説明

メーキャップ方法、およびそれに用いるファンデーションおよび化粧下地

【課題】 肌上の瑕疵の隠蔽を図りつつ、優れた透明感を実現できるメーキャップ方法を提供する。
【解決手段】 (A)化粧下地を皮膚に塗布し、(B)ファンデーションを皮膚に塗布するメーキャップ方法において、
(A)の彩度Cは3.5以上、(B)の彩度Cは4.9〜5.9であって、
(A)および(B)を1:1で混合した時の組成物中、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることを特徴とするメーキャップ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメーキャップ方法に関し、特に透明性および凹凸隠蔽度に優れる肌を実現することのできるメーキャップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に化粧の際には、化粧水、乳液などにより肌のケアを行った後、肌の色調を整えるファンデーションなどを塗布し、さらに頬紅などのポイントメークを行う。
この際、ファンデーションには皮膚上の各種瑕疵、例えばシミやソバカス、あるいは凹凸などを目立たなくするため、高い隠蔽力が要求される。
このため、屈折率が高く、隠蔽力の高い顔料級二酸化チタンや酸化亜鉛が大量に配合されることがある。
【0003】
一方、隠蔽力を二酸化チタンあるいは酸化亜鉛の高屈折率粉体に依存した場合、可視光領域での光の散乱を生じ、肌の外観はいわゆる「白浮き」を生じる。そこで、通常は前記二酸化チタンなどと併せて黒酸化鉄などを配合し、白浮きの抑制を図っている。
しかしながら、このようなファンデーションによれば、隠蔽力が高い為、肌上の瑕疵は隠蔽されるもの、肌特有の透明感を失い、不自然なマット感を生じさせ、しかも肌の凹凸をむしろ目立たせてしまうこともある。
【0004】
近年、光学的特性を利用し彩度を調整することにより、凹凸隠蔽のみならず透明性も実現したファンデーションが知られている(特許文献1)。
しかし、前記ファンデーションは、肌に塗布した際の色調には優れているものの、そのものの外観色の彩度が高いため、使用者が使用する際に違和感を感じる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−285429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は、メーキャップ化粧料は自然な外観色を有しながら、肌上の瑕疵を隠蔽でき、優れた透明感も実現できるメーキャップ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが前述の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、メーキャップ方法において、特定の彩度を有する化粧下地に特定の彩度を有するファンデーションを組み合わせ、さらに顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄を調整することにより、透明性および凹凸隠蔽度に優れる肌を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるメーキャップ方法は、(A)化粧下地を皮膚に塗布し、(B)ファンデーションを皮膚に塗布するメーキャップ方法において、
(A)の彩度Cは3.5以上、(B)の彩度Cは4.9〜5.9であって、
(A)および(B)を1:1で混合した時の組成物中、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることを特徴とする。
前記メーキャップ方法において、顔料級二酸化チタンは(B)中5〜20質量%であることが好適である。
前記メーキャップ方法において、(A)および/または(B)に、赤酸化鉄および/または黄酸化鉄を含むことが好適である。
前記メーキャップ方法において、(A)および/または(B)に、屈折率が1.7以下の体質顔料および/または平均粒径0.1μm未満の二酸化チタンを含むことが好適である。
【0009】
本発明にかかる化粧下地は、彩度Cが3.5以上であり、前記メーキャップ方法に用いられることを特徴とする。
本発明にかかるファンデーションは、彩度Cが4.9〜5.9でかつ、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であり、前記メーキャップ方法に用いられることを特徴とする。
本発明にかかるメーキャップ化粧料キットは、(A)彩度Cが3.5以上の化粧下地と、
(B)彩度Cが4.9〜5.9のファンデーションからなり、
(A)および(B)を1:1で混合した時の組成物中、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるメーキャップ方法によれば、特定の化粧下地と組み合わせることにより、黒酸化鉄の使用量が低く、ファンデーションの明度が高いにもかかわらず、肌に塗布した際の塗布色は肌の色に近似し、凹凸を目立たなくすることもでき、外観色も自然なメーキャップ化粧料を用いるメーキャップ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】皮膚による凹凸を目立たなくする作用の説明図である。
【図2】Kubelka‐Munk理論で計算される塗布色に基づき作成した素肌の色、ファンデーション外観色、塗布色の関係図である。
【図3】白色顔料(顔料級二酸化チタン)と黒色顔料(黒酸化鉄)の比率と皮膚による光伝播距離の相関図である。
【図4】Kubelka‐Munk理論で計算される塗布色に基づき作成した素肌の色、下地外観色、下地塗布色、ファンデーション外観色、ファンデーション塗布色の関係図である。
【図5】入射光波長と光伝播距離の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかるメーキャップ方法は、(A)化粧下地を皮膚に塗布し、(B)ファンデーションを皮膚に塗布するメーキャップ方法において、
(A)の彩度Cは3.5以上、(B)の彩度Cは4.9〜5.9であって、
(A)および(B)を1:1で混合した時の組成物中、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることを特徴とする。以下、本方法に用いられる各メーキャップ化粧料について詳述する。
【0013】
(A)化粧下地
化粧下地とは、ファンデーションを塗布する前に肌上に塗布されるメーキャップ化粧料である。
本発明にかかる化粧下地の彩度Cは3.5以上である。彩度Cが3.5未満の場合、充分な凹凸隠蔽度を得るためには、組み合わせて用いる(B)成分の彩度Cを上げる必要があり、結果的に(B)成分の外観色に違和感を与えてしまう場合がある。
【0014】
(B)ファンデーション
本発明において、ファンデーションとは、化粧下地を肌上に塗布した後、肌上に塗布されるメーキャップ化粧料である。
本発明にかかるファンデーションの彩度Cは4.9〜5.9である。彩度Cが4.9未満の場合、充分な凹凸隠蔽度が得られなくなってしまう傾向にある。彩度Cが5.9を超えると、商品(ファンデーション)の外観色に違和感を与えてしまう場合がある。
【0015】
また、(A)成分および(B)成分を1:1で混合した時の組成物中、黒酸化鉄の配合量に対する顔料級二酸化チタンの配合量、すなわち顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることが必要である。顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄の質量比が10000未満の場合、肌上の凹凸による陰影が目立つ場合がある。
【0016】
なお、本発明において顔料級二酸化チタンとは平均粒径0.1〜0.5μmの二酸化チタンで、光散乱により白色の外観色を与えるものをいう。本発明に用いられる顔料級二酸化チタンは、被覆処理されていても構わない。処理方法としては、シリコーン処理等の疎水化処理等が挙げられるが、特に限定されない。
【0017】
顔料級二酸化チタンは(B)成分中5〜20質量%であることが好適である。(B)中の顔料級二酸化チタンの配合量が5質量%未満であると、凹凸隠蔽力が不足し、肌の色調調整が困難になる場合がある。(B)中の顔料級二酸化チタンの配合量が20質量%を超えると、白浮きを生じる場合がある。
【0018】
また、本発明において黒酸化鉄とは、マグネタイトであり、化学式Fe3O4で示される酸化鉄である。本発明に用いられる黒酸化鉄は、被覆処理されていても構わない。処理方法としては、シリコーン処理等の疎水化処理等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明に用いられるメーキャップ化粧料に黒酸化鉄が配合されていない場合、外観色が白色化しすぎてしまう場合がある。
【0019】
また、本発明のメーキャップ方法において、(A)成分および/または(B)成分に、赤酸化鉄および/または黄酸化鉄を含むことが好適である。
なお、本発明において赤酸化鉄とは、ベンガラ、ヘマタイトであり、化学式はFe2O3で示される酸化鉄である。
また、本発明において黄酸化鉄とは、ゲーサイトであり、化学式はFeOOHで示される酸化鉄である。
【0020】
また、本発明のメーキャップ方法において、(A)成分および/または(B)成分に、屈折率が1.7以下の体質顔料および/または平均粒径0.1μm未満の二酸化チタンを含むことが好適である。
体質顔料は、組成物の色調に影響を与えることがあまりなく、増量剤として機能しえる顔料であり、具体的にはタルク、マイカ等が挙げられるが、さらに平均粒径0.1μm未満の微粒子二酸化チタン等の紫外線遮蔽粉体も含んでもよい。
【0021】
本発明者らはメーキャップ化粧料(特に、化粧下地、ファンデーション)に要求される隠蔽力と肌の有する透明感について検討を行った。
すなわち、従来の一般的なメーキャップ化粧料は肌の上に隠蔽力の高い、すなわち可視光の透過率の低い皮膜を形成し、肌上の瑕疵を隠蔽する。この状態が図1(A)に示されており、光の照射部位とほぼ同じ位置から反射光が射出される。このため、図1(A)のように肌が平面であれば、肌の透明感は期待できないものの、色調の調整はメーキャップ化粧料の色調で規定することができる。しかしながら、図1(B)のように肌上に凹凸がある場合には、仮に凹凸面に均質なメーキャップ化粧料皮膜を形成できたとしても、光の照射角度によって明暗が生じ、その陰影によって肌上の凹凸がむしろ目立ってしまう。
【0022】
一方、皮膚はある程度の光を進入させ、その内部からの帰還光により肌の透明感を演出しているが、同時に帰還光の皮膚内での伝播により光の照射位置からある程度離れた位置からの帰還光も生じる(図1(C))。このため、図1(D)に示すように凹凸のある肌に光を照射した場合にも陰影は生じにくく、肌の瑕疵をむしろ目立たなくすることができるのである。
【0023】
すなわち、メーキャップ化粧料により隠蔽されるべき肌の瑕疵を、色彩上の瑕疵(ホクロ、アザ等)と、凹凸の瑕疵に分類した場合、凹凸の瑕疵は、きわめて厚くファンデーション皮膜を形成して凹凸自体をなくしてしまうか、あるいはむしろ光を透過させるファンデーション皮膜とするかにより軽減されることになる。
無論のことながら、可視光の透過性が低いメーキャップ化粧料皮膜を肌上に厚く形成すれば、いわゆる「厚化粧」の状態となり、好ましいものではない。
【0024】
一方、可視光を透過させ肌による拡散効果を期待すれば、肌の色彩上の瑕疵を隠蔽することができなくなる。
そこで本発明者らは、これらの相反する要求を充たすため、メーキャップ化粧料(ファンデーション)の明度、彩度と、それを肌に塗布した時の明度、彩度の関係について検討を行った。ここで、明度が高いということはメーキャップ化粧料による光の吸収量が小さいことを意味し、メーキャップ化粧料塗布層の透過光量が大きいことの一つの指標になる。
【0025】
図2にはKubelka‐Munk理論で計算される塗布色に基づき作成した素肌、ファンデーションの外観色と、該ファンデーションを素肌に塗布後の塗布色との関係図が示されている。
同図より明らかなように、ファンデーションの外観色(●)と素肌の色(☆)の彩度をほぼ同一に調色した場合、明度を上昇させていくと、標準的な塗布量での塗布色(〇)の彩度は素肌色よりも大きく低下する。この結果、いわゆる「白浮き」の状態となる。
そして、ファンデーション外観色の明度を高い状態に維持したまま、塗布色の彩度を素肌色の彩度に一致させるようにすると、ファンデーション外観色の彩度は、素肌色と比較してきわめて高い状態としなければならない。
【0026】
すなわち、塗布色の彩度を上げ、白浮きをなくすためには、非常に高彩度の外観色を有するファンデーションが必要とされる。しかしながら、商品として非常に高彩度の外観色を有するファンデーションを使用者が見た場合に、違和感もしくは抵抗感を抱いてしまうことが危惧される。このように、高明度のファンデーションで高い彩度の塗布色を実現しようとすると、外観色に影響が及んでしまう。
そこで、上記知見をもとに、本発明者らはファンデーションのみではなく、化粧下地の調色を行うことにより、外観色も自然なメーキャップ化粧料を用いるメーキャップ方法について検討を行った結果、上記特定の彩度の化粧下地とファンデーションの組み合わせを見出したものである。
【実施例】
【0027】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた試験の評価方法について説明する。
【0028】
評価(1):外観色
専門パネル10名が試料の外観色を評価した。
○:パネル10名中9名以上が、素肌になじみやすい色であると回答した。
○△:パネル10名中7名以上9名未満が、素肌になじみやすい色であると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が、素肌になじみやすい色であると回答した。
×:パネル10名中5名未満が、素肌になじみやすい色であると回答した。
【0029】
評価(2):塗布色
専門パネル10名が試料を1.0mg/cmとなるように顔5×5cmに塗布し、塗布色を評価した。
○:パネル10名中9名以上が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
○△:パネル10名中7名以上9名未満が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
×:パネル10名中5名未満が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
【0030】
評価(3):凹凸隠蔽度
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布時の凹凸隠蔽度を評価した。
○:パネル10名中9名以上が凹凸隠蔽度があると回答した。
○△:パネル10名中7名以上9名未満が凹凸隠蔽度があると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が凹凸隠蔽度があると回答した。
×:パネル10名中5名未満が凹凸隠蔽度があると回答した。
【0031】
評価(4):塗布色(重ね合わせ)
専門パネル10名が顔に試料(化粧下地)を塗布した後、試料(ファンデーション)を塗布し、塗布色を評価した。
○:パネル10名中9名以上が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
○△:パネル10名中7名以上9名未満が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
×:パネル10名中5名未満が、白浮きがなく、素肌の色になじんでいると回答した。
【0032】
はじめに、本発明者らは、メーキャップ化粧料の明度および彩度の調整方法について検討した。
一般にメーキャップ化粧料(特にファンデーション)で明度および彩度を調整する際、顔料級の二酸化チタン、黒酸化鉄が汎用される。二酸化チタンは高屈折率を有するため、可視光の非選択的散乱を生じ、外観色は白色である。また、黒酸化鉄は波長依存性のないほぼ真黒の外観色を有する。
これらの明度、彩度を調整する成分の皮膚内光伝播に及ぼす影響について、表1に示す単純処方を用いて検討を行った。
【0033】
(表1)
試験例
1−1 1−2 1−3 1−4 1−5
顔料級二酸化チタン 0 5 4.875 4.75 4.5
黒酸化鉄 0 0 0.125 0.25 0.5
【0034】
前記試験例1−1はコントロールとして素肌、試験例1−2〜1−5は、それぞれ3mg/cm2となるように前腕内側部位5×5cmに塗布し、赤色光ビーム(640nm)の照射位置とそこからの距離による肌からの帰還光強度の関係を測定した。結果を図3に示す。
【0035】
図3より明らかなように、顔料級二酸化チタンの存在自体は皮膚からの帰還光に大きな影響を与えないが、黒酸化鉄は微量の存在により急激に帰還光を減少させる。
したがって、二酸化チタンおよび黒酸化鉄の量比が、伝播光量を調整する上できわめて重要であることが理解される。
【0036】
そこで、本発明者らは、二酸化チタンおよび黒酸化鉄の量比を変化させ、下記表2に示す配合組成よりなるファンデーションを、下記製造方法により製造し、彩度および明度の測定を行った。明度および彩度の測定は、分光測色機CM-2600d(ミノルタ社製)により行った。そして、各試料を評価項目(1)〜(3)について上記採点基準にて評価した。結果を表2に示す。
【0037】
・ファンデーションの製造方法
粉末各成分を混合粉砕したところへ、それ以外の各成分を加熱混合したものを加えて攪拌混合し、さらに粉砕したものを容器に成型して、粉末化粧料を得た。
【0038】
【表2】

*1:CR-50(石原産業社製)
*2:MT-014V(テイカ社製)
*3:R-516P(チタン工業社製)
*4:ベンガラNo.216P(大東化成工業社製)

【0039】
表2によれば、明度が高く、黒酸化鉄に対して顔料級二酸化チタンの割合が高い試験例2−1〜試験例2−4において、凹凸隠蔽度に優れていた。
これに対して、明度が高く、黒酸化鉄の割合が高い試験例2−5、2−6において、陰影がやや目立ち、凹凸隠蔽度にやや劣ってしまった。これは、上記のように黒酸化鉄の存在により帰還光が減少したためと考えられる。
したがって、本発明で用いられるメーキャップ化粧料は、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることが必要である。
【0040】
しかしながら、試験例2−1や2−2のように、明度が高いファンデーションにおいて、黒酸化鉄に対して顔料級二酸化チタンの割合が高い、もしくはその他の成分の存在により、彩度が非常に高い場合、試料の塗布色には非常に優れていたが、外観色が白色化してしまった。
このような高彩度のファンデーションは、従来の一般的なファンデーションには見られないほど、外観色の彩度は素肌の彩度からかけ離れており、外観色に違和感を感じるものであった。
【0041】
そこで、本発明者らは、目的とするファンデーション塗布色を、化粧下地と組み合わせた場合に実現できるような化粧下地について検討を行った。
Kubelka‐Munk理論で計算される塗布色に基づき作成した素肌の色、下地外観色、該下地を素肌に塗布後の塗布色(下地塗布色)、ファンデーションを素肌もしくは該下地に塗布後の塗布色(FD塗布色)、該ファンデーションの外観色(FD外観色)の関係を図4に示す。
【0042】
図4によれば、最終的に明度の高い化粧肌のFD塗布色(I、II)を実現するためには、前記のようにファンデーションのみを用いる場合、彩度が非常に高い外観色のファンデーション(I)を塗布する必要がある。
一方、下地外観色IIの下地を素肌に塗布し、素肌の色を下地塗布色IIに調色した場合、つづいて塗布するファンデーションの外観色IIの彩度が低くても、最終的に明度の高い化粧肌のFD塗布色(I、II)が実現できる。
図4より、このような化粧下地の外観色(下地外観色)は、素肌より彩度の高いものを選択する必要があることが示唆される。
【0043】
次に、本発明者らは、実際に各種彩度および明度を有する下記表3に示す配合組成よりなる化粧下地を、下記製造方法により製造し、上記と同様に彩度および明度の測定を行った。そして、各試料を評価項目(1)、(2)について上記採点基準にて評価した。結果を表3に示す。
【0044】
・化粧下地の製造方法
水相各成分をホモジナイザーで攪拌混合しながら、加熱混合した油相成分を添加・混合し、乳化組成物を得た。
【0045】
【表3】

*5:MT-100TV(テイカ社製)

【0046】
次に、上記試験例2および試験例3で製造した化粧下地、次いでファンデーションを顔に塗布し、上記評価項目(3)および(4)について評価した。結果を表4に示す。なお、表4の結果は、評価(4)の結果/評価(3)の結果で示されている。
【0047】
【表4】

【0048】
表4によると、例えば試験例2−3のファンデーションを用いた場合、化粧下地を用いない(素肌に塗布した)場合の塗布色の評価は○△であったが、試験例3−2〜3−4の化粧下地と組み合わせると評価が上がることがわかる。
したがって、表4およびファンデーションの外観色(表2)を考慮すると、試験例3−2〜3−4の化粧下地と試験例2−3のファンデーション、試験例3−2、3−3の化粧下地と試験例2−4のファンデーションの組み合わせを塗布した場合に、ファンデーションの外観色に優れているだけではなく、非常に優れた凹凸隠蔽効果を実現できることが明らかとなった。
すなわち、本発明にかかるメーキャップ方法において、(A)彩度3.5以上の化粧下地および(B)彩度4.9〜5.9のファンデーションを用いることが必要である。
【0049】
さらに本発明者らは光の波長と凹凸隠蔽度の関係について検討を行った。
図5に、皮膚上に各種波長のビーム光を照射し、該照射位置からの離隔距離と帰還光強度を測定した結果を示す。
図5より明らかなように、波長が長いほど、距離が離隔しても帰還光強度が低下しにくいこと、すなわち長波長光の伝播距離が大きいことが理解される。
したがって、本発明のメーキャップ方法に用いられるメーキャップ化粧料(化粧下地、ファンデーション)に、長波長領域の吸光度が低い、赤酸化鉄および/または黄酸化鉄を含むことが好適である。
【0050】
以下に、本発明のメーキャップ方法に用いられるメーキャップ化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって限定されるものではない。
【0051】
処方例1 粉末固形ファンデーション(彩度:5.4)
ジメチルポリシロキサン 5 質量%
イソステアリン酸 0.5
リンゴ酸ジイソステアリル 1
トリ2−エチルヘキサンサングリセリル 3
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
球状PMMA被覆雲母 4
微粒子酸化亜鉛 1
微粒子酸化チタン 3
合成金雲母 20
金属石鹸処理タルク 残 余
球状シリカ 3
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
D−δ−トコフェロール 0.1
エチルパラベン 適 量
トリメトキシ桂皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル
0.1
パラメトキシ桂皮酸2−エチルへキシル 3
球状ポリアクリル酸アルキル粉末 2
流動パラフィン含有ポリアクリル酸アルキル粉末 4
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆タルク 20
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆硫酸バリウム 5
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆顔料級二酸化チタン 10
メチルハイドロジェンポリシロキサン/ジメチルポリシロキサン被覆酸化鉄マピコレッド516L 0.1
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆ベンガラ 0.5
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆黄酸化鉄 2.5
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆黒酸化鉄 0.0005
【0052】
処方例2 油中水型乳化ファンデーション(彩度:5.1)
ジメチルポリシロキサン 15 質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 20
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 5
高分子量アミノ変性シリコーン 0.1
グリセリン 5
1,3−ブチレングリコール 10
パルミチン酸 0.5
マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル 0.1
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.2
アルキル変性シリコン樹脂被覆黄酸化鉄 2
アルキル変性シリコン樹脂被覆酸化鉄マピコレッド516L 0.2
アルキル変性シリコン樹脂被覆ベンガラ 1
アルキル変性シリコン樹脂被覆黒酸化鉄 0.00025
アルキル変性シリコン樹脂被覆顔料級二酸化チタン 10
アルキル変性シリコン樹脂被覆酸化タルク 1.5
シリコーン被覆紡錘状酸化チタン 3
L−グルタミン酸ナトリウム 0.5
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適 量
トリメトキシケイヒ酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル
0.1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.5
球状ナイロン末 1
精製水 残 余
香料 適 量
【0053】
処方例3 化粧下地(彩度:3.7)
デカメチルシクロペンタシロキサン 18 質量%
ジメチルポリシロキサン(6cps) 1
ジメチルポリシロキサン(100万cps) 3
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆タルク 2
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆顔料級二酸化チタン 3
メチルハイドロジェンポリシロキサン/ジメチルポリシロキサン被覆酸化鉄マピコレッド516L 0.05
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆黄酸化鉄 0.1
ナイロンパウダー 2
イオン交換水 残 余
1,3−ブチレングリコール 5
L−グルタミン酸ナトリウム 2
メチルパラベン 0.1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)化粧下地を皮膚に塗布し、(B)ファンデーションを皮膚に塗布するメーキャップ方法において、
(A)の彩度Cは3.5以上、(B)の彩度Cは4.9〜5.9であって、
(A)および(B)を1:1で混合した時の組成物中、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることを特徴とするメーキャップ方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメーキャップ方法において、顔料級二酸化チタンは(B)中5〜20質量%であることを特徴とするメーキャップ方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメーキャップ方法において、(A)および/または(B)に、赤酸化鉄および/または黄酸化鉄を含むことを特徴とするメーキャップ方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のメーキャップ方法において、(A)および/または(B)に、屈折率が1.7以下の体質顔料および/または平均粒径0.1μm未満の二酸化チタンを含むことを特徴とするメーキャップ方法。
【請求項5】
彩度Cが3.5以上であり、請求項1〜4のいずれかに記載のメーキャップ方法に用いられることを特徴とする化粧下地。
【請求項6】
彩度Cが4.9〜5.9でかつ、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であり、請求項1〜4のいずれかに記載のメーキャップ方法に用いられることを特徴とするファンデーション。
【請求項7】
(A)彩度Cが3.5以上の化粧下地と、
(B)彩度Cが4.9〜5.9のファンデーションからなり、
(A)および(B)を1:1で混合した時の組成物中、顔料級二酸化チタン/黒酸化鉄が質量比で10000以上であることを特徴とするメーキャップ化粧料キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−31079(P2012−31079A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170463(P2010−170463)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】