0009】
多孔質支持体上に積層された薄膜ペルフルオロアクリル改質セルロースアセテートメンブレンが、海水脱塩、限外濾過、精密濾過、及び腎臓透析に使用できるが、好ましくは、ガス分離に用いられる。これについては、米国特許第4,549,012号明細書を参照されたい。
【0010】
限外濾過及び精密濾過のために用いられるメンブレンを製造する1つの先行技術の方法は、押し出しステップと、制御されたサーモストレッチング(thermostretching)ステップと、冷却ステップとを有する。かかるメンブレンに用いられる材料の例としては、微孔質ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンが挙げられる。これについては、米国特許第6,540,915号明細書を参照されたい。
【0011】
種々の分離メンブレンが、限外濾過及び精密濾過ユニット内に収納され、これら限外濾過及び精密濾過ユニットは、種々のサイズ及び種々の分子量の化合物を含む物質を選択的に濾過して除去するために用いられるシステム内に配置される。これは、所望の分離の形式に応じて、これらメンブレンの孔径を所望のサイズ範囲に操作することにより行われる。
【0012】
濾過効率の向上が振動インタラプタを用いる油圧アキュムレータの助けによるメンブレンの逆洗により達成される限外濾過システムが知られている。これについては、著作権法により保護される1991年8月7日付のソ連国発明者証第1667912号(公報番号29)を参照されたい。しかしながら、かかるシステムは、設計が複雑であり、その結果、濾過費用が高いという欠点を有している。
【0013】
他の先行技術の流体濾過システムが、2000年1月20日付のロシア連邦国特許発明第2144422号明細書(特許公報番号2)に開示されると共にクレーム請求されている。これら流体濾過システムは、フィルタ、フィルタの逆洗のための油圧アキュムレータ、調整弁を備えた処理済み及び未処理流体入口及び出口、源水ポンプ、逆洗電気弁、及びタイマを有する。これらシステムは、報告によれば、処理済み水の逆洗によりフィルタ寿命が延びるという利点を有しており、フラッシングは、システムをターンオフしないで行われ、フラッシングステップは、製造及び作動が単純であると報告されている機器によって実施される。しかしながら、これら濾過システムの欠点として、作動ポンプにより、フラッシングステップの際にフィルタに過剰の圧力が生じ、それにより、システムの各々前後の差圧が減少し、その結果、システムの効率が減少する。フラッシングは、源水の組成、即ち、懸濁粒子の濃度、汚染要因物の種類等を考慮には入れておらず、濾過プロセス中に生じる場合のある変動も考慮に入れていないあらかじめ指定されたタイミング図に従って実施される。これら欠点の結果として、逆洗のための処理済み流体の消費量が過剰になるか、フラッシング相互間の時間があまりにも長くなるためにフィルタ透過性が急に低下するかのいずれかになる場合がある。
【0014】
近い将来において、予測の示すところによれば、効率の向上した水浄化及び分離システムが切に要望されることになる。また、水以外の流体からの多種多様な物質の分離のためのシステム及びかかる分離システムのための改良型多孔質メンブレン、メンブレンパッケージ、及び分離要素の製造方法が要望される。
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,540,915号明細書
【特許文献2】米国特許第6,565,747号明細書
【特許文献3】米国特許第6,793,824号明細書
【特許文献4】米国特許第4,549,012号明細書
【特許文献5】ソ連国発明者証第1667912号
【特許文献6】ロシア連邦国特許発明第2144422号明細書
【発明の開示】
【0016】
本発明の一特徴によれば、流体からの物質の分離に有用なメンブレンカードを製造する方法であって、
a)ポリマーフィルムに重イオンのボンバードを及ぼして前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)エッチング溶液により細孔を前記結果的に得られたトラック付きフィルムにエッチングして前記フィルムに前記トラック密度に対応した前記細孔の密度を与えるステップと、c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンを接着剤により多孔質基材に積層するステップと、
d)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップとを有する、方法が提供される。
【0017】
本発明の別の特徴によれば、流体からの物質の分離に有用な分離システムの製造方法であって、
a)フルオロポリマーフィルムに重イオンのボンバードを与えて前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)前記結果的に得られたトラック付きフィルムを複数の別々のセクションに切断するステップと、
c)エッチング溶液で前記トラック付きフィルムの前記セクションをエッチングして前記フィルムの前記セクションに前記トラック密度に対応した細孔密度を与えるステップと、
d)前記多孔質トラックメンブレンの前記結果的に得られたセクションを接着剤によって多孔質基材に積層するステップと、
e)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップと、
f)前記メンブレンカードの前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を形成するステップと、
g)前記メンブレンカードの各々を別のメンブレンカードに隣接するよう曲げ線に沿って曲げて突出部及び前記突出部の各々相互間に中央セクションを形成して前記多孔質基材が外方に向くようにするステップと、
h)前記メンブレンカードの前記各々の中央セクションを流体収集管に押し付けて前記突出部の各々が前記収集管から外方に延びると共に前記収集管に押し付けられた前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記曲げ線がその孔に隣接して位置するようにするステップと、
i)複数の前記メンブレンカードの各々の前記外方突出部の各々の前記多孔質基材相互間に多孔質ガーゼ状ドレンを差し挟んで少なくとも1つのドレンが前記収集管の前記孔と接触状態になるようにするステップと、
j)前記メンブレンカードの各々の前記接着部に沿って接着剤を被着させて前記ドレンを前記メンブレンカードに接合すると共に前記メンブレンパッケージを前記収集管に接合するステップと、
k)少なくともターブュライザのシートを前記メンブレンカードの各々の前記中央セクションに且つ前記突出部相互間に取り付けて前記分離要素の前記ターブュライザが前記流体収集管から外方に突き出るようにするステップと、
l)前記流体収集管に作動的に取り付けられた複数の前記結果的に得られたメンブレンパッケージを収容した分離システムを製造するステップとを有する、方法が提供される。
【0018】
本発明の更に別の特徴によれば、流体からの物質の分離に有用な分離システムの製造方法であって、
a)ポリマーフィルムの連続ロールに重イオンのボンバードを及ぼして前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)前記ロールがエッチング溶液を通過するときに前記トラック付きフィルム前記連続ロールをエッチングして前記フィルムのセクションに前記トラック密度に対応した細孔の密度を与えるステップと、
c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンのロールを接着剤により多孔質基材のロールに積層するステップと、
d)基材付きの多孔質トラックメンブレンの前記連続ロールを複数のメンブレンカードに切断するステップと、
e)前記メンブレンカードの前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を形成するステップと、
f)隣り合う前記メンブレンカードをそれぞれの曲げ線に沿って曲げて突出部及び前記突出部の各々相互間の中央セクションを形成して多孔質基材が外方に向くようにするステップと、
g)前記メンブレンカードの各々の前記中央セクションを流体収集管に押し付けて前記突出部が各々前記収集管から外方に延びると共に前記収集管に押し付けられた前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記曲げ線が、その孔に隣接して位置するようにするステップと、
h)多孔質ガーゼ状ドレンを複数の前記メンブレンカードの各々の前記外方突出部の各々の前記多孔質基材相互間に差し挟んで少なくとも1つのドレンが前記収集管の前記孔と接触状態になるようにするステップと、
i)各メンブレンカードの前記接着部に沿って接着剤を被着させて前記ドレンを前記メンブレンカード及び前記収集管に接合するステップと、
j)少なくとも多孔質ガーゼ状材料のターブュライザのシートを前記中央セクションの各々の前記多孔質メンブレン表面に且つ前記突出部相互間で取り付けて前記ターブュライザが、前記有孔流体収集管から外方に突き出るようにするステップと、
k)前記流体収集管に作動的に取り付けられた複数のメンブレンカードを有する分離システムを製造するステップとを有する、方法が提供される。
【0019】
本発明の更に別の特徴によれば、流体からの物質の分離に有用なメンブレンカードを製造する方法であって、
a)フルオロポリマーフィルムに重イオンのボンバードを与えて前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)エッチング溶液により細孔を前記結果的に得られたトラック付きフィルムにエッチングして前記フィルムに前記トラック密度に対応した前記細孔の密度を与えるステップと、
c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンの前記細孔の最大直径を求めるステップと、所望の前記最大孔径を備えた前記多孔質トラックメンブレンを接着剤により多孔質基材に積層するステップと、
d)多孔質基材を有すると共に指定されたパラメータを備えたメンブレンカードを製造するステップとを有する、方法が提供される。
【0020】
本発明の更に別の特徴によれば、メンブレン細孔の最大直径を求める方法であって、
a)液体含浸メンブレンをセル内に設けるステップと、
b)前記セルを液体で充填するステップと、
c)ガスを前記セル中に送り込むステップと、
d)前記セルの圧力を測定するステップと、
e)前記セルを密閉容器内に配置して前記セルと前記密閉容器が流体連通状態になるようにするステップと、
f)非破壊圧力差を前記メンブレンに及ぼすと同時に液体を前記密閉容器からポンプで排出するステップと、
g)前記液体と同一の組成を有するガスを容器からの前記液体の取り出しにより作られた前記容器内の前記結果的に得られたキャビティに送るステップと、
h)前記メンブレンの表面に加わる圧力及び圧力差を連続的に測定するステップと、
i)前記メンブレンに作用する前記圧力差が無くなる前記メンブレンの前記表面に対する圧力を記録するステップと、
j)前記ステップi)で記録した前記圧力状態における液体表面張力係数の値を求めるステップと、
k)ラプラスの公式に基づいて前記最大細孔の値を計算するステップとを有する、方法が提供される。
【0021】
本発明の更に別の特徴によれば、流体からの物質の分離方法であって、
a)ポリマーフィルムに重イオンのボンバードを及ぼして前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)エッチング溶液により細孔を前記結果的に得られたトラック付きフィルムにエッチングして前記フィルムに前記トラック密度に対応した前記細孔の密度を与えるステップと、c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンを接着剤により多孔質基材に積層するステップと、
d)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップと、
e)前記メンブレンカードを分離ユニット内に収納するステップとを有する、方法が提供される。
【0022】
本発明の更に別の特徴によれば、流体からの物質の分離のための分離システムであって、
a)少なくとも1つの源流体入口、少なくとも1つの処理済み流体出口、及び少なくとも1つの未処理流体出口を備えた分離要素を収容している分離ユニットと、
b)前記源流体入口を通って源流体を供給するポンプと、
c)前記源流体出口に設けられた第1の弁と、
d)前記源流体入口に設けられていて、前記第1の弁を通って流れる前記源流体の圧力を測定する第1の圧力計と、
e)前記処理済み流体出口と流体連通状態にある油圧アキュムレータと、
f)前記処理済み流体出口に設けられていて、前記油圧アキュムレータに流れる前記処理済み流体の圧力を測定する第2の圧力計と、
g)前記未処理流体出口に設けられた第2の弁と、
h)前記処理済み流体出口に設けられた第3の弁と、
i)前記源流体入口と前記未処理流体出口との間に位置する第1のバイパスラインと、
j)前記第1のバイパスラインに設けられた第4の弁と、
k)前記未処理流体出口と前記第4の弁との間に連結された第2のバイパスラインと、
l)前記第2のバイパスラインに設けられた第5の弁と、
m)前記処理済み流体出口の前記第2の圧力計の圧力の読みの信号を受け取る第1のセクション及び前記未処理流体出口の前記第1の圧力計の圧力の読みの信号を受け取り、前記処理済み流体出口の圧力と前記未処理流体圧力出口の圧力の圧力差を記録し、前記結果的に得られた圧力差に応答して信号を前記第5の弁に送って前記処理モード及び前記逆洗モードのために前記第1の弁及び前記第5の弁のそれぞれの開閉を制御する第2のセクションを備えた変換器とを有する、分離システムが提供される。
【0023】
本発明の更に別の特徴によれば、流体からの物質の分離方法であって、
a)フルオロポリマーフィルムに重イオンのボンバードを与えて前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)前記結果的に得られたトラック付きフィルムを複数の別々のセクションに切断するステップと、
c)エッチング溶液で前記トラック付きフィルムの前記セクションをエッチングして前記フィルムの前記セクションに前記トラック密度に対応した細孔密度を与えるステップと、
d)前記多孔質トラックメンブレンの前記結果的に得られたセクションを接着剤によって多孔質基材に積層するステップと、
e)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップと、
f)前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を形成するステップと、
g)前記メンブレンカードの各々を別のメンブレンカードに隣接するよう曲げ線に沿って曲げて突出部及び前記突出部の各々相互間に中央セクションを形成して前記多孔質基材が外方に向くようにするステップと、
h)前記メンブレンカードの前記各々の中央セクションを流体収集管に押し付けて前記突出部の各々が前記収集管から外方に延びると共に前記収集管に押し付けられた前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記曲げ線がその孔に隣接して位置するようにするステップと、
i)複数の前記メンブレンカードの各々の前記外方突出部の各々の前記多孔質基材相互間に多孔質ガーゼ状ドレンを差し挟んで少なくとも1つのドレンが前記収集管の前記孔と接触状態になるようにするステップと、
j)前記メンブレンカードの各々の前記接着部に沿って接着剤を被着させて前記ドレンを前記メンブレンカードに接合すると共に前記メンブレンパッケージを前記収集管に接合するステップと、
k)少なくともターブュライザのシートを前記メンブレンカードの各々の前記中央セクションに且つ前記突出部相互間に取り付けて前記分離要素の前記ターブュライザが前記流体収集管から外方に突き出るようにするステップと、
l)前記流体収集管に作動的に取り付けられた複数のメンブレンパッケージを収容した分離ユニットを製造するステップと、
m)分離システムを組み立てるステップとを有する、方法が提供される。
【0024】
本発明の更に別の特徴によれば、流体からの物質の分離のための分離ユニットであって、少なくとも1つのメンブレンパッケージを形成するメンブレンカード及びドレンと、収集管に螺旋に巻き付けられて処理済み流体が前記ドレンを通って集められるようにする少なくとも1つのターブュライザとを有し、前記メンブレンパッケージは、それ自体折り畳まれたメンブレンカード及び前記メンブレンカードの前記2つの半部の多孔質基材表面相互間に差し挟まれたドレンを有し、前記メンブレンパッケージは、次の公式、即ち、
L=3/√(2k2/k1
によって求められた長さを有し、上式において、Lは、前記メンブレンパッケージの長さ(メートル(m))であり、k1は、ドレンパラメータ(m3/hr・MPa)であり、k2は、メンブレンカードパラメータ(m3/hr・MPa・m2)である、分離ユニットが提供される。
【0025】
別の特徴及び別の利点は、添付の図面に示されている本発明の種々の実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本明細書においては以下の定義を用いる。
【0027】
「流体」は、空気、水、血液、炭化水素、及び本発明の方法及びシステムを含む方法及びシステムにより分離される物質を非処理状態で含む他の流体に及ぶ気体(ガス)又は液体である。
【0028】
「収集管」は、処理済み流体を収集するために用いられる有孔管である。
【0029】
「メンブレンカード」は、多孔質メンブレンか接着剤を用いて多孔質基材に積層された多孔質トラックメンブレンかのいずれかであり、かかるメンブレンは、積層されると、指定されたパラメータを有する。
【0030】
「メンブレンパッケージ」は、2つの互いに異なるメンブレンカードの2つの突出部と突出部の多孔質基材表面の各々相互間に差し挟まれた又は差し入れられたドレンの1枚又は2枚以上のシートの組合せである。
【0031】
「多孔質メンブレン」は、流体から物質を分離し又は濾過して除去する細孔を有するポリマー材料の薄い柔軟なシート又は層である。
【0032】
「多孔質トラックメンブレン」は、トラックに沿って指定された直径の細孔を生じさせるよう化学的にエッチングされたトラック付きフィルムである。
【0033】
「分離システム」は、少なくとも1つの分離ユニット、ポンプ、弁、パイプ、又はライン及び流体から物質を分離する他の機器の組合せである。
【0034】
「分離ユニット」は、1つ又は2つ以上の分離要素が流体からの物質の分離又は濾過を実施するよう作動的に収納されているユニットである。
【0035】
「分離要素」は、1つ又は2つ以上のターブュライザ(turbulizer)がメンブレンパッケージ各々相互間に配置された状態で流体収集管に取り付けられた1つ又は2つ以上のメンブレンパッケージである。
【0036】
「トラック付きフィルム」は、細孔を生じさせるようエッチング部位としての役目を果たすトラックを生じさせるよう重イオンの攻撃にさらされるポリマーフィルムである。
【0037】
「物質」は、適当な細孔直径が約0.01〜約1.5μmの多孔質メンブレンを用いて流体から分離できる約0.01〜約1.5μmの有限サイズの何らかの物体である。
【0038】
1.流体からの物質の分離に有用なメンブレンカード及び分離要素の製造方法
図1は、基材付き又は裏付き多孔質トラックメンブレン、即ち、メンブレンカードを製造してこれをターブュライザと組み合わせて流体からの物質の分離又は濾過に有用な分離要素を形成する本発明の方法の一実施形態を示すブロック図である。
【0039】
ブロック10は、幅が様々な、典型的には、幅が約600ミリメートル(mm)であり、厚さが様々な、典型的には約10μmの連続ロールで通常入手されるポリマーフィルムを入手するステップを表している。本発明の一実施形態は、フィルムが多孔質になることができる限り、特定の種類のポリマーフィルムには限定されない。所望の多孔率に合わせてエッチングされることが判明したポリマー材料の代表的な例としては、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリスチレン、ポリアクリロニトル、セルロースアセテート、ポリスルホン、及びポリオレフィン、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらのコポリマーが挙げられる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマーフィルムは、フルオロポリマーフィルムであり、更により好ましくは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)フィルムである。ポリビニリデンフルオリド(PVDF)フィルムが好ましいが、他のフルオロポリマーフィルムを使用でき、かかる他のフルオロポリマーフィルムとしては、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレンとエチレン(ECTFE)のコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロアルコキシエチレン(PFA)のコポリマー、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレン(FEP)のコポリマー、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレン及びペルフルオロアルコキシエチレン(EPE)のターポリマー、テトラフルオロエチレンとエチレン(ETFE)のコポリマー、ポリ弗化ビニル(PVF)、及びこれらフルオロポリマー樹脂の任意の組合せのフィルムが挙げられるが、これらには限定されない。
【0041】
ブロック20は、ポリマーフィルムを重イオンでボンバードして所定のトラック密度を備えたフィルムをもたらす暴露ステップを示している。トラック密度は、重イオン、即ち高エネルギー荷電粒子がサイクロトロン又は他の粒子加速器からトラック経路上を走行することにより後に残されたポリマーフィルムの表面上の単位面積当たりのトラックの数である。これら荷電粒子により後に残されたトラックは各々、適当なエッチング剤の作用を受けることができる。
【0042】
この目的に関して適当な重イオンな代表的な例としては、アルゴン、クリプトン、キセノン、ビスマス、及びこれら重イオンの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。好ましくは、トラック密度は、約107cm-2〜約109cm-2である。これについては、米国特許第5,449,917号明細書及び2004年7月21日に公開されたロシア連邦国特許第2233196号明細書を参照されたい。なお、これら特許文献を参照により引用し、暴露ステップの関連記載について本明細書の一部とする。加うるに、イー・ユー・エーペル(E. U. Apel)著「メジャーメンツ・オブ・ザ・ダイヤメーター・オブ・セレクティヴァリー・エッチャブル・トラックス・プロドゥースド・イン・ポリマー・バイ・ヘビー・イオンズ(Measurements of the Diameter of Selectively Etchable Tracks Produced in Polymer by Heavy Ions)」を参照されたい。後者は、ヌクリアー・トラックス(Nuclear Tracks),第6巻,第2〜3号,p115〜118に掲載された論文である。
【0043】
ブロック30のエッチングステップは、本発明の一実施形態における次の重要なステップである。このステップでは、トラック付きフィルムをエッチング溶液内に配置し又はこれに通してトラック密度に対応した細孔を有するフィルムをエッチングにより形成する。エッチングステップの結果として、フィルムの表面上の荷電粒子により後に残された実質的に全てのトラックについて細孔を有するポリマーフィルムが得られる。結果的に得られた多孔質メンブレンでは、メンブレンの細孔の細孔密度と高エネルギー粒子トラックのトラック密度には実質的に1対1の対応関係がある。幅が約600mm、厚さが約10μm、長さが約1〜約20m、トラック密度が1cm2当たり約107トラック数、例えば、107cm-2のフィルムであれば、その結果、約1mmのサイズの細孔を備えた107cm-2の細孔密度が得られる。これと同様に、トラック密度が約109cm-2の同一サイズのフィルムの場合、結果的に、サイズが約0.01μmの細孔を有する109cm-2の細孔密度が得られる。トラック密度をこれらの下限と上限との間で変化させることにより、細孔密度を制御することができる。エッチング時間を変化させることにより、細孔サイズ(孔径)を約0.01〜約1.5μmの範囲内で制御することができる。好ましくは、ポリマーフィルムがフルオロポリマー樹脂で作られている場合、エッチングのためにアルカリ性溶液が用いられる。
【0044】
実験により立証されたこととして、PVDFフィルムをエッチングするのに好ましいアルカリ性溶液は、過マンガン酸カリウムのアルカリ性溶液である。PVDFフィルムのエッチングは、好ましくは、約100℃〜約150℃の温度で行われる。アルカリ性溶液を約100℃よりも高い温度に維持する一方法は、エッチング温度の所望の上昇を達成するのに十分な濃度のアルカリ金属の塩、好ましくは塩化ナトリウムを添加することである。
【0045】
好ましいエッチング方法における別のやり方は、乱流を維持する条件下でアルカリ性溶液をPVDFに接触させることである。これは、約100〜約500のレイノルズ数でエッチング溶液をPVDFフィルム上を循環させることにより達成される。かかる流量では、フィルムと接触状態にあるアルカリ性溶液の温度勾配は、実質的にゼロまで減少し、エッチング速度は、フィルム表面の全てのトラックについて実質的に同一である。したがって、これら流量の結果として、完成状態の多孔質トラックメンブレン上における孔径分布の範囲が狭くなる。
【0046】
エッチングステップを約1〜約24時間の期間にわたり実施するが、これよりも短い約3〜9時間という期間が過マンガン酸カリウムのアルカリ性溶液には推奨される。正確なエッチング時間は、細孔の所要の直径及びフィルムの厚さで決まる。
【0047】
エッチング時間が長い場合には、二酸化マンガンがエッチング反応の結果として生じ、フィルム表面上に付着することが判明した。二酸化マンガンの付着は、反応ゾーンへのエッチング溶液の接近を妨げ、その結果、反応速度が減少する。エッチング溶液を上述したような乱流条件下においてエッチング浴内で循環させることにより、沈降状態の二酸化マンガン反応生成物は、フィルム表面から少なくとも部分的に洗い落とされ、反応速度は、エッチングステップ全体を通じてほぼ一定のままである。
【0048】
上述したように温度、流量、及び時間のプロセス条件を制御することにより、エッチングステップは、それほど過熱を生じないで起こることが判明した。それほど過熱を生じないでエッチングすることは、過熱が生じていないものと見なされ、或いは、エッチング溶液の過熱が生じてもこれは、1℃以下のものである。これら条件は、以下の方程式で表すことができる。
N≦Q・Cs・ΔT
上式において、Nは、予熱器の出力(単位:W)であり、Qは、酸洗い液の流量(単位:m3/s)であり、Csは、溶液の比熱(単位:J/(m3・K))であり、ΔTは、溶液の過熱度(単位:K)である。ΔTが1℃又は1°K以下に維持される場合、N≦Q・Csである。
【0049】
時間及び温度の間隔は、以下の要因によって決定される。好ましくは、エッチングは、100℃以下の温度では行われない。というのは、エッチング速度が相当増大し、その結果、プロセス効率が低くなるからである。他方、アルカリ塩を追加する本発明の方法を用いて120℃よりも高い温度をもたらすことは困難である。エッチング速度が約1時間以下の場合、メンブレンには細孔が形成されない。エッチング速度が指定された24時間よりも長い場合、好ましい効果はそれ以上には向上しない。加うるに、多孔率が高いメンブレンは、所望の範囲外のエッチング時間を受けると、これらの機械的性質を失うことになる。
【0050】
これら最適プロセス条件を維持した結果として、半透膜、即ち、多孔性メンブレンの高い品質が得られる。本発明のこの実施形態の方法により製造された多孔質メンブレンの特性のうちの1つは、結果的に得られた多孔質メンブレンが、分離システムにおけるこれらの有孔寿命全体を通じ、即ち、通常はメンブレンを交換しなければならない時点よりも前に平均約6箇月の間、同一の最大孔径を維持することにある。
【0051】
ブロック35は、多孔質トラックメンブレンが分離システム内においてメンブレンの有孔寿命全体を通じて破断しないように保護する多孔質基材を得るステップを表している。好ましくは、多孔質基材にエポキシ系接着剤を含浸させて、この多孔質基材が分離システムでのその使用中、結果的に得られたメンブレンカードに加わるかなり大きな力に耐える所望の強度を有するようになる。
【0052】
ブロック40の積層ステップ又は最後の主要なステップは、分離システムでの使用のために分離要素中に形成されるのに適したメンブレンカードの製造において必要である。本発明の上述のプロセス条件に従って製造された多孔質トラックメンブレンをかかる条件が無い場合のフルオロポリマーフィルムは付着性が貧弱であると知られていたとしても、多孔質基材に積層できることが判明した。また、多孔質基材と多孔質トラックメンブレンとの間の良好な付着性を得るために適当な接着剤を最適条件下で塗布することが重要であることが判明した。多孔質基材の形式は、重要ではなく、かかる形式としては、水蒸気を通すことができる織り、不織、又は接合ペーパ、ファブリック、及びスクリーンが挙げられる。適当な基材材料の例は、水分に対して安定性のある有機及び無機ポリマーの繊維、例えば、ポリエステル、ガラス繊維、及びポリオレフィン、例えばポリエチレンやポリプロピレン等で構成された材料である。
【0053】
メンブレンカードを製造するよう多孔質トラックメンブレンに対する基材の最適付着性を達成する積層ステップの一実施形態は、接着剤を約1〜約30gm/m2の濃度で多孔質基材の一方の表面に吹き付け、次に、多孔質基材を多孔質トラックメンブレン上に重ねて積層することである。
【0054】
ブロック45により表された積層ステップの別の実施形態は、接着剤を1平方インチ当たり約1〜約20個の小滴状接着剤の濃度で多孔質基材の一方の表面に塗布し、その後、多孔質基材を多孔質トラックメンブレン上に重ねてメンブレンカードが適当な圧力下で硬化できるようにすることである。
【0055】
最も効果的であることが判明した接着の方式は、例えばポリエステル多孔質基材の一方の表面にポリエステル接着剤を吹き付け、多孔質基材を上述のエッチングステップから得られたPVDF多孔質トラックメンブレンに付着させることである。適当なポリエステル系接着剤の1つは、スリーエム・コーポレイション(3M Corporation)により市販されているスーパー77(Super 77)接着剤である。変形例として、多孔質基材は、接着剤転写テープを一方の多孔質基材表面に塗布し、その表面をPVDF多孔質トラックメンブレンに結合することにより、PVDF多孔質トラックメンブレンに結合される。適当な接着剤は、これ又スリーエム・コーポレイションにより市販されている#924接着剤転写テープ(#924 Adhesive Transfer Tape)である。
【0056】
本発明の方法の一実施形態では、トラック付きポリマーフィルムをブロック30のエッチングステップに先立って、有限長さの多くの別々のセクションに切断する。トラック付きフィルムを取り扱い可能な長さに切断することにより、エッチングステップを図2Aに示すカセット210を用いてバッチ形式の操作で実施できる。約1〜約20mのトラック付きフィルムの長さが、カセット210にとって好ましい。
【0057】
図2A及び図2Bは、想像線で示されたカセット210及び浴220を有するエッチングユニット200を示している。カセット210は、フレーム215と、フレーム215に取り付けられた第1の側方支持体227に取り付けられている第1の回転支持体225と、フレーム215に設けられている第2の側方支持体237に取り付けられている第2の回転支持体235と、多くの等間隔を置いて設けられた固定上方水平支持体255と下方水平支持体265とを有している。フレーム215は、上方水平支持体255が取り付けられた上方部材250と、下方水平支持体265が取り付けられた下方部材260とを有している。
【0058】
エッチング操作のフィルム装填ステップの際、カセット210を浴220から取り出す。ポリマートラック付きフィルムの第1の長さ262の右側端部を第1のクリップ254により固定上方水平支持体255に固定する。第1の長さ262の自由左側端部を下側水平支持体265の下に送り、次に、上方水平支持体255上に送り、ついには、自由左側端部が、回転支持体225のところに位置するようにする。次に、左側端部を第2のクリップ256により回転支持体225に取り付けてフィルムの第1の区分262を支持体上の定位置にしっかりと固定する。これと同様に、フィルムの第2の長さ267の左側端部を第3のクリップ257により固定上方水平支持体255に固定する。第2の長さ267の自由右側端部を下方水平支持体265の下に送り、次に、上方水平支持体255の上に送り、ついには、自由端部が、回転支持体235のところに位置するようにする。次に、右側端部を第4のクリップ258により回転支持体235に取り付けてフィルムの第2の区分267を定位置にしっかりと固定する。好ましくは、クリップは全て、チタンで作られる。
【0059】
エッチングプロセス中におけるこの時点で、回転支持体225,235をそれぞれ反時計回り及び時計回りに回転させて第1及び第2の長さ262,267を十分な度合いの予備延伸又は制御された延伸下に配置する。延伸は、フィルム長さがこれらを100℃以上のエッチング溶液温度にあるエッチング浴中に配置したときに膨張する傾向を補償する。支持体上の定位置に固定されるフィルムの2つの長さ分しか示されていないが、最高4つまでの長さ分を1つのカセットにより容易に収納できる。
【0060】
エッチング操作中、エッチング溶液を浴220内に注ぎ込み、カセット210を浴220内へ下降させる。カセット210を昇降させてエッチング反応を促進する。
【0061】
以下の例は、エッチングユニット200を用いる方法を実証している。以下の例の各々において、20質量%のKMnO4、13質量%のNaOH、及び沸点において完全飽和濃度を達成するよう200g/lからの濃度のアルカリ金属の塩を含有した溶液をエッチング浴220に注ぎ込んだ。ポンプ及び電気ヒータをオンに切り換え、エッチング溶液を作業温度に至らせながらエッチング溶液を循環させた。溶液が必要な温度に達したとき、重い荷電粒子のボンバードにさらされたフルオロポリマーフィルムを収容したカセット210を浴220内に浸漬し、これに3〜9時間の期間をかけて化学的エッチングを施した。トラック付きフィルムの表面全ての加熱は、エッチング浴内でのエッチング溶液の連続循環の結果として一様であった。上述したように、エッチングの正確な温度及び正確な時間は、種々の形式のフィルムについて様々である。
【0062】
実施例1
厚さが13μmであり、まず最初に、1×108cm-2のトラック密度を有するよう加速Krイオンのボンバードを受けたポリ弗化ビニリデンフィルムを20質量%のKMnO4、13質量%のNaOH、及び20質量%のNaClを含むエッチング溶液内で110℃で5時間エッチングした。エッチング溶液は、1m3/hの流量でエッチング浴内部を循環してこの例に関してはNRe=200となった。この例で得られた多孔質トラックメンブレンは、有効細孔直径が0.3μmであった。
【0063】
実施例2
比較のため、同一のトラック付きPVDFフィルムを20質量%のKMnO4及び13質量%のNaOHを含む浴中で100℃において6時間エッチングして有効細孔直径が0.17μmの多孔質トラックメンブレンを得る同様な例を実施した。この直径は、100℃を超える温度で得られた多孔質トラックメンブレンと比較して1.8倍だけ小さかった(1/1.8であった)。
【0064】
実施例3
厚さが25μmであり、まず最初に、5×107cm-2のトラック密度を有するよう加速Krイオンのボンバードを受けた別のPVDFフィルムを20質量%のKMnO4、13質量%のNaOH、及び20質量%のNaClを含むエッチング溶液内で105℃で5時間エッチングした。エッチング溶液は、実施例1の場合と同一の流量でエッチング浴内部を循環して同一のNReが得られた。この例で得られた多孔質トラックメンブレンは、有効細孔直径が0.4μmであった。
【0065】
実施例4
比較のため、同一のトラック付きPVDFフィルムを20質量%のKMnO4及び13質量%のNaOHを含む浴中で100℃において8時間エッチングして有効細孔直径が0.1μmの多孔質トラックメンブレンを得る同様な例を実施した。この直径は、100℃を超える温度で得られた多孔質トラックメンブレンと比較して4倍だけ小さかった(1/4であった)。
【0066】
したがって、プロセスの温度を100℃を超えて厳密に制御することにより、所与の最大孔径を生じさせる時間は、温度が100℃に維持された場合に必要な時間の1/4であることが判明した。
【0067】
基材付き多孔質トラックメンブレンをブロック80で表されたドレン及びブロック90で表されたターブュライザと組み合わせるためにブロック40で所望サイズのメンブレンカードに切断し、それにより、以下に説明する形式の分離システムで用いられるブロック95で表されている分離要素を形成する。
【0068】
図3は、メンブレンカードを製造する別の実施形態を示しており、かかる実施形態では、ブロック310により表されたトラック付きポリマーフィルムの連続ロールをブロック320に渡して上述したように重イオンのボンバードを与える。ブロック320から、トラック付きフィルムの連続ロールをブロック330に渡して上述したように適当なエッチング溶液を施す。しかしながら、連続ロールの場合、新しいエッチング溶液をエッチングユニットのトラック付きフィルム入口端部のところに導入し、使用済みエッチング溶液をトラック付きフィルム出口端部のところで取り出す方式の連続エッチングユニット(図示せず)が計画される。
【0069】
ブロック340からの多孔質基材の連続ロールを接着剤の層と共にブロック350において多孔質基材の上面に吹き付ける。エッチングされたトラック付きフィルムのロールを多孔質基材のロールに積層し、そしてブロック360において所望長さのメンブレンカードに切断する。次に、メンブレンカードをブロック380からのドレン及びブロック390のターブュライザと組み合わせてブロック390の分離メンブレン要素を形成する。
【0070】
2.流体からの物質の分離に有用な分離ユニットの製造方法
図4は、分離ユニットに適した代表的な螺旋巻き分離要素400を示している。メンブレンパッケージ400の製造方法は、流体収集管401に、多孔質トラックメンブレン402の2枚のシート又はそれ自体折り畳まれた多孔質トラックメンブレン402の単一のシートを螺旋に巻き付けることで始まる。多孔質トラックメンブレン402を上述の本発明の一実施形態の方法に従って多孔質基材403に積層する。変形例として、スパンボンド(spun-bonded)ポリプロピレン繊維等から形成された2枚の多孔質基材片403を多孔質トラックメンブレン402の2つの半部相互間に用いる。この変形例では、1枚のドレン404を図示のように多孔質基材403の各々相互間に差し挟んで収集管401の孔への処理済み流体の排出を保証する。次に、ターブュライザ405の第1のシートを結果的に得られた螺旋巻き要素410の頂面又は上面408として配置する。ターブュライザ405の第2のシートを要素410の底面又は下面412として配置する。この向きの結果として、底面412の一部を当該技術分野において周知である技術を用いて収集管401に直接接触させてこれに取り付ける。
【0071】
本発明のこの実施形態の方法の最後のステップでは、1つ又は2つ以上の分離要素400を図9に示す形式の分離ユニット内に納める。ターブュライザ405は、多孔質ガーゼ状材料で作られている。ドレン404も又、多孔質ガーゼ状材料で作られている。多孔質ガーゼ状材料は、綿又はポリマーファブリック、例えばポリエステル布で作られたガーゼであるのが良い。
【0072】
図5A〜図5Dは、図6Dに示す分離要素を製造するよう組み合わされる個々のコンポーネントを示している。図5Aは、収集管510を有し、この収集管は、管50の上方部分の522に沿って位置する一連の等間隔を置いた上方孔520及び管510の下方部分530に沿って位置する下方孔525を有している。図5Bは、好ましくは上述した本発明の一実施形態の方法により多孔質トラックメンブレン445が多孔質基材550に積層されたメンブレンカード540を示している。図5Cは、排出布又はガーゼ560を示している。図5Dは、好ましくは排出布560に用いられた孔径よりも大きな孔径のガーゼで作られる。ターブュライザ570の下縁部に設けられたプロテクタ575が、以下に説明するようにターブュライザ570をメンブレンカード540に接着するタブとなる。プロテクタ575は、分離要素の製造中並びに濾過又は分離操作それ自体の間に、多孔質トラックメンブレン545とターブュライザ570の接触時に多孔質トラックメンブレン545が破断する恐れを無くす。この目的のためのプロテクタの使用法は、当該技術分野において知られている。
【0073】
図6A〜図6Cは、図6Dに示す分離要素600の好ましい実施形態を製造する際の3つの必要不可欠なステップを示している。分離要素600を製造するには、まず最初に4つのメンブレンカード540を図6Aに示すように収集管510の周囲に沿ってぐるりと取り付けて多孔質基材550が収集管510の方へ向き、多孔質トラックメンブレン545が、収集管510から外方に向くようにする。各メンブレンカード540を曲げ線607に沿って曲げてメンブレンカードがメンブレンカード540の一方の側に第1の突出部605を有すると共にその他方の側に第2の突出部610を有するようにする。メンブレンカード540の第1の突出部605と第2の突出部610との間の中央セクション615を以下に詳細に説明するように適当な接着剤により収集管510の一部に接合する。第1のメンブレンカード540の第1の突出部605を収集管510の上方部分522に沿って位置決めして曲げ線607が列状に等間隔を置いて位置する上方孔520の一方の側と平行になるようにする。第2のメンブレンカード540の第2の突出部610を管510の上方部分522に沿って位置決めして曲げ線607も又、列状に等間隔を置いて位置する孔520の他方の側と平行になるようにする。同様に、第3のメンブレンカード540の第1の突出部605を列状の下方孔525の一方の側に隣接して収集管510の下方部分530に沿って位置決めし、第4のメンブレンカード540の第2の突出部610を下方孔525の他方の側に隣接して収集管510の下方部分532に沿って位置決めする。ドレン560の4枚の別々のシートを第1の突出部600及び第2の突出部610の各々の多孔質基材550側相互間に差し挟む。
【0074】
多孔質基材550の各々を周囲に沿ってぐるりと押圧して図6Bに示すように接着部又はグルージョイント630を形成する。グルーを接着部630の各々に塗布し、グルーを接着部630に沿って中央セクション615を含むメンブレンカード540の多孔質基材550の表面の周囲周りにドリフトさせる。次に、第1の突出部600及び第2の突出部610の各々並びに中央セクション615及び収集管510を互いに押し合う。次に、グルーを各ターブュライザ570のプロテクタ575に塗布し、プロテクタの各々をメンブレンカード540の中央セクション615に押し付ける。これら作業に用いられるグルーの種類は、好ましくは、多孔質基材550を多孔質トラックメンブレン545に接着するために用いられたグルーの種類とは同一ではない。図6A〜図6Cに示すステップから結果的に得られる分離要素を適当なロール掛け機械により最終ステップにおいて丸めて図6Dに示すような分離ユニット600を製造する。
【0075】
分離ユニット400及び分離ユニット600の好ましい長さは、次の公式、即ち、
L=3/√(2k2/k1
によって求められ、上式において、Lは、前記メンブレンパッケージの長さ(メートル(m))であり、k1は、ドレンパラメータ(m3/hr・MPa)であり、k2は、メンブレンカードパラメータ(m3/hr・MPa・m2)である。
【0076】
本発明のメンブレン要素は、ドレンの少なくとも一部が収集管510の孔と流体連通状態にあるときに、収集管に作動的に取り付けられると考えられる。図6Dに示す実施形態では、上方ドレン635及び下方ドレン640は、直接列状に配置された上方孔520及び下方孔525上に心出しされて分離要素が分離システム内に納められたときに、処理済み流体がメンブレンカード540及びドレン635を通って収集管510の内部に至り、そして、図8と関連して以下に説明するように処理済み流体出口を通って出るようにする。
【0077】
3.多孔質メンブレンの細孔の最大サイズを求める方法
本発明の一実施形態は、上述した方法により回収された形式の多孔質メンブレンの構造的性質を制御することにある。かかるメンブレンは、化学業界、医療業界、電子業界、及びメンブレンの全てが正確に求められた所与の最大孔径を有することが重要な他の業界に広く用いられる。
【0078】
多孔質材料を研究する先行技術の方法は、多孔質メンブレンの表面からの液体の蒸発の際の最大流量と利用できる静水圧力差での流量の比較を利用している。これら先行技術の方法により、毛管の平均半径を計算することができる。これら方法を用いて得られた測定値は、間接的である。測定誤差は、多孔質本体の状態で左右される。大きな細孔が多孔質メンブレンに存在している場合、誤差は大きすぎることになる。かかる方法では、最大細孔直径の正確なサイズを求めることはできない。これについては、1976年5月8日に発行された公報番号29のソ連国発明者証第524110号MPK:G01N11/00を参照されたい。
【0079】
バブル方法を用いて細孔の最大サイズを求める方法が、GOST R50516−93「ポリマー・メンブレンズ.ア・メソッド・オブ・ディターミネーション・オブ・ザ・ポイント・オブ・ア・バブル・フォ・プレース・メンブレンス(Polymer Membranes. A Method Of Determination Of The Point Of A Bubble For Plane Membranes )」で教示されている。バブル方法では、薄い多孔質メンブレンを液体中に浸してこれが飽和し、次に、セル内にクランプされるようにする。セルを液体で満たして液体の表面が多孔質メンブレンの表面を完全に覆うようにする。ガスをメンブレンの下でセル中に送り込みながらガス圧力を連続的に測定する。最大孔径をガスの最初のバブルがメンブレンを通過する圧力で計算する。この方法は、単純であって且つ効果的であるが、その実際の使用法は、メンブレンの強度により制限される。具体的に説明すると、細孔が0.05〜0.5μmのオーダのメンブレンの最大孔径を求める際、メンブレンに加わる圧力差により、メンブレンを破壊する応力が生じる。基材を用いると、それにより測定結果が歪められる。この方法は、実際問題として、本発明のトラックメンブレンの最大孔径を求める方法ではない。というのは、それにより、試験中にこれらの破壊が生じるからである。
【0080】
本発明のこの実施形態の目的は、メンブレンの破壊を生じさせないで、最大孔径測定の効率を高めることにある。この実施形態のもう1つの目的は、これら測定を行うことができるメンブレン厚さの範囲を広げることにある。
【0081】
これら目的は、予備液体含浸多孔質トラックメンブレンをセル内に収納し、セルを液体で充填し、ガスをセルに供給し、そしてその圧力を測定することにより得られる。メンブレン付きでセルを容器内に配置する。セル及び容器を互いに油圧の作用で連結する。非破壊的圧力差を液体を容器からポンプで排出しているときにメンブレンに加える。セル内の液体と同一の組成を有する蒸気の形態をしたガスを容器に送る。容器内の蒸気圧を常時測定する。メンブレンに加わる圧力差が消えた圧力を記録する。この圧力をいったん記録すると、液体表面張力の値を求める。このデータを用いて最大メンブレン孔径の値をラプラスの公式を用いて計算する。メンブレンに加わる圧力差が圧力差を加えているときに液体をメンブレンからポンプで排出することにより最小限に抑えられるので、この方法の健全性が実現され、試験中に破損の結果としてメンブレンが損失することが最小限に抑えられる。
【0082】
具体的に言えば、メンブレンの最大細孔直径を求める計算は、次の通りである。同一の液体蒸気によりセルと共に液体を加圧することにより、メンブレン表面上への蒸気凝縮を生じさせる。そのようにする際、温度は上昇する。蒸気から液体含浸メンブレン表面に供給される熱が、凝縮により生じる。メンブレンから液体に排出される熱は、熱伝導により生じる。境界条件は、以下の方程式により定められる。
基準Bi=a・d/l
上式において、Biは、境界類似性の基準(基準Bio)であり、aは、対流による熱伝達係数、lは、熱伝導係数であり、dは、代表的なサイズ(セルの直径)である。
【0083】
Biは、無限大である傾向があるので(実際には、Bi>100)、メンブレン表面温度は、メンブレン上の蒸気温度に等しいであろう。これについては、ヴイ・エー・グロゴリフ(V. A. Grogoriev)及びヴイ・エム・ゾーリン(V. M. Zorin)編,「シアレティカル・ファンデーションズ・オブ・ヒート・エンジニアリング−ヒート−テクニカル・エクスペリメント(Theoretical Foundations Of Heat Engineering-Heat-Technical Experiment )」,ヴォーク2 モスコー(Book 2 Moscow),イエネルゴトミィッダ(Energoatomizdat)パブリッシング・ハウス(Publishing House),1988年,p.197〜198の参照図書を参照されたい。基準Biは、液体フレオン12を用いると、直径が50mmのセルについては1000に等しい。液体含浸メンブレン表面の温度をメンブレン上の蒸気圧で求めることができる。表面張力の値は、蒸気ブレークスルーがメンブレン下で生じるので液体加熱の結果として減少する。したがって、メンブレンに加わる圧力差は、ゼロになる。
【0084】
この方法は、メンブレンの目視検査を省いており、それにより、このバブル試験方法によるメンブレンの最大孔径の測定精度が増大する。この方法を用いると、細孔直径を求めている間にメンブレンを破壊しないでメンブレンの最大細孔直径を求めることができる。
【0085】
図7は、本発明のこの実施形態に従って多孔質メンブレンの最大孔径を求める好ましい試験装置700を示している。まず最初に、多孔質メンブレン701に液体を含浸させ、これを適当なホルダ705内に納め、そしてセル702内に配置する。多孔質メンブレン701を収容したセル702を密閉容器703内に納める。セル702の下方部分は、多孔質メンブレン701の下のキャビティを容器703に油圧的に結合する穴を有する。容器703を、セル702に完全に覆うレベルまで液体で充填する。次に、出口715を通って液体を容器703から徐々にポンプで送り出す。そのようにする際、含浸状態の多孔質メンブレン701は、毛管力の作用により液体を保持する。その結果、セル702内の液体レベルと容器703内の液体レベルの差が無くなり、このことは、差圧変換器704により記録される。液体のポンプ排出は、多孔質メンブレン701に加わる指定された圧力差に達すると停止する。同一の液体の蒸気を幾分過剰の圧力状態で多孔質メンブレン701の下の入口710を介して容器703に送り込む。増大している蒸気圧力は、圧力計720を用いて容器703内で連続的に測定される。液体の薄い層が、多孔質メンブレン701の表面上に現われる。この層の温度は、容器703内の圧力が増大すると増大する。凝縮による多孔質メンブレン701の表面への対流による熱伝達は、多孔質メンブレン701から液体への熱の放出よりも遙かに大きいので、多孔質メンブレン701の表面温度は、周囲蒸気温度に等しい値を取り、かかる表面温度を飽和蒸気の条件の方程式により容器703内の圧力として求めることができる。多孔質メンブレン701の温度が上昇すると、多孔質メンブレン701内の含浸液体の表面張力が減少する。或る時点において、多孔質メンブレン701に加わる圧力差は、多孔質メンブレン701の毛管保持能力を超える。この時点において、蒸気が、多孔質メンブレン701を突き破り(ブレークスルーし)、多孔質メンブレン701に加わる圧力差がゼロになる。多孔質メンブレン701に加わる圧力がゼロになったときの容器703内の圧力を記録する。その圧力に達すると、液体表面張力係数の値を飽和蒸気曲線に基づいて求め、ラプラスの公式を用いて最大孔径の値を計算する。
【0086】
上述の試験方法を実証するため以下の実施例を実施した。
【0087】
実施例5
フレオン12を動作流体として用いて、フルオロポリマーメンブレン601の最大孔径を測定した。7.5kPaの圧力差を容器703内で5.4バールの初期圧力で多孔質メンブレン601に対して維持した。圧力差は、容器703内で最高7.52バールまでのフレオン圧力増大時に消えた。表面張力係数の値は、この圧力に基づいて7.5×103N/mに等しかった。次のラプラスの公式を用いて細孔直径の最大サイズを計算するとd=1.0μmであった。
d=4σ/P
上式において、dは、細孔直径(単位:m)であり、σは、液体の表面張力(単位:N/m)であり、Pは、圧力(単位:Pa)である。
この計算において、メンブレンに対する接触角のコサインは、1に等しかったことは言うまでもない。
【0088】
4.流体からの物質の分離のための分離システム
図8は、物体を源流体から一層効果的に分離する本発明の別の実施形態を表した分離システム800を示している。分離システム800では、これら物質は、図9に示す形式の分離ユニット801内に設けられた分離要素に付着し、付着した物質は、処分のために処理済み流体中に定期的に逆洗(バックフラッシュ)される。
【0089】
システム800は、供給ライン805を介して源流体を供給するポンプ802と、第1の弁820、好ましくはトリガ弁と、フィルタ要素又はメンブレン要素830を収容した分離ユニット801への入口825とを有している。第1の弁820を通る源流体の圧力を測定するために第1の圧力計835が、入口825に作動的に連結されている。油圧アキュムレータ838が、少なくとも1つの処理済み流体出口840と流体連通状態にある。処理済み流体は、分離要素830、例えば、本発明の一実施形態に従って製造された分離要素(しかしながらこれには限定されない)を通過した流体である。油圧アキュムレータ838に流れる処理済み流体の圧力を測定するために第2の圧力計842が、処理済み流体出口840に作動的に連結されている。第2の弁848が、少なくとも1つの未処理流体出口850に連結された未処理流体ライン849に配置されている。第3の弁855が、処理済み流体出口840に連結された処理済み流体ライン858に配置されている。バイパスライン860が、源流体供給ライン805と未処理流体ライン849との間に延びている。第4の弁865が、供給ライン805内の源流体への未処理流体のリサイクル量を調節するためにバイパスライン860に配置されている。
【0090】
分離システム800では、供給ライン805内の源流体は、ポンプ802によりトリガ弁820を介して源流体入口825に供給される。分離要素830を収容した分離ユニット801内に送り込まれた源流体の一部分は、処理済み流体出口840を介して処理済み流体として取り出される。処理済み流体の一部分は、油圧アキュムレータ838の充填を開始し、処理済み流体の他の部分は、処理済み流体ライン858及び弁855を介してエンドユーザのための貯蔵容器(図示せず)に差し向けられる。分離ユニット801内に送り込まれた源流体の他の部分は、送り出しのために未処理流体出口850、ライン849、及び弁848を介して未処理流体として取り出される。変形例として、或る特定の条件下においては、バイパスライン860及び弁865を介して未処理流体を第2のパススルー分離ユニット801のための供給ライン805に再循環させる。処理済み流体及び未処理流体の流量及び圧力は、それぞれ、弁855,848及び圧力計842,868により制御される。バイパス調整弁865は、ポンプ802をその設定パラメータの範囲内で作動させるよう設定されている。
【0091】
油圧アキュムレータ838が次第に満杯になるにつれ、処理済み流体の圧力は、圧力調整器842により指示されるように増大する。油圧アキュムレータ838が満杯になったことを指示する指定された圧力に達すると、圧力変換器875の処理済み流体セクション870が、分離システム800に信号を送って分離ユニット801の逆洗を実施する。指定圧力の値は、分離ユニット801の設計で決まる。
【0092】
圧力の増大の理由は、当業者には明らかである。というのは、源流体に含まれている懸濁状態の物質を除去するための分離ユニット801の作動中、これら物質は、処理ユニット801内の分離要素830により保持されるからである。圧力は、変換器875の未処理流体セクション878について検出される。システム設計及び濾過方式により定められた指定圧力に達すると、変換器875の未処理流体セクション878は、信号を送って第5の弁880を開き、この第5の弁は、変換器875に作動的に連結された電気弁である。これは、分離システム800を作動モードからフラッシングモードに移す圧力変換器875により送られた信号である。
【0093】
フラッシングモードでは、未処理流体パイプ849内の圧力は、処理済み流体パイプ858内の圧力よりも低くなり、源流体入口825を通る源流体の流れが止められる。アキュムレータ838内の処理済み流体は、処理済み流体出口840からシステム801のフィルタ要素830を通って戻り、保持状態の物質を洗い流す。圧力差により、除去した物質を収容した油圧アキュムレータ838からの処理済み流体は、未処理流体パイプ805、バイパスライン860、弁865、ライン885、及び第5の弁880、即ち、変換器875に作動的に連結された電気弁を介してシステムから捨てられる。
【0094】
分離システム800のフラッシング動作中、処理済み流体の流体圧力は、分離ユニット801の設計により定められた所定の値まで下がる。この圧力降下は、圧力調整器842によって測定され、変換器875の処理済み流体セクション870により記録される。この所定値では、変換器875は、信号を送って処理済み流体セクション870からの信号により電気弁880を閉じる。弁880を閉じると、逆洗動作が終了し、分離システム800の動作モードが再び確立される。
【0095】
本発明の分離システムは、分離時における処理済み流体の歩留まりの増加により効率を向上させ、フラッシング中における差圧の増大によりシステムの分離要素の寿命を延ばすことにより先行技術のシステムの欠点を解決している。
【0096】
実施例6
上述の説明に係る分離システムは、分離要素830が設けられた動作ユニット801を有しており、かかる分離システムを用いて10mg/lに等しい懸濁物質の濃度を有する標準水溶液を濾過した。濾過操作後、このシステムに0.07MPaまでの漸増する圧力差でフラッシングを施した。フラッシング相互間の時間は、平均で7分間であった。500l/hの流量で動作する分離システムの効率は、処理済み流体の10%がフラッシングステップで消費されるようなものであった。
【0097】
本発明の種々の実施形態のメンブレンカード、メンブレンパッケージ、分離要素、分離ユニット、及び分離システムの用途としては、(a)工業用水及び廃水の処理、再生、再循環、及び再使用、(b)海水の脱塩、(c)多種多様な液体工業薬品の液体分離、(d)原油、天然ガス、凝縮液、及び精製石油製品からの硫黄及びメルカプタンの除去のためのメンブレン利用分離技術が挙げられる。
【0098】
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者であれば、種々の他の用途に適合するよう本発明の種々の実施形態の各々に種々の変更及び改造を施すことができる。したがって、これら変更及び改造は、特許請求の範囲に記載された本発明の均等例の全範囲に適法且つ公正に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】分離ユニットに有用な分離要素を製造するための本発明の方法の一実施形態の単純化されたブロック流れ図である。
【図2A】図1に示された方法のポリマーフィルムの切断ストリップのエッチングステップに用いられた代表的なカセットの左側斜視図である。
【図2B】図2Aに示されたカセットの内部の断面側面図である。
【図3】分離ユニットに有用なメンブレン要素の製造のための本発明の方法の別の実施形態の単純化されたブロック流れ図である。
【図4】代表的な螺旋巻き分離要素の左側斜視図である。
【図5A】図4及び図6Dに示された分離要素の収集管の左側斜視図である。
【図5B】図6Dに示された分離要素の多孔質基材に積層された多孔質トラックメンブレンを有するメンブレンカードの左側斜視図である。
【図5C】図4及び図6Dに示された分離要素のドレンの左側斜視図である。
【図5D】図4及び図6Dに示された分離要素のターブュライザの左側斜視図である。
【図6A】4つのメンブレンカードが図5Aに示された形式の収集管に取り付けられた分離要素を製造するための本発明の方法の一実施形態の第1ステップ後における左側斜視図である。
【図6B】ドレンの4枚のシートが4つの舌状メンブレンパッケージを形成するためにメンブレンカードの各々相互間に接合された分離要素を製造するための本発明の方法の上述の実施形態の第2ステップ後における左側斜視図である。
【図6C】ターブュライザの4枚のシートが、舌状メンブレンパッケージの各々相互間に接合された分離要素を製造するための本発明の方法の上述の実施形態の第3ステップ後における左側斜視図である。
【図6D】本発明の一実施形態に従って製造された最終の分離要素の左側斜視図である。
【図7】本発明の別の実施形態に従って多孔質トラックメンブレンの最大孔径を求めるための検査装置の好ましい実施形態の略図である。
【図8】本発明の更に別の実施形態の分離システムの好ましい実施形態のプロセス流れ図である。
【図9】本発明の一実施形態の分離要素を収容した代表的な分離システムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体からの物質の分離に有用なメンブレンカードを製造する方法であって、
a)ポリマーフィルムに重イオンのボンバードを及ぼして前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)エッチング溶液により細孔を前記結果的に得られたトラック付きフィルムにエッチングして前記フィルムに前記トラック密度に対応した前記細孔の密度を与えるステップと、c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンを接着剤により多孔質基材に積層するステップと、
d)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記重イオンは、クリプトン、アルゴン、キセノン、ビスマス、及びこれらの組合せから成るイオン群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記トラック密度は、約107cm-2〜約109cm-2である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記細孔の孔径は、約0.01〜約1μmである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記エッチング溶液は、アルカリ性溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーフィルムは、フルオロポリマーフィルムである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマーフィルムは、ポリ弗化ビニリデンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ性溶液は、過マンガン酸カリウムのアルカリ性溶液である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ性溶液は、アルカリ金属の塩を更に含有し、前記アルカリ金属の塩は、前記結果的に得られたアルカリ金属含有溶液の沸点を100℃を超える温度に上げるのに十分な濃度のものである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記エッチングは、約100℃〜約150℃の温度で行われる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記エッチング溶液は、約100〜約500のレイノルズ数を生じさせる流量で前記トラック付きフィルムと接触状態で通される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記エッチングは、約1時間〜約24時間の期間にわたり実施される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
少なくとも前記温度、前記流量、及び前記時間は、前記エッチングステップが1℃以下のエッチング溶液の過熱状態で行われるよう制御される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属塩は、塩化ナトリウムである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記接着剤は、約1〜約30gm/m2の濃度で前記基材の一方の表面上に吹き付けられ、前記多孔質トラックメンブレンは、前記多孔質基材に積層される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記接着剤は、1平方インチ(6.45cm2)当たり約1〜約20個の小滴状接着剤の濃度で前記基材の前記一方の表面に塗布され、前記多孔質トラックメンブレンは、前記多孔質基材に積層される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記メンブレンカードは、流体収集管に螺旋に巻き付けられて分離ユニットを形成し、それにより前記分離ユニットが分離システム内に設けられる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
複数の前記メンブレンカードが、分離要素中に形成され、(a)前記メンブレンカードは各々、半分に折り畳まれ、前記多孔質基材は、前記折り畳み部の外部に向くと共に前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を有し、(b)少なくとも2つのメンブレンカードが、曲げ線に沿って曲げられて前記メンブレンカードの各々に外方突出部を露出させ、前記突出部は、前記メンブレンカードの前記曲げ線が前記収集管に設けられた孔に隣接して位置するように配置され、(c)前記外方突出部の各々の前記露出多孔質基材相互間にドレンが配置され、(d)接着剤が前記接着部及び各メンブレンカードの前記曲げ線に沿って被着されて前記ドレンを前記メンブレンカードに接合して前記分離要素のための複数のメンブレンパッケージを形成する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
複数の前記メンブレンカードが分離要素中に形成され、(a)前記メンブレンカードは各々、前記メンブレンカードの各々に突出部を形成すると共に前記突出部の各々相互間に中央セクションを形成するよう曲げられ、前記多孔質基材は、前記曲げ部の外方に向くと共に前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を有し、(b)前記中央セクションは各々、前記流体収集管に押し付けられて前記突出部が各々、前記曲げ線から外方に延びるようにし、(c)前記突出部の各々の前記多孔質基材相互間にドレンが差し挟まれ、(d)接着剤が前記接着部及び前記曲げ線に沿って被着されて前記ドレンを前記メンブレンカードの各々に接合して前記分離要素のための前記メンブレンパッケージを形成する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
多孔質ガーゼ状材料のターブュライザ(turbulizer)のシートが、前記有孔収集管から外方に突き出るよう取り付けられている、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記多孔質ガーゼ状材料は、前記ドレン及び前記ターブュライザに用いられたものと同一である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記多孔質ガーゼ状材料は、前記ドレン及び前記ターブュライザに使用される互いに異なる性質を有する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
流体からの物質の分離に有用な分離システムの製造方法であって、
a)フルオロポリマーフィルムに重イオンのボンバードを与えて前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)前記結果的に得られたトラック付きフィルムを複数の別々のセクションに切断するステップと、
c)エッチング溶液で前記トラック付きフィルムの前記セクションをエッチングして前記フィルムの前記セクションに前記トラック密度に対応した細孔密度を与えるステップと、
d)前記多孔質トラックメンブレンの前記結果的に得られたセクションを接着剤によって多孔質基材に積層するステップと、
e)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップと、
f)前記メンブレンカードの前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を形成するステップと、
g)前記メンブレンカードの各々を別のメンブレンカードに隣接するよう曲げ線に沿って曲げて突出部及び前記突出部の各々相互間に中央セクションを形成して前記多孔質基材が外方に向くようにするステップと、
h)前記メンブレンカードの前記各々の中央セクションを流体収集管に押し付けて前記突出部の各々が前記収集管から外方に延びると共に前記収集管に押し付けられた前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記曲げ線がその孔に隣接して位置するようにするステップと、
i)複数の前記メンブレンカードの各々の前記外方突出部の各々の前記多孔質基材相互間に多孔質ガーゼ状ドレンを差し挟んで少なくとも1つのドレンが前記収集管の前記孔と接触状態になるようにするステップと、
j)前記メンブレンカードの各々の前記接着部に沿って接着剤を被着させて前記ドレンを前記メンブレンカードに接合すると共に前記メンブレンパッケージを前記収集管に接合するステップと、
k)少なくともターブュライザ(turbulizer)のシートを前記メンブレンカードの各々の前記中央セクションに且つ前記突出部相互間に取り付けて前記分離要素の前記ターブュライザが前記流体収集管から外方に突き出るようにするステップと、
l)前記流体収集管に作動的に取り付けられた複数の前記結果的に得られたメンブレンパッケージを収容した分離システムを製造するステップとを有する、方法。
【請求項24】
前記重イオンは、クリプトン、アルゴン、キセノン、ビスマス、及びこれらの組合せから成るイオン群から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記トラック密度は、約107cm-2〜約109cm-2である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記細孔の孔径は、約0.01〜約1μmである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記エッチング溶液は、アルカリ性溶液である、請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記フルオロポリマーフィルムは、ポリ弗化ビニリデンである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記アルカリ性溶液は、過マンガン酸カリウムのアルカリ性溶液である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記アルカリ性溶液は、アルカリ金属の塩を更に含有し、前記アルカリ金属の塩は、前記結果的に得られたアルカリ金属含有溶液の沸点を100℃を超える温度に上げるのに十分な濃度のものである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記エッチングは、約100℃〜約150℃の温度で行われる、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記エッチング溶液は、約100〜約500のレイノルズ数を生じさせる流量で前記トラック付きフィルムと接触状態で通される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記エッチングは、約1時間〜約24時間の期間にわたり実施される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
少なくとも前記温度、前記流量、及び前記時間は、前記エッチングステップが1℃以下のエッチング溶液の過熱状態で行われるよう制御される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記アルカリ金属塩は、塩化ナトリウムである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
切断されたトラック付きフィルムの前記セクションは、前記フィルムの一端部を複数の固定支持体のうちの1つに固定し、前記フィルムの自由端部を前記固定支持体の残部の周りに伸長させ、前記自由端部を回転支持体に固定し、前記回転支持体を回転させてエッチング前に前記フィルムの予備延伸を行うことにより前記ステップ(c)を実施するようカセット内に配置される、請求項23記載の方法。
【請求項37】
前記カセットは、前記エッチング溶液中に配置される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記接着剤は、約1〜約30gm/m2の濃度で前記基材の一方の表面上に吹き付けられ、前記多孔質トラックメンブレンは、前記多孔質基材に積層される、請求項23記載の方法。
【請求項39】
前記接着剤は、1平方インチ(6.45cm2)当たり約1〜約20個の小滴状接着剤の濃度で前記基材の前記一方の表面に塗布され、前記多孔質トラックメンブレンは、前記多孔質基材に積層される、請求項23記載の方法。
【請求項40】
流体からの物質の分離に有用な分離システムの製造方法であって、
a)ポリマーフィルムの連続ロールに重イオンのボンバードを及ぼして前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)前記ロールがエッチング溶液を通過するときに前記トラック付きフィルム前記連続ロールをエッチングして前記フィルムのセクションに前記トラック密度に対応した細孔の密度を与えるステップと、
c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンのロールを接着剤により多孔質基材のロールに積層するステップと、
d)基材付きの多孔質トラックメンブレンの前記連続ロールを複数のメンブレンカードに切断するステップと、
e)前記メンブレンカードの前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を形成するステップと、
f)隣り合う前記メンブレンカードをそれぞれの曲げ線に沿って曲げて突出部及び前記突出部の各々相互間の中央セクションを形成して多孔質基材が外方に向くようにするステップと、
g)前記メンブレンカードの各々の前記中央セクションを流体収集管に押し付けて前記突出部が各々前記収集管から外方に延びると共に前記収集管に押し付けられた前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記曲げ線が、その孔に隣接して位置するようにするステップと、
h)多孔質ガーゼ状ドレンを複数の前記メンブレンカードの各々の前記外方突出部の各々の前記多孔質基材相互間に差し挟んで少なくとも1つのドレンが前記収集管の前記孔と接触状態になるようにするステップと、
i)各メンブレンカードの前記接着部に沿って接着剤を被着させて前記ドレンを前記メンブレンカード及び前記収集管に接合するステップと、
j)少なくとも多孔質ガーゼ状材料のターブュライザ(turbulizer)のシートを前記中央セクションの各々の前記多孔質メンブレン表面に且つ前記突出部相互間で取り付けて前記ターブュライザが、前記有孔流体収集管から外方に突き出るようにするステップと、
k)前記流体収集管に作動的に取り付けられた複数のメンブレンカードを有する分離システムを製造するステップとを有する、方法。
【請求項41】
流体からの物質の分離に有用なメンブレンカードを製造する方法であって、
a)フルオロポリマーフィルムに重イオンのボンバードを与えて前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)エッチング溶液により細孔を前記結果的に得られたトラック付きフィルムにエッチングして前記フィルムに前記トラック密度に対応した前記細孔の密度を与えるステップと、
c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンの前記細孔の最大直径を求めるステップと、所望の前記最大孔径を備えた前記多孔質トラックメンブレンを接着剤により多孔質基材に積層するステップと、
d)多孔質基材を有すると共に指定されたパラメータを備えたメンブレンカードを製造するステップとを有する、方法。
【請求項42】
前記ステップ(c)は、
a)液体含浸メンブレンをセル内に設けるステップと、
b)前記セルを液体で充填するステップと、
c)ガスを前記セル中に送り込むステップと、
d)前記セルに加わる差圧を測定するステップと、
e)前記セルを密閉容器内に配置して前記セルと前記密閉容器が流体連通状態になるようにするステップと、
f)非破壊圧力差を前記メンブレンに及ぼすと同時に液体を前記密閉容器からポンプで排出するステップと、
g)前記液体と同一の組成を有するガスを容器からの前記液体の取り出しにより作られた前記容器内の前記結果的に得られたキャビティに送るステップと、
h)前記メンブレンの表面に加わる圧力及び圧力差を連続的に測定するステップと、
i)前記メンブレンに作用する前記圧力差が無くなる前記メンブレンの前記表面に対する圧力を記録するステップと、
j)前記ステップi)で記録した前記圧力状態における液体表面張力係数の値を求めるステップと、
k)ラプラスの公式に基づいて前記最大細孔の値を計算するステップとを有する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
メンブレン細孔の最大直径を求める方法であって、
a)液体含浸メンブレンをセル内に設けるステップと、
b)前記セルを液体で充填するステップと、
c)ガスを前記セル中に送り込むステップと、
d)前記セルの圧力を測定するステップと、
e)前記セルを密閉容器内に配置して前記セルと前記密閉容器が流体連通状態になるようにするステップと、
f)非破壊圧力差を前記メンブレンに及ぼすと同時に液体を前記密閉容器からポンプで排出するステップと、
g)前記液体と同一の組成を有するガスを容器からの前記液体の取り出しにより作られた前記容器内の前記結果的に得られたキャビティに送るステップと、
h)前記メンブレンの表面に加わる圧力及び圧力差を連続的に測定するステップと、
i)前記メンブレンに作用する前記圧力差が無くなる前記メンブレンの前記表面に対する圧力を記録するステップと、
j)前記ステップi)で記録した前記圧力状態における液体表面張力係数の値を求めるステップと、
k)ラプラスの公式に基づいて前記最大細孔の値を計算するステップとを有する、方法。
【請求項44】
流体からの物質の分離方法であって、
a)ポリマーフィルムに重イオンのボンバードを及ぼして前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)エッチング溶液により細孔を前記結果的に得られたトラック付きフィルムにエッチングして前記フィルムに前記トラック密度に対応した前記細孔の密度を与えるステップと、c)前記結果的に得られた多孔質トラックメンブレンを接着剤により多孔質基材に積層するステップと、
d)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップと、
e)前記メンブレンカードを分離ユニット内に収納するステップとを有する、方法。
【請求項45】
前記分離ユニットは、少なくとも1つの源流体入口、少なくとも1つの処理済み流体出口、及び少なくとも1つの未処理流体出口を有する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記分離ユニットは、前記処理済み流体出口の圧力と前記未処理流体出口の圧力差に基づいて所定時間後、前記分離ユニットを処理モードから逆洗モードに変更する手段を有する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記手段は、変換器により構成される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記変換器は、前記処理済み流体出口の前記圧力の読みの信号を受け取る第1のセクションと、前記未処理流体出口の前記圧力の読みの信号を受け取り、前記処理済み流体出口の圧力と前記未処理流体出口の圧力の圧力差を記録し、前記結果的に得られた圧力差に応答して信号を送って前記分離ユニットを処理モードから逆洗モードに変更する第2のセクションとを有する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記処理済み流体出口の圧力は、前記未処理流体出口の前記圧力を超えて、前記源流体中に懸濁している物質の増加が、前記変換器により記録された前記圧力差を増大させるので所定レベルまで増大し、それにより前記分離ユニットを前記逆洗モードに変更する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記処理済み流体出口と流体連通状態にある油圧アキュムレータが、前記処理モード中、前記処理済み流体の一部分をサイホン作用で吸い出して前記逆洗モード中、必要な前記処理済み流体を提供するよう設計されている、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記処理モードは、次のステップ、即ち、
a)前記源流体入口を通って源流体を前記分離ユニットに供給するステップと、
b)前記源流体の一部を前記メンブレンカード中に通すステップと、
c)前記処理済み流体を前記処理済み流体出口を通って取り出すステップと、
d)前記処理済み流体出口を通って未処理状態の前記源流体の他の部分を取り出すステップと、
e)前記処理済み流体出口の圧力及び前記未処理流体出口の圧力を連続的に測定するステップと、
f)前記処理済み流体出口と前記未処理流体出口の圧力差を連続的に測定するステップと、
g)前記変換器が、前記システムを前記逆洗モードに変更するまで前記処理モードを続行させるステップとを有する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記逆洗モードは、次のステップ、即ち、
a)前記源流体入口を通る源流体の流れを止めて前記処理モードを終了させるステップと、
b)前記未処理流体出口を通る前記未処理流体の流れを止めるステップと、
c)前記処理済み流体の通常の流れを逆にすることにより前記処理済み流体を前記油圧アキュムレータから再循環させ、前記処理済み流体出口を通して前記分離ユニット内に戻すステップと、
d)前記処理済み流体を前記分離ユニット内の前記メンブレンカードに通して逆洗させるステップと、
e)前記逆洗した処理済み流体を前記源流体入口を通って取り出すステップと、
f)バイパスラインを介して前記逆洗処理済み流体を前記未処理流体出口に至らせるステップと、
g)前記処理済み流体出口及び前記未処理流体出口の圧力を連続的に測定するステップと、
h)前記処理済み流体出口と前記未処理流体出口の圧力差を連続的に測定するステップと、
i)前記変換器が前記分離ユニットを前記処理モードに変更するまで前記逆洗モードを続行するステップとを有する、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記処理済み流体出口の圧力は、逆洗操作における前記メンブレンカードから未処理流体中への物質の取り出しが前記変換器により記録された圧力差を減少させるので、減少して前記分離ユニットを前記処理モードに変更する、請求項52記載の方法。
【請求項54】
流体からの物質の分離のための分離システムであって、
a)少なくとも1つの源流体入口、少なくとも1つの処理済み流体出口、及び少なくとも1つの未処理流体出口を備えた分離要素を収容している分離ユニットと、
b)前記源流体入口を通って源流体を供給するポンプと、
c)前記源流体出口に設けられた第1の弁と、
d)前記源流体入口に設けられていて、前記第1の弁を通って流れる前記源流体の圧力を測定する第1の圧力計と、
e)前記処理済み流体出口と流体連通状態にある油圧アキュムレータと、
f)前記処理済み流体出口に設けられていて、前記油圧アキュムレータに流れる前記処理済み流体の圧力を測定する第2の圧力計と、
g)前記未処理流体出口に設けられた第2の弁と、
h)前記処理済み流体出口に設けられた第3の弁と、
i)前記源流体入口と前記未処理流体出口との間に位置する第1のバイパスラインと、
j)前記第1のバイパスラインに設けられた第4の弁と、
k)前記未処理流体出口と前記第4の弁との間に連結された第2のバイパスラインと、
l)前記第2のバイパスラインに設けられた第5の弁と、
m)前記処理済み流体出口の前記第2の圧力計の圧力の読みの信号を受け取る第1のセクション及び前記未処理流体出口の前記第1の圧力計の圧力の読みの信号を受け取り、前記処理済み流体出口の圧力と前記未処理流体圧力出口の圧力の圧力差を記録し、前記結果的に得られた圧力差に応答して信号を前記第5の弁に送って前記処理モード及び前記逆洗モードのために前記第1の弁及び前記第5の弁のそれぞれの開閉を制御する第2のセクションを備えた変換器とを有する、分離システム。
【請求項55】
流体からの物質の分離方法であって、
a)フルオロポリマーフィルムに重イオンのボンバードを与えて前記フィルムにトラック密度を与えるステップと、
b)前記結果的に得られたトラック付きフィルムを複数の別々のセクションに切断するステップと、
c)エッチング溶液で前記トラック付きフィルムの前記セクションをエッチングして前記フィルムの前記セクションに前記トラック密度に対応した細孔密度を与えるステップと、
d)前記多孔質トラックメンブレンの前記結果的に得られたセクションを接着剤によって多孔質基材に積層するステップと、
e)指定されたパラメータを備えるメンブレンカードを製造するステップと、
f)前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記多孔質基材の周囲に沿ってぐるりと接着部を形成するステップと、
g)前記メンブレンカードの各々を別のメンブレンカードに隣接するよう曲げ線に沿って曲げて突出部及び前記突出部の各々相互間に中央セクションを形成して前記多孔質基材が外方に向くようにするステップと、
h)前記メンブレンカードの前記各々の中央セクションを流体収集管に押し付けて前記突出部の各々が前記収集管から外方に延びると共に前記収集管に押し付けられた前記メンブレンカードのうちの少なくとも2つの前記曲げ線がその孔に隣接して位置するようにするステップと、
i)複数の前記メンブレンカードの各々の前記外方突出部の各々の前記多孔質基材相互間に多孔質ガーゼ状ドレンを差し挟んで少なくとも1つのドレンが前記収集管の前記孔と接触状態になるようにするステップと、
j)前記メンブレンカードの各々の前記接着部に沿って接着剤を被着させて前記ドレンを前記メンブレンカードに接合すると共に前記メンブレンパッケージを前記収集管に接合するステップと、
k)少なくともターブュライザ(turbulizer)のシートを前記メンブレンカードの各々の前記中央セクションに且つ前記突出部相互間に取り付けて前記分離要素の前記ターブュライザが前記流体収集管から外方に突き出るようにするステップと、
l)前記流体収集管に作動的に取り付けられた複数のメンブレンパッケージを収容した分離ユニットを製造するステップと、
m)分離システムを組み立てるステップとを有する、方法。
【請求項56】
前記分離システムは、少なくとも1つの源流体入口、少なくとも1つの処理済み流体出口、及び少なくとも1つの未処理流体出口を有する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記分離システムは、前記処理済み流体出口の圧力と前記未処理流体出口の圧力の圧力差に基づいて所定時間後、処理モードから逆洗モードに変更する調整手段を有する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記調整手段は、変換器である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記変換器は、前記処理済み流体出口の前記圧力の読みの信号を受け取る第1のセクションと、前記未処理流体出口の前記圧力の読みの信号を受け取り、前記処理済み流体出口の圧力と前記未処理流体出口の圧力の圧力差を記録し、前記結果的に得られた圧力差に応答して信号を送って前記分離ユニットを処理モードから逆洗モードに変更する第2のセクションとを有する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記処理済み流体出口の圧力は、前記未処理流体出口の前記圧力を超えて、前記源流体中に懸濁している物質の増加により所定レベルまで増大使、その結果、前記変換器により記録される前記圧力差が増大し、それにより前記処理モードから前記逆洗モードへの変更が生じる、請求項48記載の方法。
【請求項61】
前記処理済み流体出口と流体連通状態にある油圧アキュムレータが、前記処理モード中、前記処理済み流体の一部分をサイホン作用で吸い出して前記逆洗モード中、必要な前記処理済み流体を提供するよう設計されている、請求項49記載の方法。
【請求項62】
前記処理モードは、次のステップ、即ち、
a)前記源流体入口を通って源流体を前記分離ユニットに供給するステップと、
b)前記源流体の一部を前記メンブレンカード中に通すステップと、
c)前記処理済み流体を前記処理済み流体出口を通って取り出すステップと、
d)前記処理済み流体出口を通って未処理状態の前記源流体の他の部分を取り出すステップと、
e)前記処理済み流体出口の圧力及び前記未処理流体出口の圧力を連続的に測定するステップと、
f)前記処理済み流体出口と前記未処理流体出口の圧力差を連続的に測定するステップと、
g)前記変換器が、前記システムを前記逆洗モードに変更するまで前記処理モードを続行させるステップとを有する、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記逆洗モードは、次のステップ、即ち、
a)前記源流体入口を通る源流体の流れを止めて前記処理モードを終了させるステップと、
b)前記未処理流体出口を通る前記未処理流体の流れを止めるステップと、
c)前記処理済み流体の通常の流れを逆にすることにより前記処理済み流体を前記油圧アキュムレータから再循環させ、前記処理済み流体出口を通して前記分離ユニット内に戻すステップと、
d)前記処理済み流体を前記分離ユニット内の前記メンブレンカードに通して逆洗させるステップと、
e)前記逆洗した処理済み流体を前記源流体入口を通って取り出すステップと、
f)バイパスラインを介して前記逆洗処理済み流体を前記未処理流体出口に至らせるステップと、
g)前記処理済み流体出口及び前記未処理流体出口の圧力を連続的に測定するステップと、
h)前記処理済み流体出口と前記未処理流体出口の圧力差を連続的に測定するステップと、
i)前記変換器が前記分離ユニットを前記処理モードに変更するまで前記逆洗モードを続行するステップとを有する、請求項61記載の方法。
【請求項64】
前記処理済み流体出口の圧力は、前記逆洗を行う処理済み流体への前記メンブレンカードからの物質の取り出しの結果として前記変換器により記録された圧力差が減少するので、減少して前記分離ユニットを前記処理モードに変更する、請求項63記載の方法。
【請求項65】
流体からの物質の分離のための分離ユニットであって、少なくとも1つのメンブレンパッケージを形成するメンブレンカード及びドレンと、収集管に螺旋に巻き付けられて処理済み流体が前記ドレンを通って集められるようにする少なくとも1つのターブュライザ(turbulizer)とを有し、前記メンブレンパッケージは、それ自体折り畳まれたメンブレンカード及び前記メンブレンカードの前記2つの半部の多孔質基材表面相互間に差し挟まれたドレンを有し、前記メンブレンパッケージは、次の公式、即ち、
L=3/√(2k2/k1
によって求められた長さを有し、上式において、Lは、前記メンブレンパッケージの長さ(メートル(m))であり、k1は、ドレンパラメータ(m3/hr・MPa)であり、k2は、メンブレンカードパラメータ(m3/hr・MPa・m2)である、分離ユニット。
【請求項66】
前記メンブレンカードは、多孔質基材で裏打ちされたトラックメンブレンである、請求項65記載の分離ユニット。
【請求項67】
前記メンブレンパッケージの前記長さは、次の公式、即ち、
L=3/√(2k2/k1
によって求められ、上式において、Lは、前記メンブレンパッケージの長さ(メートル(m))であり、k1は、ドレンパラメータ(m3/hr・MPa)であり、k2は、メンブレンカードパラメータ(m3/hr・MPa・m2)である、請求項23記載の方法。
【請求項68】
複数の前記メンブレンカードが分離要素中に形成され、前記分離要素において、(a)多孔質ガーゼ状材料で作られたターブュライザの第1のシートが、前記パッケージのトップシートを形成するために用いられ、(b)ガーゼ状材料で作られたドレンのシートが、前記メンブレンカードの上側シート及び下側シートの前記多孔質基材相互間に差し挟まれ、前記処理済み流体が前記ドレンを通って集められるようになり、(c)前記ターブュライザの第2のシートが、前記パッケージのボトムシートを形成するために用いられる、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2A−2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−5D】
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【図6A−6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−525180(P2008−525180A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548124(P2007−548124)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/RU2004/000515
【国際公開番号】WO2006/075926
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507210199)ドレセル プライヴェイト リミテッド (2)
【Fターム(参考)】